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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】光結合装置と、光結合装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/26 20060101AFI20241121BHJP
   G02B 6/02 20060101ALI20241121BHJP
   G02B 6/138 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G02B6/26 301
G02B6/02 461
G02B6/138
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021520806
(86)(22)【出願日】2020-05-20
(86)【国際出願番号】 JP2020019855
(87)【国際公開番号】W WO2020235576
(87)【国際公開日】2020-11-26
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】P 2019095228
(32)【優先日】2019-05-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000240477
【氏名又は名称】Orbray株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000109
【氏名又は名称】弁理士法人特許事務所サイクス
(72)【発明者】
【氏名】行川 毅
(72)【発明者】
【氏名】藤原 弘幸
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 勝
(72)【発明者】
【氏名】岡本 勤
【審査官】山本 元彦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/051656(WO,A1)
【文献】特開2015-062044(JP,A)
【文献】特開2004-101657(JP,A)
【文献】特開2011-237782(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0072585(US,A1)
【文献】米国特許第06160943(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/12-6/14
G02B 6/26-6/26
G02B 6/30-6/34
G02B 6/42-6/43
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1つのコアを備える光ファイバを複数本と、
前記複数本の光ファイバと対向配置された1つのマルチコアファイバと、
を備え、
前記複数本の光ファイバの各コアと前記マルチコアファイバの各コアとの間に直線の自己形成光導波路が備えられており、
前記複数本の光ファイバの各コアと前記マルチコアファイバの各コアとの間に備えられた複数の前記自己形成光導波路は、光硬化性樹脂の硬化物であるクラッドが充填された同一の容器内に前記クラッドによって周囲を取り囲まれて配置されており、
前記容器は、前記クラッドの外面形状を形作る中空立体状に形成されており、
前記自己形成光導波路の端部が前記複数本の光ファイバの各コア及び前記マルチコアファイバの各コアと光学的に接続されており、
前記複数本の光ファイバの光軸方向はいずれも、前記マルチコアファイバの光軸方向と平行であり、且つ前記自己形成光導波路で光学的に接続されている各コアの端部が、各コアと自己形成光導波路の屈折率に応じた角度で斜めに形成されている光結合装置。
【請求項2】
前記複数本の光ファイバの各コアの配置が、前記マルチコアファイバの各コアの配置と同一であり、
前記複数本の光ファイバの各コア及び前記マルチコアファイバの各コアが、中央を中心とする円の円周上に等角度且つ等間隔で配列されており、
前記自己形成光導波路で光学的に接続されている各コアの端部が、同一角度で平行に斜めに形成されている、請求項1に記載の光結合装置。
【請求項3】
前記複数本の光ファイバの各コア及び前記マルチコアファイバの各コアとして、前記中央に更にもう1つコアが配列されており、
前記中央のコアの端部がそのコアの光伝搬方向に対して直交方向に形成されていると共に、
