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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】掘取作業機
(51)【国際特許分類】
   A01D 13/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A01D13/00
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021135340
(22)【出願日】2021-08-23
(65)【公開番号】P2023030290
(43)【公開日】2023-03-08
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000171746
【氏名又は名称】株式会社ササキコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100086184
【弁理士】
【氏名又は名称】安原 正義
(74)【代理人】
【識別番号】100096389
【弁理士】
【氏名又は名称】金本 哲男
(74)【代理人】
【識別番号】100167634
【弁理士】
【氏名又は名称】扇田 尚紀
(72)【発明者】
【氏名】横浜 雅透
(72)【発明者】
【氏名】天間 修一
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-000078(JP,A)
【文献】特開2021-104066(JP,A)
【文献】特開2017-189116(JP,A)
【文献】特開2008-029230(JP,A)
【文献】特開2015-084767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 13/00-33/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動方向前方から後方に至るに従って上昇する傾斜面を有する掘取体と、
前記掘取体の後端部に設けた延長板と、
回転駆動を直線往復運動に変換させて前記延長板を、揺動させるモータと、を備え、
前記延長板は、前記モータに接続して回転可能であるとともに、前記モータの回転軸に対して偏心回転する偏心部を有した偏心軸とを有し、
前記延長板前記モータの回転軸と平行に設けた軸を中心とする第1の周方向に揺動するとともに、前記モータの回転軸と交差する方向に設けた軸を中心とする第2の周方向に揺動可能な構成である、
とを特徴とする堀取作業機。
【請求項2】
移動方向前方から後方に至るに従って上昇する傾斜面を有する掘取体と、
前記掘取体の後端部に設けた延長板と、
回転駆動を直線往復運動に変換させて前記延長板を、揺動させるモータと、を備え、
前記延長板は、前記モータに接続して回転可能であるとともに、前記モータの回転軸に対して偏心回転する偏心部を有した偏心軸と、
前記偏心軸によって揺動可能にされるとともに、前記延長板の一端部を連結する支持部材と、
前記延長板の下方に位置した第1部材と、
前記モータの回転軸と平行に設け、前記第1部材を、前記モータの回転軸と平行に設けた軸を中心とする第1の周方向に揺動可能にさせる第1支点軸と、
前記第1支点軸と交差する方向に設けるとともに前記延長板の他端部を前記支持部材に連結し、前記延長板を前記第1の周方向に揺動するとともに、前記第1支点軸と交差する方向に設けた軸を中心とする第2の周方向に揺動可能にさせる第2支点軸と、
を備えたことを特徴とする堀取作業機。
【請求項3】
前記支持部材と前記偏心軸との連結は、回り対偶及び球面対偶によっておこなわれる、
ことを特徴とする請求項2に記載の堀取作業機。
【請求項4】
前記支持部材は、前記支持部材と前記延長板の一端部と揺動可能に連結する第3支点軸と、
を備えたことを特徴とする請求項2又は3に記載の堀取作業機。
【請求項5】
延長板は、前記掘取体と略同一の幅を有した請求項1又は2又は3に記載の堀取作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は作業機に関する。詳細には、掘取作業機、更に詳細には長いも掘取り装置に係る。
