(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の製造方法
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0775 20100101AFI20241121BHJP
C12N 5/0735 20100101ALI20241121BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241121BHJP
C12N 5/074 20100101ALI20241121BHJP
C12M 3/00 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C12N5/0775
C12N5/0735
C12N5/10
C12N5/074
C12M3/00 Z
(21)【出願番号】P 2023551944
(86)(22)【出願日】2021-10-26
(86)【国際出願番号】 KR2021015122
(87)【国際公開番号】W WO2022097984
(87)【国際公開日】2022-05-12
【審査請求日】2023-05-08
(31)【優先権主張番号】10-2020-0146489
(32)【優先日】2020-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】523170644
【氏名又は名称】エスアンドイー、バイオ、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】S&E BIO CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【氏名又は名称】反町 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100188651
【氏名又は名称】遠藤 広介
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウンヒ
(72)【発明者】
【氏名】シン、ウンキョン
(72)【発明者】
【氏名】スン、ジヒ
【審査官】斉藤 貴子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-1991038(KR,B1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0144830(US,A1)
【文献】特表2019-527702(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2020-0113838(KR,A)
【文献】KUROSAWA, H.,Methods for Inducing Embryoid Body Formation: In Vitro Differentiation System of Embryonic Stem Cells,JOURNAL OF BIOSCIENCE AND BIOENGINEERING,2007年05月01日,103(5),389-398
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに
幹細胞を200~600細胞/ウェルの密度で分注し、該マイクロウェルで幹細胞を三次元(3D、3dimension)
静的培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を含む三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項2】
前記幹細胞は、間葉系幹細胞、万能幹細胞、誘導万能幹細胞および胚幹細胞からなる群から選択されたいずれか一つ以上である、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項3】
前記(a)段階の三次元培養は、1~10日間培養するものである、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項4】
前記(b)段階の細胞外小胞を分離する段階は、物理的分離または化学的分離によるものである、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項5】
前記(b)段階の細胞外小胞を分離する段階以前に遠心分離した後、フィルターで濾過する段階をさらに含む、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項6】
前記(b)段階の細胞外小胞を分離する段階は、タンジェンシャルフローろ過(Tangential Flow filtration、TFF)方法で分離するものである、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項7】
前記細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞に比べてmiR-146a、miR-27a、miR-132、miR-184、miR-210およびmiR-301bからなる群から選択された1種以上を高発現するものである、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項8】
前記細胞外小胞は、二次元培養した間葉系幹細胞由来の細胞外小胞に比べてmiR-27a、miR-146aおよびmiR-146bからなる群から選択された1種以上を高発現するものである、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項9】
前記細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞に比べてインテグリン1/2およびVEGF/R2(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor 2)からなる群から選択された1種以上を高発現するものである、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項10】
前記細胞外小胞は、二次元培養した間葉系幹細胞由来の細胞外小胞に比べてインテグリン1/2およびVEGF/R2(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor 2)からなる群から選択された1種以上を高発現するものである、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)製造方法。
【請求項11】
前記三次元スフェロイド型細胞凝集体は、平均直径が65~133μmである、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項12】
前記マイクロウェルは、TMSPMA(3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート)、HEA(ヒドロキシエチル アクリレート)、GMA(グリシジル メタクリレート)、EGDMA(ジエチレングリコール ジメタクリレート)、THFA(テトラヒドロフルフリル アクリレート)、HMAA(ヒドロキシメチル アクリルアミド)、PEA(フェニル エポキシアクリレート)、HOFHA(6-ヒドロキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ)、EOPT(ポリエトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート)、HPA(ヒドロキシプロピル アクリレート)、BMA(ブチルメタクリレート)、PETIA(ペンタエリスリトール トリアクリレート)、HDDA(ヘキサン ジオール ジアクリレート)、EGPEA(エチレングリコール フェニルエーテルアクリレート)、BM(ベンジルメタクリレート)、HPPA(ヒドロキシフェノキシプロピル アクリレート)、BHPEA(2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート)、HEMA(ヒドロキシエチル メタクリレート)、HPMA(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド)およびMPC(2-メタクリロイルオキシエチル ホスホリルコリン ポリマー)からなる群から選択されたいずれかでコーティングされたものである、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項13】
