(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】緩衝材及び包装
(51)【国際特許分類】
B65D 81/02 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B65D81/02
(21)【出願番号】P 2021036456
(22)【出願日】2021-03-08
【審査請求日】2022-06-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-24
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516066095
【氏名又は名称】株式会社リアライズカンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100154748
【氏名又は名称】菅沼 和弘
(72)【発明者】
【氏名】今福 洋介
【合議体】
【審判長】金丸 治之
【審判官】神山 茂樹
【審判官】稲葉 大紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-104523(JP,A)
【文献】特開平11-130148(JP,A)
【文献】特開平08-324643(JP,A)
【文献】特開2016-43934(JP,A)
【文献】特開平09-99979(JP,A)
【文献】特開2006-219183(JP,A)
【文献】特開2007-276806(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 81/00-81/17
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有し、物体を前記開口から収納可能な収納部と、
前記収納部に、前記開口を開閉可能に設けられた蓋と、
前記収納部の内部に前記物体と共に配置され、流体が逆止弁を通じて流入すると膨張して、前記流体が前記逆止弁を通じて流出すると収縮する可変体と、
を備え、
前記蓋が閉じられたことを第1条件として、当該第1条件が満たされると、前記流体が前記逆止弁を通じて前記可変体に流入して前記可変体が膨張して、膨張した
結果として断面コの字状になった前記可変体により前記物体
の上と下と一側面が包み込まれた状態になり、前記物体は前記収納部の内部で周囲から圧力が加えられた状態で支持され、前記蓋が開けられたことを第2条件として、当該第2条件が満たされると、前記流体が前記可変体から前記逆止弁を通じて流出して前記可変体が収縮して前記物体に対する当
該圧力が除かれる、
包装。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝材及び包装に関する。
【背景技術】
【0002】
物品の配送等を行う際には、物品をダンボール箱等の包材に入れ、隙間に発泡スチロールやエアパッキン等の緩衝材を詰めてガタツキを抑えた上で配送するのが一般的である。
特に、物品が例えばカメラのような精密機器等の場合は、物品よりも一回り大きな箱にその物品の形状にあったクッション性の高い緩衝材を挟んで保護した上で送るようにしている。
物品が例えばレンタル品等の場合、貸出と返却の2回の搬送を伴うが、貸出は店舗から搬出し、返却は一般ユーザから搬出する場合が多く、物品を返却する時点で貸出のときの梱包材(包材やその中身の緩衝材等)は、既に廃棄されていることがあり、梱包材を新たに調達した上で物品を収納して送り返すことになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このように、物品がレンタル品等の場合、貸出と返却の2回の搬送を伴うが、搬送の都度、梱包材を調達する必要がありコスト高になる。
また、発泡スチロールやエアパッキン等は、物品搬送後、使用済みとして廃棄されることが多く、環境面で良いものではない。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、物体を保護する緩衝材を繰り返し利用することができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一実施形態である緩衝材は、
第1条件を満たした場合、膨張して物体に所定圧力を加え、第2条件を満たした場合、収縮して前記物体に対する圧力を除く可変体、
を備える。
