(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】オフセット作業機
(51)【国際特許分類】
A01D 34/535 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A01D34/535
(21)【出願番号】P 2021141958
(22)【出願日】2021-08-31
【審査請求日】2024-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】390010836
【氏名又は名称】小橋工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】橋本 健志
(72)【発明者】
【氏名】大月 忠亮
【審査官】石川 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-098613(JP,A)
【文献】特開平08-228568(JP,A)
【文献】特開2020-025494(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 34/412-34/90
A01D 43/06 -43/077
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレームを含み、走行機体に連結可能な装着部と、
前記走行機体から動力を受けて農作業を行う作業部と、
前記装着部と前記作業部とを連結し、前記作業部の進行方向に対する向きを維持したまま前記作業部を左右方向にオフセット移動させ、前記オフセット移動の支点となる連結部を有するオフセット機構部と、
前記フレームに設けられ、前記連結部の移動範囲を制限する移動制限部を有し、前記連結部によって前記オフセット機構部と連結される逃げ機構部と、を備え、
前記移動制限部は、
前記連結部が摺動する第1摺動部と、
前記第1摺動部から外れた前記連結部が摺動する第2摺動部と、を有し、
前記連結部が前記第1摺動部と摺動する第1摺動方向と、前記連結部が前記第2摺動部と摺動する第2摺動方向とが異なる方向であり、
前記オフセット機構部が前記第1摺動部に当接する前記連結部を第1方向に押す場合において、前記第1方向と、前記連結部と前記第1摺動部との接点における接線が延びる第1接線方向と、のなす角をθとしたときに、前記オフセット移動の移動量が小さくなるにしたがって、θは小さくなるオフセット作業機。
【請求項2】
前記オフセット機構部は、第1状態と、前記第1状態よりも収納状態からの前記オフセット移動の移動量が小さい第2状態とを取り得、
前記第1方向と、前記連結部と前記第2摺動部との接点における接線が延びる第2接線方向と、のなす角をφとしたときに、
前記第1状態において、θはφより大きく、
前記第2状態において、θはφより小さい、請求項1に記載のオフセット作業機。
【請求項3】
前記オフセット機構部が前記第2状態から前記収納状態に移行する際に、
θは、前記第1接線方向を基準に第1回転方向に傾いたときの角度から、前記第1接線方向を基準に前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に傾いたときの角度に変わり、
φは90°を越え、
前記収納状態において、前記連結部が前記オフセット機構部によって押された場合に、前記連結部は前記第1摺動部に当接せずに前記第2摺動部に達し、前記第1摺動部と前記第2摺動部との間の屈曲部で前記移動制限部に当接する、請求項2に記載のオフセット作業機。
【請求項4】
フレームを含み、走行機体に連結可能な装着部と、
前記走行機体から動力を受けて農作業を行う作業部と、
前記装着部と前記作業部とを連結し、前記作業部の進行方向に対する向きを維持したまま前記作業部を左右方向にオフセット移動させ、前記オフセット移動の支点となる連結部を有するオフセット機構部と、
前記フレームに設けられ、前記連結部の移動範囲を制限する移動制限部を有し、前記連結部によって前記オフセット機構部と連結される逃げ機構部と、を備え、
前記移動制限部は、
前記連結部が摺動する第1摺動部と、
前記第1摺動部から外れた前記連結部が摺動する第2摺動部と、を有し、
前記第2摺動部は、前記オフセット機構部によって第1方向に押された場合に前記連結部が前記第1摺動部に当接する位置を基準として、前記連結部が前記第1摺動部と摺動する第1摺動方向に設けられているオフセット作業機。
【請求項5】
前記オフセット機構部によって押されることによって前記連結部が前記第1摺動部と摺動する方向を第1摺動方向とし、
前記オフセット機構部によって押されることによって前記連結部が前記第2摺動部と摺動する方向を第2摺動方向とすると、
前記第2摺動方向は、前記第1摺動方向の成分を含む、請求項1乃至4のいずれか一に記載のオフセット作業機。
【請求項6】
前記連結部と前記第1摺動部との接点における接線が延びる第1接線方向と前記第1方向とのなす角θは、90°未満である、請求項1乃至5のいずれか一に記載のオフセット作業機。
【請求項7】
前記連結部と前記第2摺動部との接点における接線が延びる第2接線方向と前記第1方向とのなす角φは、0°より大きい、請求項1乃至6のいずれか一に記載のオフセット作業機。
【請求項8】
前記移動制限部において、
前記連結部は前記第1摺動部の端部である第1位置から移動して第2位置で前記第2摺動部に達し、
前記連結部は前記第2摺動部を摺動して前記第2位置から第3位置まで移動し、
前記第1位置と前記第2位置との間の第1距離は、前記第2位置と前記第3位置との間の第2距離より短い、請求項1乃至7のいずれか一に記載のオフセット作業機。
【請求項9】
回動軸を中心に回動可能な付勢部材をさらに備え、
前記付勢部材の一端は前記連結部を付勢し、
前記付勢部材の他端は前記回動軸を付勢し、
前記移動制限部は、前記第3位置から前記第1位置に移動する前記連結部が摺動する第3摺動部を有し、
前記連結部と前記第3摺動部との接点における接線が延びる第3接線方向と前記付勢部材の前記他端から前記一端に向かう第2方向とのなす角ψは、前記第3位置から前記第1位置に向かって移動する間に徐々に小さくなる、請求項8に記載のオフセット作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オフセット作業機に関する。特に、走行機体の後部に装着され、走行機体の側方において農作業を行うオフセットタイプの作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、農道や荒れ地の雑草を除去するため草刈り作業を行う作業機として草刈り機が知られている。一般的に、草刈り機は、トラクタ等の走行機体に装着され、走行機体と共に移動しながら作業部を動作させることにより草刈り作業を進める。近年は、草刈り作業を行う作業部が走行機体の側方にオフセット移動し、走行機体の側方において草刈り作業を行うオフセットタイプの草刈り機が知られている(特許文献1及び2)。特許文献1及び2に記載された草刈り機は、走行機体に装着される装着部と、草刈りを行う作業部との間に平行リンク機構が設けられ、当該平行リンク機構により作業部の側方へのオフセット移動が可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-39941号公報