三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)は、ドナーバリエーション(donor variation)が減少したことを特徴とする、請求項1に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法。
【請求項14】
請求項1~
13のいずれか一項に記載の製造方法により製造された三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)。
【請求項15】
前記三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)は、ドナーバリエーション(donor variation)が減少したことを特徴とする、請求項
14に記載の三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)。
【請求項16】
直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに
間葉系幹細胞を200~600細胞/ウェルの密度で分注し、該マイクロウェルで間葉系幹細胞を三次元(3D、3dimension)
静的培養し、製造した三次元スフェロイド型細胞凝集体を含む細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造用組成物。
【請求項17】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに
幹細胞を200~600細胞/ウェルの密度で分注し、該マイクロウェルで幹細胞を三次元(3D、3dimension)
静的培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を含む、細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)のドナーバリエーション(donor variation)を減少させる方法。
【請求項18】
(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに
幹細胞を200~600細胞/ウェルの密度で分注し、該マイクロウェルで幹細胞を三次元(3D、3dimension)
静的培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および
(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を含む、ドナーバリエーション(donor variation)が減少した細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造のマイクロウェルを用いて三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造し、これより治療の効能が向上された細胞外小胞を製造する方法および該製造方法により製造された細胞外小胞に関するものである。
【背景技術】
【0002】
多様な疾患において、幹細胞、特に、間葉系幹細胞(mesenchymal stem cells;MSC)を用いた治療法と肯定的な臨床結果が報告されてきた。幹細胞治療剤の治療効能のほとんどは、幹細胞の傍分泌(paracrine)効果により周辺皮膚細胞の再生と血管再生能力が増進されたと報告されている。細胞外小胞(extracellular vesicles;EV)が主な傍分泌効果の効能因子として知られている。最近、幹細胞から分泌される細胞外小胞の分泌による物質が、多様な幹細胞の治療効果の媒介であることが注目を集めている。細胞外小胞は、30~5,000nmの大きさを持っており、大きさ別にエクソソーム(exosome)、微小小胞体(microvesicle)、アポトーシス小体(apoptotic body)などに分類され、種類と由来によってエクトソーム(ectosome)、プロスタトソーム(prostatosome)などと呼ばれる。
【0003】
しかし、未だ幹細胞に由来する細胞外小胞を使用するための大量生産および取得方法などが確立されていない。従来の二次元細胞外小胞の生産法の場合、動物血清(xenogeneic serum)を用いたり、幹細胞からの細胞外小胞の分泌が制限的であったりと大量生産が困難であったため、臨床応用に可能な細胞外小胞を大量生産できる新たな生産法が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、本発明者は、三次元スフェロイド型細胞凝集体またはこれより由来する細胞外小胞を製造するため、大量生産が可能であり、且つ、培養時間を短縮できる方法を研究し、その結果、マイクロウェルを用いた静的培養により三次元スフェロイド型細胞凝集体(3D-静的-スフェロイド)を製造し、これを用いて細胞外小胞を製造すると、治療効能物質が向上した細胞外小胞が製造されることを確認したことによって本発明を完成するに至った。
【0005】
したがって、本発明の目的は、マイクロウェルを通じて三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造し、効能因子のレベルが向上した細胞外小胞を製造する方法を提供し、このような製造方法により製造される細胞外小胞を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに間葉系幹細胞を三次元(3D、3dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階を含む、三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)製造方法を提供する。
【0007】
また、本発明は、前記製造方法により製造された細胞外小胞を提供する。
【0008】
また、本発明は、直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに間葉系幹細胞を三次元(3D、3dimension)培養し、製造した三次元スフェロイド型細胞凝集体を含む、細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造用組成物を提供する。
【0009】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を含む、細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)のドナーバリエーション(donor variation)を減少させる方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を含む、ドナーバリエーション(donor variation)が減少した細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の細胞外小胞の製造方法を用いることで、効能が増進された細胞外小胞を大量生産することが可能であり、製造された細胞外小胞は、多様な効能因子を既存の細胞外小胞に比べて高い水準で含み、ドナーバリエーションなしに均一な特性を示し、医療業界で多様な目的に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】3Dスフェロイド型細胞凝集体を製造し、これより細胞外小胞を分離する過程を図式化して示す図である。
【
図2-A】3D-動的-PEGスフェロイド培養液が入ったマイクロウェルを観察した図である。
【
図2-B】3D-静的-スフェロイド培養液が入ったマイクロウェルを観察した図である。
【
図2-C】3D-動的-PEGスフェロイドとマイクロウェルを用いて製造した3D-静的-スフェロイドの培養期間による凝集体の面積変化を示す図である。
【
図3】3D-静的-スフェロイドと3D-動的-PEGスフェロイドのサイズ分布(size distribution)を比較した図である。
【
図4】3D-静的-スフェロイドEVの形態を電子顕微鏡で観察した図である。
【
図5】3D-静的-スフェロイドEVの濃度およびサイズ分布を確認するためのNTA(nanoparticle tracking analysis)結果を示す図である。
【
図6】3D-静的-スフェロイドEVの発現マーカーを確認するため、ELISAおよびウェスタンブロットの結果を示す図である。