【背景技術】
【0002】
トラクタの後部に連結した基枠の下部に掘り取り刃体を有する長いも掘取り装置において、掘り取り刃体が有する無端パワーベルトコンベアの後部に振動板を上下に揺動する振動板揺動機構を連設した長いも掘取り装置が、特許文献1によって開示されている。
この装置によれば、長いもの収穫に際し、作業者が長いもの周囲に付着した栽培土ブロックを払い退ける必要がなく、また、長いもを損傷させずにスムーズに抜き取ることができる、とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2008-29230号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の振動板揺動機構は、前方部に設けた進行方向に対する左右方向に延びた水平軸によって、後方側が上下に揺動する機構のため、土が効果的に払い退けることができるのは、揺動量が大きくなる振動板の後方側のみとなる。このため、長いもの周囲に付着した土が、満足に落とせないことがある。したがって、揺動する振動板で土を振り落とす量をさらに向上させ、作業者の負担を軽減させる余地がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、
移動方向前方から後方に至るに従って上昇する傾斜面を有する掘取体と、
前記掘取体の後端部に設けた延長板と、
回転駆動を直線往復運動に変換させて前記延長板を、揺動させるモータと、を備え、
前記延長板は、前記モータに接続して回転可能であるとともに、前記モータの回転軸に対して偏心回転する偏心部を有した偏心軸とを有し、
前記延長板前記モータの回転軸と平行に設けた軸を中心とする第1の周方向に揺動するとともに、前記モータの回転軸と交差する方向に設けた軸を中心とする第2の周方向に揺動可能な構成である、
とを特徴とする堀取作業機、
に係る。
【0006】
この発明は、
移動方向前方から後方に至るに従って上昇する傾斜面を有する掘取体と、
前記掘取体の後端部に設けた延長板と、
回転駆動を直線往復運動に変換させて前記延長板を、揺動させるモータと、を備え、
前記延長板は、前記モータに接続して回転可能であるとともに、前記モータの回転軸に対して偏心回転する偏心部を有した偏心軸と、
前記偏心軸によって揺動可能にされるとともに、前記延長板の一端部を連結する支持部材と、
前記延長板の下方に位置した第1部材と、
前記モータの回転軸と平行に設け、前記第1部材を、前記モータの回転軸と平行に設けた軸を中心とする第1の周方向に揺動可能にさせる第1支点軸と、
前記第1支点軸と交差する方向に設けるとともに前記延長板の他端部を前記支持部材に連結し、前記延長板を前記第1の周方向に揺動するとともに、前記第1支点軸と交差する方向に設けた軸を中心とする第2の周方向に揺動可能にさせる第2支点軸と、
を備えたことを特徴とする堀取作業機、
に係る。
【0007】
この発明は、更に、
前記支持部材と前記偏心軸との連結は、回り対偶及び球面対偶によっておこなわれる、
ことを特徴とする堀取作業機、
に係る。
【0008】
この発明は、更に、
前記支持部材は、前記支持部材と前記延長板の一端部と揺動可能に連結する第3支点軸と、
を備えたことを特徴とする堀取作業機、
に係る。
【0009】
この発明は、更に、
延長板は、前記掘取体と略同一の幅を有した堀取作業機、
に係る。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、上昇させた根菜の周囲に付着している土を効率良く崩し、根菜を容易に引き抜くことができる堀取作業機を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】この発明の実施例に係る掘取作業機の側面図である。
図2】この発明の実施例に係る掘取作業機の平面図である。
図3】この発明の実施例に係る掘取作業機の背面図である。
図4】この発明の実施例に係る掘取作業機の要部拡大側面断面図である。
