(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】転炉製鋼製錬後期の炭素含有量の予測方法
(51)【国際特許分類】
C21C 5/30 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
C21C5/30 Z
(21)【出願番号】P 2021560746
(86)(22)【出願日】2020-12-04
(86)【国際出願番号】 CN2020133906
(87)【国際公開番号】W WO2021129350
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2021-11-26
【審判番号】
【審判請求日】2023-01-10
(31)【優先権主張番号】201911363776.9
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】516265780
【氏名又は名称】北京科技大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】劉青
(72)【発明者】
【氏名】林文輝
(72)【発明者】
【氏名】孫建坤
(72)【発明者】
【氏名】周凱嘯
【合議体】
【審判長】粟野 正明
【審判官】土屋 知久
【審判官】相澤 啓祐
(56)【参考文献】
【文献】特開昭48-75408(JP,A)
【文献】特開昭54-33817(JP,A)
【文献】特開昭50-104116(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21C1/02
C21C1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
転炉製鋼製錬後期の炭素含有量の予測方法であって、具体的には、
収集された履歴ヒートの製錬後期の脱炭酸素効率及び炭素含有量の実測データを利用して、指数フィッティングを行うことで製錬後期の「履歴脱炭曲線」及びその特徴パラメータを得るステップS1と、
現在のヒートの製錬中期の最大脱炭酸素効率値で「履歴脱炭曲線」の対応するパラメータを置換し、現在のヒートの製錬後期の「参照脱炭曲線」を得るステップS2と、
多点校正方法を用いて、現在のヒートの製錬から各等距離校正点までの実際の脱炭量と、「参照脱炭曲線」に対応する脱炭量との偏差値に基づき、溶融池の炭素含有量及び脱炭曲線パラメータを計算して校正し、「計算脱炭曲線」を得て、且つ計算するごとに、「計算脱炭曲線」及び「参照脱炭曲線」を同期的に更新するステップS3と、
逐次的に反復計算することで、「計算脱炭曲線」に対する校正及び製錬後期の転炉溶融池の炭素含有量に対する正確な予測を実現するステップS4と、を含み、
前記S1-S3の「履歴脱炭曲線」、「参照脱炭曲線」及び「計算脱炭曲線」は、いずれも指数式で表され、具体的には、式(2-1)及び式(2-2)に示され、
【数1】
前記S1において「履歴脱炭曲線」を得る具体的なステップは、
実測によって履歴ヒートの製錬後期の脱炭酸素効率Rの一部及びその対応する溶融池の炭素含有量の実測値Cを収集するS11と、
指数関数式(2-1)をフィッティング関数として、上記収集された履歴ヒートデータをフィッティングして、α、β、γのフィッティング値α
i、β
i、γ
iを得て、次に、式(2-2)によって計算してC
0の値を得
、溶融池の限界炭素含有量C
0
を指数モデルのフィッティングパラメータとするS12と
、
フィッティングして得られたα
i、β
i、γ
i値を式(2-1)に代入し、溶融池のC含有量を横座標として、脱炭酸素効率Rを縦座標とする、式(3-1)に示されるように限界脱炭点(C
0,0)を通る「履歴脱炭曲線」を得るS13とであり、
【数2】
前記S2において現在のヒートの製錬後期の「参照脱炭曲線」を得る具体的なステップは、
脱炭ピーク期である現在のヒートの製錬中期の脱炭酸素効率の最大値を現在のヒートの最大脱炭酸素効率α
jとするS21と、
α
jを式(3-1)に代入してα
iを置換し、式(4-1)に示されるように現在
の製錬後期の「参照脱炭曲線」を得るS22とであり、
【数3】
