(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】めっき成形品及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/38 20060101AFI20241121BHJP
H05K 3/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H05K3/38 A
H05K3/00 N
(21)【出願番号】P 2020066333
(22)【出願日】2020-04-02
【審査請求日】2023-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000175766
【氏名又は名称】三恵技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109243
【氏名又は名称】元井 成幸
(72)【発明者】
【氏名】北村 敏幸
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 大ニ
(72)【発明者】
【氏名】岡部 俊雄
【審査官】鹿野 博司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-043706(JP,A)
【文献】特開平07-116870(JP,A)
【文献】特表2016-507642(JP,A)
【文献】特開2004-207324(JP,A)
【文献】特開2010-080946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 3/38
H05K 3/00
H05K 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
MIDである回路成形品であり、
めっき部位で導線が形成される前記回路成形品の絶縁性の樹脂基材を有し、
所定の深さの溝で形成される回路パターン部若しくは所定の深さの孔で形成される回路パターン部で無く且つ前記導線に略対応する領域である前記樹脂基材の表面の部分領域に、密着性向上用の略対応する形状と大きさの複数の非貫通孔が間隔を開けて孔密度が略平均化するように点在して形成され、
前記複数の非貫通孔が導線幅方向の異なる位置に形成され且つ前記導線の延在方向に沿って形成され、
前記めっき部位が、前記複数の非貫通孔に充填して形成されていると共に、前記非貫通孔の相互に跨るように前記部分領域を覆って連設されて
おり、
前記非貫通孔の孔面積が3.1×10
2
~1256×10
2
μm
2
、前記非貫通孔の相互間隔比が0.16~1.30であることを特徴とするめっき成形品。
【請求項2】
MIDである立体回路成形品であり、
めっき部位で導線が形成される前記立体回路成形品の絶縁性の樹脂基材を有し、
所定の深さの溝で形成される回路パターン部若しくは所定の深さの孔で形成される回路パターン部で無く且つ前記導線に略対応する領域である前記樹脂基材の表面の部分領域に、密着性向上用の略対応する形状と大きさの複数の非貫通孔が間隔を開けて孔密度が略平均化するように点在して形成され、
前記複数の非貫通孔が導線幅方向の異なる位置に形成され且つ前記導線の延在方向に沿って形成され、
前記めっき部位が、前記複数の非貫通孔に充填して形成されていると共に、前記非貫通孔の相互に跨るように前記部分領域を覆って連設されて
おり、
前記非貫通孔の孔面積が3.1×10
2
~1256×10
2
μm
2
、前記非貫通孔の相互間隔比が0.16~1.30であることを特徴とするめっき成形品。
【請求項3】
前記非貫通孔と前記非貫通孔に充填された前記めっき部位の部分の形状が前記非貫通孔の奥側に向かって漸次縮径する略テーパ形状であると共に、
前記非貫通孔の最深部から前記非貫通孔の周縁に延ばした線で構成されるテーパ角が30~96度であることを特徴とする請求項1又は2記載のめっき成形品。
【請求項4】
前記導線の延在方向に沿って形成されている前記非貫通孔が前記部分領域の延在方向に千鳥配置若しくは縦横並列配置で設けられていることを特徴とする請求項1~
3の何れかに記載のめっき成形品。
【請求項5】
請求項1~
4の何れかに記載のめっき成形品の製造方法であって、
絶縁性の樹脂基材の表面の部分領域に直接レーザー加工で穿孔して、複数の非貫通孔を孔密度が略平均化するように間隔を開けて形成する第1工程と、
前記複数の非貫通孔が形成された前記樹脂基材の前記部分領域に無電解めっきを施して、めっき部位を前記複数の非貫通孔に充填し且つ前記非貫通孔の相互に跨るように前記部分領域を覆って連設する第2工程を備えることを特徴とするめっき成形品の製造方法。
【請求項6】
請求項1~
4の何れかに記載のめっき成形品の製造方法であって、
絶縁性の樹脂基材の表面の部分領域に直接レーザー加工で穿孔して、複数の非貫通孔を孔密度が略平均化するように間隔を開けて形成する第1工程と、
前記複数の非貫通孔が形成された前記樹脂基材の前記部分領域に無電解めっきと電気めっきを順に施して、めっき部位を前記複数の非貫通孔に充填し且つ前記非貫通孔の相互に跨るように前記部分領域を覆って連設する第2工程を備えることを特徴とするめっき成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材の表面にめっき部位が形成されためっき成形品及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、基材の表面にめっき部位が形成されためっき成形品として回路成形品(MID:Molded Interconnect Device)が知られている。このような回路成形品の製造では、樹脂基材の表面からレーザー加工で回路の導線幅にほぼ対応する幅の溝を形成し、この溝を埋めるように無電解めっきを施して、溝幅にほぼ対応するめっき部位の導線を形成することが一般的に行なわれている(特許文献1の
図1、