【文献】特開2012-191864号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び2に記載された草刈り機において、走行機体よりも側方に突出したオフセット位置で草刈り作業を行う際、作業部が草の陰に隠れた根石や切り株等の障害物に引っ掛かってしまう場合がある。この場合、作業部のフレームや電動シリンダ等に大きな負荷が掛かり、草刈り機の破損を招くおそれがある。また、走行機体にも負荷が加わるため、走行機体の部品の破損につながる可能性もある。さらに、作業部が障害物に引っ掛かった状態で走行機体が走行を続けると、走行機体が障害物を中心に転回するため進行方向が大きく変わり、事故につながる可能性もある。
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、作業部が障害物に接触したときに生じる不具合を防止することを課題の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態におけるオフセット作業機は、フレームを含み、走行機体に連結可能な装着部と、前記走行機体から動力を受けて農作業を行う作業部と、前記装着部と前記作業部とを連結し、前記作業部の進行方向に対する向きを維持したまま前記作業部を左右方向にオフセット移動させ、前記オフセット移動の支点となる連結部を有するオフセット機構部と、前記フレームに設けられ、前記連結部の移動範囲を制限する移動制限部を有し、前記連結部によって前記オフセット機構部と連結される逃げ機構部と、を備える。前記移動制限部は、前記連結部が摺動する第1摺動部と、前記第1摺動部から外れた前記連結部が摺動する第2摺動部と、を有し、前記連結部が前記第1摺動部と摺動する第1摺動方向と、前記連結部が前記第2摺動部と摺動する第2摺動方向とが異なる方向であり、前記オフセット機構部が前記第1摺動部に当接する前記連結部を第1方向に押す場合において、前記第1方向と、前記連結部と前記第1摺動部との接点における接線が延びる第1接線方向と、のなす角をθとしたときに、前記オフセット移動の移動量が小さくなるにしたがって、θは小さくなる。
【0007】
前記オフセット機構部は、第1状態と、前記第1状態よりも収納状態からの前記オフセット移動の移動量が小さい第2状態とを取り得、前記第1方向と、前記連結部と前記第2摺動部との接点における接線が延びる第2接線方向と、のなす角をφとしたときに、前記第1状態において、θはφより大きく、前記第2状態において、θはφより小さくてもよい。
【0008】
前記オフセット機構部が前記第2状態から前記収納状態に移行する際に、θは、前記第1接線方向を基準に第1回転方向に傾いたときの角度から、前記第1接線方向を基準に前記第1回転方向とは反対の第2回転方向に傾いたときの角度に変わり、φは90°を越え、前記収納状態において、前記連結部が前記オフセット機構部によって押された場合に、前記連結部は前記第1摺動部に当接せずに前記第2摺動部に達し、前記第1摺動部と前記第2摺動部との間の屈曲部で前記移動制限部に当接してもよい。
【0009】
本発明の一実施形態におけるオフセット作業機は、フレームを含み、走行機体に連結可能な装着部と、前記走行機体から動力を受けて農作業を行う作業部と、前記装着部と前記作業部とを連結し、前記作業部の進行方向に対する向きを維持したまま前記作業部を左右方向にオフセット移動させ、前記オフセット移動の支点となる連結部を有するオフセット機構部と、前記フレームに設けられ、前記連結部の移動範囲を制限する移動制限部を有し、前記連結部によって前記オフセット機構部と連結される逃げ機構部と、を備える。前記移動制限部は、前記連結部が摺動する第1摺動部と、前記第1摺動部から外れた前記連結部が摺動する第2摺動部と、を有し、前記第2摺動部は、前記オフセット機構部によって第1方向に押された場合に前記連結部が前記第1摺動部に当接する位置を基準として、前記連結部が前記第1摺動部と摺動する第1摺動方向に設けられている。
【0010】
前記オフセット機構部によって押されることによって前記連結部が前記第1摺動部と摺動する方向を第1摺動方向とし、前記オフセット機構部によって押されることによって前記連結部が前記第2摺動部と摺動する方向を第2摺動方向とすると、前記第2摺動方向は、前記第1摺動方向の成分を含んでもよい。
【0011】
前記連結部と前記第1摺動部との接点における接線が延びる第1接線方向と前記第1方向とのなす角θは、90°未満であってもよい。
【0012】
前記連結部と前記第2摺動部との接点における接線が延びる第2接線方向と前記第1方向とのなす角φは、0°より大きくてもよい。
【0013】
前記移動制限部において、前記連結部は前記第1摺動部の端部である第1位置から移動して第2位置で前記第2摺動部に達し、前記連結部は前記第2摺動部を摺動して前記第2位置から第3位置まで移動し、前記第1位置と前記第2位置との間の第1距離は、前記第2位置と前記第3位置との間の第2距離より短くてもよい。
【0014】
回動軸を中心に回動可能な付勢部材をさらに備え、前記付勢部材の一端は前記連結部を付勢し、前記付勢部材の他端は前記回動軸を付勢し、前記移動制限部は、前記第3位置から前記第1位置に移動する前記連結部が摺動する第3摺動部を有し、前記連結部と前記第3摺動部との接点における接線が延びる第3接線方向と前記付勢部材の前記他端から前記一端に向かう第2方向とのなす角ψは、前記第3位置から前記第1位置に向かって移動する間に徐々に小さくなってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一実施形態におけるオフセット作業機は、作業部が障害物に接触したときに生じる不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態に係るオフセット作業機の構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るオフセット作業機の構成を示す平面図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、作業部が障害物に接触する前後の状態を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、作業部が障害物に接触した後の連結部と移動制限部との位置関係を示す図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、作業部が障害物に接触する前後の状態を示す図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、作業部が障害物に接触する前後の状態を示す図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係るオフセット作業機の収納状態を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、作業部が障害物に接触する前の連結部と移動制限部との位置関係をオフセット量別に示す図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、作業部が障害物に接触した直後の連結部と移動制限部との位置関係をオフセット量別に示す図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、障害物に接触した後の作業部が元の状態に戻る際の連結部と移動制限部との位置関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明のオフセット作業機の実施形態について説明する。