図5】この発明の実施例に係る掘取作業機のベルトコンベアは図示省略した要部拡大底面図である。
図6】この発明の実施例に係る掘取作業機のモータ回転軸方向からみた要部拡大背面図である。
図7】この発明の実施例に係る掘取作業機の偏心部が背面から見て反時計回りに0度回転した時の延長板の揺動状態を示す要部拡大側面断面図である。
図8】この発明の実施例に係る掘取作業機の偏心部が背面から見て反時計回りに0度回転した時の延長板の揺動状態を示すモータ回転軸方向からみた要部拡大背面図である。
図9】この発明の実施例に係る掘取作業機の偏心部が背面から見て反時計回りに90度回転した時の延長板の揺動状態を示す要部拡大側面断面図である。
図10】この発明の実施例に係る掘取作業機の偏心部が背面から見て反時計回りに90度回転した時の延長板の揺動状態を示すモータ回転軸方向からみた要部拡大背面図である。
図11】この発明の実施例に係る掘取作業機の偏心部が背面から見て反時計回りに180度回転した時の延長板の揺動状態を示す要部拡大側面断面図である。
図12】この発明の実施例に係る掘取作業機の偏心部が背面から見て反時計回りに180度回転した時の延長板の揺動状態を示すモータ回転軸方向からみた要部拡大背面図である。
図13】この発明の実施例に係る掘取作業機の偏心部が背面から見て反時計回りに270度回転した時の延長板の揺動状態を示す要部拡大側面断面図である。
図14】この発明の実施例に係る掘取作業機の偏心部が背面から見て反時計回りに270度回転した時の延長板の揺動状態を示すモータ回転軸方向からみた要部拡大背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
この発明の実施例に係る掘取作業機について図面にしたがって説明する。
Aは、堀取作業機である。掘取作業機Aは、装着部Cを介して図1図中左側に位置するトラクタ(図示せず)後部に取り付けて、進行する。
【0013】
Dは、掘削体である。Eは、作物である。この実施例では作物Eは、根菜類特に長いもである。Fは、作物Eを育成する土である。
掘削体Dは装着部Cの下方へ向けて設ける。掘削体Dは作業状態において、土中の作物である長いも等の根菜類からなる作物Eの左右側方に、掘削チェーンを位置させる。掘削体Dの掘削チェーンを周回駆動させることによって、作物Eの左右の位置する土を掘削し、分断する。掘削体Dは、作物Eを土中から掘り起こす。Bは、掘取体である。掘取体Bの掘取作業機A進行側(図1図中左側)先端を、掘削体Dの下端に設置する。
掘取体Bは、上面に傾斜面B1を有する。傾斜面B1は、掘取作業機Aの移動方向前方から後方に至るに従って上昇する。B2は、ベルトコンベアである。ベルトコンベアB2は、掘取体Bの掘取作業機A前後方向に向かって上下面にわたって掛け渡し、掘取体Bを構成する。ベルトコンベアB2の上面は、傾斜面B1を形成する。掘取体Bは、進行方向である前方に向かって移動することによって、作物Eを傾斜面B1に沿って、この周囲の土の土と共に上昇方向へ搬送させる。実施例でのベルトコンベアB2は周回駆動が可能に構成していて、ベルトコンベアB2の上面である傾斜面B1が前方から後方に移動できるので、作物Eの搬送を容易にさせる。
【0014】
11は、延長板である。延長板11は、掘取体Bの後端部に設け、掘取体Bと略同一の幅を有する。同一の幅からなるため、根菜類等の被搬送物をそのまま搬送可能である。
延長板11(揺動板ともいう。)は、掘取体Bの傾斜面B1を、さらに掘取作業機Aの進行方向後方側に延長させるように配置する。この実施例では、延長板11は掘取体Bの傾斜面B1に対して、後端側が僅かに水平側に傾くように配置する。掘取体Bの前進に伴って傾斜面B1に沿いながら上昇した根菜が、延長板11上に位置すると、傾斜角度の変化によって、周囲の土と共に一時的に落下させることにより、根菜周囲に付着した大きな土塊を予め落とす。
延長板11は、偏心軸24と、支持部材12と、第1部材31と、第1支点軸41と、第2支点軸51と、を備える。
【0015】
