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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】生産管理システム
(51)【国際特許分類】
   B29C 45/76 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B29C45/76
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2024018278
(22)【出願日】2024-02-09
【審査請求日】2024-02-09
(73)【特許権者】
【識別番号】509337517
【氏名又は名称】株式会社コジマプラスチックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仲田 義敏
(72)【発明者】
【氏名】今村 大輔
(72)【発明者】
【氏名】村田 直輝
(72)【発明者】
【氏名】志田 敬介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 友彰
【審査官】岸 智章
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-048183(JP,A)
【文献】特開2002-324206(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品を生産する生産装置と、
前記生産装置の生産時の種々のデータを収集する収集部と、
前記生産装置により生産された前記製品を計測する計測部と、
前記計測部による計測値に基づいて、前記製品の良否判定を行う判定部と、
良品判定された前記製品の生産時におけるデータ及び前記計測値を良品データセットとして抽出し、不良品判定された前記製品の生産時におけるデータ及び前記計測値を不良品データセットとして抽出する、分類部と、
前記計測値を目的変数として前記良品データセットに対して回帰木を作成して、相対的に重要度の高い説明変数を抽出する良品回帰木処理と、前記計測値を目的変数として前記不良品データセットに対して回帰木を作成して、相対的に重要度の高い説明変数を抽出する不良品回帰木処理と、を実行する回帰木処理部と、
前記良品回帰木処理及び前記不良品回帰木処理によって抽出された前記説明変数のうち、前記生産装置の制御設定値の増減に相関のある前記説明変数を管理パラメータとして抽出する、パラメータ判別部と、
前記管理パラメータを表示する表示部と、
を備える、生産管理システム。
【請求項2】
請求項1に記載の生産管理システムであって、
前記良品回帰木処理及び前記不良品回帰木処理によって抽出された前記説明変数が複数種類に亘る場合、前記パラメータ判別部は、相対的に重要度の高い前記説明変数と前記生産装置の制御設定値との相関関係とは逆の相関関係を有する、相対的に重要度の低い前記説明変数を、前記管理パラメータから除外する、
生産管理システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の生産管理システムであって、
前記生産装置は射出成形装置であって、
前記計測部は、成形品のカケ深さを計測し、
前記判定部は、前記カケ深さが第一閾値以上である場合に、前記成形品を不良品と判定し、
前記分類部は、前記カケ深さが、前記第一閾値よりも小さい第二閾値未満であるときの、前記射出成形装置の種々のデータと、前記カケ深さを、微小データセットとして抽出し、
前記回帰木処理部は、前記カケ深さを目的変数として前記微小データセットに対して回帰木を作成して、相対的に重要度の高い説明変数を抽出する、微小回帰木処理を実行し、
前記パラメータ判別部は、前記微小回帰木処理によって抽出された前記説明変数のうち、前記射出成形装置の制御設定値の増減に相関のある前記説明変数を前記管理パラメータとして抽出する、
生産管理システム。
【請求項4】
請求項3に記載の生産管理システムであって、
前記射出成形装置によるショット数が更新閾値を超過したときに、前記分類部、前記回帰木処理部、及び前記パラメータ判別部に対して更新指令を出力する更新部を備える、
生産管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、製造現場における生産管理を行うシステムを開示する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1では、製造装置を制御する制御装置が開示される。この制御装置は、成形条件算出部及び取得部を備える。成形条件算出部は、製造装置を制御するために製造装置に入力される入力対象変数を導出する。取得部は、入力対象変数以外の変数である非入力対象変数を取得する。非入力対象変数には、製造対象物の製造時の生産環境に関する値(外乱値等)及び製造装置の製造条件の実測値が含まれる。成形条件算出部は、非入力対象変数を参照して、入力対象変数を導出する。
【0003】
また特許文献2では、導出部及び更新部を備える情報処理装置が開示される。導出部は、製造装置を制御するために当該製造装置に入力される入力対象変数を導出する。この導出に当たり、入力対象変数の値が入力され製造対象物の品質に関する品質情報の予測値を出力する予測モデルを用いて、品質情報の予測値が所定の条件を満たすように、導出部は入力対象変数を導出する。更新部は、導出部により導出された入力対象変数を用いて製造した製造対象物の実際の品質に関する品質情報の実測値と、品質情報の予測値とを参照して、予測モデルを更新する。
