(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】産業資材用メッシュシート、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
D06N 3/06 20060101AFI20241121BHJP
B32B 5/28 20060101ALI20241121BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20241121BHJP
B32B 27/18 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
D06N3/06
B32B5/28 Z
B32B27/30 101
B32B27/18 Z
(21)【出願番号】P 2023039448
(22)【出願日】2023-03-14
【審査請求日】2023-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000239862
【氏名又は名称】平岡織染株式会社
(72)【発明者】
【氏名】狩野 俊也
【審査官】斎藤 克也
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-205428(JP,A)
【文献】特開2016-33179(JP,A)
【文献】特開2016-22708(JP,A)
【文献】特開昭49-85141(JP,A)
【文献】特開昭59-103750(JP,A)
【文献】特開2024-12886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06N1/00-7/06
B32B1/00-43/00
D06M13/00-15/715
C08K3/00-13/08;C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗目織物を基布として、この基布の全面に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を設けてなるメッシュシートであって、前記軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の全域にゴム架橋を含み、このゴム架橋が、分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有する液状合成ゴムとポリイソシアネート化合物との縮合物であり、前記液状合成ゴムが、ブタジエン系、イソプレン系、及びファルネセン系、から選ばれた1種以上であることを特徴とする産業資材用メッシュシート。
【請求項2】
前記ゴム架橋が、シリカ粒子をさらに含み、前記ゴム架橋の一部として介在する有機無機複合架橋である請求項1に記載の産業資材用メッシュシート。
【請求項3】
前記シリカ粒子が、シランカップリング剤で処理された表面改質粒子である請求項2に記載の産業資材用メッシュシート。
【請求項4】
粗目織物の全面に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成してなる産業資材用メッシュシートの製造において、1).a)塩化ビニル樹脂、b)可塑剤、c)液状合成ゴム(ブタジエン系、イソプレン系、及びファルネセン系、から選ばれた1種以上の合成ゴムの分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有する液状合成ゴム)、d)ポリイソシアネート化合物、の4種を少なくとも含む軟質塩化ビニル樹脂組成物を調製する工程、2).前記粗目織物に前記軟質塩化ビニル樹脂組成物を塗工し、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成する工程、3).前記液状合成ゴムを架橋ゴムに転化して、前記軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の全域にゴム架橋を形成する工程、を含むことを特徴とする産業資材用メッシュシートの製造方法。
【請求項5】
前記軟質塩化ビニル樹脂組成物がシリカ粒子をさらに含み、前記ゴム架橋の一部にシリカ粒子を介在させた有機無機複合架橋を形成させる、請求項4に記載の産業資材用メッシュシートの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビル、マンション、学校などの建設現場、改修工事現場、解体工事現場の張囲、またビルのファサード、公共施設の改修工事現場のファサード張囲、などに用いるメッシュシートに関する。
【背景技術】
【0002】
ビル、マンション、学校などの建設現場、改修工事現場、解体工事現場の張囲に用いられる建築養生メッシュシート、または建築物の前面装飾に用いられるファサードには主に、粗目ポリエステル繊維織物を軟質塩化ビニル樹脂で含浸被覆した複合品で、消防庁防炎規格と仮設工業会認定の適合の安全基準を満たす1類、消防庁防炎規格のみを満たす2類の区分がある。建築養生メッシュシートは主に1.8m幅×3.4m長の規格で、縁部が折り返し縫製補強され、縁部にハトメ、面ファスナーなどの連結手段を有する仕様である。建築養生メッシュシート(またはファサード)用の原反としては、「ターポスクリーン(商標登録)」(1類:#1003、#1004、#1005,#1023、#1034、2類:#2014、#2024、#2054、#2039)が挙げられ、白、黒、グレー、ブルー、グリーンなどの品揃えがある。また住宅、マンション住居、店舗などの日除け、また屋内天井、間仕切り、また横断幕、懸垂幕などの原反としては、「ターポスクリーン」、「ライトスクリーン(商標登録)」などが挙げられ、任意の形状、及びサイズで使用されている。
【0003】
建設会社では工事物件ごとに建築養生メッシュシートをリース使用することが多い。この理由は主に、建設現場では健全な企業イメージ、また建設現場環境のイメージアップのため、常に綺麗で正常な建築養生メッシュシートを使用したいことによる。建築養生メッシュシート(例えば1.8m幅×3.4m長)は、直角四つ折りにされた状態で保管され、その状態で建設現場に搬入される。折り畳みから展開れた建築養生メッシュシートは建設足場のパイプフレームに沿って固定され、建築養生メッシュシート同士が上下左右に連結・拡張されて建設現場の安全囲包が完成する。そして工事完成後に取り外された建築養生メッシュシートは、煤塵、塗装飛散物などの汚れが付着したまま直角四つ折り状態で機械洗浄現場に移送され、洗浄が行われた後、リース会社での保管を経て、次の建設現場のリースに供されるという、直角四つ折りと、機械洗浄が繰り返されている。この状況で起こるトラブルとして、機械洗浄を繰り返すことによる建築養生メッシュシートの劣化、及び外観変化、すなわちアルカリ洗剤による軟質塩化ビニル樹脂被覆層の劣化(塩化ビニル樹脂の劣化、可塑剤の劣化・抽出)が挙げられる。また、冬の寒冷下、直角四つ折り状態の建築養生メッシュシートを展開する際に、建築養生メッシュシートが低温脆化して、軟質塩化ビニル樹脂被覆層に亀裂を生じること、また寒冷下での風合いが硬くなることで折り畳みが嵩張り、移送取り扱いや保管に不都合となること、これを力任せでの直角四つ折りに折り畳んだ時に軟質塩化ビニル樹脂被覆層に低温脆化亀裂を生じることなどが挙げられる。従って寒冷下での耐折り畳み性と耐展開性、さらに耐洗濯性に優れた建築養生メッシュシート、及びファサードなどの産業資材用メッシュシートが望まれている。
【0004】
