(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ブドウ膜黒色腫の治療のための併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/496 20060101AFI20241121BHJP
A61K 31/495 20060101ALI20241121BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241121BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20241121BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61K31/496
A61K31/495
A61P35/00
A61P17/00
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2021518475
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(86)【国際出願番号】 US2019054500
(87)【国際公開番号】W WO2020072774
(87)【国際公開日】2020-04-09
【審査請求日】2022-09-28
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500436215
【氏名又は名称】ザ ボード オブ トラスティーズ オブ ザ ユニバーシテイ オブ イリノイ
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハーゲンロザー、ポール ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ボードロー、マシュー ウェスリー
【審査官】鈴木 理文
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-509965(JP,A)
【文献】国際公開第2018/170381(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/106492(WO,A1)
【文献】特表2018-516936(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/495
A61K 31/496
A61P 35/00
A61P 17/00
A61P 43/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫を治療するためのPAC-1
:
【化1】
およびエヌトレクチニブの組成物であって、前記PAC-1と前記エヌトレクチニブが、それを必要とする患者に、治療有効量のPAC-1、および治療有効量のエヌトレクチニブとして、同時にまたは連続的に投与することができるように製剤化されており、前記PAC-1および前記エヌトレクチニブが投与された用量レベルで前記黒色腫を相乗的に治療し、それによって前記黒色腫が治療される、上記組成物。
【請求項2】
ブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫の治療を必要とする患者におけるブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫を治療するための医薬の製造におけるPAC-1
:
【化2】
およびエヌトレクチニブの使用であって、前記PAC-1および前記エヌトレクチニブが、治療有効量のPAC-1および治療有効量のエヌトレクチニブとして、同時にまたは連続的に患者に投与することができ、それによって前記ブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫が治療される、上記使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、参照により本明細書に組み込まれる、2018年10月5日に出願された米国仮特許出願第62/742,063号に対する35U.S.C.§119(e)の下での優先権を主張する。
【0002】
政府の支援
本発明は、国立衛生研究所(National Institutes of Health)によって授与された助成金番号R01-CA120439の下で政府の支援を受けてなされた。政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ブドウ膜黒色腫(UM)は、眼の黒色腫の最も一般的な形態である。UM患者の約97%は、GNAQ/11に活性化変異を有しており、GNAQ/11シグナル伝達の構成的活性化を引き起こし、UM表現型を駆動する。UMの細胞生物学は文献で広く研究されてきたが、この幅広い知識は、UM患者のより良い治療と転帰に直接つながってはいない。原発性UM腫瘍は、典型的には放射線治療と手術の組合せで管理できるが、UM患者の51%は1~5年以内に転移性病変を示す。転移性ブドウ膜黒色腫(MUM)は、典型的には肝臓に存在し、15%未満の全1年生存率に結び付く非常に悪性度の高い癌である。
【0004】
この分野での現在の研究は、GNAQ/11の下流を標的とする単剤またはキナーゼ阻害剤の組合せを利用することに重点が置かれている。これらの中で最も注目すべきである、セルメチニブによるMEK阻害は、第II相臨床試験で有望な奏効率を示したが、第III相試験ではその臨床エンドポイントを達成できなかった。興味深いことに、UMは、オートファジー保護を介してキナーゼ阻害剤に応答した強力なアポトーシス細胞死を回避するという証拠がある。この強力な細胞死の防止は、臨床での有効性の低下につながり得る。
【0005】
ブドウ膜黒色腫およびUMに関連する変異に対する現在の標的薬物治療はない。したがって、UMを有する患者における全生存率を改善することができる有効な標準的療法または治療が必要である。
【発明の概要】
【0006】
ブドウ膜黒色腫がオートファジー保護を介してキナーゼ阻害剤に応答した強力なアポトーシス細胞死を回避することを示す証拠を考慮して、ブドウ膜黒色腫において高レベルのアポトーシス細胞死を誘導するために、キナーゼ阻害と組み合わせたプロカスパーゼ3の直接活性化を検討した。PAC-1と特定のキナーゼ阻害剤の組合せは、正常な(非癌性)細胞にはほとんどまたは全く影響を及ぼすことなく、黒色腫細胞を効果的に死滅させることが見出された。したがって、本開示は、
(a)化合物PAC-1:
【化1】
(b)少なくとも1つの第2の活性薬剤であって、チロシンキナーゼの阻害剤、アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の阻害剤、またはそれらの組合せである第2の活性薬剤;および
(c)任意で、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、またはそれらの組合せ
を含む組成物を提供する。
【0007】
いくつかの実施形態では、第2の活性薬剤は、エヌトレクチニブ、ドルソモルフィン、またはそれらの組合せである。
【0008】
本開示はまた、癌細胞を有効量の本明細書に記載の組成物と接触させ、それによって癌細胞の成長または増殖を阻害することを含む、(黒色腫)癌細胞の成長または増殖を阻害する方法を提供する。さらに、本開示は、細胞を本明細書に記載の有効量の組成物と接触させ、それによって黒色腫細胞においてアポトーシスが誘導されることを含む、黒色腫細胞においてアポトーシスを誘導する方法を提供する。
【0009】