21は、モータである。22は、モータ回転軸である。モータ21は、出力回転軸であるモータ回転軸22を進行方向後方に向けて取り付ける。モータ21は、延長板11を揺動駆動させるための動力源であり、回転駆動を偏心軸24によって直線往復運動に変換させて、延長板11を揺動させる。
23は、モータ基部である。モータ基部23は、掘取体Bを構成するベルトコンベアB2の後部に位置させ、掘取体Bを構成する左右のフレームB3間に掛け渡し、掘取体Bと一体的にモータ21を固定する。
この実施例では、モータ21は、油圧モータを使用しているが、油圧式に限らず、電気式モータ等を用いるなど、モータの形式に限定はない。
【0016】
24は、偏心軸である。偏心軸24は、円筒状からなり、モータ21のモータ回転軸22周囲に取り付ける。説明において、モータ回転軸22は、単に回転軸22と呼称することがある。
偏心軸24は、偏心部25を有する。偏心部25は、偏心軸24の他の部分よりも肉厚である。そのため、モータ回転軸22の回転にともない、偏心部25は、モータ21の回転軸22に直交する方向に変位し偏心回転する。偏心部25の偏心回転によって、延長板11に揺動を発生させる。偏心軸24の偏心部25は、モータ21の回転軸22に対して公転運動である偏心回転を行う。
【0017】
モータ基部23には、第1支点軸41を設ける。第1支点軸41は、モータ回転軸22と平行にモータ21上部に配置する。31は、第1部材である。第1部材31は、延長板11の下方、且つ、進行方向の幅に対する中央部に位置する。第1支点軸41には、第1部材31の進行方向の幅に対する中央部を揺動自在に支持する。第1部材31の進行方向の幅に対する左右端部は、上下に揺動可能である。
第1支点軸41は、モータ21の回転軸22と平行に設けた第1支点軸41を回動中心とする第1の周方向に、第1部材31を揺動可能にさせる。
【0018】
第2支点軸51は、第1部材31の掘取作業機の進行方向前端側に、第1支点軸41と交差する方向、この実施例では、第1支点軸41と直角に、進行方向左右に向けて設ける。同時に、第2支点軸51は、延長板11の他端部を支持部材12に連結する。第2支点軸51には、延長板11の下方掘取作業機の進行方向前端側を連結する。
そのため、第2支点軸51は、延長板11を第1の周方向に揺動するとともに、第1支点軸41と交差する方向に設けた第2支点軸51を回動中心とする第2の周方向に揺動可能にさせる。
【0019】
第2支点軸51は、第1支点軸41によって、第2支点軸51自体が第1支点軸41を回転中心として左右方向に揺動可能であるとともに、延長板11の掘取作業機の進行方向後端側を上下方向に揺動可能に支持している。
【0020】
支持部材12は、延長板11の掘取作業機Aの進行方向後端側と偏心軸24を架け渡して連結する。支持部材12は、偏心軸24によって揺動可能にされるとともに、延長板11の後端部である一端部を連結する。
支持部材12と前記偏心軸24との連結は、回り対偶及び球面対偶によっておこなわれる。
【0021】
支持部材12は、支持部材12と前記延長板11の一端部と揺動可能に連結する第3支点軸61と、を備える。
支持部材12の上部は、第2支点軸51と平行な左右方向に延設する第3支点軸61によって、延長板11の後端側を連結させ、延長板11の掘取作業機の進行方向前方側を揺動自在にさせる。
【0022】
支持部材12の下端側を偏心軸24に連結する。支持部材12は、偏心部25が挿入された自動調心型軸受26を介して連結する。自動調心型軸受26は回り対偶である回転対偶部28と球面対偶である球面対偶部27を併せ持つ軸受であり、実施例ではインサート軸受ユニットを用いる。また、回転対偶部28と球面対偶部27によって、偏心部25と連結できれば良く、実施例に限定することはない。
【0023】
回転対偶部28によって、支持部材12の下端側は偏心部25の前後方向を軸にして回転自在に連結される。モータ21の回転軸22方向から見た支持部材12の下端側は、偏心部25と共にモータ21の回転軸22に対して公転運動を行うことができる。
【0024】