本発明の一実施形態である包装は、
開口を有し、前記物体を前記開口から収納可能な収納部と、
閉じたときに前記開口を塞ぐことが可能なように、前記収納部に開閉可能に設けられた蓋と、
前記収納部に配置された前記緩衝材と、
を備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、物体を保護する緩衝材を繰り返し利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の包装全体の構成を示す図である。
【
図2】
図1の包装に物体を収納した蓋閉め前の状態を示す断面図である。
【
図3】
図2の蓋閉め前の状態から蓋を閉めて緩衝材に空気が流入した状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、本発明の一実施形態の包装全体の構成を示す図である。
図2は、
図1の包装に物体を収納した蓋閉め前の状態を示す断面図である。
図3は、
図2の蓋閉め前の状態から蓋を閉めて緩衝材に空気が流入した状態を示す断面図である。なお、
図1は、収容部の内部構造を分かり易くするために蓋を開放した状態で緩衝材を膨張させた例を示しているが、通常は、収容部の蓋を閉めた状態で緩衝材を膨張させて使用する。
図1に示す包装1は、収納部20を備える。収納部20は、例えばプラスチック等の素材で形成された箱の形状の容器である。収納部20は、開口21を有している。収納部20は、例えばカメラA等の物体を開口21から収納可能である。
【0010】
収納部20には、蓋23が開閉可能に設けられている。蓋23は、閉じたときに開口21を塞ぐことが可能である。蓋23は、開いたときに開口21を解放する。
収納部20の内部には、袋状体10等の緩衝材が配置されている。
【0011】
袋状体10は、例えばストレッチフィルム等の素材で形成された袋状のものであり、開口から内部の空間に空気M等の流体を充填可能である。開口には逆止弁11が取り付けられており、一度袋状体10内に流入した空気Mは弁の働きにより漏れ出すことがない。
逆止弁11を解放する所定の操作をすることで、袋状体10内の空気Mを流出させることができる。所定の操作とは、例えば蓋23の解放に連動させることができる。人手で逆止弁11の弁を開く操作を行ってもよい。
袋状体10は、第1条件を満たした場合、膨張してカメラAに所定圧力を加え、第2条件を満たした場合、収縮してカメラAに対する所定圧力を除く。
【0012】
具体的には、袋状体10は、第1条件(具体例は
図2、
図3を参照して後述する)を満たした場合、逆止弁11を通じて空気Mが内部に流入し収納部20内で膨張して閉空間内でカメラAに所定圧力を加えてカメラAを支持する。
【0013】
この例では、袋状体10は、収納部20の底部から一側面、一部の蓋23の内面に配置されており、蓋23を閉じた状態で、断面コの字状になる。つまりカメラAを収納した状態で、カメラAは上と下と一側面が袋状体10により囲まれる。
収納部20にカメラAを収納した状態で袋状体10を膨張させると、袋状体10によってカメラAが包み込まれた状態(
図3参照)になる。
【0014】
図2に示すように、袋状体10を収納部20の内側の底面と内側面とその上の蓋23の内面に沿って固定し、収納部20の隅の部分の袋状体10に逆止弁11を設けることで、空気Mの流入及び流出口を一つにできるので、空気Mの流入及び流出口形成か所の破損リスクを少なくすることができる。なお、ここに示した形状以外にも、袋状体10を配置することはできる。袋状体10の配置形状を例えばカメラAの上下左右の四方を囲む形状(断面ロの字状)にしてもよい。この場合、物体を収納する方向が例えば側面からとなる。
【0015】
また、袋状体10は、第2条件を満たした場合、内部の空気が逆止弁11を通じて流出して収縮してカメラAに対する圧力を除く。
【0016】
第1条件は、例えば収納部20等の容器の蓋23が閉められた等の条件である。蓋23の開閉はプッシュスイッチや蓋23の接触センサ等により検知するものとする。
第2条件は、例えば収納部20等の容器の蓋23が開けられた等の条件である。蓋23の開閉は収納部20に設けられたセンサやスイッチ等で検知する。
センサやスイッチとしては、例えば閉められた蓋23によって押されるプッシュスイッチや蓋23との接触を検知する接触センサ等である。
【0017】
逆止弁11は、梱包の際に、外部のエアポンプ(図示せず)に収納部20の側面に設けた孔22を通じて接続される。