メッシュシート(建築養生用、防護ネット用など)などの軟質塩化ビニル樹脂被覆層の強靭化について本出願人は、軟質塩化ビニル樹脂層にポリオール化合物を含み、トリイソシアネート化合物がポリオール化合物と付加反応して、軟質塩化ビニル樹脂層内に架橋ウレタン成分を生成することで、軟質塩化ビニル樹脂層の耐摩耗性、耐熱性、耐衝撃性などが向上することを特許文献1の段落〔0023〕で開示した。この架橋ウレタン成分の生成は軟質塩化ビニル樹脂層の強靭性が向上する反面、トリイソシアネート化合物(三官能モノマー)による三次元網目状の架橋ウレタン量を増すほど寒冷下での風合いが硬くなり、特に氷点下での屈曲、折り畳みの繰り返し、はためきなどの動的ストレスで軟質塩化ビニル樹脂層に亀裂を生じ易い脆弱性があった。これは軟質塩化ビニル樹脂と架橋ウレタンとのガラス転移温度差、さらに相溶性が氷点下で際立って悪化するためと考察される。従って、軟質塩化ビニル樹脂層の強靭性を向上し、しかも氷点下で動的ストレスを受けても亀裂を生じ難いものに改良する課題が生じていた。そしてこの氷点下での亀裂問題さえ解決出来れば、より耐折り畳み性と耐展開性、及び耐洗濯性に優れたメッシュシートを得ることができるので、建築養生メッシュシート、ファサード、などの用途での耐用年数向上が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ビル、マンション、学校などの建設現場、改修工事現場、解体工事現場の張囲、またビルのファサード、公共施設の改修工事現場のファサード張囲、などに用いられるメッシュシートであって、使用回収後の耐折り畳み性(特に寒冷下)、及び使用時の耐展開性(特に寒冷下)に優れ、さらに耐洗濯性にも優れた産業資材用メッシュシートの提供。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はかかる点を考慮し鋭意検討した結果、粗目織物を基布として、この基布の全面に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を設けてなるメッシュシートにおいて、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の全域にゴム架橋を含み、このゴム架橋が、反応性を有する液状合成ゴムとポリイソシアネート化合物との縮合物とすることによって、特に氷点下での耐折り畳み性、及び耐展開性に優れ、さらに耐洗濯性にも優れた産業資材用メッシュシートが得られることを見出して本発明を完成させるに至った。
【0008】
本発明の産業資材用メッシュシートは、粗目織物を基布として、この基布の全面に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を設けてなるメッシュシートであって、前記軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の全域にゴム架橋を含み、このゴム架橋が、分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有する液状合成ゴムとポリイソシアネート化合物との縮合物であり、前記液状合成ゴムが、ブタジエン系、イソプレン系、及びファルネセン系、から選ばれた1種以上であることが好ましい。このゴム架橋の複合形成によって、ビル、マンション、学校などの建設現場、改修工事現場、解体工事現場の張囲、またビルのファサード、公共施設の改修工事現場のファサード張囲、などの使用回収後の耐折り畳み性(特に寒冷下)、及び使用時の耐展開性(特に寒冷下)に優れ、さらに耐洗濯性にも優れた産業資材用メッシュシートを得ることができる。
【0009】
本発明の産業資材用メッシュシートは、前記ゴム架橋が、シリカ粒子をさらに含み、前記ゴム架橋の一部として介在する有機無機複合架橋であることが好ましい。液状合成ゴムとポリイソシアネート化合物との縮合物の一部に、シリカ粒子が取り込まれてゴム架橋の一部となることによって、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層が強靭化して、機械洗浄を繰り返すことによる建築養生メッシュシートの劣化、及び外観変化、すなわちアルカリ洗剤による軟質塩化ビニル樹脂被覆層の劣化(塩化ビニル樹脂の劣化、可塑剤の劣化・抽出)ダメージを緩和することができる。
【0010】
本発明の産業資材用メッシュシートは、前記シリカ粒子が、シランカップリング剤で処理された表面改質粒子であることが好ましい。この表面改質はシランカップリング剤の加水分解物がシリカ粒子表面に結合したものである。そしてシリカ粒子の官能基が液状合成ゴムの末端官能基と、またシリカ粒子の官能基とポリイソシアネート化合物が同時に反応して、シリカ粒子がゴム架橋の一部として介在する有機無機複合架橋を形成させることができる。これによって軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層が更に強靭化して、機械洗浄を繰り返すことによる建築養生メッシュシートの劣化、及び外観変化、すなわちアルカリ洗剤による軟質塩化ビニル樹脂被覆層の劣化(塩化ビニル樹脂の劣化、可塑剤の劣化・抽出)ダメージを緩和することができる。
【0011】
本発明の産業資材用メッシュシートの製造方法は、粗目織物の全面に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成してなる産業資材用メッシュシートの製造において、1).a)塩化ビニル樹脂、b)可塑剤、c)液状合成ゴム(ブタジエン系、イソプレン系、及びファルネセン系、から選ばれた1種以上の合成ゴムの分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有する液状合成ゴム)、d)ポリイソシアネート化合物、の4種を少なくとも含む軟質塩化ビニル樹脂組成物を調製する工程、2).前記粗目織物に前記軟質塩化ビニル樹脂組成物を塗工し、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成する工程、3).前記液状合成ゴムを架橋ゴムに転化して、前記軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の全域にゴム架橋を形成する工程、を含むことが好ましい。塗工後の軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内には液状合成ゴム分子が塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合った状態で存在し、この液状合成ゴムをポリイソシアネート化合物で架橋させることで軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内の全域に、ゴム架橋が塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合った状態を形成させることで、耐折り畳み性(特に寒冷下)、及び使用時の耐展開性(特に寒冷下)に優れ、さらに耐洗濯性にも優れた産業資材用メッシュシートを得ることができる。
【0012】
本発明の産業資材用メッシュシートの製造方法は、前記軟質塩化ビニル樹脂組成物がシリカ粒子をさらに含み、前記ゴム架橋の一部にシリカ粒子を介在させた有機無機複合架橋を形成させることが好ましい。これによってシリカ粒子表面のシラノール基(Si-OH基)とポリイソシアネート化合物が反応してゴム架橋の一部となること、または、シランカップリング剤で処理された官能基が導入されたシリカ粒子とポリイソシアネート化合物が反応してゴム架橋の一部となることによって、軟質塩化ビニル樹脂被覆層が強靭化して、機械洗浄を繰り返すことによる建築養生メッシュシートの劣化、及び外観変化、すなわちアルカリ洗剤による軟質塩化ビニル樹脂被覆層の劣化(塩化ビニル樹脂の劣化、可塑剤の劣化・抽出)ダメージを緩和することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明により、耐折り畳み性(特に寒冷下)、及び使用時の耐展開性(特に寒冷下)に優れ、さらに耐洗濯性にも優れた産業資材用メッシュシートを得ることができるので、ビル、マンション、学校などの建設現場、改修工事現場、解体工事現場の張囲、またビルのファサード、公共施設の改修工事現場のファサード張囲、などに適して用いることができる。それ以外にも、住宅、マンション住居、店舗などの日除け、屋内天井、間仕切り、横断幕、懸垂幕、防風防雪フェンスなどにも使用できる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の産業資材用メッシュシートは、粗目織物を基布として、この基布の全面に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を設けてなるメッシュシートであって、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の全域にゴム架橋を含み、このゴム架橋が、分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有する液状合成ゴムとポリイソシアネート化合物との縮合物である態様、ゴム架橋がシリカ粒子をさらに含み、ゴム架橋の一部として介在する有機無機複合架橋である態様、シリカ粒子が、シランカップリング剤で処理された表面改質粒子である態様を含む。