図2、段落[0050]~[0056]参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、
図8に示すように、樹脂基材100の表面101に回路溝に相当する所定幅の溝102を形成し、溝102を埋めるようにして溝幅にほぼ対応するめっき部位103を形成する場合、無電解めっきを施して無電解めっき部位103aを形成した後、電気めっきを施して電気めっき部位103bを形成しても例えば1時間に
図7(b)の二点鎖線毎の量だけしか電気めっき部位103bを形成できないことから、容積の大きな溝102を埋めて必要なめっき部位103を樹脂基材100の表面101に形成するには非常に時間がかかるという問題がある。
【0005】
更に、めっき部位103の幅とほぼ対応する幅の溝102にめっき部位103を形成すると、幅と高低差が大きい溝の凹凸に起因して形成されるめっき部位103の外表面の平滑性が損なわれるという問題もある。更に、このようなめっき部位103は、溝102の底面と側面への接触で密着しているだけであるため、密着性にも劣る。
【0006】
本発明は上記課題に鑑み提案するものであり、基材の表面に短時間で必要なめっき部位を形成することができると共に、めっき部位の外表面の平滑性とめっき部位の密着性を向上することができるめっき成形品及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のめっき成形品は、所定の深さの溝で形成される回路パターン部若しくは所定の深さの孔で形成される回路パターン部で無い基材の表面の部分領域に、密着性向上用の略対応する形状と大きさの複数の非貫通孔が間隔を開けて孔密度が略平均化するように点在して形成され、めっき部位が、前記複数の非貫通孔に充填して形成されていると共に、前記非貫通孔の相互に跨るように前記部分領域を覆って連設されていることを特徴とする。
これによれば、容積の大きな溝を埋めてめっき部位を形成する必要が無くなり、基材の表面に短時間で必要なめっき部位を形成することができる。更に、大きな溝を形成する場合に比べて複数の非貫通孔を形成する場合には基材の部分的な除去量が少なく済むことから、基材の部分的な除去に要する加工時間も短縮することができる。従って、めっき成形品の製造時間の短縮、製造工程の効率化を図ることができる。また、幅と高低差が大きい溝の凹凸に起因するめっき部位の外表面の大きな高低差が生ずることが無くなり、めっき部位の外表面の平滑性を高めることができる。更に、めっき部位の外表面の平滑性向上に伴い、めっき部位の外表面を所要レベルに平滑化する加工工程を極力少なくする或いは無くすことができる。また、めっき部位の複数の非貫通孔に充填される部分のアンカー効果により、めっき部位の密着性を高めることができる。
【0008】
本発明のめっき成形品は、前記非貫通孔と前記非貫通孔に充填された前記めっき部位の部分の形状が前記非貫通孔の奥側に向かって漸次縮径する略テーパ形状であることを特徴とする。
これによれば、めっき部位の複数の非貫通孔に充填される部分のアンカー効果を一層高め、めっき部位の密着性を一層高めることができる。更に、非貫通孔を略テーパ形状とすることにより、レーザー加工等による基材の除去部分を最小限に留め、基材の加工時間を短縮することが可能となる。
【0009】
本発明のめっき成形品は、前記非貫通孔の穴面積が3.1×102~1256×102μm2、前記非貫通孔の穴容積が0.9×103~31316×103μm3であることを特徴とする。
これによれば、例えば1時間程度など非常に短時間で各非貫通孔に充填されるめっき部分を繋げてめっき部位を形成することができると共に、めっき部位の平滑性、密着性をより確実に高めることができる。
【0010】
本発明のめっき成形品は、前記非貫通孔の穴面積が3.1×102~1256×102μm2、前記非貫通孔の相互間隔比が0.16~1.30であることを特徴とする。
これによれば、非貫通孔相互の重なりを確実に防止して、良好なめっきの析出性を確保し、各非貫通孔に充填されるめっき部分を確実に繋げてめっき部位を連設することができる。
【0011】
本発明のめっき成形品は、前記非貫通孔が前記部分領域の延在方向に千鳥配置若しくは縦横並列配置で設けられていることを特徴とする。
これによれば、めっき部位が局所的に薄くなることを極力防止し、めっき部位の外表面の平滑性を一層高めつつ、各非貫通孔に充填されるめっき部分を確実に繋げてめっき部位を連設することができる。
【0012】
本発明のめっき成形品は、前記基材が絶縁性の樹脂基材、前記基材の表面の部分領域が導線に略対応する領域であり、前記複数の非貫通孔が導線幅方向の異なる位置に形成され且つ前記導線の延在方向に沿って形成され、前記めっき部位で前記導線が形成されて回路成形品を構成していることを特徴とする。
これによれば、容積の大きな回路溝を埋めてめっき部位を形成する必要が無くなり、基材の表面に短時間で必要なめっき部位を形成することができる。従って、回路成形品の製造時間の短縮、製造工程の効率化を図ることができる。また、幅と高低差が大きい回路溝の凹凸に起因するめっき部位の外表面の大きな高低差が生ずることが無くなり、めっき部位の外表面の平滑性を高めることができ、回路成形品のめっき部位上への搭載部品の確実な設置を可能にする。また、めっき部位の複数の非貫通孔に充填される部分のアンカー効果により、回路成形品のめっき部位の密着性を高めることができる。
【0013】
本発明のめっき成形品の製法方法は、本発明のめっき成形品を製造する方法であって、絶縁性の基材の表面の部分領域にレーザー加工で穿孔して、複数の非貫通孔を孔密度が略平均化するように間隔を開けて形成する第1工程と、前記複数の非貫通孔が形成された前記基材の前記部分領域に無電解めっきを施して、めっき部位を前記複数の非貫通孔に充填し且つ前記非貫通孔の相互に跨るように前記部分領域を覆って連設する第2工程を備えることを特徴とする。前記複数の非貫通孔の形成は、絶縁性の基材の表面の部分領域に直接レーザー加工で穿孔して形成することが好ましい。
