(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】抵抗器の製造方法及び抵抗器
(51)【国際特許分類】
H01C 17/00 20060101AFI20241121BHJP
H01C 13/00 20060101ALI20241121BHJP
H01C 7/00 20060101ALI20241121BHJP
H01C 1/14 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01C17/00 100
H01C13/00 J
H01C7/00 400
H01C1/14 Z
(21)【出願番号】P 2020011192
(22)【出願日】2020-01-27
【審査請求日】2022-12-21
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】常盤 陽平
(72)【発明者】
【氏名】江藤 航児
(72)【発明者】
【氏名】野口 智史
(72)【発明者】
【氏名】金子 玲那
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/076817(WO,A1)
【文献】特開2000-232007(JP,A)
【文献】国際公開第2016/063928(WO,A1)
【文献】特開2009-182144(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 17/00
H01C 13/00
H01C 7/00
H01C 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる材料である電極材及び抵抗材を、前記電極材と
前記抵抗材と
前記電極材との順で重ね、重ね方向に圧力を加えて
クラッド接合することにより
一体化した抵抗器母材を形成し、
前記抵抗器母材
が挿入可能な寸法の入口開口と、前記抵抗器母材の外形寸法よりも小さい寸法の
出口開口と、が形成されたダイスに
、引き抜き工法を用いて前記抵抗器母材を通し、前記
出口開口
により前記抵抗器母材を全方向から圧縮変形させ
ることによって、
前記電極材に形成した突出部が前記抵抗材の端面に接合されるとともに、前記突出部と前記抵抗材との境界に段差のない前記抵抗器母材を形成し、
前記ダイスに通された前記抵抗器母材から個別の抵抗器を得る、
抵抗器の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の抵抗器の製造方法であって、
前記抵抗器母材を、前記
出口開
口よりも小さい寸法の
出口開
口が形成された別のダイスに通す、
抵抗器の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の抵抗器の製造方法であって、
前記
出口開
口が矩形である、
抵抗器の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の抵抗器の製造方法であって、
前記
出口開
口は、前記矩形の一の辺における一部が開口中央に向けて突出した形状であり、
前記突出した形状により前記抵抗器母材に溝が形成され、
前記溝が形成された前記抵抗器母材の一の面側から該一の面の反対面側に向けて、前記抵抗器母材を切断する、
抵抗器の製造方法。
【請求項5】
回路基板に実装される抵抗器であって、
方形である抵抗材と、
前記抵抗材の一方の端面に接合された第一電極材と、
前記抵抗材の他方の端面に接合された第二電極材と、を備え、
前記第一電極材および前記第二電極材は、前記抵抗材に接合する胴体部と、前記胴体部から実装面の方向に延びる延長部と、を有し、
前記胴体部は、前記抵抗材に向けて突出し、前記抵抗材を接合する端面と略同形状の端面を有する突出部を含み、
前記突出部と前記抵抗材との境界には段差がなく、
前記抵抗器の表面において、
前記回路基板への
前記実装面と、
前記実装面の反対面と、
前記第一電極材において前記抵抗材と接合された面の反対面と、
前記第二電極材において前記抵抗材と接合された面の反対面と
、
前記実装面と対向する前記抵抗材および前記突出部の面と、
前記第一電極材の延長部のうち前記第二電極材の延長部と対向する面と、
前記第二電極材の延長部のうち前記第一電極材の延長部と対向する面と、には、
前記第一電極材と前記抵抗材と前記第二電極材とが連なる接合方向に対して直交する方向に延びる筋状の凹凸となる摺動痕を有する、
抵抗器。
【請求項6】
請求項
5に記載の抵抗器であって、
前記抵抗器の前記接合方向における長さが3.2mm以下であり、前記抵抗器の抵抗値が2mΩ以下である、
抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗器の製造方法及び抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に実装される抵抗器において、低抵抗で高電流測定に適した電流経路を有する抵抗器が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、電子機器の高機能化に伴い、電子部品を実装するための回路基板に対して、高密度実装の要求が高まっている。しかし、特許文献1に記載された抵抗器では、寸法精度を維持しつつ、更に小型にすることが難しく、依然として改善の余地が残されていた。