回転対偶部28の外周部に位置する球面対偶部27によって、偏心部25と支持部材12との傾斜角が変化し得る様に構成することができる。すなわち、支持部材12は、偏心部25に設けた球面対偶部27によって、球面対偶部27の回転中心S1を中心にして球面運動が可能である。回転中心S1は、モータ回転軸22と平行な回転対偶部28の仮想の回転中心軸である回転軸線S2を通るように構成している。すなわち、回転中心S1及び回転軸線S2は、モータ回転軸22による偏心軸24の回転によって、モータ回転軸22周りに偏心回転を行う。
【0025】
延長板11等の作用について説明する。
偏心部25の公転運動の内、上下方向の運動成分は第2支点軸51を支点にした延長板11後端側の上下揺動に変換される。公転運動の内、左右方向の運動成分は第1支点軸41を支点にした延長板11の左右揺動に変換される。
【0026】
第2支点軸51を支点にした延長板11の揺動によって、第3支点軸61と球面対偶部27の回転中心との位置関係が、相対的な前後方向にずれることとなる。球面対偶部27によって、偏心部25と支持部材12とが傾斜角を変化させることが可能なので、回転対偶部28のみによって支持部材12と延長板11とを連結させた場合の、傾斜角の変化ができない不都合を解消している。球面対偶部27によって、支持部材12自体の偏心部25及びモータ回転軸22に対する前後揺動を許容することができる。つまり、支持部材12を介して、延長板11の第2の周方向への揺動を許容できる。
また、回転対偶部28によってモータ回転軸22による偏心部25の公転運動を受け止め、支持部材12に上下方向の揺動運動として伝えるとともに、第1部材31を介した延長板11の第1支点軸41による第1の周方向への揺動を許容できる。
【0027】
回転対偶部28と球面対偶部27によって、支持部材12を上下方向に揺動させて延長板11を上下方向に揺動させるとともに、第1支点軸41による延長板11の左右揺動を受けた支持部材12の左右方向の揺動を許容することができる。
【0028】
延長板11は、第1支点軸41と第2支点軸51によって、第2の周方向及び第1の周方向である、上下及び左右のそれぞれに方向を組み合わせながら揺動する。延長板11の面全体が揺動するため、掘取体Bから延長板11側に土Fと共に移動した作物Eは、作物Eの周囲に付着した土Fを効果的にほぐして、作物Eと分離及び落下させることができる。すなわち、延長板11上に位置した作物Eに土Fが付着しないので、作業者は容易に作物Eを引き抜くことができる。
【0029】
モータ21の回転のみで、第2支点軸51を軸にした延長板11後端側の上下揺動と、第1支点軸41を軸にした延長板11の左右方向への揺動を同時に行う。つまり、延長板11の四隅を含む延長板11の全体が揺動し、振動をすることができる。この延長板11上に位置した作物Eは、作物Eの周囲の土Fと共に効率良く振動を受けるので、作物Eの周囲の土Fがほぐれ易くなり、容易に作物Eの周囲から土Fを落とすことができる。
【0030】
例示する掘取体Bは、土Fを後方に移動させるための周回駆動するベルトコンベアB2を有しているが、ベルトコンベアB2の代わりに駆動装置を有せず、後方にせり上がった傾斜面B1を有した傾斜板のみで構成してもよい。
【0031】
図7図8は、掘取作業機Aの偏心部25が背面から見て反時計回りに0度回転した時の延長板11の揺動状態をあらわす。
図7図8では、偏心部25はモータ回転軸22の上部に位置する。背面視における球面対偶部27の回転中心S1及び、回転対偶部28の回転軸線S2は、モータ回転軸22の上方に位置する。偏心部25で上方に押し上げられた支持部材12によって、延長板11の後端側である他端部も第2支点軸51を支点にして押し上げられる。また、モータ回転軸22に対して、偏心部25が左右方向に移動していないので、第1支点軸41に対して第1の周方向への揺動が開始していない状態である。
そのため、延長板11はモータ基部23に対して図7図8に図示するように進行方向に対する左右は平行に、水平状態にあり、モータ回転軸22を基準とした場合に、進行方向後方端部が進行方向前方端部に対して同じ高さとなっている。また、掘取作業機Aが作業状態における延長板11は、掘取作業機Aの進行方向後方端部が進行方向前方端部に対して高い位置にある。同時に、延長板11の後端側である他端部は、堀取体Bの傾斜面B1に対して、やや下方に位置するように配置されている。