前記S3において現在のヒートの製錬後期の「計算脱炭曲線」を得る具体的なステップは、
製錬後期のR値が連続的に低下する傾向があり、R値が0.95α
jまで低下すると、校正開始点とし、前記校正開始点を第1校正点とし、R値が0.70α
j、0.45α
j、…(1.2-0.25n)α
jまで低下すると、それぞれ第2、第3、…、第n校正点とし、式(5-1)に示されるように各校正点の間の距離ΔRは同じであるS311と、
R
1=0.95α
j、R
2=0.70α
jをそれぞれ式(4-1)に代入し、解を求めてC
1、C
2を得て、「参照脱炭曲線」の脱炭量は(C
1-C
2)であるS312と、
転炉の実際製錬時のR値がR
1からR
2まで低下する過程に転炉のガスCO、CO
2成分及びガス流量等のリアルタイムな検出データを用いて、式(5-2)に示されるように
t
1
からt
2
までの実際の脱炭量
を算出するS313と、
既知の(C
1-C
2)、
、β
i、γ
i、C
0に基づき、式(5-3)、(5-4)によってγ
j、β
jを算出し、さらに式(5-5)に示されるように「計算脱炭曲線」を得るS314とであり、
【数4】
前記S3において「計算脱炭曲線」及び「参照脱炭曲線」を同期的に更新する具体的なステップは、
式(4-1)を式(5-5)に置換して新しい「参照脱炭曲線」とし、R
2=0.70α
j、R
3=0.45α
jをそれぞれ該式に代入し、解を求めてC
2、C
3を得て、「参照脱炭曲線」の脱炭量は(C
2-C
3)であるS321と、
実際製錬時にR値がR
2からR
3まで低下する過程における転炉のガスCO、CO
2成分及びガス流量等のリアルタイムな検出データを用いて、式(6-1)に示されるように
t
2
からt
3
までの実際の脱炭量
を算出するS322と、
既知の(C
2-C
3)、
、β
j、γ
j、C
0に基づき、それぞれ式(6-2)、式(6-3)に示されるようにγ
k、β
kを算出し、さらに式(6-4)に示されるように校正された「計算脱炭曲線」を得るS323と、
校正された「計算脱炭曲線」を次回の計算の「参照脱炭曲線」とし、すなわち、計算するごとに、「計算脱炭曲線」及び「参照脱炭曲線」を同期的に更新するS324とであり、
【数5】
式中、t
2
、t
3
はそれぞれR値が第2、第3校正点に到着する時点であり、
前記S4において反復計算して「計算脱炭曲線」に対する逐次的な校正及び製錬後期の溶融池の炭素含有量に対する正確な予測を実現する具体的なステップは、
S3の方法に基づいて、式(7-1)に示されるように第n校正点まで逐次的に反復計算し、(n-1)回の反復計算後の「計算脱炭曲線」を得るS41、
新しい「計算脱炭曲線」を得る前に、前回の「計算脱炭曲線」の式に基づき、終点炭素含有量の目標を達成するまで、溶融池の炭素含有量値をリアルタイムに計算するS42であることを特徴とする転炉製鋼製錬後期の炭素含有量の予測方法。
【数6】
【請求項2】
前記S42の「新しい計算脱炭曲線を得る前」は、「Rが次の校正点に到着する前」であり、前記S42の前回の「計算脱炭曲線」は今回の「参照脱炭曲線」でもあることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は鉄鋼冶金の技術分野に関し、特に転炉製鋼製錬後期の炭素含有量の予測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉製鋼は、今日の社会で最も重要な製鋼方法として、その生産高が世界の製鋼生産量の70%以上であり、転炉製鋼の自動制御を実現することも重要になる。現在の多数の転炉製鋼の自動制御技術は、検出手段に応じて主にサブランス技術及びガス分析技術等である。サブランス技術は、その接触式直接測定の特徴により、制御精度がより高いのに対して、ガス分析は間接式測定に属するため、干渉要素が多く、制御精度がより低い。従って、国内外の転炉の製鋼自動制御技術は、非常に長い間に主にサブランスシステムを使用し、ガス分析システムが配置される製鋼所であっても、オンライン制御に使用せず、補助参照手段としてのみ使用する。しかし、サブランスのシングルポイント測定とは異なり、ガス分析は連続的に測定する利点を有し、従って、転炉製錬全過程の動的制御を実現することに有利である。
【0003】
