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特許7591290廃リチウムイオン電池からリチウムを回収する方法
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  • 特許-廃リチウムイオン電池からリチウムを回収する方法 図1
  • 特許-廃リチウムイオン電池からリチウムを回収する方法 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】廃リチウムイオン電池からリチウムを回収する方法
(51)【国際特許分類】
   C22B 7/00 20060101AFI20241121BHJP
   C01D 15/02 20060101ALI20241121BHJP
   C01D 15/08 20060101ALI20241121BHJP
   C22B 3/06 20060101ALI20241121BHJP
   C22B 3/28 20060101ALI20241121BHJP
   C22B 3/30 20060101ALI20241121BHJP
   C22B 3/38 20060101ALI20241121BHJP
   C22B 26/12 20060101ALI20241121BHJP
   C25B 1/02 20060101ALI20241121BHJP
   C25B 1/26 20060101ALI20241121BHJP
   C25B 1/46 20060101ALI20241121BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C22B7/00 C
C01D15/02
C01D15/08
C22B3/06
C22B3/28
C22B3/30
C22B3/38
C22B26/12
C25B1/02
C25B1/26 A
C25B1/46
H01M10/54
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022064729
(22)【出願日】2022-04-08
(65)【公開番号】P2023051704
(43)【公開日】2023-04-11
【審査請求日】2024-07-19
(31)【優先権主張番号】P 2021161272
(32)【優先日】2021-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391023415
【氏名又は名称】株式会社アサカ理研
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】山田 慶太
(72)【発明者】
【氏名】佐久間 幸雄
(72)【発明者】
【氏名】平岡 太郎
【審査官】有田 恭子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/256732(WO,A1)
【文献】特表2018-520971(JP,A)
【文献】特開2009-269810(JP,A)
【文献】特開2004-142986(JP,A)
【文献】特開2011-031232(JP,A)
【文献】特開2011-032151(JP,A)
【文献】特開2001-096236(JP,A)
【文献】特開2020-132950(JP,A)
【文献】特表2022-507019(JP,A)
【文献】特開平10-287864(JP,A)
【文献】特開2010-229534(JP,A)
【文献】特開2004-307983(JP,A)
【文献】特開平11-185834(JP,A)
【文献】特開2005-042189(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22B 1/00-61/00
C01D 15/02,15/08
C25B 1/02,1/26,1/46
H01M 10/54
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃リチウムイオン電池からリチウムを回収する方法であって、
前記廃リチウムイオン電池を前処理して得られた活物質粉を鉱酸中に溶解して溶解液を得る溶解工程と、
前記溶解液を水酸化リチウムで中和する中和工程と、
水酸化リチウムを添加した該溶解液から、該活物質粉に含まれる金属のうち、リチウムを除く少なくとも1種の金属を有機溶媒抽出により分離し、該有機溶媒抽出の残液として第1のリチウム塩水溶液を得る工程と、
前記第1のリチウム塩水溶液を、イオン交換膜を用いて電解して水酸化リチウム水溶液と、酸と、前記第1のリチウム塩水溶液よりも希薄な第2のリチウム塩水溶液とを得る膜電解工程と、
前記水酸化リチウム水溶液の一部を前記溶解液に添加する水酸化リチウムとして用いるか、又は前記有機溶媒抽出に用い、前記酸を前記鉱酸として用いる工程を含み、
有機溶媒抽出で使用される有機溶媒が有機リン化合物、ヒドロオキシム、及び有機アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種であり、
該鉱酸は、塩酸及び硝酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法。
【請求項2】
