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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】制御装置、プログラム、及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/03 20060101AFI20241121BHJP
   H05B 3/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B23K3/03 A
H05B3/00 310D
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2023067103
(22)【出願日】2023-04-17
(65)【公開番号】P2023181975
(43)【公開日】2023-12-25
【審査請求日】2024-03-04
(31)【優先権主張番号】63/351,585
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000234339
【氏名又は名称】白光株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100136353
【弁理士】
【氏名又は名称】高尾 建吾
(72)【発明者】
【氏名】竹内 仁志
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 光彦
(72)【発明者】
【氏名】松崎 憲二
(72)【発明者】
【氏名】中村 健太
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 巧知
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-062562(JP,A)
【文献】特開2007-003663(JP,A)
【文献】特開平02-199787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 3/03
H05B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半田を処理する半田処理部と、加熱パルスの印加によって前記半田処理部を加熱する加熱部と、前記半田処理部の温度を検出する検出部と、を有する半田処理装置を制御する制御装置であって、
前記検出部が検出した前記温度の検出値を取得する取得部と、
前記取得部が取得した前記検出値の履歴情報に基づいて、前記半田処理部の温度変化傾向を特定する特定部と、
補正値を用いて基準値を補正することによって、前記加熱部に印加する前記加熱パルス数を設定する設定部と、
前記設定部による前記加熱パルス数の設定結果に基づいて、前記加熱部への前記加熱パルスの印加を制御する制御部と、
前記履歴情報を記憶する記憶部と、
を備え、
前記設定部は、前記温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報を用いて前記補正値を設定する、制御装置。
【請求項2】
前記補正用情報は、前記記憶部に記憶された、前記基準値に加算する加算値を示す加算テーブルと、前記基準値から減算する減算値を示す減算テーブルとを含み、
前記補正値は、前記加算テーブルが示す前記加算値、又は、前記減算テーブルが示す前記減算値であり、
前記設定部は、前記温度変化傾向に応じて、前記基準値、前記基準値に前記加算値を加算した値、又は、前記基準値から前記減算値を減算した値に基づいて、前記加熱パルス数を設定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記半田処理部の設定温度が第1領域に属する場合の前記加算テーブル及び前記減算テーブルと、前記半田処理部の前記設定温度が第2領域に属する場合の前記加算テーブル及び前記減算テーブルとは異なる、請求項2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記基準値は、前記半田処理部の設定温度と前記取得部が取得した前記検出値との差に基づいて設定される基準パルス数を示す値であり、
前記半田処理部の前記設定温度が第1領域に属する場合の前記基準値と、前記半田処理部の前記設定温度が第2領域に属する場合の前記基準値とは異なる、請求項1に記載の制御装置。
【請求項5】
前記設定部は、
前記温度変化傾向が温度上昇傾向である場合は、前記基準値から前記補正値を減算することによって、前記基準値で示される基準パルス数よりも少ない前記加熱パルス数を設定し、
前記温度変化傾向が温度下降傾向である場合は、前記基準値に前記補正値を加算することによって、前記基準パルス数よりも多い前記加熱パルス数を設定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項6】
前記基準値は、前記半田処理部の設定温度と前記取得部が取得した前記検出値との差に基づいて設定される基準パルス数を示す値であり、
前記設定部は、前記基準値で示される前記基準パルス数を印加した場合に予測される前記半田処理部の温度変化量の予測値と、前記検出部が検出した前記検出値から算出した前記半田処理部の温度変化量の実測値との差に応じて、前記補正値を設定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項7】
前記設定部は、
前記温度変化傾向が温度下降傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた差が負である場合、又は、前記温度変化傾向が温度上昇傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた差が正である場合は、前記基準値に前記補正値を加算することによって、前記基準パルス数よりも多い前記加熱パルス数を設定し、
前記温度変化傾向が温度下降傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた差が正である場合、又は、前記温度変化傾向が温度上昇傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた差が負である場合は、前記基準値から前記補正値を減算することによって、前記基準パルス数よりも少ない前記加熱パルス数を設定する、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
前記記憶部は、
前記基準値を示す基準テーブルと、
前記補正用情報として、
前記温度変化傾向が温度下降傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた前記差が負である場合に設定される前記補正値を示す下降用加算テーブルと、
前記温度変化傾向が温度上昇傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた前記差が正である場合に設定される前記補正値を示す上昇用加算テーブルと、
前記温度変化傾向が温度下降傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた前記差が正である場合に設定される前記補正値を示す下降用減算テーブルと、
前記温度変化傾向が温度上昇傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた前記差が負である場合に設定される前記補正値を示す上昇用減算テーブルと、
を記憶する、請求項7に記載の制御装置。
【請求項9】