前記複数本の光ファイバの前記中央のコア及び前記マルチコアファイバの前記中央のコアが、前記自己形成光導波路で光学的に接続されている、請求項2に記載の光結合装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の光結合装置の製造方法であって、
1つのコアを備えると共に、端部が斜めに傾斜角度を有する様に形成された光ファイバを複数本と、端部が斜めに傾斜角度を有する様に形成されたマルチコアファイバと、光硬化性樹脂を用意し、
前記複数本の光ファイバの端部の傾斜角度及び前記マルチコアファイバの端部の傾斜角度は、前記複数本の光ファイバ及び前記マルチコアファイバの各コアと前記光硬化性樹脂の屈折率に基づいて形成されており、前記複数本の光ファイバと前記マルチコアファイバを対向配置して、互いの光軸方向を平行とし、
前記複数本の光ファイバと前記マルチコアファイバとの間に前記光硬化性樹脂を配置し、
前記複数本の光ファイバ及び前記マルチコアファイバから前記光硬化性樹脂に光を入射し、前記光硬化性樹脂を硬化させて直線の自己形成光導波路を形成して、前記複数本の光ファイバの各コアの端部と前記マルチコアファイバの各コアの端部とを各自己形成光導波路で光学的に接続し、
クラッドを前記光硬化性樹脂の硬化により形成する、前記光結合装置の製造方法。
【請求項5】
前記複数本の光ファイバの各コア及び前記マルチコアファイバの各コアが、中央を中心とする円の円周上に等角度且つ等間隔で配列されている事を確認し、
前記複数本の光ファイバと前記マルチコアファイバを対向配置すると共に、前記複数本の光ファイバの各コアの配置を前記マルチコアファイバの各コアの配置と同一とし、
前記複数本の光ファイバと前記マルチコアファイバとの間に前記光硬化性樹脂を配置し、
前記複数本の光ファイバ及び前記マルチコアファイバから前記光硬化性樹脂に光を入射し、前記光硬化性樹脂を硬化させて直線の前記自己形成光導波路を形成して、同一角度で平行に斜めに形成された前記複数本の光ファイバの各コアの端部と前記マルチコアファイバの各コアの端部とを各前記自己形成光導波路で光学的に接続し、
クラッドを前記光硬化性樹脂の硬化により形成する、請求項4に記載の光結合装置の製造方法。
【請求項6】
前記複数本の光ファイバの各コア及び前記マルチコアファイバの各コアとして、前記中央に更にもう1つコアが配列されていると共に、前記中央のコアの端部がそのコアの光伝搬方向に対して直交方向に形成されている事を確認し、
前記複数本の光ファイバの前記中央のコア及び前記マルチコアファイバの前記中央のコアの端部を前記自己形成光導波路で光学的に接続する、請求項5に記載の光結合装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光結合装置と、光結合装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光ファイバとして、下記特許文献1の図6(a)に示すような、クラッドの中にコアを1つ有するものが用いられている。一方、特許文献1の図6(b)に示すマルチコアファイバも提案されている。マルチコアファイバはクラッドに複数(4個以上、19個程度)のコアを有しており、大量の情報を伝送可能である。
【0003】
マルチコアファイバで大量の情報を伝送する為には、例えば特許文献1の図7のように、7個のコアを持つマルチコアファイバのそれぞれのコアから出射される光を、別々に7本のシングルモード光ファイバ内のコア内に光学的に接続させる技術が必須となる。しかし、マルチコアファイバのそれぞれのコアに、シングルモード光ファイバを光学的に接続する事は難しい。その理由は、マルチコアファイバとシングルモード光ファイバの形状が異なると共に、マルチコアファイバのコア配置に合わせて束ねられたシングルモード光ファイバとマルチコアファイバのコアピッチが異なる為である。そこでこれら光ファイバを光学的に接続する技術として、特許文献1の発明が開示されている。
【0004】