【0015】
本発明において、粗目織物を構成する糸条は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリビニルアルコール、ナイロン(6または6,6)、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート)などのマルチフィラメント糸条、及び、これらの混用(混撚・合撚)からなる糸条が好ましい。これらの糸条は、無着色糸(ナチュラル)、または任意に着色された原着糸である。特に汎用性の高いポリエチレンテレフタレート(PET)は、PETボトルリサイクル品、回収ポリエチレンテレフタレートを解重合して得た再生モノマーを重合した再生PET、植物由来の原料をスタート物質に合成されたモノマーを少なくとも含むバイオマスPET、ポリアルキレンフラノエート(アルキレンは、エチレン、プロピレン、ブチレン、トリメチレンなど)など、何れのタイプも使用できる。特に建築現場、解体現場の張囲内外において、パイプ、鉄骨材などの建築資材が建築養生メッシュシートに衝突することで生じる穴開きを防ぐために、粗目織物を構成する糸条の一部を全芳香族ポリエステル、または全芳香族ポリアミド、または芳香族複素環高分子(ポリベンゾイミダゾール系、ポリベンゾオキサゾール系、ポリベンゾチアゾール系、及びこれらの共重合体)などのマルチフィラメント糸条に置換した粗目織物を使用することができる。
【0016】
マルチフィラメント糸条は、ナイロン、ポリエステルなどの熱可塑性樹脂(無着色、または原着)を紡糸口金から押出して紡糸した長繊維紡原糸を3~5倍に延伸した長繊維紡糸束(50~500本のフィラメント束)を無撚のまま、または10~200回/m撚りを掛けた、繊度125~2000デニール(139~2222dtex)の糸条(無着色糸、または原着糸)が使用できる。養生メッシュシート(1類)には750(833dtex)~1000デニール(1111dtex)の糸条を3本用いた空隙率が、12~60%の粗目模紗織物が適している。また養生メッシュシート(2類)には250(278dtex)~500(555dtex)デニールの糸条を用いた空隙率が、17~72%の平織粗目織物、または斜子織物が適している。これらのマルチフィラメント糸条には、タスラン糸条、ウーリー糸条などの嵩高加工糸条を包含する。また上記マルチフィラメント糸束の外周に短繊維を巻き付けたカバリング糸条も使用することができる。これらの粗目織物は、経緯の糸条の交絡によるものが汎用であるが、経糸とバイアス糸条からなる三軸粗目織物、また経糸条、緯糸条、及びバイアス糸条からなる四軸粗目織物であってもよい。これらバイアス糸条を含む三軸、または四軸の粗目織物は、耐引裂性に優れるため、建築現場、解体現場の張囲内外において、パイプ、鉄骨材などの建築資材が建築養生メッシュシートに衝突することで生じる穴開きを小さいものに留める効果を有する。
【0017】
本発明の基布に使用する粗目織物の空隙部は、換気孔として作用する他、強風の影響を緩和する作用、また張囲内の視認性を得ることができる。粗目織物は、例えば250(278dtex)デニールの糸条を経糸及び緯糸として、各々1インチ間に26本打ち込んだ空隙率31%の平織物(養生メッシュシート2類用)、例えば500(555dtex)デニールの糸条束を経糸及び緯糸として、各々1インチ間に7本打ち込んだ空隙率72%の平織物(養生メッシュシート2類用)、例えば750(832dtex)デニールの糸条3本を見掛け1本とする経糸及び緯糸を用い、各々1インチ間に7本打ち込んだ空隙率32%の模紗織物(養生メッシュシート1類用)、例えば500(555dtex)デニール糸条を3本を見掛け1本とする経糸及び緯糸を用い、各々1インチ間に9本打ち込んだ空隙率20%の模紗織物(養生メッシュシート1類用)、例えば250(278dtex)デニール糸条を3本を見掛け1本とする経糸及び緯糸を用い、各々1インチ間に13本打ち込んだ空隙率32%の模紗織物(養生メッシュシート1類用)、などが例示できる。空隙率は粗目織物の任意の単位面積領域に占める空隙部の総和面積率である。空隙部の総和面積は、単位面積領域に存在する糸条実体部の総和面積を求め、単位面積から差し引いた値で求められる。具体的に1インチ四方のメッシュシートのデジタル画像をコンピューターに取り込み、糸条実体部と空隙部分との面積を画像計算する方法が挙げられる。また糸条の幅と、糸条の配置密度の設計から理論値として計算した値であってもよい。
【0018】
本発明の産業資材用メッシュシートは、粗目織物を基布として、この基布の全面に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を設けてなる態様である。軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層は、粗目織物の両面に対する軟質塩化ビニル樹脂系組成物のコーティング~熱処理ゲル化、または粗目織物の全面に対するディッピング~熱処理ゲル化によって形成される。ここで含浸層とは、粗目織物を構成するマルチフィラメント糸条のフィラメント間の隙間に浸透した軟質塩化ビニル樹脂を意味し、含浸はマルチフィラメント糸条の全体とする態様、または糸条の芯部を非含浸とする◎断面の態様であってもよい。被覆層とはマルチフィラメント糸条を完全被覆する軟質塩化ビニル樹脂の皮膜層(0.01~0.25mm)である。粗目織物の質量(目付55~220g/m2)に対する軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の質量比は、1:1~2:5、好ましくは1:1~2:3である。養生メッシュシート2類は、例えば250(278dtex)デニールの糸条を経糸及び緯糸として、各々1インチ間に26本打ち込んだ空隙率31%の平織物に、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成した質量130g/m2、空隙率29%の仕様、例えば500(555dtex)デニールの糸条束を経糸及び緯糸として、各々1インチ間に7本打ち込んだ空隙率72%の平織物に、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成した質量160g/m2、空隙率70%の仕様が例示できる。また、養生メッシュ1類は、例えば750(832dtex)デニールの糸条3本を見掛け1本とする経糸及び緯糸を用い、各々1インチ間に7本打ち込んだ空隙率32%の模紗織物に、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成した質量470g/m2、空隙率30%の仕様、、例えば500(555dtex)デニール糸条を3本を見掛け1本とする経糸及び緯糸を用い、各々1インチ間に9本打ち込んだ空隙率20%の模紗織物に、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成した質量400g/m2、空隙率18%の仕様、例えば250(278dtex)デニール糸条を3本を見掛け1本とする経糸及び緯糸を用い、各々1インチ間に13本打ち込んだ空隙率32%の模紗織物に、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成した質量455g/m2、空隙率30%の仕様などが例示できる。
【0019】