前記下降用減算テーブルの前記補正値はゼロに設定されている、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記設定部は、今回の制御サイクルである第1制御サイクルより前の第2制御サイクルにおける前記加熱パルス数を示す前記基準値と、前記検出値及び前記検出値の前記履歴情報に基づく前記半田処理部の温度変化量に応じた前記補正値とに基づいて、前記第1制御サイクルにおける前記加熱パルス数を設定する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項11】
前記設定部は、
前記温度変化傾向が温度上昇傾向である場合は、前記基準値から前記補正値を減算することによって、前記基準値で示される基準パルス数よりも少ない前記加熱パルス数を設定し、
前記温度変化傾向が温度下降傾向である場合は、前記基準値に前記補正値を加算することによって、前記基準パルス数よりも多い前記加熱パルス数を設定する、請求項10に記載の制御装置。
【請求項12】
前記設定部は、前記第1制御サイクルと前記第2制御サイクルとの間の温度変化量と、前記第2制御サイクルとそれより前の第3制御サイクルとの間の温度変化量とに基づいて、前記補正値を設定する、請求項10に記載の制御装置。
【請求項13】
前記設定部は、前記第1制御サイクルと前記第2制御サイクルとの間の前記温度変化傾向と、前記第2制御サイクルと前記第3制御サイクルとの間の前記温度変化傾向とが互いに相違し、かつ、前記第1制御サイクルと前記第2制御サイクルとの間の温度変化量が、前記第2制御サイクルと前記第3制御サイクルとの間の温度変化量未満である場合、前記補正値をゼロに設定する、請求項12に記載の制御装置。
【請求項14】
半田を処理する半田処理部と、加熱パルスの印加によって前記半田処理部を加熱する加熱部と、前記半田処理部の温度を検出する検出部と、を有する半田処理装置を制御する制御装置に搭載される情報処理装置を、
前記検出部が検出した前記温度の検出値を取得する取得手段と、
前記取得手段が取得した前記検出値の履歴情報に基づいて、前記半田処理部の温度変化傾向を特定する特定手段と、
補正値を用いて基準値を補正することによって、前記加熱部に印加する加熱パルス数を設定する設定手段と、
前記設定手段による前記加熱パルス数の設定結果に基づいて、前記加熱部への前記加熱パルスの印加を制御する制御手段と、
として機能させるためのプログラムであって、
前記設定手段は、前記温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報を用いて前記補正値を設定する、プログラム。
【請求項15】
半田を処理する半田処理部と、加熱パルスの印加によって前記半田処理部を加熱する加熱部と、前記半田処理部の温度を検出する検出部と、を有する半田処理装置を制御する制御方法であって、
情報処理装置が、
前記検出部が検出した前記温度の検出値を取得し、
取得した前記検出値の履歴情報に基づいて、前記半田処理部の温度変化傾向を特定し、
補正値を用いて基準値を補正することによって、前記加熱部に印加する加熱パルス数を設定し、
前記加熱パルス数の設定結果に基づいて、前記加熱部への前記加熱パルスの印加を制御し、
前記加熱パルス数の設定において、前記温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報を用いて前記補正値を設定する、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御装置、プログラム、及び制御方法に関し、特に、半田処理装置を制御する制御装置、プログラム、及び制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
背景技術に係る半田こての温度制御装置が、特許文献1に開示されている。当該温度制御装置は、加熱パルスを生成する加熱パルス発生部と、加熱パルスを受けて半田ティップを加熱するとともに半田ティップの温度に対応したセンサ信号を出力する加熱部と、加熱部に対して可変個数の加熱パルスを供給することによって半田ティップの温度を制御する制御部と、を備える。制御部は、加熱部からのセンサ信号を計測温度データに変換し、この計測温度データと設定温度との温度差に基づいて、非線形な関係で加熱パルスの上記可変個数を決定する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-62562号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された温度制御装置によると、ワークに対する半田づけの作業が終了して半田ティップの温度が設定温度より低い温度から設定温度に回復しようとする時に、過度なオーバーシュートが発生する可能性がある。
【0005】
図1は、半田づけ時の半田ティップ及びワークの温度の遷移を示す図である。この例において、半田ティップの設定温度は400℃である。半田づけのために半田ティップがワークに接触することにより、ティップ温度は低下してワーク温度は上昇する。次のワークへの移動のために半田ティップがワークから離れることにより、ティップ温度は上昇してワーク温度は低下する。最後のワークに対する半田づけが終了した時点でティップ温度は設定温度よりも低い約300℃であるため、制御部は、設定温度との温度差に基づいて、加熱パルスの上記可変個数として大きな値を設定する。最後のワークに関しては次のワークが存在しないため、加熱パルスの過剰供給によって半田ティップの温度は急激に上昇する。その結果、図1において二点鎖線で示すように、ティップ温度が設定温度である400℃を超えた後も温度上昇がしばらく継続し、過度なオーバーシュートが発生する。
【0006】
一方で、加熱パルス数を全体的に少なく設定することによってオーバーシュートを抑制する制御も考えられるが、そのような制御ではワークとの接触により低下したティップ温度を上昇させるための加熱パルス数も減少するため、半田こての性能が低下してしまう。
【0007】
本発明はかかる問題を解決するためになされたものであり、半田処理装置の性能を低下させることなくオーバーシュートを抑制することが可能な、制御装置、プログラム、及び制御方法を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様に係る制御装置は、半田を処理する半田処理部と、加熱パルスの印加によって前記半田処理部を加熱する加熱部と、前記半田処理部の温度を検出する検出部と、を有する半田処理装置を制御する制御装置であって、前記検出部が検出した前記温度の検出値を取得する取得部と、前記取得部が取得した前記検出値の履歴情報に基づいて、前記半田処理部の温度変化傾向を特定する特定部と、補正値を用いて基準値を補正することによって、前記加熱部に印加する前記加熱パルス数を設定する設定部と、前記設定部による前記加熱パルス数の設定結果に基づいて、前記加熱部への前記加熱パルスの印加を制御する制御部と、前記履歴情報を記憶する記憶部と、を備え、前記設定部は、前記温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報を用いて前記補正値を設定する。
【0009】
本態様によれば、設定部は、温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報を用いて補正値を設定する。従って、たとえ半田処理部の設定温度と検出値との温度差が同一であっても、温度下降傾向時と温度上昇傾向時とで異なる補正値を用いて異なる加熱パルス数を設定できるため、各傾向時の特性等に応じて加熱パルス数を最適値に設定できる。その結果、温度下降傾向時において半田処理装置の性能を低下させることなく、温度上昇傾向時においてオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0010】
