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  • 特許-クライミングクレーン 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】クライミングクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 23/32 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B66C23/32 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020040410
(22)【出願日】2020-03-10
(65)【公開番号】P2021138538
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-03-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000154901
【氏名又は名称】株式会社北川鉄工所
(72)【発明者】
【氏名】野島 昌芳
【審査官】須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-062929(JP,U)
【文献】特開2006-131318(JP,A)
【文献】実開昭51-022266(JP,U)
【文献】実開昭63-161958(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2018/0044149(US,A1)
【文献】国際公開第2016/102050(WO,A1)
【文献】特開昭59-012096(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 23/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クライミングクレーンであって、
上下に積み上げられるマストと、
前記マストの頂部に設置された操縦席と、
前記マストの基端に設けられた架台と、
を備え、
前記架台は、水平方向にクロス状に延びる複数の脚部を着脱可能に設け、
前記各脚部には、転倒防止用の錘部が夫々設けられ、
前記各脚部の先端には、前記各錘部及び前記各脚部の沈下状態を取得可能な沈下量取得手段が夫々設けられ、
前記操縦席は、制御部と前記沈下状態を操縦者に表示する表示器を備え、
前記制御部は、前記沈下量取得手段から取得したデータを前記表示器に出力し、
これによって、操縦者は複数の脚部の内、どの脚部が沈下によって傾いているか即座に分かり、安心して作業ができる、
クライミングクレーン。
【請求項2】
請求項1に記載のクライミングクレーンであって、
前記沈下量取得手段は、傾斜センサーであって、
該傾斜センサーは、前記脚部の先端に設けられている、
クライミングクレーン。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載のクライミングクレーンであって、
前記制御部は、クレーン設置時に前記沈下量取得手段から取得したデータを予め格納して
おり、作業者が操作時に前記沈下量取得手段から取得したデータと比較し、その差分値を
前記表示器に出力する、
クライミングクレーン。
【請求項4】
請求項3に記載のクライミングクレーンであって、
前記差分値が、傾斜角度であり、
前記表示器が、前記傾斜角度を表示する、
クライミングクレーン。
【請求項5】
請求項3に記載のクライミングクレーンであって、
前記差分値が、沈下量であり、
前記表示器が、前記沈下量を表示する、
クライミングクレーン。
【請求項6】
クライミングクレーンであって、
上下に積み上げられるマストと、
前記マストの頂部に設置された操縦席と、
前記マストの基端に設けられた架台と、
を備え、
前記架台は、複数の脚部を着脱可能に構成され、
前記各脚部には、転倒防止用の錘部が夫々設けられ、
前記各錘部及び前記各脚部の沈下状態を取得可能な沈下量取得手段とが設けられ、
前記操縦席は、制御部と前記沈下状態を操縦者に表示する表示器を備え、
前記制御部は、前記沈下量取得手段から取得したデータを前記表示器に出力され、
前記沈下量取得手段は、角度計であって、
該角度計は、架台に設けられ、
前記制御部は、予めマストの撓みのデータが格納されており、
前記角度計で得られた値と、前記データとの差分値を前記表示器に出力する、
クライミングクレーン。
【請求項7】
クライミングクレーンであって、
上下に積み上げられるマストと、
前記マストの頂部に設置された操縦席と、
前記マストの基端に設けられた架台と、
を備え、
前記架台は、複数の脚部を着脱可能に構成され、
前記各脚部には、転倒防止用の錘部が夫々設けられ、
前記各錘部及び前記各脚部の沈下状態を取得可能な沈下量取得手段とが設けられ、
前記操縦席は、制御部と前記沈下状態を操縦者に表示する表示器を備え、
前記制御部は、前記沈下量取得手段から取得したデータを前記表示器に出力され、
前記沈下量取得手段は、レーザー測定器であって、
該レーザー測定器は、前記各脚部を測定可能な位置に設置され、
前記錘部と前記脚部を固定するアンカー部の高さを測定し、
各々の変化量を測定し、その値を前記表示器に出力する、
クライミングクレーン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クライミングクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的にクライミングクレーンの操縦者は、マストの頂部に設けられた操縦席で高所作業を行なう(特許文献1)。