本開示はまた、癌、例えば黒色腫を治療する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の化合物PAC-1および有効量の第2の活性薬剤を同時にまたは連続的に投与し、それによって任意で上記の組成物を全身的に形成し、それによって癌が治療されることを含む方法を提供する。様々な実施形態では、癌は、ブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫である。
【0010】
したがって、本発明は、新規組成物、および成人または非成人のヒトなどの哺乳動物における癌の治療に有用な薬剤を製造するための組成物を提供する。
【0011】
本発明は、薬物療法で使用するための本明細書に記載の組成物の使用を提供する。薬物療法は、癌、例えば皮膚癌(黒色腫)または眼の癌(ブドウ膜黒色腫)を治療することができる。本発明はまた、哺乳動物における疾患、例えばヒトにおける黒色腫を治療するための薬剤を製造するための、本明細書に記載の組成物の使用を提供する。薬剤は、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体を含むことができる。
【0012】
以下の図面は、本明細書の一部を形成し、本発明の特定の実施形態または様々な態様をさらに実証するために含まれる。場合によっては、本発明の実施形態は、本明細書に提示される詳細な説明と組み合わせて添付の図面を参照することによって最もよく理解することができる。この説明および添付の図面は、本発明の特定の具体的な例または特定の態様を強調し得る。しかしながら、当業者は、例または態様の一部が、本発明の他の例または態様と組み合わせて使用され得ることを理解するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】ブドウ膜黒色腫細胞株のパネル全体でのプロカスパーゼ3(PC-3)の相対的発現。
【
図2】UM細胞株MEL270をPAC-1と小分子阻害剤の組合せと共に72時間インキュベートして処理したときに観察された細胞死の割合。MEL270はGNAQ変異細胞株である。PAC-1+エヌトレクチニブの組合せからのデータをボックス内に示す。示されているデータは、2回の独立した実験の平均である。
【
図3】エヌトレクチニブと組み合わせたPAC-1は、UM細胞株のパネル全体で相乗作用を示す。細胞死および対応するCI値を、72時間のインキュベーション後に計算した。細胞株をそれらのドライバー変異によって表示する。CI値<1は相乗作用的であり、値が小さいほどより高い相乗作用のレベルを表す。CI値=1は相加作用を示す。CI値>1は、2つの薬剤間の拮抗作用を示す。示されているデータは、H460KRAS細胞株を除き、少なくとも3回の独立した実験の平均である;エラーをs.e.m.として表す;4,000細胞/ウェル、アラマーブルー蛍光;死滅対照:ラプチナール。
【
図4】PAC-1+エヌトレクチニブは、広い濃度範囲にわたって幅広い相乗作用を示す。示されているデータは少なくとも3つの独立した複製物の平均であり、エラーはs.e.m.で表されている。
【
図5】PAC-1+エヌトレクチニブは、UM細胞株に対して有意な活性を有する。平均CIは、2μM PAC-1+0.5μMエヌトレクチニブ、2μM PAC-1+1μMエヌトレクチニブ、4μM PAC-1+0.5μMエヌトレクチニブ、および4μM PAC-1+1μMエヌトレクチニブで観察された細胞死を平均することによって計算した。特に明記されない限り、示されている値は少なくとも2回の独立した実験の平均であり、エラーは平均のs.e.mである。◆はN=1の結果を表す。
【
図6】示されているデータは、少なくとも3回の独立した実験の平均である;エラーはs.e.m.として表されている;4,000細胞/ウェル、72時間のインキュベーション、アラマーブルー蛍光;死滅対照:ラプチナール。(A)PAC-1とエヌトレクチニブはUM
Gqにおいて相乗作用する。(B)PAC-1とエヌトレクチニブはUM
G11/WTにおいて相乗作用する。(C)併用指数(CI)の解釈:
【数1】
ここで、D
n≡50%の成長阻害をもたらす薬剤nの併用用量;Dx
n≡50%の成長阻害をもたらす薬剤nの単剤用量。
【発明を実施するための形態】
【0014】
システインプロテアーゼのカスパーゼファミリーのメンバーは、アポトーシスの開始と実行の両方において重要な役割を果たす。アポトーシスにとって最も重要なのは、プロカスパーゼ3からカスパーゼ3へのタンパク質分解変換である。内因性と外因性の両方のアポトーシス経路が集結してプロカスパーゼ3を活性化し、カスパーゼ3には100を超える細胞基質があるため、プロカスパーゼ3のカスパーゼ3への活性化はアポトーシスカスケードにおける極めて重要で拘束性の事象である。プロカスパーゼ3レベルは、膠芽腫、乳癌、結腸癌、肺癌、リンパ腫、神経芽細胞腫、黒色腫、および肝臓癌を含む様々な腫瘍において上昇している。プロカスパーゼ活性化化合物1(PAC-1)は小分子であり、インビトロでプロカスパーゼ3活性を増強し、培養下の癌細胞のアポトーシス死を誘導し、複数のマウス異種移植モデルにおいて有効である。細胞のプロカスパーゼ3レベルとPAC-1のアポトーシス誘導特性の間には強い相関関係がある。本明細書に記載されるように、PAC-1と特定のキナーゼ阻害剤の組合せは、正常な(非癌性)細胞にはほとんどまたは全く影響を及ぼすことなく、黒色腫細胞を効果的に死滅させることが見出された。
【0015】
定義
以下の定義は、本明細書および特許請求の範囲の明確で一貫した理解を提供するために含まれる。本明細書で使用される場合、列挙される用語は以下の意味を有する。本明細書で使用される他のすべての用語および語句は、当業者が理解するそれらの通常の意味を有する。そのような通常の意味は、R.J.Lewis,John Wiley&Sons,New York,N.Y.,2001によるHawley’s Condensed Chemical Dictionary 14th Editionなどの専門用語辞典を参照することによって得られ得る。
【0016】
本明細書における「一実施形態」、「1つの実施形態」などへの言及は、記載される実施形態が特定の態様、特徴、構造、部分、または特性を含み得るが、すべての実施形態が必ずしもその態様、特徴、構造、部分、または特性を含むとは限らないことを示す。さらに、そのような語句は、必ずしもそうとは限らないが、本明細書の他の部分で言及される同じ実施形態を指し得る。さらに、特定の態様、特徴、構造、部分、または特性が一実施形態に関連して説明される場合、明示的に記載されているかどうかにかかわらず、他の実施形態に関するそのような態様、特徴、構造、部分、または特性に影響を及ぼすまたは結び付くことは、当業者の知識の範囲内である。
【0017】
単数形「1つの」、および「その」は、文脈上明確に異なる指示がない限り、複数形の言及を含む。したがって、例えば、「1つの化合物」への言及は、複数のそのような化合物を含み、その結果、1つの化合物Xは、複数の化合物Xを含む。さらに、特許請求の範囲は、任意の要素を除外するように作成され得ることに留意されたい。したがって、この記述は、本明細書に記載の任意の要素、および/または特許請求の範囲の要素の列挙または「消極的」制限の使用に関連して、「単独で」、「のみ」などの排他的な用語を使用するための先行詞として機能することが意図されている。
【0018】
「および/または」という用語は、この用語が関連付けられている項目のいずれか1つ、項目の任意の組合せ、または項目のすべてを意味する。「1つ以上」および「少なくとも1つ」という語句は、特にその使用法の文脈で読まれる場合、当業者によって容易に理解される。例えば、この語句は、1、2、3、4、5、6、10、100、または記載されている下限より約10、100、または1000倍高い上限を意味し得る。
【0019】
