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特許7591329放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法
(51)【国際特許分類】
   B23H 1/00 20060101AFI20241121BHJP
   B23H 1/10 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B23H1/00 Z
B23H1/10 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024085627
(22)【出願日】2024-05-27
【審査請求日】2024-05-27
(31)【優先権主張番号】202311782883.1
(32)【優先日】2023-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】524104789
【氏名又は名称】杭州電子科技大学
【氏名又は名称原語表記】Hangzhou Dianzi University
【住所又は居所原語表記】No.1158, 2nd Street, Baiyang Street, Qiantang District, Hangzhou City, Zhejiang Province,310018 China
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】何 利華
(72)【発明者】
【氏名】張 志鵬
(72)【発明者】
【氏名】倪 敬
【審査官】岩見 勤
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第215727196(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第112935437(CN,A)
【文献】特開2005-329451(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23H 1/00
B23H 1/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下のステップ1~5を含む、ことを特徴とする放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法。
ステップ1:単発パルスエッチング試験加工の放電時間、放電電圧及び放電電流を設定する。
ステップ2:放電液に混合粉が含まれず且つワークピースが静止する場合に、ワークピースに対して単発パルスエッチング試験加工を一回行い、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットを得る。ワークピースが静止する場合のエッチングピットは球冠形である。ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径a及び最大深さhを測定し、測定した値からワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの容積Vを算出し、続いて放電液に混合粉が含まれない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossを以下の式により算出する。
loss=UIt-V
式中、Uは放電電圧であり、Iは放電電流であり、tは放電時間であり、gはワークピース材料の相変化熱である。
ステップ3:放電液に混合粉が含まれず且つワークピースが予め設定された速度で平行移動する場合に、ワークピースに対して単発パルスエッチング試験加工を一回行い、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットを得る。ワークピースが移動する場合のエッチングピットは、球冠形の半分と、球冠の中心断面である半楕円を底面とする半楕円錐形とを組み合わせた形状である。
同じ環境条件下において、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’は、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの容積Vと等しく、同じ環境条件下において、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径a’と最大深さh’の関係は、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径aと最大深さhの関係と同じであって、統一的に以下の関係式で表される。
a=εh
式中、aとhはエッチングピットの最頂部の円弧の半径と最大深さであり、εは係数である。
測定した、ワークピースが静止する場合のエッチングピットの最頂部の円弧の半径aと最大深さhから、係数εの値を算出し、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径a’と最大深さh’の関係式を求め、この関係式と、エッチングピットの容積Vの値と、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’を表す式とによって、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最大深さh’を算出する。
ステップ4:同じ混合粉を含み且つ混合粉体積比が異なるn種類(n≧5)の放電液を用意し、前記ステップ2における混合粉を含まない放電液を、同じ混合粉を含み且つ混合粉体積比が異なる放電液に置き換えて、前記ステップ2と同じ手順をn回繰り返し、同じ混合粉を含み且つ混合粉の体積比が異なるn種類の放電液の下で単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedの値を得る。
続いて放電液が混合粉を含む場合の各単発パルスの散逸エネルギーWloss-mixed、各混合粉体積比及び前記ステップ2における放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossをフィッティングし、同じ環境条件下における、放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedと、混合粉体積比と、放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossとの関係式を得る。
ステップ5:設定された混合粉体積比に基づいて、放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedと、混合粉体積比と、放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossとの前記関係式により、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedを算出する。
放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedは、放電液が混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積V’’を用いて、以下の式で表される。
この式と、算出された放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedとから、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積V’’を算出する、即ち、ワークピースが移動するか否かに関わらず、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積を算出する。