【0032】
図9図10は、掘取作業機Aの偏心部25が背面から見て反時計回りに90度回転した時の延長板11の揺動状態をあらわす。
図9図10では、偏心部25はモータ回転軸22の左側にある。背面視における球面対偶部27の回転中心S1及び、回転対偶部28の回転軸線S2は、偏心部25の回転角度が0度を基準にして、モータ回転軸22の左方に回転した位置に移動する。偏心部25の回転角度が0度のときに対して、偏心部25が左方及び下方に移動する。偏心部25の下方の移動によって、延長板11の後端側が第2支点軸51を支点にして、支持部材12を介して下方に下げられる。同時に、第3支点軸61も第2支点軸51に対して下方に下がる。これにより、側面視において、球面対偶部27の回転中心S1と、第2支点軸51の相対距離は、偏心部25の回転角度が0度のときに対して大きくなる。
【0033】
一方で、第2支点軸51と第3支点軸61との距離、回転中心S1と第3支点軸61との距離は、互いに不変であることから、延長板11の回動によって、第3支点軸61が前方に移動することとなる。つまり、支持部材12上端側が前方へ傾動することとなり、球面対偶部27は支持部材12の傾動を許容することができる。
また、偏心部の回転角度が0度を基準にして、偏心部25が左方に移動しているので、この偏心部25に連結する支持部材12も左方に移動しようとする。支持部材12は、延長板11、第2支点軸51、第1部材31を介して、第1支点軸41に連結している。したがって、支持部材12は第1支点軸41を中心に揺動することとなる。結果として、第1支点軸41より上方に位置するとともに支持部材12に間接的に連結する延長板11は、第1支点軸41より下方にある偏心部25の回転によって揺動することとなる。そのため、延長板11は、図9に図示するように、偏心部25の回転角度が0度のときを示した図7と比較すると、掘取作業機A後方側が低くなるとともに、図10に図示するように、図9と比較すると進行方向の右側が低く、左側が高くなる。
【0034】
図11図12は、掘取作業機Aの偏心部25を側面及び背面から見て反時計回りに180度回転した時の延長板11の揺動状態をあらわす。
図11図12では、偏心部25はモータ回転軸22の下にある。背面視における球面対偶部27の回転中心S1及び、回転対偶部28の回転軸線S2は、モータ回転軸22の下方に位置する。偏心部25の回転角度が90度のときと比較して、偏心部25は支持部材12をさらに下方に押し下げるとともに、支持部材12の下部を進行方向の幅方向右側に移動させる。つまり、延長板11の後端側である他端部も、第2支点軸51を支点にして、さらに押し下げられる。
これにより、第3支点軸61も第2支点軸51に対して、偏心部25の回転角度が90度のときと比較して、さらに下方に下がることとなり、側面視において、球面対偶部27の回転中心S1と、第2支点軸51の相対距離が、90度回転のときに対して大きくなる。つまり、偏心部25の回転角度が90度回転のときと比較した場合、第3支点軸61は前方に移動し、支持部材12の上端側もさらに前方へ傾動することとなるが、球面対偶部27はこの傾動を許容する。
【0035】
また、偏心部25の回転角度が90度のときを基準にして、背面視において、偏心部25が右方に移動しているので、偏心部25に連結する支持部材12も右方に移動する。延長板11及び第2支点軸51及び第1部材31を介して、第1支点軸41に連結している支持部材12は、第1支点軸41を中心に揺動する。
結果として、延長板11は、偏心部25の回転角度が0度の場合と同様に、モータ回転軸22に対して、偏心部25が左右方向に移動していない状態となる。つまり、延長板11は、偏心部25の回転角度が90度の状態から、第1支点軸41を軸にして第1の周方向と反対方向に揺動して、偏心部25の回転角度が0度時の延長板11の揺動角度と同じ状態に復帰する。
【0036】