当業者に理解されるように、成分の量、分子量、反応条件などの特性を表すものを含むすべての数値は概算値であり、すべての場合に「約」という用語で修飾されていてもよいと理解される。これらの値は、本明細書の説明の教示を利用して当業者が得ようとする所望の特性に応じて異なり得る。そのような値は、それらのそれぞれの試験測定で認められた標準偏差から必然的に生じる変動性を本質的に含むことも理解される。値が概算値として表される場合、先行詞「約」を使用することによって、修飾語である「約」のない特定の値もさらなる態様を形成することが理解されよう。
【0020】
「約」と「およそ」という用語は互換的に使用される。どちらの用語も、指定された値の±5%、±10%、±20%、または±25%の変動を指すことができる。例えば、「約50」パーセントは、いくつかの実施形態では、45から55パーセントまでの変動、または特定の請求項によって別段に定義される変動を担うことができる。整数範囲の場合、「約」という用語は、範囲の各末端に記載される整数よりも大きいおよび/または小さい1つまたは2つの整数を含むことができる。本明細書で別段の指示がない限り、「約」および「およそ」という用語は、個々の成分、組成物、または実施形態の機能に関して同等である、記載されている範囲に近い値、例えば重量パーセントを含むことが意図されている。「約」および「およそ」という用語は、この段落で前述したように、列挙されている範囲の終点を修飾することもできる。
【0021】
当業者に理解されるように、あらゆる目的のために、特に書面による説明を提供することに関して、本明細書に列挙されるすべての範囲はまた、そのありとあらゆる可能な部分範囲および部分範囲の組合せ、ならびに範囲を構成する個々の値、特に整数値を包含する。したがって、2つの特定の単位の間の各単位も開示されることが理解される。例えば、10から15が開示される場合、11、12、13、および14もまた、個別に、および範囲の一部として開示される。列挙される範囲(例えば重量パーセントまた炭素基)は、範囲内の各特定の値、整数、小数、または同一性を含む。列挙される範囲は、少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、または10等分に分解される同じ範囲を十分に説明し、可能にすると容易に認識され得る。非限定的な例として、本明細書で論じられる各範囲は、下3分の1、中3分の1、および上3分の1などに容易に分解することができる。同じく当業者に理解されるように、「まで」、「少なくとも」、「より大きい」、「より小さい」、「より多い」、「以上」などのすべての言語は、列挙される数を含み、そのような用語は、上記で論じたように後で部分範囲に分解することができる範囲を指す。同様に、本明細書に列挙されるすべての比率は、より広い比率に含まれるすべての部分的な比率も含む。したがって、ラジカル、置換基、および範囲について列挙される特定の値は、例示のみを目的とする;それらは、ラジカルおよび置換基についての他の定義された値または定義された範囲内の他の値を除外しない。さらに、各範囲の終点は、その他の終点に関して、およびその他の終点とは独立して、意味をなすことも理解されよう。
【0022】
当業者はまた、メンバーがマルクーシュグループなどの一般的な方法で一緒にグループ化される場合、本発明は、全体として列挙されたグループ全体だけでなく、グループの各メンバーを個別に、および主グループのすべての可能なサブグループを包含することを容易に認識するであろう。さらに、すべての目的のために、本発明は、主グループだけでなく、1つ以上のグループメンバーが存在しない主グループも包含する。したがって、本発明は、列挙されるグループのいずれか1つ以上のメンバーの明示的な除外を想定する。したがって、但し書きは、開示されるカテゴリまたは実施形態のいずれかに適用され得、それによって、列挙される要素、種、または実施形態のいずれか1つ以上が、例えば明示的な消極的制限において使用するために、そのようなカテゴリまたは実施形態から除外され得る。
【0023】
「接触すること」という用語は、例えば溶液中、反応混合物中、インビトロ、またはインビボで、例えば生理学的反応、化学反応、または物理的変化をもたらすために、細胞レベルまたは分子レベルを含む、触れる、接触する、または密接もしくは近接させる行為を指す。
【0024】
「有効量」は、疾患、障害、および/もしくは状態を治療するために、または記載される効果をもたらすために有効な量を指す。例えば、有効量は、治療されている状態または症状の進行または重症度を軽減するのに有効な量であり得る。治療有効量の決定は、特に本明細書で提供される詳細な開示に照らして、十分に当業者の能力の範囲内である。「有効量」という用語は、例えば、宿主における疾患もしくは障害を治療もしくは予防するために、または疾患もしくは障害の症状を治療するために有効である、本明細書に記載の化合物の量、または本明細書に記載の化合物の組合せの量を含むことが意図されている。したがって、「有効量」は、一般に、所望の効果を提供する量を意味する。
【0025】
あるいは、本明細書で使用される「有効量」または「治療有効量」という用語は、治療されている疾患または状態の症状の1つ以上をある程度緩和する、投与される薬剤または組成物または組成物の組合せの十分な量を指す。結果は、疾患の徴候、症状、もしくは原因の軽減および/もしくは緩和、または生物学的システムの他の望ましい変化であり得る。例えば、治療用途の「有効量」は、疾患の症状の臨床的に有意な減少を提供するために必要とされる、本明細書に開示されるような化合物を含む組成物の量である。個々の症例における適切な「有効」量は、用量漸増試験などの技術を使用して決定され得る。用量は、1回以上の投与で投与することができる。しかし、有効用量と見なされるものの正確な決定は、患者の年齢、サイズ、疾患の種類または程度、疾患の病期、組成物の投与経路、使用される補足療法の種類または程度、進行中の疾患過程、および所望される治療の種類(例えば積極的治療対従来の治療)を含むがこれらに限定されない、各患者に個別の因子に基づき得る。
【0026】
「治療すること」、「治療する」および「治療」という用語は、(i)疾患、病的もしくは医学的状態の発生を防ぐこと(例えば予防);(ii)疾患、病的もしくは医学的状態を阻害するかもしくはその発症を阻止すること;(iii)疾患、病的もしくは医学的状態を緩和すること;および/または(iv)疾患、病的もしくは医学的状態に関連する症状を軽減することを含む。したがって、「治療する」、「治療」、および「治療すること」という用語は、予防にまで拡大することができ、治療されている状態または症状の進行または重症度を予防する、予防、予防すること、低下させること、停止させることまたは逆転させることを含み得る。したがって、「治療」という用語は、必要に応じて、医学的、治療的、および/または予防的投与を含むことができる。
【0027】
本明細書で使用される場合、「対象」または「患者」は、疾患または他の悪性腫瘍の症状を有するか、またはそのリスクがある個体を意味する。患者は、ヒトまたは非ヒト動物であり得、例えば、本明細書に記載されるマウスモデルなどの研究目的のための「モデル系」として使用される動物系統または種を含み得る。同様に、患者は、成体または若齢(例えば小児)のいずれかを含み得る。さらに、患者は、任意の生物、好ましくは本明細書で企図される組成物の投与から利益を受ける可能性のある哺乳動物(例えばヒトまたは非ヒト動物)を意味し得る。哺乳動物の例には、哺乳動物クラス:ヒト、チンパンジーおよび他の類人猿などの非ヒト霊長動物およびサル種;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどの家畜;ウサギ、イヌおよびネコなどの飼育動物;ラット、マウスおよびモルモットなどのげっ歯動物を含む実験動物の任意のメンバーが含まれるが、これらに限定されない。非哺乳動物の例には、鳥、魚などが含まれるが、これらに限定されない。本明細書で提供される方法の一実施形態では、哺乳動物はヒトである。