続いて関係式a=εhと、算出された、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積V’’の値と、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’を表す前記式とによって、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最大深さhを算出する。
放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが予め設定された速度で平行移動する場合に、単発パルスエッチング試験加工を連続的に行って、ワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットを得る。二番目以降の各エッチングピットにおいて、そのエッチングピットの中心は直前のエッチングピットにおける半楕円錐の頂点に位置する。計算により得られた、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最大深さhに基づき、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットにおける一番目以外の残りのエッチングピットの最大深さh’’を算出する。
【請求項2】
前記ステップ2において、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの容積Vは、以下の式により算出される、ことを特徴とする請求項1に記載の放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法。
【請求項3】
前記ステップ2において、放電液に混合粉が含まれない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossは、以下の式により算出される、ことを特徴とする請求項1に記載の放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法。
loss=Winput-Woutput
input=UIt
output=V
式中、Winputは単発パルス一回の放電エネルギーであり、Woutputは単発パルス一回のパルス熱量である。
【請求項4】
前記同じ環境条件は、同じ放電電圧、同じ放電電流、同じ放電時間、及び同じワークピース材料を指す、ことを特徴とする請求項1に記載の放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法。
【請求項5】
前記ステップ3及び前記ステップ4における、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’を表す前記式は、以下の式である、ことを特徴とする請求項1に記載の放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法。
式中、a’はワークピースが移動する場合のエッチングピットの最頂部の円弧の半径であり、h’はワークピースが移動する場合のエッチングピットの最大深さであり、lは放電時間内のワークピースの移動距離であって、l=vtであり、vはワークピースの平行移動の速度である。
【請求項6】
前記混合粉体積比は0.5以下である、ことを特徴とする請求項1に記載の放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法。
【請求項7】
前記ステップ4で得られる、同じ環境条件下における、放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedと、混合粉体積比と、放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossとの前記関係式は、以下の式である、ことを特徴とする請求項1に記載の放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法。
式中、λ及びβはいずれも係数であり、cは混合粉体積比である。
【請求項8】
前記ステップ5において、放電液に混合粉が含まれ且つワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットにおける一番目以外の残りのエッチングピットの最大深さh’’は、以下の式により算出される、ことを特徴とする請求項1に記載の放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は放電加工分野に属し、具体的には放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
放電加工技術は金型及び部品の加工に広く応用され、表面粗さは放電加工技術の主なプロセス指標である。放電加工表面の粗さは主に放電加工で形成されたエッチングピットの最大深さに依存し、且つ放電加工表面の粗さの値の大きさはエッチングピットの最大深さと比例関係と見なすことができるが、任意のパラメータ(例えば放電電圧、放電電流、放電時間、放電液の混合粉の有無、混合粉体積比など)の変更は、エッチングピットの最大深さへの影響が非常に顕著である。同時に現在、単発パルスエッチング加工によるエッチングピットの最大深さの測定方法はほとんどなく、特に単発パルスエッチング加工を連続的に行った際の連続エッチングピットの最大深さの測定方法はほとんどない。そのため、単発パルスエッチング加工を連続的に行った際の連続エッチングピットの最大深さに対する測定方法が求められている。この測定方法が得られることで、その後の放電加工表面粗さの計算に役立ち、また、関連パラメータと組み合わせることで異なる関連パラメータでの放電加工表面粗さの計算に役立つ。
【発明の概要】
【0003】
本発明の目的は、従来技術の不足を克服するために、放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法を提供することである。
【0004】
上記目的を達成するために、本発明は以下の技術的解決手段を採用する。
本発明の放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法は、以下のステップ1~5を含む。
【0005】
ステップ1:単発パルスエッチング試験加工の放電時間、放電電圧及び放電電流を設定する。
【0006】
ステップ2:放電液に混合粉が含まれず且つワークピースが静止する場合に、ワークピースに対して単発パルスエッチング試験加工を一回行い、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットを得る。ワークピースが静止する場合のエッチングピットは球冠形である。ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径a及び最大深さhを測定し、測定した値からワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの容積Vを算出する。続いて放電液に混合粉が含まれない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossを以下の式により算出する。
loss=UIt-V
式中、Uは放電電圧であり、Iは放電電流であり、tは放電時間であり、gはワークピース材料の相変化熱である。
【0007】