そのため延長板11は、モータ基部23に対して図11図12に図示するように、進行方向に対する左右方向は平行に、水平状態にあるとともに、モータ回転軸22を基準とした場合の進行方向後方端部が進行方向前方端部に対して下方に位置する高さとなっている。延長板11後方端部の高さは、偏心部25の回転角度が0度のときと比較すると、下方に位置していることとなる。また、掘取作業機Aが作業状態における延長板11は、掘取作業機Aの進行方向後方端部が進行方向前方端部に対して高い位置にあるものの、偏心部25の回転角度が0度及び90度のときと比較すると、それぞれに対して下方に位置している。
【0037】
図13図14は、掘取作業機Aの偏心部25が背面から見て反時計回りに270度回転した時の延長板11の揺動状態をあらわす。
図13図14では、偏心部25はモータ回転軸22の右側にある。背面視における球面対偶部27の回転中心S1及び、回転対偶部28の回転軸線S2は、偏心部25の回転角度が180度を基準にして、モータ回転軸22の右方に回転した位置に回転移動する。
偏心部25の回転によって、延長板11の後端側が第2支点軸51を支点にして、支持部材12を介して上方に押し上げられる。同時に、第3支点軸61も第2支点軸51に対して上方に押し上げられる。これにより、側面視において、球面対偶部27の回転中心S1と、第2支点軸51の相対距離は、偏心部25の回転角度が180度のときに対して小さくなる。
【0038】
一方で、第2支点軸51と第3支点軸61との距離、回転中心S1と第3支点軸61との距離は、互いに不変であることから、延長板11の回動によって、第3支点軸61が後方に移動することとなる。つまり、支持部材12上端側が後方へ傾動することとなり、球面対偶部27は支持部材12の傾動を許容することができる。
【0039】
また、偏心部25の回転角度が180度を基準にして、偏心部25が右方に移動しているので、この偏心部25に連結する支持部材12も左方に移動しようとする。延長板11及び第2支点軸51及び第1部材31を介して、第1支点軸41に連結している支持部材12は、偏心部25の回転に伴って、第1支点軸41を中心に揺動することとなる。結果として、第1支点軸41より上方に位置するとともに支持部材12に間接的に連結する延長板11は、第1支点軸41より下方にある偏心部25の回転によって揺動することとなる。そのため、延長板11は図13に図示するように、偏心部25の回転角度が180度のときを示した図11と比較すると、掘取作業機A後方側が高くなる。また、図14に図示するように、延長板11は、偏心部25の回転角度が180度のときを示した図12と比較すると、進行方向の右側が高く、左側が低くなる。
【0040】
モータ回転軸22が回転するにしたがって、偏心軸24は、回転し、偏心部25は、掘取作業機Aの背面から見て0度から360度回転する。そのため、偏心軸24に取り付けられる延長板11は、掘取作業機Aの進行方向前後方向及び左右方向に揺動される。また、進行方向前後方向及び左右方向に揺動する延長板11の後端側は、回転する偏心軸24のいずれの回転角度においても、傾斜面B1に対して上方側に起き上がるように傾斜しない。つまり、傾斜面B1に対して、回転する偏心軸24のいずれの回転角度においても、延長板11の後端側が第2支点軸51を支点にして、僅かに水平側に傾くように配置している。このため、傾斜面B1に沿いながら上昇した作物Eが、延長板11上に位置すると、傾斜角度の変化によって、周囲の土Fと共に一時的に落下させて大きな土塊を予め落とす。また同時に、延長板11の揺動振動によって、作物Eの周囲に付着した残りの不要な土Fをさらに篩い落とすことで、作業者は容易に延長板11上に位置した作物Eを把持して持ち上げることができる。
【符号の説明】
【0041】
11 延長板
12 支持部材
21 モータ
22 モータ回転軸
24 偏心軸
25 偏心部
31 第1部材
41 第1支点軸
51 第2支点軸
B 掘取体

図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図10
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図14