特許文献1記載の光結合装置(特許文献1では、マルチコアファイバ用コネクタと記載)は、マルチコアファイバの各コアから出射される光を、このコアと同数のシングルモード光ファイバ内の各コアに1対1で光学的に接続させるマルチコアファイバ用の光結合装置である。この光結合装置では、石英ガラス成形品の一方側に設けた挿入孔内にマルチコアファイバを挿入・固定すると共に、石英ガラス成形品の反対側に設けられた複数の挿入孔内にシングルモード光ファイバを、それぞれ挿入・固定している。更に、各シングルモード光ファイバ用の挿入孔の延長上に、マルチコアファイバの各コアまでガイドするガイド用孔を設け、ガイド用孔にポリマーを埋め込んで光導波路を形成し、マルチコアファイバの各コアとシングルモード光ファイバのそれぞれのコアとを光学的に接続している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第5571855号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし特許文献1記載の光結合装置では、マルチコアファイバの端面が光軸方向に対して直交方向に形成され、且つその端面から斜めに形成されている自己形成光導波路を含んでいる。従って、マルチコアファイバの光入出射角と、斜めに形成された自己形成光導波路の光入出射角が整合しないことから、接続損失が発生してしまう。
【0007】
また、シングルモード光ファイバとそれに接続する自己形成光導波路は同軸に配置されていることから、シングルモード光ファイバの端面は0°であり、シングルモード光ファイバと自己形成光導波路の界面で不要な反射が発生するものと推測される。
【0008】
さらに、マルチコアファイバの光軸に対して、シングルモード光ファイバをその光軸方向で角度を設定して配置する必要があり、シングルモード光ファイバの配置が困難であった。
【0009】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、光ファイバと自己形成光導波路間での接続損失および反射減衰量の低減、並びに光ファイバの配置の容易化による製造コストの低減と歩留まりの向上が可能な光結合装置と、その光結合装置の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明の光結合装置は少なくとも1つのコアを備える光ファイバを複数本と、自己形成光導波路を備え、光ファイバが対向配置されると共に、光ファイバ間に自己形成光導波路が備えられており、自己形成光導波路の端部が各光ファイバの各コアと光学的に接続され、対向配置される各光ファイバの各コアが直線の自己形成光導波路で光学的に接続されており、各自己形成光導波路で光学的に接続されている各光ファイバの光軸方向が平行であり、且つ各コアと自己形成光導波路の屈折率に応じた角度で、各コアの端部が斜めに形成されている事を特徴とする。
【0011】
本発明の光結合装置の製造方法は、少なくとも1つのコアを備えると共に、端部が斜めに傾斜角度を有する様に形成された光ファイバを複数本と、光硬化性樹脂を用意し、傾斜角度は、光ファイバの各コアと光硬化性樹脂の屈折率に基づいて形成されており、光ファイバを対向配置して、互いの光軸方向を平行とし、光ファイバ間に光硬化性樹脂を配置し、光硬化性樹脂に光ファイバから光を入射し、光硬化性樹脂を硬化させて直線の自己形成光導波路を形成して、同一角度で平行に斜めに形成される各光ファイバの各コアの端部を各自己形成光導波路で光学的に接続し、クラッドを光硬化性樹脂の硬化により形成した事を特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る光結合装置及びその製造方法に依れば、光ファイバと自己形成光導波路間での接続損失および反射減衰量の低減が可能となる。並びに光ファイバの配置の容易化により、光結合装置の製造コストの低減と歩留まりの向上も可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】(a) 本発明の第1の実施形態に係る光結合装置に使用されるマルチコアファイバの端部を模式的に示す平面図である。(b) 図1(a)のA-A側断面図である。
図2】(a) 本発明の実施形態に係る光結合装置に使用される光ファイバの端部を模式的に示す平面図である。(b) 図2(a)のD-D側断面図である。
図3図2(a)の光ファイバの端部を模式的に示す斜視図である。
図4】本発明の第1の実施形態に係る光結合装置を模式的に示す断面図である。
図5】(a) 本発明の第2の実施形態に係る光結合装置に使用されるマルチコアファイバの端部を模式的に示す平面図である。(b) 図5(a)のA-A側断面図である。
図6】本発明の第2の実施形態に係る光結合装置を模式的に示す断面図である。
図7】(a) 本発明の第1の実施形態の変更形態に係る光結合装置に使用されるマルチコアファイバの端部を模式的に示す平面図である。(b) 図7(a)のA-A側断面図である。