【
図7】3D-静的-スフェロイドEV、3D-動的-PEGスフェロイドEVおよび2D-EV由来の細胞当たりのEV生産量を比較した図である。
【
図8】2D-EVに比べて3D-静的-スフェロイドEVで高く発現するmiRNAおよびタンパク質を示す図である。
【
図9】3D-動的-PEGスフェロイドEVに比べて3D-静的-スフェロイドEVで高く発現するmiRNAおよびタンパク質を示す図である。
【
図10】2D培養WJ-MSC、3D培養WJ-MSC、2D-EVおよび3D-静的-スフェロイドEVでdonor variationおよび血管新生、神経再生関連miRNA発現量の差を確認した結果を示す図である。
【
図11】3D-静的-スフェロイドEVまたは2D-EVを血管内皮細胞(HUVECs)または神経幹細胞であるpNSCs(primitive neural stem cells)に処理した後、mRNAの発現変化を確認した図である。
【
図12】脳卒中のラットモデルを対象に3D-静的-スフェロイドEV処理濃度による梗塞部位の面積変化を示す図である。
【
図13】脳卒中のラットモデルを対象にラダー歩行試験を行い、3D-静的-スフェロイドEV処理濃度による神経学的行動回復能を測定した図である。
【
図14】CFSEで標識した3D-静的-スフェロイドEVが処理された細胞を共焦点顕微鏡で観察した図である。
【
図15】CFSEで標識した3D-静的-スフェロイドEVによりmiR-27a-3pが細胞に伝達されることを確認した図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を含む三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造方法を提供する。
【0014】
本発明において、前記細胞は、細胞外小胞の分離可能な細胞であれば、制限なく使用することができ、自然界生物のオブジェクトから分離した細胞であってもよい。また、前記細胞は、ヒトおよび非ヒト哺乳類を含む任意の類型の動物、植物に由来するものであってもよく、多様な種類の免疫細胞、腫瘍細胞、幹細胞であってもよく、好ましくは、前記幹細胞は、間葉系幹細胞、万能幹細胞、誘導万能幹細胞または胚幹細胞であってもよい。
【0015】
本発明において、前記三次元培養は、試験管内で立体配置の状態で培養されることを意味し、二次元培養とは異なり、三次元培養時、生体外(in vitro)であらゆる方向に成長できるようにし、生体内(in vivo)の細胞環境により類似した環境を作ることができる。
【0016】
本発明において、前記(a)段階の三次元培養は、本発明が属する技術分野に知られた全ての三次元細胞培養技術によって行うことができ、例えば、マイクロウェルアレイ培養、多孔性微粒子培養、hanging drop培養、low attachment plate培養、membraneベースcell-detachment培養、thermal lifting培養、遠心分離培養、semisolid medium培養などを用いた細胞培養であってもよい。好ましくは、前記三次元培養は、動的(dynamic)培養または静的(static)培養であってもよく、より好ましくは、静的(static)培養であってもよい。本発明において、(a)段階の三次元培養を静的(static)培養する場合、振とう培養に必要な装置を必要としないため、培養をさらに容易にすることができ、GMP(Good manufacturing practices、医薬品および医薬部外品の製造管理および品質管理の基準)製造所で大量培養を可能にすることができる。
【0017】
本発明において、前記(a)段階における三次元培養は、1~10日間培養するものであってもよく、好ましくは、2~4日間培養するものであってもよい。特に、本発明において、前記(a)段階における培養を2~4日間培養する場合、三次元スフェロイド型細胞凝集体内に存在する細胞の生存率が高いレベルで維持され、既存の三次元スフェロイド型細胞凝集体の製造過程に比べて培養時間が相対的に短く、迅速に三次元スフェロイド型細胞凝集体およびこれより由来する細胞外小胞を製造することができる。
【0018】
本発明において、前記(a)段階における三次元培養は、マイクロウェルに間葉系幹細胞を100~1000細胞/ウェルの密度に分注し、培養するものであってもよく、好ましくは、200~600細胞/ウェルの密度に分注し、培養するものであってもよい。
【0019】
本発明において、前記(b)段階の細胞外小胞を分離する段階は、物理的分離または化学的分離によるものであってもよい。前記物理的分離は、細胞または細胞凝集体を含む試料の押出しであってもよく、化学的分離は、細胞または細胞凝集体から細胞外小胞を分離することができる化学物質を処理するものであってもよい。例えば、本発明の分離する段階は、超音波分解、細胞溶解、均質化、冷凍-解凍、電気穿孔、化学物質処理、機械的分解および外部的に細胞に力を加えた物理的刺激の処理からなる群から選択された方法を用いて行うことができ、イオンまたは親和性クロマトグラフィー方法でイオンと特定バイオマーカーとの結合を通じて分離する物理化学的方法や、ポリマーおよび試薬を通じて細胞を破壊し、細胞外小胞のみ結合させて分離する、immunoaffinity EV captureまたはexosome purification reagent、ExoCAS-2試薬または方法であってもよく、好ましくは、タンジェンシャルフローろ過(Tangential Flow filtration、TFF)方法により分離するものであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0020】
本発明において、MicroRNAは、RNAの一種であって、「mir」を前につけて、後ろに「-」と数字を付して命名される。このとき、数字はしばしば命名された順番を表したりすることもあるが、例えば、mir-123は、mir-156よりも先に命名されたもので、より先に発見されたものと予想される。「mir-」は、pre-microRNAを示し、大文字が含まれた「miR」は、mature microRNAを意味する。1つまたは2つの配列を除き、ほぼ同一配列のmicroRNAは、小文字を加えて命名する。例えば、miR-121aとmiR-121bは、それぞれのprecursorであるmir-121aとmir-121bで生成され、配列も非常に類似する。Mature microRNAは同じであるが、ゲノム上の別の部位に位置するpre-microRNAは、さらに「-」と数字を付して命名する。一例として、pre-microRNAであるmir-121-1とmir-121-2は、同じmature microRNA(miR-121)になるが、ゲノム上の別の部位に位置する。種によってmicroRNAの命名は前方に表記する。例えば、hsa-miR-123は、ヒト(Homo sapiens)microRNA、oar-miR-123は、羊(Ovis aries)microRNAである。「v」は、viral(miRNA encoded by a viral genome)、「d」は、Drosophila microRNAを意味する。2つのmature microRNAが同一のpre-microRNAの互いに異なるarms(3’armまたは5’arm)に由来する場合、「-3p」または「-5p」を後方に追加して命名する。(以前は、上記のような区分を「s」(sense)と「as」(antisense)と表記した)。miR-142-3pは、3’armに由来するものであり、miR-142-5pは、5’armに由来するものである。MicroRNAの命名法は一般的に上記のような基準に基づくが、例外の場合もある。
【0021】
