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特許7591263通信装置、端末装置およびアクティブ光ケーブル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】通信装置、端末装置およびアクティブ光ケーブル
(51)【国際特許分類】
   H04B 10/077 20130101AFI20241121BHJP
   H04B 10/40 20130101ALI20241121BHJP
   H04L 25/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H04B10/077 190
H04B10/40
H04L25/02 303A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021018854
(22)【出願日】2021-02-09
(65)【公開番号】P2022121882
(43)【公開日】2022-08-22
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】399011195
【氏名又は名称】ザインエレクトロニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100110582
【弁理士】
【氏名又は名称】柴田 昌聰
(72)【発明者】
【氏名】藤田 悠介
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2012/0141132(US,A1)
【文献】特開2017-208838(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0222726(US,A1)
【文献】特開2020-087142(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 10/077
H04B 10/40
H04L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1端側および第2端側それぞれに設けられたレーザダイオードおよびフォトダイオードを用いて前記第1端側と前記第2端側との間で通信を行うアクティブ光ケーブルにおいて前記第1端側または前記第2端側に設けられる通信装置であって、
相手方通信装置の側へ送信すべき信号を差動信号として入力する差動入力端を終端し抵抗値が可変である差動入力終端抵抗器と、
前記相手方通信装置の側へ送信すべき信号に基づいて電流信号をレーザダイオードに供給して前記レーザダイオードから光信号を出力させる線形レーザドライバと、
前記差動入力端への入力信号がエレクトリカルアイドルであるか否かを検出する送信信号検出部と、
前記相手方通信装置の側から到達した光信号を受光したフォトダイオードから出力された電流信号を入力し、この電流信号を電圧信号に変換して該電圧信号を出力する線形トランスインピーダンス増幅器と、
前記線形トランスインピーダンス増幅器から出力された電圧信号を増幅して出力する線形可変利得増幅器と、
前記線形可変利得増幅器から出力された電圧信号を出力先デバイスへ出力するとともに、前記出力先デバイスの入力終端抵抗の検出が可能な線形出力ドライバと、
前記フォトダイオードから出力された電流信号、または、前記線形トランスインピーダンス増幅器から出力された後の電圧信号を監視して、これらの電流信号または電圧信号のパルス数を検出するパルス数検出部と、
前記フォトダイオードから出力された電流信号、または、前記線形トランスインピーダンス増幅器から出力された後の電圧信号を監視して、これらの電流信号または電圧信号がエレクトリカルアイドルであるか否かを検出する受信信号検出部と、
前記送信信号検出部によるエレクトリカルアイドル検出結果、前記線形出力ドライバによる出力先デバイス入力終端抵抗検出結果、前記パルス数検出部によるパルス数検出結果および前記受信信号検出部によるエレクトリカルアイドル検出結果に基づいて、信号送信可能なアクティブ状態と消費電力低減可能なスリープ状態との間の遷移を制御するとともに、前記差動入力終端抵抗器、前記線形レーザドライバ、前記線形トランスインピーダンス増幅器、前記線形可変利得増幅器および前記線形出力ドライバそれぞれの動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、
前記送信信号検出部により入力信号がエレクトリカルアイドルでないことが検出されたとき、または、前記パルス数検出部による検出されたパルス数がスリープ状態からアクティブ状態への遷移を表すものであるとき、スリープ状態からアクティブ状態への遷移を決定し、
前記送信信号検出部により入力信号がエレクトリカルアイドルであることが検出されたこと、または、前記受信信号検出部により電流信号または電圧信号がエレクトリカルアイドルであることが検出されたことに基づいて、アクティブ状態からスリープ状態への遷移を決定し、
前記線形出力ドライバによる出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果、および、アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、前記線形レーザドライバによる前記レーザダイオードへの電流信号の供給を制御し、
前記パルス数検出部によるパルス数検出結果に基づいて、前記差動入力終端抵抗器の抵抗値を制御し、
アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、前記線形トランスインピーダンス増幅器、前記線形可変利得増幅器および前記線形出力ドライバそれぞれの動作を制御する、
通信装置。
【請求項2】
前記線形可変利得増幅器から出力された後の電圧信号の振幅を検出する振幅検出部を更に備え、
前記制御部は前記振幅検出部による振幅検出結果に基づいて前記線形可変利得増幅器の利得を制御する、
請求項1に記載の通信装置。
【請求項3】
前記線形レーザドライバは、前記制御部からの制御信号に基づいて電流信号をレーザダイオードに供給する低速ドライバと、前記差動入力端への入力信号に基づいて電流信号をレーザダイオードに供給する高速ドライバと、を含み、
前記制御部は、
前記線形出力ドライバによる出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果、および、アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、前記低速ドライバによる前記レーザダイオードへの電流信号の供給を制御し、
アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、前記高速ドライバによる前記レーザダイオードへの電流信号の供給を制御する、