但し、本発明のオフセット作業機は多くの異なる態様で実施することが可能であり、以下に示す例の記載内容に限定して解釈されるものではない。なお、本実施の形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同様の要素には、同一の符号の後にアルファベットを付して、詳細な説明を適宜省略することがある。
【0018】
また、説明の便宜上、「上」、「下」、「前」、「後」、「右」、「左」といった方向を示す語句を用いるが、本発明のオフセット作業機に対して、重力の働く方向が「下」であり、その逆が「上」である。また、走行機体の進行する方向が「前」であり、その逆が「後」である。さらに、「前」に向かって、右側が「右」であり、左側が「左」である。また、オフセット作業機の中心線に近い側を「内」と呼び、遠い側を「外」と呼ぶ。
【0019】
[1.オフセット作業機の構成]
図1は、本実施形態のオフセット作業機100の構成を示す平面図である。本実施形態では、オフセット作業機100の一例として、オフセット型の草刈り機を例示する。ただし、オフセット作業機100は、草刈り機に限らず、畦塗り機、プラウなど他のオフセット型の作業機であってもよい。
【0020】
図1に示すように、本実施形態のオフセット作業機100は、装着部10、オフセット機構部20、動力伝達部30、作業部40、及び逃げ機構部50を備えている。オフセット作業機100は、トラクタ等の走行機体(図示せず)に対して装着部10により連結される。装着部10と作業部40とは、オフセット機構部20及び動力伝達部30を介して連結される。このような構成により、走行機体の走行に伴ってオフセット作業機100が前方に向かって移動する。オフセット作業機100が移動する間、作業部40は、走行機体から受けた動力により動作して草刈り作業を行う。
【0021】
装着部10は、走行機体に設けられた三点リンク機構(図示せず)に対して連結される部位である。具体的には、本実施形態の装着部10は、フロントフレーム11、トップリンク結合部(トップマスト)(図示せず)、ロワーリンク結合部(ロワーリンクピン)13、入力軸14、動力伝達手段15、及び出力軸16を含む。なお、トップリンク結合部、及びロワーリンク結合部13はオートヒッチアーム(図示省略)を介して走行機体の三点リンク機構に接続されてもよい。本実施形態では、出力軸16が、左右方向において入力軸14からオフセットした位置に設けられている。フロントフレーム11は、左右方向に延びる部材であり、フロントフレーム11には、トップマスト及びロワーリンク結合部13が設けられている。
【0022】
オフセット機構部20は、装着部10(フロントフレーム11)と作業部40との間に配置され、装着部10と作業部40とを連結し、装着部10に対して回動することにより作業部40を左右方向に移動させる機構である。本実施形態において、オフセット機構部20は、フロントフレーム11及び作業部40に対して回動可能に連結された平行リンク機構を含む。すなわち、オフセット機構部20がフロントフレーム11に対して回動することにより、進行方向(D1方向)に対する作業部40の向きを維持したまま、作業部40を左右方向(D2方向)に移動させることができる。つまり、オフセット機構部20は、走行機体の進行方向に対して側方に、作業部40をオフセット移動させることができる。
【0023】
図2は、第1実施形態のオフセット作業機100において、動力伝達部30の図示を省略した平面図である。
図2に示すように、本実施形態のオフセット機構部20は、第1リンクアーム21、第2リンクアーム22、第3リンクアーム23、及び伸縮部材24を有する。
【0024】
第1リンクアーム21は、
図1に示した動力伝達部30の下方に重畳して配置される。第1リンクアーム21の前側の一端は、接続部201において、装着部10のフロントフレーム11に対して回動可能に連結され、第1リンクアーム21の後ろ側の他端は、第3リンクアーム23及び作業部40に対して回動可能に連結される。
【0025】
第2リンクアーム22は、第1リンクアーム21と離隔した位置において略平行に配置され、第1リンクアーム21と同程度の長さを有する。なお、詳細は後述するが、第2リンクアーム22の前側の一端は、ピン状の連結部203と回動可能に連結され、第2リンクアーム22の後ろ側の他端は、第3リンクアーム23に対して回動可能に連結され、第2リンクアーム22は連結部203を介して逃げ機構部50に対して、回動可能に構成されている。つまり、第2リンクアーム22の前側の一端に設けられた連結部203は、オフセット移動の支点として機能する。第1リンクアーム21及び第2リンクアーム22の各々の両端は、それぞれがオフセット移動の支点として機能する。
【0026】
第3リンクアーム23は、フロントフレーム11に対して略平行に配置されると共に、第1リンクアーム21と第2リンクアーム22とを相互に連結する。第1リンクアーム21と連結される第3リンクアーム23の一端は、作業部40に対して固定されており、第3リンクアーム23と作業部40との位置関係が変わらないように構成されている。
【0027】
以上の構成により、フロントフレーム11、第1リンクアーム21、第2リンクアーム22、及び第3リンクアーム23は、それぞれを辺とする四辺形のリンク機構を構成する。このリンク機構により、オフセット機構部20は、作業部40の長手方向が左右方向と略平行になるように作業部40の向きを維持しつつ、左右方向に対して作業部40をオフセット移動させることができる。
【0028】
伸縮部材24は、オフセット機構部20を駆動させる動力源(アクチュエータ)であり、例えば電動シリンダ、油圧シリンダ等で構成される。伸縮部材24の一端は、第2リンクアーム22の前側の一端と共に連結部203に回動可能に連結されている。上述したように、連結部203は、逃げ機構部50に連結されており、第2リンクアーム22の前側の一端は、連結部203を介してフロントフレーム11(一対の平板状の部材570)に連結される。伸縮部材24の後ろ側の他端は、第1リンクアーム21の中央付近(又は、中央よりやや後方)に設けられたブラケットを介して、第1リンクアーム21に連結される。伸縮部材24の伸縮動作により、第1リンクアーム21が回動し、オフセット機構部20が駆動される。伸縮部材24の伸縮量により、作業部40のオフセット量(オフセット方向への移動量)が制御される。
【0029】