図8】本発明の第3の実施形態に係る光結合装置に使用されるマルチコアファイバの端部を模式的に示す平面図である。(b) 図8(a)のA-A側断面図である。
図9】本発明の第3の実施形態の変更形態に係る光結合装置に使用されるマルチコアファイバの端部を模式的に示す平面図である。(b) 図9(a)のA-A側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本実施の形態の第一の特徴は、少なくとも1つのコアを備える光ファイバを複数本と、自己形成光導波路を備え、光ファイバが対向配置されると共に、光ファイバ間に自己形成光導波路が備えられており、自己形成光導波路の端部が各光ファイバの各コアと光学的に接続され、対向配置される各光ファイバの各コアが直線の自己形成光導波路で光学的に接続されており、各自己形成光導波路で光学的に接続されている各光ファイバの光軸方向が平行であり、且つ各コアと自己形成光導波路の屈折率に応じた角度で、各コアの端部が斜めに形成されている光結合装置である。
【0015】
本実施の形態の第二の特徴は、少なくとも1つのコアを備えると共に、端部が斜めに傾斜角度を有する様に形成された光ファイバを複数本と、光硬化性樹脂を用意し、傾斜角度は、光ファイバの各コアと光硬化性樹脂の屈折率に基づいて形成されており、光ファイバを対向配置して、互いの光軸方向を平行とし、光ファイバ間に光硬化性樹脂を配置し、光硬化性樹脂に光ファイバから光を入射し、光硬化性樹脂を硬化させて直線の自己形成光導波路を形成して、同一角度で平行に斜めに形成される各光ファイバの各コアの端部を各自己形成光導波路で光学的に接続し、クラッドを光硬化性樹脂の硬化により形成した光結合装置の製造方法である。
【0016】
本実施の形態の第三の特徴は、光ファイバが、複数の光ファイバと1つのマルチコアファイバであり、複数の光ファイバのコアの総数とマルチコアファイバのコアの総数がn本(n:0を含まない自然数)であり、複数の光ファイバとマルチコアファイバが対向配置されると共に、複数の光ファイバとマルチコアファイバ間に自己形成光導波路が備えられており、自己形成光導波路の端部が、複数の光ファイバの各コア及びマルチコアファイバの各コアと光学的に接続されており、複数の光ファイバの各コアの配置が、マルチコアファイバの各コアの配置と同一であり、複数の光ファイバの各コア及びマルチコアファイバの各コアが、中央を中心とする円の円周上に等角度且つ等間隔で配列されており、対向配置される複数の光ファイバとマルチコアファイバの各コアが直線の自己形成光導波路で光学的に接続されており、各自己形成光導波路で光学的に接続されている各コアの端部が、同一角度で平行に斜めに形成されている光結合装置である。
【0017】
本実施の形態の第四の特徴は、光ファイバとして、複数の光ファイバとマルチコアファイバを用意し、複数の光ファイバのコアの総数とマルチコアファイバのコアの総数がn本(n:0を含まない自然数)であると共に、複数の光ファイバの各コア及びマルチコアファイバの各コアが、中央を中心とする円の円周上に等角度且つ等間隔で配列されている事を確認し、複数の光ファイバとマルチコアファイバを対向配置すると共に、複数の光ファイバの各コアの配置をマルチコアファイバの各コアの配置と同一とし、複数の光ファイバとマルチコアファイバ間に光硬化性樹脂を配置し、光硬化性樹脂に複数の光ファイバ及びマルチコアファイバから光を入射し、光硬化性樹脂を硬化させて直線の自己形成光導波路を形成して、同一角度で平行に斜めに形成される複数の光ファイバとマルチコアファイバの各コアの端部を各自己形成光導波路で光学的に接続し、クラッドを光硬化性樹脂の硬化により形成した光結合装置の製造方法である。
【0018】
これらの構成及び製造方法に依れば、光ファイバと自己形成光導波路間での接続損失および反射減衰量の低減が可能となる。並びに光ファイバの配置の容易化により、光結合装置の製造コストの低減と歩留まりの向上も可能となる。
【0019】
本実施の形態の第五の特徴は、複数の光ファイバの各コア及びマルチコアファイバの各コアとして、中央に更にもう1つコアが配列されており、中央のコアの端部がそのコアの光伝搬方向に対して直交方向に形成されていると共に、複数の光ファイバの中央のコア及びマルチコアファイバの中央のコアが、自己形成光導波路で光学的に接続されている光結合装置である。
【0020】