本発明において、前記細胞外小胞は、治療効能を示す多様な物質を公知の細胞外小胞と比較して高発現するものであってもよく、前記治療効能を示す多様な物質は、血管新生、神経新生、細胞保護、免疫調節、若返り、血管/BBB透過安定、抗癌効果または標的化(targeting)に効果を示す物質であってもよい。好ましくは、前記細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞に比べてmiR-146a、miR-27a、miR-132、miR-184、miR-210およびmiR-301bからなる群から選択された1種以上、および/またはインテグリン1/2、およびVEGF/R2(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor 2)からなる群から選択された1種以上を高発現するものであってもよく、二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞に比べてmiR-27a、miR-146a、miR-146bからなる群から選択された1種以上、インテグリン1/2、およびVEGF/R2(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor 2)からなる群から選択された1種以上を高発現するものであってもよい。より好ましくは、本発明の細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞に比べてmiR-146a、miR-27a、miR-132、miR-184、miR-210およびmiR-301b;および/またはインテグリン1/2、およびVEGF/R2を高発現するものであってもよく、二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞に比べてmiR-27a、miR-146aおよびmiR-146b;および/またはインテグリン1/2、およびVEGF/R2を高発現するものであってもよい。
【0022】
また、前記細胞外小胞は、細胞に処理時、細胞内に混入して内在化(internalization)するものであってもよく、細胞内に混入して内在化することがある。これにより臨床的に有意な物質が細胞に効果的に送達され、細胞内で高発現するものであってもよい。
【0023】
本発明において、「間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞」は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体から分離した細胞外小胞であれば、制限なく含むものであってもよく、好ましくは、韓国登録特許(出願番号10-2016-0053026、幹細胞に由来の細胞外小胞体の生産方法)に開示された細胞外小胞であってもよい。
【0024】
本発明における「二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞」は、幹細胞を通常の二次元培養方法に従って培養し、通常の細胞外小胞の分離方法によって分離された細胞外小胞であれば、制限なく含むことができる。本発明の実施例では、前記通常の二次元培養方法をセルスタック(Cell stack)で3日間培養した幹細胞をPBS洗浄し、無血清培地に交換し、さらに2日間培養する方法で実施して評価した。
【0025】
本発明において、前記三次元スフェロイド型細胞凝集体は、平均直径が65~133μmであってもよく、好ましくは、99.20±11.47μm、より好ましくは、154個の前記三次元スフェロイド型細胞凝集体のサイズ分布を測定した結果、平均直径が99.20μm、変動係数(CV)が11.6%であってもよい。本発明の(次元)スフェロイド型細胞凝集体は、サイズ分布の尖度が「間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体」に比べて高いものであってもよい。したがって、前記三次元スフェロイド型細胞凝集体の大きさは、「間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体」と比較して大きさが小さく、相対的に均一なサイズ分布を有するものであってもよい。
【0026】
本発明において、前記マイクロウェルは、TMSPMA(3-(トリメトキシシリル)プロピルメタクリレート(3-(Trimetoxysily)propylmethacrylate))、HEA(ヒドロキシエチル アクリレート(Hydroxyethyl acrylate))、GMA(グリシジル メタクリレート(Glycidyl methacrylate))、EGDMA(ジエチレングリコール ジメタクリレート(diethyleneglycol dimethacrylate))、THFA(テトラヒドロフルフリル アクリレート(Tetrahydrofurfuryl acrylate))、HMAA(ヒドロキシメチル アクリルアミド(Hydroxymethul acrylamide))、PEA(フェニル エポキシアクリレート(Phenyl epoxyacrylate))、HOFHA(6-ヒドロキシ-2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロ(6-Hydroxy-2、2,3,3,4,4,5,5-octafluoro))、EOPT(ポリエトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート(Polyethoxylated(4)pentaerythritoltetraacrylate))、HPA(ヒドロキシプロピル アクリレート(Hydroxypropyl acrylate))、BMA(ブチルメタクリレート(Buthylmethacrlate))、PETIA(ペンタエリスリトール トリアクリレート(Pentaerythritol triacrylate))、HDDA(ヘキサン ジオール ジアクリレート(Hexan diol diacrylate)、EGPEA(エチレングリコール フェニルエーテルアクリレート(Ethyleneglycol phenyletheracrylate))、BM(ベンジルメタクリレート(Benzylmethacrylate))、HPPA(ヒドロキシフェノキシプロピル アクリレート(Hydroxyphenoxypropyl acrylate))、BHPEA(2-(4-ベンゾイル-3-ヒドロキシフェノキシ)エチルアクリレート(2-(4-Benzoyl-3-hydroxyphenoxy)ethylacrylate))、HEMA(ヒドロキシエチル メタクリレート(Hydroxyethyl methacrylate))、HPMA(N-(2-ヒドロキシプロピル)メタクリルアミド(N-(2-Hydroxypropyl)methacrylamide))およびMPC(2-メタクリロイルオキシエチル ホスホリルコリン ポリマー(2-Methacryloyloxyethyl Phosphorylcholine Polymer))からなる群から選択されたいずれかでコーティングされたものであってもよく、好ましくは、MPC(2-メタクリロイルオキシエチル ホスホリルコリン ポリマー(2-Methacryloyloxyethyl Phosphorylcholine Polymer))でコーティングされたものであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0027】
本発明の前記マイクロウェルは、直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmである構造を有するものであってもよく、前記構造により培養される間葉系幹細胞が培養時間経過後にも高い水準で生存率を維持するものであってもよい。
【0028】
本発明の前記「三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)製造方法」により細胞外小胞を製造すると、静的培養による製造上の利点に加えて、治療効能物質が向上した細胞外小胞を迅速かつ効率的に大量生産することができる。特に、本発明の細胞外小胞の製造方法は、GMP適用に適しているという特徴がある。
【0029】
また、本発明は、前記製造方法により製造された細胞外小胞を提供する。
【0030】