請求項1または2に記載の通信装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記線形出力ドライバによる出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果が高インピーダンスであった場合、前記線形出力ドライバによる出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果が低インピーダンスであった場合、および、スリープ状態からアクティブ状態へ遷移する場合とで、前記線形レーザドライバから前記レーザダイオードへ供給する電流信号のパルス数を異ならせる、
請求項1~3の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記送信信号検出部により一定期間に亘ってエレクトリカルアイドルであることが検出されたとき、または、前記受信信号検出部により一定期間に亘って電流信号または電圧信号がエレクトリカルアイドルであることが検出されたとき、アクティブ状態からスリープ状態への遷移を決定する、
請求項1~4の何れか1項に記載の通信装置。
【請求項6】
前記一定期間の長さは240ms以上である、
請求項5に記載の通信装置。
【請求項7】
請求項1~6の何れか1項に記載の通信装置と、
前記通信装置の線形レーザドライバから供給される電流信号を入力して光信号を相手方通信装置の側へ出力するレーザダイオードと、
前記相手方通信装置の側から到達した光信号を受光して電流信号を前記通信装置の線形トランスインピーダンス増幅器へ出力するフォトダイオードと、
を備える端末装置。
【請求項8】
請求項7に記載の端末装置である第1端末装置および第2端末装置と、
前記第1端末装置のレーザダイオードから出力された光信号を前記第2端末装置のフォトダイオードへ導光する第1光ファイバと、
前記第2端末装置のレーザダイオードから出力された光信号を前記第1端末装置のフォトダイオードへ導光する第2光ファイバと、
を備えるアクティブ光ケーブル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信装置、端末装置およびアクティブ光ケーブルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ等の情報機器に周辺機器を接続するためのシリアルバス規格の一つとしてユニバーサル・シリアル・バス(Universal Serial Bus、USB)がある。USBは、最初の規格であるUSB1.0が1996年に登場して以降、現在のパーソナルコンピュータ周辺機器において最も普及した汎用インターフェース規格である。2017年9月にUSB3.2規格が正式リリースされ、2019年8月にUSB4規格が正式リリースされた。USB4は、USB3.2に対して後方互換性が要求されている。
【0003】
主信号であるSS(Super Speed)信号のデータレート(1レーン当たり)は、USB3.2のGen1では5Gbpsであり、USB3.2のGen2では10Gbpsであり、USB4のGen2では10Gbpsであり、USB4のGen3では20Gbpsである。SS信号は差動信号である。SS信号の通信に2レーンを利用することができる。
【0004】
図1は、USB4規格準拠の通信ケーブルにより2つの機器が接続された構成を示す図である。DFP(Downstream Facing Port)およびUFP(UpstreamFacing Port)はリンクパートナである。DFPは、ホスト側の機器であり、例えばコンピュータ等の情報機器である。UFPは、デバイス側の機器であり、例えばマウスやディスプレイ等の周辺機器である。レーンアダプタ(Lane Adapter)は、DFPおよびUFPそれぞれに設けられており、USB4によるSS信号通信の主体となるものである。
【0005】
DFPとUFPとは通信ケーブルにより互いに接続される。DFPとUFPとを互いに接続する通信ケーブルが短い場合には、その通信ケーブルはパッシブ・ケーブルであってもよい。一方、通信ケーブルが長い場合(例えばUSB4では長さ0.8m以上の場合)には、その通信ケーブルはアクティブケーブルであることが要求される。アクティブケーブルとして、電気信号のまま伝送するアクティブ銅ケーブル(Active Cupper Cable、ACC)と、電気信号を光信号に変換して光信号を伝送するアクティブ光ケーブル(Active Optical Cable、AOC)とがある。
【0006】
アクティブケーブルは能動デバイスを備えている。能動デバイスは、主信号に対して消費電力量に応じた能動的動作をすることができる。ACCの場合、能動デバイスは、信号の損失(特に高周波帯域の損失)を補正するリドライバやリタイマ等である。AOCの場合、能動デバイスは、電流信号を光信号に変換するレーザダイオード、レーザダイオードに電流信号を供給してレーザダイオードを駆動するレーザドライバ、光信号を電流信号に変換するフォトダイオード、フォトダイオードから出力される電流信号を電圧信号に変換するトランスインピーダンス増幅器(Trans Impedance Amplifier、TIA)等である。
【0007】
アクティブケーブルにおいて一方の端末側の通信装置から他方の端末側の通信装置へ、信号(主信号、LFPS信号)が送られる他、エレクトリカルアイドル情報が送られる。LFPS信号(Low Frequency Periodic Signaling)は、レーンアダプタ間で通信を確立させるためにレーンアダプタ間で送りあう低速トグルパターン信号である。LFPS信号の周期は20~100nsである。USB3.2規格ではLFPS信号は少なくとも2サイクルであり、USB4規格ではLFPS信号は少なくとも16サイクルである。LFPS信号送信期間は最短で40nsである。エレクトリカルアイドル(以下「EI」という。)は、電圧信号の論理レベルLまたは論理レベルHの電圧ではなく、両者の間の中間レベルの電圧である。
【0008】
特許文献1には、AOCの端末に用いることを意図した通信装置の発明が開示されている。この文献に開示された発明において、一方の端末側の通信装置から他方の端末側の通信装置へ送られる光信号は、主信号については本来の論理レベルHおよび論理レベルLを有する信号であり、LFPS信号についてはLFPS信号送信期間に亘って論理レベルHの固定値であり、EI情報についてはEI状態期間に亘って論理レベルLの固定値である。また、一方の端末側の通信装置から他方の端末側の通信装置へ送られる光信号は、EI情報送信から主信号送信へ変わるタイミングと、EI情報送信からLFPS信号送信へ変わるタイミングと、を識別するためのパルス信号を含む。
【0009】