上記態様において、前記補正用情報は、前記記憶部に記憶された、前記基準値に加算する加算値を示す加算テーブルと、前記基準値から減算する減算値を示す減算テーブルとを含み、前記補正値は、前記加算テーブルが示す前記加算値、又は、前記減算テーブルが示す前記減算値であり、前記設定部は、前記温度変化傾向に応じて、前記基準値、前記基準値に前記加算値を加算した値、又は、前記基準値から前記減算値を減算した値に基づいて、前記加熱パルス数を設定すると良い。
【0011】
本態様によれば、設定部は、記憶部に記憶された加算テーブル及び減算テーブルを参照することによって、温度変化傾向に応じて適切な加熱パルス数を設定することが可能となる。
【0012】
上記態様において、前記半田処理部の設定温度が第1領域に属する場合の前記加算テーブル及び前記減算テーブルと、前記半田処理部の前記設定温度が第2領域に属する場合の前記加算テーブル及び前記減算テーブルとは異なると良い。
【0013】
本態様によれば、半田処理部の設定温度に応じて適切な温度制御を行うことが可能となる。
【0014】
上記態様において、前記基準値は、前記半田処理部の設定温度と前記取得部が取得した前記検出値との差に基づいて設定される基準パルス数を示す値であり、前記半田処理部の前記設定温度が第1領域に属する場合の前記基準値と、前記半田処理部の前記設定温度が第2領域に属する場合の前記基準値とは異なる前記半田処理部の設定温度が第1領域に属する場合の前記基準値と、前記半田処理部の設定温度が第2領域に属する場合の前記基準値とは異なると良い。
【0015】
本態様によれば、半田処理部の設定温度に応じて適切な温度制御を行うことが可能となる。
【0016】
上記態様において、前記設定部は、前記温度変化傾向が温度上昇傾向である場合は、前記基準値から前記補正値を減算することによって、前記基準値で示される基準パルス数よりも少ない前記加熱パルス数を設定し、前記温度変化傾向が温度下降傾向である場合は、前記基準値に前記補正値を加算することによって、前記基準パルス数よりも多い前記加熱パルス数を設定すると良い。
【0017】
本態様によれば、温度下降傾向時において半田処理装置の性能を低下させることなく、温度上昇傾向時においてオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0018】
上記態様において、前記基準値は、前記半田処理部の設定温度と前記取得部が取得した前記検出値との差に基づいて設定される基準パルス数を示す値であり、前記設定部は、前記基準値で示される前記基準パルス数を印加した場合に予測される前記半田処理部の温度変化量の予測値と、前記検出部が検出した前記検出値から算出した前記半田処理部の温度変化量の実測値との差に応じて、前記補正値を設定すると良い。
【0019】
本態様によれば、適切な加熱パルス数を高精度に設定することが可能となる。
【0020】
上記態様において、前記設定部は、前記温度変化傾向が温度下降傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた差が負である場合、又は、前記温度変化傾向が温度上昇傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた差が正である場合は、前記基準値に前記補正値を加算することによって、前記基準パルス数よりも多い前記加熱パルス数を設定し、前記温度変化傾向が温度下降傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた差が正である場合、又は、前記温度変化傾向が温度上昇傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた差が負である場合は、前記基準値から前記補正値を減算することによって、前記基準パルス数よりも少ない前記加熱パルス数を設定すると良い。
【0021】
本態様によれば、温度変化傾向及び予測値と実測値との大小に応じて、適切な加熱パルス数を高精度に設定することが可能となる。
【0022】
上記態様において、前記記憶部は、前記記憶部は、前記基準値を示す基準テーブルと、前記補正用情報として、前記温度変化傾向が温度下降傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた前記差が負である場合に設定される前記補正値を示す下降用加算テーブルと、前記温度変化傾向が温度上昇傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた前記差が正である場合に設定される前記補正値を示す上昇用加算テーブルと、前記温度変化傾向が温度下降傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた前記差が正である場合に設定される前記補正値を示す下降用減算テーブルと、前記温度変化傾向が温度上昇傾向かつ前記予測値の絶対値から前記実測値の絶対値を引いた前記差が負である場合に設定される前記補正値を示す上昇用減算テーブルと、を記憶すると良い。
【0023】
本態様によれば、下降用加算テーブル、下降用減算テーブル、上昇用加算テーブル、及び上昇用減算テーブルを個別に設けることにより、細密な温度制御を行うことが可能となる。
【0024】
上記態様において、前記下降用減算テーブルの前記補正値はゼロに設定されていると良い。
【0025】
本態様によれば、温度下降傾向時において半田処理装置の性能低下を適切に防止することが可能となる。
【0026】
上記態様において、前記設定部は、今回の制御サイクルである第1制御サイクルより前の第2制御サイクルにおける前記加熱パルス数を示す前記基準値と、前記検出値及び前記検出値の前記履歴情報に基づく前記半田処理部の温度変化量に応じた前記補正値とに基づいて、前記第1制御サイクルにおける前記加熱パルス数を設定すると良い。
【0027】
本態様によれば、加熱パルス数を簡易かつ適切に設定することが可能となる。
【0028】
上記態様において、前記設定部は、前記温度変化傾向が温度上昇傾向である場合は、前記基準値から前記補正値を減算することによって、前記基準値で示される基準パルス数よりも少ない前記加熱パルス数を設定し、前記温度変化傾向が温度下降傾向である場合は、前記基準値に前記補正値を加算することによって、前記基準パルス数よりも多い前記加熱パルス数を設定すると良い。
【0029】
本態様によれば、温度下降傾向時において半田処理装置の性能を低下させることなく、温度上昇傾向時においてオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0030】
上記態様において、前記設定部は、前記第1制御サイクルと前記第2制御サイクルとの間の温度変化量と、前記第2制御サイクルとそれより前の第3制御サイクルとの間の温度変化量とに基づいて、前記補正値を設定すると良い。
【0031】
本態様によれば、補正値を適切に設定できるため、温度制御の精度を向上することが可能となる。
【0032】
上記態様において、前記設定部は、前記第1制御サイクルと前記第2制御サイクルとの間の前記温度変化傾向と、前記第2制御サイクルと前記第3制御サイクルとの間の前記温度変化傾向とが互いに相違し、かつ、前記第1制御サイクルと前記第2制御サイクルとの間の温度変化量が、前記第2制御サイクルと前記第3制御サイクルとの間の温度変化量未満である場合、前記補正値をゼロに設定すると良い。
【0033】