【0004】
また特許文献3では、射出成型の条件最適化システムが開示される。このシステムは、制御装置、計測装置、最適化計算装置を備える。制御装置は、射出成形機の成形運転中に、同射出成形機に対して自動的にいくつかの設定条件変数(可塑化スクリュ回転数,射出速度,射出保持圧力など)を所定範囲内で変更する。計測装置は、設定条件で成形した時の成形評価項目(樹脂温度,サイクル時間,消費電力量など)を自動計測する。最適化計算装置は、設定条件変数の変更を所定ケース数だけ繰り返してデータを蓄積し、そのデータを重回帰分析して最適条件を算出・設定する。また、特許文献4-6には、射出成型機が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2021-12475号公報
【文献】特開2021-11046号公報
【文献】特開平8-156060号公報
【文献】特開2017-065016号公報
【文献】特開2016-083775号公報
【文献】特開2016-107511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、不良品の生産率を低減するためには、製造パラメータを最適化して良品生産状態を維持する他に、突発的な外乱等により万が一不良品が発生した際には、速やかに良品生産の条件に復帰する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本明細書で開示する、生産管理システムは、生産装置、収集部、計測部、判定部、分類部、回帰木処理部、パラメータ判別部、及び表示部を備える。生産装置は、製品を生産する。収集部は、生産装置の生産時の種々のデータを収集する。計測部は、生産装置により生産された製品を計測する。判定部は、計測部による計測値に基づいて、製品の良否判定を行う。分類部は、良品判定された製品の生産時におけるデータ及び計測値を良品データセットとして抽出する。さらに分類部は、不良品判定された製品の生産時におけるデータ及び計測値を不良品データセットとして抽出する。回帰木処理部は、計測値を目的変数として良品データセットに対して回帰木を作成して、相対的に重要度の高い説明変数を抽出する良品回帰木処理を実行する。また回帰木処理部は、計測値を目的変数として不良品データセットに対して回帰木を作成して、相対的に重要度の高い説明変数を抽出する不良品回帰木処理を実行する。パラメータ判別部は、良品回帰木処理及び不良品回帰木処理によって抽出された説明変数のうち、生産装置の制御設定値の増減に相関のある説明変数を管理パラメータとして抽出する。表示部は、管理パラメータを表示する。
【0008】
上記構成によれば、良品回帰木処理により得られた管理パラメータを監視することで、良品生産状態を維持できる。また不良品が発生した際には、不良品回帰木処理により得られた管理パラメータを、制御設定値の相関関係に基づいて、不良品発生領域から当該領域外に移動させるなどの手段を取ることで、速やかに良品生産の条件に復帰できる。
【0009】
また上記構成において、良品回帰木処理及び不良品回帰木処理によって抽出された説明変数が複数種類に亘る場合、パラメータ判別部は、幾つかの説明変数を、管理パラメータから除外してもよい。この場合、パラメータ判別部は、相対的に重要度の高い説明変数と生産装置の制御設定値との相関関係とは逆の相関関係を有する、相対的に重要度の低い説明変数を、管理パラメータから除外する。
【0010】
上記構成によれば、工程管理が煩雑にならずに済む。
【0011】
また上記構成において、生産装置は射出成形装置であってよい。この場合、計測部は、成形品のカケ深さを計測する。判定部は、カケ深さが第一閾値以上である場合に、成形品を不良品と判定する。分類部は、カケ深さが、第一閾値よりも小さい第二閾値未満であるときの、射出成形装置の種々のデータと、カケ深さを、微小データセットとして抽出する。回帰木処理部は、カケ深さを目的変数として微小データセットに対して回帰木を作成して、相対的に重要度の高い説明変数を抽出する、微小回帰木処理を実行する。パラメータ判別部は、微小回帰木処理によって抽出された説明変数のうち、射出成形装置の制御設定値の増減に相関のある説明変数を管理パラメータとして抽出する。
【0012】
カケ深さが少ないことが、良品の条件である場合、制御設定値を調整してカケ深さを過度に減らそうとすると、樹脂の注入量が過大となってオーバーパックに繋がるおそれがある。オーバーパックの可能性がある生産条件から得られた微小データセットから管理パラメータを抽出することで、カケ深さ改善時におけるオーバーパックの発生が抑制できる。
【0013】
また上記構成において、射出成形装置によるショット数が更新閾値を超過したときに、分類部、回帰木処理部、及びパラメータ判別部に対して更新指令を出力する更新部を備えてもよい。
【0014】
上記構成によれば、射出成形装置の直近の稼働状態を反映させた管理パラメータを抽出できる。
【発明の効果】
【0015】
本明細書で開示する生産管理システムによれば、製造パラメータを最適化して良品生産状態を維持するとともに、突発的な外乱等により万が一不良品が発生しても、速やかに良品生産の条件に復帰できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本実施形態に係る生産管理システムを例示する図である。
図2】射出成形装置を例示する図である。
図3】管理装置の機能ブロックを例示する図である。
図4】良品データセットから管理パラメータを抽出するフローを例示する図である。