請求項1に記載された廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法において、前記第2のリチウム塩水溶液を濃縮し、前記第1のリチウム塩水溶液に添加することを特徴とする廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法において、前記鉱酸は塩酸であることを特徴とする廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載された廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法において、イオン交換膜を用いて前記第1のリチウム塩水溶液を電解して得られた塩素と水素とを反応させて生成した塩酸を前記鉱酸として用いることを特徴とする廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法。
【請求項5】
請求項1又は2に記載された廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法において、前記電解工程に用いる電力は、再生可能エネルギーによって得られた電力であること特徴とする廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法。
【請求項6】
請求項に記載された廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法において、前記再生可能エネルギーによって得られた電力は、太陽光発電によって得られた電力又は風力発電によって得られた電力であること特徴とする廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載された廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法において、前記有機溶媒抽出で使用される前記有機溶媒が還元剤及び酸化剤を含まないこと特徴とする廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃リチウムイオン電池を前処理して得られた活物質粉に含まれる金属を湿式プロセスにて分離してリチウムを回収する廃リチウムイオン電池からのリチウムを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムイオン電池の普及に伴い、廃リチウムイオン電池からコバルト、ニッケル、マンガン、リチウム等の有価金属を回収し、前記リチウムイオン電池の材料として再利用する方法が検討されている。
従来、前記廃リチウムイオン電池から前記有価金属を回収する際には、該廃リチウムイオン電池を加熱処理(焙焼)、粉砕、分級する等して得られた前記有価金属を含む粉末(以下、活物質粉という)からコバルト、ニッケル、マンガン、リチウムを湿式プロセスにて分離精製することが行われている(例えば、特許文献1、2参照)。
尚、本願において、廃リチウムイオン電池とは、電池製品としての寿命が消尽した使用済みのリチウムイオン電池、製造工程で不良品等として廃棄されたリチウムイオン電池、製造工程において製品化に用いられた残余の正極・負極材料等を意味する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6835820号公報
【文献】特許第6869444号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の湿式プロセスでは、アルカリ源として回収目的物であるリチウム化合物以外の化合物を使用しているため、リチウム以外の陽イオン濃度が高くなり、同時にリチウムイオン濃度が低下する。この結果、前記従来の湿式プロセスでは、目的物であるリチウムの回収率が著しく低下し、また、アルカリ源として用いたリチウム化合物以外の化合物は、塩として排出されてしまい、資源循環することができないという不都合がある。ここで、前記リチウム化合物以外の化合物としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、アンモニア等を挙げることができる。
本発明は、かかる不都合を解消して、高い回収率でリチウムを回収することができ、資源循環が可能である廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
かかる目的を達成するために、本発明の廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法は、廃リチウムイオン電池を前処理して得られた活物質粉を鉱酸にて溶解して少なくともリチウムを含む該活物質の酸溶解液を得る工程と、該酸溶解液に水酸化リチウムを添加する工程と、水酸化リチウムを添加した該酸溶解液から、該活物質粉に含まれる金属のうち、リチウムを除く少なくとも1種の金属を有機溶媒抽出により分離し、該溶媒抽出の残液として第1のリチウム塩水溶液を得る工程とを備える廃リチウムイオン電池からリチウムを回収する方法であって、イオン交換膜を用いて該第1のリチウム塩水溶液を電解し、水酸化リチウム水溶液と、酸と、該第1のリチウム塩水溶液よりも希薄な第2のリチウム塩水溶液とを得る工程と、該水酸化リチウム水溶液の一部を酸溶解液に添加する水酸化リチウムとして用いるか、又は該有機溶媒抽出に用い、該酸を該鉱酸として用いる工程とを備え、該有機溶媒抽出で使用される有機溶媒が有機リン化合物、ヒドロオキシム、及び有機アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種であり、該鉱酸は、塩酸及び硝酸からなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする。該有機溶媒は、好ましくは還元剤及び酸化剤を含まない。
【0006】