この文献に開示された発明において、上記のような光信号を受信した通信装置は、受信した信号が論理レベルLである期間が続いていればEI状態期間であると判断する。通信装置は、受信した信号が論理レベルLから論理レベルHに遷移した後に一定期間に亘って論理レベルHのまま固定されていると、EI状態期間からLFPS信号送信期間へ遷移したと判断する。そして、LFPS信号送信期間への遷移を検知した通信装置は、内蔵発振器によりLFPS信号を再生成して、この再生成したLFPS信号を後段へ出力する。このときにLFPS信号が出力される期間の長さは、LFPS信号送信期間の長さと等しい。また、通信装置は、受信した信号が論理レベルLから論理レベルHに遷移した後に所定のパルス信号を含んでいると、EI状態期間から主信号送信期間へ遷移したと判断して、受信した主信号を増幅して後段へ出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第10,425,161号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明者は、特許文献1に開示された発明が次のような問題を有していることを見出した。
【0012】
この文献に開示された発明の通信装置は、受信した光信号に基づいて電気信号を出力するパスとして、主信号を出力するための第1出力ドライバと、再生成したLFPS信号を出力するための第2出力ドライバと、を並列的に備えている。このことから、出力端の負荷容量は大きくなり、高速信号を出力することは困難である。例えばUSB4のGen3では主信号のデータレート(1レーン当たり)は20Gbpsであるが、このような高速信号を出力することは困難である。仮に、出力ドライバを1つのみ設けて、この出力ドライバの前段にパスを切り替えるためのセレクタを設けたとしても、このセレクタの出力端の負荷が重く、同様に高速化は困難である。
【0013】
このような問題は、レーザドライバおよびTIAとしてリミットアンプ型のものを用いたことに因り生じたと考えられる。リミットアンプは、論理レベルHおよび論理レベルLの2値しか出力することができず、論理レベルHと論理レベルLとの間の中間レベルの値を出力することができない。すなわち、EI状態のときの中間レベルの電圧に応じた強度の光信号を送信することができない。
【0014】
そこで、特許文献1に開示された発明では、光信号は、EI情報についてはEI状態期間に亘って論理レベルLの固定値とされる。一方で、光信号は、LFPS信号についてはLFPS信号送信期間に亘って論理レベルHの固定値とされて、LFPS信号送信期間の情報のみを送る。したがって、通信装置は、主信号を出力するための第1出力ドライバに加えて、LFPS信号を再生成する内蔵発振器と、この再生成したLFPS信号を出力するための第2出力ドライバと、を備える必要がある。このように、2つの出力ドライバを並列的に設ける必要があることから、出力端の負荷容量は大きくなり、高速信号を出力することは困難である。
【0015】
このような問題を解消することを意図して、レーザドライバおよびTIAとして、リミットアンプ型のものを用いるのではなく、リニアアンプ型のものを用いることが考えられる。リニアアンプは、入力信号レベルと出力信号レベルとの間の関係が略線形である。したがって、リニアアンプ型のレーザドライバおよびTIAを用いれば、主信号、LFPS信号およびEIの何れであっても、送信側では電気信号の波形そのままの光信号の波形とすることができ、また、受信側では光信号の波形そのままの電気信号の波形とすることができる。したがって、特許文献1に開示された発明において必要であった内蔵発振器および第2出力ドライバが不要となり、1つの出力ドライバを設けるだけでよい。その結果、特許文献1に開示された発明が有していた上記問題は解消される。
【0016】
しかし、リニアアンプ型のレーザドライバおよびTIAを用いる場合には、次のような別の問題が生じる。消費電力低減が可能なステート(例えば図2に示されたUSB3.2規格の状態遷移図中のRxDetect状態やU3状態)であっても消費電力の低減ができない(または、消費電力の低減が不十分となる)事態が生じる。消費電力低減が可能なステートでは基本的にはEI状態である。このとき、レーザドライバは中間的な大きさの電流をダイオードレーザに供給し続け、フォトダイオードは中間的な大きさの電流を出力し続ける。その結果、消費電力低減が可能なステートであるにも拘わらず、消費電力の低減ができない。
【0017】
リニアアンプ型のレーザドライバおよびTIAを用いる場合であっても、EI状態であることを検知してパワーダウンすれば、消費電力の低減が可能である。しかし、EI状態期間に挟まれたLFPS信号送信期間の長さが短くなって、通信の確立が失敗する場合がある。すなわち、EI状態期間からLFPS信号送信期間への遷移は、長時間を要するだけでなく、所要時間のバラツキが大きい。一方で、LFPS信号送信期間からEI状態期間への遷移は、短時間で可能である。したがって、EI状態であることを検知するたびにパワーダウンすると、LFPS信号送信期間の長さが短くなって、通信の確立が失敗する場合がある。
【0018】
本発明は、上記問題点を解消する為になされたものであり、第1端側と第2端側との間で通信を行うアクティブ光ケーブル(AOC)において第1端側または第2端側に設けられ高速通信および消費電力低減が可能な通信装置を提供することを目的とする。また、本発明は、このような通信装置を備える端末装置およびアクティブ光ケーブル(AOC)を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の通信装置は、第1端側および第2端側それぞれに設けられたレーザダイオードおよびフォトダイオードを用いて第1端側と第2端側との間で通信を行うアクティブ光ケーブルにおいて第1端側または第2端側に設けられる通信装置である。
【0020】
本発明の通信装置は、(1) 相手方通信装置の側へ送信すべき信号を差動信号として入力する差動入力端を終端し抵抗値が可変である差動入力終端抵抗器と、(2) 相手方通信装置の側へ送信すべき信号に基づいて電流信号をレーザダイオードに供給してレーザダイオードから光信号を出力させる線形レーザドライバと、(3) 差動入力端への入力信号がエレクトリカルアイドルであるか否かを検出する送信信号検出部と、(4) 相手方通信装置の側から到達した光信号を受光したフォトダイオードから出力された電流信号を入力し、この電流信号を電圧信号に変換して該電圧信号を出力する線形トランスインピーダンス増幅器と、(5) 線形トランスインピーダンス増幅器から出力された電圧信号を増幅して出力する線形可変利得増幅器と、(6) 線形可変利得増幅器から出力された電圧信号を出力先デバイスへ出力するとともに、出力先デバイスの入力終端抵抗の検出が可能な線形出力ドライバと、(7) フォトダイオードから出力された電流信号、または、線形トランスインピーダンス増幅器から出力された後の電圧信号を監視して、これらの電流信号または電圧信号のパルス数を検出するパルス数検出部と、(8) フォトダイオードから出力された電流信号、または、線形トランスインピーダンス増幅器から出力された後の電圧信号を監視して、これらの電流信号または電圧信号がエレクトリカルアイドルであるか否かを検出する受信信号検出部と、(9) 送信信号検出部によるエレクトリカルアイドル検出結果、線形出力ドライバによる出力先デバイス入力終端抵抗検出結果、パルス数検出部によるパルス数検出結果および受信信号検出部によるエレクトリカルアイドル検出結果に基づいて、信号送信可能なアクティブ状態と消費電力低減可能なスリープ状態との間の遷移を制御するとともに、差動入力終端抵抗器、線形レーザドライバ、線形トランスインピーダンス増幅器、線形可変利得増幅器および線形出力ドライバそれぞれの動作を制御する制御部と、を備える。