これによれば、既存の回路溝のような溝を埋めてめっき部位を形成する際に無電解めっきを用いる場合、無電解めっきは析出速度が遅いため、非常に長時間の無電解めっき処理工程が必要になるのに対し、無電解めっきでめっき部分を複数の非貫通孔に充填して連設するようにめっき部位を形成することにより、無電解めっき処理工程に要する時間を格段に短縮することができる。また、電気めっきを行わずに無電解めっきだけを施す場合には、膜厚の偏りを抑制し、めっき部位の外表面の平滑性をより一層高めることができる。また、電気めっきを行わずに無電解めっきだけを施す場合には、通電配線、電気めっき用の設備が不要となり、又、部分領域を覆うめっき部位の領域が必要以上に大きくなることを極力抑制することができる。
【0014】
本発明のめっき成形品の製造方法は、本発明のめっき成形品を製造する方法であって、絶縁性の基材の表面の部分領域にレーザー加工で穿孔して、複数の非貫通孔を孔密度が略平均化するように間隔を開けて形成する第1工程と、前記複数の非貫通孔が形成された前記基材の前記部分領域に無電解めっきと電気めっきを順に施して、めっき部位を前記複数の非貫通孔に充填し且つ前記非貫通孔の相互に跨るように前記部分領域を覆って連設する第2工程を備えることを特徴とする。前記複数の非貫通孔の形成は、絶縁性の基材の表面の部分領域に直接レーザー加工で穿孔して形成することが好ましい。
これによれば、既存の回路溝のような溝を埋めてめっき部位を形成する際に無電解めっき、電気めっきを順に用いる場合、高低差が大きい溝の凹凸に起因して電気めっきにおける高電流部と低電流部の電流の差異が大きくなり、高電流部と低電流部のめっき部位の膜厚差が大きくなるのに対し、無電解めっき、電気めっきを順に施してめっき部分を複数の非貫通孔に充填して連設するようにめっき部位を形成することにより、電気めっきにおける高電流部と低電流部の電流の差異、高電流部と低電流部のめっき膜厚差を極力抑制し、均一電着性を高めてバラツキを抑え、均一性の高いめっき部位を形成することができる。
【0015】
本発明のめっき成形品の製造方法は、本発明のめっき成形品を製造する方法であって、導電性の基材の表面の部分領域にレーザー加工で穿孔して、複数の非貫通孔を孔密度が略平均化するように間隔を開けて形成する第1工程と、前記複数の非貫通孔が形成された前記基材の前記部分領域に電気めっきを施して、めっき部位を前記複数の非貫通孔に充填し且つ前記非貫通孔の相互に跨るように前記部分領域を覆って連設する第2工程を備えることを特徴とする。前記複数の非貫通孔の形成は、導電性の基材の表面の部分領域に直接レーザー加工で穿孔して形成することが好ましい。
これによれば、既存の回路溝に相当する大きさの溝を埋めてめっき部位を形成する際に電気めっきを用いる場合、高低差が大きい溝の凹凸に起因して高電流部と低電流部の電流の差異が大きくなり、高電流部と低電流部のめっき部位の膜厚差が大きくなるのに対し、電気めっきでめっき部分を複数の非貫通孔に充填して連設するようにめっき部位を形成することにより、高電流部と低電流部の電流の差異、高電流部と低電流部のめっき膜厚差を極力抑制し、均一電着性を高めてバラツキを抑え、均一性の高いめっき部位を形成することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、基材の表面に短時間で必要なめっき部位を形成することができると共に、めっき部位の外表面の平滑性とめっき部位の密着性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明による第1実施形態のめっき成形品の斜視図。
【
図2】(a)は第1実施形態のめっき成形品におけるめっき部位形成領域の部分斜視図、(b)は同図(a)のめっき部位形成領域からめっき部位を取り外した状態の部分斜視図、(c)は変形例のめっき部位形成領域からめっき部位を取り外した状態の部分斜視図。
【
図3】第1実施形態のめっき成形品におけるめっき部位形成領域の部分縦断説明図。
【
図4】(a)~(f)は第1実施形態のめっき成形品におけるめっき部位を無電解めっき、電気メッキを順に施して形成する工程を説明する工程説明図。
【
図5】(a)~(f)は第1実施形態の変形例のめっき成形品におけるめっき部位を無電解めっきを施して形成する工程を説明する工程説明図。
【
図6】第2実施形態のめっき成形品におけるめっき部位形成領域の部分縦断説明図。
【
図7】(a)~(f)は第2実施形態の導電性の基材を有するめっき成形品においてめっき部位を電気めっきを施して形成する工程を説明する工程説明図。
【
図8】(a)は比較例のめっき成形品における回路溝が形成された樹脂基材の部分斜視図、(b)は比較例のめっき成形品のめっき部位形成領域の部分縦断説明図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔第1実施形態のめっき成形品及びその製造方法〕
本発明による第1実施形態のめっき成形品1は、回路成形品であり、
図1~
図3に示すように、硬質の基材2の一方の表面21の部分領域Rを覆うようにしてめっき部位3が形成されている。本例では、基材2は絶縁性の樹脂基材、基材2の一方の表面21の部分領域Rは導線に略対応する領域或いは導線よりも僅かに幅狭な領域になっており、めっき部位3で導線が形成されて回路成形品を構成している。
【0019】
基材2の一方の表面21の部分領域Rには、略対応する形状と大きさを有する複数の非貫通孔4が、間隔を開けて孔密度が略平均化するように点在して形成されている。換言すれば、略対応する形状と大きさを有する複数の非貫通孔4が、間隔を開けて孔密度が略平均化するように点在して形成された領域が部分領域Rになっている。
【0020】
本例では、複数の非貫通孔4が部分領域Rの延在方向に千鳥配置で設けられており、又、複数の非貫通孔4が導線幅方向の異なる位置にそれぞれ形成され且つ導線の延在方向に沿って形成されている(
図2(a)、(b)参照)。また、
図2(c)の別例に示すように、複数の非貫通孔4を部分領域Rの延在方向に縦横並列配置で設ける構成としても良好である。