本発明の廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法では、まず、前記廃リチウムイオン電池を前処理して得られた活物質粉を鉱酸にて溶解して少なくともリチウムを含む該活物質の酸溶解液を得る。前記酸溶解液は、前記活物質粉に含まれていた有価金属を含んでおり、該有価金属としては、前記リチウムの他に、例えば、鉄、アルミニウム、マンガン、コバルト、ニッケル等の金属を挙げることができる。
【0007】
次に、本発明の廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法では、前記酸溶解液に水酸化リチウムを添加する。この結果、前記酸溶解液のpHを調整(中和)することができる。
【0008】
次に、本発明の廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法では、水酸化リチウムを添加した前記酸溶解液から、該活物質粉に含まれる金属のうち、リチウムを除く少なくとも1種の金属を溶媒抽出により分離する。この結果、前記溶媒抽出の残液として第1のリチウム塩水溶液を得ることができる。
【0009】
次に、本発明の廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法では、イオン交換膜を用いて前記第1のリチウム塩水溶液を電解する。このようにすると、水酸化リチウム水溶液と、酸と、前記第1のリチウム塩水溶液よりも希薄な第2のリチウム塩水溶液とを得ることができる。
【0010】
そこで、本発明の廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法では、前記水酸化リチウム水溶液の一部を酸溶解液に添加する水酸化リチウムとして用いるか、又は該溶媒抽出に用いる。また、前記酸を前記鉱酸として用いる。
【0011】
上述のように、本発明の廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法によれば、アルカリ源としてリチウム化合物である水酸化リチウムを用いるので、リチウムの回収率を向上させることができ、リチウム化合物以外のアルカリ源となる化合物が排出されることがない。また、本発明の廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法によれば、前記酸溶解液の溶媒抽出の残液として得られた第1のリチウム塩水溶液を電解することにより得られた前記水酸化リチウムと前記鉱酸とを、前記電解より前の工程に戻すことにより、資源循環を行うことができる。
【0012】
また、本発明の廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法においては、前記第2のリチウム塩水溶液を濃縮し、前記第1のリチウム塩水溶液に添加することが好ましい。このようにすることにより、前記第2のリチウム塩水溶液が排出されずに回収されるので、さらにリチウムの回収率を向上させることができ、資源循環を行うことができる。
【0013】
また、本発明の廃リチウムイオン電池からリチウムを回収する方法においては、前記鉱酸は、塩酸及び硝酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸を用いるが、塩酸を用いることが好ましい。本発明の廃リチウムイオン電池からリチウムを回収する方法において、前記鉱酸に塩酸を用いる場合、イオン交換膜を用いて前記第1のリチウム塩水溶液を電解すると、塩素ガスと水素ガスとを得ることができる。そこで、前記塩素ガスと前記水素ガスとを反応させて塩酸を生成させ、生成した塩酸を前記鉱酸として用いることが好ましい。
【0014】
また、本発明の廃リチウムイオン電池からリチウムを回収する方法において、前記電解に用いる電力は、再生可能エネルギーによって得られた電力であることが好ましく、前記再生可能エネルギーによって得られた電力としては、例えば、太陽光発電によって得られた電力又は風力発電によって得られた電力を挙げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の廃リチウムイオン電池からリチウムを回収する方法の構成を示す説明図。
図2】本発明の廃リチウムイオン電池からリチウムを回収する方法に用いるイオン交換膜電解槽の構造を示す説明的断面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、添付の図面を参照しながら本発明の実施の形態についてさらに詳しく説明する。
図1に示すように、本実施形態の廃リチウムイオン電池から有価金属を回収する方法(以下、回収方法と略記する)は、活物質粉1を出発物質とする。
【0017】
本実施形態の回収方法では、次に、STEP1で活物質粉1を鉱酸に溶解して、少なくともリチウムを含む活物質粉1の酸溶解液を得る。前記鉱酸としては、例えば、塩酸、硫酸、硝酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸を用いることができるが、塩酸であることが好ましい。活物質粉1は、前記リチウムの他に、鉄、アルミニウム、マンガン、コバルト、ニッケル等の有価金属を含んでいる。
【0018】
前記酸溶解液は、次に、STEP2で水酸化リチウム(LiOH)が添加されることにより前記鉱酸が中和される。前記中和後の前記酸溶解液は、次に、STEP3で有機溶媒抽出に供せられる。前記有機溶媒抽出では、前記有価金属のうち、リチウムを除く、マンガン、コバルト、ニッケルが各別に有機溶媒抽出され、あるいは鉄、アルミニウムが分離されそれぞれの金属硫酸塩水溶液2として除去され、第1のリチウム塩水溶液を得ることができる。前記第1のリチウム塩水溶液に含まれるリチウム塩は、STEP1の酸溶解で塩酸を用いた場合には塩化リチウムとなる。前記有機溶媒はリン酸エステル、ホスホン酸エステル、ホスフィン酸、酸化ホスフィン等の有機リン化合物、ヒドロオキシム、及び有機アミン化合物からなる群から選択される少なくとも1種である。前記有機溶媒は、好ましくは還元剤及び酸化剤を含まない。