軟質塩化ビニル樹脂系組成物は、塩化ビニル樹脂、可塑剤、分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有する液状合成ゴム、ポリイソシアネート化合物の4種を必須として含むペーストゾルの液状体である。軟質塩化ビニル樹脂系組成物は具体的に、数平均分子量1000~2000のペースト塩化ビニル樹脂(乳化重合タイプ)と、可塑剤(アジピン酸エステル化合物、フタル酸エステル系化合物、シクロヘキサンジカルボン酸エステル系化合物、シクロヘキセンジカルボン酸エステル系化合物、リン酸エステル系化合物、塩素化パラフィン系化合物、ポリエステル系化合物など)を、ペースト塩化ビニル樹脂100質量部に対して40~100質量部含有し、液状合成ゴム(ブタジエン系ゴム、イソプレン系ゴムなど分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有するもので、後からポリイソシアネート化合物との反応で架橋ゴムに転化させる)を、ペースト塩化ビニル樹脂100質量部に対して5~30質量部含有し、ポリイソシアネート化合物をペースト塩化ビニル樹脂100質量部に対して2~15質量部含有しものを主体とする。その他の配合剤として、安定剤(バリウム-亜鉛複合系、カルシウム-亜鉛複合系、エポキシ化大豆油など)、難燃剤(三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛など)、充填剤(炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、タルクなど)、耐光安定剤(ベンゾフェノン系互変異性体、ベンゾトリアゾール系互変異性体、トリアジン系互変異性体、ヒンダードアミン系化合物など)、接着剤(多官能イソシアネート化合物、シランカップリング剤など)、防黴剤(イミダゾール系化合物、チアゾール系化合物、イソチアゾリン系化合物、ピリジン系化合物、N-ハロアルキルチオ系化合物、フェノキシアルシン化合物など)、顔料(酸化チタン、カーボンブラック、無機化合物、アゾ系化合物、フタロシアニン系化合物、アントラキノン系化合物、キナクリドン系化合物など)、などを任意かつ任意量で含む配合組成物が好ましく、これらには必要に応じて蛍光増白剤、帯電防止剤、界面活性剤、滑剤、酸化防止剤、化学発泡剤、防虫剤、消臭剤、遮熱剤など公知の添加剤を追加することができる。
【0020】
分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有する液状合成ゴムは、ブタジエン系ゴム、イソプレン系ゴム、及びファルネセン系ゴムから選ばれた1種以上が挙げられる。この液状合成ゴムが軟質塩化ビニル樹脂組成物に含む可塑剤と相溶し、可塑剤と共に塩化ビニル樹脂微粒子内に浸透して塩化ビニル樹脂の軟化剤となる。この状態で軟質塩化ビニル樹脂組成物を加熱ゲル化させることで軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層が形成される。塗工後の軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内には液状合成ゴム分子が塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合った状態となる。次いで液状合成ゴムをポリイソシアネート化合物と反応させることで軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内の全域に、ゴム架橋ネットワークが塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合ったハイブリッドの形成を可能とする。
【0021】
分子末端に-COOH基,-OH基、の何れかを有するブタジエン液状ゴムの分子量Mnは1000~5000もの、特に1300~3500の分子量,粘度50~1000ポイズ(25℃)、特に200~500ポイズ(25℃)の範囲のものが好ましい。このブタジエン系液状ゴムは、ブロック共重合成分としてスチレン、及び/またはアクリロニトリルを5~25質量%含むもの、及び共重合成分としてイソプレン、または水素添加イソプレンを10~50質量%含むものである。ブタジエン液状ゴムは、1,4-シス構造、または1,4-トランス構造を75~80%程度、1,2-ビニル構造を20~25%程度とするものだと粘度が低く、ゴム化した時のゴム弾性に優れる。分子(両)末端に-COOH基,-OH基、の何れかを有するイソプレン系液状ゴムは、分子量Mn3000~25000の範囲のものが好ましい。このイソプレン系液状ゴムは、ブロック共重合成分としてスチレン、及び/またはアクリロニトリルを5~25質量%含むもの、及び共重合成分としてブタジエン、または水素添加イソプレンを10~50質量%含むものである。分子(両)末端に-COOH基,-OH基、の何れかを有するファルネセン系ゴムは、α-ファルネセン((3E,7E)-3,7,11-トリメチル-1,3,6,10-ドデカテトラエン)、β-ファルネセン(7,11-ジメチル-3-メチレン-1,6,10-ドデカトリエン)などをモノマーとするゴム、さらにファネルセンとスチレンとの共重合ゴム、ファネルセンとブタジエンとの共重合ゴムが例示できる。このファネルセン系液状ゴムは、、分子量Mn3000~50000の範囲のものが好ましい。これらの液状合成ゴムのゴム架橋は、分子(両)末端の-COOH基,-OH基、の脱水縮合によっても形成されるが、ポリイソシアネート化合物との反応によるものが好ましい。架橋助剤として、ジアミン、ポリアミン、ジイソシアネート、エポキシ-アミン、アジリジン、オキサゾリンなどを併用することもできる。または、ジオール、ポリオール、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、などを併用することもできる。さらにゴム架橋の一部として、シリカを含む有機無機複合架橋とすることができる。
【0022】
ポリイソシアネート化合物は、トリレンジイソシアネート(TDI)の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート、4,4-ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(mTMXDI)の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート(H6XDI)の3量体であるイソシアヌレート変性トリイソシアネート、TDIの3量体であるビュレット変性トリイソシアネート、MDIの3量体であるビュレット変性トリイソシアネート、XDIの3量体であるビュレット変性トリイソシアネート、mTMXDIの3量体であるビュレット変性トリイソシアネート、HDIの3量体であるビュレット変性トリイソシアネート、IPDIの3量体であるビュレット変性トリイソシアネート、H6XDIの3量体であるビュレット変性トリイソシアネート、TDIの3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート、MDIの3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート、XDIの3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート、mTMXDIの3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート、HDIの3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート、IPDIの3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート、H6XDIの3量体であるトリメチロールアルキル変性トリイソシアネート、の21種類の3官能イソシアネート化合物が単独、または任意の併用ができる。特に耐光性、非黄変性のトリイソシアネートとして、HDI系、IPDI系、及びH6XDI系の9種類から選択された1種以上を用いることが好ましい。これらの21種のトリイソシアネート化合物は、イソシアネート基の反応性を制御するためにブロック化剤を仮付加させたブロックイソシアネート化合物の態様使用が好ましい。ブロック化剤としては、アルコール類、フェノール類、活性メチレン類、メルカプタン類、酸アミド類、酸イミド類、イミダゾール類、尿素類、オキシム類、アミン類、イミド類、ピリジン類、ピラゾール類などが挙げられる。これらのブロックイソシアネートは、特定温度の加熱によりブロック化剤が解離することで、上記12種のトリイソシアネート化合物を個々に再生させる。