【0021】
めっき成形品1のめっき部位3は、
図2及び
図3に示すように、基材2の複数の非貫通孔4のそれぞれに充填して形成されており、本例では、非貫通孔4と非貫通孔4に充填されためっき部位3の部分の形状が非貫通孔4の奥側に向かって漸次縮径する略テーパ形状になっている。また、めっき部位3は、基材2の一方の表面21上で、複数の非貫通孔4の相互に跨るように部分領域Rを覆って連設されている。
図3において、t1は基材表面21における非貫通孔4の最大幅で定義される幅であり、例えば非貫通孔4が平面視略円形である場合には非貫通孔4の穴径である。t2は非貫通孔4の深さであり、t3は非貫通孔4・4相互のピッチであり、非貫通孔4の中心と非貫通孔4の中心との間の距離である。
【0022】
めっき部位3の短時間での形成、めっき部位3の外表面の平滑性の確保、めっき部位3の密着性の確保を同時に実現する観点から、めっき部位3の基材2の一方の表面21からの高さ或いは膜厚は、膜厚比率(めっき膜厚/非貫通孔の幅t1の比率):0.5~1.36とすることが好ましく、又、非貫通孔4の孔面積は3.1×102~1256×102μm2、より好適には11.3×102~88.2×102μm2とすることが好ましく、又、非貫通孔4の孔容積は0.9×103~31316×103μm3、より好適には15×103~341×103μm3とすることが好ましく、又、非貫通孔4・4の相互間隔比は0.16~1.30、より好適には0.28~1.27とすることが好ましい。ここで非貫通孔4・4の相互間隔比は、非貫通孔4・4の最も近い位置相互の距離/非貫通孔4の幅t1で定義される。また、同様の観点から、非貫通孔4を略テーパ形状或いはテーパ形状とする場合の非貫通孔4の最深部から非貫通孔4の周縁に延ばした線で構成されるテーパ角αは30~96度、より好適には30~93度とすることが好ましい。また、めっき部位3の外表面の平滑性は、めっき部位3の外表面の中間領域の基面における高低差が25μm以下とすると好適であり、20μmとするとより好適であり、15μmとするとより一層好適であり、更には10μmとするとより一層好適である。また、複数の非貫通孔4の孔密度の略平均化に関し、非貫通孔4・4相互の最短距離の間隔の最大距離と最小距離の差は50%以内とすることが好ましく、又、複数の非貫通孔4が形成されている領域における1mm2当たりの孔密度の差は50%以内とすることが好ましい。
【0023】
更に、非常に短時間で各非貫通孔4に充填されるめっき部分を繋げてめっき部位3を形成し、且つめっき部位3の平滑性、密着性をより確実に高める観点からは、非貫通孔4の孔面積を3.1×102~1256×102μm2、より好適には11.3×102~88.2×102μm2とし、又、非貫通孔4の孔容積は0.9×103~31316×103μm3、より好適には15×103~341×103μm3とすることが好ましい。また、非貫通孔4・4相互の重なりを確実に防止して、良好なめっきの析出性を確保し、各非貫通孔4に充填されるめっき部分を確実に繋げてめっき部位3を連設する観点からは、非貫通孔4の孔面積を3.1×102~1256×102μm2、より好適には11.3×102~88.2×102μm2とし、又、非貫通孔4・4の相互間隔比は0.16~1.30、より好適には0.28~1.27とすることが好ましい。
【0024】
図3の例のめっき部位3は、無電解めっき部位3aと、電気めっき部位3bとから構成されている。無電解めっき部位3aは、非貫通孔4の内周面に層状に形成されて非貫通孔4の内周面に固着されている。電気めっき部位3bは、複数の非貫通孔4の無電解めっき部位3aの内側にそれぞれに充填されていると共に、非貫通孔4・4の相互に跨るように基材2の一方の表面21の部分領域Rを覆って連設されている。
【0025】
第1実施形態のめっき成形品1のめっき部位3を形成する際には、
図4に示すように、絶縁性の樹脂基材である基材2の一方の表面21の部分領域Rにレーザー加工で穿孔して、複数の非貫通孔4を孔密度が略平均化するように間隔を開けて形成する(
図4(a)、(b)参照)。このレーザー加工で用いるレーザーには、例えば炭酸ガスレーザー、紫外線レーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザーと半導体レーザーのハイブリッドレーザーなど適用可能な適宜のレーザーを用いることが可能である。
【0026】
そして、複数の非貫通孔4が形成された基材2の部分領域Rに無電解めっきと電気めっきを順に施して、無電解めっき部位3aと電気めっき部位3bとから構成されるめっき部位3を形成し、めっき部位3を、複数の非貫通孔4に充填し且つ非貫通孔4の相互に跨るように部分領域Rを覆って連設する(
図4(c)~(f)参照)。
【0027】
複数の非貫通孔4が形成された基材2の部分領域Rに無電解めっきを施す工程では、例えば複数の非貫通孔4が形成された基材2を脱脂すると共に、めっき部位3の形成が不要な領域にマスキングを施し、スズ-パラジウム混合触媒溶液への浸漬等によりパラジウム等の触媒Cをめっきが必要な領域に析出、付与する(
図4(c)参照)。その後、基材2の表面21に析出させる金属(合金含む)の塩、還元剤等を含む無電解めっき浴への浸漬により、無電解めっき部位3aを非貫通孔4の内周面やその近傍に形成する(
図4(d)参照)。無電解めっき部位3aは、例えば銅若しくは銅合金、ニッケル若しくはニッケル合金、パラジウム若しくはパラジウム合金、スズ若しくはスズ合金、銀若しくは銀合金、金若しくは金合金、又は、コバルト若しくはコバルト合金等とすると良好であり、必要に応じてこれらに対応する無電解めっき浴を用いて無電解めっき処理を施す。
【0028】
その後、無電解めっき部位3a上に電気めっきを施して無電解めっき部位3a上に電気めっき部位3bを積層するように形成する。電気めっき部位3bは、無電解めっき部位3aと同種の金属とすると好適であるが、異種の金属とすることも可能である。電気めっき部位3bは、析出、成長に伴い、複数の非貫通孔4の無電解めっき部位3aの内側にそれぞれに充填されていくと共に、非貫通孔4・4の相互に跨るように基材2の一方の表面21の部分領域Rを覆うように連設される(