本態様によれば、ノイズ等に起因する誤制御の発生を抑制することが可能となる。
【0034】
本発明の一態様に係るプログラムは、半田を処理する半田処理部と、加熱パルスの印加によって前記半田処理部を加熱する加熱部と、前記半田処理部の温度を検出する検出部と、を有する半田処理装置を制御する制御装置に搭載される情報処理装置を、前記検出部が検出した前記温度の検出値を取得する取得手段と、前記取得手段が取得した前記検出値の履歴情報に基づいて、前記半田処理部の温度変化傾向を特定する特定手段と、補正値を用いて基準値を補正することによって、前記加熱部に印加する加熱パルス数を設定する設定手段と、前記設定手段による前記加熱パルス数の設定結果に基づいて、前記加熱部への前記加熱パルスの印加を制御する制御手段と、として機能させるためのプログラムであって、前記設定手段は、前記温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報を用いて前記補正値を設定する。
【0035】
本態様によれば、設定手段は、温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報を用いて補正値を設定する。従って、たとえ半田処理部の設定温度と検出値との温度差が同一であっても、温度下降傾向時と温度上昇傾向時とで異なる補正値を用いて異なる加熱パルス数を設定できるため、各傾向時の特性等に応じて加熱パルス数を最適値に設定できる。その結果、温度下降傾向時において半田処理装置の性能を低下させることなく、温度上昇傾向時においてオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0036】
本発明の一態様に係る制御方法は、半田を処理する半田処理部と、加熱パルスの印加によって前記半田処理部を加熱する加熱部と、前記半田処理部の温度を検出する検出部と、を有する半田処理装置を制御する制御方法であって、情報処理装置が、前記検出部が検出した前記温度の検出値を取得し、取得した前記検出値の履歴情報に基づいて、前記半田処理部の温度変化傾向を特定し、補正値を用いて基準値を補正することによって、前記加熱部に印加する加熱パルス数を設定し、前記加熱パルス数の設定結果に基づいて、前記加熱部への前記加熱パルスの印加を制御し、前記加熱パルス数の設定において、前記温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報を用いて前記補正値を設定する。
【0037】
本態様によれば、加熱パルス数の設定において、温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報を用いて補正値を設定する。従って、たとえ半田処理部の設定温度と検出値との温度差が同一であっても、温度下降傾向時と温度上昇傾向時とで異なる補正値を用いて異なる加熱パルス数を設定できるため、各傾向時の特性等に応じて加熱パルス数を最適値に設定できる。その結果、温度下降傾向時において半田処理装置の性能を低下させることなく、温度上昇傾向時においてオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、半田処理装置の性能を低下させることなくオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】半田づけ時の半田ティップ及びワークの温度の遷移を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る半田処理システムの構成を簡略化して示す図である。
図3】マイコンの構成を簡略化して示す図である。
図4】制御部による加熱パルスの印加制御を示す図である。
図5】基準テーブルの一例を示す図である。
図6】加算テーブルの一例を示す図である。
図7】減算テーブルの一例を示す図である。
図8】情報処理部が実行する処理を示すフローチャートである。
図9】第1実施形態に関して、設定部による加熱パルス数の設定手法を示す図である。
図10】温度下降時における加熱パルス数の設定結果の一例を示す図である。
図11】温度上昇時における加熱パルス数の設定結果の一例を示す図である。
図12】第2実施形態に関して、設定部による加熱パルス数の設定手法を示す図である。
図13】第3実施形態に関して、設定部による加熱パルス数の設定手法を示す図である。
図14】第3実施形態に関して、設定部による加熱パルス数の設定手法を示す図である。
図15】温度下降時における加熱パルス数の設定結果の一例を示す図である。
図16】温度上昇時における加熱パルス数の設定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、異なる図面において同一の符号を付した要素は、同一又は対応する要素を示すものとする。
【0041】
図2は、本発明の実施形態に係る半田処理システムの構成を簡略化して示す図である。半田処理システムは、半田を処理する半田処理装置11と、半田処理装置11を制御する制御装置12とを備える。本実施形態の例において、半田処理装置11は半田こてである。但し、半田処理装置11は、半田除去器又はツイーザー等であっても良い。
【0042】
半田処理装置11は、こて先21と、半田づけのためにワークに接触される半田処理部としての半田ティップ22と、半田ティップ22の温度を検出する温度センサ23と、加熱パルスHPが印加されることによって半田ティップ22を加熱するヒータ24とを有する。温度センサ23は、例えば熱電対を用いて構成されている。
【0043】
制御装置12は、半田処理装置11に有線接続されたステーションとして構成されており、マイクロコンピュータ(以下「マイコン」と略す)31と、温度センサ23が検出した半田ティップ22の温度の検出値を増幅してマイコン31に入力するアンプ32と、マイコン31によって制御されるスイッチング素子33とを有している。スイッチング素子33は、例えばFETを用いて構成されている。スイッチング素子33がオンされることにより、加熱パルスHPがヒータ24に印加され、それによって半田ティップ22が加熱される。スイッチング素子33がオフされることにより、ヒータ24への加熱パルスHPの印加が停止され、それによって半田ティップ22の加熱が停止される。なお、制御装置12は、小型化されることによって半田処理装置11内に実装されても良い。
【0044】
図3は、マイコン31の構成を簡略化して示す図である。マイコン31は、アナログ信号をディジタル信号に変換するADC41と、情報処理部42と、記憶部43とを有している。情報処理部42は、CPU等の情報処理装置を用いて構成されている。記憶部43は、HDD、SSD、又は半導体メモリ等を用いて構成されている。
【0045】
コンピュータ読み取り可能なROM等の記録媒体から読み出したプログラムをCPUが実行することによって実現される機能として、情報処理部42は、取得部51、特定部52、設定部53、及び制御部54を有している。換言すれば、上記プログラムは、制御装置12に搭載される情報処理装置としての情報処理部42を、取得部51(取得手段)、特定部52(特定手段)、設定部53(設定手段)、及び制御部54(制御手段)として機能させるためのプログラムである。
【0046】
記憶部43には、ルックアップテーブル(以下「LUT」と略す)61と履歴情報62とが記憶されている。
【0047】