図5】良品データセットを対象とする回帰木を例示する図である。
図6】不良品データセットから管理パラメータを抽出するフローを例示する図である。
図7】微小データセットから管理パラメータを抽出するフローを例示する図である。
図8】管理パラメータが表示される管理画面を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.全体構成
以下、図面を用いて、生産管理システムの構成が説明される。この生産管理システムは、管理装置10及び射出成形装置60を備える。
【0018】
なお、射出成形装置60は、製品を生産する生産装置の一例である。後述されるように、本実施形態に係る生産管理システムは、生産される製品の良否を判定する基準値となる計測値と、生産時のデータが取得できれば、管理パラメータを取得可能となっている。
【0019】
例えば後述されるように、本実施形態に係る生産管理システムでは、良否判定の基準値となる計測値を目的変数とし、生産時のデータを説明変数とする回帰木が生成可能となる。さらにそれぞれの説明変数について重要度が求められる。この重要度が高い説明変数が、管理パラメータとして設定される。つまり、本実施形態に係る生産管理システムでは、良否判定の基準値となる計測値と、生産時のデータを取得可能な生産装置であれば、生産管理が可能である。例えば本実施形態に係る生産管理システムでは、射出成形装置60に代えて、プレス成型装置、レーザ加工装置、塗布装置等、種々の生産装置を備えることが出来る。
【0020】
2.射出成形装置
図2には、射出成形装置60が例示される。射出成形装置60は射出ユニット61及び型締ユニット71を備える。型締ユニット71は、固定型72及び可動型73を備える。固定型72と可動型73が閉じることで、キャビティ77が形成される。キャビティ77内に樹脂が注入されることで、成形品35(図1参照)が得られる。
【0021】
射出ユニット61は、シリンダ62、スクリュー63、モータ64、ホッパー65、ヒータ66、及びノズル67を備える。
【0022】
円筒形のシリンダ62内にスクリュー63が収容される。スクリュー63の後端(ノズル67とは逆側)は、モータ64に接続される。モータ64はスクリュー63を回転させながら前進及び後退させる。
【0023】
ホッパー65には樹脂ペレットが投入される。ホッパー65からシリンダ62内に樹脂ペレットが送り込まれる。シリンダ62は、複数のヒータ66に囲まれる。ヒータ66は円環状であり、シリンダ62の長手方向に沿って、例えば3個設けられる。ヒータ66により、シリンダ62内の樹脂ペレットが溶融される。溶融樹脂がノズル67からキャビティ77に注入される。
【0024】
スクリュー63が最もノズル67に近接した位置が、スクリュー位置0となる。スクリュー位置0からスクリュー63が後退すると、シリンダ62内に溶融樹脂が充填される。このプロセスは計量プロセスと呼ばれる。スクリュー位置0からスクリュー63が後退して停止する位置は、計量位置と呼ばれる。
【0025】
計量位置からスクリュー63が前進することで、キャビティ77内に溶融樹脂が注入される。モータ64により、スクリュー63の前進速度が制御される。さらにVP切替位置と呼ばれる位置までスクリュー63が前進すると、保圧工程に移行する。つまりVP切替位置において、スクリュー63の制御は、速度制御から圧力制御に移行する。保圧工程において、キャビティ77内の圧力を一定に保つために、スクリュー63が樹脂材料をキャビティ77内に押し込める。保圧工程において、モータ64はトルク制御される。
【0026】
キャビティ77内で樹脂が冷却して固まると、可動型が固定型から離隔する。そして型締ユニット71から成形品35が取り出される。次のショットに備えて、可動型73と固定型72が再度閉じられる。これと並行して射出ユニット61では、上記の計量プロセスが実行される。
【0027】
3.管理装置
図1を参照して、管理装置10は、射出成形装置60の生産管理を行う。管理装置10は、センサユニット75,76から、射出成形装置60の各種データを取得する。データの内容については後述される。また管理装置10は、射出成形装置60に制御信号を送信する。この制御内容は後述される。
【0028】
管理装置10は、カメラ31A-31Dに接続される。カメラ31A-31Dは成形品35を撮像する。カメラ31A-31Dは成形品35のそれぞれ異なるアングルを撮像する。カメラ31A-31Dにより、成形品35一個当たり4枚の撮像画像が得られる。これら4枚の撮像画像は、管理装置10に送信される。
【0029】
また管理装置10は、操作器30に接続される。操作器30は、キーボードやマウスであってよい。又は、操作器30と表示部が一体化された、タッチパネルディスプレイが管理装置10に設けられていてもよい。
【0030】
後述されるように、管理装置10による制御設定値が、操作器30によって変更される。この操作により、成形品35の不良品の発生が抑制される。
【0031】
管理装置10は、例えばコンピュータから構成される。管理装置10は、CPU11(Central Processing Unit)、RAM12(Random Access Memory)、ROM13(Read Only Memory)、ストレージ14、入出力コントローラ15、及び表示部16を備える。
【0032】
CPU11は、中央演算処理装置であって、プロセッサとも呼ばれる。RAM12は、作業中のデータを一時的に保存する、揮発性の記憶装置である。ROM13は、データの読み出しが可能な記憶装置である。ストレージ14は、データの書き出し及び読み出しが可能な記憶装置である。ストレージ14は、例えばHDD(Hard Disk Drive)やSSD(Solid State Drive)から構成される。