図4(e)、(f)参照)。尚、電気めっき部位3bは、時間の経過に伴い、図示二点鎖線の状態を経過して析出、成長する。
【0029】
また、第1実施形態のめっき成形品1では、無電解めっき部位3aと電気めっき部位3bによるめっき部位3を形成する構成に代え、
図5(f)に示すように、無電解めっき部位3aのみからなるめっき部位31を形成する変形例の構成とすることも可能である。変形例のめっき成形品1におけるめっき部位31の無電解めっき部位3aは、非貫通孔4の内周面に層状に形成されて非貫通孔4の内周面に固着され、複数の非貫通孔4にそれぞれに充填されていると共に、非貫通孔4・4の相互に跨るように基材2の一方の表面21の部分領域Rを覆って連設される。その他の第1実施形態の変形例のめっき成形品1の構成は第1実施形態のめっき成形品1の構成と同様である。
【0030】
第1実施形態の変形例のめっき成形品1のめっき部位31を形成する際には、第1実施形態と同様に、絶縁性の樹脂基材である基材2の一方の表面21の部分領域Rにレーザー加工で穿孔して、複数の非貫通孔4を孔密度が略平均化するように間隔を開けて形成する(
図5(a)、(b)参照)。そして、複数の非貫通孔4が形成された基材2の部分領域Rに無電解めっきを施して、無電解めっき部位3aで構成されるめっき部位3を形成し、めっき部位3を、複数の非貫通孔4に充填し且つ非貫通孔4の相互に跨るように部分領域Rを覆って連設する(
図5(c)~(f)参照)。
【0031】
変形例における複数の非貫通孔4が形成された基材2の部分領域Rに無電解めっきを施す工程は、上記第1実施形態の無電解めっき処理と同様に、例えば複数の非貫通孔4が形成された基材2を脱脂すると共に、めっき部位3の形成が不要な領域にマスキングを施し、パラジウム等の触媒Cをめっきが必要な領域に析出、付与する(
図5(c)参照)。その後、無電解めっき浴への浸漬により、無電解めっき部位3aを非貫通孔4の内周面やその近傍に形成する(
図4(d)参照)。無電解めっき部位3aは、例えば銅若しくは銅合金、ニッケル若しくはニッケル合金、パラジウム若しくはパラジウム合金、スズ若しくはスズ合金、銀若しくは銀合金、金若しくは金合金、又は、コバルト若しくはコバルト合金等とすると良好であり、必要に応じてこれらに対応する無電解めっき浴を用いて無電解めっき処理を施す。
【0032】
更に、無電解めっき部位3aの形成処理を継続することにより、電気めっき部位3aは、析出、成長に伴い、複数の非貫通孔4の内側にそれぞれに充填されていくと共に、非貫通孔4・4の相互に跨るように基材2の一方の表面21の部分領域Rを覆うように連設される(
図5(e)、(f)参照)。
【0033】
第1実施形態又はその変形例のめっき成形品によれば、非貫通孔4の底、側面、基材表面からめっきが成長し、容積の少ない非貫通孔4を埋めてめっきを短時間で成長させることができる。即ち、容積の大きな溝を埋めてめっき部位を形成する必要が無くなり、例えば5時間、10時間かかっていためっき部位の形成時間を1時間にする等、基材2の表面21に短時間で必要なめっき部位3、31を形成することができる。更に、大きな溝を形成する場合に比べて複数の非貫通孔4を形成する場合には基材2の部分的な除去量が少なく済むことから、基材2の部分的な除去に要する加工時間も短縮することができる。従って、めっき成形品1の製造時間の短縮、製造工程の効率化を図ることができる。また、幅と高低差が大きい溝の凹凸に起因するめっき部位の外表面の大きな高低差が生ずることが無くなり、めっき部位3、31の外表面の平滑性を高めることができる。更に、めっき部位3、31の外表面の平滑性向上に伴い、めっき部位3の外表面を所要レベルに平滑化する加工工程を極力少なくする或いは無くすことができる。また、めっき部位3、31の複数の非貫通孔4に充填される部分のアンカー効果により、めっき部位3、31の密着性を高めることができる。
【0034】
特に、基材2を絶縁性の樹脂基材、基材2の表面21の部分領域Rを導線に略対応する領域とし、複数の非貫通孔4を導線幅方向の異なる位置に形成し且つ導線の延在方向に沿って形成し、めっき部位3、31で導線を形成されて回路成形品を構成する場合には、容積の大きな回路溝を埋めてめっき部位を形成する必要が無くなり、基材2の表面21に短時間で必要なめっき部位3、31を形成することができる。従って、回路成形品の製造時間の短縮、製造工程の効率化を図ることができる。また、幅と高低差が大きい回路溝の凹凸に起因するめっき部位の外表面の大きな高低差が生ずることが無くなり、めっき部位3、31の外表面の平滑性を高めることができ、回路成形品のめっき部位3、31上への搭載部品の確実な設置を可能にする。また、めっき部位3、31の複数の非貫通孔4に充填される部分のアンカー効果により、回路成形品のめっき部位3、31の密着性を高めることができる。
【0035】
また、非貫通孔4と非貫通孔4に充填されためっき部位3、31の部分の形状を非貫通孔4の奥側に向かって漸次縮径する略テーパ形状とすることにより、めっき部位3、31の複数の非貫通孔4に充填される部分のアンカー効果を一層高め、めっき部位3、31の密着性を一層高めることができる。更に、非貫通孔4を略テーパ形状とすることにより、レーザー加工等による基材2の除去部分を最小限に留め、基材2の加工時間を短縮することが可能となる。
【0036】
また、非貫通孔4を部分領域Rの延在方向に千鳥配置若しくは縦横並列配置で設けることにより、めっき部位3、31が局所的に薄くなることを極力防止し、めっき部位3、31の外表面の平滑性を一層高めつつ、各非貫通孔4に充填されるめっき部分を確実に繋げてめっき部位3、31を連設することができる。
【0037】