【0005】
本発明は、上記問題点に着目してなされたものであり、寸法精度を確保しつつ、抵抗器を小型にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様としての抵抗器の製造方法は、互いに異なる材料である電極材及び抵抗材を、前記電極材と前記抵抗材と前記電極材との順で重ね、重ね方向に圧力を加えてクラッド接合することにより一体化した抵抗器母材を形成し、前記抵抗器母材が挿入可能な寸法の入口開口と、前記抵抗器母材の外形寸法よりも小さい寸法の出口開口と、が形成されたダイスに、引き抜き工法を用いて前記抵抗器母材を通し、前記出口開口により前記抵抗器母材を全方向から圧縮変形させることによって、前記電極材に形成した突出部が前記抵抗材の端面に接合されるとともに、前記突出部と前記抵抗材との境界に段差のない前記抵抗器母材を形成し、前記ダイスに通された前記抵抗器母材から個別の抵抗器を得る、という製造方法である。
【0007】
また、本発明の一態様としての抵抗器は、回路基板に実装される抵抗器であって、方形である抵抗材と、前記抵抗材の一方の端面に接合された第一電極材と、前記抵抗材の他方の端面に接合された第二電極材と、を備え、前記第一電極材および前記第二電極材は、前記抵抗材に接合する胴体部と、前記胴体部から実装面の方向に延びる延長部と、を有し、前記胴体部は、前記抵抗材に向けて突出し、前記抵抗材を接合する端面と略同形状の端面を有する突出部を含み、前記突出部と前記抵抗材との境界には段差がなく、前記抵抗器の表面において、前記回路基板への前記実装面と、前記実装面の反対面と、前記第一電極材において前記抵抗材と接合された面の反対面と、前記第二電極材において前記抵抗材と接合された面の反対面と、前記実装面と対向する前記抵抗材および前記突出部の面と、前記第一電極材の延長部のうち前記第二電極材の延長部と対向する面と、前記第二電極材の延長部のうち前記第一電極材の延長部と対向する面と、には、前記第一電極材と前記抵抗材と前記第二電極材とが連なる接合方向に対して直交する方向に延びる筋状の凹凸となる摺動痕を有する、抵抗器である。
【発明の効果】
【0008】
これらの態様によれば、寸法精度を確保しつつ、抵抗器を小型にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の第一実施形態に係る抵抗器を説明する斜視図である。
【
図2】
図2は、本発明の第二実施形態に係る抵抗器を説明する斜視図である。
【
図3】
図3は、第二実施形態に係る抵抗器を回路基板への実装面側からみた斜視図である。
【
図4】
図4は、本発明の変形例1に係る抵抗器を説明する側面図である。
【
図5】
図5は、本発明の変形例2に係る抵抗器を説明する側面図である。
【
図6】
図6は、本発明の変形例3に係る抵抗器を説明する斜視図である。
【
図7】
図7は、変形例3に係る抵抗器が回路基板に実装された状態を説明する断面図である。
【
図8】
図8は、本発明の実施形態に係る抵抗器の製造方法を説明する模式図である。
【
図9A】
図9Aは、
図8に示す工程(c)に用いられるダイスを引き抜き方向Fの上流側からみた正面図である。
【
図9B】
図9Bは、本実施形態に係る抵抗器の製造方法における形状を加工する工程を説明する模式図である。
【
図10】
図10は、本実施形態に係る抵抗器の製造方法において、抵抗器母材のサイズをダイスに挿通可能なサイズに調整する工程を説明する模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[抵抗器の説明]
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る抵抗器1について、
図1を用いて詳細に説明する。
図1は、本実施形態に係る抵抗器1の構造を説明する斜視図である。
【0011】
抵抗器1は、抵抗材10と、第一電極材11と、第二電極材12とを備え、第一電極材11、抵抗材10、及び第二電極材12が、この順に接合されたものである。抵抗器1は、
図1には示されていない回路基板等に実装される。例えば、抵抗器1は、回路基板のランドパターン上に形成された一対の電極の上に配置される。本実施形態では、抵抗器1は、電流検出用抵抗器(シャント抵抗器)として用いられる。
【0012】
なお、本実施形態では、第一電極材11と第二電極材12が並ぶ方向(抵抗器1の長手方向)をX方向(第一電極材11側を+X方向、第二電極材12側を-X方向)とする。そして、抵抗器1の幅方向をY方向(
図1の紙面手前側を+Y方向、
図1の紙面奥側を-Y方向)とし、抵抗器1の厚み方向をZ方向とし、X方向、Y方向、Z方向は互いに直交するものとする。
【0013】
抵抗材10は、用途に合わせて低抵抗から高抵抗の材料を用いることが可能である。本実施形態において、抵抗材10は、大電流を精度よく検出する観点から、比抵抗が小さく、且つ抵抗温度係数(TCR)が小さい抵抗体材料であることが好ましい。一例として、銅・マンガン・ニッケル系合金、銅・マンガン・スズ系合金、ニッケル・クロム系合金、銅・ニッケル系合金等を使用することができる。