本発明において、前記細胞外小胞は、治療効能物質を公知の細胞外小胞と比較して高発現するものであってもよい。好ましくは、前記細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞に比べて、miR-146a、miR-27a、miR-132、miR-184、miR-210およびmiR-301bからなる群から選択された1種以上、および/またはインテグリン1/2、およびVEGF/R2(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor 2)からなる群から選択された1種以上を高発現するものであってもよく、二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞に比べて、miR-27a、miR-146a、miR-146bからなる群から選択された1種以上、インテグリン1/2、およびVEGF/R2(Vascular Endothelial Growth Factor Receptor 2)からなる群から選択された1種以上を高発現するものであってもよい。より好ましくは、本発明の細胞外小胞は、間葉系幹細胞を三次元動的培養したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞に比べて、miR-146a、miR-27a、miR-132、miR-184、miR-210およびmiR-301b;および/またはインテグリン1/2、およびVEGF/R2を高発現するものであってもよく、二次元培養した間葉系幹細胞に由来の細胞外小胞に比べて、miR-27a、miR-146aおよびmiR-146b;および/またはインテグリン1/2、およびVEGF/R2を高発現するものであってもよい。
【0031】
本発明において、前記細胞外小胞は、平均粒子径が172.5~192.5nmであり、モード径が96.1~116.1nmのものであってもよい。
【0032】
また、本発明の製造方法により製造される三次元スフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞は、特に、ドナーバリエーション(donor variation)が減少したことを特徴とすることができる。
【0033】
本発明において、前記細胞外小胞は、脳梗塞が発生した個体に処理した際、脳梗塞部位を減少させるものであってもよく、神経学的行動回復を誘導するものであってもよい。好ましくは、前記細胞外小胞は、既存の公知の方法により製造された細胞外小胞と比較して、少ない量で前記脳梗塞部位の減少効果および神経学的行動回復の誘導を示すものであってもよい。
【0034】
また、本発明は、直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに間葉系幹細胞を三次元培養し、製造した三次元スフェロイド型細胞凝集体を含む細胞外小胞(extracellular vesicle)の製造用組成物を提供する。
【0035】
本発明において、前記組成物は、細胞外小胞を製造するのに必要な成分であれば、制限なく含むもことができる。
【0036】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を含む細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)のドナーバリエーション(donor variation)を減少させる方法を提供する。
【0037】
また、本発明は、(a)直径が200~800μmであり、深さが100~1000μmであるマイクロウェルに幹細胞を三次元(3D、3dimension)培養し、三次元スフェロイド型細胞凝集体を製造する段階;および(b)前記三次元スフェロイド型細胞凝集体から細胞外小胞を分離する段階;を含むドナーバリエーション(donor variation)が減少した細胞凝集体に由来の細胞外小胞(extracellular vesicle)を製造する方法を提供する。
【0038】
本発明の方法によれば、取得される細胞凝集体に由来の細胞外小胞間ドナーによるmiRNAの組成の差異を減少させ、均一な特性を有する細胞外小胞を製造することができる。より具体的には、本発明において、ドナーバリエーションの減少とは、ドナーによって生産されるmiRNAの組成が異に示される差を減少させ、ドナーと無関係に一貫性のあるmiRNAプロファイルを示すようにするものであり、より好ましくは、2D-EVと比較し、血管新生効果または神経再生効果を示すことができるmiRNAであるmiR-27a-3p、miR-146a-5p、miR-210、miR-132をより多く均一に含んだり、血管新生や神経再生に関連するmiRNAであるmiR-199a、miR-125b、miR-26a、let-7、miR-125a、miR-181b、miR-92a等を各ドナーの由来とは無関係に均一な程度に発現するものであってもよい。
【0039】
重複する内容は、本明細書の複雑性を考慮して省略するものとし、本明細書において特に断りのない用語は、本発明が属する技術分野で通常に使用される意味を有するものである。
【0040】
以下、本発明を実施例により詳しく説明する。ただし、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が以下の実施例により限定されるものではない。
【発明を実施するための形態】
【0041】
ウェスタンブロット
細胞および細胞外小胞を放射線免疫沈降アッセイ(radioimmunoprecipitation assay、RIPA)緩衝剤(25mM Tris-HCl、pH7.6、150mMのNaCl、0.5%のtriton X-100、1%のNa-deoxycholate、0.1%のsodium dodecyl sulfate(SDS)およびタンパク質分解酵素阻害剤)に溶解させた。計20μgのタンパク質をSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により分離し、ニトロセルロース膜(Bio-Rad、Hercules、CA、USA)に移した。その次に、ニトロセルロース膜をヒストンH2A.Z、ヒストンH3、ラミンA/C、フロチリン-1(1:1,000、Cell signaling technology、ビバリー、MA、USA)またはカルレティキュリン(1:1,000、ThermoFisher Scientific、Inc.、Rockford、IL、USA)に対する一次抗体と共に4℃で一晩培養した。Tris-緩衝生理食塩水-Tween 20(Tris-buffered saline-Tween 20)で洗浄した後、ニトロセルロース膜を西洋わさびペルオキシダーゼ(horseradish peroxidase、HRP)-結合二次抗体(1:1,000、抗-ウサギ、Cell Signaling Technology、ビバリー、MA、USA)と共に2時間培養した。タンパク質をThermoFisher Scientific、Inc.(Waltham、MA、USA)の化学発光基質を用いて検出した。標識タンパク質をX-線フィルム(Agfa、Mortsel、Belgium)を通じて視覚化した。
【0042】
ELISA
ELISAは、個々のメーカーのマニュアルに従って商用キットで行った。次のようなELISAキットを使用した:ゲンタマイシン(5111GEN、EuroProxima、Arnhem、Nederland)、ウシアルブミン(8100、Alpha Diagnostic、San Antonio、TX、USA)、Hsp70(Abcam、Cambridge、UK)、CD63、CD9およびCD81(System Biosciences、Palo Alto、CA、USA)、ヒストンH2A.Z.(Mybiosource、San Diego、CA、USA)、カルレティキュリン(Mybiosource)およびシトクロムC(ThermoFisher Scientific、Inc.)。全てのキットには、標準タンパク質が含まれている;したがって、タンパク質および細胞外小胞の量は、各キットの標準曲線に基づいて決定される。
【0043】
qPCR
EVでTrizolTMを用いてメーカーの指針に従ってRNAを抽出し、ナノドロップ(nanodrop)でRNAを定量した。RNAは、逆転写反応 (reverse transcription;RT)過程を経て、cDNAで作り、それぞれのmiRNAおよびmRNAに適したTaqman probeを用いてメーカーのマニュアルに従ってReal Time PCRを進めた。
【0044】
EVラベリングおよび細胞による吸収
精製されたEVをメーカーの指針に従って、CFSE(5-(and-6)-Carboxyfluorescein Diacetate、Succinimidyl Ester)ラベリング染料(c-1157、Invitrogen)で染色した。1時間100.000gの条件で超遠心分離し、過剰な染料を除去した。標識されたEV(0.4μg/ml)をヒトNSC細胞株(ReNcells)に処理し、24時間培養した。処理後、細胞をPBSで2回洗浄し、通常の免疫細胞化学プロトコルを用いて染色した。細胞をマウス抗-SMA(1:100、Sigma aldrich)抗体と共に4℃で一晩培養した。その後、細胞をPBSで洗浄し、2次抗体であるDyLight標識された抗マウスIgG(1:200、594nm、Abcam)抗体と共に培養した。1.5μg/mL4’-6’diamidino-2-phenylindole(DAPI)(Vector Laboratories)と共にVectashieldTMを用いて核染色した後、共焦点顕微鏡(LSM 700、Carl Zeiss、Germany)を用いて細胞をイメージ化した。