従来、ガス分析に基づく炭素含有量予測モデルとしては、主に炭素積分モデル、立方モデル及び指数減衰モデル等である。非特許文献1[Continuous carbon determination in the basic oxygen processes.JOM,1964,16(6):508]には、炭素積分モデルが説明されており、しかしながら、実際の生産において転炉の溶融池の初期炭素含有量、転炉のガス流量及び成分の検出にはいずれも所定の誤差があり、積分モデルを用いる場合、誤差が累積し、それにより、予測された炭素含有量の偏差が転炉の実際制御の精度要件よりもはるかに大きくなり、従って、炭素積分モデルは一般的には製錬後期及び終点炭素含有量の予測に適合せず、非特許文献2[炉ガス分析を用いた転炉製錬の終点炭素含有量の予測、材料及び冶金学術雑誌、2007、6(1):3]には、立方モデルが説明されており、低炭素領域(炭素含有量≦0.10%)でフィッティング精度が高く、終点炭素に対して単一点で予測する時の効果が高いが、中高炭素領域に外挿すると、フィッティング曲線が発散し、そのため、一般的には、製錬後期全体の炭素含有量の連続的な予測に適合しない。非特許文献3[Development and operation of BOF dynamic control.Blast Furn.Steel Plant,1966,54(7):595]には、指数減衰モデルが説明されており、転炉製錬後期の脱炭酸素効率と溶融池の炭素含有量との対応関係を特徴づけるために使用される。冶金学的原理に基づき、溶融池の炭素の物質移動は転炉製錬後期の脱炭反応の制限的一環であり、指数減衰モデルは転炉製錬後期の溶融池の炭素含有量の変化の一般法則をよく特徴づけることができる。しかし、実際の生産の様々な要素の影響を受けるため、各ヒートの溶鋼製錬の脱炭曲線はいずれも独自性を有し、従って、履歴ヒートの脱炭曲線及び現在のヒートの脱炭曲線特徴の正確な抽出及び効果的な利用は、指数減衰モデルによる予測の正確率を決めるキーポイントである。
【0004】
従って、従来技術の不備を解消し、上記1つ又は複数の問題を解決又は軽減するために、転炉製鋼製錬後期の炭素含有量の予測方法を研究する必要がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】Continuous carbon determination in the basic oxygen processes.JOM,1964,16(6):508
【文献】炉ガス分析を用いた転炉製錬の終点炭素含有量の予測、材料及び冶金学術雑誌、2007、6(1):3
【文献】Development and operation of BOF dynamic control.Blast Furn.Steel Plant,1966,54(7):595
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これに鑑みて、本発明は、転炉製鋼製錬後期の炭素含有量の予測方法を提供し、該方法は、指数減衰モデルを基礎として改良し、「履歴脱炭曲線」、「参照脱炭曲線」、及び「計算脱炭曲線」の概念を導入し、履歴ヒートの脱炭曲線の参照価値を効果的に発揮するだけではなく、現在のヒートの実際脱炭曲線の特徴を十分に利用し、それにより、より優れた適応性及び高い正確率を有する製錬後期の炭素含有量を予測する改良された指数モデルを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一方、本発明は、転炉製鋼製錬後期の炭素含有量の予測方法を提供し、具体的には、
収集された履歴ヒートの製錬後期の脱炭酸素効率及び炭素含有量の実測データを利用して、指数フィッティングを行うことで「履歴脱炭曲線」及びその特徴パラメータを得るS1と、
現在のヒートの製錬中期の最大脱炭酸素効率値で「履歴脱炭曲線」の対応するパラメータを置換し、現在のヒートの製錬後期の「参照脱炭曲線」を得るS2と、
多点校正方法を用いて、現在のヒートの製錬から各等距離校正点までの実際の脱炭量と、「参照脱炭曲線」に対応する脱炭量との偏差値に基づき、溶融池の炭素含有量及び脱炭曲線パラメータを計算して校正し、「計算脱炭曲線」を得て、且つ計算するごとに、「計算脱炭曲線」及び「参照脱炭曲線」を同期的に更新するS3と、