【0021】
制御部は、(a) 送信信号検出部により入力信号がエレクトリカルアイドルでないことが検出されたとき、または、パルス数検出部による検出されたパルス数がスリープ状態からアクティブ状態への遷移を表すものであるとき、スリープ状態からアクティブ状態への遷移を決定し、(b) 送信信号検出部により入力信号がエレクトリカルアイドルであることが検出されたこと、または、受信信号検出部により電流信号または電圧信号がエレクトリカルアイドルであることが検出されたことに基づいて、アクティブ状態からスリープ状態への遷移を決定し、(c) 線形出力ドライバによる出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果、および、アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、線形レーザドライバによるレーザダイオードへの電流信号の供給を制御し、(d) パルス数検出部によるパルス数検出結果に基づいて、差動入力終端抵抗器の抵抗値を制御し、(e) アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、線形トランスインピーダンス増幅器、線形可変利得増幅器および線形出力ドライバそれぞれの動作を制御する。
【0022】
本発明の通信装置は、線形可変利得増幅器から出力された後の電圧信号の振幅を検出する振幅検出部を更に備え、制御部は振幅検出部による振幅検出結果に基づいて線形可変利得増幅器の利得を制御するのが好適である。
【0023】
本発明の通信装置において、線形レーザドライバは、制御部からの制御信号に基づいて電流信号をレーザダイオードに供給する低速ドライバと、差動入力端への入力信号に基づいて電流信号をレーザダイオードに供給する高速ドライバと、を含むのが好適であり、このとき、制御部は、線形出力ドライバによる出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果、および、アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、低速ドライバによるレーザダイオードへの電流信号の供給を制御し、アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、高速ドライバによるレーザダイオードへの電流信号の供給を制御するのが好適である。
【0024】
本発明の通信装置において、制御部は、線形出力ドライバによる出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果が高インピーダンスであった場合、線形出力ドライバによる出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果が低インピーダンスであった場合、および、スリープ状態からアクティブ状態へ遷移する場合とで、線形レーザドライバからレーザダイオードへ供給する電流信号のパルス数を異ならせるのが好適である。
【0025】
本発明の通信装置において、制御部は、送信信号検出部により一定期間に亘ってエレクトリカルアイドルであることが検出されたとき、または、受信信号検出部により一定期間に亘って電流信号または電圧信号がエレクトリカルアイドルであることが検出されたとき、アクティブ状態からスリープ状態への遷移を決定するのが好適である。このとき、一定期間の長さは240ms以上であるのが好適である。
【0026】
本発明の端末装置は、上記の本発明の通信装置と、通信装置の線形レーザドライバから供給される電流信号を入力して光信号を相手方通信装置の側へ出力するレーザダイオードと、相手方通信装置の側から到達した光信号を受光して電流信号を通信装置の線形トランスインピーダンス増幅器へ出力するフォトダイオードと、を備える。
【0027】
本発明のアクティブ光ケーブルは、上記の本発明の端末装置である第1端末装置および第2端末装置と、第1端末装置のレーザダイオードから出力された光信号を第2端末装置のフォトダイオードへ導光する第1光ファイバと、第2端末装置のレーザダイオードから出力された光信号を第1端末装置のフォトダイオードへ導光する第2光ファイバと、を備える。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、第1端側と第2端側との間で通信を行うアクティブ光ケーブル(AOC)において高速通信および消費電力低減が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1図1は、USB4規格準拠の通信ケーブルにより2つの機器が接続された構成を示す図である。
図2図2は、USB3.2規格の状態遷移図である。
図3図3は、アクティブ光ケーブル(AOC)1の構成を示す図である。
図4図4は、通信装置111および通信装置121の構成を示す図である。
図5図5は、アクティブ(Active)状態およびスリープ(Sleep)状態の間の遷移を示す状態遷移図である。
図6図6は、図2に示されたUSB3.2規格の状態遷移図中のPolling状態の状態遷移図である。
図7図7は、図6に示されたPolling状態における2つのリンクパートナの間の信号送受を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。本発明は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0031】
図3は、アクティブ光ケーブル(AOC)1の構成を示す図である。AOC1は、一方のリンクパートナ140のレーンアダプタ141と他方のリンクパートナ150のレーンアダプタ151との間で通信を行うものである。レーンアダプタ141およびレーンアダプタ151はUSB3.2規格またはUSB4規格に準拠していてもよい。AOC1は、第1端側および第2端側それぞれに設けられたレーザダイオードおよびフォトダイオードを用いて第1端側と第2端側との間で通信を行う。
【0032】