【0045】
実施例1.間葉系幹細胞の三次元培養を通じた細胞外小胞の分離
1.1 間葉系幹細胞の準備
5継代培養(passage 5)段階のヒト臍帯由来の間葉系幹細胞(以下、WJ-MSC、Samsung medical center、ソウル、韓国)を分譲を受け、37℃、5%CO2培養器で培養した。成長培地は、10%ウシ胎児血清(FBS)(GIBCO、NY、USA)および50 μg/mLゲンタマイシン(GIBCO、NY、USA)を含有するα-modified eagle’s medium(α-MEM、GIBCO、NY、USA)を使用した。6継代培養(passage 6)段階のWJ-MSCを3Dスフェロイド型細胞凝集体の作製に使用した。
【0046】
1.2 3Dスフェロイド型細胞凝集体培養液の作製
前記実施例1.1にて作製したWJ-MSCをPBSに洗浄し、トリプシン (TrypLETM Express、GIBCO、NY、USA)処理し、CO2培養器で5分間反応させた。その後、新たな無血清培地を入れ、トリプシンを中和させ、細胞を回収し、遠心分離機を用いて細胞ペレットを取得した。その次に、新しい無血清培地を入れ、細胞懸濁液を製造し、細胞を計数した。細胞計数後、MPC(2-Methacryloyloxyethyl Phosphorylcholine Polymer)でコーティングされた直径と深さがそれぞれ500μm×200μmであるマイクロウェルを含むマイクロアレイに60mlの細胞懸濁液を400cell/wellの密度になるように、均一に分注し、静的な状態を維持し、自発的スフェロイド型細胞凝集体の形成を誘導し、計4日間37℃のCO2培養器で培養し、3Dスフェロイド型細胞凝集体培養液(以下、3D-静的-スフェロイド培養液)を製造した。
【0047】
1.3 3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の分離
実施例1.2にて製造した3D-静的-スフェロイド培養液を回収し、細胞・残屑を除去するため、2,500gで10分間遠心分離し、0.22μmシリンジフィルターで濾過した。その後、3D-静的-スフェロイド培養液をタンジェンシャルフローろ過(Tangential Flow filtration、TFF)システムを用いて300kDaのhollow fiber membrane(Pall、NY、USA)を経て、タンパク質を除去し、細胞外小胞を1次分離し、生理食塩水でもう一度精製し、純度の高い本発明の3D-静的-スフェロイド由来の細胞外小胞(以下、3D-静的-スフェロイドEV)を取得した。
【0048】
前記実施例1.1~1.3の過程を図式化して
図1に示した。
【0049】
実施例2.3Dスフェロイド型細胞凝集体の特性の分析
前記実施例1.2にて製造した3D-静的-スフェロイド培養液内に存在する3Dスフェロイド型細胞凝集体(以下、3D-静的-スフェロイド)の特性を分析した。実験群として、実施例1.2にて製造した3D-静的-スフェロイド培養液を用いており、比較群として、登録特許(出願番号10-2016-0053026、幹細胞由来の細胞外小胞体の生産方法)に開示された動的3D細胞培養方法に従って、5日間間葉系幹細胞を培養し、製造した3D間葉系幹細胞スフェロイド型細胞凝集体(以下、3D-動的-PEGスフェロイド)培養液を使用した。光学顕微鏡で、それぞれの培養液が入ったマイクロウェルを観察し、これを
図2のA、Bに示し、培養初期と比較して培養後、スフェロイド型細胞凝集体の面積変化を
図2のCに示した。
【0050】
図2に示すように、実験群である3D-静的-スフェロイドと比較群である3D-動的-PEGスフェロイドの面積を比較した結果、3D-静的-スフェロイドは、培養初期のスフェロイドに対して70%程度の面積を維持した。しかし、3D-動的-PEGスフェロイドでは、細胞残屑(cell debris)が発生し、培養初期のスフェロイドに対して50%程度の面積に減少し、3D-静的-スフェロイドと3D-動的-PEGスフェロイドの面積減少率の差は、p≦0.5として統計的に有意な結果がみられた(p=0.019753)。
【0051】
実施例3.3Dスフェロイド型細胞凝集体の大きさの分析
実施例1.2にて製造した3D-静的-スフェロイドと実施例3にて製造した3D-動的-PEGスフェロイドのサイズ分布(size distribution)を測定し、測定されたサイズ分布のデータを土台に、変動係数、歪度(skewness)、尖度(kurtosis)を分析した。
【0052】
歪度は、中央値の推移から分布が傾いた方向と程度を知ることができるパラメータであり、1に近いほど右側に長く裾をひく分布を示し、-1に近いほど左側に長く裾を引いた分布を示す。正規分布の場合の歪度は、0である。
【0053】
尖度は、資料分布の尖り具合を示すパラメータであって、値が正の数の場合、中央部分に相対的に多数のデータポイントが集積していることを意味し、負の数の場合、中央部分に相対的に少数のデータポイントが集積していることを意味する。正規分布の場合、尖度は0である。
【0054】
測定したサイズ分布データを
図3に示し、これを分析した結果を表1に示した。
【0055】
【0056】
図3および表1に示すように、3D-静的-スフェロイドの平均の大きさが99.20um、変動係数(CV)が11.6%であることが確認された。これとは対照的に、3D-動的-PEGスフェロイドは、平均の大きさが148.66um、変動係数(CV)が14.1%であることを確認した。測定した変動係数を比較検定するため、Feltz and Miller’s(1996)asymptotic testを実施した結果、p value値が0.01765604として算出され、Krishnamoorthy and Lee’s(2014)modified signed-likelihood ratio testを実施した結果、p value値が0.01853969として算出された。したがって、二つのテスト全部において3D-静的-スフェロイドと3D-動的-PEGスフェロイドのサイズ分布が統計的に有意な程度に相異する様相を示すことを確認した。3D-静的-スフェロイドと3D-動的-PEGスフェロイドのサイズ分布を比較した結果、3D-静的-スフェロイドのサイズ分布の尖度値が相対的に大きいことが確認され、本発明の3D-静的-スフェロイドのサイズ分布は、中央値に多く集中した様相を示すことが確認された。このような結果から、本発明の3D-静的-スフェロイドの製造方法により3Dスフェロイドを製造すると、大きさが相対的に一定した3Dスフェロイドの製造が可能であることが確認された。
【0057】
実施例4.3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の形態の分析
実施例1.3にて分離した3D-静的-スフェロイドEVの形態を観察するため、電子顕微鏡(transmission electron microscopy、TEM)を用いて撮影した。具体的に、3D-静的-スフェロイドEVを0.1Mホスフェート緩衝液(PB)に溶解された1%のOsO
4で2時間固定させた。EMグリッドを細胞外小胞の液滴上にフォルムバール(formvar)側面を下に向けて1分間吸着させた。その後、濾紙でブロッティングし、15秒間2%のウラニルアセテートと反応させた。過量のウラニルアセテートを除去し、EMグリッドをTEM(JEM-1011、JEOL、Japan)を用いて観察し、観察画像を
図4に示した。
【0058】
図4に示すように、3D-静的-スフェロイドEVは、典型的な細胞外小胞の形態である丸い形状であることが確認された。
【0059】
実施例5.3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の濃度および大きさの分析
実施例1.3にて分離した3D-静的-スフェロイドEVの濃度およびサイズ分布を確認するため、NanoSight NS300(Malvern、Worcestershire、UK)を用いたNTA(nanoparticle tracking analysis)を実施した。最適な分析のため、3D-静的-スフェロイドEVを小胞(vesicle)のないホスフェート緩衝液(PBS)に予め希釈した。平均の大きさおよび濃度(particle/mL)は、3個の記録を統合して計算しており、結果を