【0014】
本実施形態においては、抵抗材10は、高密度実装の観点から、方形に形成されているが、抵抗材10の形状は台形状であってもよい。
【0015】
第一電極材11及び第二電極材12は、安定した検出精度を確保する観点から、電気伝導性及び熱伝導性の良好な導電性材料であることが好ましい。一例として、第一電極材11及び第二電極材12として、銅、銅系合金等を使用することができる。銅の中では、無酸素銅(C1020)を使用することが好ましい。第一電極材11と第二電極材12とは、互いに同一のものを使用できる。
【0016】
第一電極材11は、抵抗材10の一方の端面と略同形状の端面を有し、この端面において抵抗材10の一方の端面に接合されている。また、第二電極材12は、抵抗材10の一方の端面と向かい合う他方の端面に対して略同形状の端面を有し、この端面において抵抗材10の他方の端面に接合されている。
【0017】
本実施形態において、抵抗材10と第一電極材11との接合部13、及び抵抗材10と第二電極材12との接合部14は、互いにクラッド接合(固相接合)により接合している。すなわち、接合部13,14における接合面の各々は、抵抗材10と電極材11,12双方の金属原子が互いに拡散した拡散接合面となっている。
【0018】
抵抗材10と第一電極材11との接合部13では、抵抗材10と第一電極材11との境界に段差がなく平坦である。換言すれば、抵抗材10と第一電極材11とは、滑らかに連続している。抵抗材10と第二電極材12との接合部14においても同様に、抵抗材10と第二電極材12との境界に段差がなく平坦であり、抵抗材10と第二電極材12とは、滑らかに連続している。すなわち、接合部13,14の表面は、抵抗器1の全周に亘って平坦(段差がない状態)に形成されている。
【0019】
TCR(抵抗温度係数[ppm/℃])を確保しつつ、抵抗値を小さくする観点から、抵抗材10の長さ方向における抵抗材10の長さL0と、第一電極材11の長さL1と、第二電極材12の長さL2の比は、任意に設定することができ、一例として、L1:L0:L2=1:2:1とすることができる。
【0020】
更に、抵抗値を小さくする観点から、抵抗器1の長さL(=L1+L0+L2)に対する抵抗材10の長さL0の比率は、50%以下とすることができる。
【0021】
本実施形態において、抵抗器1は、表面に、筋状凹凸15を有する。本実施形態においては、筋状凹凸15は、抵抗器1における回路基板への実装面16と、実装面16の反対面17とに形成されている。また、筋状凹凸15は、幅方向Yに亘って形成されている。ここで、抵抗器1の実装面16とは、抵抗器1において回路基板に対向する面全体を意味する。
【0022】
また、筋状凹凸15は、第一電極材11と抵抗材10との接合面に対する反対面11aと、第二電極材12と抵抗材10との接合面に対する反対面12aとの各々に、幅方向Yに亘って形成されている。
【0023】
筋状凹凸15の凹部と凸部による表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で、約0.2~0.3μmmとすることができる。
【0024】
本実施形態においては、高密度回路基板に適合させる観点から、X方向における抵抗器1の長さLが3.2mm以下、Y方向における抵抗器1の長さWが1.6mm以下(製品規格3126サイズ以下)とすることができる。また、後述する製造方法における取り扱い性、例えば、抵抗器1の基となる抵抗器母材の破断防止等の観点から、X方向における抵抗器1の長さLは1.0mm以上、Y方向における抵抗器1の長さWは0.5mm以上(製品規格1005サイズ以上)とすることができる。
【0025】
また、本実施形態においては、抵抗器1の抵抗値は、低抵抗を実現する観点から、2mΩ以下となるように調整されている。ここでの低抵抗とは、一般的な抵抗器の抵抗値よりも低い抵抗値を含む概念である。
【0026】
本実施形態において、抵抗器1のY方向に延びる縁辺部分Pは、いずれも面取り形状を有している。本実施形態では、縁辺部分Pに生じるエレクトロマイグレーションの抑制とヒートサイクル耐性向上の観点から、縁辺部分Pの曲率半径は、R=0.1mm以下であることが好ましい。
【0027】
<作用効果>
次に、第一実施形態における作用効果について説明する。
【0028】
本実施形態において、抵抗材10と第一電極材11との接合部13、及び抵抗材10と第二電極材12との接合部14の各々には、抵抗材10と電極材11,12双方の金属原子が互いに拡散した拡散接合面が形成されている。これにより、抵抗材10と第一電極材11、及び抵抗材10と第二電極材12とが互いに強固に接合されるため、良好な電気的特性が得られる。
【0029】
本実施形態において、抵抗器1は、方形に形成されている。抵抗材10が方形であると、抵抗材10の端面と略同形状に形成され、抵抗材10の端面に接合された第一電極材11及び第二電極材12から抵抗材10を流れる電流の経路が直線的になるため抵抗値を安定させることができる。また、抵抗器1では、抵抗材10が電極材11,12の間に接合されているため、抵抗材10の体積を必要最小限にして抵抗値を調整することが可能である。
【0030】