AOC1の第1端側にある端末装置110は、通信装置111、レーザダイオード112、フォトダイオード113およびコネクタ114を備える。コネクタ114はレーンアダプタ141に接続される。AOC1の第2端側にある端末装置120は、通信装置121、レーザダイオード122、フォトダイオード123およびコネクタ124を備える。コネクタ124はレーンアダプタ151に接続される。レーザダイオード112とフォトダイオード123との間に、光信号を伝送する光ファイバ131が設けられている。レーザダイオード122とフォトダイオード113との間に、光信号を伝送する光ファイバ132が設けられている。
【0033】
図4は、通信装置111および通信装置121の構成を示す図である。通信装置111は、制御部10、差動入力終端抵抗器11、線形レーザドライバ12、送信信号検出部13、線形トランスインピーダンス増幅器(線形TIA)14、線形可変利得増幅器(線形VGA)15、線形出力ドライバ16、パルス数検出部17、受信信号検出部18および振幅検出部19を備える。通信装置121は、制御部20、差動入力終端抵抗器21、線形レーザドライバ22、送信信号検出部23、線形トランスインピーダンス増幅器(線形TIA)24、線形可変利得増幅器(線形VGA)25、線形出力ドライバ26、パルス数検出部27、受信信号検出部28および振幅検出部29を備える。通信装置111と通信装置121とは互いに同様の構成を有し、同名の構成要素は同様の機能を有する。以下では通信装置111について主に説明する。
【0034】
差動入力終端抵抗器11は、相手方の通信装置121の側へ送信すべき信号を差動信号としてレーンアダプタ141から入力する差動入力端を終端するものである。差動入力終端抵抗器11の抵抗値は、可変であり、制御部10から与えられる制御信号により設定される。
【0035】
線形レーザドライバ12は、相手方の通信装置121の側へ送信すべき信号に基づいて電流信号をレーザダイオード112に供給して、このレーザダイオード112から光信号を出力させる。線形レーザドライバ12はリニアアンプ型のものであり、入力される電圧信号レベルと出力される電流信号レベルとの間の関係は略線形である。線形レーザドライバ12の動作は、制御部10から与えられる制御信号により制御される。線形レーザドライバ12は、レーンアダプタ141から入力された信号に基づいて電流信号をレーザダイオード112に供給する他、制御部10から与えられる制御信号に基づいて電流信号をレーザダイオード112に供給する場合がある。
【0036】
送信信号検出部13は、差動入力端への入力信号を監視し、この入力信号がEIであるか否かを検出して、その検出結果を表すTxSD信号を制御部10へ送る。送信信号検出部13は、線形レーザドライバ12の内部の信号を監視してもよい。
【0037】
線形TIA14は、相手方の通信装置121の側から到達した光信号を受光したフォトダイオード113から出力された電流信号を入力し、この電流信号を電圧信号に変換して該電圧信号を線形VGA15へ出力する。線形TIA14はリニアアンプ型のものであり、入力される電流信号レベルと出力される電圧信号レベルとの間の関係は略線形である。線形TIA14の動作は、制御部10から与えられる制御信号により制御される。
【0038】
線形VGA15は、線形TIA14から出力された電圧信号を増幅して、その増幅後の電圧信号を線形出力ドライバ16へ出力する。線形VGA15の利得は、可変であり、制御部10から与えられる制御信号により設定される。線形VGA15はリニアアンプ型のものであり、入力される電圧信号レベルと出力される電圧信号レベルとの間の関係は略線形である。線形VGA15の動作は、制御部10から与えられる制御信号により制御される。
【0039】
線形出力ドライバ16は、線形VGA15から出力された電圧信号を出力先デバイス(レーンアダプタ141)へ出力する。線形出力ドライバ16は、入力された電圧信号を一定利得で増幅して、その増幅後の電圧信号を出力してもよい。線形出力ドライバ16はリニアアンプ型のものであり、利得が一定であれば、入力される電圧信号レベルと出力される電圧信号レベルとの間の関係は略線形である。線形出力ドライバ16の動作は、制御部10から与えられる制御信号により制御される。
【0040】
また、線形出力ドライバ16は、出力先デバイス(レーンアダプタ141)の入力終端抵抗の検出が可能であり、その検出結果を表すRxDet信号を制御部10へ送る。出力先デバイスの入力終端抵抗の検出は、例えば、パルス信号を出力先デバイスへ出力したときの電位変化の応答速度を検出することで可能である。出力先デバイスの入力終端がオフであるとき、応答は早い。出力先デバイスの入力終端がオンであるとき、応答は遅い。線形出力ドライバ16による出力先デバイスの入力終端抵抗の検出は、線形出力ドライバ16がパワーダウン状態であっても可能である。
【0041】
パルス数検出部17は、フォトダイオード113から出力された電流信号、または、線形TIA14から出力された後の電圧信号を監視して、これらの電流信号または電圧信号のパルス数を検出し、その検出結果を表すPN信号を制御部10へ送る。パルス数検出部17は、フォトダイオード113から出力された電流信号、線形TIA14から出力された電圧信号、線形VGA15から出力された電圧信号、および、線形出力ドライバ16から出力された電圧信号のうち、何れを監視してもよい。図に示されるように、パルス数検出部17は、フォトダイオード113から出力された電流信号を監視するのが好適である。フォトダイオード113から出力された電流信号をパルス数検出部17が監視することで、線形TIA14以降の全ての回路をパワーダウンすることができる。
【0042】
受信信号検出部18は、フォトダイオード113から出力された電流信号、または、線形TIA14から出力された後の電圧信号を監視して、これらの電流信号または電圧信号がEIであるか否かを検出し、その検出結果を表すRxSD信号を制御部10へ送る。受信信号検出部18は、フォトダイオード113から出力された電流信号、線形TIA14から出力された電圧信号、線形VGA15から出力された電圧信号、および、線形出力ドライバ16から出力された電圧信号のうち、何れを監視してもよい。図に示されるように、受信信号検出部18は、線形VGA15より前段に設けられるのが好適である。受信信号検出部18は、線形VGA15より前段の電圧信号または電流信号を監視することで、線形VGA15の利得によらずEIであるか否かを検出することができる。
【0043】
振幅検出部19は、線形VGA15から出力された後の電圧信号の振幅を検出し、その検出結果を表すPK信号を制御部10へ送る。振幅検出部19は、線形出力ドライバ16から出力された電圧信号を監視してもよいが、この場合には、出力負荷容量が増加し、リターンロスが悪化する点で、好ましくない。図に示されるように、振幅検出部19は、線形VGA15から出力された電圧信号を監視するのが好適である。また、振幅検出部19は、或る一定期間に亘る電圧信号の振幅の平均値を検出するが好適である。
【0044】