説明を
図1に戻す。動力伝達部30は、装着部10の入力軸14、動力伝達手段15(スプロケット152及び中継軸154)及び出力軸16を介して走行機体から伝達された動力を、作業部40に伝達するための機構である。前述のように、動力伝達部30は、オフセット機構部20の一部、具体的には、第1リンクアーム21の上側に重畳して配置される。
【0030】
本実施形態のオフセット作業機100は、動力伝達部30として、チェーン駆動機構を用いる。具体的には、動力伝達部30は、少なくとも駆動スプロケット31、従動スプロケット32及びローラーチェーン33を有する。ローラーチェーン33は、一対のスプロケット(駆動スプロケット31及び従動スプロケット32)の間に巻き掛けられた構成となっている。
【0031】
駆動スプロケット31は、回転する出力軸16と係合して回転する歯車であり、これにより、出力軸16から受けた動力を伝達する。従動スプロケット32は、駆動スプロケット31からローラーチェーン33を介して伝達された動力によって受動的に回転する歯車である。ローラーチェーン33は、動力などを張力として伝達する部材である。なお、動力伝達部30は、チェーン駆動機構に限らず、一対のプーリ及びベルトを用いたベルト駆動機構で構成してもよい。
【0032】
動力伝達部30は、前方が装着部10(フロントフレーム11)に対して回動可能に連結され、後方が作業部40に対して回動可能に連結される。本実施形態において、装着部10に対する動力伝達部30の回動中心は、駆動スプロケット31の回動中心と一致する。つまり、装着部10に対する動力伝達部30の回動中心は、出力軸16の回転中心と一致する。また、作業部40に対する動力伝達部30の回動中心は、従動スプロケット32の回動中心と一致する。
【0033】
さらに、装着部10に対する動力伝達部30の回動中心は、装着部10に対するオフセット機構部20(具体的には、第1リンクアーム21)の回動中心と一致する。このように、本実施形態では、オフセット機構部20の一部である第1リンクアーム21と動力伝達部30とが一体となって装着部10(フロントフレーム11)に対して回動するため、動力の伝達にユニバーサルジョイントを用いたときのような折れ角による制限を受けることなく、オフセット量を大きく確保することができる。また、作業部40の収納時(非作業時)には、前後方向において、走行機体に対して作業部40を近接配置することが可能である。
【0034】
作業部40は、草刈り作業を行う部位であり、作業ロータ41及び刈刃駆動部42を有する。作業部40は、刈刃駆動部42が動力伝達部30より伝達された動力を受けて作業ロータ41を駆動することにより、草刈り作業を行う。作業ロータ41は、爪軸41a及び爪軸41aに放射状に複数設けられた刈刃41bを含む。爪軸41aは、走行機体の進行方向に対して略直交するように左右方向に延在する。作業ロータ41は、爪軸41aと共に複数の刈刃41bを回転させることにより草刈りを行う。刈刃駆動部42は、動力伝達部30によって伝達された動力を、作業ロータ41の爪軸41aに伝達する。刈刃駆動部42は、動力伝達部30と同様の構成を有するチェーン駆動機構であってもよいし、ベルト駆動機構であってもよい。
【0035】
逃げ機構部50は、フロントフレーム11に設けられている。
図4に示すように、逃げ機構部50は一対の平板状の部材570、弾性部材60、回動軸部材610、当接部材620、軸部材630を備えている。一対の平板状の部材570は、フロントフレーム11の上面と平行に、かつフロントフレーム11を上下に挟むように設けられている。各平板状の部材570にはD1方向及びD3方向に長手を有する溝580(
図4参照)が設けられており、溝580には、連結部203が挿通されている。溝580は、第1溝581及び第2溝582からなる(
図5(B)、(C)参照)。詳細は後述するが、連結部203は、溝580(第1溝581及び第2溝582)の内壁を摺動可能に構成されており、溝580が連結部203の移動範囲を制限している。このため、本明細書では、この溝580を移動制限部500という場合がある。また、溝580の内壁は、連結部203に当接して、その移動をガイドするガイド部として機能しており、溝580の内壁をガイド部ということがある。なお、収納時(オフセット量がゼロの状態)や通常の草刈作業時には、連結部203は弾性部材60によって移動制限部500の端部に付勢されている。本実施形態において、弾性部材60が連結部203を付勢することによって連結部203の位置が固定される。したがって、弾性部材60を「付勢部材」という場合がある。回動軸部材610は、一対の平板状の部材570を架け渡すように設けられ、一対の平板状の部材570に対して回動可能に連結されている。回動軸部材610には、軸部材630を挿通させる貫通孔(図示省略)が設けられている。
【0036】
ここで、
図4を用いて弾性部材60の構造について説明する。
図4は、
図3の部分拡大図である。
図4では、逃げ機構部50の上側の平板状の部材570の一部を取り除いた状態が図示されており、上側の平板状の部材570の下の構造が示されている。弾性部材60は、回動軸部材610と当接部材620との間に設けられ、これらの部材を押圧している。当接部材620は、連結部203に固定され、弾性部材60の弾性力によって連結部203を押圧している。この押圧によって、連結部203は、移動制限部500に押圧される。換言すると、弾性部材60の後ろ側の端部(当接部材620側の端部)は連結部203を押圧(付勢)し、弾性部材60の前側の端部(回動軸部材610側の端部)は回動軸部材610を押圧(付勢)している。軸部材630は、回動軸部材610を貫通し、弾性部材60の内側に挿通され、当接部材620に接続(固定)されている。軸部材630が、回動軸部材610に設けられた貫通孔の内壁をその軸方向に摺動することで、弾性部材60が伸縮する。
【0037】
図4に示すように、溝580の長手方向と弾性部材60の伸縮方向とは異なっており、溝580内における連結部203の位置によって、溝580の長手方向と弾性部材60の伸縮方向とのなす角が変化する。回動軸部材610は、このなす角の変化に応じて、一対の平板状の部材570に対して回動する。すなわち、溝580内における連結部203の移動に伴い、軸部材630を介して回動軸部材610に力が作用し、回動軸部材610が回動する。その結果、弾性部材60、当接部材620、及び軸部材630が、回動軸部材610を中心に回動する構成であり、弾性部材60、当接部材620、及び軸部材630は、一対の平板状の部材570に対して回動可能に接続されているといえる。
【0038】
上記の構成を有することで、移動制限部500は連結部203の移動をD1方向及びD3方向に制限する。移動制限部500のうち、オフセット機構部20に近い側の端部を第1端部510といい、オフセット機構部20から遠い側の端部を第2端部520という。第1端部510と第2端部520との間において、D1方向に長手を有する溝(第1溝581)とD3方向に長手を有する溝(第2溝582)とが接続される箇所、つまり、溝の形状がD1方向からD3方向に屈曲している箇所を屈曲部515という。第1端部510と第2端部520との間には、摺動部530(第1摺動部)が設けられている。摺動部530は、第1溝581の一部であって、第2リンクアーム22から受けた力によって連結部203が摺動する部分である。詳細は後述するが、移動制限部500において、第2溝582は、第1溝581よりも長い。