【0033】
ROM13またはストレージ14に記憶されたプログラムを、CPU11(プロセッサ)が実行することで、管理装置10は、図3に例示されるような処理部が構成される。すなわち管理装置10は、処理部として、制御部20、データ収集部21、データセット分類部22、変数選択部23、回帰木処理部24、品質判定部25、パラメータ判別部26、パラメータ設定部27、及び更新部28を備える。
【0034】
品質判定部25は、カメラ31A-31Dによる、成形品35の撮像画像から、良否判定を行う。品質判定部25は、撮像画像から、成形品35のカケ深さを計測する。カケとは、成形品35に生じる欠損部位を指す。カケは、主に樹脂量の不足から生じる。つまり、いわゆるショートショットによって、カケが発生する。
【0035】
品質判定部25は、例えば既知のパターンマッチング手法を用いて、カケ深さ0の画像と成形品35の撮像画像を比較する。この比較により、品質判定部25は、カケ領域(欠損領域)を特定する。さらに品質判定部25は、カケ領域画像に基づき、カケ深さを計測する。上述のように、一個の成形品35から4枚の撮像画像が得られることから、一個の成形品35に対して、それぞれ異なる4つの部位についてカケ深さが計測される。つまり、品質判定部25は、成形品35のカケ深さを計測する計測部としての要素も備える。
【0036】
品質判定部25は、算出されたカケ深さに基づいて、成形品35の良否判定を行う。例えば一個の成形品35に対する4つのカケ深さ値(計測値)のうち少なくとも一つが、所定の第一閾値以上である場合に、品質判定部25は、そのようなカケを備えた成形品35を不良品と判定する。または、一個の成形品35に対する4つのカケ深さ値(計測値)の平均値が、第一閾値以上である場合に、品質判定部25は、そのようなカケを備えた成形品35を不良品と判定する。例えば第一閾値として、50μmが設定される。求められたカケ深さ値は、後述されるデータセット(良品データセット、不良品データセット、微小データセット)に含まれる。
【0037】
操作器30は、制御部20に対して制御設定値を変更可能となっている。制御設定値は、射出成形装置60の各機器の動作や圧力、温度等を制御するための設定値である。例えば制御設定値には、計量位置、VP切替位置、モータトルクが含まれる。制御設定値は、操作器30から設定変更が可能となっている。
【0038】
データ収集部21は、センサユニット75,76を介して、射出成形装置60の生産時の種々のデータを収集する。例えばデータ収集部21は、ワンショットデータ及び時系列データを、センサユニット75,76から収集する。
【0039】
ワンショットデータは、成形品35を一個生産する際に一回取得できるデータである。例えばワンショットデータとして、下記表1に例示される55種類のデータが、データ収集部21に収集される。なお、表1において、カケ深さ測定値1-4は、カメラ31A-31Dによる撮像画像に基づいて、品質判定部25により算出される値である。
【0040】
【表1】
【0041】
表1の各項目について、サイクル時間は、可動型73が開いた時点から1ショット成形した後、再度可動型73が開いた時点までの時間を示す。射出時間は、充填時間と保圧時間の和を示す。クッション位置は、樹脂の充填後、スクリュー63の先端が前進した際に、最も前進した位置を示す。乾燥機接続数は、樹脂ペレットを乾燥させる乾燥機に接続されている射出成形装置60の台数を示す。
【0042】
さらにその後のノズル、スクリュー1、スクリュー2、スクリュー3、固定型温度、可動型温度は、いずれも成型時の温度設定値を示す。スクリュー1-スクリュー3は、スクリュー63の3か所の設定温度を示す。例えばスクリュー63を、先端から順に計量部、圧縮部、供給部に分けた場合に、各部の設定温度が、スクリュー1-スクリュー3で定められる。
【0043】
また位置1st、位置2nd、位置型締、速度1st、速度2nd、速度型締は、可動型73の型締の位置と速度の設定値を示す。例えば速度1stでは、可動型73の位置1stにおける速度設定値が入力される。また速度型締では、固定型72に当接するとき(位置型締)の可動型73の速度設定値が入力される。
【0044】
さらにその後の位置型開眼、位置2nd、位置1st、速度型開眼、速度2nd、速度1stは、型開き時の可動型73の位置及び速度の設定値を示す。例えば速度型開眼は、開眼位置(位置型開眼)における可動型73の速度設定値が入力される。
【0045】
また、低圧型締 位置、及び低圧型締 圧力は、低圧の際の型締め位置及び圧力の設定値が入力される。保圧中速度、時間3rd、時間2nd、時間1st、圧力3rd、圧力2nd、圧力1stは、保圧時の速度、時間、圧力の設定値を示す。例えば圧力1stでは、保圧時間1stにおける圧力設定値が入力される。
【0046】
また、位置VP切替、位置2nd、位置1st、速度VP切替、速度2nd、速度1st、及び圧力は、樹脂充填時の位置、速度、圧力の設定値を示す。例えば位置1stにおけるスクリュー63の速度が、速度1stに設定される。
【0047】
フラッシュ時間は、フラッシュ工程の時間設定値を示す。フラッシュ工程とは、射出と保圧の間に行われる工程であって、射出により圧縮された樹脂が、樹脂自身の圧力で充填できるように射出動作に制限を設ける工程を指す。また、計量背圧とは、計量時にスクリュー63を後方から前方に押す力を指す。
【0048】
