(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】衝撃波式スートブロワを備えるボイラシステムおよびその運転方法
(51)【国際特許分類】
F22B 37/48 20060101AFI20241121BHJP
F23J 3/00 20060101ALI20241121BHJP
F28G 7/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F22B37/48 Z
F23J3/00 Z
F28G7/00 A
(21)【出願番号】P 2019236171
(22)【出願日】2019-12-26
【審査請求日】2022-11-24
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100220489
【氏名又は名称】笹沼 崇
(72)【発明者】
【氏名】吉川 充
(72)【発明者】
【氏名】森田 介斗
(72)【発明者】
【氏名】田代 英之
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-278921(JP,A)
【文献】国際公開第2019/185736(WO,A1)
【文献】特開2005-164229(JP,A)
【文献】特開2004-116799(JP,A)
【文献】特開2017-181007(JP,A)
【文献】特開昭56-023629(JP,A)
【文献】実開昭57-083408(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F22B 37/48
F23J 3/00
F28G 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水蒸気を発生させるボイラと、
燃料ガスと酸化剤ガスとの混合気を燃焼させることにより、燃焼ガスの吐出口を形成するノズルから衝撃波を出力するスートブロワ本体を有し、前記衝撃波によって前記ボイラを構成する熱交換器の表面に付着したダストを除去する衝撃波式スートブロワと、
前記スートブロワ本体に設けられて
、押圧ガスによって燃焼開始前に前記吐出口を閉鎖し、燃焼開始後に前記吐出口を開放するように構成された開閉機構と、
前記衝撃波式スートブロワによるダスト除去対象である熱交換器の設置領域に設けられた衝撃力測定器と、
を備え
、
前記設置領域に面する第1壁面に、前記衝撃波式スートブロワの出力口が設けられており、
前記設置領域に面し、前記第1壁面に前記熱交換器を挟んで対向する第2壁面に、前記衝撃力測定器が設置されており、
前記熱交換器は、前記出力口の軸心に重ならない位置に配置されており、
前記第2壁面における前記出力口の軸心上に第1の衝撃力測定器が設置されており、
前記第2壁面における、前記出力口の中心との間に前記熱交換器が介在する位置であって、前記出力口の中心とを結ぶ直線が前記熱交換器を通過する長さが最長となる位置に第2の衝撃力測定器が設置されている、
ボイラシステム。
【請求項2】
請求項
1に記載のボイラシステムを運転する方法であって、
前記衝撃力測定器による測定結果に基づいて、前記衝撃波式スートブロワの燃料ガスおよび酸化剤ガスの充填量、および前記衝撃波式スートブロワの作動頻度の少なくとも一方を決定することを含む、
ボイラシステムの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃波式スートブロワを備えるボイラシステムおよびその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば廃棄物焼却炉の排熱を利用するボイラの熱交換器(例えば過熱器や節炭器)の表面に付着したダストを除去するために、衝撃波式スートブロワが用いられている(例えば、特許文献1参照)。この衝撃波式スートブロワは、燃料ガスおよび酸素のような酸化剤ガスを含む混合気を燃焼させて衝撃波を発生させ、この衝撃波を装置の内部空間に放出するように構成されている。この衝撃波により、装置表面からダストが除去される。
【0003】
