(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】誘導発熱ローラ装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/14 20060101AFI20241121BHJP
F16C 13/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H05B6/14
F16C13/00 C
(21)【出願番号】P 2021007789
(22)【出願日】2021-01-21
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000110158
【氏名又は名称】トクデン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】北野 孝次
【審査官】礒部 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-308956(JP,A)
【文献】特開2003-345148(JP,A)
【文献】特開2001-215823(JP,A)
【文献】特開2003-187955(JP,A)
【文献】特開2005-243402(JP,A)
【文献】特開平04-306586(JP,A)
【文献】米国特許第04683628(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 6/02 - 6/44
F16C 13/00 - 13/06
D02J 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空円筒状のローラ本体と、
前記ローラ本体の両端部に設けられ、
機台に対して回転自在に支持される駆動軸と、
前記ローラ本体の内部に設けられ、前記ローラ本体を誘導発熱させる誘導発熱機構と、
前記誘導発熱機構の両端部から延びており、前記誘導発熱機構を支持する支持軸とを備え、
前記支持軸は、前記ローラ本体の両端部の内側周面に軸受を介し
て支持され
、前記機台に対して静止状態に保持されるものであり、
前記支持軸は、前記ローラ本体の内部において前記軸受に支持される軸受固定部と、当該軸受固定部の端部から延びて前記駆動軸の内部に配置されるとともに、前記誘導発熱機構に接続されるリード線が挿通されるリード線取出部とを有し、
前記軸受固定部は、前記リード線取出部よりも径が大きい、誘導発熱ローラ装置。
【請求項2】
中空円筒状のローラ本体と、
前記ローラ本体の両端部に設けられ、機台に対して回転自在に支持される駆動軸と、
前記ローラ本体の内部に設けられ、前記ローラ本体を誘導発熱させる誘導発熱機構と、
前記誘導発熱機構の両端部から延びており、前記誘導発熱機構を支持する支持軸とを備え、
前記支持軸は、前記ローラ本体の両端部の内側周面に軸受を介して支持され、前記機台に対して静止状態に保持されるものであり、
前記支持軸及び前記軸受の間、又は、前記ローラ本体及び前記軸受の間にスペーサ部材が設けられており、
前記スペーサ部材には、着脱補助機構が設けられており、前記軸受とともに着脱可能に構成されている、誘導発熱ローラ装置。
【請求項3】
前記支持軸は、前記誘導発熱機構を貫通した一体のものである、請求項1
又は2に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項4】
前記支持軸は、一部又は全部が非磁性体から構成されている、請求項1乃至3の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置。
【請求項5】
前記支持軸において、前記誘導発熱機構及び前記軸受の間に磁性体からなる磁気シールド部材が設けられている、請求項1乃至4の何れか一項に記載の誘導発熱ローラ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導発熱ローラ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の誘導発熱ローラ装置としては、特許文献1に示すように、円筒状のローラ本体と、当該ローラ本体の内部に設けられ、ローラ本体を誘導発熱させる交番磁束発生機構(誘導発熱機構)とを備えている。ローラ本体の両端部には、駆動軸を有するジャーナルが固定されており、当該駆動軸が軸受を介して機台に対して回転自在に支持されている。また、交番磁束発生機構(誘導発熱機構)は支持ロッドにより支持されており、当該支持ロッドは、駆動軸の内部に延びており、軸受を介して駆動軸に回転自在に支持されている。さらに、誘導発熱機構の誘導コイルに接続された引出線(リード線)は、支持ロッド内を通じて外部に導出されて交流電源に接続されている。
【0003】
ところで、誘導発熱ローラ装置は、熱処理工程や熱処理物に応じて小径のローラ本体を選定する場合がある。この場合には、ローラ本体に固定される駆動軸が小径化することにより、当該駆動軸の内部に延びる支持ロッドも小径化してしまう。その結果、支持ロッド内を通る引出線が細くなってしまい、誘導発熱機構に所望の電力を供給することができず、ローラ本体の加熱温度が制約されてしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、小径のローラであっても誘導発熱機構に十分な電力を供給することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち本発明に係る誘導発熱ローラ装置は、中空円筒状のローラ本体と、前記ローラ本体の両端部に設けられ、回転自在に支持される駆動軸と、前記ローラ本体の内部に設けられ、前記ローラ本体を誘導発熱させる誘導発熱機構と、前記誘導発熱機構の両端部から延びており、前記誘導発熱機構を支持する支持軸とを備え、前記支持軸は、前記ローラ本体の両端部の内側周面に軸受を介して回転自在に支持されていることを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、誘導発熱機構を支持する支持軸をローラ本体の両端部の内側周面に軸受を介して支持しているので、駆動軸の内側周面に軸受を介して支持する構成に比べて、駆動軸内における支持軸を大径化することができる。したがって、小径のローラ本体であっても、支持軸の内部を通じて外部に導出されるリード線を太くすることができ、誘導発熱機構に十分な電力を供給することができる。その結果、小径のローラ本体の加熱温度が制約されてしまうことを防ぐことができる。