【0028】
本明細書で使用される場合、「提供すること」、「投与すること」、「導入すること」という用語は、本明細書では互換的に使用され、本開示の組成物の所望の部位への少なくとも部分的な局在化をもたらす方法または経路によって、組成物を対象内に配置することを指す。組成物は、対象内の所望の場所への送達をもたらす任意の適切な経路によって投与することができる。
【0029】
本明細書に記載の組成物は、組成物の安定性および活性を延長するためのさらなる組成物と共に、または他の治療薬と組み合わせて投与され得る。
【0030】
「阻害する」、「阻害すること」、および「阻害」という用語は、疾患、感染、状態、または細胞群の成長または進行を遅らせる、停止させる、または逆転させることを指す。阻害は、例えば、治療または接触がない場合に起こる成長または進行と比較して、約20%、40%、60%、80%、90%、95%、または99%より大きくなり得る。
【0031】
本明細書で使用される「実質的に」という用語は、広義の用語であり、限定されることなく、必ずしも全面的ではないが主に指定されているものであることを含む、その通常の意味で使用される。例えば、この用語は、完全な数値の100%ではない可能性のある数値を指し得る。完全な数値は、約1%、約2%、約3%、約4%、約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約15%、または約20%少ない可能性がある。
【0032】
ブドウ膜黒色腫。「ブドウ膜黒色腫」という用語は、集合的にブドウ膜と称される眼の部分が関与する眼の癌(黒色腫)を指す。ブドウ膜黒色腫は、脈絡膜、毛様体、および虹彩を含む眼のブドウ膜から生じる。腫瘍は、典型的にはブドウ膜内に存在する色素細胞(メラノサイト)から生じる。ブドウ膜黒色腫は、成体における最も一般的な原発性眼内悪性腫瘍である。皮膚黒色腫とは生物学的に異なり、すべての黒色腫の約3%~5%を占める。現在、転移性ブドウ膜黒色腫を有する個体のための承認されたまたは有効な全身治療の選択肢はない。GNAQまたはGNA11の変異はブドウ膜黒色腫の80%に認められ、RAS/RAF/MEK/ERK経路の構成的活性化をもたらす。
【0033】
他の場所で発生して虹彩に侵入するのではなく、虹彩内で発生する真の虹彩黒色腫は、病因と予後が異なるため、その他の腫瘍は、しばしば集合的に後部ブドウ膜黒色腫と称される。虹彩黒色腫は、紫外線損傷に関連するBRAF変異を高頻度で保持するという点で、皮膚黒色腫とより多くの共通点を有する。
【0034】
皮膚黒色腫は、メラノサイトとして知られる皮膚の色素産生細胞から発生する癌である。一方、非皮膚黒色腫は、眼、鼻の内側、粘膜(例えば口、腸、膣、肛門、または直腸の内側)などの、典型的には皮膚とは考えられない場所に出現する。
【0035】
発明の実施形態
本開示は、
(a)化合物PAC-1:
【化2】
(b)少なくとも1つの第2の活性薬剤であって、チロシンキナーゼの阻害剤、アデノシン一リン酸活性化プロテインキナーゼ(AMPK)の阻害剤、またはそれらの組合せである第2の活性薬剤;および
(c)任意で、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、担体、またはそれらの組合せ
を含む組成物の様々な実施形態を提供する。
【0036】
いくつかの実施形態では、第2の活性薬剤は、神経栄養受容体チロシンキナーゼ(NTRK)、C-ros癌遺伝子1(ROS1)、未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)、またはそれらの組合せの阻害剤である。他の実施形態では、第2の活性薬剤は、トロポミオシン受容体キナーゼA(TrkA)、トロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)、トロポミオシン受容体キナーゼC(TrkC)、またはそれらの組合せの阻害剤である。さらなる実施形態では、第2の活性薬剤は、ヤヌスキナーゼ1(JAK1)、ヤヌスキナーゼ2(JAK2)、ヤヌスキナーゼ3(JAK3)、活性化CDC42キナーゼ1(ACK1)、インスリン様成長因子1受容体(IGF1R)、接着斑キナーゼ(FAK)、fms様チロシンキナーゼ3(FLT3)、乳房腫瘍キナーゼ(BRK)、インスリン受容体(IR)、オーロラ2キナーゼ(AUR2)、RET受容体チロシンキナーゼ(RET)、非受容体型チロシンプロテインキナーゼ1(TNK1)、またはそれらの組合せの阻害剤である。
【0037】
さらなる実施形態では、第2の活性薬剤はエヌトレクチニブである。さらに他の実施形態では、第2の活性薬剤はドルソモルフィンである。さらなる実施形態では、第2の活性薬剤は、リンシチニブまたはVS-4718(PND-1186)である。さらなる様々な実施形態では、第2の活性薬剤は、R1507、MK0646、OSI-906、BIIB022、フィギツムマブ(CP-751,871)、AXL1717、AMG479、アレクチニブ、スニチニブ、イマチニブ、ソラフェニブ、ニロチニブ、ベバシズマブ、イピリムマブ、シクスツムマブ、またはそれらの組合せである。
【0038】
様々な実施形態では、第2の活性薬剤は、表A(下記)の標的について示されている阻害剤である:
【表1】
【0039】
様々な実施形態では、第2の活性薬剤は、米国特許第8,299,057号に開示されている1つ以上の化合物であり得、これらの化合物およびそれらを説明する式は、参照により本明細書に組み込まれる。さらなる様々な実施形態では、第2の活性薬剤はIGF1Rの阻害剤であり、IGF1R阻害剤は、AG538、AG1024、NVP-AEW541、またはフィギツムマブである。他の様々な実施形態では、第2の活性薬剤は、FAK(またはプロテインチロシンキナーゼ2(PTK2))の阻害剤であり、FAK阻害剤は、PF-573,228、PF-562,271、NVP-226、Y15、デファクチニブ、またはVS-6063である。様々な実施形態では、第2の活性薬剤は、ブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫の治療に対してPAC-1と相乗的である量で投与され得るものである。
【0040】
様々な実施形態では、PAC-1および/または第2の活性薬剤は、経口、静脈内、皮下、吸入、筋肉内、硝子体内、または当業者に公知の任意の経路によって投与される。
【0041】
上記に開示された組成物の他の様々な実施形態では、第2の活性薬剤の濃度は、約1nM~約100μMである。さらなる実施形態では、第2の活性薬剤の濃度は、約1ナノモル~約10,000ナノモルである。さらに他の実施形態では、PAC-1の濃度は、約0.1μM~約50μMである。さらなる実施形態では、PAC-1の濃度は、約1μM~約15μMである。さらにいくつかの他の実施形態では、PAC-1の濃度は、約1μM~約5μMである。
【0042】
さらなる様々な実施形態では、PAC-1および第2の活性薬剤(SAA)の全身濃度は、表B
*(下記)に示されている:
【表2】
【0043】
本開示はさらに、a)担体が、水、緩衝剤、糖、セルロース、シクロデキストリン、ジメチルスルホキシド、ポリエチレングリコール、トコフェロール、リポソーム、ミセル、もしくはそれらの組合せを含み、および/またはb)賦形剤が、結合剤、潤滑剤、吸着剤、ビヒクル、崩壊剤、防腐剤、もしくはそれらの組合せを含む、上記の組成物を提供する。
【0044】