ステップ3:放電液に混合粉が含まれず且つワークピースが予め設定された速度で平行移動する場合に、ワークピースに対して単発パルスエッチング試験加工を一回行い、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットを得る。ワークピースが移動する場合のエッチングピットは、球冠形の半分と、球冠の中心断面である半楕円を底面とする半楕円錐形とを組み合わせた形状である。
同じ環境条件下において、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’は、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの容積Vと等しい。同じ環境条件下において、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径a’と最大深さh’の関係は、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径aと最大深さhの関係と同じであって、統一的に以下の関係式で表される。
a=εh
式中、aとhはエッチングピットの最頂部の円弧の半径と最大深さであり、εは係数である。
測定した、ワークピースが静止する場合のエッチングピットの最頂部の円弧の半径aと最大深さhから、係数εの値を算出し、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径a’と最大深さh’の関係式を求め、この関係式と、エッチングピットの容積Vの値と、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’を表す式とによって、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最大深さh’を算出する。
【0008】
ステップ4:同じ混合粉を含み且つ混合粉体積比が異なるn種類(n≧5)の放電液を用意し、上記ステップ2における混合粉を含まない放電液を、同じ混合粉を含み且つ混合粉体積比が異なる放電液に置き換えて、前記ステップ2と同じ手順をn回繰り返し、同じ混合粉を含み且つ混合粉体積比が異なるn種類の放電液の下で、単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedの値を得る。
放電液が混合粉を含む場合の各単発パルスの散逸エネルギーWloss-mixed、各混合粉体積比及び上記ステップ2における放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossをフィッティングし、同じ環境条件下における、放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedと、混合粉体積比と、放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossとの関係式を得る。
【0009】
ステップ5:設定された混合粉体積比に基づいて、放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedと、混合粉体積比と、放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossとの上記関係式により、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedを算出する。
放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedは、放電液が混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積V’’を用いて、以下の式で表される。
この式と、算出された放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedとから、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積V’’を算出する、即ち、ワークピースが移動するか否かに関わらず、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積を算出する。
続いて関係式a=εhと、算出された、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積V’’の値と、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’を表す上記式とによって、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最大深さhを算出する。
放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが予め設定された速度で平行移動する場合に、単発パルスエッチング試験加工を連続的に行って、ワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットを得る。二番目以降の各エッチングピットにおいて、そのエッチングピットの中心は直前のエッチングピットにおける半楕円錐の頂点に位置する。
計算により得られた、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最大深さhに基づき、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットにおける一番目以外の残りのエッチングピットの最大深さh’’を算出する。
【0010】
好ましくは、上記ステップ2において、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの容積Vは、以下の式により算出される。
【0011】
好ましくは、上記ステップ2において、放電液に混合粉が含まれない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossは、以下の式により算出される。
loss=Winput-Woutput
input=UIt
output=V
式中、Winputは単発パルス一回の放電エネルギーであり、Woutputは単発パルス一回のパルス熱量である。
【0012】
好ましくは、上記同じ環境条件は、同じ放電電圧、同じ放電電流、同じ放電時間及び同じワークピース材料を指す。
【0013】
好ましくは、上記ステップ3及び前記ステップ4における、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’を表す上記式とは、以下の式である。
式中、a’はワークピースが移動する場合のエッチングピットの最頂部の円弧の半径であり、h’はワークピースが移動する場合のエッチングピットの最大深さであり、lは放電時間内のワークピースの移動距離であって、l=vtであり、vはワークピースの平行移動の速度である。
【0014】
好ましくは、上記混合粉体積比は0.5以下である。
【0015】
好ましくは、上記ステップ4で得られる、同じ環境条件下における、放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedと、混合粉体積比と、放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossとの関係式は、以下の式である。
式中、λ及びβはいずれも係数であり、cは混合粉体積比である。
【0016】
好ましくは、上記ステップ5において、放電液に混合粉が含まれ且つワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットにおける一番目以外の残りのエッチングピットの最大深さh’’は、以下の式により算出される。