【0023】
ゴム架橋は、ゴム架橋の一部としてシリカ粒子が介在する有機無機複合架橋であってもよい。シリカは、液状合成ゴムに対し1~25重量%の量で併用し、シリカ表面のシラノール基と、液状合成ゴムの分子(両)末端の-COOH基,-OH基との間での化学結合を生成させることでゴム架橋の一部とする。このような架橋は、液状合成ゴムの分子(両)末端の-COOH基,-OH基、とシリカ表面のシラノール基との脱水縮合、同時に液状合成ゴムの官能基とシリカ粒子のシラノール基を、ポリイソシアネート化合物(段落〔0022〕)で結合する反応によって形成される。架橋助剤として、ジアミン、ポリアミン、ジイソシアネート、エポキシ-アミン、アジリジン、オキサゾリンなどを併用することもできる。また、ジオール、ポリオール、ジカルボン酸、ポリカルボン酸、などを併用することもできる。このゴム架橋の生成は、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成する軟質塩化ビニル樹脂ペーストのゲル化熱処理と同時に行い、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層全体に均質なゴム架橋を複合形成する。このゴム架橋の複合形成によって、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層全体が強靭化することで、耐折り畳み性(特に寒冷下)、及び使用時の耐展開性(特に寒冷下)に優れ、さらに耐洗濯性にも優れた産業資材用メッシュシートを得ることができる。軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物には、シランカップリング剤を含み、液状合成ゴムとシリカとの化学結合を補助することもできる。
【0024】
シリカは、BET比表面積100~300m2/g、または二次粒子径1~40μmの合成非晶質シリカが好ましい。合成非晶質シリカは、湿式法シリカ(沈降法またはゲル法)、乾式法シリカ(ヒュームドシリカ)の何れであってもよい。シリカの表面はシラノール(Si-OH基)を有し、シラノール基が液状合成ゴムの分子(両)末端の-COOH基,-OH基、ポリイソシアネート化合物(段落〔0022〕)などと反応して、シリカ粒子がゴム成分の一部となることによって、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層全体が強靭化することで、耐折り畳み性(特に寒冷下)、及び使用時の耐展開性(特に寒冷下)により優れ、さらに耐洗濯性にも更に優れた産業資材用メッシュシートを得ることができる。シリカ表面には、アミノ基、ビニル基、エポキシ基、メタクリル基、アクリル基、クロル基、メルカプト基、イソシアヌレート基、イソシアネート基などの官能基が導入されていてもよい。シリカ粒子は、シランカップリング剤で処理された表面改質粒子であることが好ましい。シランカップリング剤は一般式:XR-Si(Y)3で表される分子中に2個以上の異なった反応基を有するアルコキシシラン化合物で、例えば、X=アミノ基(アミノシラン)、ビニル基(ビニルシラン)、エポキシ基(エポキシシラン)、メタクリル基(メタクリルシラン)、アクリル基(アクリルシラン)、クロル基(クロルシラン)、メルカプト基(メルカプトシラン)、イソシアヌレート基(イソシアヌレートシラン)、イソシアネート基(イソシアネートシラン)、など(R=アルキル鎖)、Y=メトキシ基、エトキシ基などである。シリカの表面改質は、シリカのシラノール基の、-Si-R-Si(Y)3修飾であるが、シリカのシロキサン結合部分の、(-O)3Si-RX修飾であってもよい。シリカ粒子に導入された官能基が液状合成ゴムの末端官能基と、またシリカ粒子に導入された官能基とポリイソシアネート化合物が同時に反応して、シリカ粒子がゴム架橋の一部として介在する有機無機複合架橋を形成させることができる。これによって軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層が更に強靭化して、機械洗浄を繰り返すことによる建築養生メッシュシートの劣化、及び外観変化、すなわちアルカリ洗剤による軟質塩化ビニル樹脂被覆層の劣化(塩化ビニル樹脂の劣化、可塑剤の劣化・抽出)ダメージを緩和することができる。
【0025】
本発明の産業資材用メッシュシートの製造方法は、粗目織物の全面に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成してなる産業資材用メッシュシートの製造において、1).a)塩化ビニル樹脂、b)可塑剤、c)液状合成ゴム(ブタジエン系、イソプレン系、及びファルネセン系、から選ばれた1種以上の合成ゴムの分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有する液状合成ゴム)、d)ポリイソシアネート化合物、の4種を少なくとも含む軟質塩化ビニル樹脂組成物を調製する工程、2).前記粗目織物に前記軟質塩化ビニル樹脂組成物を塗工し、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成する工程、3).前記液状合成ゴムを架橋ゴムに転化して、前記軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の全域にゴム架橋を形成する工程、を含むものである。粗目織物への軟質塩化ビニル樹脂組成物(ペーストゾル)の塗工、及び軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の形成は、ディッピング(浸漬~含浸~ロール圧搾~ペーストゾルの熱処理ゲル化)、または、グラビアコート法、コンマコート法、ロールコート法、リバースロールコート法、バーコート法、ドクターナイフコート法などのコーティング(含浸被覆~ペーストゾルの熱処理ゲル化)により実施できる。液状合成ゴムを架橋ゴムに転化させるには、液状合成ゴムの分子末端の-COOH基、または-OH基とポリイソシアネート化合物(段落〔0022〕)を反応させる。液状合成ゴムの架橋ゴムへの転化は、軟質塩化ビニル樹脂組成物のゲル化と同時に行うことで、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層全体に均質なゴム架橋を形成することができる。さらに軟質塩化ビニル樹脂組成物がシリカ粒子をさらに含み、ゴム架橋の一部にシリカ粒子を介在させた有機無機複合架橋を形成させることができる。これによって軟質塩化ビニル樹脂被覆層が強靭化して、機械洗浄を繰り返すことによる建築養生メッシュシートの劣化、及び外観変化、すなわちアルカリ洗剤による軟質塩化ビニル樹脂被覆層の劣化(塩化ビニル樹脂の劣化、可塑剤の劣化・抽出)ダメージを緩和することができる。液状合成ゴムと架橋剤との反応は、等モル比反応が好ましいが、余剰の液状合成ゴムが軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内に残存してもよい。残存する液状合成ゴムは可塑剤と相溶し、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層のガラス転移温度を下げる効果、すなわち耐寒性付与剤として作用する。残存する液状合成ゴムは、塩化ビニル樹脂100質量部に対して1~10質量部が好ましい。
【0026】