本実施の形態の第六の特徴は、複数の光ファイバの各コア及びマルチコアファイバの各コアとして、中央に更にもう1つコアが配列されていると共に、中央のコアの端部がそのコアの光伝搬方向に対して直交方向に形成されている事を確認し、複数の光ファイバの中央のコア及びマルチコアファイバの中央のコアの端部を自己形成光導波路で光学的に接続する光結合装置の製造方法である。
【0021】
これらの構成及び製造方法に依れば、前記各効果に加えて、中央のコア及び中央の光ファイバのコアを、光結合装置を製造する際の中心位置出しに使用する事が出来る。従って、より光結合装置の製造が容易となり、製造コストの低減と歩留まりの向上が可能となる。
【0022】
以下、本発明に係る第1の実施形態を、図1図4を参照しながら説明する。なお図4のZ軸がマルチコアファイバ6の長手方向及び各光ファイバ2a~2gの長手方向と平行な方向である。またX軸及びY軸方向は、Z軸方向にそれぞれ直交する方向である。
【0023】
図1、2及び4より、第1の実施形態に係る光結合装置5は、少なくとも1つのコアを備える光ファイバを複数本(2a~2g及び6)と、複数の自己形成光導波路(図4では3bと3cのみ図示)を備えて形成される。図1図2及び図4の実施形態では前記光ファイバは、7本の光ファイバ2a~2gと、1つのマルチコアファイバ6である。
【0024】
各光ファイバ2a~2gは、コアの周りをクラッドが包囲する型式であり、シングルモード又はマルチモードで、ステップインデックス又はグレーデッドインデックスファイバの何れかである。従って光ファイバ2a~2gでのコアの総数n(n:0を含まない自然数)は、7本である。更に、各光ファイバ2a~2gはガラス又はプラスチック製である。クラッドの外径はシングルモード光ファイバの場合0.125mm(125μm)である。なお、1550nm帯シングルモードファイバのモードフィールド径は10.5μmである。
【0025】
図2より各光ファイバ2a~2gは、光ファイバ2aを中心とし、更に光ファイバ2aを中心に円状に等角度(60°)且つ等間隔で残り6本の各光ファイバ2b~2gが配列されている。従って、光ファイバ2b~2gの各コアが、中央の光ファイバ2aのコアを中心とする円の円周上に等角度(60°)且つ等間隔で配列されている。また、光ファイバ2b~2gの各コアの中央に、更にもう1つコアとして光ファイバ2aのコアが配列されている。
【0026】
中央の光ファイバ2aのコアの端部は、図2(b)に示す様にそのコア(光ファイバ2aのコア)の光伝搬方向(図2(b)の水平方向)に対して直交方向に形成されている。また、光ファイバ2b~2gの各コアの端部は、図2(b)及び図3に示すように斜めに傾斜角度φ2で以て形成されている。φ2は光ファイバ2b~2gの各コアと自己形成光導波路の屈折率に応じた角度で任意に設定可能であり、例えば30°~60°の範囲内で設定可能である。なお、図3では光ファイバ2bの端部構造のみ図示しているが、その他の光ファイバ2c~2gも同様の端部構造を有している。
【0027】
更に図2(b)より、中央の光ファイバ2aのコアを軸として、その周囲に配列される光ファイバ2b~2gの内、180°で対向配置される各光ファイバの各コア端部が線対称に現れる様に、各光ファイバ2b~2gが配列されている。よって、図2(b)は図2(a)のD-D側断面図であるが、E-E側断面図やF-F側断面図も図2(b)と同様の側断面構造が現れる。
【0028】
各光ファイバ2a~2gは、互いのクラッドの外周面で接触する様に配列されて、互いが位置ずれしないように配置されている。なお光ファイバ2a~2gとして、バンドルファイバを用いても良い。
【0029】
マルチコアファイバ6は、コア径が約9μm、クラッド径が125μm、コア数が複数(n本。図1では6a、6c~6gの6つ)である。更に一例として、カットオフ波長が1190nm~1500nm、モードフィールド径が4.8μm~5.6μm(伝搬光波長1310nm)、5.7μm~8.5μm(伝搬光波長1550nm)である。また各コアは図1(a)に示すように、マルチコアファイバ6の中央を中心とする円の円周上で等角度(図1(a)では60°)且つ等間隔に配列されている。各コア間隔は35μm~50μmとする。
【0030】
また各コア6a及び6c~6gの端部は、図1(b)に示すように斜めに傾斜角度φ1で以て形成されている。更に図1より、マルチコアファイバ6の中央を軸として、その周囲に配列される各コア6a及び6c~6gの内、180°で対向配置される各コア端部が線対称に現れる。よって、図1(b)は図1(a)のA-A側断面図であるが、B-B側断面図やC-C側断面図も図1(b)と同様の側断面構造が現れる。φ1はφ2と同一角度に設定され、例えば30°~60°の範囲内で設定可能である。