さらにサックバック位置、サックバック速度とは、サックバック時の設定値である。サックバックとは、射出成型にて保圧後や計量後に、スクリュー63をわずかに後退させる動作を指す。
【0049】
時系列データは、成形品35を一個生産する際に、所定の間隔で複数回測定される、計測データである。例えば以下の各変数が、20ms間隔で350回測定される。
【0050】
【表2】
【0051】
ここで、スクリュー1-3は、上記の様に、例えばスクリュー63を、先端から順に計量部、圧縮部、供給部に分けた場合に、各部の計測値を指す。金型固定1,2、及び金型可動1,2について、固定型72及び可動型73のそれぞれについて、2ヵ所温度センサが貼り付けられている。この計4点の温度計測値が、金型固定1,2、及び金型可動1,2として得られる。射出トルクは、射出時におけるモータ64のトルク値を示す。型開閉トルクは、可動型73の駆動トルクを示す。計量トルクは、計量工程時におけるモータ64のトルク値(実測値)を示す。
【0052】
成形品35を一個生産する際に、表1で示される55種類のワンショットデータが、それぞれ一回測定される。また、成形品35を一個生産する際に、表2で示される12種類のワンショットデータが、それぞれ20ms間隔で350回測定される。つまり、成形品35を一個生産する際に、55+12×350=4255個のデータが、センサユニット75,76からデータ収集部21に収集される。
【0053】
4.管理パラメータ抽出プロセス
管理装置10は、センサユニット75,76から得られた表1、表2で示すデータをもとに、表示部16に表示させるべき管理データ(図8参照)の絞り込みを行う。
【0054】
図4を参照して、データセット分類部22は、成形品35に対する良否判定に基づいて、データ収集部21が収集したデータを、良品データセットと不良品データセットに分ける(S12)。
【0055】
すなわち、データセット分類部22は、品質判定部25の判定結果を参照し、良品判定された成形品35の生産時におけるデータセットを、良品データセットとして抽出する。またデータセット分類部22は、品質判定部25によって不良品判定された成形品35の生産時におけるデータセットを、不良品データセットとして抽出する。なお、良品データセット及び不良品データセットには、成形品35に対するカメラ31A-31Dの撮像画像から計測された、4つのカケ深さ値(計測値)が含まれる。
【0056】
4-1.良品データセットからの管理パラメータの抽出(S14-S24)
図3図4を参照して、変数選択部23は、良品データセットのうち、カケ深さ値(計測値)を目的変数とする説明変数を選択する。目的変数であるカケ深さ値は、カメラ31A-31Dの撮像画像から計測された、4つのカケ深さ値の平均値であってよい。または、目的変数であるカケ深さ値は、カメラ31A-31Dの撮像画像から計測された、4つのカケ深さ値のうち、最大値であってよい。
【0057】
変数選択部23は、上述の4255種類のデータ(より詳細には、目的変数であるカケ深さ値は除外される)からなるデータセットの中から、説明変数を抽出する。説明変数の抽出に当たり、変数選択部23は、候補となる変数の絞り込みを行う。例えば変数選択部23は、4255種類のデータの中から、20種類未満となるまで、データ(特徴量)の絞り込みを行う(S14)。
【0058】
データの絞り込みに当たり、例えば変数選択部23は、フィルター法、ラッパー法、埋め込み法、ランダムフォレストの少なくとも一つの手法を用いて、データの絞り込みを行う。目的変数は、上記4点のカケ深さ値(計測値)の平均値または最大値が用いられる。上記の絞り込み手法については、既知であるため、ここでは説明が省略される。
【0059】
さらにデータ(特徴量)が20種類未満に絞り込まれた段階で、回帰木処理部24は、良品データセット内の目的変数を用いて回帰木を作成する。ここで、目的変数は上記4点のカケ深さ値(計測値)の平均値または最大値が用いられる。
【0060】
例えば回帰木処理部24は、良品データセット内で絞り込まれた20種類未満のデータについて、決定木を作成する。本実施形態では、目的変数が数値であるカケ深さ値であるため、決定木は回帰木である(S16)。回帰木の深さは任意であるが、例えば3以上6以下の深さに定められる。このような回帰木処理は、良品回帰木処理とも呼ばれる。
【0061】
図5には、深さ3の回帰木が例示される。各ボックス50-56には、説明変数(管理パラメータの候補)、平均二乗誤差、目的変数のデータ数、及びカケ深さ値の平均値が表示される。例えば回帰木の最上位のボックス50を例に採ると、説明変数として、「スクリュー位置65」が選択される。またその閾値として3.85mmが選択される。また、平均二乗誤差は2.026であり、目的変数のデータ数は79774個である。また、79774個の目的変数の平均値は10.752μmとなる。
【0062】
「スクリュー位置65 <= 3.85」とは、20ms間隔で350回測定されるうちの、65回目(つまり射出開始から20ms×65=1300ms後)のスクリュー位置が3.85mm以上であるか否か、という特徴量を指す。
【0063】
ボックス50内の説明変数及び閾値で示された条件が真であるようなデータは、回帰木の左側に割り振られる。したがって、左側に分岐するボックス51は、スクリューの後退開始から20ms×65=1300ms後のスクリュー位置が3.85mm以上であったデータの特性が示されている。これによると、目的変数の個数は、36741個であり、その36741個の目的変数の平均値は、11.364μmである。
【0064】