【0039】
なお、本実施形態では、一対の平板状の部材570は、フロントフレーム11とは別体として設けられ、ボルド留めされる構成であるが、この構成に限定されない。例えば、一対の平板状の部材570は、フロントフレーム11に溶接されてもよいし、フロントフレーム11と一体に構成されていてもよい。一対の平板状の部材570をフロントフレーム11と一体に構成する場合には、フロントフレーム11に一部に移動制限部500に相当する溝を形成すればよい。
【0040】
連結部203は、移動制限部500を摺動しながら移動可能に設けられている。この構成によって、連結部203の移動範囲は移動制限部500によって制限される。
図4の例では、上記溝がD1方向に長手を有しているため、連結部203の移動もD1方向及びD3方向に制限される。
【0041】
[2.障害物接触時のオフセット機構部の動作]
図3及び
図4を用いて、障害物接触時のオフセット機構部20の動作について説明する。
図3は、本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、オフセット作業機100がD1方向に進行する場合において、作業部が障害物に接触する前の状態(A)及び作業部が障害物に接触した直後の状態(B)を示す図である。
図3に示すように、作業部40が障害物399に衝突すると、逃げ機構部50により、オフセット機構部20の平行リンクが崩れ、作業部40の向きが変わる。具体的には、障害物399との衝突前は、作業部40がD1方向に正対している(爪軸41aがD2方向に平行である)のに対して、障害物399との衝突の後は、作業部40が正対する方向はD1方向から斜め後方にずれ(爪軸41aとD2方向とが角度αをなし)、障害物399に対し、作業部40が後方へ逃げるように構成されている。障害物399との衝突による作業部40の向きの変化に伴い、D1方向に対するオフセット機構部20及び動力伝達部30の長手方向の傾きが変わる。具体的には、オフセット機構部20の長手方向とD1方向とのなす角βについて、障害物399との衝突後の角度βは衝突前の角度βより小さい。つまり、衝突前の上記長手方向は衝突前の上記長手方向よりもD2方向に近い。
【0042】
図4も
図3と同様に、作業部が障害物に接触する前の状態(A)及び作業部が障害物に接触した直後の状態(B)を示す図である。
図3及び
図4の各々の(A)に示すように、作業部40に障害物399が衝突する前の状態では、連結部203は第1端部510に位置している。一方、
図3及び
図4の各々の(B)に示すように、作業部40に障害物399が衝突した後の状態では、連結部203は第2端部520に移動する。なお、詳細は後述するが、
図3及び
図4に示す弾性部材60は回動軸部材610を中心に回動する。
【0043】
作業部が障害物に接触する前の状態(A)では、弾性部材60の弾性力によって、連結部203は移動制限部500の第1端部510を押圧し、この位置に保持される。この状態は、オフセット機構部20が平行リンク機構を構成した状態である。作業部に障害物が接触し、所定のしきい値を超える外力が作業部40にかかると、第2リンクアーム22を介して力を受けた連結部203が移動制限部500に沿って(溝580の内壁をガイドとして)D1方向に移動する。連結部203がD1方向及びD3方向に移動すると、オフセット機構部20の平行リンクが崩れ、作業部40の向きが変わる。
【0044】
上記のように、弾性部材60が連結部203を押圧する方向、つまり、弾性部材60の伸縮方向は、移動制限部500(溝580)の長手方向と異なる。したがって、作業部40に障害物等が接触して、作業部40に前方から力が加えられると、第2リンクアーム22によって押された連結部203は、溝580の内壁にガイドされながら、移動するため、弾性部材60の伸縮方向とは異なる方向に移動する。本実施形態では、弾性部材60の伸縮量に比べて、移動制限部500における連結部203の移動量が大きくなるように、溝580(第1溝581及び第2溝582)の形状が設計されており、その結果、平行リンクを大きく崩して作業部40の傾き(逃げ量)をより大きくできるようになっている。
【0045】
また、第2リンクアーム22を介して連結部203に作用する力は、溝580の内壁及び弾性部材60の両方に作用する。したがって、溝580の内壁で受け止める力を大きくすることができれば、弾性部材60にかかる力を小さくすることができ、溝580の内壁で受け止める力が小さければ、弾性部材60にかかる力が大きくなる。そして、第2リンクアーム22から溝580の内壁が受ける力の大きさは、連結部203が溝580の内壁に当接しているときの、両者の接点における第2リンクアーム22と溝580の内壁とのなす角に依存する。具体的には、当該接点における第2リンクアーム22と溝580の内壁とのなす角が大きくなれば、溝580の内壁が受ける力は大きくなり、第2リンクアーム22と溝580の内壁とのなす角が小さければ溝580の内壁が受ける力は小さくなる。
【0046】
従来は、弾性部材(60)の向きが逃げ機構部(50)に設けられた溝(580)の長手方向と同じだったため、連結部203が溝(580)の内壁に当接したときの第2リンクアーム22と溝(580)の内壁とのなす角は比較的小さかった。したがって、外力がかかったときに、溝(580)の内壁で受けられる力が比較的小さいため、所定のしきい値を超える外力がかかったときにのみ連結部(203)及び作業部(40)を移動させるためには、弾性部材60で受ける力を大きくする必要があった。上記のように、作業部(40)が障害物(399)に衝突したとき以外は、オフセット機構部(20)が平行リンク機構を構成していることが好ましいため、従来の弾性部材(60)には、通常作業において前方から受ける力に対して十分に耐えるだけの強い弾性力(付勢力)が要求されていた。なお、上記の従来構成のうち、本実施形態のオフセット作業機100に対応する部材には、部材名の後に()内に本実施形態に対応する符号を表記した。
【0047】
一方、上記の実施形態に示すように、本発明においては弾性部材60をフロントフレーム11に対して回動可能な構成としたので、連結部203の移動方向を弾性部材60の伸縮方向に限定する必要がなく、連結部203の移動方向に関する設計(溝580の配置)の自由度を高めることができる。したがって、連結部203が溝580の内壁に当接したときの第2リンクアーム22と溝580の内壁とのなす角を考慮に入れた設計が可能となり、このなす角を大きく設計することで、弾性部材60に要求される弾性力を小さくすることができる。その結果、弾性部材60として従来よりも弱い弾性力のもの、すなわち従来よりも小型の弾性部材60を用いることができる。
【0048】
[3.オフセット機構部の動作中における連結部と移動制限部との位置関係]