また、抵抗器1では、抵抗材10と第一電極材11との接合、及び抵抗材10と第二電極材12との接合には、例えば、電子ビームによる溶接が用いられていないため、接合部13,14にはビード(凹凸形状の溶接痕)がない。したがって、抵抗器1の表面にワイヤーボンディング等を施す場合にボンディング性を損なうことがない。
【0031】
また、本実施形態において、接合部13,14の表面は、抵抗器1の全周に亘ってフラットに形成されている。このため、抵抗器1を回路基板へ実装する際などに、ノズルを用いて抵抗器1を吸着しながら拾い上げる作業において、ノズルへの吸着性が高められる。したがって、抵抗器1を回路基板へ実装する際の作業性が向上する。
【0032】
本実施形態において、筋状凹凸15は、実装面16と、実装面16の反対面17と、第一電極材11における抵抗材10と接合された面の反対面11aと、第二電極材12における抵抗材10と接合された面の反対面12aとに、幅方向Yに亘って形成されている。このため、抵抗器1を扱う作業者にとっては、回路基板への実装の際に、抵抗器1の取付方向や取付姿勢の視認性がよい。
【0033】
なお、この筋状凹凸15は、ビードによる凹凸よりも滑らかであり、ワイヤーボンディングにおけるボンディング性を損なうものではない。
【0034】
本実施形態において、抵抗器1の接合方向(X方向)における長さLは、3.2mm以下であり、Y方向における長さWは、1.6mm以下になるように形成される。また、抵抗器1の抵抗値が2mΩ以下になるように調整される。
【0035】
このサイズでは、抵抗材と電極材とを溶接する一般的な抵抗器であれば、寸法精度を確保する観点から、例えば、電子ビームによる溶接で生じるビードの影響を考慮する必要があるが、本実施形態に係る抵抗器1は、抵抗材10と電極材11,12とが拡散接合により接合されているため、このように小型で、かつ低抵抗に設計できる。
【0036】
本実施形態において、抵抗器1の縁辺部分Pは、面取り形状になっている。一般的な抵抗器では、面取りされていない角部分において電流密度が大となり、エレクトロマイグレーションと呼ばれる現象が発生したり、同様にして角部分に熱応力が集中したりすることにより、抵抗器の欠損が発生しやすくなっていた。また、このエレクトロマイグレーションは、回路サイズが微小化するにつれて無視できない影響を及ぼすため、抵抗器が小型になるほど、エレクトロマイグレーションが顕著化することが懸念されていた。
【0037】
これに対して、本実施形態に係る抵抗器1は、縁辺部分Pが面取りされていることにより、縁辺部分Pにおける電流密度の偏りが緩和される。これにより、エレクトロマイグレーションの発生を抑制することができる。また、同様にして、熱応力集中が緩和できるため、ヒートサイクル耐性を向上することができる。
【0038】
したがって、抵抗器1によれば、寸法精度を確保しつつ、抵抗器を小型にすることができる。これにより、抵抗器1は、近年の電子部品を実装するための回路基板に対する高密度要求に応えることができる。また、これに加えて、電極材11,12と抵抗材10の接合部13,14にビードがないことから、電極間距離が確保しやすいため、抵抗値を小さくすることが容易である。したがって、抵抗器1は、高電力要求にも応えることができる。
【0039】
<第二実施形態>
図2は、本発明の第二実施形態に係る抵抗器2を説明する斜視図であり、
図3は、第二実施形態に係る抵抗器2を回路基板への実装面側からみた斜視図である。
【0040】
抵抗器2は、抵抗材10と、第一電極材21と、第二電極材22とを備える。抵抗材10、第一電極材21、及び第二電極材22は、接合部23,24において互いにクラッド接合されている。抵抗器2は、第一実施形態に係る抵抗器1とは形状の異なる第一電極材21及び第二電極材22を有する。
【0041】
第一電極材21は、抵抗材10に接合する胴体部31と、胴体部31から-Z方向に延びる延長部32とを備える。また、第二電極材22は、抵抗材10に接合する胴体部41と、胴体部41と一体に形成され、胴体部41から-Z方向に延びる延長部42とを備える。
【0042】
胴体部31は、抵抗材10に向けて突出し、抵抗材10の一方(+X方向)の端面と略同形状の端面を有する突出部311を備える。胴体部31は、この突出部311において、抵抗材10の+X方向の端面と突き合わされた態様で接合されている。胴体部31と抵抗材10との接合部23では、抵抗材10と胴体部31の突出部311との境界に段差がなく平坦であり、抵抗材10と胴体部31とは滑らかに連続している。すなわち、接合部23の表面は、抵抗材10と胴体部31との境界の全周に亘って平坦(段差が無い状態)に形成されている。
【0043】
第二電極材22における胴体部41もまた、胴体部31と同様に構成されている。胴体部41は、突出部411において、抵抗材10の-X方向の端面と突き合わされた態様で接合されている。
【0044】
胴体部31には、Z方向に延びる延長部32が形成されているため、抵抗器2を回路基板に実装する際には、延長部32を回路基板側に向けることにより、延長部32が回路基板と接合するための脚部を構成することができる。延長部42も延長部32と同様に構成されている。
【0045】