【0017】
本発明は以下の有益な効果を有する。
(1)本発明は、設定された環境条件下で、ワークピースが静止する場合に単発パルスエッチング試験加工を行うことにより、関連データを取得し、さらにワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最大深さを導出し、さらにワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットにおける一番目以外の残りのエッチングピットの最大深さを導出し、後に単発パルスエッチング加工を連続的に行った際のワークピースの表面粗さに関するデータの根拠を提供する。具体的には、本発明は、放電液に混合粉が含まれず且つワークピースが静止する場合にワークピースに対して単発パルスエッチング試験加工を一回行い、エッチングピットの最頂部の円弧の半径と最大深さとの関係式における係数の値を確定し、且つエネルギーの観点から、放電液に混合粉が含まれない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーの計算式を確立し、放電液に混合粉が含まれず且つワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最大深さを導出するためのデータを提供する。さらに、本発明は、放電液が異なる混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが静止する場合にワークピースに対して単発パルスエッチング試験加工を行い、異なる混合粉体積比の単発パルス一回の散逸エネルギーを得る。フィッティングによって、放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーと、混合粉体積比と、放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーとの関係式を得て、且つ放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーの計算式を確立し、放電液に混合粉が含まれ且つワークピースが移動する場合のエッチングピットの最大深さの計算式を導出するためのデータを提供し、さらに放電液に対応する混合粉体積比の混合粉が含まれ且つワークピースが移動する場合複数の連続するエッチングピットにおける一番目以外の残りのエッチングピットの最大深さを算出するためのデータを提供し、それにより、後に単発パルスエッチング加工を連続的に行った際のワークピース表面粗さに関するデータの根拠を提供する。
(2)本発明は、放電電圧、放電電流、放電時間、ワークピース材料及びエッチングピットの容積に基づいて、放電液が混合粉を含まない場合及び混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーの計算式を確立し、それにより、後に、異なる放電電圧、異なる放電電流、異なる放電時間又は異なるワークピース材料によって、単発パルスエッチング加工を連続的に行った際のワークピースの表面粗さに関するデータの根拠を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの概略図である。
図2】ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの概略図である。
図3】ワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下は図面を参照して本発明をさらに説明する。
本発明の放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法の具体例は、以下のステップ1~5を含む。
【0020】
ステップ1:単発パルスエッチング試験加工の放電時間、放電電圧及び放電電流を設定する。
【0021】
ステップ2:放電液に混合粉が含まれず且つワークピースが静止する場合に、ワークピースに対して単発パルスエッチング試験加工を一回行い、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットを得る。ワークピースが静止する場合のエッチングピットは、図1に示すように、球冠形である。コンピュータ画像認識技術を利用して、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径a及び最大深さhを測定し、測定した値からワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの容積V、即ち、球冠の体積を算出する。続いて放電液に混合粉が含まれない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossを算出する。
ここで、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの容積Vは、以下の式により算出される。
放電液に混合粉が含まれない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossは、以下の式により算出される。
loss=Winput-Woutput
input=UIt
output=V
式中、Winputは単発パルス一回の放電エネルギーであり、Uは放電電圧であり、Iは放電電流であり、tは単発パルス一回の放電時間であり、Woutputは単発パルス一回のパルス熱量であり、gはワークピース材料の相変化熱である。
ここで、単発パルスエッチング試験加工を行う時に、電極は所定の最下点まで下へ移動し、放電を開始し、続いて電極は上へ移動し、電極の放電が終了するまでに電極とワークピースとの間に流れる放電液はエッチングされた固体粒子を持ち去る。
【0022】
ステップ3:放電液に混合粉が含まれず且つワークピースが予め設定された速度で平行移動する場合に、ワークピースに対して単発パルスエッチング試験加工を一回行い、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットを得る。ワークピースが移動する場合のエッチングピットは、図2に示すように、球冠形の半分と、球冠の中心断面である半楕円を底面とする半楕円錐形とを組み合わせた形状である。
同じ環境条件下において、ワークピースが移動したか否かに関わらず、単発パルス一回の散逸エネルギーは互いに等しい。そして、同じ環境条件下において、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’は、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの容積Vと等しい。ここで、同じ環境条件とは、同じ放電電圧、同じ放電電流、同じ放電時間、及び同じワークピース材料を指す。
同時に同じ環境条件下において、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径a’と最大深さh’の関係は、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径aと最大深さhの関係と同じであって、統一的に以下の関係式で表される。
a=εh
式中、aとhはエッチングピットの最頂部の円弧の半径と最大深さであり、εは係数であり、εの値の範囲は1.20~1.40である。ここで、金属ワークピースはある点でアークエネルギーを受けて拡散した後、発生したエッチングピットの最頂部の円弧の半径と最大深さとの比は、軸方向の伝熱と径方向の伝熱の速度比に影響される。金属ワークピースの軸方向の伝熱と径方向の伝熱の速度比は一定である。即ち、εの値は、ワークピースが移動するか否か及び放電液に混合粉が含まれるか否かに影響されず一定である。