取得部51は、温度センサ23が検出した半田ティップ22の温度の検出値を、アンプ32及びADC41を介して取得する。取得部51が取得した検出値の時系列データは、履歴情報62として記憶部43に記憶される。特定部52は、履歴情報62に基づいて半田ティップ22の温度変化傾向を特定する。温度変化傾向は、温度下降傾向、温度上昇傾向、及び温度維持傾向を含む。設定部53は、補正値を用いて基準値を補正することによって、各制御サイクルにおいてヒータ24に印加する加熱パルス数を設定する。基準値とは、次に印加する加熱パルス数の基準となる基準パルス数を示す値である。補正値とは、温度変化傾向に基づいて基準値を補正する値であり、基準値に加算する加算値及び基準値から減算する減算値を含む。設定部53は、半田ティップ22の温度変化傾向に応じて、基準値、基準値に加算値を加算した値、又は、基準値から減算値を減算した値に基づいて、加熱パルス数を設定する。設定部53は、温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報を用いて補正値を設定する。補正用情報は、LUT61又は演算式等を含み、以下の例ではLUT61を用いる。LUT61は、複数の加算値を示す加算テーブルと、複数の減算値を示す減算テーブルとを含む。制御部54は、設定部53による加熱パルス数の設定結果に基づいて、各制御サイクルにおいてスイッチング素子33を制御することにより、ヒータ24への加熱パルスHPの印加を制御する。
【0048】
図4は、制御部54による加熱パルスHPの印加制御を示す図である。図4には、今回の制御サイクルである第1制御サイクルと、前回の制御サイクルである第2制御サイクルと、前々回の制御サイクルである第3制御サイクルとを示している。第1制御サイクルの先頭の測定タイミングT0において、スイッチング素子33がオフされるとともに、温度センサ23の検出値S0が取得部51によって取得される。第2制御サイクルの先頭の測定タイミングT1において、スイッチング素子33がオフされるとともに、温度センサ23の検出値S1が取得部51によって取得される。第3制御サイクルの先頭の測定タイミングT2において、スイッチング素子33がオフされるとともに、温度センサ23の検出値S2が取得部51によって取得される。
【0049】
本実施形態の例において、連続する測定タイミングT同士の間隔は例えば0.3秒であり、この0.3秒の間に最大で37個の加熱パルスHPを含めることが可能である。つまり、各制御サイクルにおいてヒータ24に印加可能な加熱パルス数は、最小値0から最大値37までの任意の設定値であり、設定部53によって算出される。設定部53は、加熱パルス数の算出結果が最大値を超える場合は、加熱パルス数を最大値(この例の場合は37)に設定する。同様に、設定部53は、加熱パルス数の算出結果が最小値未満となる場合は、加熱パルス数を最小値(この例の場合は0)に設定する。
【0050】
なお、制御部54による加熱パルスHPの印加制御は、半田処理装置11の電源をオンした直後の立ち上がりを除き、半田ティップ22の温度が最初に設定温度に到達した後から有効としても良い。
【0051】
(第1実施形態)
第1実施形態において、基準値は、半田ティップ22の設定温度と取得部51が取得した検出値(S0)との差に基づいて設定される基準パルス数を示す値である。基準値の設定は、LUTの参照又は演算式を用いた算出を含む。第1実施形態において、設定部53は、温度変化傾向が温度維持傾向である場合は、基準パルス数に等しい加熱パルス数を設定し、温度変化傾向が温度上昇傾向である場合は、基準値から補正値を減算することによって基準パルス数よりも少ない加熱パルス数を設定し、温度変化傾向が温度下降傾向である場合は、基準値に加算値を加算することによって基準パルス数よりも多い加熱パルス数を設定する。
【0052】
第1実施形態において、設定部53は、基準値と、半田ティップ22の温度変化傾向及び温度変化量に応じた上記補正値とに基づいて、次に印加する加熱パルス数を設定する。これにより、加熱パルス数を簡易かつ適切に設定することが可能となる。設定部53は、温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報を用いて補正値を設定する。また、第1実施形態において、LUT61は、基準値を示す基準テーブルと、基準値に加算する補正値である加算値を示す加算テーブルと、基準値から減算する補正値である減算値を示す減算テーブルとを有する。設定部53は、温度変化傾向が温度上昇傾向である場合は減算テーブルを参照し、温度下降傾向である場合は加算テーブルを参照する。
【0053】
図5は、基準テーブルの一例を示す図である。図6は、加算テーブルの一例を示す図である。図7は、減算テーブルの一例を示す図である。
【0054】
図5を参照して、半田ティップ22の設定温度から検出値を減算した温度差が例えば5℃、10℃、15℃の場合は、基準値で示される基準パルス数はそれぞれ7個、20個、28個となる。つまり、設定温度と検出値との温度差が小さいほど基準パルス数は少なく設定されており、設定温度と検出値との温度差が大きいほど基準パルス数は多く設定されている。
【0055】
なお、基準テーブルは、半田ティップ22の設定温度の温度領域に応じて複数設けられていても良い。例えば、高温領域用の基準テーブルと低温領域用の基準テーブルとが別個に設けられていても良い。複数の基準テーブルが設けられることにより、設定温度が第1領域(例えば高温領域)に属する場合の基準値と、設定温度が第2領域(例えば低温領域)に属する場合の基準値とは、互いに異なる。これにより、半田ティップ22の設定温度に応じて適切な温度制御を行うことが可能となる。なお、高温、中温、及び低温の3つの温度領域に合わせて3つ(又は4つ以上)の基準テーブルが設けられていても良い。後述の第2実施形態についても同様である。
【0056】
図6を参照して、半田ティップ22の温度変化傾向、すなわち第1制御サイクルの検出値S0から第2制御サイクルの検出値S1を減算した温度差が負である温度下降傾向の場合で、検出値S0と検出値S1の差の絶対値が例えば5℃、10℃、15℃の場合は、加算値で示される加算パルス数(補正値)はそれぞれ4個、8個、21個となる。図7を参照して、第1制御サイクルの検出値S0から第2制御サイクルの検出値S1を減算した温度差が正である温度上昇傾向の場合で、検出値S0と検出値S1の差の絶対値が例えば5℃、10℃、15℃の場合は、減算値で示される減算パルス数(補正値)はそれぞれ3個、5個、9個となる。
【0057】
なお、加算テーブル及び減算テーブルは、半田ティップ22の設定温度の温度領域に応じてそれぞれ複数設けられていても良い。例えば、高温領域用の加算テーブル及び減算テーブルと低温領域用の加算テーブル及び減算テーブルとが別個に設けられていても良い。これにより、半田ティップ22の設定温度に応じて適切な温度制御を行うことが可能となる。この場合の基準テーブルは、一つのみ設けられていても良いし、前述のように温度領域に応じて複数設けられていても良い。後述の第2実施形態についても同様である。
【0058】
図8は、情報処理部42が実行する処理を示すフローチャートである。
【0059】
まずステップSP01において取得部51は、温度センサ23が検出した半田ティップ22の温度の検出値を、アンプ32及びADC41を介して取得する。取得部51が取得した検出値の時系列データは、履歴情報62として記憶部43に記憶される。
【0060】
次にステップSP02において特定部52は、履歴情報62に基づいて半田ティップ22の温度変化傾向を特定する。特定部52は、検出値S0と検出値S1とを比較し、検出値S0が検出値S1より小さい場合には温度変化傾向は温度下降傾向であると特定し、検出値S0が検出値S1より大きい場合には温度変化傾向は温度上昇傾向であると特定し、検出値S0が検出値S1に等しい場合には温度変化傾向は温度維持傾向であると特定する。なお、検出値S0との比較対象は、検出値S1に限らず、検出値S2であっても良いし、検出値S1と検出値S2との平均値であっても良い。