逆止弁11は、第1条件を満たした場合、袋状体10に例えば空気M等の流体を流入させる。また、逆止弁11は、第2条件を満たした場合、袋状体10から空気M等を流出させる。
【0018】
この実施形態の包装1では、
図2に示すように、収納部20の内部と一部の蓋23に体積(容量)を増減可能な袋状体10を配置する。具体的には、袋状体10を収納部20の内壁に接着等で固着する。
このとき、袋状体10には空気Mが入っていないため、萎んだ状態、つまり収納部20の底面や蓋23の内側の面に、ほぼ平らになった状態である。
この状態で、収納部20内の底部の袋状体10の上に、例えばレンタル品であるカメラA等を置く。
【0019】
そして、梱包する際に、蓋23を矢印Yの方向に閉じて、蓋23が開かないようにガムテープ等で固定すると、逆止弁11に接続されたエアポンプから空気Mが袋状体10に流入して袋状体10を膨張させる。なお、空気Mを入れる行為自体は人手で行ってもよい。
【0020】
この結果、
図3に示すように、膨張した袋状体10によりカメラAが包み込まれた状態になり、カメラAは、収納部20の内部で周囲から圧力が加えられた状態で支持される。
そして、カメラAを収納した包装1が配送業者等によってレンタル先に届けられる。
【0021】
レンタル先において、包装1を開梱する際に、蓋23を開けると、逆止弁11が解放されて袋状体10から空気が流出することで袋状体10を収縮させる。これにより、カメラに対する圧力が除かれるので、カメラAを安全に取り出すことができる。
カメラAを取り出した後の包装1は、配送業者がそのまま回収するか、レンタル運用では、カメラAを返却する際に、包装1にカメラAを収納して返却することが可能になる。
【0022】
このように実施形態の包装1によれば、今まで廃棄していた緩衝材を含む梱包材を繰り返し利用できるので、カメラA等の物体の輸送コストを低減することができる。また、緩衝材や包材等の梱包材の廃棄をなくすことで、自然環境の保護に貢献することができる。
【0023】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【0024】
また、本明細書において、システムの用語は、複数の装置や複数の手段等より構成される全体的な装置を意味するものである。
【0025】
上記実施形態では、収納部20について、例えばプラスチック素材の容器として説明したが、この他、例えばグラスファイバー等の軽量で強度を有する素材や従来の段ボールや木材、金属等を用いる容器であってもよく、ある程度の強度を有する素材で物体を収納可能に形成された収容部であれば足りる。
【0026】
上述実施形態では、収容部20は、箱の形状であったが、形状に関わらず、物体(例えばカメラA)の包装であれば足りる。
上記実施形態では、体積が変化する可変体の一例として、例えばストレッチフィルム等の素材の袋状体10を例示したが、これに限定されることなく、例えばゴム製の風船やビニール製の浮き輪等のように弾性と伸縮性と強度を備えた、容量の状態の変化に可逆性のある素材の可変体であれば足りる。可変体(袋状体10)は、収納対象の物体に突起があっても破れないように表面が補強コーティングされたものであってもよい。
また、可変体の配置や形状、数についても他の形状や数であってもよい。逆止弁11の数についても1つとは限らず複数設けてもよい。例えば収納部20内側の底面と天面の夫々に袋状体10を設け、夫々の袋状体10に夫々逆止弁11を設けて、2か所の逆止弁11から均等に空気を入れて物体を上下から挟み込むようにしてもよい。
また、収納部20内側の左右の夫々の側面に袋状体10を設けてもよく、収納部20が直方体であればその内側の6面全面に袋状体10を設けてもよい。
このように物体に対して緩衝材を均等に設けるほど、物体を支持したときの安定性を向上することができる。
【0027】
また、上記実施形態では、袋状体10に入れるものとして、例えば空気M等を例示したが、この他、水等の液体や、ガス等の気体、粉や砂等の粒体、ゼリー状やゲル状のもの等、第1条件が満たされた場合に袋状体10を膨張させ、かつ第2条件が満たされた場合には袋状体10を収縮させることが可能な可変体であれば足りる。また、可変体は、2以上の種類の液体を混合させて膨張し、さらに他の種類の液体を混合させて収縮するようなものであってもよい。
また、袋状体10自体が第1条件が満たされると自己膨張しかつ第2条件が満たされた場合には自己収縮する素材の可変体であってもよい。