逐次的に反復計算することで、「計算脱炭曲線」に対する校正及び製錬後期の転炉溶融池の炭素含有量に対する正確な予測を実現するS4と、を含む。
【0008】
前述した態様及びいずれかの可能な実現方式によって、1つの実現方式をさらに提供し、前記S1-S3の「履歴脱炭曲線」、「参照脱炭曲線」及び「計算脱炭曲線」は、いずれも指数式で表され、具体的には、式(2-1)及び式(2-2)に示される。
【0009】
【0010】
(式(2-1)及び式(2-2)において、Rはリアルタイムな脱炭酸素効率を表し、単位がkg/m3であり、αはヒートの最大脱炭酸素効率を表し、単位がkg/m3であり、Cは転炉溶融池のリアルタイムな炭素含有量を表し、単位が%であり、C0は転炉溶融池の限界炭素含有量を表し、単位が%であり、β、γは脱炭酸素効率に関連する係数である。)
【0011】
前述した態様及びいずれかの可能な実現方式によって、1つの実現方式をさらに提供し、前記S1において「履歴脱炭曲線」を得る具体的なステップは、
実測によって履歴ヒートの製錬後期の脱炭酸素効率Rの一部及びその対応する溶融池の炭素含有量の実測値Cを収集するS11と、
指数関数式(2-1)をフィッティング関数として、上記収集された履歴ヒートデータをフィッティングして、α、β、γのフィッティング値αi、βi、γiを得て、次に、式(2-2)によって計算してC0の値を得るS12と、
フィッティングして得られたαi、βi、γi値を式(2-1)に代入し、溶融池のCの含有量を横座標とし、脱炭酸素効率Rを縦座標とする、式(3-1)に示されるように限界脱炭点(C0,0)を通る「履歴脱炭曲線」を得るS13とである。
【0012】
【0013】
前述した態様及びいずれかの可能な実現方式によって、1つの実現方式をさらに提供し、前記S2において現在のヒートの製錬後期の「参照脱炭曲線」を得る具体的なステップは、
脱炭ピーク期である現在のヒートの製錬中期の脱炭酸素効率の最大値を現在のヒートの最大脱炭酸素効率αjとするS21と、
αjを式(3-1)に代入してαiを置換し、式(4-1)に示されるように現在の炉製錬後期の「参照脱炭曲線」を得るS22とである。
【0014】
【0015】
前述した態様及びいずれかの可能な実現方式によって、1つの実現方式をさらに提供し、前記S3において現在のヒートの製錬後期の「計算脱炭曲線」を得る具体的なステップは、
製錬後期のR値が連続的に低下する傾向があり、R値が0.95α
jまで低下すると、校正開始点とし、前記校正開始点を第1校正点とし、R値が0.70α
j、0.45α
j、…(1.2-0.25n)α
jまで低下すると、それぞれ第2、第3、…、第n校正点とし、式(5-1)に示されるように各校正点の間の距離ΔRは同じであるS311と、
R
1=0.95α
j、R
2=0.70α
jをそれぞれ式(4-1)に代入し、解を求めてC
1、C
2を得て、「参照脱炭曲線」の脱炭量は(C
1-C
2)であるS312と、
【0016】
【0017】
【0018】
前述した態様及びいずれかの可能な実現方式によって、1つの実現方式をさらに提供し、前記S3において「計算脱炭曲線」及び「参照脱炭曲線」を同期的に更新する具体的なステップは、
式(4-1)を式(5-5)に置換して新しい「参照脱炭曲線」とし、R
2=0.70α
j、R
3=0.45α
jをそれぞれ該式に代入し、解を求めてC
2、C
3を得て、「参照脱炭曲線」の脱炭量は(C
2-C
3)であるS321と、
校正された「計算脱炭曲線」を次回の計算の「参照脱炭曲線」とし、すなわち、計算するごとに、「計算脱炭曲線」及び「参照脱炭曲線」を同期的に更新するS324とである。
【0019】
【0020】
前述した態様及びいずれかの可能な実現方式によって、1つの実現方式をさらに提供し、前記S4において反復計算して「計算脱炭曲線」に対する逐次的な校正及び製錬後期の溶融池の炭素含有量に対する正確な予測を実現する具体的なステップは、
S3の方法に基づいて、式(7-1)に示されるように第n校正点まで逐次的に反復計算し、(n-1)回の反復計算後の「計算脱炭曲線」を得るS41と、