本開示は、癌細胞を本明細書に記載の有効量の組成物と接触させ、それによって癌細胞の成長または増殖を阻害することを含む、(黒色腫)癌細胞の成長または増殖を阻害する方法を提供する。さらに、本開示は、癌細胞を本明細書に開示される有効量の組成物と接触させ、それによって癌細胞においてアポトーシスが誘導されることを含む、(黒色腫)癌細胞においてアポトーシスを誘導する方法を提供する。
【0045】
さらに、本開示はまた、癌(黒色腫)を治療する方法であって、それを必要とする患者に、治療有効量の化合物PAC-1および有効量の第2の活性薬剤を同時にまたは連続的に投与して、任意で本明細書に記載の組成物を全身的に形成し、それによって癌が治療されることを含む方法を提供する。様々な実施形態では、PAC-1は、第2の活性薬剤と相乗的であり、第2の活性薬剤は、エヌトレクチニブ、ドルソモルフィン、または表Aからの化合物であり、薬剤の濃度は、表Bに列挙されているものであり得る。
【0046】
本開示の様々な実施形態では、癌は、ブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫である。他の実施形態では、ブドウ膜黒色腫は、GNAQ変異型、GNA11変異型、GNAQ野生型、またはGNA11野生型のブドウ膜黒色腫である。さらなる実施形態では、癌の治療を必要とする患者における癌の治療に対する抵抗性は、低減、遅延、または排除される。さらに他の実施形態では、癌の治療を必要とする患者における癌の転移は、低減、遅延、または排除される。癌の転移の低減、遅延、または排除は、当業者に公知の手順によって決定することができる。
【0047】
本開示はまた、PAC-1がインビボで第2の活性薬剤と相乗作用する方法であって、
a)PAC-1の濃度は約0.1μM~約50μMであり、第2の活性薬剤の濃度は約1nM~約100μMであるか;
b)PAC-1の濃度は約1μM~約15μMであり、第2の活性薬剤の濃度は約1nM~約10,000nMであるか;または
c)PAC-1の濃度は約1μM~約5μMであり、第2の活性薬剤の濃度は約1nM~約1000nMである、
方法を提供する。
【0048】
本明細書の開示の他の実施形態では、PAC-1の濃度は、約0.5μM、約1.5μM、約2μM、約2.5μM、約3μM、約3.5μM、約4μM、約4.5μM、約5μM、約6μM、約7μM、約8μM、約9μM、または約10μMである。
【0049】
いくつかの実施形態では、化合物PAC-1および第2の活性薬剤は、癌患者に同時に投与される。他の実施形態では、PAC-1および第2の活性薬剤は、癌患者に連続的に投与される。一実施形態では、PAC-1は、第2の活性薬剤の前に癌患者に投与される。別の実施形態では、PAC-1は、第2の活性薬剤の後に癌患者に投与される。特定の実施形態では、第2の活性薬剤は、エヌトレクチニブ、ドルソモルフィン、リンシチニブ、VS-4718、またはそれらの組合せである。
【0050】
本開示はさらに、黒色腫の治療のための薬剤を調製するための、本明細書に開示される組成物または組成物の組合せの使用を提供する。組成物は、PAC-1を含む組成物、エヌトレクチニブなどの第2の活性薬剤を含む組成物、またはそれらの組合せ、またはPAC-1と第2の活性薬剤を含む組成物であり得る。
【0051】
様々な実施形態では、黒色腫は、ブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫である。さらなる様々な実施形態では、ブドウ膜黒色腫は、GNAQ変異もしくはGNA11変異を有するか、またはGNAQ野生型もしくはGNA11野生型である。
【0052】
様々な実施形態では、PAC-1および第2の活性薬剤(SAA)の用量、例えば1日用量は、表C
*(下記)に示されている:
【表3】
【0053】
当業者に認識されるように、本明細書における特定の濃度または濃度範囲の列挙は、適切な投与量または投与量範囲、例えば上記の表Cに列挙されている、または以下で論じるような、範囲もしくは範囲の端点と交換することができる。様々な実施形態では、投与されるPAC-1および第2の活性薬剤の量は、ブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫の治療に対して相乗的である量である。
【0054】
他の実施形態では、PAC-1の総用量は、約75mg、約150mg、約250mg、約375mg、約450mg、約625mg、約750mg、または約825mgであり、総用量は、1日1回、1日2回、または1日3回投与される。
【0055】
本開示は、癌(例えば黒色腫)の治療を必要とする患者における癌(例えば黒色腫)を治療する方法で使用するための第2の活性薬剤(SAA)および化合物PAC-1の組合せの様々な実施形態を提供し、その使用は、治療有効量のSAAおよび有効量の化合物PAC-1を同時にまたは連続的に患者に投与し、それによって癌が治療されることを含む。別の実施形態は、ブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫の治療を必要とする患者におけるブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫を治療する方法で使用するためのPAC-1の組成物およびエヌトレクチニブの組成物を提供し、その使用は、治療有効量のPAC-1の組成物および治療有効量のエヌトレクチニブの組成物を同時にまたは連続的に患者に投与し、それによってブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫が治療されることを含む。治療有効量は、ブドウ膜黒色腫または皮膚黒色腫の治療のために投与されたときに相乗的である量であり得る。
【0056】
他の実施形態は、前記使用のためのSAAおよび化合物PAC-1の組合せを提供し、SAAおよび化合物PAC-1は同時に投与される。他の実施形態は、前記使用のためのSAAおよび化合物PAC-1の組合せを提供し、SAAおよび化合物PAC-1は連続的に投与される。他の実施形態は、前記使用のためのSAAおよび化合物PAC-1の組合せを提供し、SAAは化合物PAC-1の前に投与される。他の実施形態は、前記使用のためのSAAおよび化合物PAC-1の組合せを提供し、SAAは化合物PAC-1の後に投与される。
【0057】
本開示は、体積、質量、パーセンテージ、比率などの変数に対する範囲、限度、および偏差を提供する。「1」から「2」などの範囲は、整数および小数を含む連続する数の範囲を意味することが当業者には理解される。例えば、1~10は、1、2、3、4、5、…9、10を意味する。また、1.0、1.1、1.2.1.3、…、9.8、9.9、10.0も意味し、および1.01、1.02、1.03なども意味する。開示される変数が「10」未満の数である場合、上記で論じたように、10未満の整数および小数を含む連続する範囲を意味する。同様に、開示される変数が「10」より大きい数である場合、10より大きい整数および小数を含む連続する範囲を意味する。これらの範囲は、上記で意味を説明した「約」という用語によって修飾され得る。
【0058】
結果および考察
UM細胞株におけるプロカスパーゼ3活性化戦略。プロカスパーゼ3活性化化合物であるPAC-1は、アポトーシスを誘導する活性カスパーゼ3に対するプロカスパーゼ3の強力な活性化因子であることが示されている。UM細胞株はプロカスパーゼ3を発現し(
図1)、PAC-1は、UM細胞株のパネルにおいて単剤として活性を有する(表D)。
【表4】
【0059】
ブドウ膜黒色腫の現在の治療。ブドウ膜黒色腫で報告された40を超える臨床試験があり、平均奏効率は4%である。現在の標準治療はダカルバジンである。転移性ブドウ膜黒色腫の患者におけるダカルバジンと組み合わせたセルメチニブの最近のランダム化臨床SUMMIT試験では、セルメチニブプラスダカルバジンの治療群において客観的奏効率は3%、無増悪生存期間は2.8ヶ月であった。3ヶ月および6ヶ月のPFS率は、それぞれ38%および10%であった。全生存期間はわずかに10ヶ月であった。