制御部10は、送信信号検出部13から出力されたEI検出結果を表すTxSD信号、線形出力ドライバ16から出力された出力先デバイス入力終端抵抗検出結果を表すRxDet信号、パルス数検出部17から出力されたパルス数検出結果を表すPN信号、受信信号検出部18から出力されたEI検出結果を表すRxSD信号、および、振幅検出部19から出力された振幅検出結果を表すPK信号を入力する。制御部10は、これらの入力したTxSD信号、RxDet信号、PN信号、RxSD信号およびPK信号に基づいて、信号送信可能なアクティブ状態と消費電力低減可能なスリープ状態との間の遷移を制御する。
【0045】
また、制御部10は、これらの入力した信号に基づいて、差動入力終端抵抗器11の抵抗値を設定するためのTerm信号、線形レーザドライバ12の動作を制御するためのTxEN信号およびLS信号、線形TIA14,線形VGA15および線形出力ドライバ16の動作を制御するためのRxEN信号、ならびに、線形VGA15の利得を制御するためのGCTL信号を出力する。
【0046】
図5は、アクティブ(Active)状態およびスリープ(Sleep)状態の間の遷移を示す状態遷移図である。アクティブ状態は信号送信が可能な状態である。スリープ状態は消費電力低減が可能な状態である。スリープ状態は、アンプラグ(Unplug)状態およびプラグ(Plug)状態を含む。
【0047】
線形出力ドライバ16から出力されたRxDet信号が表す出力先デバイス入力終端抵抗検出結果に基づいて、アンプラグ状態とプラグ状態との間の遷移が行われる。すなわち、出力先デバイスが接続されていればプラグ状態へ遷移し、出力先デバイスが接続されていなければアンプラグ状態へ遷移する。また、送信信号検出部13から出力されたTxSD信号が表すEI検出結果、パルス数検出部17から出力されたPN信号が表すパルス数検出結果、および、受信信号検出部18から出力されたRxSD信号が表すEI検出結果に基づいて、プラグ状態とアクティブ状態との間の遷移が行われる。
【0048】
図5に示される状態遷移図中の各状態と、図2に示されたUSB3.2規格の状態遷移図中の各状態との間の対応は、次のとおりである。アンプラグ状態は、図2に示されたUSB3.2規格の状態遷移図中のSS.Disabled、Rx.Detect(終端オフ)の各状態を含む。プラグ状態は、図2に示されたUSB3.2規格の状態遷移図中のRx Detect(終端オン)、U2、U3、SS.Inactiveの各状態を含む。アクティブ状態は、図2に示されたUSB3.2規格の状態遷移図中のPolling、U0、U1、Recoveryの各状態を含む。
【0049】
制御部10は、TxSD信号またはPN信号に基づいて、スリープ状態からアクティブ状態への遷移を決定する。すなわち、制御部10は、送信信号検出部13により入力信号がEIでないことが検出されたとき、または、パルス数検出部17による検出されたパルス数がスリープ状態からアクティブ状態への遷移を表すものであるとき、スリープ状態からアクティブ状態への遷移を決定する。
【0050】
制御部10は、TxSD信号またはRxSD信号に基づいて、アクティブ状態からスリープ状態への遷移を決定する。すなわち、制御部10は、送信信号検出部13により入力信号がEIであることが検出されたこと、または、受信信号検出部18により電流信号または電圧信号がEIであることが検出されたことに基づいて、アクティブ状態からスリープ状態への遷移を決定する。
【0051】
好適には、制御部10は、送信信号検出部13により一定期間に亘って入力信号がEIであることが検出されたとき、または、受信信号検出部18により一定期間に亘って電流信号または電圧信号がEIであることが検出されたとき、アクティブ状態からスリープ状態への遷移を決定する。ここでいう一定期間の長さは240ms以上であるのが好適である。
【0052】
制御部10は、RxDet信号ならびに状態(アクティブ状態およびスリープ状態の何れであるか)に基づいて、線形レーザドライバ12へ与えるTxEN信号およびLS信号により、線形レーザドライバ12によるレーザダイオード112への電流信号の供給を制御する。すなわち、制御部10は、線形出力ドライバ16による出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果、および、アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、線形レーザドライバ12によるレーザダイオード112への電流信号の供給を制御する。
【0053】
具体的には、制御部10は、線形出力ドライバ16へ与えるLS信号により、線形出力ドライバ16による出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果が高インピーダンスであった場合、線形出力ドライバ16による出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果が低インピーダンスであった場合、および、スリープ状態からアクティブ状態へ遷移する場合とで、線形レーザドライバ12からレーザダイオード112へ供給する電流信号のパルス数を異ならせる。また、制御部10は、線形出力ドライバ16へ与えるTxEN信号により、差動入力端からの電気信号の入力の有効/非有効を切り換えて、LS信号によりパルス信号を出力している期間は差動入力端からの電気信号の入力を非有効とする。また、制御部10は、スリープ状態であるときに、線形レーザドライバ12からレーザダイオード112への電流信号供給を停止させる。
【0054】
LS信号が指示するパルス数は、論理レベルLが或る期間に亘って続いた後に論理レベルHに遷移したタイミングを起点として一定期間の間に一定パルス幅かつ一定ピッチで繰り返されるパルスの数である。パルス数は1であってもよく、この場合は、論理レベルLが或る期間に亘って続いた後に論理レベルHに遷移したタイミングを起点として一定期間の間に一定パルス幅のパルスが1つのみ存在することを意味する。また、パルス数は0であってもよく、この場合は、論理レベルLが所定時間以上に亘って続くことを意味する。パルス数検出部17は、これらの事項に基づいて、パルス数を検出する。
【0055】
制御部10は、PN信号に基づいて、差動入力終端抵抗器11へ与えるTerm信号により、差動入力終端抵抗器11の抵抗値を制御する。すなわち、制御部10は、パルス数検出部17によるパルス数検出結果に基づいて、相手方の通信装置121の線形出力ドライバ26により検出された出力先デバイス(レーンアダプタ151)の入力終端抵抗の情報を取得し、この情報に基づいて差動入力終端抵抗器11の抵抗値を制御する。
【0056】
具体的には、制御部10は、相手方の通信装置121における出力先デバイス(レーンアダプタ151)の入力終端抵抗が高インピーダンスであるときには差動入力終端抵抗器11を高インピーダンスとし、相手方の通信装置121における出力先デバイス(レーンアダプタ151)の入力終端抵抗が低インピーダンスであるときには差動入力終端抵抗器11を低インピーダンスとする。レーンアダプタ141は、差動入力終端抵抗器11の抵抗値を検知することにより、相手方のレーンアダプタ151の入力終端抵抗のオン/オフを検知することができる。