ボックス50内の説明変数及び閾値で示された条件が偽であるようなデータは、回帰木の右側に割り振られる。したがって、右側に分岐されたボックス52は、スクリューの後退開始から20ms×65=1300ms後のスクリュー位置が3.85mm未満であったデータの特性が示されている。これによると、目的変数の個数は、43033個であり、その43033個の目的変数の平均値は、10.229μmである。
【0065】
定性的には、カケ深さ値が低いほど、不良品になりにくい。つまり、この回帰木においては、スクリューの後退開始から20ms×65=1300ms後のスクリュー位置が3.85mm未満である方が、スクリューの後退開始から20ms×65=1300ms後のスクリュー位置が3.85mm以上であるよりも、不良品になりにくい(良品となり得る)。
【0066】
このような、有意な目的変数の差異が示される場合に、説明変数「スクリュー位置65」の重要度が高くなる。回帰木アルゴリズムにおける重要度は、ある特徴量(説明変数)で目的変数を分割するとどれくらいジニ不純度を下げられるのかを示す。ジニ不純度とは、あるノードにおいて、ターゲット(目的変数)がどれくらい分類できていないかを図る指標である。例えば図5の例では、ボックス51には、相対的にカケ深さ値の大きいデータが集まり、ボックス52には、相対的にカケ深さ値の小さいデータが集まったと解釈できる。定性的には、分岐された両ボックスのvalue値の差異が大きいほど、重要度は高い値を取る。
【0067】
例えば回帰木処理部24は、ステップS14にて絞り込まれた説明変数が全て回帰木に反映されるように、複数の回帰木を作成する(S16)。さらにそれぞれのボックスについて、重要度を算出する。さらにパラメータ判別部26は、重要度の高い説明変数(特徴量)を抽出する(S18)。例えばパラメータ判別部26は、重要度の高い上位3種類の説明変数(特徴量)を抽出する。
【0068】
このように、本実施形態における管理パラメータの抽出に当たって、一次スクリーニングとしてランダムフォレスト等の変数選択を行い、さらに二次スクリーニングとして回帰木アルゴリズムを利用している。
【0069】
重要度のみで変数選択を行う一次スクリーニングに対して、図5に例示されるように、回帰木アルゴリズムでは、目的変数のデータ数(samples)が示される。例えば、ある説明変数に対して高い重要度が付与された場合であっても、そのデータの分け方が極端である場合には、説明変数として不適切である場合がある。例えば10000個のデータを、9999個と1個のボックスにそれぞれ分けるような説明変数は、重要度が高くても不適切と考えられる。このように、重要度に加えてデータ群の分け方の適切さを作業者が検証できるという点で、回帰木アルゴリズムは説明変数の抽出手法として妥当性が高い。
【0070】
パラメータ判別部26は、抽出された説明変数(特徴量)が、射出成形装置60への制御設定値の変更によって調整が可能か否かを判定する(S20)。言い換えると、パラメータ判別部26は、抽出された説明変数が、射出成形装置60の増減と相関があるか否かを判定する。
【0071】
例えば、射出成形装置60の制御設定値が、VP切替位置のみである場合に、パラメータ判別部26は、ステップS18において抽出された説明変数(特徴量)が、VP切替位置の増減によって変化するか否かを判定する。
【0072】
ここで、制御設定値とは、要するに作業者の操作によって射出成形装置60の挙動を変更できるような設定値を指す。例えば操作器30からの入力によって変更可能な設定値が、制御設定値である。
【0073】
また、VP切替位置は、スクリュー63が速度制御される射出工程と、スクリュー63が圧力制御(トルク制御)される保圧工程の切替点におけるスクリュー63の位置を指す。
【0074】
例えばパラメータ判別部26は、ステップS20において、データ収集部21によって収集されたデータセットを参照して、VP切替位置とそれぞれの説明変数の相関関係を求める。または、パラメータ判別部26には、上記の4255種類のデータとVP切替位置との相関関係が予め記憶されていてもよい。
【0075】
制御設定値によって調整できない(相関が無い)説明変数が有る場合、パラメータ判別部26は、管理パラメータから当該説明変数を除外する(S26)。このような説明変数(特徴量)として、例えば表1の乾燥機接続数が該当する。
【0076】
ステップS20において、制御設定値の増減に相関のある、複数種類の説明変数(特徴量)のみが抽出されると、次にパラメータ判別部26は、重要度が最大の説明変数の変動傾向と反対の傾向を表す説明変数の有無を判定する(S22)。
【0077】
例えば制御設定値であるVP切替位置を増加させる、つまりVP切替位置をノズル67側から離隔させたときに、最重要度の説明変数(例えばスクリュー位置65)は増加傾向であるとする。このとき、相対的に重要度の低い説明変数が、減少傾向である場合に、パラメータ判別部26は、そのような、相対的に重要度の低い説明変数を、管理パラメータから除外する。
【0078】
ステップS18、ステップS20、ステップS22を経て、パラメータ判別部26は、カケ深さ値に影響を与え、制御設定値の増減と相関があり、かつ、最重要度の説明変数と相関関係が等しい説明変数を抽出する。パラメータ設定部27はそのような説明変数を、管理パラメータに設定する(S24)。設定された管理パラメータは、図8に例示されるように、表示部16に表示される。この例では、スクリュー位置144と、射出トルク54が、良品データセットから抽出された管理パラメータとして表示されている。なお、各グラフ中の実線は、実測値を示す。また各グラフ中の破線は閾値を示す。閾値とは、例えば図5を参照して、ボックス50のスクリュー位置65であれば3.85mmを指し、ボックス55の射出トルク41であれば、-85.35[N・m]を指す。要するにカケ深さ値が浅くなるか、深くなるかの境界値が閾値となる。