また、無電解めっきと電気めっきを順に施してめっき部位3を形成する場合には、既存の回路溝のような溝を埋めてめっき部位を形成する際に無電解めっき、電気めっきを順に用いる場合、高低差が大きい溝の凹凸に起因して電気めっきにおける高電流部と低電流部の電流の差異が大きくなり、高電流部と低電流部のめっき部位の膜厚差が大きくなるのに対し、電気めっきにおける高電流部と低電流部の電流の差異、高電流部と低電流部のめっき膜厚差を極力抑制し、均一電着性を高めてバラツキを抑え、均一性の高いめっき部位3を形成することができる。
【0038】
また、無電解めっきだけでめっき部位3を形成する場合には、既存の回路溝のような溝を埋めてめっき部位を形成する際に無電解めっきを用いる場合、無電解めっきは析出速度が遅いため、非常に長時間の無電解めっき処理工程が必要になるのに対し、無電解めっきでめっき部分を複数の非貫通孔4に充填して連設するようにめっき部位31を形成することが可能であり、無電解めっき処理工程に要する時間を格段に短縮することができる。また、膜厚の偏りを抑制し、めっき部位31の外表面の平滑性をより一層高めることができる。また、通電配線、電気めっき用の設備が不要となり、又、部分領域Rを覆うめっき部位31の領域が必要以上に大きくなることを極力抑制することができる。
【0039】
〔第2実施形態のめっき成形品及びその製造方法〕
本発明による第2実施形態のめっき成形品1mは、
図6に示すように、硬質の基材2mの一方の表面21mの部分領域Rを覆うようにして電気めっき部位3bによるめっき部位32が形成されている。本例では、基材2mは導電性の金属製の基材、基材2mの一方の表面21mの部分領域Rはめっき部位32に略対応する領域或いはこれよりも僅かに幅狭な領域になっている。
【0040】
導電性の基材2mの一方の表面21mの部分領域Rには、略対応する形状と大きさを有する複数の非貫通孔4mが、間隔を開けて孔密度が略平均化するように点在して形成されている。換言すれば、略対応する形状と大きさを有する複数の非貫通孔4mが、間隔を開けて孔密度が略平均化するように点在して形成された領域が部分領域Rになっている。
【0041】
本例の複数の非貫通孔4mは、
図2(a)、(b)の例と同様に、部分領域Rの延在方向に千鳥配置で設けられており、又、複数の非貫通孔4mが部分領域Rの幅方向の異なる位置にそれぞれ形成され且つ部分領域Rの延在方向に沿って形成されている。また、
図2(c)の別例と同様に、複数の非貫通孔4mを部分領域Rの延在方向に縦横並列配置で設ける構成としても良好である。
【0042】
めっき成形品1mの電気めっき部位3bで構成されるめっき部位32は、
図6に示すように、基材2mの複数の非貫通孔4mのそれぞれの内周面に固着され各非貫通孔4mに充填して形成されており、本例では、非貫通孔4mと非貫通孔4mに充填されためっき部位32の部分の形状が非貫通孔4mの奥側に向かって漸次縮径する略テーパ形状になっている。また、電気めっき部位3bで構成されるめっき部位32は、基材2mの一方の表面21m上で、複数の非貫通孔4mの相互に跨るように部分領域Rを覆って連設されている。
図6において、t1は基材表面21における非貫通孔4mの最大幅で定義される幅であり、例えば非貫通孔4mが平面視略円形である場合には非貫通孔4mの穴径である。t2は非貫通孔4mの深さであり、t3は非貫通孔4m・4m相互のピッチであり、非貫通孔4mの中心と非貫通孔4mの中心との間の距離である。
【0043】
第1実施形態におけるめっき部位3、31と同様に、電気めっき部位3bで構成されるめっき部位32の短時間での形成、めっき部位32の外表面の平滑性の確保、めっき部位32の密着性の確保を同時に実現する観点から、めっき部位32の基材2mの一方の表面21mからの高さ或いは膜厚は、膜厚比率(めっき膜厚/非貫通孔の幅t1の比率):0.5~1.36とすることが好ましく、又、非貫通孔4mの孔面積は3.1×102~1256×102μm2、より好適には11.3×102~88.2×102μm2とすることが好ましく、又、非貫通孔4mの孔容積は0.9×103~31316×103μm3、より好適には15×103~341×103μm3とすることが好ましく、又、非貫通孔4m・4mの相互間隔比は0.16~1.30、より好適には0.28~1.27とすることが好ましい。ここで非貫通孔4m・4mの相互間隔比は、非貫通孔4m・4mの最も近い位置相互の距離/非貫通孔4mの幅t1で定義される。また、同様の観点から、非貫通孔4mを略テーパ形状或いはテーパ形状とする場合の非貫通孔4mの最深部から非貫通孔4mの周縁に延ばした線で構成されるテーパ角αは30~96度、より好適には30~93度とすることが好ましい。また、電気めっき部位3bで構成されるめっき部位32の外表面の平滑性は、めっき部位3bの外表面の中間領域の基面における高低差が25μm以下とすると好適であり、20μmとするとより好適であり、15μmとするとより一層好適であり、更には10μmとするとより一層好適である。また、複数の非貫通孔4mの孔密度の略平均化に関し、非貫通孔4m・4m相互の最短距離の間隔の最大距離と最小距離の差は50%以内とすることが好ましく、又、複数の非貫通孔4mが形成されている領域における1mm2当たりの孔密度の差は50%以内とすることが好ましい。
【0044】
更に、非常に短時間で各非貫通孔4mに充填されるめっき部分を繋げてめっき部位32を形成し、且つめっき部位32の平滑性、密着性をより確実に高める観点からは、非貫通孔4mの孔面積を3.1×102~1256×102μm2、より好適には11.3×102~88.2×102μm2とし、又、非貫通孔4mの孔容積は0.9×103~31316×103μm3、より好適には15×103~341×103μm3とすることが好ましい。また、非貫通孔4m・4m相互の重なりを確実に防止して、良好なめっきの析出性を確保し、各非貫通孔4mに充填されるめっき部分を確実に繋げてめっき部位32を連設する観点からは、非貫通孔4mの孔面積を3.1×102~1256×102μm2、より好適には11.3×102~88.2×102μm2とし、又、非貫通孔4m・4mの相互間隔比は0.16~1.30、より好適には0.28~1.27とすることが好ましい。
【0045】