【0031】
なおマルチコアファイバ6の中央箇所は、φ1で以て斜めに形成されず、マルチコアファイバ6の軸方向(図1(b)の水平方向)に対して直交方向に形成されている。
【0032】
更に、光ファイバ2a~2gとマルチコアファイバ6間に自己形成光導波路(以下、光導波路と記載)が備えられている。光導波路は、マルチコアファイバ6のコア本数と同一数(6本)が形成されるが、図4では6本の内2本(3bと3c)のみ図示している。光導波路は図示しない容器内に形成されており、光導波路の周囲にはクラッド4が形成され、クラッド4も容器内に収納されている。クラッド4は容器の内面形状に応じて、例えば円柱状や角柱状、その他の立体形状に形成することが可能である。
【0033】
また、マルチコアファイバ6の中央箇所の端部と光ファイバ2aの端部間のZ軸方向に於ける寸法は、前記φ1とφ2と、φ1とφ2とで斜めに形成される端部に対する各光軸方向、マルチコアファイバ6の各コアの屈折率と光ファイバ2b~2gの各コアの屈折率、及び光導波路とその光導波路を構成する光硬化性樹脂の屈折率に応じて設定可能である。φ1とφ2の角度、自己形成光導波路となる光硬化性樹脂の屈折率、マルチコアファイバ6-光ファイバ2b~2g のX軸又はY軸方向の位置、マルチコアファイバ6-光ファイバ2b~2gのZ軸方向の距離の内、3つのパラメータを決定すると最適な解が求まる。
【0034】
容器は、クラッド4の外面形状を形作る中空立体状に形成される。また容器の材料は、例えば金属や硬質合成樹脂、セラミック、ガラス等の硬質材料とすれば良く、必要に応じて、紫外線光(UV)を透過させる窓や開口等が設けられる。
【0035】
容器の一端側に、マルチコアファイバ6の端部を配置する。また容器の他端側には、光ファイバ2a~2gの端部を配置する。更に容器には、各光導波路とクラッド4を構成する光硬化性樹脂を充填するための、図示しない開口部が設けられる。
【0036】
各光ファイバ2a~2gとマルチコアファイバ6は対向配置されており、Z軸方向に於いて光ファイバ2b~2gの各コアの配置は、マルチコアファイバ6の各コア6a及び6c~6gの配置と同一に設定される。更に、各光ファイバ2a~2gとマルチコアファイバ6の各光軸方向は、Z軸方向に平行に配置される。その各光ファイバ2b~2gとマルチコアファイバ6の間に、6本の光導波路が、各コアの間で直線状に備えられる。従って、光導波路のZ軸方向に於ける両端部は、光ファイバ2b~2gの各コア及びマルチコアファイバ6の各コア6a、6c~6gと、それぞれ光学的に接続されている。詳述すると、コア6aと光ファイバ2bのコア、コア6cと光ファイバ2cのコア、コア6fと光ファイバ2dのコア、コア6dと光ファイバ2gのコア、コア6gと光ファイバ2fのコア、コア6eと光ファイバ2eのコアが、それぞれ光導波路で光学的に接続される。なお光ファイバ2aは光導波路との光学的な接続はなされない。
【0037】
前記各パラメータに基づき、スネルの法則(屈折の法則)によって、直線の光導波路が形成可能な、マルチコアファイバ6の中央箇所の端部と光ファイバ2aの端部間のZ軸方向に於ける寸法が設定される。前記φ1とφ2を同一角度に設定する事により、各光導波路で光学的に接続されているマルチコアファイバ6の各コア6a及び6c~6gの端部と、光ファイバ2b~2gの各コアの端部は、図4に示すように同一角度で互いに平行に斜めに形成される事になる。
【0038】
なお、各光ファイバ2b~2gとマルチコアファイバ6との間でX軸方向に高低差があったとしても、各コアの間で光導波路が形成される場合、各光ファイバ2b~2gとマルチコアファイバ6は対向配置されているものと本発明では見なす。
【0039】
次に光結合装置5の製造方法を説明する。最初に、少なくとも1つのコアを備えると共に端部が斜めに形成された光ファイバを複数本と、光硬化性樹脂を用意する。光ファイバとして、前記光ファイバ2a~2gとマルチコアファイバ6を用意し、光ファイバ2a~2gとマルチコアファイバ6を対向配置すると共に、光ファイバ2b~2gの各コアの配置をマルチコアファイバ6の各コアの配置と同一にする。なお、前記φ1及びφ2による各ファイバ端部の斜め形成は、CO2レーザ加工等で行えば良い。
【0040】