一般的に、衝撃波式スートブロワは、燃料ガスと酸化剤ガスを混合して燃焼させる燃焼室と、燃焼室に供給するための燃料ガスおよび酸化剤ガスの各々を貯留しておく燃料ガス充填タンクおよび酸化剤ガス充填タンクを備えており、従来、前記燃焼室へのガス供給は、各充填タンクに燃料ガスおよび酸化剤ガスをそれぞれ所定の設定圧力値になるまで充填し、その後、各充填タンク内のガスを所定時間(各充填タンク内の圧力と燃焼室内の圧力が平衡に達するのに十分な時間)燃焼室へ転送することにより行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このようなボイラの運用においては、衝撃波式スートブロワによって効果的にダストを除去することで、ボイラの収熱性能の維持を図っているが、他方で、燃料ガスおよび酸化剤ガスを必要以上に消費しないことも求められている。ボイラの収熱性能を保ち、かつランニングコストを最適化するために、運転条件、すなわち衝撃波式スートブロワについて作動頻度や1回の作動時当たりの充填ガス量を調整する必要がある。従来、このような調整を行うための判断材料として、ボイラの排熱温度や蒸気温度等のデータを用いていた。しかし、ボイラの排熱温度や蒸気温度にはダスト除去の影響が間接的に反映されるにすぎず、かつ他の要因も影響し得ることから、適切な運用を行うためには長期にわたって蓄積したデータを使用する必要があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、上記の課題を解決するために、短期の運用期間で高精度に衝撃波式スートブロワの運転条件を決定することで、ボイラの収熱性能の維持およびランニングコストの最適化が可能なボイラシステムおよびその運転方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記した目的を達成するために、本発明に係るボイラシステムは、
水蒸気を発生させるボイラと、
燃料ガスと酸化剤ガスとの混合気を燃焼させることにより衝撃波を出力する衝撃波式スートブロワであって、前記衝撃波によって前記ボイラを構成する熱交換器の表面に付着したダストを除去する衝撃波式スートブロワと、
前記衝撃波式スートブロワによるダスト除去対象である熱交換器の設置領域に設けられた衝撃力測定器と、
を備える。
【0008】
この構成によれば、熱交換器の設置領域に設けた衝撃力測定器によって衝撃波式スートブロワからの衝撃力を直接測定することができるので、より短期の運用期間で高精度に衝撃波式スートブロワの運転条件を決定し、ボイラの収熱性能の維持およびランニングコストの最適化を図ることが可能になる。
【0009】
本発明の一実施形態に係るボイラシステムにおいて、前記設置領域に面する第1壁面に、前記衝撃波式スートブロワの出力口が設けられており、前記設置領域に面し、前記第1壁面に前記熱交換器を挟んで対向する第2壁面に、前記衝撃力測定器が設置されていてもよい。この構成によれば、衝撃波測定器を設置領域の壁面に取り付けるので、熱交換器の性能へ与える影響を最小限に抑えるとともに、熱交換器自体に取り付ける場合に比べて配線などの周辺構成を簡素化することができる。
【0010】
本発明の一実施形態に係るボイラシステムにおいて、前記熱交換器は、前記出力口の軸心に重ならない位置に配置されており、前記第2壁面における前記出力口の軸心上の位置に第1の衝撃力測定器が設置されており、前記第2壁面における、前記出力口の中心との間に前記熱交換器が介在する位置に第2の衝撃力測定器が設置されていてもよい。この構成によれば、第2壁面において直接衝撃力を受ける位置と、熱交換器の裏側で衝撃力が弱まる位置にそれぞれ衝撃力測定器を取り付けることにより、使用する衝撃力測定器の数を抑えながら、精度の高い衝撃力測定値を得ることができる。
【0011】
本発明に係るボイラシステムの運転方法は、上記いずれかのボイラシステムを運転する方法であって、前記衝撃力測定器による測定結果に基づいて、前記衝撃波式スートブロワの燃料ガスおよび酸化剤ガスの充填量、および前記衝撃波式スートブロワの作動頻度の少なくとも一方を決定することを含む。
【0012】