【0008】
また、小径かつ長尺のローラ本体においては、当該ローラ本体の内部に設けられる誘導発熱機構及びその支持軸も長くなり、誘導発熱機構及び支持軸の撓みが大きくなるという問題がある。その結果、小径かつ長尺のローラ本体の場合には、誘導発熱機構の軸方向中央部での撓みによるローラ本体と誘導発熱機構との接触リスクが高い。
一方で、本発明では、誘導発熱機構を支持する支持軸をローラ本体の両端部の内側周面に軸受を介して支持しているので、駆動軸の内部で軸受を介して支持する構成に比べて、軸受間の距離を小さくすることができ、誘導発熱機構及び支持軸の撓みを小さくすることができる。その結果、ローラ本体と誘導発熱機構との接触リスクを低減することができる。
【0009】
支持軸の具体的な実施の態様としては、前記支持軸は、前記誘導発熱機構を貫通した一体のものであることが考えられる。
この構成であれば、誘導発熱機構を支持した状態における機械的強度を向上することができる。
【0010】
支持軸の具体的な実施の態様としては、前記支持軸は、前記ローラ本体の内部において前記軸受に支持される軸受固定部と、当該軸受固定部の端部から延びて前記駆動軸の内部に配置されるとともに、前記誘導発熱機構に接続されるリード線が挿通されるリード線取出部とを有することが考えられる。
この構成において、誘導発熱機構を支持した支持軸の撓みをより一層小さくするためには、前記軸受固定部は、前記リード線取出部よりも径が大きいことが望ましい。
【0011】
誘導発熱機構としては、円筒状をなす円筒状鉄心と、当該円筒状鉄心の外側周面に巻回された誘導コイルとを備えているものが考えられる。この構成において、発生する磁束を円筒状鉄心及びローラ本体の間で効率良く通すためには、前記支持軸は、一部又は全部が非磁性体から構成されていることが望ましい。また、支持軸が誘導発熱しにくく、支持軸の熱変形を低減することもできる。
【0012】
誘導発熱機構により発生した磁束により軸受が誘導発熱して破損しないようにするためには、前記支持軸において、前記誘導発熱機構及び前記軸受の間に磁性体からなる磁気シールド部材が設けられていることが望ましい。
【0013】
支持軸やローラ本体は、例えば熱処理工程や熱処理物に応じて、その寸法が設定される。このような支持軸又はローラ本体に合わせて軸受を用意すると専用品となってしまい、コストアップの要因となる。
この問題を好適に解決するためには、前記支持軸及び前記軸受の間、又は、前記ローラ本体及び前記軸受の間にスペーサ部材が設けられていることが望ましい。
この構成であれば、汎用の軸受を用いた場合であっても、当該軸受と支持軸又はローラ本体との隙間をスペーサ部材で補填することができる。
【0014】
消耗品である軸受の交換作業を容易にするためには、前記スペーサ部材には、着脱補助機構が設けられており、前記軸受とともに着脱可能に構成されていることが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
このように構成した本発明によれば、小径のローラであっても誘導発熱機構に十分な電力を供給することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す断面図である。
【
図2】同実施形態の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す部分断面図である。
【
図3】変形実施形態の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す部分断面図である。
【
図4】変形実施形態の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す部分断面図である。
【
図5】変形実施形態の誘導発熱ローラ装置の構成を模式的に示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<本発明の一実施形態>
以下に本発明に係る誘導発熱ローラ装置100の一実施形態について図面を参照して説明する。
【0018】
この誘導発熱ローラ装置100は、例えばプラスチックフィルム、紙、布、不織布、合成繊維、金属箔等のシート材又はウェブ材、線(糸)材等の連続材の熱処理工程等において用いられるものである。
【0019】
本実施形態の誘導発熱ローラ装置100は、
図1及び
図2に示すように、回転自在に支持された中空円筒状のローラ本体2と、このローラ本体2の内部に設けられた誘導発熱機構3とを備えている。なお、ローラ本体2は、例えば外径が150mm、軸長が2500mmといった、小径かつ長尺のものである。
【0020】
ローラ本体2の両端部それぞれには中空の駆動軸41を有するジャーナル4が設けられており、当該駆動軸41は、転がり軸受等の軸受8を介して機台9に回転自在に支持されている。なお、ジャーナル4は、駆動軸41と、ローラ本体2の軸方向端部に固定されるフランジ部42とを有している。そして、ローラ本体2は、例えばモータ等の回転駆動機構(不図示)により外部から与えられる駆動力によって回転されるように構成されている。