また、本実施形態においては、抵抗器2は、抵抗器2における回路基板への実装面51と、実装面51の反対面52と、第一電極材21における抵抗材10と接合された面の反対面21aと、第二電極材22における抵抗材10と接合された面の反対面22aの各々に、X方向に直交するY方向に亘って筋状凹凸50を有する。ここで、実装面51とは、回路基板に対向する面全体を意味し、延長部32,42の回路基板側の面だけでなく、抵抗材10の回路基板側の面も含む。
【0046】
<作用効果>
次に、第二実施形態における作用効果について説明する。
【0047】
接合部23における接合面の各々は、抵抗材10と電極材21の金属原子が互いに拡散した拡散接合面となっている。このため、抵抗材10と第一電極材21との間が電子ビームによって溶接されていなくとも、互いに強固に接合されている。また、抵抗材10と第二電極材22との間も同様である。これにより、抵抗器2は、良好な電気的特性が得られる。
【0048】
また、抵抗器2では、
図1に示した抵抗器1による効果として説明した、視認性、ボンディング性、ノズル吸着性、エレクトロマイグレーションの抑制及びヒートサイクル耐性に加えて、以下の効果を奏する。
【0049】
すなわち、第一電極材21及び第二電極材22が延長部32,42を有することにより、抵抗器2が回路基板へ実装される際に、延長部32,42が脚部を構成できる。これにより、抵抗器2が回路基板へ実装される際、抵抗材10と回路基板とが接触しないように回路基板と抵抗材10との間に絶縁のための構成を設ける必要がない。
【0050】
<変形例>
続いて、第二実施形態の変形例について説明する。
【0051】
(変形例1)
図4は、本実施形態の変形例1に係る抵抗器3を説明する側面図である。
【0052】
抵抗器3は、抵抗材10に接合する第一電極材61と第二電極材62とを備える。第一電極材61は、抵抗材10に接合する胴体部63と、胴体部63と一体に形成されて、胴体部63から-Z方向に延びる延長部64とを備える。また、第二電極材62は、抵抗材10に接合する胴体部65と、胴体部65と一体に形成され、胴体部65から-Z方向に延びる延長部66とを備える。
【0053】
胴体部63は、抵抗材10に向けて突出し、抵抗材10の一方(+X方向)の端面と略同形状の端面を有する突出部631を備える。胴体部63は、この突出部631において、抵抗材10の+X方向の端面と突き合わされた態様で接合されている。また、胴体部65は、抵抗材10に向けて突出し、抵抗材10の一方(-X方向)の端面と略同形状の端面を有する突出部651を備える。胴体部65は、この突出部651において、抵抗材10の-X方向の端面と突き合わされた態様で接合されている。
【0054】
なお、
図4には現れていないが、抵抗器3の外周面にも、Y方向に亘って筋状凹凸が形成されている。
【0055】
変形例1においては、X方向における抵抗材10の長さL0が、第一電極材61の長さL1及び第二電極材62の長さL2よりも小さくなるように形成されている。
【0056】
また、抵抗器3における抵抗材10のZ方向の長さdr、第一電極材61の胴体部63の長さdr、及び第二電極材62の胴体部65の長さdrは、第二実施形態の抵抗器2のZ方向における抵抗材10の長さdr、第一電極材21の胴体部31の長さdr、及び第二電極材22の胴体部41の長さdrよりも大きく形成されている。
【0057】
また、延長部64,66のZ方向の長さdlは、抵抗器3における抵抗材10、胴体部63及び胴体部65の長さdrよりも小さく、つまり短く形成されている。
【0058】
また、X方向において、第一電極材61の胴体部63の長さL11と第二電極材62の胴体部65の長さL21とが、X方向における抵抗器2の胴体部31,41各々の長さよりも短く形成されている。
【0059】
このような構成にすることにより、第二実施形態に比べ抵抗体の長さL0を短くした場合でも、第一電極材61と抵抗材10と第二電極材62とがこの順で重ねられ、並接接合による接合面を有していることから、電極間距離を確保できる。このため、回路基板と抵抗材10の実装面との距離を確保しつつ、抵抗器3の低抵抗化を実現できる。また、抵抗器3が実装される回路基板の設計の自由度を向上させることができる。
【0060】
(変形例2)
図5は、本実施形態の変形例2に係る抵抗器4を説明する側面図である。抵抗器4は、抵抗材10に接合する第一電極材71と第二電極材22とを備える。第一電極材71は、抵抗材10に接合する胴体部73と延長部74とを備える。また、第二電極材72は、抵抗材10に接合する胴体部75と延長部76とを備える。
【0061】
胴体部73は、抵抗材10の一方(+X方向)の端面と略同形状の端面を有する突出部731を備える。胴体部73は、この突出部731において、抵抗材10の端面と突き合わされた態様で接合されている。また、胴体部75は、抵抗材10の他方(-X方向)の端面と略同形状の端面を有する突出部751を備え、この突出部751において、抵抗材10の端面と突き合わされた態様で接合されている。
【0062】
なお、
図5には現れていないが、抵抗器4の外周面にも、Y方向に亘って筋状凹凸が形成されている。
【0063】