【0079】
なお、ステップS18にて、良品データセットから、重要度の高いパラメータを1種類のみ抽出する場合には、ステップS22は省略される。この場合において、抽出された最重要度のパラメータが、ステップS20→ステップS26にて除外された場合には、良品データセットから管理パラメータが設定されない。この場合、更新部28(図3参照)による管理パラメータの更新を待つことになる。
【0080】
4-2.不良品データセットからの管理パラメータの抽出
図6には、図5から分岐したフローが例示される。図6のフローでは、不良品データセットから管理パラメータが設定される。つまり、不良品が発生するような生産環境において、カケ深さ値に影響を与える説明変数が絞り込まれ、管理パラメータとして抽出される。
【0081】
ステップS34-S46は、図4のステップS14-26と、母体(良品/不良品データセット)は異なるものの、処理内容としては同一である。すなわち、変数選択部23は、表1、表2で例示されるような、不良品データセット中の4255種類のデータ(より詳細には、目的変数であるカケ深さ値は除外される)からなるデータセットの中から、20種類未満となるまで、データ(特徴量)の絞り込みを行う(S34)。絞り込みは、上述と同様に、フィルター法、ラッパー法、埋め込み法、ランダムフォレストの少なくとも一つの手法が用いられる。
【0082】
さらにデータ(特徴量)が20種類未満に絞り込まれた段階で、回帰木処理部24は、上記4点のカケ深さ値(計測値)の平均値または最大値を目的変数として、回帰木を作成する(S36)。このような回帰木処理は、不良品回帰木処理とも呼ばれる。例えば回帰木処理部24は、不良品回帰木処理において、ステップS34にて絞り込まれた説明変数が全て回帰木に反映されるように、複数の回帰木を作成する。
【0083】
次にパラメータ判別部26は、重要度の高い説明変数(特徴量)を抽出する(S38)。例えばパラメータ判別部26は、重要度の高い上位3種類の説明変数(特徴量)を抽出する。
【0084】
その後、パラメータ判別部26は、抽出された説明変数(特徴量)が、射出成形装置60の増減と相関があるか否かを判定する(S40)。制御設定値によって調整できない(相関が無い)説明変数が有る場合、パラメータ判別部26は、管理パラメータから当該説明変数を除外する(S46)。
【0085】
ステップS40において、制御設定値の増減に相関のある説明変数(特徴量)のみが抽出されると、次にパラメータ判別部26は、重要度が最大の説明変数の変動傾向と反対の傾向を表す説明変数の有無を判定する(S42)。重要度が最大の説明変数の変動傾向と反対の傾向を表す説明変数が有る場合に、パラメータ判別部26は、そのような説明変数を、管理パラメータから除外する(S46)。
【0086】
ステップS38、ステップS40、ステップS42を経て、パラメータ判別部26は、カケ深さ値に影響を与え、制御設定値の増減と相関があり、かつ、最重要度の説明変数と相関関係が等しい説明変数を抽出する。パラメータ設定部27はそのような説明変数を、管理パラメータに設定する(S44)。
【0087】
設定された管理パラメータは、図8に例示されるように、表示部16に表示される。この例では、計量トルク169のみが、不良品データセットから抽出された管理パラメータとして表示されている。なお、各グラフ中の実線は、実測値を示す。また各グラフ中の破線は閾値を示す。閾値とは、図5の回帰木を例に採ると、ボックス50のスクリュー位置65の3.85mmがこれに当たる。つまり、管理パラメータが閾値を超過するとカケ深さが増加するような値が、閾値として設定される。
【0088】
4-3.微小データセットからの管理パラメータの抽出
成形品35のカケはいわゆるショートショットにより発生することから、樹脂の注入量を増やすことでカケ深さ値は低減できる。しかしながら、樹脂の注入量が過剰であると、いわゆるオーバーパックとなり、バリが発生するおそれがある。
【0089】
そこで、オーバーパックの有無を監視するための管理パラメータを表示部16に表示させてもよい。例えば、オーバーパック監視用の管理パラメータを抽出するデータセットとして、カケ深さ値が比較的小さい成形品35の、生産時のデータセットが使われる。このデータセットは、微小データセットと呼ばれる。
【0090】
微小データセットの生成に当たり、良否判定に用いられる上述した第一閾値よりも小さい第二閾値が用いられる。第二閾値として、例えば10μmが設定される。図7を参照して、データセット分類部22は、カメラ31A-31Dによる4点のカケ深さ値の平均値が、第二閾値(10μm)未満である成形品35の、生産時の種々のデータ、すなわち、表1及び表2に示される4255種類のデータを抽出して、微小データセットとする(S52)。
【0091】
微小データセットから管理パラメータを抽出するプロセスは、母体(良品/微小データセット)は異なるものの、処理内容としては図5のフローと同一である。すなわち、変数選択部23は、表1、表2で例示されるような、微小データセット中の4255種類のデータ(より詳細には、目的変数であるカケ深さ値は除外される)からなるデータセットの中から、20種類未満となるまで、データ(特徴量)の絞り込みを行う(S54)。絞り込みは、上述と同様に、フィルター法、ラッパー法、埋め込み法、ランダムフォレストの少なくとも一つの手法が用いられる。