【0021】
誘導発熱機構3は、円筒状をなす円筒状鉄心31と、当該円筒状鉄心31の外側周面に巻装された誘導コイル32とを備えている。
【0022】
この誘導発熱機構3の両端部には、誘導発熱機構3を支持する支持軸5が軸方向に沿って延び出ている。具体的に支持軸5は、一部又は全部が非磁性体から構成されており、誘導発熱機構3を貫通した一体のものとしてある。具体的に支持軸5は、円筒状鉄心31の内側周面に嵌合し、当該円筒状鉄心31の両端部から軸方向に沿って延び出ている。
【0023】
そして、支持軸5は、ローラ本体2の両端部の内側周面2aに軸受6を介して回転自在に支持されている。なお、軸受6としては、転がり軸受、滑り軸受、又は、調芯機能付き転がり軸受などを用いることができる。これにより、誘導発熱機構3は、回転するローラ本体2の内部において、機台9(固定側)に対して静止状態に保持される。
図2の軸受6は、ローラ本体2の内側周面2aに形成された段部21に嵌合されており、当該段部21の外向き面21aに当接するとともに、ジャーナル4のフランジ部42に形成された突条部421の先端面421aに接触して軸方向の位置決めがされている。
【0024】
具体的に支持軸5は、ローラ本体2の内部において軸受6に支持される軸受固定部51と、当該軸受固定部51の一端部から延びて駆動軸41の内部に配置されるとともに、誘導発熱機構3の誘導コイル32に接続されるリード線L1が挿通されるリード線取出部52とを有している。
【0025】
リード線取出部52は、軸方向一端側(
図1において右側)の駆動軸41の内部に挿通され、当該駆動軸41の端部から外部に延びている。また、軸受固定部51は、リード線取出部52よりも径が大きい。さらに本実施形態の軸受固定部51は、リード線取出部52が挿通される駆動軸41の内径より大きい径を有する構成としてあるが、これに限られない。
【0026】
なお、誘導コイル32に接続されるリード線L1には、商用周波数(50Hz又は60Hz)の交流電圧などを印加するための電源回路(不図示)が接続されている。
【0027】
このような誘導発熱機構3により、誘導コイル32に交流電圧が印加されると交番磁束が発生し、その交番磁束はローラ本体2の側周壁を通過する。この通過によりローラ本体2に誘導電流が発生し、その誘導電流でローラ本体2はジュール発熱する。
【0028】
<本実施形態の効果>
このように構成した誘導発熱ローラ装置100によれば、誘導発熱機構3を支持する支持軸5をローラ本体2の両端部の内側周面2aに軸受6を介して支持しているので、駆動軸41の内側周面に軸受を介して支持する構成に比べて、駆動軸41内における支持軸5(ここではリード線取出部52)を大径化することができる。したがって、小径のローラ本体2であっても、支持軸5(リード線取出部52)の内部を通じて外部に導出されるリード線L1を太くすることができ、誘導発熱機構3に十分な電力を供給することができる。その結果、小径のローラ本体2の加熱温度が制約されてしまうことを防ぐことができる。
【0029】
また、本実施形態では、誘導発熱機構3を支持する支持軸5をローラ本体2の両端部の内側周面2aに軸受6を介して支持しているので、駆動軸41の内部で軸受を介して支持する構成に比べて、軸受6間の距離を小さくすることができ、誘導発熱機構3及び支持軸5の撓みを小さくすることができる。その結果、ローラ本体2と誘導発熱機構3との接触リスクを低減することができる。
【0030】
<その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られず、以下の態様であっても良い。
【0031】
例えば、
図3に示すように、支持軸5(軸受固定部51)において、誘導発熱機構3及び軸受6の間に磁性体からなる磁気シールド部材11を設けても良い。この磁気シールド部材11は、誘導発熱機構3から発生した交番磁束が軸受6に鎖交して軸受6が誘導発熱しないようにするものである。なお、軸受6が非磁性材から構成されるものであれば、磁気シールド部材11は不要にすることができる。
【0032】
また、
図4に示すように、支持軸5(軸受固定部51)の外側周面及び軸受6の内側周面の間に内側スペーサ部材12を嵌合して設けても良い。この内側スペーサ部材12は、軸受固定部51と軸受6との間の隙間を補填する円筒状をなすものである。この内側スペーサ部材12には、着脱補助機構として軸受6よりも外側の外側周面にねじ加工が施されており、当該ねじに治具を螺合させて軸受6とともに支持軸5に対して着脱可能に構成されている。
【0033】
さらに、
図5に示すように、ローラ本体2の内側周面2a及び軸受6の外側周面の間に外側スペーサ部材13を嵌合して設けても良い。この外側スペーサ部材13は、ローラ本体2と軸受6との間の隙間を補填する円筒状をなすものである。この外側スペーサ部材13には、着脱補助機構として軸受6よりも外側の内側周面にねじ加工が施されており、当該ねじに治具を螺合させて軸受6とともにローラ本体2に対して着脱可能に構成されている。
【0034】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0035】
100・・・誘導発熱ローラ装置
2 ・・・ローラ本体
2a ・・・内側周面
3 ・・・誘導発熱機構
L1 ・・・リード線
41 ・・・駆動軸
5 ・・・支持軸
51 ・・・軸受固定部
52 ・・・リード線取出部
6 ・・・軸受
11 ・・・磁気シールド部材
12 ・・・内側スペーサ部材
13 ・・・外側スペーサ部材