第2実施形態のめっき成形品1mのめっき部位32を形成する際には、
図7に示すように、導電性の基材2mの一方の表面21mの部分領域Rにレーザー加工で穿孔して、複数の非貫通孔4mを孔密度が略平均化するように間隔を開けて形成する(
図7(a)、(b)参照)。このレーザー加工で用いるレーザーにも、例えば炭酸ガスレーザー、紫外線レーザー、YAGレーザー、ファイバーレーザー、半導体レーザー、ファイバーレーザーと半導体レーザーのハイブリッドレーザーなど適用可能な適宜のレーザーを用いることが可能である。
【0046】
そして、複数の非貫通孔4mが形成された基材2の部分領域Rに電気めっきを施して、電気めっき部位3bで構成されるめっき部位32を複数の非貫通孔4mに充填し且つ非貫通孔4m・4mの相互に跨るように部分領域Rを覆って連設する(
図7(c)~(f)参照)。
【0047】
複数の非貫通孔4mが形成された基材2mの部分領域Rに電気めっきを施す工程では、例えば電気めっき部位3bで構成されるめっき部位32の形成が不要な領域にレジスト膜RFを施して電気めっき浴で電気めっきを施す。そして、非貫通孔4mの内側や基材21m上に順次電気めっき部位3bを析出、成長させ、電気めっき部位3bを、複数の非貫通孔4mにそれぞれに充填していくと共に、非貫通孔4m・4mの相互に跨るように基材2mの一方の表面21mの部分領域Rを覆うように連設する(
図7(e)、(f)参照)。電気めっき部位3bは、例えば銅若しくは銅合金、ニッケル若しくはニッケル合金、パラジウム若しくはパラジウム合金、スズ若しくはスズ合金、銀若しくは銀合金、金若しくは金合金、又は、コバルト若しくはコバルト合金等とすると良好である。
【0048】
第2実施形態によれば、第1実施形態と対応する構成から対応する効果を得ることができる。更に、既存の回路溝に相当する大きさの溝を埋めてめっき部位を形成する際に電気めっきを用いる場合、高低差が大きい溝の凹凸に起因して高電流部と低電流部の電流の差異が大きくなり、高電流部と低電流部のめっき部位の膜厚差が大きくなるのに対し、電気めっきでめっき部分を複数の非貫通孔4mに充填して連設するようにめっき部位32を形成することにより、高電流部と低電流部の電流の差異、高電流部と低電流部のめっき膜厚差を極力抑制し、均一電着性を高めてバラツキを抑え、均一性の高いめっき部位32を形成することができる。
【0049】
〔本明細書開示発明の包含範囲〕
本明細書開示の発明は、発明として列記した各発明、各実施形態の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な内容を本明細書開示の他の内容に変更して特定したもの、或いはこれらの内容に本明細書開示の他の内容を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な内容を部分的な作用効果が得られる限度で削除して上位概念化して特定したものを包含する。そして、本明細書開示の発明には下記変形例や追記した内容も含まれる。
【0050】
上記第1実施形態における絶縁性の基材2は、絶縁性の樹脂基材としたが、本発明における絶縁性の基材には適用可能な範囲で適宜の材料を用いることが可能であり、例えば絶縁性の基材2としてガラス、セラミックス等を用いることも可能である。また、上記第2実施形態における導電性の基材2mは、導電性の金属製基材としたが、本発明における導電性の基材には適用可能な範囲で適宜の材料を用いることが可能である。
【0051】
また、第1、第2実施形態では、非貫通孔4、4mとこれに充填されるめっき部位3、31、32の部分の形状を非貫通孔4、4mの奥側に向かって漸次縮径する略テーパ形状としたが、非貫通孔4、4mとこれに充填されるめっき部位3、31、32の部分の形状は本発明の趣旨の範囲内で適宜であり、例えば略円柱形等としても密着性を向上できて良好である。また、非貫通孔4、4mは、レーザー加工以外の適宜の加工方法で形成することが可能である。
【0052】
また、第1実施形態のめっき成形品1は、回路成形品或いは立体回路成形品を例として説明したが、本発明のめっき成形品は、回路成形品に限定されず本発明の趣旨の範囲内で適宜のものが包含され、絶縁性の基材又は導電性の基材にめっき部位が設けられる適宜のめっき成形品を本発明のめっき成形品とすることが可能である。
【0053】
また、上記実施形態のめっき成形品1の製造において、順次行われる無電解めっき処理と電気めっき処理、単独で行われる無電解めっき処理、又、めっき成形品1mの製造において、単独で行われる電気めっき処理の工程内容は好適な例示であり、これら以外の適宜の処理を行うことが可能である。
【0054】
〔実施例と比較例〕
次に、本発明のめっき成形品の実施例と比較例について説明する。表1~表4に実施例1-25、表5に比較例1-7を示す。
【0055】
実施例1-25では、絶縁性の樹脂基材(材質:エポキシ樹脂)の表面に、略対応する形状と大きさの複数の非貫通孔を間隔を開けて孔密度が略平均化するようにドット状に点在して形成し、複数の非貫通孔に充填し且つ非貫通孔の相互に跨るように連設してめっき部位を形成した。非貫通孔はレーザー加工を使用して形成し、表中のhybridはファイバーレーザーと半導体レーザーのハイブリッドレーザー、表中のUVは紫外線レーザーである。また、めっき部位を形成するめっき液には、A液:奥野製薬社製トッフ゜ルチナ2000と、B液:ローム&ハース電子材料社製カハ゜ーク゛リームHS-200を使用した。
【0056】
実施例1-25の非貫通孔の膜厚比率(めっき膜厚/非貫通孔の幅t1)におけるめっき膜厚は、基材の表面からの高さに相当する膜厚であり、めっき後に回路線状のめっき部位を切断し、断面を顕微鏡で見て基材表面からの高さ(膜厚)をランダムに10ヶ所測定し、その平均値を算出して取得した。また、実施例1-25の非貫通孔の膜厚比率(めっき膜厚/非貫通孔の幅t1)における非貫通孔の幅t1は、非貫通孔の描画後に基材表面をレーザー顕微鏡により全体を眺め、その中からランダムに10点の非貫通孔の幅を測定し、その平均値を算出して取得した。そして、取得しためっき膜厚/非貫通孔の幅t1を非貫通孔の膜厚比率として取得した。