抵抗器4は、延長部74,76のZ方向の長さdlが、抵抗材10の長さdr、第一電極材71の胴体部73の長さdr及び第二電極材72の胴体部の長さdrよりも大きく形成されている。これにより、変形例1に比べて、回路基板と抵抗材10の実装面との間隔を広げつつ、抵抗器4の低抵抗化を実現できる。また、変形例1と同様に、抵抗器4が実装される回路基板の設計の自由度を向上させることができる。本変形例においては、Z方向における延長部64,66の長さdlは、抵抗器4のTCR特性や高周波特性を考慮して決定することができる。
【0064】
(変形例3)
図6は、本実施形態の変形例3に係る抵抗器5を説明する斜視図である。また、
図7は、抵抗器5が回路基板に実装された状態を説明する断面図である。
【0065】
抵抗器5は、抵抗材10に接合する第一電極材81と第二電極材82とを備える。第一電極材81は、抵抗材10に接合する胴体部83と延長部84とを備える。また、第二電極材82は、抵抗材10に接合する胴体部85と延長部86とを備える。
【0066】
胴体部83は、抵抗材10に接合する突出部831を備える。また、胴体部85は、抵抗材10に接合する突出部851を備える。
【0067】
なお、抵抗器5の外周面にもY方向に亘って筋状凹凸が形成されているが、説明の都合上、
図6では省略されている。
【0068】
本変形例に係る抵抗器5では、Z方向において、第一電極材81の長さd1が第二電極材82の長さd2よりも大きい(d1>d2)。
【0069】
本変形例によれば、
図7に示すように、回路基板に形成されるランドパターン91,92と抵抗器5の一方の延長部86との間に別の半導体93を実装する際、Z方向における第一電極材81の長さd1を第二電極材82の長さd2よりも大きくする設計が可能である。これにより、抵抗器5と回路基板との間に介在する半導体93の厚さを吸収することができ、回路基板からの抵抗器5の突出量を規定値に納めることができる。なお、抵抗器5においては、延長部86と回路基板との間に、半導体93とは異なる厚さの別の半導体が介在してもよい。
【0070】
[抵抗器の製造方法の説明]
次に、上述した実施形態に係る抵抗器1~5の製造方法について、
図8を用いて詳細に説明する。上述した実施形態に係る抵抗器1,2、また変形例に係る抵抗器3,4,5の製造方法の基本構成は同じであるため、以下では、抵抗器2の製造方法について説明する。
【0071】
図8は、第二実施形態に係る抵抗器2の製造方法を説明する模式図である。
【0072】
第二実施形態に係る抵抗器2の製造方法は、材料を準備する工程(a)と、材料を接合する工程(b)と、形状を加工する工程(c)と、個々の抵抗器に切断する工程(d)と、レーザを用いて抵抗器の抵抗値を調整する工程(e)とを備える。
【0073】
材料を準備する工程(a)では、抵抗材10と電極材21、22を準備する。抵抗材10と電極材21、22は平角状の長尺の線材である。本実施形態では、抵抗器のサイズ、抵抗値及び加工性の観点から、抵抗材10の材料として銅・マンガン・ニッケル系合金、銅・マンガン・スズ系合金を使用し、電極材21、22の材料として無酸素銅(C1020)を使用することが好ましい。
【0074】
材料を接合する工程(b)では、第一電極材21と抵抗材10と第二電極材22とを、この順で重ね、重ね方向に圧力を加えて接合して抵抗器母材100を形成する。
【0075】
すなわち、工程(b)では、いわゆる異種金属材料間におけるクラッド接合が行われる。クラッド接合された第一電極材21と抵抗材10との接合面、及び第二電極材22と抵抗材10との接合面は、双方の金属原子が互いに拡散した拡散接合面となっている。
【0076】
これにより、従来のような、電子ビームによる溶接を行うことなく、抵抗材10と第一電極材21との接合面と、抵抗材10と第二電極材22との接合面とを、互いに強固に接合することができる。また、抵抗材10と第一電極材21との接合面及び抵抗材10と第二電極材22との接合面において、良好な電気的特性が得られる。
【0077】
図9Aは、
図8に示す工程(c)に用いられるダイス110を引き抜き方向Fの上流側からみた正面図である。また、
図9Bは、抵抗器2の製造方法における形状を加工する工程(c)を説明する模式図である。
図9Bにおいて、ダイス110は、
図9AのB-B線における断面図で示されており、抵抗器部材100は、側面図で示されている。
【0078】
工程(c)では、クラッド接合によって得られた抵抗器母材100をダイス110に通過させる。抵抗器2を製造するにあたっては、一例として、
図9Aに示すダイス110を用いることができる。
【0079】
ダイス110には、開口部111が形成されている。開口部111は、抵抗器母材100が挿入可能な寸法に設定された入口開口112と、抵抗器母材100の外形寸法よりも小さい寸法に設定された出口開口113と、入口開口112から出口開口113に向けてテーパ状に形成された挿通部114とを有する。本実施形態においては、開口部111は、角部分が面取り形状に加工された矩形に形成されている。
【0080】
また、開口部111のいずれかの辺における一部に、開口中央に向けて突出した突出形状110aを有するダイス110を適用する。
【0081】
このような形状のダイス110に抵抗器母材100を通過させることにより、抵抗器母材100を全方向から圧縮変形させるとともに、抵抗器母材100には、突出形状110aにより、引き抜き方向Fに連続する溝101が形成される。