また本発明の産業資材用メッシュシートには防汚層を設けてもよく、防汚層は軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層上に形成され、メッシュシート全体に形成されていることが好ましい。防汚層は例えば、アクリル系樹脂、フッ素系共重合樹脂、アクリル-シリコーン共重合樹脂、アクリルーフッ素共重合樹脂、アクリル-ウレタン共重合樹脂、アクリル系樹脂とフッ素系共重合樹脂とのブレンド、及びこれらの樹脂にシリカ微粒子、コロイダルシリカ、オルガノシリケート、シランカップリング剤、紫外線吸収剤(ベンゾフェノン系互変異性体、ベンゾトリアゾール系互変異性体、トリアジン系互変異性体など)などを含む透明層である。これらの防汚層の形成は、これらの塗料をグラビアコートなどでメッシュシートの両面に塗工・乾燥する方法、またはこれらの水系塗料をディピングなどでメッシュシートの全面に塗工・乾燥する方法ある。
【0027】
建築養生メッシュシートは、1.8m幅×3.4m長、1.8m幅×3.6m長、1.8m幅×5.1長、1.8m幅×5.4m長、3.6m幅×5.4m長などの規格で、縁部が折り返し縫製補強されたもので、縁部にハトメ、面ファスナーなどの連結手段を有するものである。
【0028】
次に実施例、比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例の範囲に限定されるものではない。
本発明の実施例及び比較例に用いた試験方法は下記の通りである。
(1)デマッチャ耐寒屈曲疲労耐久試験(JIS K6301準拠)
メッシュシートから50mm幅×150mm長さの試料を採取し、-10℃環境に24時間静置した後、幅の中心25mmから上下2つ折りに重ね合わせた25mm幅×150mm長の折り畳み状試験片とし、YSSデマッチャ・フレキシング・テスター(株式会社安田精機製作所製)に装着し、寒冷下でのメッシュシートの折畳みと展開の繰り返しの疑似試験を「-10℃」の恒温室で100サイクル行い、試験片の表面状態を観察し下記のように動的耐寒性を判定した。
1:異常を認めない
2:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層に軽微な亀裂を認める
3:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層に大きな亀裂を認める
(2).耐洗濯性
容量450Lの工業用回転式洗濯機を用い、未使用のメッシュシート縫製品(1.8m幅×3.6m長:長さ方向8ツ折り×幅方向4ツ折り)の耐洗濯性を評価した。洗濯は、アルカリ性の工業用洗剤(ゲンブ株式会社製ゲンブナイス:[成分]界面活性剤として直鎖アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、工程化剤として硫酸塩、アルカリ剤として珪酸塩、及び炭酸塩、水転化剤としてアルミノ珪酸塩、及び蛍光増白剤を含む)500gと、追加のアルカリ剤としてメタ珪酸ナトリウム9水塩100gを40℃の温水300L中に溶解させたものを使用し、30~35℃の条件で300分間洗濯した直後の外観を観察した。
1:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の外観に異常なし
2:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の一部に剥離(浮き)が認められる
3:軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層が部分的に脱落している
【0029】
〔実施例1〕
〈粗目織物(1)〉
1).緑色の原着ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維による250(278dtex)デニールのマルチフィラメント糸条を経糸及び緯糸として、各々1インチ間に26本打ち込んだ空隙率31%の粗目織物(1)を用いた。
2).下記〈配合1〉の軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層形成用の塩化ビニル樹脂組成物ペースト組成物(塩化ビニル樹脂、可塑剤、液状合成ゴム、ポリイソシアネート化合物の4種を必須成分に含む)を調製した。
3).軟質塩化ビニル樹脂組成物〈配合1〉の液浴中に粗目織物(1)を浸漬(ディップ)し、粗目織物(1)に〈配合1〉のペースト組成物を常圧で含浸させた後、粗目織物(1)を液浴から引き上げると同時に、ゴム製マングルロールで圧搾し、余分なペースト組成物を除去して、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層を形成した。
4).次に、180℃の熱風炉で3分間ゲル化熱処理を行うことで軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層74g/m2を粗目織物(1)の全体に形成し、質量130g/m2、空隙率29%の建築養生2類クラスのメッシュシート(1)を得た。
このゲル化熱処理は、塩化ビニル樹脂組成物ペースト組成物を軟質塩化ビニル樹脂に転化すると同時に、液状合成ゴム(分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有する)とポリイソシアネート化合物を反応させ架橋ゴムに転化させることで、得られる軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内の全域に、ゴム架橋ネットワークが塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合ったハイブリッドを形成させる工程である。
〈配合1〉軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層形成用ペースト組成物
ペースト塩化ビニル樹脂(重合度1700) 100質量部
ジイソノニルフタレート(DINP可塑剤) 60質量部
ブタジエン系液状ゴム※ 10質量部
イソシアヌレート(HDI※の3量体:NCO架橋剤) 2質量部
塩素化パラフィン(防炎剤兼可塑剤) 5質量部
エポキシ化大豆油(安定剤兼可塑剤) 4質量部
三酸化アンチモン(難燃剤) 20質量部
ステアリン酸亜鉛(安定剤) 2質量部
紫外線吸収剤(トリアジン系互変異性体) 0.5質量部
酸化チタン(白顔料) 1質量部
フタロシアニングリーン(緑顔料) 3質量部
トリクロロエチレン(希釈溶剤) 20質量部
※ブタジエン系液状ゴム:ブロック共重合成分としてスチレンを15質量%含み、
分子両末端に-COOH基を有する平均分子量3000の性状
※HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
HDIの3量体(イソシアヌレート)は3個のイソシアネート基を有する
【0030】
〔実施例2〕
実施例1の〈配合1〉のペースト組成物を〈配合2〉のペースト組成物に変更して加工した以外は実施例1と同様として、質量130g/m2、空隙率29%の建築養生2類クラスのメッシュシート(2)を得た。
〈配合2〉のペースト組成物は、〈配合1〉のブタジエン系液状ゴム10質量部を、イソプレン系液状ゴム10質量部に置換したもので、イソプレン系液状ゴムは、ブロック共重合成分としてアクリロニトリルを10質量%含み、分子両末端に-COOH基を有する平均分子量2500の性状で、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内の全域に、ゴム架橋ネットワークが塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合ったハイブリッドを形成させることは実施例1と同様である。
【0031】
〔実施例3〕
実施例1の〈配合1〉のペースト組成物を〈配合3〉のペースト組成物に変更して加工した以外は実施例1と同様として、質量130g/m2、空隙率29%の建築養生2類クラスのメッシュシート(3)を得た。
〈配合3〉のペースト組成物は、〈配合1〉のブタジエン系液状ゴム10質量部を、β-ファネルセン系液状ゴム10質量部に置換したもので、β-ファネルセン系液状ゴムは、ブロック共重合成分としてブタジエンを10質量%含み、分子両末端に-COOH基を有する平均分子量5000の性状で、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内の全域に、ゴム架橋ネットワークが塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合ったハイブリッドを形成させることは実施例1と同様である。