光硬化性樹脂は図示しない前記容器内に前記開口部から充填される事で用意される。光硬化性樹脂は容器内に充填される事で、光ファイバ2a~2gとマルチコアファイバ6の間に配置される。
【0041】
光硬化性樹脂はクラッド選択重合型であり、材料は2種類以上のモノマーから成る混合液に光重合開始剤を添加した溶液である。光重合開始剤が感度を有する波長帯の光を入射させて、光硬化性樹脂を重合硬化させ、ポリマーとする。
【0042】
光導波路に光学的に接続しない光ファイバ2aを除く光ファイバ2b~2gのコアの総数がn本(n:0を含まない自然数で6本)と、マルチコアファイバ6のコアの総数がn本(n:0を含まない自然数で6本)である事を確認する。更に、光ファイバ2b~2gの各コア及びマルチコアファイバ6の各コア6a及び6c~6gが、前記の通り中央を中心とする円の円周上に等角度且つ等間隔で配列されている事を確認する。
【0043】
なお容器内に光硬化性樹脂を充填後に、容器の両端に光ファイバ2a~2gとマルチコアファイバ6を互いに対向配置させても良い。
【0044】
次に光硬化性樹脂に各光ファイバ2b~2g及びマルチコア6の各コア6a及び6c~6gから光を入射し、光硬化性樹脂を重合硬化させて直線で6本の光導波路を形成する。各光導波路は、前記スネルの法則に基づき形成される。光硬化性樹脂を重合硬化させる光の波長λwは、光重合開始剤に応じて任意に設定可能であるが、一例として365nm~1675nmで入射可能である。
【0045】
φ1とφ2を同一角度に設定する事により図4に示すように、同一角度で平行に斜めに形成される光ファイバ2b~2gとマルチコアファイバ6の各コア6a及び6c~6gの端部を、各光導波路で光学的に接続する事となる。
【0046】
次に、クラッド4を形成する。クラッド4は、クラッド選択重合型により形成される。光導波路では、波長λwに対して少なくとも1種類のモノマーが重合反応する。この結果、硬化したコア領域中には混合液中と同程度の濃度で重合反応しなかったモノマー成分が未反応モノマーとして分散する。同時に、コア領域中では一方のモノマーのみが消費されて重合するので、コアとクラッドとの境界面ではモノマーの濃度勾配が生じ、相互拡散が進行し、クラッドの機能を果たす。最後に、光硬化性樹脂全体を紫外線照射(UV照射)することで、コア及びクラッド4全体が硬化形成されて、光導波路が得られる。
【0047】
6つの光導波路を形成する際は、1つずつ時間差を設けて6つの光導波路を順に形成しても良いし、時間差を設けずに各光ファイバ2b~2g及びコア6a、6c~6gから同時に光を入射させ、6つの光導波路を同時に形成しても良い。なお光を同時に入射させる場合、2~3秒差以内であれば製造工程上での許容範囲とする。
【0048】
以上、第1の実施形態に係る光結合装置5とその製造方法に依れば、傾斜角度φ1で以てマルチコアファイバ6のコア端面を光軸方向(図4のZ軸方向)に対して斜めに形成している。また光結合装置5では、マルチコアファイバの光軸方向に対し斜めに形成されている自己形成光導波路を含んでいる。従って、マルチコアファイバ6のコア端面からの光の出射角を、斜めに形成された自己形成光導波路に合致させる事ができ、マルチコアファイバ6と自己形成光導波路間での接続損失の低減が可能となる。
【0049】
また各コアと自己形成光導波路の屈折率に応じた傾斜角度φ2で以て、光ファイバ2b~2gの端面を斜めに形成しているので、光ファイバ2b~2gの端面の反射減衰量を低減する事が出来る。
【0050】
このような傾斜角度φ1とφ2で以てマルチコアファイバ6端面と光ファイバ2b~2gの各光ファイバ端面を斜めに形成する事により、各光ファイバ(6及び2b~2g)の光軸方向を、図4に示すようにZ軸方向に平行に配置する事が可能となる。従って、各光ファイバをその光軸方向で角度を設定して配置する必要が無くなり、光ファイバの配置が容易化され、光結合装置5の製造コストの低減と歩留まりの向上も可能となる。
【0051】
また光結合装置5では、対向配置される各光ファイバ(各光ファイバ2b~2gとマルチコアファイバ6)の各コアが直線の光導波路で光学的に接続される。更に、光ファイバ2b~2gの各コアの配置を、マルチコアファイバ6の各コア6a及び6c~6dの配置と同一としている。従って、光導波路の形成の際に、隣り合う光導波路どうしの交差を防止する事が出来るので、隣のコアへの誤った接続が防止され、光結合装置5の接続損失の低減と歩留まりの向上が可能となる。
【0052】
