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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】抵抗器
(51)【国際特許分類】
   H01C 13/00 20060101AFI20241121BHJP
   H01C 1/14 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01C13/00 J
H01C1/14 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020083325
(22)【出願日】2020-05-11
(65)【公開番号】P2021180207
(43)【公開日】2021-11-18
【審査請求日】2023-04-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000105350
【氏名又は名称】KOA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】亀子 健司
(72)【発明者】
【氏名】酒井 洋一
【審査官】鈴木 駿平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-211294(JP,A)
【文献】特開2015-145813(JP,A)
【文献】特開2020-038219(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01C 1/01
H01C 1/14
H01C 7/00
H01C 13/00
G01R 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
抵抗体と、前記抵抗体に接続された一対の電極と、前記電極に配置された端子部と、を備えた抵抗器において、
前記端子部は、
前記電極に取り付けられる取付け部と、
前記取付け部を前記電極に取り付けたときに前記電極から突出するとともに、検出用の端子が固定される固定部と、から構成され、
前記検出用の端子は、前記端子部とは別部材であり、
前記固定部における前記電極側の端面とは反対の端面に、前記検出用の端子を接触させることを特徴とする抵抗器。
【請求項2】
請求項1に記載の抵抗器であって、
前記端子部は、前記電極とは異種の金属で形成されている抵抗器。
【請求項3】
請求項1または2のいずれか1項に記載の抵抗器であって、
前記取付け部は、前記電極に圧入される圧入部である抵抗器。
【請求項4】
請求項3に記載の抵抗器であって、
前記端子部は、前記電極の材料よりも硬度の高い材料で形成されている抵抗器。
【請求項5】
請求項3または4に記載の抵抗器であって、
前記電極には凹部が形成され、
前記圧入部は、前記凹部に圧入されている抵抗器。
【請求項6】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の抵抗器であって、
前記固定部は、その径が前記圧入部の径よりも大きくなるように形成されている抵抗器。
【請求項7】
請求項3乃至5のいずれか1項に記載の抵抗器であって、
前記固定部は、その径が前記圧入部の径と略同一となるように形成されている抵抗器。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれか1項に記載の抵抗器であって、
前記端子部は、少なくとも前記固定部に螺合しつつ前記検出用の端子を前記固定部とともに挟み込む端子用ネジを含む抵抗器。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれか1項に記載の抵抗器であって、
前記電極は、前記抵抗体を挟むように一対で配置され、
前記電極と前記抵抗体は、端面同士を突き合せた状態で互いに接合している抵抗器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抵抗器に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、電流検出用の抵抗器において、電極の抵抗体近傍となる位置にエンボス加工を施し、当該エンボス部分に電圧検出用の端子を取り付けるためのネジ穴を形成した構成を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2012-531760号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1では、電圧検出用の端子をネジ止めにより電極に直接取り付けることになるので、締め付けトルクや緩み(位置ずれ)によって検出精度が低下するおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、電流検出用の抵抗器において検出精度の低下を抑制可能な抵抗器100を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の1つの態様によれば、抵抗体と、前記抵抗体に接続された一対の電極と、前記電極に配置された端子部と、を備えた抵抗器において、前記端子部は、前記電極に取り付けられる取付け部と、前記取付け部を前記電極に取り付けたときに前記電極から突出するとともに、検出用の端子が固定される固定部と、から構成され、前記検出用の端子は、前記端子部とは別部材であり、前記固定部における前記電極側の端面とは反対の端面に、前記検出用の端子を接触させることを特徴とする