【0060】
エヌトレクチニブ。エヌトレクチニブは、NTRK、ROS1、およびALKにおける癌遺伝子再配列を標的とする強力なチロシンキナーゼ阻害剤である。2つの第I相試験は、チロシンキナーゼ阻害剤ナイーブ患者での活性と、実質的な頭蓋内活性を実証した。ROS1が再配列された肺癌では、エヌトレクチニブは持続的な疾患制御と無増悪生存期間の延長をもたらした。この薬剤は良好に忍容され、オンターゲットのトロポミオシン関連キナーゼA/B/C阻害によって媒介される有害事象を含む安全性プロフィールを有する。あらゆるグレードの最も一般的な治療関連有害事象は、疲労/無力症(46%、n=55/119)、味覚障害(42%、n=50/119)、知覚異常(29%、n=34/119)、吐き気(28%、n=33/119)、および筋肉痛(23%、n=27/119)であった。
【0061】
PAC-1と治療的に関連する阻害剤の組合せ。PAC-1は、キナーゼ阻害剤を含む様々な臨床的に関連する薬剤と相乗作用することが示されている(Mol.Cancer Ther.2016,15,1859;Cell Chem.Biol.2018,25,996)。この相乗作用を、PAC-1を様々な臨床的に関連するキナーゼ阻害剤と組み合わせてスクリーニングすることによって利用した。このバイアスをかけたスクリーニングの結果を
図2に提示する。
【0062】
PAC-1とエヌトレクチニブの組合せは、このスクリーニングの中で明らかに際立っている;例えば、単剤としてそれぞれ約16%の死滅をもたらすPAC-1とエヌトレクチニブの濃度は、併用では75%の死滅を誘導する(
図2)。エヌトレクチニブは、汎TRK融合、ALK融合、およびROS1融合キナーゼ阻害剤である。これらの3種類の融合タンパク質は、複数の種類の癌における重要なドライバー変化である。興味深いことに、これらの融合物、それらの親キナーゼ、および/またはオフターゲットキナーゼは、UMにおける主要な発癌ドライバーとしては報告されておらず、UMの未開拓の治療手段を指し示している可能性がある。この組合せをさらに検討するために、観察された相乗作用をUM細胞株のパネル全体で定量化した(
図3)。
【0063】
興味深いことに、最大の応答(細胞死とCI値で測定)はGNAQ/11細胞株で観察された。細胞死はGNAQ/11 WT細胞(MEL285およびMEL290)でより少なかったが、CI値は1未満であり、これらの細胞株での相乗作用を示唆する。変異型GNAQ UM細胞株で見られたこの作用は、PAC-1およびエヌトレクチニブの幅広い濃度にわたって一貫していた(
図4)。
【0064】
UM細胞におけるエヌトレクチニブの標的は解明されていないため、この組合せが相乗的であるかどうかを決定することを癌細胞株のパネル全体で試みた(
図5)。PAC-1とエヌトレクチニブの組合せは、UM GNAQ/11変異細胞株で最も有効かつ相乗的であるようである。他の黒色腫細胞株での平均CI値も1未満であり、相乗的な組合せを指し示すが、評価したその他の癌細胞株は相乗作用を示さない(
図5)。重要なことに、この組合せは有意な細胞死を引き起こさず、非癌性の正常な細胞株であるHFF-1では相乗的ではなかった。
【0065】
本明細書に記載されている結果は、ブドウ膜黒色腫の治療のための新しい戦略を提示する。PAC-1とエヌトレクチニブの併用は、ブドウ膜黒色腫および皮膚黒色腫の臨床治療のための刺激的な展望であることを証明した。エヌトレクチニブは、患者での有望な活性と限られた毒性で2つの第I相臨床試験を完了し、PAC-1は現在、ヒトでの第I相臨床試験が行われている。したがって、エヌトレクチニブとPAC-1の併用療法は、ブドウ膜黒色腫および密接に関連する癌の有効な臨床治療を提供することが期待される。
【0066】
医薬製剤
本明細書に記載の化合物は、例えば化合物を薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体と組み合わせることによって、治療用医薬組成物を調製するために使用することができる。化合物は、塩または溶媒和物の形態で担体に添加し得る。例えば、化合物が安定な非毒性の酸塩または塩基塩を形成するのに十分に塩基性または酸性である場合、塩としての化合物の投与が適切であり得る。薬学的に許容される塩の例は、生理学的に許容される陰イオンを形成する酸で形成される有機酸付加塩、例えばトシル酸塩、メタンスルホン酸塩、酢酸塩、クエン酸塩、マロン酸塩、酒石酸塩、コハク酸塩、安息香酸塩、アスコルビン酸塩、α-ケトグルタル酸塩、およびβ-グリセロリン酸塩である。塩酸塩、ハロゲン化物、硫酸塩、硝酸塩、重炭酸塩、および炭酸塩を含む適切な無機塩も形成され得る。
【0067】
薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知の標準的な手順を使用して、例えばアミンなどの十分に塩基性の化合物を適切な酸と反応させて生理学的に許容されるイオン性化合物を提供することによって得られ得る。カルボン酸のアルカリ金属(例えばナトリウム、カリウムもしくはリチウム)塩またはアルカリ土類金属(例えばカルシウム)塩も、類似の方法によって調製することができる。
【0068】
本明細書に記載の式の化合物は、医薬組成物として製剤化され、ヒト患者などの哺乳動物宿主に様々な形態で投与され得る。形態は、選択された投与経路、例えば経口または静脈内、筋肉内、局所もしくは皮下経路による非経口投与に特に適合させることができる。
【0069】
本明細書に記載の化合物は、不活性希釈剤または同化可能な食用担体などの薬学的に許容されるビヒクルと組み合わせて全身投与され得る。経口投与の場合、化合物は、ハードシェルまたはソフトシェルのゼラチンカプセルに封入するか、錠剤に圧縮するか、または患者の食事の食品に直接組み込むことができる。化合物はまた、1つ以上の賦形剤と組み合わせてもよく、摂取可能な錠剤、口腔錠、トローチ、カプセル、エリキシル、懸濁液、シロップ、カシェ剤などの形態で使用され得る。そのような組成物および調製物は、典型的には少なくとも0.1%の活性化合物を含む。組成物および調製物のパーセンテージは変動する可能性があり、好都合には、所与の単位剤形の重量の約0.5%~約60%、約1%~約25%、または約2%~約10%であり得る。そのような治療上有用な組成物中の活性化合物の量は、有効用量レベルを得ることができる量であり得る。
【0070】
錠剤、トローチ、丸剤、カプセルなどはまた、以下のうちの1つ以上を含み得る:トラガカントガム、アカシア、トウモロコシデンプンまたはゼラチンなどの結合剤;リン酸二カルシウムなどの賦形剤;トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、アルギン酸などの崩壊剤;およびステアリン酸マグネシウムなどの潤滑剤。スクロース、フルクトース、ラクトースもしくはアスパルテームなどの甘味料;またはペパーミント、冬緑油もしくはサクランボフレーバなどの香味料を添加してもよい。単位剤形がカプセルである場合、上記の種類の材料に加えて、植物油またはポリエチレングリコールなどの液体担体を含み得る。コーティングとして、または固体単位剤形の物理的形態を改変するために、他の様々な材料が存在し得る。例えば、錠剤、丸剤、またはカプセルを、ゼラチン、ワックス、シェラックまたは砂糖などでコーティングし得る。シロップまたはエリキシルは、活性化合物、甘味料としてのスクロースまたはフルクトース、防腐剤としてのメチルおよびプロピルパラベン、染料、ならびにサクランボまたはオレンジフレーバなどの香味料を含み得る。任意の単位剤形を調製する際に使用される任意の材料は、薬学的に許容され、使用される量で実質的に非毒性であるべきである。さらに、活性化合物は、徐放性調製物および装置に組み込まれ得る。