この構成によれば、衝撃力測定器によって得た衝撃力の測定結果を用いて、ダスト除去効果およびランニングコストに直結する衝撃波式スートブロワの運転条件であるガス充填量および/またはスートブロワの作動頻度を決定するので、短期の運用期間で効果的にランニングコストの最適化を図ることが可能になる。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によれば、衝撃波式スートブロワから出力される衝撃力を直接測定することによって、より短期の運用期間で高精度に衝撃波式スートブロワの運転条件を決定することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るボイラシステムが設置された廃棄物焼却設備の概略構成を示す側面図である。
【
図2】
図1のボイラシステムに使用される衝撃波式スートブロワの概略構成を示すブロック図である。
【
図3A】
図1のボイラシステムに用いられるスートブロワの構造および、燃焼開始前までの動作を示す断面図である。
【
図3B】
図1のボイラシステムに用いられるスートブロワの構造および、燃焼開始後の動作を示す断面図である。
【
図4】
図1のボイラシステムの熱交換器設置領域における衝撃波測定器の配置の例を示す断面図である。
【
図5】
図1のボイラシステムの熱交換器設置領域における衝撃力実効領域を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る実施形態を図面に従って説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0016】
図1に、本発明の一実施形態に係るボイラシステムSが設置された廃棄物焼却炉1を示す。廃棄物焼却炉1では、廃棄物が燃焼室内で焼却され、焼却により発生した高温の排ガスGが、燃焼室の下流に接続された煙道3を通過する。煙道3は、上部または下部の複数個所で折り返される構造を有している。本明細書では、煙道3全体を折返し部分によって区画して、上流側から順に第1煙道3a、第2煙道3b、第3煙道3c…と呼ぶ。
図1では第3煙道3cまでを示しており、その下流の部分は省略している。
【0017】
ボイラシステムSの本体部分を構成するボイラ5は、排ガスGの流路である煙道3を流れる排ガスGの熱を利用して水蒸気を発生させる。本実施形態では、ボイラ5は、ドラム7と、煙道3に配置された多数の水管(図示せず)と、ボイラ5を構成する熱交換器である過熱器9(図示の例では一次過熱器9Aと二次過熱器9B)とを備えている。この例では、煙道3の上流部分に当たる第1煙道3aおよび第2煙道3bに水管が配置されている。過熱器9は、煙道3の下流部分に当たる第3煙道3cに配置されている。
【0018】
ボイラシステムSは、ボイラ5のほかに、衝撃波式スートブロワ(以下、単に「スートブロワ」と呼ぶ。)11と、衝撃力測定器13(
図4)とを備えている。スートブロワ11は、後に詳述するように、衝撃波を出力する装置であり、前記過熱器9のような、ボイラ5を構成する熱交換器の表面に付着したダストを除去する。衝撃力測定器13は、スートブロワ11によるダスト除去対象である熱交換器の設置領域Rに設けられて、スートブロワ11から出力された衝撃波の衝撃力を測定する。
【0019】
同図に示すように、本実施形態では、第3煙道3cに、2つの過熱器9A,9Bが、排ガスGの流れ方向に沿って離間して設置されている。衝撃波式スートブロワ11は、これらの過熱器9A,9Bの間の空間に衝撃波を出力するように設置されている。なお、ボイラシステムSにおける熱交換器の種類、配置およびスートブロワ11の配置はこの例に限定されない。例えば、図示は省略するが、第2煙道3bに蒸発器および蒸発器のダストを除去するスートブロワが設けられていてもよく、第3煙道3cの下流に接続された第4煙道に、節炭器および節炭器のダストを除去するスートブロワが設けられていてもよい。
【0020】
図2に、本発明の一実施形態に係るスートブロワ11の概略構成を示す。スートブロワ11は、燃料ガスFと酸化剤ガスOとの混合気を燃焼させ、これによって生じた燃焼ガスBを吐出することによって衝撃波SPを出力する。本実施形態では、燃料ガスFとしてメタンガスが、酸化剤ガスOとして酸素ガスが使用されている。もっとも、燃料ガスFおよび酸化剤ガスOはこれらに限定されない。
【0021】