【0061】
次にステップSP03において設定部53は、補正値を用いて基準値を補正することによって、第1制御サイクルにおいてヒータ24に印加する加熱パルス数を設定する。設定部53は、基準パルス数を示す基準テーブルと、半田ティップ22の温度変化量に応じた加算テーブル又は減算テーブルとに基づいて、加熱パルス数を設定する。
【0062】
図9は、第1実施形態に関して、設定部53による加熱パルス数Pの設定手法を示す図である。
【0063】
ΔTは、検出値S0から検出値S1を減算した温度変化量である。
【0064】
は、加算テーブルによって設定される加算パルス数である。
【0065】
は、減算テーブルによって設定される減算パルス数である。
【0066】
Pは、第1制御サイクル(次に印加する加熱パルス数)に関して設定する加熱パルス数である。
【0067】
P0は、基準テーブルによって設定される基準パルス数である。
【0068】
設定部53は、条件1により温度維持傾向である場合(ΔT=0)には、基準テーブルによって設定した基準パルス数に等しく加熱パルス数P(=P0)を設定する。
【0069】
設定部53は、条件1により温度上昇傾向である場合(ΔT>0)には、基準テーブルによって設定した基準パルス数から、減算テーブルによって設定した減算パルス数を減算することにより、加熱パルス数P(=P0-P)を設定する。つまり、特定部52が温度上昇傾向と特定した場合、設定部53は、基準値から補正値を減算することによって、基準パルス数よりも少ない加熱パルス数を設定する。これにより、ヒータ24への余分な電力供給を抑制し、図1において実線で示すようにオーバーシュートを適切に抑制することが可能となる。
【0070】
設定部53は、条件1により温度下降傾向である場合(ΔT<0)には、基準テーブルによって設定した基準パルス数に、加算テーブルによって設定した加算パルス数を加算することにより、加熱パルス数P(=P0+P)を設定する。これにより、想定より大きな負荷がかかった場合にヒータ24への追加の電力供給を行う。
【0071】
次にステップSP04において制御部54は、設定部53による加熱パルス数の設定結果に基づいて、各制御サイクルにおいてスイッチング素子33を制御することにより、ヒータ24への加熱パルスHPの印加を制御する。
【0072】
第1実施形態によれば、設定部53は、半田ティップ22の温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで異なる補正用情報(例えば加算テーブル又は減算テーブル)を用いて補正値を設定する。従って、たとえ半田ティップ22の設定温度と検出値との温度差が同一であっても、温度下降傾向時と温度上昇傾向時とで異なる補正値を用いて異なる加熱パルス数を設定できるため、各傾向時の特性等に応じて加熱パルス数を最適値に設定できる。その結果、温度下降傾向時において半田処理装置11の性能を低下させることなく、温度上昇傾向時においてオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0073】
図10は、温度下降時における加熱パルス数の設定結果の一例を示す図である。設定温度との差に基づいて加熱パルス数を設定する従来手法と比較すると、基準値及び補正値を用いた発明手法では、温度下降時にはセンサ温度(検出値)が下がるほど加熱パルス数が従来手法より多く設定される傾向にある。これにより、発明手法によれば、温度下降時において半田処理装置11の性能の低下が効果的に回避される。
【0074】
図11は、温度上昇時における加熱パルス数の設定結果の一例を示す図である。従来手法と比較すると、基準値及び補正値を用いた発明手法では、温度上昇時にはセンサ温度が上がるほど加熱パルス数が従来手法より少なく設定される傾向にある。これにより、発明手法によれば、温度上昇時においてオーバーシュートが効果的に抑制される。
【0075】
(第2実施形態)
第2実施形態において、基準値は、半田ティップ22の設定温度と取得部51が取得した検出値(S0)との差に基づいて設定される基準パルス数を示す値である。基準値の設定は、LUTの参照又は演算式を用いた算出を含む。第2実施形態において、設定部53は、基準値で示される基準パルス数を印加した場合に予測される半田ティップ22の温度変化量の予測値と、温度センサ23が検出した検出値から算出した半田ティップ22の温度変化量の実測値との差に応じて、補正値を設定する。
【0076】
具体的に、設定部53は、温度変化傾向が温度下降傾向かつ温度変化量の予測値の絶対値から温度変化量の実測値の絶対値を引いた差が負である場合(温度変化量の実測値の絶対値が温度変化量の予測値の絶対値超である場合)、又は、温度変化傾向が温度上昇傾向かつ温度変化量の予測値の絶対値から温度変化量の実測値の絶対値を引いた差が正である場合(温度変化量の実測値の絶対値が温度変化量の予測値の絶対値未満である場合)は、基準値に補正値を加算することによって、基準パルス数よりも多い加熱パルス数を設定する。また、設定部53は、温度変化傾向が温度下降傾向かつ温度変化量の予測値の絶対値から温度変化量の実測値の絶対値を引いた差が正である場合(温度変化量の実測値の絶対値が温度変化量の予測値の絶対値未満である場合)、又は、温度変化傾向が温度上昇傾向かつ温度変化量の予測値の絶対値から温度変化量の実測値の絶対値を引いた差が負である場合(温度変化量の実測値の絶対値が温度変化量の予測値の絶対値超である場合)は、基準値から補正値を減算することによって、基準パルス数よりも少ない加熱パルス数を設定する。これにより、加熱パルス数を簡易かつ適切に設定することが可能となる。ここで、予測値とは、基準パルス数を印加した場合に温度センサ23の検出値がどれだけ変化するかという温度変化量の予測値である。実際にはワークの大きさ等の半田ティップ22にかかる熱負荷又はその他の外的要因によって、加熱パルス印加後の検出値は予測値とは異なることが多く、本実施形態ではその予測値と実測値との差に応じた補正値を用いる。設定部53は、温度変化傾向が温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで補正値を異ならせるが、実際には予測値と実測値との差に応じた補正値が用いられるために、温度上昇傾向である場合と温度下降傾向である場合とで補正値が偶然に同一となる場合も含まれる。また、第2実施形態において、LUT61は、基準値を示す基準テーブル(例えば図5)と、基準値に加算する補正値である加算値を示す加算テーブル(例えば図6)と、基準値から減算する補正値である減算値を示す減算テーブル(例えば図7)とを含む。
【0077】
図6を参照して、半田ティップ22の温度変化量の予測値から実測値を減算した温度差の絶対値が例えば5℃、10℃、15℃の場合は、加算値で示される加算パルス数(補正値)はそれぞれ4個、8個、21個となる。図7を参照して、半田ティップ22の温度変化量の予測値から実測値を減算した温度差の絶対値が例えば5℃、10℃、15℃の場合は、減算値で示される減算パルス数(補正値)はそれぞれ3個、5個、9個となる。
【0078】
なお、加算テーブルは、温度下降傾向用の加算テーブル(下降用加算テーブル)と温度上昇傾向用の加算テーブル(上昇用加算テーブル)とが別個に設けられていても良い。下降用加算テーブルは、特定部52が温度下降傾向と特定し、かつ、温度変化量の予測値の絶対値から温度変化量の実測値の絶対値を引いた差が負である場合(温度変化量の実測値の絶対値が予測値の絶対値より大きい場合)に設定される補正値を示す。上昇用加算テーブルは、特定部52が温度上昇傾向と特定し、かつ、温度変化量の予測値の絶対値から温度変化量の実測値の絶対値を引いた差が正である場合(温度変化量の実測値の絶対値が予測値の絶対値より小さい場合)に設定される補正値を示す。