また、マストを支持する架台は、基礎コンクリートから突出したアンカーボルトと結合されることで固定され、そして、クライミングクレーンが設置される(特許文献1の図3参照)。
ところが、クレーンの設置場所によっては、基礎コンクリートを打設できない場所がある。そこで、本出願人は、特願2019-201880にて、水平レベルを出した地面に設置する架台の脚部に転倒防止用のウェイトを搭載することで、アンカーボルトとの結合による設置ではなく、ウェイトによって設置されるクライミングクレーンを発明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-137955号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、操縦者は、操縦時にクライミングクレーンの傾き自体は感覚で感じることが出来るものの、その傾きが、地切り時など、荷重を負荷したことによる、マストの撓みによる傾きなのか、基礎コンクリート上に設置していないことによる基礎の沈下による傾きなのかが分からない問題がある。
【0005】
本発明は、かかる事情を鑑みてなされたものであり、その主な目的は、操縦者に基礎の沈下状態を知らせることができるクライミングクレーンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、クライミングクレーンであって、上下に積み上げられるマストと、マストの頂部に設置された操縦席と、マストの基端に設けられた架台とを備え、架台は、複数の脚部を着脱可能に構成され、各脚部には、転倒防止用の錘部が夫々設けられ、各錘部及び各脚部の沈下状態を取得可能な沈下量取得手段とが設けられ、操縦席は、沈下状態を操縦者に表示する表示器を備え、制御部は、沈下量取得手段から取得したデータを表示器に出力する、クライミングクレーンが提供される。
【0007】
本発明に係るクライミングクレーンでは、基礎の沈下状態を操縦者に知らせることができる。それによって、操縦者は安心して安全に作業することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るクライミングクレーンの全体を示す模式図。
図2】本発明の実施形態に係るクライミングクレーンの沈下状態を示す模式図。
図3】本発明の実施形態に係る基礎構造部の模式平面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
クレーンの基礎構造部の好適な実施形態について、図面を用いて具体的に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではないし、本発明の効果を奏する範囲を逸脱しない範囲で、適宜変更は可能である。なお、以下、鉛直方向における天地のうち、天を「上または頂」、地を「下」という場合がある。
【0010】
1.クライミングクレーンの概略構成
第1節では、クライミングクレーン1の概略構成を説明する。図1は、本発明の実施形態に係るクライミングクレーンの全体を示す模式図、図2は、本発明の実施形態に係るクライミングクレーンの沈下状態を示す模式図、図3は、本発明の実施形態に係る基礎構造部の模式平面図である。
【0011】
クライミングクレーン1は、建築物の高さの増加に伴ってそれ自身の機構によってクライミングを行なうものである。図1に示すように、クライミングクレーン1は、架台10の上にマスト2を有し、その頂部にクレーン本体3が設置されている。
マスト2は上下に積み上げ可能な構成となっており、それによってクレーン本体3は相対的に上下に移動することが可能となっている。
クレーン本体3は、マスト2の頂部に設けた旋回ベアリング(図示せず)に回転自在に支持される旋回体3aと、この旋回体3aに起伏可能に支持されるジブ3bと、旋回体3aに固定された巻上ウインチ3cと、この巻上ウインチ3cに巻き上げられる巻上ロープ3dと、この巻上ロープ3dの先端に取り付けられるフック3eとを備えている。
【0012】
旋回体3aには操縦席が設けられ、操縦者は、そこからクレーンの作業を行なっている。操縦席近傍には、制御盤(制御部)3fが設置され、制御盤を介して操縦者はクレーンの操作を行っている。また、操縦席周りには、タッチパネル(表示器)が配設され、制御盤からの情報がタッチパネルに出力されるようになっている。それによって、操縦者は、様々な情報を取得しながら作業をすることができる。
【0013】
マスト2の基端(下側)には、架台10が固定されている。架台10はクレーン本体3をマスト2を介して間接的に支えるための架台であり、図2に示すように、架台10には、脚部12を結合可能な4つの脚部取付部11が一体に架台10の中心軸線周りに90度間隔でクロス状に設けられている。すなわち、4つの脚部取付部11に、4本の脚部12がクロス状に夫々取り付け可能となっている。なお、脚部取付部11と脚部12との結合は、結合可能であれば特に限定しないが、着脱可能に複数のボルトで締め付けて結合しても良いし、開閉可能にヒンジ構造を用いて結合しても良い。また、脚部12及び脚部取付部11は、4つに限らず3つでも5つ以上であっても構わない。
【0014】
ところで、一般的にクレーンは、コンクリート基礎から突出したアンカーボルトと架台とをボルト締結することで設置するものであるが、設置場所によっては、コンクリート基礎を用いることができず、水平レベルを出した地面に直接設置する場合がある。その場合、架台を地面に直接設置してしまうと、地面の地耐力が不足するケースがある。そこで、本出願人は、特願2019-201880にて基礎構造部を見直し、クレーンが発生する鉛直荷重を所定の長さを有する脚部12で分散させることに着目し、それによって地面の地耐力が不足しない構造を鋭意検討している。