上記ステップ2で測定した、ワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径aと最大深さhから、係数εの値を算出し、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径a’と最大深さh’の関係式を求める。さらにワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最頂部の円弧の半径a’と最大深さh’との関係式、及び上記ステップ2で求められた、同じ環境条件下におけるワークピースが静止する場合の単一のエッチングピットの容積Vの値に基づき、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’を表す以下の式(半球冠の体積と半楕円錐の体積との和の式)において、V’にVを代入することによって、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最大深さh’を算出する。
ここで、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’は、以下の式で表される。
式中、a’及びh’はワークピースが移動する場合のエッチングピットの最頂部の円弧の半径及び最大深さであり、lは放電時間内のワークピースの移動距離であって、l=vtであり、vはワークピースの平行移動の速度である。
【0023】
ステップ4:同じ混合粉を含み且つ混合粉体積比(混合粉を加えた後の放電液の体積に対する混合粉の体積の比率)が異なる5種類の放電液を用意する。ここで、混合粉体積比は0.5を超えないように設定する。次に上記ステップ2における混合粉を含まない放電液を、同じ混合粉を含み且つ混合粉体積比が異なる放電液に置き換えて、ステップ2と同じ手順を5回繰り返し、同じ混合粉を含み且つ混合粉体積比が異なる5種類の放電液の下での単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedの値を得る。つまり、エッチングピットの最頂部の円弧の半径及び最大深さを測定し、測定した値からエッチングピットの容積を算出し、算出した容積などから散逸エネルギーWloss-mixedを算出する。
続いて、放電液が混合粉を含む場合の各単発パルスの散逸エネルギーWloss-mixed、各混合粉体積比及び上記ステップ2における放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossをフィッティングし、同じ環境条件下における、放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedと、混合粉体積比と、放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossとの関係式である以下の式を得る。
式中、λ及びβはいずれも係数であり、cは混合粉体積比である。
【0024】
ステップ5:設定された混合粉体積比に基づいて、放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedと、混合粉体積比と、放電液が混合粉を含まない場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWlossとの上記関係式により、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedを算出する。
放電液が混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedは、放電液が混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積V’’を用いて、以下の式で表される。
この式と、算出された放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単発パルス一回の散逸エネルギーWloss-mixedとから、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積V’’を算出する、即ち、ワークピースが移動するか否かに関わらず、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積を算出する。
続いて関係式a=εh(ここで、a=εh)及び放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含む場合の単一のエッチングピットの容積V’’の値に基づき、ワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの容積V’を表す上述の式において、V’にV’’の値を代入し、h’にhを代入することによって、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最大深さhを算出する。
放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが予め設定された速度で平行移動する場合に、単発パルスエッチング試験加工を連続的に行って、ワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットを得る。図3に示すように、二番目以降の各エッチングピットにおいて、そのエッチングピットの中心は直前のエッチングピットにおける半楕円錐の頂点に位置する。ここで、エッチングピットの中心とは、そのエッチングピットにおける半楕円錐の底面である半楕円の中心である。
計算により得られた、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが移動する場合の単一のエッチングピットの最大深さhに基づき、放電液が対応する混合粉体積比の混合粉を含み且つワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットにおける一番目以外の残りのエッチングピットの最大深さh’’を算出し、単発パルスエッチング加工を連続的に行った際のワークピース表面の粗さに関するデータの根拠を提供する。
ここで、放電液に混合粉が含まれ且つワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットにおける一番目以外の残りのエッチングピットの最大深さh’’は、以下の式で求められる。
ここで、図3におけるdの長さは1.2hにほぼ等しい。
【要約】      (修正有)
【課題】放電連続エッチングピットの最大深さの測定方法を開示する。
【解決手段】放電液に混合粉が含まれず且つワークピースが静止する場合にワークピースに対して単発パルスエッチング試験加工を行うことにより、放電液に混合粉が含まれず且つワークピースが移動する場合のエッチングピットの最大深さを導出する。次に放電液に混合粉が含まれ且つワークピースが静止する場合にワークピースに対して単発パルスエッチング試験加工を行うことにより、単一のエッチングピットの最大深さを導出し、続いて放電液に混合粉が含まれ且つワークピースが移動する場合の複数の連続するエッチングピットにおける一番目以外の残りのエッチングピットの最大深さを導出する。これにより異なる放電電圧、異なる放電電流、異なる放電時間又は異なるワークピース材料で単発パルスエッチング加工を連続的に行った際のワークピースの表面粗さに関するデータの根拠を提供する。
【選択図】図3
図1
図2
図3