【0032】
〔実施例4〕
実施例1の〈配合1〉のペースト組成物を〈配合4〉のペースト組成物に変更して加工した以外は実施例1と同様として、質量130g/m2、空隙率29%の建築養生2類クラスのメッシュシート(4)を得た。
〈配合4〉のペースト組成物は〈配合1〉のペースト組成物に、表面改質シリカ粒子を2質量部追加したものである。表面改質シリカ粒子は、乾式シリカ(ゲル法:平均粒子径2μm、BET比表面積300m2/g)を、N-2-(アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン(シランカップリング剤)の5質量%水溶液中で24℃×3時間攪拌したものを分離、乾燥したもので、シリカのシラノール基に結合する-Si-R-Si(OCH3)3修飾と、シロキサン部分に結合する(-O)3Si-R-NH2修飾が混在する。シリカ粒子に導入されたアミノ基が液状合成ゴムの末端官能基と、またシリカ粒子に導入されたアミノ基とポリイソシアネート化合物が同時に反応して、シリカ粒子がゴム架橋の一部として介在する有機無機複合架橋が形成される。
【0033】
〔実施例5〕
実施例2の〈配合2〉のペースト組成物を〈配合4〉のペースト組成物に変更して加工した以外は実施例2と同様として、質量130g/m2、空隙率29%の建築養生2類クラスのメッシュシート(5)を得た。
【0034】
〔実施例6〕
実施例3の〈配合3〉のペースト組成物を〈配合4〉のペースト組成物に変更して加工した以外は実施例3と同様として、質量130g/m2、空隙率29%の建築養生2類クラスのメッシュシート(6)を得た。
【0035】
〔実施例7〕
実施例1で用いた粗目織物(1)を、粗目織物(2)に変更した以外は実施例1と同様として、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層305g/m2を粗目織物(2)の全体に形成し、質量470g/m2、空隙率30%の建築養生1類クラスのメッシュシート(7)を得た。
〈粗目織物(2)〉
緑色の原着ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)繊維による750(832dtex)デニールの糸条3本を見掛け1本とする経糸及び緯糸を用い、各々1インチ間に7本打ち込んだ空隙率32%の模紗織物
【0036】
〔実施例8〕
実施例2で用いた粗目織物(1)を、粗目織物(2)に変更した以外は実施例2と同様として、質量470g/m2、空隙率30%の建築養生1類クラスのメッシュシート(8)を得た。
【0037】
〔実施例9〕
実施例3で用いた粗目織物(1)を、粗目織物(2)に変更した以外は実施例3と同様として、質量470g/m2、空隙率30%の建築養生1類クラスのメッシュシート(9)を得た。
【0038】
〔実施例10〕
実施例4で用いた粗目織物(1)を、粗目織物(2)に変更した以外は実施例4と同様として、質量470g/m2、空隙率30%の建築養生1類クラスのメッシュシート(10)を得た。
【0039】
〔実施例11〕
実施例5で用いた粗目織物(1)を、粗目織物(2)に変更した以外は実施例5と同様として、質量470g/m2、空隙率30%の建築養生1類クラスのメッシュシート(11)を得た。
【0040】
〔実施例12〕
実施例6で用いた粗目織物(1)を、粗目織物(2)に変更した以外は実施例6と同様として、質量470g/m2、空隙率30%の建築養生1類クラスのメッシュシート(12)を得た。
【0041】
[実施例13~18]
実施例7~12のメッシュシート(7)~(12)の両面に、下記〔配合5〕のフッ素系樹脂塗料を100メッシユのグラビアロールにより塗工し、120℃の熱風炉で2分間加熱乾燥し、〔配合5〕のフッ素系樹脂塗料を硬化させて防汚層(両面で8g/m2)を形成し、質量478g/m2、空隙率30%の防汚層付のメッシュシート(13)~(18)を得た。得られたメッシュシート(13)~(18)は累積1年間の工事現場で使用し、煤塵汚れなどが蓄積したものを、洗濯したところ、使用当初に近い外観に洗浄されるほどの防汚効果を有しており、実施例7~12のメッシュシート(7)~(12)よりも初期外観の保持性に優れていた。
〔配合5〕フッ素系樹脂塗料(防汚層形成用)
水酸基含有フルオロオレフィンビニルエーテル共重合体(フッ素系樹脂)
100質量部
ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート3量体(イソシアネート)
10質量部
コロイダルシリカ(帯電防止) 8質量部
トリアジン互変異性体(紫外線吸収剤) 5質量部
硬化触媒:ジブチル錫ジラウレート(フッ素系樹脂に対し約10ppm)
トルエン/酢酸ブチル(質量比1:1の希釈剤) 400質量部
【0042】
【0043】
【0044】
実施例1~3,7~9のメッシュシート(1)~(3),(7)~(9)は、何れも軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層にゴム架橋が形成されていて、その形成は、分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有する液状合成ゴム、及びポリイソシアネート化合物を含む軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物を粗目織物(1)または(2)に塗工した後、軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物を加熱ゲル化させると同時に、液状合成ゴムとポリイソシアネート化合物を反応させることで架橋ゴムに転化して、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の全域にゴム架橋のネットワークを形成したものである。塗工された軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内には液状合成ゴム分子が塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合った状態で存在し、この液状合成ゴムを架橋させることで軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内の全域に、ゴム架橋ネットワークが塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合ったハイブリッドが形成できるので、耐洗濯性に優れ、しかも氷点下での屈曲耐久性(耐折り畳み性、及び使用時の耐展開性)に優れた産業資材用メッシュシートを得ることができ、特に粗目織物を原着糸で構成し、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の色相を同系色とすることで、建設現場などでの使用中に建設資材をぶつけた時に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層にダメージが生じたとしても、そのダメージを目立たないものとする隠蔽効果を奏する。
【0045】