【0057】
このように、相手方の通信装置121の線形出力ドライバ26による出力先デバイス入力終端抵抗出結果は、相手方の通信装置121の線形レーザドライバ22により駆動されたレーザダイオード122から光信号のパルスとして送出され、その光信号がフォトダイオード113により受光される。そして、フォトダイオード113から出力される電流信号を入力したパルス数検出部17によるパルス数検出結果に基づいて、差動入力終端抵抗器11のインピーダンスの大きさは、相手方の通信装置121における出力先デバイス(レーンアダプタ151)の入力終端抵抗のインピーダンスに応じて設定される。このような機能はRxDetect機能と呼ばれる。また、相手方の通信装置121の線形出力ドライバ26による出力先デバイス入力終端抵抗出結果の光信号による通信は、RxDetect通信と呼ばれる。
【0058】
制御部10は、アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、RxEN信号を出力することにより、線形TIA14、線形VGA15および線形出力ドライバ16それぞれの動作を制御する。具体的には、制御部10は、スリープ状態であるとき、線形TIA14、線形VGA15および線形出力ドライバ16へ供給される電力を低減または停止させて、消費電力を低減させる。
【0059】
制御部10は、PK信号に基づいて、線形VGA15へ与えるGCTL信号により、線形VGA15の利得を制御する。具体的には、制御部10は、振幅検出部19による振幅検出結果に基づいて、線形VGA15から出力される電圧信号の振幅が目標値または目標範囲内になるように、線形VGA15の利得を制御する。
【0060】
線形レーザドライバ12は、制御部10からのLS信号に基づいて電流信号をレーザダイオード112に供給する低速ドライバと、差動入力端に入力された信号に基づいて電流信号をレーザダイオード112に供給する高速ドライバとを含み、これらの低速ドライバと高速ドライバとが並列的に設けられた構成であってもよい。この場合、制御部10は、線形出力ドライバ16による出力先デバイス入力終端抵抗の検出結果、および、アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、低速ドライバによるレーザダイオード112への電流信号の供給を制御する。また、制御部10は、アクティブ状態およびスリープ状態の何れの状態であるかに基づいて、高速ドライバによるレーザダイオード112への電流信号の供給を制御する。高速ドライバはリニアアンプ型であって、低速ドライバはリミットアンプ型であってもよい。
【0061】
本実施形態では、RxDetect通信の際には、所定のパルス情報を含む光信号を送信する。スリープ状態であるときにRxDetect通信が行われる。RxDetect通信により、相手方の通信装置121における出力先デバイス(レーンアダプタ151)の入力終端がオンであるとき、アンプラグ状態からプラグ状態へ遷移する。相手方の通信装置121における出力先デバイス(レーンアダプタ151)の入力終端がオフであるとき、プラグ状態からアンプラグ状態へ遷移する。
【0062】
アンプラグ状態およびプラグ状態を含むスリープ状態では、制御部10から線形レーザドライバ12に与えられるTxEN信号により、差動入力端に入力された信号の線形レーザドライバ12への入力は非有効とされる。また、制御部10から線形レーザドライバ12に与えられるLS信号により、線形レーザドライバ12からレーザダイオード112に供給される電流を略0mAとすることができる。一定周期で行われる線形出力ドライバ16による出力先デバイス入力終端抵抗検出結果(Rx Detect結果)に応じて、LS信号に基づいてRxDetect通信が実施される。
【0063】
スリープ状態では、制御部10から出力されるRxEN信号により、線形TIA14、線形VGA15および線形出力ドライバ16をパワーダウンすることができる。このとき、線形出力ドライバ16は、EI電位を生成し出力することができる。線形出力ドライバ16は、パワーダウン状態であっても、EI電位生成が可能であり、RxDetectも可能である。パルス数検出部17はRxDetect通信により送られて来たパルスの数を検出し、このパルス数検出結果に基づいて制御部10は差動入力終端抵抗器11の抵抗値を設定することができる。
【0064】
通常通信(主信号またはLFPS信号の通信)とRxDetect通信との切り替えは、パルス情報を含む光信号によって行われる。スリープ状態において、送信信号検出部13が信号入力を検知したとき、または、パルス数検出部17によるパルス数検出結果がアクティブ状態への遷移を表すものであるとき、スリープ状態からアクティブ状態へ遷移する。
【0065】
スリープ状態からアクティブ状態へ遷移すると、制御部10から線形レーザドライバ12に与えられるTxEN信号により、線形レーザドライバ12への信号入力が有効化される。制御部10から出力されるRxEN信号により、線形TIA14、線形VGA15および線形出力ドライバ16が起動される。また、制御部10から線形VGA15に与えられるGCTL信号により、線形VGA15の利得が制御される。なお、線形出力ドライバ16の起動は、線形VGA15の利得制御の完了前であってもよいし完了後であってもよい。
【0066】
消費電力低減が可能なステート(例えば図2に示されたUSB3.2規格の状態遷移図中のRxDetect状態やU3状態)に戻るまでは、EI情報は、リニア通信により中間レベルでの送信が可能である。受信信号検出部18がEIを検知したら、制御部10は線形VGA15の利得の制御を止める。受信信号検出部18によるEI検知または送信信号検出部13によるEI検知の後、暫くのあいだ信号が来なければ、アクティブ状態からスリープ状態へ遷移する。受信信号検出部18による信号検知または送信信号検出部13による信号検知のとき、アクティブ状態に留まる。
【0067】
本実施形態によれば次のような効果が得られる。通信装置111,121等を備えるAOC1は、RxDetect機能が可能なものであり、USB3.2規格およびUSB4規格の何れに対応することができる。ただし、本発明は、USB3.2規格およびUSB4規格の対応に限られるものではない。
【0068】
特許文献1に開示された発明では並列的に設けられた2つの出力ドライバが必要であるのに対し、本実施形態では出力ドライバとして1つの線形出力ドライバ16が設けられるだけでよい。したがって、本実施形態では、出力端の負荷容量の増加が抑制され、高速信号を出力することが容易であり、USB4のGen3における主信号のデータレート(1レーン当たり)20Gbpsにも対応が可能である。
【0069】