前記有機溶媒が酸化剤を含まない場合、前記中和後の前記酸溶解液に含まれる金属、特にマンガンが析出し、配管詰まりが発生したりしない。さらに前記有機溶媒が酸化剤により劣化されるという問題も発生しない。
【0019】
有機リン化合物は市販されており、例えば酸性リン酸エステルとしてD2EHPA(リン酸ジ(2-エチルヘキシル))が、ホスホン酸エステルとして第八化学工業株式会社製PC-88Aが、ホスフィン酸としてSolvay社製CYANEX272が、中性リン酸エステルとしてTBP(リン酸トリブチル)が、酸化ホスフィンとしてトリーn-オクチルホスフィン(TOPO)が挙げられる。ヒドロオキシムとして7-ヒドロキシ-5,8-ジエチル-6-ドデカノンオキシム(LIX-63)、5-ドデシル-2-ヒドロキシベンズアルデヒドオキシム(LIX 860)、2-ヒドロキシ-5-ノニルベンゾフェノンオキシム(LIX 65N)、2-ヒドロキシ-5-ノニルアセトフェノンオキシム(SME 529)、2-ヒドロキシ-5-ノニルフェニルベンジルケトンオキシム(Acorga P-17)等が挙げられる。有機アミン化合物として、例えば第1級アミンであるダウ・ケミカル社製Primene(登録商標)JM-T、第2級アミンであるSigma-Aldrich社製Amberlite(登録商標)LA-2、第3級アミンであるSigma-Aldrich社製Alamine 336(トリオクチルアミン)、第4級アンモニウム塩であるSigma-Aldrich社製Aliquat(登録商標) 336等が挙げられる。
【0020】
本実施形態の回収方法では、次に、ステップ4でイオン交換膜を用いて、前記第1のリチウム塩水溶液を電解する。本実施形態では前記イオン交換膜を用いる電解を膜電解という。前記ステップ4の膜電解は、例えば、図2に示す電解槽11を用いて行うことができる。
【0021】
電解槽11は、一方の内側面に陽極板12を備え、陽極板12と対向する内側面に陰極板13を備え、陽極板12は電源の陽極14に接続され、陰極板13は電源の陰極15に接続されている。また、電解槽11は、イオン交換膜16により、陽極板12を備える陽極室17と、陰極板13を備える陰極室18とに区画されている。
【0022】
電解槽11では、陽極室17に前記第1のリチウム塩水溶液として例えば塩化リチウムを供給して電解を行うと、塩化物イオンが陽極板12上で塩素ガス(Cl)を生成する一方、リチウムイオンはイオン交換膜16を介して陰極室18に移動する。
【0023】
陰極室18では水(HO)が水酸化物イオン(OH)と水素イオン(H)とに電離し、水素イオンが陰極板13上で水素ガス(H)を生成する一方、水酸化物イオンがリチウムと化合して水酸化リチウム水溶液3を生成する。
【0024】
前記膜電解に要する電力には、例えば、太陽光発電により得られた電力又は、風力発電により得られた電力等の再生可能エネルギーによって得られた電力を用いることができる。
【0025】
本実施形態では、前記膜電解で生成した水素ガス(H)と塩素ガス(Cl)とを反応させることにより、鉱酸4としての塩酸を得ることができ、鉱酸4はSTEP1で活物質粉1の溶解に用いることができる。
【0026】
前記膜電解により得られた水酸化リチウム水溶液3は、STEP5で晶析により水酸化リチウム一水和物(LiOH・HO)として回収することもでき、STEP6で炭酸化することにより、炭酸リチウム(LiCO)として回収することもできる。前記炭酸化は、水酸化リチウム水溶液3を、炭酸ガス(CO)と反応させることにより行うことができる。
【0027】
また、本実施形態では、前記膜電解により得られた水酸化リチウム水溶液3の一部を、STEP2で酸溶解液に添加する水酸化リチウムとして用いるか、又はSTEP3で溶媒抽出に用いる。
【0028】
水酸化リチウム水溶液3をSTEP3で溶媒抽出に用いる場合、水酸化リチウム水溶液3は抽出溶媒に添加される。STEP3で溶媒抽出に用いられる抽出溶媒は陽イオン交換抽出剤であるので、継続して使用すると液性が酸性側に偏り抽出率が低下するが、水酸化リチウム水溶液3を添加することにより、抽出率の低下を抑制することができる。
【0029】
また、水酸化リチウム水溶液3をSTEP3で溶媒抽出に用いる場合、水酸化リチウム水溶液3は、各別に行われるマンガン、コバルト、ニッケルの溶媒抽出の少なくとも1つの溶媒抽出に用いることができる。
【0030】
また、前記膜電解では、前記第1のリチウム塩水溶液が電解される結果、該第1のリチウム塩水溶液より希薄な第2のリチウム塩水溶液が生成する。そこで、本実施形態では、前記第2のリチウム塩水溶液をSTEP7で濃縮し、前記第1のリチウム塩水溶液に添加する。STEP7で濃縮は、例えば逆浸透膜(RO膜)を用いて行うことができる。
【0031】
本実施形態の回収方法によれば、リチウム以外のアルカリ源が供給されないので高濃度のリチウム塩水溶液を得ることができる。また、前記高濃度のリチウム塩水溶液を電解することにより水酸化リチウムを得ることができるためリチウムの回収率を向上させることができる。さらに、本実施形態の回収方法によれば、リチウム以外の不要なアルカリ源が存在しないので電解により得られた水酸化リチウムをそのまま工程に戻すことができ資源循環を可能とすることができる。
【符号の説明】
【0032】
1…活物質粉、 2…金属硫酸塩水溶液、 3…水酸化リチウム水溶液、 4…鉱酸、 11…電解槽、 16…イオン交換膜。
図1
図2