【0057】
実施例1-25の非貫通孔の相互間隔比率は、非貫通孔相互の最も近い位置相互の距離/非貫通孔の幅t1で定義される非貫通孔の相互間隔を取得し、非貫通孔の相互間隔/非貫通孔の幅t1のように算出して取得した。
【0058】
実施例1-25の非貫通孔の孔面積は、非貫通孔の幅t1を円の直径と見立てた面積として(非貫通孔の幅t×1/2)2×3.14の計算式により算出し、取得した。
【0059】
実施例1-25の非貫通孔の孔容積の取得では、先ず非貫通孔の深さt2を、非貫通孔の描画後に描画領域全体をレーザー顕微鏡で眺めその中からランダムに10点の非貫通孔の深さを測定し、その平均値で算出して取得した。そして、非貫通孔の形状を円錐形と見立て、(孔面積×非貫通孔の深さt2)/3の計算式で非貫通孔の孔容積を取得した。
【0060】
実施例1-25の非貫通孔のテーパ角は、非貫通孔を円錐形の断面と見立てtan-1(非貫通孔の幅t1/非貫通孔の深さt2)の計算式により算出し、取得した。
【0061】
実施例1-25における基材穴埋め総合容積は、複数の非貫通孔に充填、穴埋めされためっき部位の容積である。めっき回路総合容積は、複数の非貫通孔にめっき部位が充填、穴埋めされて複数の非貫通孔に跨るように連設され、基材表面に同一単位細線 0.5mm×30mmのめっき部位が形成された状態のめっき部位全体の容積であり、基材穴埋め総合容積と基材上層めっき容積の和である。めっき回路総合容積は、算出した1ドット分の非貫通孔の孔容積×500(μm)/(非貫通孔の相互間隔+非貫通孔の幅t1)×30000(μm)/(非貫通孔の相互間隔+非貫通孔の幅t1)+(回路幅(500μm)×回路長さ(30000μm)×平均膜厚)のようにして算出して、取得した。
【0062】
また、比較例1-7では、絶縁性の樹脂基材(材質:エポキシ樹脂)の表面に凹溝を形成し、凹溝を埋めるようにしてめっき部位を形成した。凹溝はレーザー加工を使用して形成し、表中のhybridはファイバーレーザーと半導体レーザーのハイブリッドレーザーである。また、めっき部位を形成するめっき液には、上記と同様のA液とB液を使用した。
【0063】
比較例1-7における凹溝の深さは、凹溝の描画後に樹脂基材表面の全体をレーザー顕微鏡で眺めその中からランダムに10ヶ所の凹溝の深さを測定し、平均値を算出して取得した。
【0064】
比較例1-7におけるめっき膜厚はめっき後に回路線状のめっき部位を切断し断面を顕微鏡で基材表面からの高さ(膜厚)をランダムに10ヶ所測定し、その平均値を算出して取得した。
【0065】
比較例1-7における基材穴埋め総合容積は、基材の凹溝を埋めるように充填されためっき部位の容積である。めっき回路総合容積は、基材の凹溝を埋めるようにして基材に同一単位細線 0.5mm×30mmのめっき部位が形成された状態のめっき部位全体の容積であり、基材穴埋め総合容積と基材上層めっき容積の和である。めっき回路総合容積は、(凹溝の深さ×凹溝の幅×凹溝の長さ(30000μm))+(回路幅(500μm)×回路長さ(30000μm)×めっき膜厚)のようにして算出して、取得した。
【0066】
そして、各実施例と各比較例を、平滑性、密着性、析出性、均一電着性、生産性(めっき時間-単位:時間)で評価した。表1~表5における××は非常に悪い、×は悪い、△は多少劣る、○は良い、○○はより良い、◎は更により良い、◎◎は非常に良い、をそれぞれ示す7段階の評価を意味する。
【0067】
平滑性の評価では、めっき部位の最表面の段差を測定し、段差0μmから40μm以上のものまでを7段階に分けて評価した。段差0μmは◎◎は非常に良い、段差40μm以上は××は非常に悪い、に対応する。
【0068】
密着性の評価では5mm×60mmの回路線状のめっき部位を基材に作成し、引っ張り試験機で密着力を測定し、密着力0N/cmから40N/cm以上のものまでを7段階に分けて評価した。密着力0N/cmは××は非常に悪い、密着力40N/cm以上は◎◎は非常に良い、に対応する。
【0069】
析出性の評価は、めっき被覆完了時間を7段階に分けて評価した。めっき部位を5分未満で被覆したものが◎◎非常に良い、51分以上かけても被覆しないものが××非常に悪いに対応し、5~10分を◎、11~20分を〇〇、21~30分を〇、31~40分を△、41~50分を×とした。
【0070】
均一電着性の評価は, テストサンプル同一単位細線 0.5mm×30mmの最先端部位と接点近辺部位のめっき膜厚比率(最小値 / 最大値×100=%)で算出された値を7段階に分けて評価した。86%以上を◎◎非常に良い、10%以下を××非常に悪いとして、0%~100%を分割評価した。71%~85%は◎、56%~70%は〇〇、41%~55%は〇、26%~41%は△、11%~25%は×とした。
【0071】
実施例1-25、比較例1-7から明らかなように、実施例1-25のいずれも比較例1-7に対して格段に優れた平滑性でめっき部位を形成できることが分かり、更に、密着性でも優れている。また、実施例1-25は、同一単位細線のめっき部位を比較例1-7に比べて短時間で形成できる傾向があることが明確に示されている。
【0072】
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、例えば立体回路成形品のようなめっき成形品に利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1、1m…めっき成形品 2、2m…基材 21、21m…表面 3、31、32…めっき部位 3a…無電解めっき部位 3b…電気めっき部位 4、4m…非貫通孔 R…部分領域 t1…非貫通孔の幅 t2…非貫通孔の深さ t3…非貫通孔相互のピッチ α…テーパ形状の非貫通孔のテーパ角 C…触媒 RF…レジスト膜 100…樹脂基材 101…表面 102…溝 103…めっき部位 103a…無電解めっき部位 103b…電気めっき部位