スートブロワ11は、燃焼室15およびこの燃焼室15と一体のスートブロワ本体17を備えている。スートブロワ本体17には、燃焼室15で生成された燃焼ガスBを吐出する吐出口19が設けられている。スートブロワ11は、さらに、燃料供給源である燃料タンク21と、酸化剤供給源である酸化剤タンク23とを備えている。燃料タンク21と燃焼室15との間、つまり燃料タンク21から燃焼室15へ燃料ガスFを供給する燃料供給路25の中途には、燃料貯留タンク27が設けられている。酸化剤タンク23と燃焼室15との間、つまり酸化剤タンク23から燃焼室15へ酸化剤ガスOを供給する酸化剤供給路29の中途には、酸化剤貯留タンク31が設けられている。以下の説明では、便宜上、燃料供給路25のうち、燃料タンク21から燃料貯留タンク27までの部分を第1燃料供給路25aと呼び、燃料貯留タンク27から燃焼室15までの間の部分を第2燃料供給路25bと呼ぶ。同様に、酸化剤供給路29のうち、酸化剤タンク23から酸化剤貯留タンク31までの部分を第1酸化剤供給路29aと呼び、酸化剤貯留タンク31から燃焼室15までの間の部分を第2酸化剤供給路29bと呼ぶ。
【0022】
第1燃料供給路25aおよび第2燃料供給路25bには、それぞれ、第1燃料供給路開閉弁33および第2燃料供給路開閉弁35が設けられており、第1酸化剤供給路29aおよび第2酸化剤供給路29bには、それぞれ、第1酸化剤供給路開閉弁37および第2酸化剤供給路開閉弁39が設けられている。燃料貯留タンク27および酸化剤貯留タンク31には、それぞれ、各貯留タンク27,31内の圧力を測定する燃料貯留タンク圧力測定装置41および酸化剤貯留タンク圧力測定装置43が設けられている。
【0023】
このように構成されたスートブロワ11を作動させる場合、まず、第1燃料供給路開閉弁33および第1酸化剤供給路開閉弁37を開いて、燃料貯留タンク27および酸化剤貯留タンク31を、それぞれ設定した圧力値に達するまで燃料ガスFおよび酸化剤ガスOで充填する。次に、第1燃料供給路開閉弁33および第1酸化剤供給路開閉弁37を閉じ、第2燃料供給路開閉弁35および第2酸化剤供給路開閉弁39を開いて、燃料ガスFおよび酸化剤ガスOを燃焼室15へ供給する。燃焼室15への燃料ガスFおよび酸化剤ガスOの供給時において、第2燃料供給路開閉弁35および第2酸化剤供給路開閉弁39は、所定時間(各貯留タンク27,31内の圧力と燃焼室15内の圧力が平衡に達するのに十分な時間)のみ開放されるように設定されている。燃焼室15への燃料ガスFおよび酸化剤ガスOの供給が完了した後、点火装置55により燃焼を生じさせ、スートブロワ本体17によって衝撃波SPが出力される。
【0024】
ここで、
図3A,3Bを参照して、スートブロワ11の構造および衝撃波SPを発生させるための動作原理を説明する。スートブロワ本体17と一体に設けられた燃焼室15は、詳細には、スートブロワ本体17の両側部から燃焼ガスBの吐出方向に直交するように延びる一対のメイン燃焼室45,45と、一対のメイン燃焼室45,45の間に位置する予備燃焼室47とを有する。一対のメイン燃焼室45,45に、燃料供給路25および酸化剤供給路29が接続されている。一対のメイン燃焼室45,45の間にはシリンダ49が設けられている。シリンダ49内部には、ピストン51がシリンダ49の内周壁に摺動可能に設けられている。スートブロワ本体17のピストン51に対向する部分に、燃焼ガスBの吐出口19を形成するノズル53が設けられている。すなわち、ピストン51は、燃焼ガスBの吐出方向に移動可能に設けられている。
【0025】
ピストン51の後端部(吐出口19と反対側の端部)に設けられた頭部51aがシリンダ49の内周壁に摺接している。ピストン51の頭部51aとシリンダ49後部の内壁との間の空間には、ピストン51を前方へ押圧するための押圧ガス(この例では窒素ガス)Pが充填されている。シリンダ49内空間の、ピストン51の頭部51aよりも前方の部分が前記予備燃焼室47を形成している。
図3Aに示す燃焼開始前の状態においては、押圧ガスPの圧力によってピストン51が吐出口19を閉塞している。
【0026】
予備燃焼室47には点火装置55が設けられている。メイン燃焼室45に導入され、