更に、各光導波路で光学的に接続されている各光ファイバの各コアの端部を、φ1=φ2の様に同一角度で平行に斜めに形成している。従って、各光ファイバ先端の加工が容易となり、光結合装置5の製造コストの低減も可能となる。
【0053】
なお第1の実施形態の変更形態として、図7に示すような傾斜角度φ1で以て円錐状に端面が成形されたマルチコアファイバ8を、マルチコアファイバ6の代わりに用いても良い。マルチコアファイバ8も6つのコア8a及び8c~8gを備える。図7(b)は図7(a)のA-A側断面図であるが、B-B側断面図やC-C側断面図も図7(b)と同様の側断面構造が現れる。
【0054】
次に、図2図5及び図6を参照して、本発明の第2の実施形態に係る光結合装置7とその製造方法を説明する。なお、第1の実施形態の光結合装置5と同一箇所には同一番号を付し、重複する説明は簡略化又は省略して説明する。
【0055】
光結合装置7が前記光結合装置5と異なる点は、マルチコアファイバ1の各コアとして、マルチコアファイバ1の中央を中心とする円の円周上で等角度(図5(a)では60°)且つ等間隔に各コア1b~1gが配列されていると共に、前記中央に更にもう1つコア1aが配列されている点である。従って、各コア1b~1gと各光ファイバ2b~2gの光導波路による光学的な接続に加えて、中央の光ファイバ2aのコアと前記中央のコア1bとが、互いに直線の光導波路3aで光学的に接続される。
【0056】
光結合装置7の製造時は、コア1bの端部がそのコア1bの光伝搬方向に対して直交方向に形成されている事を確認し、次に光ファイバ2a~2gのコアの総数とマルチコアファイバ1のコア1a~1gの総数とが同一である事を確認(図2及び図5ではそれぞれ7つずつで同一である事を確認)する。
【0057】
第2の実施形態に係る光結合装置7とその製造方法に依れば、中央のコア1a及び光ファイバ2aのコアを、光結合装置7を製造する際の中心位置出しに使用する事が出来る。従って、第1の実施形態の光結合装置5が有する効果に加えて、より光結合装置7の製造が容易となり、製造コストの低減と歩留まりの向上が可能となる。
【0058】
次に図8を参照して、本発明の第3の実施形態に係る光結合装置を説明する。なお、前記各実施形態と同一箇所には同一番号を付し、重複する説明は簡略化又は省略して説明する。
【0059】
第3の実施形態に係る光結合装置が前記光結合装置5と異なる点は、マルチコアファイバ9として、前記マルチコアファイバ1、6、8に代わり4つのコア9a~9dを備えるファイバを用いる点である。更にコア9a~9dの端面毎に、傾斜角度φ1で以て一平面状に成形する為、マルチコアファイバ9の端面は四角錐状に成形される。
【0060】
従って、このマルチコアファイバ9と自己形成光導波路を介して光学的に接続される複数の光ファイバは、図3に示す光ファイバを、コア9a~9dの配置と同一に2列×2芯で配置されたファイバ群であり、2列×2芯配列のバンドルファイバを用いても良い。
【0061】
なお図8(b)は図8(a)のA-A側断面図であるが、B-B側断面図も図8(b)と同様の側断面構造が現れる。
【0062】
なお第3の実施形態の変更形態として、図9に示すような傾斜角度φ1で以て円錐状に端面が成形されたマルチコアファイバ10を、マルチコアファイバ9の代わりに用いても良い。マルチコアファイバ10も4つのコア10a~10dを備える。図9(b)は図9(a)のA-A側断面図であるが、B-B側断面図も図9(b)と同様の側断面構造が現れる。
【0063】
なお、本発明はその技術的思想に基づいて種々変更可能であり、光ファイバ2a~2g及びマルチコアファイバ(1、6)に換えて、1つのコアを備える単芯の光ファイバどうしを対向配置すると共に、各光ファイバの光軸方向を平行に配置し、且つ各コアと自己形成光導波路の屈折率に応じた角度で各光ファイバの各端部を斜めに形成し、直線の光導波路で接続して光結合装置を構成しても良い。
【0064】
また対向配置させる光ファイバどうしは、互いに異なる材料から成る光ファイバどうしでも良い。
【符号の説明】
【0065】
1、6、8、9、10 マルチコアファイバ
1a~1g、6a、6c~6g、8a、8c~8g、9a~9d、10a~10d マルチコアファイバのコア
2a~2g 光ファイバ
4 クラッド
5、7 光結合装置
φ1 マルチコアファイバのコア端部の傾斜角度
φ2 光ファイバのコア端部の傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9