図5に示した。
【0060】
図5に示すように、3D-静的-スフェロイドEVの平均粒子直径は、182.5nmであり、モード径は、106.1nmであることが確認された。
【0061】
実施例6.3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の発現マーカー分析
実施例1.3にて分離した3D-静的-スフェロイドEVの発現マーカーを確認するための実験を行った。対照群として細胞ライセート(cell lysate)と分泌物(secretome)を使用した。細胞ライセートは、3D-静的-スフェロイドをPBS洗浄し、トリプシンを処理した後、細胞を回収し、回収された細胞を遠心分離機を用いて細胞ペレットを取得する方法により準備した。分泌物は、前記細胞ペレットを取得した後、上澄み液である培養培地で実施例1.3の工程を通じてEVを分離し、残った培養分泌物を得る方式により用意した。マーカー分析は、ELISAを用いて細胞外小胞特異的な陽性マーカーCD9、CD63、CD81およびHSP70を定量し、特定汚染タンパク質マーカーであるカルレティキュリン、ヒストンH2A.Z、シトクロムC、アルブミン、抗生剤を定量した。また、ウェスタンブロットを用いて細胞外小胞の特定汚染タンパク質マーカーであるヒストンH2A.Z、ヒストンH3、ラミンA/C、カルレティキュリンを定量し、細胞外小胞陽性マーカーであるフロチリン-1を定量した。ELISA分析の結果およびウェスタンブロットの結果を
図6に示した。
【0062】
図6に示すように、3D-静的-スフェロイドEVは、細胞外小胞特異的陽性マーカーであるCD9、CD63、CD81およびHSP70が全部発現され、細胞ライセートおよび分泌物(secretome)から高く発現される汚染タンパク質マーカーであるカルレティキュリン、ヒストンH2A.Z、ヒストンH3、シトクロムC、アルブミン(BSA、bovine serum albumin)、ラミンA/Cおよび抗生剤がほぼ発現されないことが確認された。特に、細胞ライセートから非常に低く発現される細胞外小胞陽性マーカーフロチリン-1が3D-静的-スフェロイドEVで相対的に高く発現することが確認された。
【0063】
実施例7.3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の生産量の分析
実施例1の製造方法により製造した細胞外小胞である3D-静的-スフェロイドEV、実施例2の3D-動的-PEGスフェロイドから分離した細胞外小胞(3D-動的-PEGスフェロイドEV)および通常の2D培養方法で培養した幹細胞から分離した細胞外小胞(2D-EV)の生産量を比較するための実験を実施した。2D-EVは、次のような工程により用意した。セルスタック(Cell stack)において3日間培養した幹細胞をPBS洗浄し、無血清培地に交換し、さらに2日間培養する。培養培地を回収し、遠心分離および0.2μmフィルターを用いて細胞残屑を連続して除去する。その後、培養培地をTFFシステムを用いてhollow fiber membraneを経て、タンパク質を除去し、EVを1次分離し、生理食塩水でもう一度精製し、純度の高い2D-EVを取得した。用意した3D-静的-スフェロイドEV、3D-動的-PEGスフェロイドEVおよび2D-EVに由来の細胞当たりの生産量を比較し、これを表2および
図7に示した。
【0064】
【0065】
実施例8.3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞の発現マイクロRNA(miRNA)分析
8.1 3D-静的-スフェロイドEVで発現が増加したmiRNAの確認
実施例1の製造方法により製造した細胞外小胞である3D-静的-スフェロイドEV、実施例2の3D-動的-PEGスフェロイドから分離した細胞外小胞である3D-動的-PEGスフェロイドEVおよび実施例7にて製造した2D-EVの特性の差異を確認するため、miRNAsの発現およびタンパク質の発現をqPCRを通じて測定し、2D-EVと比較して3D-静的-スフェロイドEVで高く発現するmiRNAおよびタンパク質を
図8に示し、3D-動的-PEGスフェロイドEVと比較して3D-静的-スフェロイドEVで高く発現するmiRNAおよびタンパク質を
図9に示した。
【0066】
図8に示すように、2D-EVと比較して、3D-静的-スフェロイドEVは、血管新生/神経新生(angio/neurogenesis)および免疫調節に効能を示すmiRNAであるmiR-27a、miR-146b、miR-146aを高く発現し、血管新生/神経新生(angio/neurogenesis)に効能を示すタンパク質であるインテグリン1/2およびVEGF/R2(Vascular endothelial growth factor/R2)を高く発現することが確認された。
【0067】
図9に示すように、3D-動的-PEGスフェロイドEVと比較し、3D-静的-スフェロイドEVは、血管新生/神経新生(angio/neurogenesis)および免疫調節に効能を示すmiRNAであるmiR-146a、血管新生/神経新生(angio/neurogenesis)に効能を示すmiRNAであるmiR-27a、miR-132、miR-184およびmiR-210および抗腫瘍効能を示すmiR-301bを高く発現し、血管新生/神経新生(angio/neurogenesis)に効能を示すタンパク質であるインテグリン1/2およびVEGF/R2を高く発現することが確認された。
【0068】
このような結果から実施例1の製造方法により製造した細胞外小胞である3D-静的-スフェロイドEVは、2D-EVまたは3D-動的-PEGスフェロイドEVと比較し、miRNAとタンパク質発現が相異する新たな細胞外小胞であり、特に、血管新生/神経新生(angio/neurogenesis)、免疫調節、若返り(rejuvenation)または抗腫瘍に関連したmiRNAを高く発現し、臨床的に有用に使用しうる細胞外小胞であることが確認された。
【0069】
8.2 ドナーによるmiRNA発現差の分析
幹細胞治療剤は、ドナーによって成分が異に示されるドナーバリエーション(donor variation)の問題があるとして知られている。本発明の3D-静的-スフェロイドEVが、ドナーバリエーション(donor variation)の問題なくより一貫性のあるmiRNAプロファイルを示すかを確認するための実験を行った。各ドナーの試料は、Samsung medical center(ソウル、韓国)から分譲を受けて使用した。実施例1.1の2D培養されたWJ-MSCと3D培養されたWJ-MSC、実施例1の製造方法により製造した細胞外小胞である3D-静的-スフェロイドEVのドナー別にmiRNAプロファイルを比較した。miRNA は、Small RNA sequencing方法によりmiRNAプロファイリングし、その結果を
図10に示した。
【0070】
図10に示すように、2D培養されたWJ-MSC、2D-EVでは、ドナーによって生産されるmiRNAの組成に大きな差があるのに対し、3D培養WJ-MSC、3D-静的-スフェロイドEVでは、ドナーによる差が減ることを確認した。特に、3D-静的-スフェロイドEVは、ドナーによる差がなく、一貫性のあるmiRNAプロファイルを示すと同時に特に、2D-EVと比較し、血管新生効果または神経再生効果を示すことができるmiRNAであるmiR-27a-3p(1.5倍)、miR-146a-5p(2.3倍)、miR-210(2.6倍)、miR-132(2.6倍)がより多く均一に含まれていることが確認された。また、その他の血管新生や神経再生に関連したmiRNAであるmiR-199a、miR-125b、miR-26a、let-7、miR-125a、miR-181b、miR-92aも各ドナー間で均一な発現程度を示すことが確認された。
【0071】
このような結果は、3D-静的-スフェロイドEVがドナーによる治療有効成分の差を減らし、より優れた治療効果を示すことができることを示す結果である。
【0072】
実施例9.細胞に3Dスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞処理時、発現mRNAの分析