【0015】
すなわち、クレーンの基礎構造部は、架台10と脚部12と脚部12に固定されるカウンターベース20などで構成されている。換言すると、架台10の4箇所の脚部取付部11に脚部12の一端側をそれぞれ結合し、それら各脚部12の他端側の下端面と、地面に直接設置されたカウンターベース20の上端面とをそれぞれ固定する構成としている。また、その際、カウンターベース20は、所定の高さを有し、それに比例する接触面積を有する構造としている。
【0016】
図2に示すように、例えば、操縦者は、地切り時などクライミングクレーンを操作する際、傾きを感じるものの、その傾きが地切りの際の荷重を負荷したことによる、マストの撓みによるものなのか、クレーンを基礎コンクリート上に設置していないことによる基礎の沈下による傾きなのかが分からない。すなわち、高所作業する操縦者にとっては、安全に作業できるか不安である。
【0017】
そこで、本出願人は、クレーンが地面に接触している箇所の脚部12の変位を検知すれば、マストの撓みによる傾きでなく、基礎の沈下による傾きであるという情報を操縦者に伝えることができると考え、今回の発明を想到した。
【0018】
すなわち、図3に示すように、脚部12には、脚部12の沈下状態を取得可能な沈下量取得手段30が取り付けられている。
また、その取り付け箇所は、好ましくは脚部12の先端であり、それによって傾きを検出しやすく、また沈下量も算出しやすくなる。
また、沈下量取得手段30の設置は、脚部12に限らず、沈下状態が取得可能な場所であれば、カウンターベース20やその他の箇所であっても構わない。
【0019】
本実施形態では、沈下量取得手段30は、傾斜量を検出する傾斜センサーとしている。その傾斜センサーとして角度計が設けられる。傾斜センサーは、制御盤3fに接続され、傾斜センサーの検出値(脚部12の傾斜角)を制御盤3fに送信している。
【0020】
また、沈下量取得手段30は、傾斜センサーに限らず、沈下量dを算出できれば、三次元情報を取得できるレーザースキャナー等を用いても構わない。
【0021】
地盤の沈下の有無は、例えば、クレーン設置時の傾斜センサーの検出値(傾斜角)を制御盤に格納しておく。そして、操縦者が地切り時の傾斜センサーの検出値(傾斜角)と、予め格納していた地切り前の傾斜角とを比較して、その角度差θを操縦席にあるタッチパネルに表示させる。それによって、操縦者は作業時に4本の脚部の内、どの脚部12が傾いているか即座に分かり、安心して作業することができる。
【0022】
また、角度差θそのものを操縦者に知らせるのではなく、予め定められる所定値以上の偏差を生じていれば、操縦者に警告として知らせるようにしても良い。
【0023】
また、カウンターベース20の設置面の沈下量dを角度差θに基づいて算出しても良い。そして、その沈下量をタッチパネルに表示させて操縦者に知らせても良い。同様に、予め定められている沈下量の所定値以上の偏差が生じていれば、操縦者に警告として知らせるようにしても良い。
【0024】
また、沈下量取得手段30を角度計とし、それを架台10に取り付けても良い。その際、得られた角度計の数値からクレーンの作業モーメントによる傾き分を差し引いた数値をタッチパネルなどに表示させても良い。なお、本出願人はクレーンの作業モーメントによる傾きを演算する手段を備えたタワークレーンを発明している(特許第4986643号)。すなわち、角度計の数値から、演算手段によって得られた数値を差し引けば、マストの傾きではなく、基礎の沈下による傾きであることを操縦者に伝えることができる。なお、それらの制御は、制御盤3fで行うとよい。
【0025】
また、沈下量取得手段30をレーザー測定器とし、各脚部12をそれぞれ測定できる位置に設置しても良い。各カウンターベース20と各脚部12とを固定するアンカー部の高さを測定し、その変化量を測定し、その値をタッチパネルに表示させても良い。
【0026】
5.結言
以上のように、本実施形態によれば、操縦者に基礎の沈下状態を知らせることができるクライミングクレーンを提供することができる。
【0027】
次に記載の各態様で提供されてもよい。
クライミングクレーンであって、前記沈下量取得手段は、傾斜センサーであって、該傾斜センサーは、脚部の先端に設けられている、クライミングクレーン。
クライミングクレーンであって、前記制御部は、クレーン設置時に前記沈下量取得手段から取得したデータを予め格納しており、作業者が操作時に前記沈下量取得手段から取得したデータと比較し、その差分値を前記表示器に出力する、クライミングクレーン。
クライミングクレーンであって、前記差分値が、傾斜角度であり、前記表示器が、前記傾斜角度を表示する、クライミングクレーン。
クライミングクレーンであって、前記差分値が、沈下量であり、前記表示器が、前記沈下量を表示する、クライミングクレーン。
もちろん、この限りではない。
【0028】
最後に、本発明に係る種々の実施形態を説明したが、これらは、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。当該新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0029】
1 クライミングクレーン
2 マスト
3 クレーン本体
3a 旋回体
3b ジブ
3c 巻上ウインチ
3d 巻上ロープ
3f 制御部
4 昇降装置
10 架台
11 脚部取付部
12 脚部
20 カウンターベース
30 沈下量取得手段
θ 角度差
d 沈下量
図1
図2
図3