【0071】
活性化合物は、注入または注射によって静脈内または腹腔内に投与され得る。活性化合物またはその塩の溶液は、水中で調製することができ、任意で非毒性の界面活性剤と混合することができる。分散液は、グリセロール、液体ポリエチレングリコール、トリアセチン、もしくはそれらの混合物中で、または薬学的に許容される油中で調製することができる。通常の保存および使用条件下では、調製物は、微生物の成長を防ぐための防腐剤を含み得る。
【0072】
注射または注入に適した医薬剤形には、リポソームに封入されていてもよい、滅菌水溶液、分散液、または滅菌の注射用もしくは注入用溶液もしくは分散液の即時調製に適合された活性成分を含む滅菌粉末が含まれ得る。最終的な剤形は、無菌で流動性があり、製造および保存の条件下で安定であるべきである。液体担体またはビヒクルは、例えば水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、液体ポリエチレングリコールなど)、植物油、非毒性のグリセリルエステル、およびそれらの適切な混合物を含む溶媒または液体分散媒であり得る。適切な流動性は、例えばリポソームの形成によって、分散液の場合は必要な粒径の維持によって、または界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、様々な抗菌剤および/または抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸、チメロサールなどによってもたらされ得る。多くの場合、等張剤、例えば糖、緩衝剤、または塩化ナトリウムを含めることが好ましい。注射用組成物の長期吸収は、吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウムおよび/またはゼラチンによってもたらされ得る。
【0073】
滅菌注射用溶液は、必要に応じて、上記に列挙した他の様々な成分と共に必要な量の活性化合物を適切な溶媒に組み込むことによって調製することができ、その後濾過滅菌してもよい。滅菌注射用溶液を調製するための滅菌粉末の場合、調製方法は、真空乾燥および凍結乾燥技術を含むことができ、これは、活性成分および溶液中に存在する任意のさらなる所望の成分の粉末を生成する。
【0074】
局所投与の場合、化合物は、例えばそれらが液体である場合、純粋な形態で適用され得る。しかしながら、一般に、例えば固体、液体、ゲルなどであり得る皮膚科学的に許容される担体と組み合わせて、活性薬剤を組成物または製剤として皮膚に投与することが望ましい。
【0075】
有用な固体担体には、タルク、粘土、微結晶セルロース、シリカ、アルミナなどの微粉化された固体が含まれる。有用な液体担体には、水、ジメチルスルホキシド(DMSO)、アルコール、グリコール、または水-アルコール/グリコールブレンドが含まれ、任意で非毒性の界面活性剤を用いて、化合物を有効レベルでその中に溶解または分散させることができる。香料およびさらなる抗菌剤などの補助剤を添加して、所与の用途に合わせて特性を最適化することができる。得られた液体組成物は、吸収パッドから塗布する、帯具および他の包帯を含浸させるために使用する、またはポンプ型噴霧器もしくはエアロゾル噴霧器を使用して患部に噴霧することができる。
【0076】
合成ポリマー、脂肪酸、脂肪酸塩およびエステル、脂肪アルコール、変性セルロース、または変性鉱物材料などの増粘剤を液体担体と共に使用して、使用者の皮膚に直接適用するための塗布可能なペースト、ゲル、軟膏、石鹸などを形成することもできる。
【0077】
活性薬剤を皮膚に送達するための皮膚科用組成物の例は当技術分野で公知であり、例えば米国特許第4,992,478号(Geria)、同第4,820,508号(Wortzman)、同第4,608,392号(Jacquet et al.)、および同第4,559,157号(Smith et al.)を参照されたい。そのような皮膚用組成物は、そのような組成物の成分を任意に本明細書に記載の化合物で置き換えることができる、または本明細書に記載の化合物を組成物に添加することができる場合、本明細書に記載の化合物と組み合わせて使用することができる。
【0078】
本明細書に記載の化合物および組成物の有用な投与量は、それらのインビトロ活性と動物モデルにおけるインビボ活性を比較することによって決定することができる。マウスおよび他の動物における有効な投与量をヒトに外挿するための方法は当技術分野で公知であり、例えば米国特許第4,938,949号(Borch et al.)を参照されたい。治療に使用するために必要な化合物またはその活性な塩もしくは誘導体の量は、選択される特定の化合物または塩だけでなく、投与経路、治療される状態の性質、ならびに患者の年齢および状態によっても異なり、最終的には主治医または臨床医の裁量に委ねられる。
【0079】
しかしながら、一般に、適切な用量は、1日あたりレシピエントの体重1キログラムにつき約0.5~約100mgの範囲、例えば約10~約75mg/kg/日、例えば3~約50mg/kg/日、好ましくは6~90mg/kg/日の範囲、最も好ましくは15~60mg/kg/日の範囲である。
【0080】
化合物は、例えば単位剤形あたり5~1000mg、好都合には10~750mg、最も好都合には50~500mgの活性成分を含む単位剤形に好都合に製剤化される。一実施形態では、本発明は、そのような単位剤形に製剤化された本発明の化合物を含む組成物を提供する。
【0081】
化合物は、例えば単位剤形あたり5~1000mg/m2、好都合には10~750mg/m2、最も好都合には50~500mg/m2の活性成分を含む単位剤形で好都合に投与され得る。所望の用量は、好都合には、単回用量で、または適切な間隔で投与される分割用量として、例えば1日あたり2、3、4、またはそれ以上の部分用量として提示され得る。部分用量自体は、例えばいくつかの個別の緩やかな間隔での投与にさらに分割され得る。
【0082】
所望の用量は、好都合には、単回用量で、または適切な間隔で投与される分割用量として、例えば1日あたり2、3、4、またはそれ以上の部分用量として提示され得る。部分用量自体は、例えば、吹送器からの複数回の吸入または眼への複数の滴の適用などの、いくつかの個別の緩やかな間隔での投与にさらに分割され得る。
【0083】
本明細書に記載の化合物および組成物は、標準的な単剤有効用量で癌を治療するために単独で使用される場合、抗癌剤として有効であり得、例えばエヌトレクチニブと比較してより高い効果および/または低い毒性を有し得る。
【0084】
本発明は、哺乳動物(または脊椎動物)における癌を治療する治療方法を提供し、これは、例えば、癌を有する哺乳動物に、本明細書に記載の有効量の化合物または組成物を投与することを含む。哺乳動物には、霊長動物、ヒト、げっ歯動物、イヌ、ネコ、ウシ、ヒツジ、ウマ、ブタ、ヤギ、ウシなどが含まれる。癌は、様々なタイプの悪性新生物、例えば結腸癌、乳癌、(ブドウ膜)黒色腫および白血病を指し、一般に、望ましくない細胞増殖、例えば無秩序な成長、分化の欠如、局所組織浸潤、および転移を特徴とする。
【0085】
癌を治療する本発明の化合物の能力は、当技術分野で周知のアッセイを使用することによって決定し得る。例えば、治療プロトコルの設計、毒性評価、データ分析、腫瘍細胞死滅の定量化、および移植可能な腫瘍スクリーニングの使用の生物学的重要性が知られている。
【0086】
以下の例は、上記の発明を説明することを意図しており、その範囲を制限するように解釈されるべきではない。当業者は、例が、本発明を実施することができる他の多くの方法を示唆することを容易に認識するであろう。本発明の範囲内に留まりながら、多数の変形および修正が行われ得ることが理解されるべきである。
【実施例】