図5は、本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、作業部が障害物に接触した後の連結部と移動制限部との位置関係を示す図である。
図5において、(A)は作業部40が障害物399に接触する前の状態を示す図であり、(B)は作業部40が障害物399に接触した直後の状態を示す図であり、(C)は(B)の状態からさらに作業部40が後方に押された状態を示す図である。
図5の(A)~(C)において、連結部203に向かう矢印P1は、作業部40が障害物399に接触することで、第2リンクアーム22が連結部203を押す方向を意味する。
【0049】
なお、
図5において、(A)に示すように第1端部510における連結部203の位置を「第1位置」という。
図5の(B)に示すように屈曲部515における連結部203の位置を「第2位置」という。
図5の(C)に示すように第2端部520における連結部203の位置を「第3位置」という。また、移動制限部500のうち屈曲部515と第2端部520との間の領域を摺動部550(第2摺動部)といい、第2端部520と摺動部530との間の領域を摺動部560(第3摺動部)という。移動制限部500において、D1方向に長手を有する第1溝581は、D3方向に長手を有する第2溝582よりも短いため、第1位置と第2位置との間の「第1距離」は、第2位置と第3位置との間の「第2距離」より短い、ということができる。
【0050】
図5の(A)に示すように、作業部40が障害物399に接触する前の状態では、連結部203は弾性部材60によって第1端部510において移動制限部500に押しつけられている。この状態(第1位置)では、連結部203が第2リンクアーム22(オフセット機構部20)から矢印P1の方向(第1方向)に押された場合、連結部203が摺動部530に当接しているため、矢印Pの方向の力は摺動部530及び弾性部材60の両方に作用する。したがって、矢印P1の方向の力の大きさが所定のしきい値よりも小さければ、連結部203は第1端部510に保持され、移動制限部500内を移動しない。その結果、オフセット機構部20が平行リンク機構を維持する。
【0051】
作業部40が障害物399に接触し、連結部203が第2リンクアーム22から、矢印P1の方向に所定のしきい値を超える力を受けると、
図5の(B)に示すように、連結部203が摺動部530を摺動し、連結部203の位置は、第1端部510から離れ、矢印Pの方向に力を受けた連結部203が第2溝582との連結位置となっている第1溝581の最前位置に当接するまでD1方向に移動する(
図5(B))。D1方向を「第1摺動方向」という場合がある。
【0052】
そして、矢印Pの力により、連結部203は、
図5の(B)に示す状態から摺動部550を摺動しつつ弾性部材60を収縮させながらオフセット作業機100の中心に向かってD3方向に移動し、
図5の(C)に示すように、第2溝582の第2端部520に達する。D3方向を「第2摺動方向」という場合がある。
図5に示すように、第1摺動方向は第2摺動方向と異なる方向である。具体的には、第1摺動方向(D1)と第2摺動方向(D3)とのなす角は90°以下に構成され、当該なす角の補角γは、90°よりも大きい、つまり、鈍角となるように構成されている。換言すると、
図5に示すように、D3方向はD1方向の成分を含んでいる。これによって、連結部203が第1端部510から離れて摺動部550に達したときに、連結部203はスムーズに第2端部520に誘導される。
【0053】
上記の動作において、
図5の(A)の状態において、矢印P1の方向に押された連結部203と摺動部530との接点CP1における接線TAN1が延びる方向(第1接線方向)と当該矢印P1の方向(第2リンクアーム22)とのなす角は、
図5の(B)の状態において、連結部203と移動制限部500との接点CP2における接線TAN2が延びる方向(第2接線方向)と連結部203が押される矢印P1の方向とのなす角よりも大きい。したがって、第2リンクアーム22を介して連結部203から同じ大きさの力がかかった場合には、
図5の(A)の状態において第1溝581の内壁が受ける力の方が、
図5の(B)の状態において第2溝582の内壁が受ける力よりも大きくなっている。なお、以下の説明において、上記第1接線方向と矢印P1の方向とがなす角を接線TAN1とP1方向とがなす角という場合がある。同様に、上記第2接線方向と矢印P1の方向とがなす角を接線TAN2とP1方向とがなす角という場合がある。
【0054】
図5の(A)の状態では、弾性部材60の弾性力が比較的小さい場合であっても、弾性部材60によって連結部203の位置が第1端部510に保持される。
【0055】
図5の(A)の状態で、連結部203が第2リンクアーム22から、P1方向に所定のしきい値を超える力を受けると、連結部203は、摺動部550と接するまで接線TAN1が延びる方向(第1接線方向)に移動する。つまり、摺動部550は、第2リンクアーム22によってP1方向に押された場合に、連結部203が摺動部530と摺動する接線TAN1に接点CP1から延びた方向に設けられている。
【0056】
一方、
図5の(B)の状態では、接線TAN2とP1方向とがなす角(
図10に示す角度φ)は非常に小さい。ただし、角度φはゼロより大きい。したがって、連結部203が第2リンクアーム22から受けた力のほとんどが弾性部材60にかかる。つまり、
図5の(B)の状態になると、(A)の状態から(B)の状態に移行する際に必要な所定のしきい値よりも小さい力で連結部203は移動制限部500内を移動する。なお、移動制限部500において、D3方向に長手を有する部分はD1方向に長手を有する部分に比べて長く、連結部203が摺動部550に沿って移動する間の連結部203の移動量を大きく確保することができるため、オフセット機構部20の平行リンクを大きく崩すことができる。その結果、
図3及び
図4の各々の(B)に示すように、作業部40の向きを大きく傾けることができる。
【0057】
[4.オフセット量が異なる場合のオフセット機構部の動作]
図6及び
図7は、
図3に比べてオフセット量が小さい場合において、作業部40が障害物399に衝突する前後のオフセット機構部20の動作を示す図である。また、
図8は、収納状態(オフセット量がゼロの場合)におけるオフセット作業機100を示す図である。
【0058】
図6に示すオフセット作業機100のオフセット量は
図3の場合よりも小さく、
図7に示すオフセット量は
図6の場合よりもさらに小さい。
図3に示す状態を「オフセット大」、
図6に示す状態を「オフセット中」、
図7に示す状態を「オフセット小」という。
図6及び
図7の各々の(B)に示すように、いずれの場合においても、作業部40に障害物399が衝突することで上記のように逃げ機構部50が機能し、作業部40の向きが傾く(爪軸41aとD2方向とが角度αをなす)。ただし、
図3、
図6、及び
図7の各々の(B)を対比すると、オフセット量が小さくなるほど、衝突後の作業部40の傾き(爪軸41aとD2方向とのなす角α)が小さくなっている。
図8に示す収納状態の場合、作業部40に障害物399が衝突しても、作業部40の向きはほとんど傾かない。