実施例4~6,10~12のメッシュシート(4)~(6),(10)~(12)は、何れも軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層にゴム架橋が形成されていて、その形成は、分子末端に-COOH基、-OH基、の何れかを有する液状合成ゴム、ポリイソシアネート化合物を含み、さらに表面改質シリカ粒子(官能基導入)を含む軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物を粗目織物(1)または(2)に塗工した後、軟質塩化ビニル樹脂ペースト組成物を加熱ゲル化させると同時に、液状合成ゴムとポリイソシアネート化合物を反応させ、表面改質シリカ粒子とポリイソシアネート化合物を反応させることで構造の一部にシリカ粒子が介在する架橋ゴムに転化して、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の全域に有機無機複合架橋のネットワークを形成したものである。塗工された軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内には液状合成ゴム分子が塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合った状態で存在し、この液状合成ゴムを架橋させることで軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内の全域に、有機無機複合架橋のネットワークが塩化ビニル樹脂主鎖に絡み合ったハイブリッドが形成できるので、実施例1~3,7~9のメッシュシート(1)~(3),(7)~(9)よりも耐洗濯性、耐摩耗性に優れ、500分の洗濯試験においてもダメージの少ない産業資材用メッシュシートを得ることができる。また特に粗目織物を原着糸で構成し、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の色相を同系色とすることで、建設現場などでの使用中に建設資材をぶつけた時に軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層にダメージが生じたとしても、そのダメージを目立たないものとする隠蔽効果を奏する。
【0046】
[比較例1]
実施例1の〈配合1〉のペースト組成物を〈配合6〉のペースト組成物に変更して加工した以外は実施例1と同様として、質量130g/m2、空隙率29%の建築養生2類クラスのメッシュシート(19)を得た。
〈配合6〉のペースト組成物は、〈配合1〉のブタジエン系液状ゴム(分子両末端に-COOH基を有する平均分子量3000の性状)10質量部を省略した従来配合である。比較例1(従来品)は、氷点下での屈曲耐久性(耐折り畳み性、及び使用時の耐展開性)に劣り、この解決が望まれていたのである。(最近までの技術水準)
【0047】
[比較例2]
実施例1の〈配合1〉のペースト組成物を〈配合7〉のペースト組成物に変更した以外は実施例1と同様として、質量130g/m2、空隙率29%の建築養生2類クラスのメッシュシート(20)を得た。
〈配合7〉のペースト組成物は〈配合1〉のブタジエン系液状ゴム(分子両末端に-COOH基を有する平均分子量3000の性状)10質量部を、分子両末端に官能基を有さない平均分子量3000のブタジエン系液状ゴム10質量部に置換したものである。官能基を有さないブタジエン系液状ゴムは、液状のまま軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内に滞留し、塩化ビニル樹脂のガラス転移温度を下げる効果を発現することで、実施例1のメッシュシート(1)よりも氷点下での屈曲耐久性(耐折り畳み性、及び使用時の耐展開性)に優れていたが、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層が柔らかくなり過ぎて、洗濯時に膨潤することで、粗目織物から軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の一部が脱落していた。
【0048】
[比較例3]
実施例1の〈配合1〉のペースト組成物を〈配合8〉のペースト組成物に変更して加工した以外は実施例1と同様として、質量130g/m2、空隙率29%の建築養生2類クラスのメッシュシート(21)を得た。
〈配合8〉のペースト組成物は〈配合1〉のブタジエン系液状ゴム(分子両末端に-COOH基を有する平均分子量3000の性状)10質量部をブタジエンゴム粉末(登録商標「カネエース」M-711:株式会社カネカ)10質量部に置換したものである。ブタジエンゴム粉末(非架橋)自体は耐寒性に優れるものの、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内に海島状に非相溶分散していることで、根本的な軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の耐寒性が改善されるには至らず、実施例1のメッシュシート(1)レベルの屈曲耐寒性は得られず、寧ろ海島状の非相溶分散に起因する微細な亀裂が多数発生した。また、洗濯時にブタジエンゴム粉末が膨潤することで、粗目織物から軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の一部が脱落していた。
【0049】
[比較例4]
〈配合1〉のペースト組成物を〈配合6〉のペースト組成物に変更して加工した以外は実施例7と同様として、質量470g/m2、空隙率30%の建築養生1類クラスのメッシュシート(22)を得た。
〈配合6〉のペースト組成物は〈配合1〉のブタジエン系液状ゴム(分子両末端に-COOH基を有する平均分子量3000の性状)10質量部を省略した従来配合である。比較例4(従来品)は、氷点下での屈曲耐久性(耐折り畳み性、及び使用時の耐展開性)に劣り、この解決が望まれていたのである。(最近までの技術水準)
【0050】
[比較例5]
〈配合1〉のペースト組成物を〈配合7〉のペースト組成物に変更した以外は実施例7と同様として、質量470g/m2、空隙率30%の建築養生1類クラスのメッシュシート(23)を得た。
〈配合7〉のペースト組成物は〈配合1〉のブタジエン系液状ゴム(分子両末端に-COOH基を有する平均分子量3000の性状)10質量部を、分子両末端に官能基を有さない平均分子量3000のブタジエン系液状ゴム10質量部に置換したものである。官能基を有さないブタジエン系液状ゴムは、液状のまま軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内に滞留し、塩化ビニル樹脂のガラス転移温度を下げる効果を発現することで、実施例7のメッシュシート(7)よりも氷点下での屈曲耐久性(耐折り畳み性、及び使用時の耐展開性)に優れていたが、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層が柔らかくなり過ぎて、洗濯時に膨潤することで、粗目織物から軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の一部が脱落していた。
【0051】
[比較例6]
〈配合1〉のペースト組成物を〈配合8〉のペースト組成物に変更して加工した以外は実施例7と同様として、質量470g/m2、空隙率30%の建築養生1類クラスのメッシュシート(24)を得た。
〈配合8〉のペースト組成物は〈配合1〉のブタジエン系液状ゴム(分子両末端に-COOH基を有する平均分子量3000の性状)10質量部をブタジエンゴム粉末(登録商標「カネエース」M-711:株式会社カネカ)10質量部に置換したものである。ブタジエンゴム粉末(非架橋)自体は耐寒性に優れるものの、軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層内に海島状に非相溶分散していることで、根本的な軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の耐寒性が改善されるには至らず、実施例7のメッシュシート(7)レベルの屈曲耐寒性は得られず、寧ろ海島状の非相溶分散に起因する微細な亀裂が多数発生した。また、洗濯時にブタジエンゴム粉末が膨潤することで、粗目織物から軟質塩化ビニル樹脂含浸被覆層の一部が脱落していた。
【0052】
【産業上の利用可能性】
【0053】
以上の実施例、及び比較例から明らかな様に、本発明によれば、耐折り畳み性(特に寒冷下)、及び使用時の耐展開性(特に寒冷下)に優れ、さらに耐洗濯性にも優れた産業資材用メッシュシートを得ることができるので、ビル、マンション、学校などの建設現場、改修工事現場、解体工事現場の張囲、またビルのファサード、公共施設の改修工事現場のファサード張囲、などに適して用いることができる。それ以外にも、住宅、マンション住居、店舗などの日除け、屋内天井、間仕切り、横断幕、懸垂幕、防風防雪フェンスなどにも使用できる。