本実施形態では、スリープ状態であるとき、線形レーザドライバ12は、基本的には入力信号について非有効の状態であって出力電流は0mAであり、RxDetect通信時のみ電流信号を出力する。また、スリープ状態であるとき、線形TIA14、線形VGA15および線形出力ドライバ16は、パワーダウンの状態であり、可能な限り最小の電力消費状態に維持され得る。したがって、本実施形態では、図2に示されたUSB3.2規格の状態遷移図中のRxDetect状態やU3状態において、包皮電力の低減が可能である。パルス信号によりRxDetect情報の送信をしても、その度に信号パスを起動する必要はなく、低消費電力を維持することができる。
【0070】
図2に示されたUSB3.2規格の状態遷移図に示されるように、パワーオン後に先ずRx.Detect状態となり、このRx.Detect状態において終端オンが検知された後にPolling状態に遷移し、このPolling状態における手続が成功した後にアクティブ状態であるU0状態に遷移する。Polling状態遷移後のLFPS信号送信期間のうち初めの一部期間が喪失しても問題にはならない。このことについて以下に説明する。
【0071】
図6は、図2に示されたUSB3.2規格の状態遷移図中のPolling状態の状態遷移図である。図7は、図6に示されたPolling状態における2つのリンクパートナの間の信号送受信を説明する図である。Rx.Detect状態からPolling状態に遷移すると、最初にPolling.LFPS状態となり、次にPolling.LFPSPlus状態となる。Rx.Detect状態からPolling状態に遷移した後の360msの期間のうちに、Polling.LFPS状態,Polling.LFPSPlus状態において2つのリンクパートナが相互にSCD1.LFPS信号,SCD2.LFPS信号を送受信することに成功して、Polling状態を向けることが、U0状態に正常に遷移するための条件である。
【0072】
一方、本実施形態の通信装置111内の各構成要素は、30μs以内にスリープ状態からアクティブ状態に遷移することができる。したがって、本実施形態では、Polling状態遷移後のLFPS信号送信期間のうち初めの一部期間が喪失しても、アクティブ状態へ正常に遷移することができる。なお、仮にEI状態になる度にパワーダウンした場合には、Polling状態遷移後のLFPS信号送信期間が大きく喪失することになり、SCD1.LFPS信号,SCD2.LFPS信号の送受信が成功しない。
【0073】
図2に示されたUSB3.2規格の状態遷移図中のU1状態においてPing.LFPS信号を送信する際には、本実施形態の通信装置111はアクティブ状態でリニア動作するが、LFPS信号送信期間は保存されるので問題にはならない。このことについて以下に説明する。Ping.LFPS信号送信期間と次のPing.LFPS信号送信期間との間のEI状態の期間は最長で240msである。したがって、本実施形態において、無信号状態が240ms以上継続することを、アクティブ状態からスリープ状態へ遷移する際の条件としておけばよい。このようにすることにより、U1状態の期間はアクティブ状態に留まることができて、Ping.LFPS信号を正常に送信することができ、Ping.LFPS信号送信期間は保存される。なお、仮にEI状態になる度にパワーダウンした場合には、Ping.LFPS信号送信期間が最短で40nsであるので、スリープ状態からアクティブ状態への遷移が間に合わない場合がある。
【0074】
本実施形態では、線形TIA14の後段に線形VGA15を設ける構成とした。その理由について以下に説明する。仮にTIAの後段に線形VGAを設けないとすると、レーザダイオードおよびフォトダイオードの製造バラツキならびに実装時の光結合のバラツキにより、TIAの出力電流信号の振幅が大きくばらついて、USB規格の電気信号振幅の条件が満たされない場合がある。したがって、仮にTIAの後段に線形VGAを設けないとした場合にUSB規格の電気信号振幅の条件を満たそうとすると、出力電気信号の振幅が入力光信号の振幅に左右されないリミットアンプ型のTIAを採用する必要がある。しかし、リミットアンプ型のTIAを採用する場合には、前述したとおりの問題がある。そこで、本実施形態では、線形TIAを採用した上で、この線形TIAの後段に線形VGAを設け、この線形VGAの利得を制御することで、線形VGAの出力電気信号の振幅がUSB規格の電気信号振幅の条件を満たすようにする。
【0075】
本実施形態では、線形TIAを採用したことにより、EI期間中にオフセットキャンセルの実行が可能である。このことについて以下に説明する。リミットアンプ型のものは、論理レベルHおよび論理レベルLのみを出力するものであって、EI状態のときの中間レベルを出力することができないことから、EI状態のときには論理レベルH固定値または論理レベルL固定値を出力する他ない。TIAにおいてオフセットキャンセルを実行するためにはコモンレベルの情報が必要であるが、リミットアンプ型のものを採用した場合には、コモンレベル信号を送ることができないので、オフセットキャンセルを実行することができない。EI状態の期間にオフセットキャンセルの実行が不可能であると、LFPS信号送信の度にオフセットキャンセルを実行し直す必要がある。オフセットキャンセルが適切に行われないと、LFPS信号のデューティが不適切なものとなって、正常なLFPS信号の波形とならず、通信の確立が失敗する場合がある。これに対して、本実施形態では、リニアアンプ型のものを採用したことにより、LFPS信号送信期間だけでなくEI状態の期間においてもオフセットキャンセルの実行が可能であるので、常に正常なLFPS信号の波形とすることができる。
【0076】
これまでの実施形態の説明はUSB規格に基づくものであったが、本発明はUSB規格対応に限られない。
【符号の説明】
【0077】
1…アクティブ光ケーブル(AOC)、10…制御部、11…差動入力終端抵抗器、12…線形レーザドライバ、13…送信信号検出部、14…線形トランスインピーダンス増幅器(線形TIA)、15…線形可変利得増幅器(線形VGA)、16…線形出力ドライバ、17…パルス数検出部、18…受信信号検出部、19…振幅検出部、20…制御部、21…差動入力終端抵抗器、22…線形レーザドライバ、23…送信信号検出部、24…線形トランスインピーダンス増幅器(線形TIA)、25…線形可変利得増幅器(線形VGA)、26…線形出力ドライバ、27…パルス数検出部、28…受信信号検出部、29…振幅検出部、110…端末装置、111…通信装置、112…レーザダイオード、113…フォトダイオード、114…コネクタ、120…端末装置、121…通信装置、122…レーザダイオード、123…フォトダイオード、124…コネクタ、131,132…光ファイバ、140…リンクパートナ、141…レーンアダプタ、150…リンクパートナ、151…レーンアダプタ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7