新しい「計算脱炭曲線」を得る前に、前回の「計算脱炭曲線」の式に基づき、終点炭素含有量の目標を達成するまで、溶融池の炭素含有量値をリアルタイムに計算するS42とである。
【0021】
【0022】
前述した態様及びいずれかの可能な実現方式によって、1つの実現方式をさらに提供し、前記S42の「新しい計算脱炭曲線を得る前」は、Rが次の校正点に到着する前であり、前記S42の前回の「計算脱炭曲線」は今回の「参照脱炭曲線」でもある。
【発明の効果】
【0023】
従来技術に比べて、本発明は、以下の技術的効果を得ることができる。
【0024】
(1)実際の作業条件の影響を考慮して、溶融池の限界炭素含有量C0を指数モデルのフィッティングパラメータとし、実験値0.02%又は熱力学的平衡によって算出される他の固定値として直接設定することではなく、実際に近い「履歴脱炭曲線」及び対応する指数モデルの特徴パラメータを得る。
【0025】
(2)「等距離多点校正」アルゴリズムと、「参照脱炭曲線」及び「計算脱炭曲線」が同期的に更新された改良アルゴリズムとを組み合わせて、履歴ヒートの脱炭曲線の参照価値を効果的に発揮するだけではなく、現在のヒートの実際脱炭曲線の特徴を十分に利用し、それにより、より高い計算の精度を取得する。本特許によって提出された、改良された指数モデルで予測される終点炭素偏差±0.02%以内の命中率は90%以上に達する。
【0026】
もちろん、本発明を実施する任意の製品は、必ずしも上記のすべての技術的効果を同時に達成する必要はない。
【0027】
本発明の実施例の技術案をより明瞭に説明するために、以下、実施例に使用される図面を簡単に説明する。明らかに、以下の説明における図面は、ただ本発明のいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとって、創造的な労力を要することなく、これらの図面に基づいて他の図面を取得することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の一実施例による転炉製鋼製錬後期の炭素含有量の予測方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の技術案をよりよく理解するために、以下、図面を参照しながら本発明の実施例を詳細に説明する。
【0030】
明らかに、説明される実施例は、ただ本発明の実施例の一部に過ぎず、すべての実施例ではない。本発明における実施例に基づき、当業者が創造的な労力を要することなく得られたすべての他の実施例は、いずれも本発明の保護範囲に属する。
【0031】
本発明の実施例に使用される用語は、ただ特定の実施例を説明するためのものであり、本発明を限定するものではない。文脈から他の意味を明確に示していない限り、本発明の実施例及び添付の特許請求の範囲に使用される単数形の「一種」、「上記」及び「該」は、複数形も含むことが意図される。
【0032】
図1に示されるように、本発明は、転炉製鋼製錬後期の炭素含有量の予測方法を提供し、そのプロセスのステップは、具体的には、ステップ1~ステップ5である。
【0033】
ステップ1、履歴ヒートデータを収集し、実測によって履歴ヒートの製錬後期の脱炭酸素効率Rの一部及びその対応する溶融池の炭素含有量の実測値Cを収集する。
【0034】
ステップ2、収集された履歴ヒートの製錬後期の脱炭酸素効率及び炭素含有量の実測データを利用して、指数フィッティングを行うことで製錬後期の「履歴脱炭曲線」及びその特徴パラメータを得て、指数関数式(2-1)をフィッティング関数として、上記収集された履歴ヒートデータをフィッティングして、α、β、γのフィッティング値αi、βi、γiを得て、次に、式(2-2)によって計算してC0の値を得て、
フィッティングして得られたαi、βi、γi値を式(2-1)に代入し、溶融池のCの含有量を横座標とし、脱炭酸素効率Rを縦座標とする、式(3-1)に示されるように限界脱炭点(C0,0)を通る「履歴脱炭曲線」を得る。
【0035】
【0036】
ステップ3、現在のヒートの製錬中期の最大脱炭酸素効率値で「履歴脱炭曲線」の対応するパラメータを置換し、現在のヒートの製錬後期の「参照脱炭曲線」を得て、現在のヒートの製錬後期の「参照脱炭曲線」の取得ステップは、具体的には、