図3Bに示すように予備燃焼室47に流入した燃料ガスFと酸化剤ガスOとの混合ガスが点火装置55によって点火され、予備燃焼室47において混合気の燃焼が開始されると、予備燃焼室47内の圧力上昇によってピストン51が後方へ押し戻され、吐出口19が開放される。吐出口19が開いている間、予備燃焼室47からメイン燃焼室45全体に混合気の燃焼が広がり、これによって生成された燃焼ガスBがノズル53から排出される。この排出された燃焼ガスBによって衝撃波SPが出力される。
【0027】
このように、本実施形態では、燃焼室15に設けられたピストン51と押圧ガスPが、燃焼開始前に燃焼ガスBの吐出口19を閉鎖し、燃焼開始後に前記吐出口19を開放するように構成された開閉機構57を構成している。もっとも、ここで説明した開閉機構57の態様は一例にすぎず、このように作用するものであれば他の態様の機構を用いてもよい。
【0028】
次に、
図4を参照して、スートブロワ11が出力する衝撃波SPの衝撃力を測定するための構成について説明する。なお、以下の説明において、スートブロワ11によるダスト除去対象である熱交換器として過熱器9を例とし、この熱交換器の設置領域Rとして廃棄物焼却炉1の第3煙道3cを例として説明するが、熱交換器およびその設置領域Rはこの例に限定されない。
【0029】
図4に示すように、この例では、設置領域Rに複数の過熱器9が設置されている。具体的には、第3煙道3cにおいて、排ガスG流れの上流側から順に二次過熱器9Bおよび一次過熱器9Aが、互いに離間した状態で配置されている。スートブロワ11はこれら2つの過熱器9のダストを除去するように設けられている。
【0030】
この第3煙道3cに面する一壁面に、スートブロワ11の出力口であるノズル53が配置されている。以下、ノズル53が配置されている壁面を「第1壁面59」と呼ぶ。具体的には、第1壁面59に形成された貫通孔に、ノズル53が挿通されている。より詳細には、ノズル53は両過熱器9A,9B間の隙間に臨むように配置されている。換言すれば、各過熱器9は、ノズル53の軸心Aに重ならない位置に配置されている。
【0031】
他方、第3煙道3cに面する他の壁面のうち、過熱器9を挟んで対向する壁面(以下、「第2壁面61」と呼ぶ。)上に衝撃力測定器13が設けられている。本実施形態では、衝撃力測定器13として圧力センサを使用している。なお、衝撃力測定器13としては、圧力センサに限らず、衝撃波による衝撃力を適切に測定できるものであれば他の測定手段、例えば歪みゲージを用いてもよい。
【0032】
本実施形態では複数の衝撃力測定器13を使用している。具体的には、第2壁面61における、ノズル53の軸心A上の位置(以下、「第1測定位置P1」と呼ぶ。)に1つの衝撃力測定器13(第1衝撃力測定器13A)が設置されている。換言すれば、第1衝撃力測定器13Aが設置される第1測定位置P1は、第2壁面61における、ノズル先端53aの中心Cとの間に過熱器9が存在しない位置であり、かつノズル先端53aの中心Cからの距離が最短となる位置である。
【0033】
他の衝撃力測定器13(第2衝撃力測定器13B)は、第2壁面61における、ノズル先端53aの中心Cとの間に各過熱器9が介在する位置(以下、「第2測定位置P2」と呼ぶ。)に設置されている。この例では2つの過熱器9にそれぞれ対応する計2つの第2衝撃力測定器13Bが設けられている。
【0034】
より具体的には、第2衝撃力測定器13Bは、ノズル53の軸心A方向および排ガスGの流れ方向に平行な平面での断面視において、ノズル先端53aの中心Cと第2衝撃力測定器13Bとを結ぶ直線が、過熱器9を通過する長さが最長となる第2壁面上の位置に配置されている。
【0035】
すなわち、図示の例では、第2壁面61において直接衝撃力を受ける第1測定位置P1と、熱交換器の裏側で衝撃力が弱まる第2測定位置P2にそれぞれ衝撃力測定器13を取り付けている。衝撃力測定器13の取付位置をこのように設定することにより、使用する衝撃力測定器13の数を抑えながら、精度の高い衝撃力測定値を得ることができる。この例では、1つの過熱器9につき2つの衝撃力測定器13のみを使用している。また、図示するように、第1測定位置P1を2つの過熱器9A,9Bから等距離の位置とすることにより、並置された2つの過熱器9A,9Bにつき3つの衝撃力測定器13のみを使用して精度の高い衝撃力測定値を得ることができる。
【0036】