【0079】
同様に、減算テーブルは、温度下降傾向用の減算テーブル(下降用減算テーブル)と温度上昇傾向用の減算テーブル(上昇用減算テーブル)とが別個に設けられていても良い。下降用減算テーブルは、特定部52が温度下降傾向と特定し、かつ、温度変化量の予測値の絶対値から温度変化量の実測値の絶対値を引いた差が正である場合(温度変化量の実測値の絶対値が予測値の絶対値より小さい場合)に設定される補正値を示す。上昇用減算テーブルは、特定部52が温度上昇傾向と特定し、かつ、温度変化量の予測値の絶対値から温度変化量の実測値の絶対値を引いた差が負である場合(温度変化量の実測値の絶対値が予測値の絶対値より大きい場合)に設定される補正値を示す。
【0080】
下降用加算テーブル、下降用減算テーブル、上昇用加算テーブル、及び上昇用減算テーブルを個別に設けることによって、細密な温度制御を行うことが可能となる。
【0081】
なお、下降用減算テーブルに関しては、全ての補正値がゼロに設定されていても良い。この場合、温度下降傾向で温度変化量の実測値が予測値より小さい場合であっても、温度変化量の予測値と実測値との差に関わらず加熱パルス数は基準パルス数に等しくなる。温度下降傾向時にはオーバーシュートの懸念がないものとして、あえて出力を下げる補正を行わない意図である。これにより、温度下降傾向時において半田処理装置11の性能低下を適切に防止することが可能となる。
【0082】
第2実施形態に係る情報処理部42が実行する処理は、図8のフローチャートによって示される。ステップSP01,SP02,SP04の処理は上記第1実施形態と同様である。
【0083】
ステップSP03において設定部53は、補正値を用いて基準値を補正することによって、第1制御サイクルにおいてヒータ24に印加する加熱パルス数を設定する。設定部53は、基準パルス数を示す基準テーブルと、半田ティップ22の温度変化量の予測値と実測値との差に応じた補正値を示す加算テーブル又は減算テーブルとに基づいて、加熱パルス数を設定する。
【0084】
図12は、第2実施形態に関して、設定部53による加熱パルス数Pの設定手法を示す図である。
【0085】
ΔTは、検出値S0から検出値S1を減算した温度変化量である。
【0086】
ΔTupは、温度上昇傾向時における検出値S0から検出値S1を減算した温度変化量(温度上昇量)の実測値の絶対値である。設定部53は、検出値の履歴情報62に基づいて、温度変化量の実測値を算出する。
【0087】
ΔTupPは、温度上昇傾向時における検出値S1の後、測定タイミングT0に予測される温度変化量(温度上昇量)の予測値の絶対値である。設定部53は、過去の制御サイクルにおける加熱パルス数の設定値の履歴情報と、半田ティップ22の設定温度と、検出値の履歴情報62とに基づいて、温度変化量の予測値を算出する。なお、温度変化量の予測値は、予め定められた予測テーブルに基づいて取得されても良い。当該予測テーブルは、基準パルス数が特定の種類のこて先に印加された時の温度変化の予測値を示し、実験又はシミュレーション等によって予め作成される。この場合、予測テーブルは温度上昇傾向の場合と温度下降傾向の場合とで異なる予測テーブルを用いてもよい。
【0088】
ΔTdownは、温度下降傾向時における検出値S0から検出値S1を減算した温度変化量(温度下降量)の実測値の絶対値である。
【0089】
ΔTdownPは、温度下降傾向時における検出値S1の後、測定タイミングT0に予測される温度変化量(温度下降量)の予測値の絶対値である。
【0090】
は、加算テーブルによって設定される加算パルス数である。
【0091】
は、減算テーブルによって設定される減算パルス数である。
【0092】
Pは、第1制御サイクル(次に印加するパルス数)に関して設定する加熱パルス数である。
【0093】
P0は、基準テーブルによって設定される基準パルス数である。
【0094】
設定部53は、条件1により温度維持傾向である場合(ΔT=0)には、基準テーブルによって設定した基準パルス数に等しく加熱パルス数P(=P0)を設定する。
【0095】
設定部53は、条件1により温度上昇傾向である場合(ΔT>0)には、ΔTupP-ΔTupを計算する。設定部53は、条件2により当該計算結果が負(<0)である場合には、予測より温度上昇が大きいと判断し、基準テーブルによって設定した基準パルス数から、減算テーブルによって設定した減算パルス数を減算することにより、加熱パルス数P(=P0-P)を設定する。つまり、特定部52が温度上昇傾向と特定し、かつ、温度変化量の実測値の絶対値が温度変化量の予測値の絶対値より大きい場合、設定部53は、基準値から補正値を減算することによって、基準パルス数よりも少ない加熱パルス数を設定する。これにより、ヒータ24への余分な電力供給を抑制し、図1において実線で示すようにオーバーシュートを適切に抑制することが可能となる。また、設定部53は、条件2により当該計算結果が正(>0)である場合には、予測より温度上昇が小さいと判断し、基準テーブルによって設定した基準パルス数に、加算テーブルによって設定した加算パルス数を加算することにより、加熱パルス数P(=P0+P)を設定する。これにより、半田ティップ22の設定温度への復帰を素早く確実に行う。また、設定部53は、条件2により当該計算結果がゼロである場合には、基準テーブルによって設定した基準パルス数に等しく加熱パルス数P(=P0)を設定する。
【0096】
設定部53は、条件1により温度下降傾向である場合(ΔT<0)には、ΔTdownP-ΔTdownを計算する。設定部53は、条件2により当該計算結果が負(<0)である場合には、予測より温度下降が大きいと判断し、基準テーブルによって設定した基準パルス数に、加算テーブルによって設定した加算パルス数を加算することにより、加熱パルス数P(=P0+P)を設定する。これにより、想定より大きな負荷がかかった場合にヒータ24への追加の電力供給を行う。また、設定部53は、条件2により当該計算結果が正(>0)である場合には、予測より温度下降が小さいと判断し、基準テーブルによって設定した基準パルス数から、減算テーブルによって設定した減算パルス数を減算することにより、加熱パルス数P(=P0-P)を設定する。これにより、半田ティップ22の温度の復帰に必要な熱以外の熱の供給を抑え、こて先21の余分な熱の蓄積を抑制する。また、設定部53は、条件2により当該計算結果がゼロである場合には、基準テーブルによって設定した基準パルス数に等しく加熱パルス数P(=P0)を設定する。
【0097】
第2実施形態によれば、第1実施形態によって得られる効果に加えて、設定部53が半田ティップ22の温度変化量の予測値と実測値との差に応じて補正値を設定することにより、適切な加熱パルス数を高精度に設定することが可能となる。
【0098】
(第3実施形態)
第3実施形態において、基準値は、前回の制御サイクルである第2制御サイクルにおける加熱パルス数を示す値である。
【0099】
第3実施形態において、設定部53は、第2制御サイクルにおける加熱パルス数を示す基準値と、検出値及び検出値の履歴情報に基づく半田ティップ22の温度変化量に応じた上記補正値とに基づいて、第1制御サイクルにおける加熱パルス数を設定する。これにより、加熱パルス数を簡易かつ適切に設定することが可能となる。
【0100】