【0092】
さらにデータ(特徴量)が20種類未満に絞り込まれた段階で、回帰木処理部24は、上記4点のカケ深さ値の平均値または最大値を目的変数として、回帰木を作成する(S56)。このような回帰木処理は、微小回帰木処理とも呼ばれる。例えば回帰木処理部24は、ステップS34にて絞り込まれた説明変数が全て回帰木に反映されるように、複数の回帰木を作成する。
【0093】
次にパラメータ判別部26は、重要度の高い説明変数(特徴量)を抽出する(S58)。例えばパラメータ判別部26は、重要度の高い上位3種類の説明変数(特徴量)を抽出する。
【0094】
その後、パラメータ判別部26は、抽出された説明変数(特徴量)が、射出成形装置60の増減と相関があるか否かを判定する(S60)。制御設定値によって調整できない(相関が無い)説明変数が有る場合、パラメータ判別部26は、管理パラメータから当該説明変数を除外する(S66)。
【0095】
制御設定値の増減に相関のある説明変数(特徴量)のみが抽出されると、次にパラメータ判別部26は、重要度が最大の説明変数の変動傾向と反対の傾向を表す説明変数の有無を判定する(S62)。重要度が最大の説明変数の変動傾向と反対の傾向を表す説明変数が有る場合に、パラメータ判別部26は、そのような説明変数を、管理パラメータから除外する(S66)。
【0096】
以上のステップを経て、パラメータ判別部26は、カケ深さ値に影響を与え、制御設定値の増減と相関があり、かつ、最重要度の説明変数と相関関係が等しい説明変数を抽出する。パラメータ設定部27はそのような説明変数を、管理パラメータに設定する(S64)。
【0097】
図8を参照して、良品データセット及び不良品データセットに加えて、微小データセットから抽出された管理パラメータ(軽量トルク149)が、表示部16に表示される。管理パラメータ「軽量トルク149」のグラフ中の実線は、実測値を示す。また当該グラフ中の破線は閾値を示す。具体的には、実測値が閾値を超過すると、オーバーパックに繋がるリスクが高くなる。つまり実測値を閾値未満に抑えるように、制御設定値が調整される。
【0098】
5.管理データを用いた生産管理
5-1.良品が生産されている場合
射出成形装置60の操作者は、表示部16に表示されたカケ測定値を基準にして、良品生産の条件が維持されていることを確認する。また、カケ測定値が閾値に近づくと、良品データセットから抽出した管理パラメータを、閾値から遠ざけるように、作業者は、制御設定値を調整する。
【0099】
この際、上述のような相関関係から、管理パラメータを閾値から遠ざけることで、カケ深さ値が低減される。カケ深さ値の低減が過剰であると、オーバーパックに繋がるおそれがある。そこで、作業者は、微小データセットから抽出された管理パラメータが閾値を越えない範囲で、良品データセットから抽出した管理パラメータを、閾値から遠ざける。
【0100】
5-2.不良品が発生した場合
突発的な外乱等により、成形品35の不良品が発生した場合には、不良品データセットから抽出された管理パラメータが、閾値を超過する。作業者は、当該管理パラメータが閾値以下となるように、制御設定値を調整する。このような調整を行うことで、カケ深さは低減され、速やかに良品の生産状態に復帰することが出来る。
【0101】
6.管理パラメータの更新
図3を参照して、更新部28は、良品データセット、不良品データセット、及び微小データセットのそれぞれから管理パラメータを抽出するプロセスを、所定間隔で更新(再実行)する。例えばショット数が所定の更新閾値(例えば10000ショット)を超過すると、管理パラメータの更新が行われる。例えば更新部28は、データセット分類部22,変数選択部23、回帰木処理部24、パラメータ判別部26、パラメータ設定部27に対して、更新指令を出力する。
【0102】
射出成形装置60の動作環境や稼働年数等により、カケ深さ値に影響を与える説明変数は異なってくる場合がある。そこで、所定の間隔で、管理パラメータが抽出、設定される。これにより、直近の稼働状況が反映された管理パラメータが抽出される。
【符号の説明】
【0103】
10 管理装置、20 制御部、21 データ収集部、22 データセット分類部、23 変数選択部、24 回帰木処理部、25 品質判定部(計測部及び判定部)、26 パラメータ判別部、27 パラメータ設定部、28 更新部、30 操作器、31A-31D カメラ、35 成形品(製品)、60 射出成形装置(生産装置)、75,76 センサユニット。
【要約】
【課題】製造パラメータを最適化して良品生産状態を維持するとともに、突発的な外乱等により万が一不良品が発生しても、速やかに良品生産の条件に復帰可能とする。
【解決手段】データセット分類部22は、良品判定された製品の生産時におけるデータ及び計測値を良品データセットとして抽出する。さらにデータセット分類部22は、不良品判定された製品の生産時におけるデータ及び計測値を不良品データセットとして抽出する。回帰木処理部24は、良品データセットに対して回帰木を作成して、相対的に重要度の高い説明変数を抽出する。また回帰木処理部24は、不良品データセットに対して回帰木を作成して、相対的に重要度の高い説明変数を抽出する。パラメータ判別部26は、抽出された説明変数のうち、射出成形装置60の制御設定値の増減に相関のある説明変数を管理パラメータとして抽出する。
【選択図】図3
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8