【0082】
また、本実施形態では、工程(c)において、抵抗器母材100をダイス110に通過させる際、抵抗器母材100をつかみ具120によって引き抜く、引き抜き工法が適用される。この際、筋状凹凸が抵抗器母材100の表面に摺動痕として形成される。
【0083】
工程(c)では、一回の引き抜きで成形が完了する引き抜き加工に代えて、開口部111のサイズを異ならせた複数のダイスを用意して、これら複数のダイスを段階的に通過させる引き抜き加工を施してもよい。
【0084】
また、工程(c)では、ダイス110の開口部111の形状を変更することにより、例えば、延長部を備えていない抵抗器1や、変形例として示す抵抗器3,4,5などを製造することができる。
【0085】
抵抗器2を製造するにあたっては、一例として、開口部111の一の辺における一部に、開口中央に向けて突出した形状を有するダイス110を適用する。抵抗器母材100には、ダイス110に設けられた突出形状110aにより、引き抜き方向Fに連続する溝101が形成される。
【0086】
抵抗器母材100を個々に切断した際に、この溝101は、抵抗材10と第一電極材21の胴体部31と延長部32、第二電極材22の胴体部41と延長部42によって囲まれる凹部を構成する。
【0087】
工程(c)に続く工程(d)では、設計された幅方向のサイズWになるように、抵抗器母材100から抵抗器を切り出す。また、本実施形態では、工程(d)において、抵抗器母材100に溝101が形成された面100aから反対面100bに向けて切断することが好ましい。
【0088】
最後に、工程(e)において、抵抗器2の抵抗材10の所定部分に、必要に応じてレーザを用いて欠損部分を形成することにより、抵抗値を調整する。
【0089】
以上の工程(a)~(e)を経ることにより、抵抗器母材100から個片の抵抗器1を得ることができる。
【0090】
<作用効果>
次に、本実施形態における作用効果について説明する。
【0091】
本実施形態に係る製造方法によれば、第一電極材21と抵抗材10と第二電極材22とを重ねて圧力を加えて、クラッド接合により一体化する。これにより、例えば、電子ビームによる溶接を用いること無く、抵抗材10と電極材21、22の接合強度を高めることができる。
【0092】
また、本実施形態に係る製造方法によれば、抵抗器母材100をダイス110に通して全方向から圧縮することにより、寸法精度を確保しつつ、抵抗器母材100の外形状を成型することができる。このため、抵抗器母材100が形成された後は、
図8に示した工程(d)を経るだけで個別の抵抗器2を製造できる。
【0093】
したがって、複数の加工工程を経ることによって抵抗器を製造した場合に生じる個体差を抑えることができる。また、これに加えて、本実施形態では、クラッド接合した抵抗器母材100をダイス110に通して全方向から圧縮することにより、抵抗材10と電極材11,12との接合強度を更に高めることができる。
【0094】
抵抗器母材を全方向から圧縮する方法としては、例えば、抵抗器母材が方形であれば、抵抗器母材を厚み方向Zから加圧する一対のローラによって第一段の圧接を施して、その後、幅方向(Y方向)から加圧する一対のローラによって第二段の圧接を施す方法がある。
【0095】
しかし、この方法では、第一段の圧接工程において、抵抗器母材は、厚み方向Zに圧縮されるものの、幅方向Yには膨張してしまう。また、続く第二段の圧接工程において、抵抗器母材は、幅方向Yに圧縮されるものの、厚み方向Zには膨張してしまう。このように製造誤差が蓄積することにより、寸法精度が低下し、個々の抵抗器の特性のばらつきや抵抗器への電力印加時の温度分布のばらつき等が大きくなってしまう。
【0096】
これに対して、本実施形態に係る製造方法によれば、抵抗器母材100をダイス110に通過させる引き抜き工程を行うことにより、抵抗器母材100を長さ方向X及び厚み方向Zに一様に圧縮できる。
【0097】
このため、ローラを用いて一方向からの圧縮と他方向からの圧縮とを繰り返すことで得られた抵抗器母材に比べて、抵抗器母材100は、電気的に有利な接合界面が形成されると考えられる。したがって、完成品としての抵抗器2の特性の信頼性を確保することができる。
【0098】
本実施形態に係る製造方法では、特に、開口部111の異なる複数のダイス110を段階的に用いて、抵抗器母材100のサイズを段階的に小さくなるように圧縮成型することにより、抵抗器母材100及びダイス110への負荷を低減しつつ、抵抗器母材100を長さ方向X及び厚み方向Zに一様に圧縮できる。これにより、完成品としての抵抗器2の特性差を抑えることができる。
【0099】
また、本実施形態に係る製造方法では、抵抗器母材100をダイス110に通す工程(c)において、引き抜き工程が適用されることにより、押し出し工法に比べて完成品の精度が高められる。この製造方法を用いることにより、抵抗器1としての特性の安定化を実現できる。
【0100】
特に、ダイス110の開口部111の、少なくとも出口開口113は曲線により連続して形成されている。これにより、抵抗器母材100が開口を通過する際にかかる応力を緩和することができ、抵抗器母材100やダイス110への負荷を低減することができる。これにより、完成品としての抵抗器1の特性差を抑えることができる。