具体的に、設定部53は、半田ティップ22の温度変化傾向が温度上昇傾向である場合は、基準値から補正値を減算することによって、基準パルス数よりも少ない加熱パルス数を設定する。また、設定部53は、半田ティップ22の温度変化傾向が温度下降傾向である場合は、基準値に補正値を加算することによって、基準パルス数よりも多い加熱パルス数を設定する。また、第3実施形態において、LUT61は、加算値を示す加算テーブル(例えば図6)と、減算値を示す減算テーブル(例えば図7)とを含む。
【0101】
第3実施形態に係る情報処理部42が実行する処理は、図8のフローチャートによって示される。ステップSP01,SP02,SP04の処理は上記第1実施形態と同様である。
【0102】
ステップSP03において設定部53は、補正値を用いて基準値を補正することによって、第1制御サイクルにおいてヒータ24に印加する加熱パルス数を設定する。設定部53は、第2制御サイクルにおける加熱パルス数を示す基準値と、検出値及び検出値の履歴情報に基づく半田ティップ22の温度変化量に応じた上記補正値とに基づいて、第1制御サイクルにおける加熱パルス数を設定する。
【0103】
図13及び図14は、第3実施形態に関して、設定部53による加熱パルス数Pの設定手法を示す図である。
【0104】
Taは、第1制御サイクルの検出値S0から第2制御サイクルの検出値S1を減算した温度変化量である。
【0105】
Tbは、第2制御サイクルの検出値S1から第3制御サイクルの検出値S2を減算した温度変化量である。
【0106】
Tcは、第1制御サイクルの検出値S0から第3制御サイクルの検出値S2を減算した温度変化量である。
【0107】
Paは、温度変化量Taに基づいて加算テーブルによって設定される加算パルス数である。
【0108】
Paは、温度変化量Taに基づいて減算テーブルによって設定される減算パルス数である。
【0109】
Pbは、温度変化量Tbに基づいて加算テーブルによって設定される加算パルス数である。
【0110】
Pbは、温度変化量Tbに基づいて減算テーブルによって設定される減算パルス数である。
【0111】
Pは、第1制御サイクル(次に印加するパルス数)に関して設定する加熱パルス数である。
【0112】
P0は、第2制御サイクルにおいて設定した加熱パルス数(基準パルス数)である。
【0113】
設定部53は、条件1により温度維持傾向である場合(Ta=0)には、基準パルス数に等しく加熱パルス数P(=P0)を設定する。
【0114】
設定部53は、条件1により温度上昇傾向である場合(Ta>0)には、条件2によりTbが正(>0)であるか負又は0(≦0)であるかを判定する。Tbが正である場合、条件3によりTcは正又は0(≧0)である。Tcが正又は0である場合(つまり図14の一番上の特性である場合)、設定部53は、PaとPbとの合計値をP0から減算することにより、加熱パルス数P(=P0-(Pa+Pb))を設定する。つまり、特定部52が温度上昇傾向と特定した場合、設定部53は、基準値から補正値を減算することによって、基準パルス数よりも少ない加熱パルス数を設定する。これにより、ヒータ24への余分な電力供給を抑制し、オーバーシュートを適切に抑制することが可能となる。Tbが負又は0である場合、設定部53は、条件3によりTcが正又は0(≧0)であるか負(<0)であるかを判定する。Tcが正又は0である場合(つまり図14の上から2番目の特性である場合)、設定部53は、PaをP0から減算することにより、加熱パルス数P(=P0-Pa)を設定する。これにより、ヒータ24への余分な電力供給を抑制し、オーバーシュートを適切に抑制することが可能となる。Tcが負である場合(つまり図14の上から3番目の特性である場合)、設定部53は、基準パルス数に等しく加熱パルス数P(=P0)を設定する。つまり、設定部53は、第1制御サイクルと第2制御サイクルとの間の温度変化傾向と、第2制御サイクルと第3制御サイクルとの間の温度変化傾向とが互いに相違し、かつ、第1制御サイクルと第2制御サイクルとの間の温度変化量が、第2制御サイクルと第3制御サイクルとの間の温度変化量未満である場合、補正値をゼロに設定する。この結果、ノイズ等に起因する誤制御の発生を抑制することが可能となる。これにより、直前の検出値に左右されるのではなく、それ以前の履歴から複数サイクル前と比較した温度上昇又は温度下降の傾向の度合いに基づいて補正値を適切に設定できる。
【0115】
設定部53は、条件1により温度下降傾向である場合(Ta<0)には、条件2によりTbが負(<0)であるか正又は0(≧0)であるかを判定する。Tbが負である場合、条件3によりTcは負又は0(≦0)である。Tcが負又は0である場合(つまり図14の上から4番目の特性である場合)、設定部53は、PaとPbとの合計値をP0に加算することにより、加熱パルス数P(=P0+(Pa+Pb))を設定する。これにより、大きな負荷がかかった場合にヒータ24への追加の電力供給を行う。Tbが正又は0である場合、設定部53は、条件3によりTcが負又は0(≦0)であるか正(>0)であるかを判定する。Tcが負又は0である場合(つまり図14の上から5番目の特性である場合)、設定部53は、PaをP0に加算することにより、加熱パルス数P(=P0+Pa)を設定する。これにより、想定より大きな負荷がかかった場合にヒータ24への追加の電力供給を行う。Tcが正である場合(つまり図14の上から6番目の特性である場合)、設定部53は、基準パルス数に等しく加熱パルス数P(=P0)を設定する。この結果、ノイズ等に起因する誤制御の発生を抑制することが可能となる。これにより、直前の検出値に左右されるのではなく、それ以前の履歴から複数サイクル前と比較した温度上昇又は温度下降の傾向の度合いに基づいて補正値を適切に設定できる。
【0116】
第3実施形態によっても第1実施形態と同様に、温度下降傾向時において半田処理装置11の性能を低下させることなく、温度上昇傾向時においてオーバーシュートを抑制することが可能となる。
【0117】
図15は、温度下降時における加熱パルス数の設定結果の一例を示す図である。設定温度との差に基づいて加熱パルス数を設定する従来手法と比較すると、基準値及び補正値を用いた発明手法では、温度下降時にはセンサ温度(検出値)が下がるほど加熱パルス数が従来手法より多く設定される傾向にある。これにより、発明手法によれば、温度下降時において半田処理装置11の性能の低下が効果的に回避される。
【0118】
図16は、温度上昇時における加熱パルス数の設定結果の一例を示す図である。従来手法と比較すると、基準値及び補正値を用いた発明手法では、温度上昇時にはセンサ温度が上がるほど加熱パルス数が従来手法より少なく設定される傾向にある。これにより、発明手法によれば、温度上昇時においてオーバーシュートが効果的に抑制される。
【0119】
なお、制御中に半田ティップ22の温度が設定温度に復帰した場合には、前回の制御サイクルに関する加熱パルス数(基準値)はゼロにリセットしても良い。
【0120】
また、加算テーブル及び減算テーブルは、半田ティップ22の設定温度の温度領域に応じてそれぞれ複数設けられていても良い。
【0121】
また、設定部53は加熱パルス数Pの設定のために今回の検出値S0、前回(1つ前)の検出値S1、及び前々回(2つ前)の検出値S2を用いたが、3つ前(又はそれより前)の検出値をさらに用いても良い。1つ前及び2つ前の検出値に代えて、2つ前及び4つ前等の検出値を用いても良い。複数の検出値の平均値を用いても良い。
【符号の説明】
【0122】
11 半田処理装置
12 制御装置
22 半田ティップ
23 温度センサ
24 ヒータ
42 情報処理部
43 記憶部
51 取得部
52 特定部
53 設定部
54 制御部
61 LUT
62 履歴情報
図1
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