脱炭ピーク期である現在のヒートの製錬中期の脱炭酸素効率の最大値を現在のヒートの最大脱炭酸素効率αjとするステップ3-1と、
αjを式(3-1)に代入してαiを置換し、式(4-1)に示されるように現在の炉製錬後期の「参照脱炭曲線」を得るステップ3-2とである。
【0037】
【0038】
ステップ4、多点校正方法を用いて、現在のヒートの製錬から各等距離校正点までの実際の脱炭量と、「参照脱炭曲線」に対応する脱炭量との偏差値に基づき、溶融池の炭素含有量及び脱炭曲線パラメータを計算して校正し、「計算脱炭曲線」を得て、且つ計算するごとに、「計算脱炭曲線」及び「参照脱炭曲線」を同期的に更新し、
現在のヒートの製錬後期の「計算脱炭曲線」の具体的なステップは、
製錬後期のR値が連続的に低下する傾向があり、R値が0.95α
jまで低下すると、校正開始点とし、前記校正開始点を第1校正点とし、R値が0.70α
j、0.45α
j、…(1.2-0.25n)α
jまで低下すると、それぞれ第2、第3、…、第n校正点とし、式(5-1)に示されるように各校正点の間の距離ΔRは同じであるステップ4-1と、
R
1=0.95α
j、R
2=0.70α
jをそれぞれ式(4-1)に代入し、解を求めてC
1、C
2を得て、「参照脱炭曲線」の脱炭量は(C
1-C
2)であるステップ4-2と、
転炉の実際製錬時のR値がR
1からR
2まで低下する過程における転炉のガスCO、CO
2成分及びガス流量等のリアルタイムな検出データを用いて、
【0039】
【0040】
「計算脱炭曲線」及び「参照脱炭曲線」を同期的に更新する具体的なステップは、
式(4-1)を式(5-5)に置換して新しい「参照脱炭曲線」とし、R
2=0.70α
j、R
3=0.45α
jをそれぞれ該式に代入し、解を求めてC
2、C
3を得て、「参照脱炭曲線」の脱炭量は(C
2-C
3)であるステップ1)と、
実際製錬時にR値がR
2からR
3まで低下する過程における転炉のガスCO、CO
2成分及びガス流量等のリアルタイムな検出データを用いて、
校正された「計算脱炭曲線」を次回の計算の「参照脱炭曲線」とし、すなわち、計算するごとに、「計算脱炭曲線」及び「参照脱炭曲線」を同期的に更新するステップ4)とである。
【0041】
【0042】
ステップ5、逐次的に反復計算することで、「計算脱炭曲線」に対する校正及び製錬後期の転炉溶融池の炭素含有量に対する正確な予測を実現し、
反復計算して「計算脱炭曲線」に対する逐次的な校正及び製錬後期の溶融池の炭素含有量に対する正確な予測を実現する具体的なステップは、
ステップ4の方法に基づいて、式(7-1)に示されるように第n校正点まで逐次的に反復計算し、(n-1)回の反復計算後の「計算脱炭曲線」を得るステップ(1)と、
新しい「計算脱炭曲線」を得る前(すなわちRが次の校正点に到着する前)に、前回の「計算脱炭曲線」(今回の「参照脱炭曲線」でもある)の式に基づき、溶融池の炭素含有量値をリアルタイムに計算し、予測される炭素含有量が目標値に達するか否かを判断し、目標値に達する場合、計算が終了し、吹製を停止し、目標値に達さない場合、引き続き今回の「計算脱炭曲線」を新しい「参照脱炭曲線」とし、ステップ4を繰り返すステップ(2)とである。
【0043】
【実施例1】
【0044】
ある製鋼所の転炉製錬の終点炭素含有量の目標が0.06%である鋼種を実施キャリアとする。
【0045】
先ず、ステップS1に基づき、50履歴ヒートの製錬後期の脱炭酸素効率R及びその対応する溶融池の炭素含有量実測値Cを収集し、指数フィッティング方法によってαi、βi、γi、C0の値を得て、それぞれαi=1.2、βi=-1.52、γi=-8.33、C0=0.0284であり、「履歴脱炭曲線」の表現式は、
R=1.2-1.52×e-8.33・Cである。
【0046】
次に、ステップS2に基づき、実際の溶錬ヒートH-1について、該ヒートの製錬中期(脱炭ピーク期)の最大脱炭酸素効率αj=1.15kg/m3でαiを置換して得られた「参照脱炭曲線」の表現式は、
R=1.15-1.52×e-8.33・Cである。
【0047】
再び、ステップS3に基づき、それぞれR=0.95α
j、R=0.70α
j、R=0.45α
j、R=0.20α
j(すなわち実際のRはそれぞれ1.09、0.81、0.52、0.23kg/m