【0087】
例
例1.臨床試験。
PAC-1を、7つの用量レベルのPAC-1(範囲:75~750mg)によって34人のヒト患者に投与した。2人の患者は、PAC-1療法の最初のサイクル中に進行した。32人の患者は、少なくとも2回の投与サイクルでPAC-1を投与された(サイクルは、21日間の毎日の投与とそれに続く7日間の薬剤なしである)。安定した疾患応答の結果として、6人の患者が4サイクルでPAC-1を投与され、3人の患者が6サイクルでPAC-1を投与され、2人の患者が10サイクルでPAC-1を投与された。PAC-1投与に関連する重篤な有害事象(SAE)は観察されなかった。さらに、すべての神経学的および神経認知評価ならびに用量レベル7(750mg)を通じて収集したデータを慎重に検討した後、PAC-1投与に関連する神経毒性の決定的な徴候は存在しなかった。それにもかかわらず、GLPイヌPK/前臨床PAC-1毒性試験の両方で観察された脳組織の変化は、PAC-1曝露に関連した可能性のある神経学的変化を検出する際の継続的な神経学的および神経認知検査と不断の観察の必要性を強調する。
【0088】
ブドウ膜黒色腫におけるエヌトレクチニブおよびPAC-1活性に関する前臨床データ
PAC-1とエヌトレクチニブの併用のインビトロ試験を、7つのブドウ膜黒色腫細胞株(GNAQ変異型;MEL270、92.1、MEL202、OMM2.5、GNA11変異型:OMM1、ならびにGNAQおよびGNA11野生型:MEL285およびMEL290)で実施した。7つの細胞株すべてにおいて、PAC-1とエヌトレクチニブの相乗的な殺傷効果が観察された。エヌトレクチニブは、転移性黒色腫のヒト患者においてPAC-1と相乗作用し、無増悪生存期間の優れた延長をもたらすと考えられる。
【0089】
目的およびエンドポイント
エヌトレクチニブおよびPAC-1で治療された転移性ブドウ膜黒色腫の対象における、RECIST v1.1を使用した無増悪生存(PFS)率の測定が進行中である(表1)。転移性ブドウ膜黒色腫の対象において、薬剤関連有害事象(AE)の発生率と重症度によって評価される、エヌトレクチニブとPAC-1の併用の安全性が評価されている。エヌトレクチニブとPAC-1で治療された転移性ブドウ膜黒色腫の対象における、RECIST v.1.1および画像診断を使用した客観的奏効率[完全奏効(CR)+部分奏効(PR)]の決定が進行中である。転移性ブドウ膜黒色腫の対象におけるRECIST v1.1を使用した奏効期間が決定されつつある。エヌトレクチニブとPAC-1で治療された転移性ブドウ膜黒色腫の対象における全生存(OS)率が測定されている。ブドウ膜黒色腫組織におけるプロカスパーゼ3の発現、ならびにDNAQおよびDNA11変異とプロカスパーゼ3発現の存在との相関関係の決定が進行中である。
【表5】
【表6】
【0090】
例2.医薬剤形。
以下の製剤は、以下「組成物X」と称する、それぞれが任意で薬学的に許容される塩または溶媒和物の形態で、およびそれぞれが任意で薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体の1つ以上と組み合わせて、本明細書に記載の化合物または本明細書に記載の式の化合物の治療的投与のために使用し得る代表的な医薬剤形を例示する。組成物Xは、単一の薬剤(例えばPAC-1またはエヌトレクチニブ)を含むことができ、または組成物Xは、2つ以上の活性薬剤(例えばPAC-1およびエヌトレクチニブ)の組合せを含むことができる。以下の投与量は単なる代表である。各製剤中の活性薬剤および他の成分の量は、より大きなもしくはより小さな投与単位に合わせて(例えば実質的に比例して)調整することができ、または各製剤中の活性薬剤の量は、記載されているレベルでの他の成分の相対的比率を維持しながら、より大きなまたはより小さな投与単位に合わせてより高くまたはより低く調整することができる。
【0091】
(i)錠剤1 mg/錠
「組成物X」 100.0
ラクトース 77.5
ポビドン 15.0
クロスカルメロースナトリウム 12.0
微結晶セルロース 92.5
ステアリン酸マグネシウム 3.0
300.0
(ii)錠剤2 mg/錠
「組成物X」 20.0
微結晶セルロース 410.0
デンプン 50.0
デンプングリコール酸ナトリウム 15.0
ステアリン酸マグネシウム 5.0
500.0
(iii)カプセル mg/カプセル
「組成物X」 10.0
コロイド状二酸化ケイ素 1.5
ラクトース 465.5
アルファ化デンプン 120.0
ステアリン酸マグネシウム 3.0
600.0
(iv)注射剤1(1mg/mL) mg/mL
「組成物X」(遊離酸型) 1.0
二塩基性リン酸ナトリウム 12.0
一塩基性リン酸ナトリウム 0.7
塩化ナトリウム 4.5
1.0N水酸化ナトリウム溶液 適量
(pHを7.0~7.5に調整)
注射用水 1mLにするための十分量
(v)注射剤2(10mg/mL) mg/mL
「組成物X」(遊離酸型) 10.0
一塩基性リン酸ナトリウム 0.3
二塩基性リン酸ナトリウム 1.1
ポリエチレングリコール400 200.0
0.1N水酸化ナトリウム溶液 適量
(pHを7.0~7.5に調整)
注射用水 1mLにするための十分量
(vi)エアロゾル mg/缶
「組成物X」 20
オレイン酸 10
トリクロロモノフルオロメタン 5,000
ジクロロジフルオロメタン 10,000
ジクロロテトラフルオロエタン 5,000
(vii)局所ゲル1 重量%
「組成物X」 5%
カルボマー934 1.25%
トリエタノールアミン 適量
(pHを5~7に調整)
メチルパラベン 0.2%
精製水 100gにするための適量
(viii)局所ゲル2 重量%
「組成物X」 5%
メチルセルロース 2%
メチルパラベン 0.2%
プロピルパラベン 0.02%
精製水 100gにするための適量
(ix)局所軟膏 重量%
「組成物X」 5%
プロピレングリコール 1%
無水軟膏基剤 40%
ポリソルベート80 2%
メチルパラベン 0.2%
精製水 100gにするための適量
(x)局所クリーム1 重量%
「組成物X」 5%
白色蜜ろう 10%
流動パラフィン 30%
ベンジルアルコール 5%
精製水 100gにするための適量
(xi)局所クリーム2 重量%
「組成物X」 5%
ステアリン酸 10%
モノステアリン酸グリセリル 3%
ポリオキシエチレンステアリルエーテル 3%
ソルビトール 5%
パルミチン酸イソプロピル 2%
メチルパラベン 0.2%
精製水 100gにするための適量
【0092】
これらの製剤は、製薬分野で周知の従来の手順によって調製し得る。上記の医薬組成物は、異なる量および種類の活性成分「組成物X」に対応するために、周知の製薬技術に従って変更され得ることが理解されるであろう。エアロゾル製剤(vi)は、標準的な定量エアロゾルディスペンサと組み合わせて使用し得る。さらに、特定の成分および比率は説明を目的とするものである。成分は、適切な等価物に交換してもよく、比率は、目的の剤形の所望の特性に従って変化させてもよい。
【0093】
特定の実施形態を、開示された実施形態および例を参照して上記で説明してきたが、そのような実施形態は例示にすぎず、本発明の範囲を限定するものではない。変更および修正は、以下の特許請求の範囲で定義される本発明のより広い態様において、本発明から逸脱することなく当業者に従って行われ得る。
【0094】
すべての刊行物、特許、および特許文書は、参照により個別に組み込まれるかのように、参照により本明細書に組み込まれる。本開示と矛盾するいかなる制限も、そこから理解されるべきではない。本発明を、様々な特定の好ましい実施形態および技術を参照して説明してきた。しかしながら、本発明の精神および範囲内に留まりながら、多くの変形および修正が行われ得ることが理解されるべきである。