実施例1の製造方法により製造した細胞外小胞である3D-静的-スフェロイドEVと通常の2D培養方法で培養した幹細胞から分離した細胞外小胞である2D-EVを血管内皮細胞(HUVECs)または神経幹細胞であるpNSCs(primitive neural stem cells)に処理した後、mRNAの発現変化をqPCRを通じて確認し、qPCR結果を
図11に示した。
【0073】
図11に示すように、2D-EVを処理した細胞に比べて3D-静的-スフェロイドEVを処理した血管内皮細胞(HUVECs)は、VEGF(Vascular endothelial growth factor)、Hif-1a(Hypoxia-inducible factor 1-alpha)、FGF(Fibroblast growth factor)の発現が増加し、3D-静的-スフェロイドEVを処理したpNSCsは、VEGF、BDNF(Brain-derived neurotrophic factor)、FGF、NGF(Nerve growth factor)、HGF(Hepatocyte growth factor)の発現が増加したことが確認された。特に、対照群と比較し、2D-EVを処理したpNSCsの場合、NGFおよびHGFの発現が減少したが、3D-静的-スフェロイドEVを処理したpNSCsは、NGFおよびHGFの発現が増加する効果を示したところ、3D-静的-スフェロイドEVと2D-EVは、正常においても異なる効果を示すことが確認された。
【0074】
VEGF、BDNF、NGF、HGFおよびHif-1aは、血管新生/神経新生関連タンパク質であり、FGFは、細胞の増殖、生存、分化に関連した生物学的機能を調節するタンパク質に該当する因子であって、VEGF、BDNF、NGF、HGF、Hif-1aおよびFGFの発現増加効果が相対的に高い3D-静的-スフェロイドEVが臨床的に適用するに優れた細胞外小胞であることを確認した。
【0075】
実施例10.脳卒中ラットモデルに対する3D-静的-スフェロイドEVの効果
10.1 脳卒中ラットモデルの製造
脳卒中ラットモデルを製造するために、管腔内縫合法(intraluminal vascular occlusion method)を使って、一過性中大脳動脈閉塞(transient middle cerebral artery occlusion、tMCAo)を誘導した。具体的に、雄のスプラグ・ドーリー(Sprague-Dawley)ラッド(8週齢、270~300g)を使用しており、1.5%イソフルラン、70%N2Oおよび30%O2で麻酔させ、手術中、加熱パッドを用いて37.0~37.5℃に体温を維持した。丸いチップ付き4-0外科用単一フィラメントナイロン縫合糸を、左総頚動脈(left common carotid artery)から、中大脳動脈(middle cerebral artery)の起始部(origin)が閉塞するまで、内頚動脈(internal carotid artery)内腔へ前進させた。チップが総頚動脈の内腔が閉塞するまで縫合糸を引っ張り(withdraw)、中大脳動脈閉塞(tMCAo)し、90分後に再灌流を行った。頭蓋内動脈(intracranial artery)の破裂により引き起こされた出血性形質転換(hemorrhagic transformation)またはくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage)が発生したラットおよび中大脳動脈閉塞(tMCAo)後、観察可能な神経学的欠陥がみられないラッドは分析から除外した。
【0076】
10.2 脳卒中ラットモデルに対する3D-静的-スフェロイドEVの脳梗塞部位の減少効果の検証
実施例10.1にて製造した脳卒中ラットモデルを対象に、3D-静的-スフェロイドEVの処理濃度を3×10
8、30×10
8EVs/ratとそれぞれ異に処理し、処理4週間後、MRIを撮影し、梗塞(infarct)が起こった部位の変化を測定した。対照群としては、PBS処理群を用いており、測定した梗塞部位の変化を
図12に示した。
【0077】
図12に示すように、対照群と比較し、3×10
8EVs/rat以上の濃度で処理した全ての実験群において、有意に梗塞部が減少したことが確認された。
【0078】
このような結果は、既存に知られた3D方式で製造したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞は、30×108EVs/ratの濃度以上で処理した場合に有意な程度の脳梗塞部位の減少効果を示すことを考慮すると、3D-静的-スフェロイドEVは、少ない量でも効果的に脳梗塞部位を減少させる効果を示すものであることが確認された。
【0079】
10.3 脳卒中ラットモデルに対する3D-静的-スフェロイドEVの神経学的行動回復能の検証
実施例10.1にて製造した脳卒中ラットモデルを対象に、3D-静的-スフェロイドEVの処理濃度を3×108、30×108EVs/ratとそれぞれ異にして処理し、ラダー歩行試験(ladder walking test)を行い、3D-静的-スフェロイドEVの神経学的行動回復能を検証した。対照群としてPBS処理群を用いており、比較群として3×108cell/rat濃度のヒト臍帯由来の間葉系幹細胞を使用した。
【0080】
具体的な、ラダー歩行試験方法は、次の通りである。中大脳動脈閉塞(tMCAo)前と中大脳動脈閉塞後、4、7、14および28日目に実験条件を知らない一人の観察者によりラダー歩行試験を行った。実験のためのはしご装置は、動物が横切って歩く金属の水平はしごと透明な側壁からなる。足を踏み外す回数(フットフォールト)と総歩行回数を測定し、フットフォールトの割合(% of foot fault)を算定し、算定したフットフォールトの割合を
図13に示した。
【0081】
図13に示すように、中大脳動脈閉塞4日後に測定したラダー歩行試験の結果、3×10
8、30×10
8EVs/rat濃度の3D-静的-スフェロイドEV処理群でのみ有意にフットフォールトの割合が対照群に比べて減少したことを確認し、特に、30×10
8EVs/rat濃度の3D-静的-スフェロイドEV処理群は、全ての区間でフットフォールトの割合が減少したことが確認された。
【0082】
このような結果から間葉系幹細胞と比較し、3D-静的-スフェロイドEVが神経学的行動回復を速やかに誘導することが確認された。このような結果は、既存に知られた3D方式で製造したスフェロイド型細胞凝集体に由来の細胞外小胞は、30×108EVs/ratの濃度以上で処理した場合に有意な程度の神経学的行動回復効果が示されるという事実と比較し、本発明の3D-静的-スフェロイドEVは、少ない量でも効果的に神経学的行動回復を誘導することを示す結果である。
【0083】
実施例11.3D-静的-スフェロイドEVの細胞混入能およびmiRNA伝達能の評価
11.1 3D-静的-スフェロイドEVの細胞混入能の評価
3D-静的-スフェロイドEVの細胞混入能を評価するため、CFSEで標識した3D-静的-スフェロイドEVをヒトNSC細胞株(ReNcells)に処理し、24時間培養し、共焦点顕微鏡(LSM700、Carl Zeiss、Germany)でこれを確認し、これを
図14に示した。
図14に示すように、3D-静的-スフェロイドEVを細胞に処理すると、細胞に混入して内在化(internalization)されることが確認された。
【0084】
11.2 3D-静的-スフェロイドEV処理によるmiRNA発現の評価
実施例11.1にてCFSEで標識した3D-静的-スフェロイドEVが処理されたヒトNSC細胞株(ReNcells)において、miR-27a-3pの発現をRT-qPCRを用いて測定した。対照群として標識した3D-静的-スフェロイドEVが処理されないヒトNSC細胞株(ReNcells)を用いており、結果を
図15に示した。
【0085】
図15に示すように、対照群に比べて3D-静的-スフェロイドEVを処理した細胞において有意にmiR-27a-3pの発現が増加したことが確認された。
【0086】
これを通じて、3D-静的-スフェロイドEVを細胞に処理すると、miR-27a-3pのような3D-静的-スフェロイドEVで高発現する臨床的に有意に物質が細胞に効果的に伝達されることを確認した。
【0087】
以上、本発明内容の特定の部分を詳細に説明したところ、当業界における通常の知識を有する者にとって、このような具体的な技術は単に好ましい実施形態に過ぎず、これにより本発明の範囲が制限されるものではないことが明らかである。したがって、本発明の実質的な範囲は、添付の特許請求の範囲とそれらの等価物によって定義されると言われる。