3である場合)を第1、2、3、4校正点とし、「参照脱炭曲線」が第1、第2校正点を通る(すなわちR
1=1.09kg/m
3、R
2=0.81kg/m
3)場合、「参照脱炭曲線」の脱炭量(C
1-C
2)は0.2319%であり、
R=1.15-1.48×e
-7.53・Cであり、
同時に、それを次回の校正の「参照脱炭曲線」、すなわち、「計算脱炭曲線」及び「参照脱炭曲線」の第1回の更新とする。
【0048】
類推により、曲線が第3、第4校正点(すなわちR3=0.52kg/m3、R4=0.23kg/m3)を通る場合、請求項6によれば、それぞれ「計算脱炭曲線」及び「参照脱炭曲線」に対して第2、第3回の更新を行う。
【0049】
最後、ステップS4に基づき、脱炭曲線を逐次的に反復し、ヒートH-1を逐次的に更新する曲線パラメータを表1に示す。第3回まで更新した後、実際のRが0.1930kg/m3まで低下する際、「計算脱炭曲線」で予測すると、炭素含有量が0.0600%であり、終点炭素含有量の目標を達成し、このとき、製錬を停止し、サンプリングして分析することにより、実際の炭素含有量が0.0613%である。
【0050】
【0051】
表1から分かるように、本発明の方法で転炉製錬の後期及び終点の炭素含有量を予測すると、逐次的に反復して更新する過程に誤差を徐々に小さくすることができ、それにより、製錬の後期及び終点の炭素含有量の正確な予測を実現することができる。
【0052】
以上、本願の実施例によって提供される転炉製鋼製錬後期の炭素含有量の予測方法を、詳細に説明した。以上の実施例の説明は、単に本願の方法及びその中心的概念を理解することを意図する。また、当業者であれば、本願の発想に基づき、実施形態及び適用範囲を変更することができる。以上のように、本明細書の内容は、本願を限定するものとして理解されるべきではない。
【0053】
明細書及び特許請求の範囲では、特定の構成要素を指すために特定の用語が使われている場合、ハードウェア製造業者が同じ構成要素を指すために異なる名詞を使用する場合があることを、当業者は理解するのであろう。本明細書及び特許請求の範囲は、構成要素を区別する方法として、用語の違いを使用せず、構成要素の機能の違いをその区別の基準として使用する。例えば、明細書及び特許請求の範囲全文で言及されている「備える」、「含む」はオープンな用語であるため、「備える/含むがそれらに限定されない」と解釈すべきである。「おおよそ」とは、許容誤差範囲内で、当業者が特定の誤差範囲内に前記技術的課題を解決でき、前記技術的効果を基本的に実現することを意味する。以下の明細書の説明は、本願を実施するための好ましい実施形態であるが、前記説明は、本願の一般的な原則を説明することを目的とし、本願の範囲を限定するものではない。本願の保護範囲は、添付の特許請求の範囲によって定義されるものに従うものとする。
【0054】
なお、「含む」、「備える」又はその任意の変形は、非排他的包含をカバーするものとし、従って、要素のリストを含む商品又はシステムは、それらの要素だけでなく、明白に列挙されない他の要素をも含み、又はそのような商品又はシステムに固有の要素をさらに含むことを留意されたい。より多くの制約なしに、「1つを含む…」によって限定される要素は、前記要素を含む商品又はシステム内の他の同一要素の存在を除外するものではない。
【0055】
理解すべきことは、本明細書に使用される「及び/又は」という用語は、関連対象の関連関係を説明するものに過ぎず、例えば、A及び/又はBは、単独のA、AとBの両方の存在、及び単独のBという3種の状況を表すことができる。また、本明細書の文字「/」は、通常、前後の関連対象が「又は」の関係にあることを表す。
【0056】
上記説明は、本願のいくつかの好ましい実施例を示して説明するが、上記したように、理解すべきことは、本願は、本明細書に開示される形態に限定されず、他の実施形態の除外と見なされるべきではなく、様々な他の組み合わせ、修正及び環境に使用でき、且つ本発明の範囲内に、上記教示又は関連分野の技術又は知識によって変更できる。当業者によって行われた修正及び変更は、本願の精神及び範囲から逸脱するものではなく、本願の添付の特許請求の範囲の保護範囲内に含まれるべきである。