なお、第2測定位置P2の設置領域R(煙道3)の幅方向(ノズル53の軸心A方向および排ガスGの流れ方向に直交する方向)の位置は本実施形態ではノズル先端53aの中心Cと同一位置としているが、これに限定されず、適宜選択してよい。
【0037】
なお、設置領域Rにおいて衝撃力測定器13を設ける位置は、上記の例に限定されない。例えば、衝撃力測定器13は第2壁面61上の他の位置に設けてもよいし、他の壁面上に設けてもよい。さらには、衝撃力測定器13を過熱器9に直接取り付けてもよい。もっとも、熱交換器の性能へ与える影響を最小限に抑えるとともに、配線等の周辺構造を簡素化する観点から、衝撃力測定器13を、設置領域Rに面する壁面に設置することが好ましい。なお、本実施形態では、設置領域Rの壁面はメンブレンパネルによって形成されており、衝撃力測定器13を壁面に取り付ける場合、メンブレンパネルのフィン部に取り付けることが好ましい。
【0038】
また、衝撃力測定器13は、設置領域R内でも、特に、スートブロワ11の衝撃波SPが過熱器9(熱交換器)に実質的に衝撃力を及ぼし得る領域部分(衝撃力実効領域)Reに設けられることが好ましい。具体的には、衝撃力実効領域Reは、
図5に示すように、過熱器9のノズル53の軸心A方向および排ガスGの流れ方向に平行な平面での断面視において、ノズル先端53aの中心Cと、第1測定位置P1と、第3測定位置P3で囲まれた領域である。この第3測定位置P3とは、上記断面視において、ノズル先端53aの中心Cと第2壁面61上の衝撃力測定器13とを結ぶ直線が過熱器9を通過し得る、ノズル先端53aから最も離間した位置として定義される。
【0039】
また、設置領域Rに設ける衝撃力測定器13の数は上記の例に限定されず、1つの熱交換器につき3つ以上であってもよく、1つであってもよい。
【0040】
次に、上記のように構成されたボイラシステムSの運転方法について説明する。本実施形態では、衝撃力測定器13による測定結果に基づいて、スートブロワ11の運転条件であるスートブロワ11の燃料ガスFおよび酸化剤ガスOの充填量(すなわち、各貯留タンクの圧力設定値)、およびスートブロワ11の作動頻度の少なくとも一方を決定する。このような運転条件の決定およびこれに基づく運転制御は、
図2に示すように、ボイラシステムS内に設けたスートブロワ11の制御装置63によって行う。なお、図示は省略するが、制御装置63は、衝撃力測定器13による測定結果のほかに、ボイラ5の収熱性能を判断するための各種測定値を収集し、これらの測定結果も併せてスートブロワ11の運転条件の決定および制御を行うものであってよい。
【0041】
衝撃力の測定値と、これに対応するガス充填量や作動頻度の運転条件は、事前検証として解析または試験的な運転を行うことにより設定することができる。このボイラシステムSではスートブロワ11の衝撃力を直接測定するので、事前検証と短期間の実運用で最適な運転条件を設定することが可能になる。あるいは、ボイラシステムSの実用運転を、当初は標準的なスートブロワ11の運転条件で開始したうえで、得られた測定値に基づいてスートブロワ11の運転条件を最適化していってもよい。この場合にも、短期間の運用でスートブロワ11の運転条件の最適化を行うことができる。
【0042】
以上説明した本実施形態に係るボイラシステムSおよびその運転方法によれば、ボイラ5を構成する熱交換器の設置領域Rに設けた衝撃力測定器13によって衝撃波式スートブロワ11からの衝撃力を直接測定することができるので、より短期の運用期間で高精度に衝撃波式スートブロワ11の運転条件を決定し、ボイラ5の収熱性能の維持とランニングコストの最適化を図ることが可能になる。
【0043】
以上のとおり、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態を説明したが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、種々の追加、変更または削除が可能である。したがって、そのようなものも本発明の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0044】
5 ボイラ
9 過熱器(熱交換器)
11 衝撃波式スートブロワ
13 衝撃力測定器
53 ノズル(出力口)
59 第1壁面
61 第2壁面
F 燃料ガス
O 酸化剤ガス
R 設置領域
SP 衝撃波