【0059】
図9は、本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、作業部が障害物に接触する前の連結部と移動制限部との位置関係をオフセット量別に示す図である。
図9において、(A)は
図3に示す「オフセット大」の場合、(B)は
図6に示す「オフセット中」の場合、(C)は
図7に示す「オフセット小」の場合、(D)は
図8に示す収納状態の場合について、それぞれ移動制限部500における連結部203の位置関係及び連結部203が第2リンクアーム22から受ける力の方向を示す図である。
【0060】
図9において、接線TAN1とP1方向とがなす角を「θ」と表す。角度θは、第2リンクアーム22が摺動部550に当接する連結部203をP1方向に押す場合における接線TAN1とP1方向とのなす角である。角度θは、接線TAN1と連結部203の中心からP1方向に延びる直線との交点から下方に延びる接線TAN1を基準として、連結部203の中心に近づく方向(反時計回りの方向)が正の値であり、その逆方向が負の値である。
図9の(A)~(D)に示すように、オフセット大の条件における角度θを「θ1」、オフセット中の条件における角度θを「θ2」、オフセット小の条件における角度θを「θ3」、収納状態における角度θを「θ4」という。
【0061】
角度θは、θ1>θ2>θ3であり、オフセット量が小さくなるにしたがって小さくなる。
図9の(C)~(D)に示すように、角度θはオフセット小から収納状態に移行するまでの間にゼロを越えて(下回って)マイナスの値をとる。つまり、オフセット小の状態から収納状態に移行する際に、接線TAN1に対する第2リンクアーム22から受ける力の向きが、背面視において左側を向く方向から右側を向く方向に変化(左右逆転)し、角度θの符号が反転する。さらに換言すると、オフセット小から収納状態に移行する際に、角度θは、接線TAN1を基準に反時計回り方向(第1回転方向)に傾いたときの角度から、接線TAN1を基準に時計回り方向(第2回転方向)に傾いたときの角度に変わる。
【0062】
なお、角度θがゼロ以下の場合、第1位置において連結部203が第2リンクアーム22から所定の力以上の力で押された場合、連結部203は、第1端部510から離れ、摺動部530には当接せずに屈曲部515(第2位置)で係止される。また、角度θが大きいほど、連結部203を介し、第2リンクアーム22から受ける力を、摺動部530側で受ける比率が大きくなり、弾性部材60側で受ける比率が小さくなる。ただし、角度θは90°未満である。したがって、
図9の(A)の状態では、連結部203が第2リンクアーム22から押された場合に、弾性部材60にかかる力を小さくすることができる。弾性部材60にかかる力の大きさは、オフセット量が小さくなるにしたがって相対的に大きくなる。一方で、オフセット量が小さくなるにしたがって角度θが小さくなるため、連結部203と摺動部530との当接が外れやすく、すなわち連結部203が第1位置から移動しやすくなる。
【0063】
図10は、本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、作業部が障害物に接触した直後に、第1位置から第2位置まで移動した連結部と移動制限部との位置関係をオフセット量別に示す図である。
図9と同様に、
図10において、(A)は「オフセット大」の場合、(B)は「オフセット中」の場合、(C)は「オフセット小」の場合、(D)は収納状態の場合について、それぞれ移動制限部500における連結部203の位置関係及び連結部203が第2リンクアーム22から受ける力の方向を示す図である。
【0064】
図10において、接線TAN2とP1方向とがなす角を「φ」と表す。角度φは、接線TAN2と連結部203の中心からP1方向に延びる直線との交点から屈曲部515の方向に延びる接線TAN2を基準として、連結部203の中心に近づく方向(時計回りの方向)が正の値である。
図10の(A)~(D)に示すように、オフセット大の条件における角度φを「φ1」、オフセット中の条件における角度φを「φ2」、オフセット小の条件における角度φを「φ3」、収納状態における角度φを「φ4」という。
【0065】
角度φは、φ1<φ2<φ3<φ4であり、オフセット量が小さくなるにしたがって大きくなる。
図10の(A)に示すように、角度φはオフセット大の状態において0°よりも大きい。したがって、連結部203は摺動部550に押しつけられた状態で摺動する。
図10の(C)~(D)に示すように、オフセット小から収納状態に移行するまでの間に第2リンクアーム22が押す力の向きが、背面視において左側を向く方向から右側を向く方向に変化(左右逆転)するため、角度φは90°を越える。なお、角度φが90°を越えると、第2リンクアーム22から所定以上の力が加えられても、連結部203は、第2端部520(第3位置)に向かって摺動部550上を移動することがなく、連結部203は屈曲部515で係止(保持)される。したがって、角度φが90°を越えるような場合(収容状態を含む)には、連結部203は、第1端部510(第1位置)から屈曲部515(第2端部)までの間でしか移動することができず、リンク機構が大きく崩れることがないため、逃げ機構部50により作業部40の向きは僅かしか変化しない。
【0066】
図10において、角度φが小さいほど、第2リンクアーム22によって押された力のうち、連結部203が摺動部550上を移動する方向の力の成分(摺動部550に平行な成分)が大きくなる。したがって、角度φが小さいほど、第2リンクアーム22により押される力によって、連結部203が摺動部550を移動しやすくなる。つまり、オフセット量が大きいほど、連結部203が第2リンクアーム22によって押される力が弱くても、連結部203は摺動部550を移動する。つまり、作業部40に前方からかかる力が弱くても、連結部203が大きく移動してオフセット機構部20の平行リンクが崩れ、作業部40の向きが変わる。なお、角度φが大きくなるに従い、第2リンクアーム22によって押さる力のうち、摺動部550で受ける力の比率が大きくなり、弾性部材60で受ける力の比率が小さくなる。
【0067】
本実施形態では、
図9及び
図10の各々の(A)に示すように、オフセット量が最大の場合に、角度θは角度φより大きい。この構成によって、作業部40が障害物に衝突しやすいオフセット量が最大の場合において、通常の作業時には作業部40の向きを固定し、障害物に衝突し、作業部40に所定のしきい値を超える力がかかった場合、(その後に作業部40にかかる力の弱くても)スムーズに作業部40を後方に逃げさせることができ、作業部40の損傷を防止することが可能である。
【0068】
図9及び