【0101】
これに加え、少なくとも出口開口113は曲線により連続して形成されているので、ダイス110を通過して得られた抵抗器1の角部分はラウンドされることになる。これにより、縁辺部分Pにおいて抵抗器1に生じるエレクトロマイグレーションを抑制することができる。また、抵抗器1のヒートサイクル耐性を高めることができる。
【0102】
また、本実施形態に係る製造方法によれば、第一電極材21と抵抗材10と第二電極材22とが互いに拡散接合により接合されているため、溶接ビードがない。従来の溶接による接合では、抵抗器が小型化されるにつれて溶接ビードが抵抗値特性に無視できない影響を与えることがあった。しかし、本実施形態に係る製造方法によって得られた抵抗器1~5には、その懸念がない。
【0103】
このように、本実施形態に係る製造方法は、抵抗材10及び電極材21,22をクラッド接合して得られる抵抗器母材100をダイス110に通して成型するため、例えば、電子ビームによる溶接を用いなくとも材料間の接合強度を高めることができるとともに、高い寸法精度を確保することができる。それゆえ、小型の抵抗器1~5の製造に好適である。
【0104】
抵抗器2を製造するにあたって、
図8に示した工程(d)では、抵抗器母材100において溝101が形成された面100aから反対面100bに向けて切断することが好ましい。これにより、切断によって生じるバリを、実装面側の溝(凹部)の空間に収めることができる。
【0105】
また、本実施形態に係る製造方法において、形状を加工する工程(c)の前段に、クラッド接合された抵抗器母材100のサイズをダイス110に挿通可能なサイズに調整する工程が含まれていてもよい。
【0106】
図10は、工程(c)の前段に行われる抵抗器母材100のサイズを調整する工程を説明する模式図である。
【0107】
この工程では、一例として、材料を接合する工程(b)を経て得られた抵抗器母材100を、
図10(a)に示すように、ダイス110の入口開口112に挿入可能にするため、抵抗器母材100の、引き抜き方向Fに直交する方向における両端部、すなわち、
図10(b)に示す点線部分よりも外側部分を引き抜き方向Fに沿って切断する。
【0108】
続いて、
図10(c)に示すように、抵抗器母材100をダイス110の入口開口112に適合するサイズに加工し、ダイス110に挿入する。
【0109】
このように、形状を加工する工程(c)の前段に抵抗器母材100のサイズを調整する工程を追加することにより、ダイス110を通過させることによって生じる抵抗器母材100への圧縮応力の偏りを防止することができる。また、これにより、完成品としての抵抗器1の特性差を抑えることができる。
【0110】
[その他の実施形態]
上述の本発明の実施形態は、本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。
【0111】
例えば、
図2において、抵抗器2のY方向の端面(電極材21,22のY方向の端面)と、抵抗材10と電極材21,22との接合面は、図面では略直交に表されている。また、抵抗器2のY方向に沿った側面(抵抗材10と電極材21,22との接合面の反対面22a)と、抵抗材10と電極材21,22との接合面とは略平行に表されている。しかし、各面の関係は、この限りではない。
【0112】
また、抵抗材10と電極材11,22との接合面は、
図2及び
図3では直線で表されている。しかし、抵抗材10と電極材11,22との接合面は、拡散接合面となっているため、微視的には、抵抗材10と電極材11,11、12双方が平滑な端面同士で密着しているものではない。
【0113】
また、
図2において、実装面51側の抵抗材10の面積が実装面51に対する反対面52の面積よりも大きくてもよい。また、これとは反対に、実装面51側の抵抗材10の面積が実装面51に対する反対面52の面積よりも小さくてもよい。抵抗器2の側面(すなわち、抵抗器母材100の断面)において、抵抗材10と電極材21、22との接合面は、クラッド接合前の電極材料或いは抵抗体材料の断面形状によって異なる。
【0114】
本実施形態においては、抵抗器1~5に適用する抵抗材10の材料として、高抵抗の抵抗材料を用いてもよい。これにより、抵抗器の抵抗値を確保しつつ、抵抗器を小型化することが可能である。
【符号の説明】
【0115】
1,2,3,4,5 抵抗器
10 抵抗材
11,21,61,71,81 第一電極材
11a,12a,21a,22a 反対面
12,22,62,72,82 第二電極材
13,14,23,24 接合部
15,50 筋状凹凸
16,51 実装面
17,52 反対面
31,41,63,65,73,75,83,85 胴体部
32,42,64,66,74,76,84,86 延長部
91,92 ランドパターン
93 半導体
100 抵抗器母材
100a 面
100b 反対面
101 溝
110 ダイス
110a 突出形状
111 開口部
112 入口開口
113 出口開口
114 挿通部
120 つかみ具
311,411,631,651,731,751,831,851 突出部