可変体は、与えられる温度によって、自己膨張又は自己収縮するものであってもよく、さらに、与えられる電力によって、自己膨張又は自己収縮するものであってもよい。
【0028】
上記実施形態では、物体の一例として、例えばカメラAを例示して説明したが、これ以外に、例えば電子機器やガラス製品等であってもよく、物体であれば足りる。
【0029】
また、上記実施形態では、第1条件として、蓋23が閉められたこと等を条件としたが、この他、蓋23が閉められたことで収納部20の中が暗くなったことや、物体が収納されて梱包されたこと等を条件としてもよい。
逆に、第2条件として、蓋23が開けられたこと等を条件としたが、この他、蓋23が開けられて収納部20の中が明るくなったことや収納部20の開梱が始められたこと等を条件としてもよい。
【0030】
以上まとめると、本発明が適用される緩衝材及び包装は、次のような構成を取れば足り、各種各様な実施形態を取ることができる。
即ち、本発明が適用される緩衝材は、
第1条件(例えば
図1の収納部20の蓋23が閉められた等)を満たした場合、膨張して物体(例えばカメラA等)に所定圧力を加え、第2条件(例えば
図1の収納部20の蓋23が開けられた等)を満たした場合、収縮して前記物体(例えばカメラA等)に対する当該所定圧力を除く可変体(例えば
図1の袋状体10等)、
を備える。
【0031】
このように、第1条件(例えば容器(例えば
図1の収納部20等)の蓋23が閉められた等)を満たした場合、膨張して物体Aに所定圧力を加えて物体(例えばカメラA等)を支持し、第2条件(例えば
図1の収納部20の蓋23が開けられた等)を満たした場合、収縮して物体(例えばカメラA等)に対する圧力を除く機能を緩衝材に備えることにより、緩衝材を配置した包装1を繰り返し利用することが可能になり、物体(例えばカメラA等)の輸送コストを低減することができる。また、廃棄される梱包材が少なくなることで、環境面でも良い効果が得られる。
【0032】
本発明が適用される包装(例えば
図1の包装1等)は、
開口(例えば
図1の開口21等)を有し、前記物体(例えばカメラA等)を前記開口(例えば
図1の開口21等)から収納可能な収納部(例えば
図1の収納部20等)と、
前記収納部(例えば
図1の収納部20等)に、前記開口(例えば
図1の開口21等)開閉可能に設けられた蓋(例えば
図1の蓋23等)と、
を有し、
前記緩衝材が前記収納部(例えば
図1の収納部20等)の内部に配置されている。
このように収納部(例えば
図1の収納部20等)の内部に膨張及び収縮する緩衝材を配置し、収納部(例えば
図1の収納部20等)に収納した物体(例えばカメラA等)の形状に合わせて膨張させることで、今まで輸送先で廃棄していた緩衝材を繰り返し利用できるので、物体(例えばカメラA等)の輸送コストを低減することができる。
【0033】
前記第1条件が、前記蓋(例えば
図1の蓋23等)が閉められたことであり、
前記第1条件を満たした場合、前記可変体(例えば
図1の袋状体10等)に流体(例えば
図1の空気M等)を流入させる流体流入制御手段(例えば
図1の逆止弁11等)、
を備える。
このように第1条件を満たした場合、可変体(例えば
図1の袋状体10等)に流体(例えば
図1の空気M等)を流入させることで、包装内で可変体が膨らみ、物体(例えばカメラA等)に圧力を加えて押さえ付けるので、輸送の際のガタツキを防止すると共に輸送中に発生する振動や不意に発生する衝撃から物体(例えばカメラA等)を保護することができる。
【0034】
前記第2条件が、前記蓋(例えば
図1の蓋23等)が開けられたことであり、
前記第2条件を満たした場合、前記可変体(例えば
図1の袋状体10等)から流体(例えば
図1の空気M等)を流出させる流体流出制御手段(例えば
図1の逆止弁11等)、
を備える。
このように第2条件を満たした場合、可変体(例えば
図1の袋状体10等)に流体(例えば
図1の空気M等)を流出させることで、包装内で可変体(例えば
図1の袋状体10等)が収縮して物体(例えばカメラA等)に対する所定圧力を除く、つまり押さえ付けをなくすので、包装を輸送した後に開梱したときに包装から物体(例えばカメラA等)を取り出し易くなる。
【符号の説明】
【0035】
1・・・包装、10・・・袋状体、11・・・逆止弁、20・・・収納部、21・・・開口、22・・・孔、23・・・蓋、A・・・カメラ、M・・・空気