図10の各々の(A)~(C)を考慮すると、オフセット量が大きい場合、連結部203が第2リンクアーム22から押された場合に、連結部203が摺動部530に当接した状態から外れにくいが、連結部203が当接状態から外れると、連結部203が大きな力を受けなくても、連結部203が摺動部550を第2端部520に向かって移動する。これにより、作業部40が僅かな外力を受けただけでは作業部40が逃げることがなく、安定して作業を続けることができる一方、作業部40に所定の力以上の外力が加わったときには、速やかに作業部40を後方へ逃がすことができる。一方、オフセット量が小さい場合、オフセット量が大きい場合に比べて連結部203が当接状態から外れやすくなっている。そして、当接状態から外れた後は、オフセット量が小さくなるほど摺動部550(の内壁)で受ける力が大きくなる構成であるため、弾性部材60に係る力を小さくすることができる。また、角度φが90°を越えた場合には、連結部203にかかる力の大きさに拘わらず、連結部203は屈曲部515までしか移動できないため、収納状態においては逃げ機構部50により作業部40の向きが大きく変わることがない。上記の構成を換言すると、オフセット量が相対的に大きいオフセット大(A)の状態において角度θは角度φより大きく、オフセット量が相対的に小さいオフセット小(C)の状態において角度θは角度φより小さい。つまり、オフセット量によって角度θと角度φの大小関係が逆転する。
【0069】
図11は、本発明の一実施形態に係るオフセット作業機において、障害物に接触した後に作業部40が元の状態に戻る際、第2端部520(第3位置)から第1端部510(第1位置)まで移動する連結部203と移動制限部500との位置関係を示す図である。
図5の(C)に示すように、第2リンクアーム22に押されることによって第2端部520まで移動した連結部203は、第2リンクアーム22からの押圧がなくなると、弾性部材60の復元力によって第1端部510に戻ろうとする。この場合、連結部203は摺動部560と摺動しながら第2端部520から第1端部510に向かって移動する。なお、説明の便宜上、
図11において弾性部材60は省略されている。
【0070】
図11において、連結部203と摺動部560との接点CP3における接線TAN3が延びる方向(第3接線方向)と、弾性部材60が連結部203を押す力P2の方向(第2方向)とがなす角を「ψ」と表す。連結部203は、矢印の方向に摺動部560と摺動する。摺動部560上の各点における角度ψをそれぞれψ1、ψ2、ψ3、ψ4という。
【0071】
摺動部560は凹形状に湾曲している。その形状によって、角度ψはψ1<ψ2<ψ3<ψ4である。つまり、連結部203が第2端部520(第3位置)から第1端部510(第1位置)に向かって移動する間に、角度ψは徐々に大きくなる。
図11の例では、ψ1は42°、ψ2は47°、ψ3は53°、ψ4は59°である。角度ψが上記の関係を有していることで、連結部203が第2端部520付近に存在するときは、角度ψが小さく、弾性部材60の復元力における連結部203移動方向に作用する力の成分が大きく作用するため、連結部203が第1端部510の方向に戻りやすい。一方、連結部203が摺動部530付近に近づくと、弾性部材60による復元力による連結部203の移動速度が低下し、連結部203が摺動部530を越えて第1端部510に戻るときの衝撃を緩和することができる。本実施形態では、連結部203が第2端部520から摺動部530に達するまでの間、角度ψは単調増加する構成を例示したが、この構成に限定されない。連結部203が第2端部520から摺動部530に達するまでの間に、上記の条件を有する区間があればよい。
【0072】
なお、
図11の(B)は、摺動部560に相当する部分が直線状である構成を示す図である。
図11の(B)の場合であっても、上記の角度θ及び角度φの関係を備えているため、上記と同様の効果を得ることができる。
図11の(B)の構成の場合、角度ψ’はψ’1>ψ’2>ψ’3>ψ’4である。
図11の例では、ψ’1は61°、ψ’2は54°、ψ’3は48°、ψ’4は43°である。
【0073】
以上のように、本実施形態に係るオフセット作業機100では、第2リンクアーム22からの力は、移動制限部500(の内壁)と弾性部材60とで分散して受け止められ、作業部40のオフセット量に応じて、接線TAN1とP1方向とがなす角θが変化して、移動制限部500(の内壁)と弾性部材60とが第2リンクアーム22から受ける力の比率が異なっている。このため、オフセット量が大きく、作業部40が障害物に衝突しやすい状態では、障害物が衝突したときの作業部40の傾き(作業部40の後方への逃げ量)は相対的に大きい。一方、オフセット量が小さく、作業部40に障害物が衝突しにくい状態では、障害物が衝突したときの作業部40の傾きは相対的に小さい、又はその向きは略固定されて傾かない。また、本実施形態では、オフセット移動した作業部40が収納状態に移行する際に、接線TAN1に対する第2リンクアーム22から受ける力の向きが、(背面視において)左右逆転する。この力の逆転が生じたときに、移動制限部500(溝580)は、角度的に連結部203が摺動部550(第2摺動部)を移動しないように構成されており、収納状態の作業部40は、逃げ機構部50により移動することがほとんどない。
【0074】
なお、移動制限部500の構成は上記の形態に限定されない。例えば、第1溝581及び第2溝582の長さの関係が上記実施形態と異なっていてもよい。また、接線TAN1と接線TAN2との関係が上記実施形態と異なっていてもよい。また、移動制限部500が連続した一つの形状でなくてもよい。例えば、各機能に応じた部材が個別に設けられていてもよい。
【0075】
以上、本発明について図面を参照しながら説明したが、本発明は前述の各実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、各実施形態を基にして、当業者が適宜構成要素の追加、削除もしくは設計変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。さらに、前述した各実施形態は、相互に矛盾がない限り適宜組み合わせが可能であり、各実施形態に共通する技術事項については、明示の記載がなくても各実施形態に含まれる。
【0076】
前述した各実施形態の態様によりもたらされる作用効果とは異なる他の作用効果であっても、本明細書の記載から明らかなもの、又は、当業者において容易に予測し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0077】
10:装着部、 11:フロントフレーム、 13:ロワーリンク結合部、 14:入力軸、 15:動力伝達手段、 16:出力軸、 20:オフセット機構部、 21:第1リンクアーム、 22:第2リンクアーム、 23:第3リンクアーム、 24:伸縮部材、 30:動力伝達部、 31:駆動スプロケット、 32:従動スプロケット、 33:ローラーチェーン、 40:作業部、 41:作業ロータ、 41a:爪軸、 41b:刈刃、 42:刈刃駆動部、 50:逃げ機構部、 60:弾性部材、 100:オフセット作業機、 201:接続部、 203:連結部、 399:障害物、 500:移動制限部、 501:透視領域、 510:第1端部、 515:屈曲部、 520:第2端部、 530:摺動部、 550:摺動部、 560:摺動部、 610:回動軸部材、 620:当接部材、 630:軸部材、 CP1、CP2、CP3:接点、 TAN1、TAN2、TAN3:接線