【発明の効果】
【0007】
本発明の1つの態様によれば、端子部の取り付け部は、電極と接触する位置から電極の電位分布を拾うことになるが、固定部において電極から離れるほど等電位線が互いに離れるように拡散するので、固定部の上端の電位分布における電位の最大値と最小値の差分が小さくなり、電位分布が平坦となる。よって、固定部の上端に接触する検出用の端子の電位分布における電位の最大値と最小値の差分も小さくなる。
【0008】
したがって、検出用の端子の締め付け状態が変化する場合、又は検出用の端子の位置ずれが発生する場合であっても、検出用の端子が検知する電位の変化は抑制され、検出器における電位差(電流)の検出精度の低下(バラつき)を低減することができる。
【0009】
特に、電極と端子部とが別体となるので、エンボス加工を用いて電極に端子部を一体で形成する場合よりも端子部の突出する長さを長くすることができる。よって、その分、端子部(固定部)上面における電位分布をさらに平坦にすることができるので、検出用の端子(圧着端子)の取り付け状態の変化に伴う検出精度の低下(バラつき)を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本実施形態の抵抗器の分解斜視図である。
図2A図2Aは、本実施形態の抵抗器を構成する端子部の本体の平面図である。
図2B図2Bは、本実施形態の抵抗器を構成する端子部の本体の底面図である。
図3A図3Aは、本実施形態の抵抗器であって、端子部の本体及び圧着端子の組み付け前の断面図である。
図3B図3Bは、本実施形態の抵抗器であって、端子部の本体及び圧着端子の組み付け後の断面図である。
図4A図4Aは、比較例の抵抗器の圧着端子の組み付け前の斜視図である。
図4B図4Bは、比較例の抵抗器の圧着端子の組み付け後の斜視図である。
図4C図4Cは、比較例の抵抗器の電位分布図(断面図)である。
図4D図4Dは、比較例の抵抗器のネジ孔付近の電位分布図(平面図)である。
図5A図5Aは、本実施形態の抵抗器の斜視図である。
図5B図5Bは、本実施形態の抵抗器において端子部の本体を炭素鋼により形成した場合の電位分布図である。
図5C図5Cは、本実施形態の抵抗器において端子部の本体を銅により形成した場合の電位分布図である。
図5D図5Dは、図5Bに示す端子部の本体の径を小さくした場合の図である。
図6A図6Aは、本実施形態の抵抗器の抵抗値のバラつきと比較例の抵抗器の抵抗値のバラつきを比較したグラフである。
図6B図6Bは、本実施形態の抵抗器のTCRのバラつきと比較例の抵抗器のTCRのバラつきとを比較した図である。
図7A図7Aは、第1変形例の抵抗器であって、リベット変形前の状態を示す断面図である
図7B図7Bは、第1変形例の抵抗器であって、リベット変形後の状態を示す断面図である。
図8A図8Aは、第2変形例の抵抗器であって、圧着端子の組み付け前の平面図である。
図8B図8Bは、第2変形例の抵抗器であって、圧着端子の組み付け後の平面図である。
図8C図8Cは、第2変形例の抵抗器であって、圧着端子の組み付け後の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[抵抗器100の基本構成]
本発明の本実施形態に係る抵抗器100について、図1乃至図3を用いて詳細に説明する。
【0012】
図1は、本実施形態の抵抗器100の分解斜視図である。図2Aは、本実施形態の抵抗器100を構成する端子部の本体4の平面図である。図2Bは、本実施形態の抵抗器100を構成する端子部の本体4の底面図である。図3Aは、本実施形態の抵抗器100であって、端子部の本体4及び圧着端子5の組み付け前の断面図である。図3Bは、本実施形態の抵抗器100であって、端子部の本体4及び圧着端子5の組み付け後の断面図である。
【0013】
抵抗器100は電流経路(不図示)等に実装される。例えば、抵抗器100は、電源に接続されたバスバー等の配線部材(不図示)に固定される。抵抗器100は、電流検出用抵抗器(シャント抵抗器)として用いられる。
【0014】
抵抗器100は、抵抗体1と、第一電極体2(電極)と、第二電極体3(電極)とを備え、第一電極体2と抵抗体1と第二電極体3とが、この順に並んで状態で接合されたものである。
【0015】
抵抗体1と第一電極体2、及び抵抗体1と第二電極体3は、それぞれ端面を互いに突き合せた状態で接合されており、接合方法としては電子ビーム溶接、レーザービーム溶接、クラッド接合(個体接合)等様々な接合方法が適用できる。
【0016】
抵抗器100は、第一電極体2、抵抗体1、第二電極体3の並ぶ方向を長手方向とする略矩形の外形を有している。なお、第一電極体2及び第二電極体3の角は面取りが施されているが、方向性を認識するため、第一電極体2(又は第二電極体3)には上記の面取りよりも大きな面取り部23が形成されている。
【0017】
第一電極体2及び第二電極体3には、端子部、圧着端子5がそれぞれ取り付けられる。端子部は、本体4と端子用ネジ44を含む。本体4は、固定部41と圧入部42を含む。なお、圧着端子5には、電位差に基づいて電流を検出する検出器(不図示)から延出した配線が接続されている(図5参照)。
【0018】
第一電極体2において抵抗体1に隣接する位置には、圧入孔21(凹部)が形成され、同様に第二電極体3において抵抗体1に隣接する位置にも、圧入孔31(凹部)が形成されている。
【0019】
また、第一電極体2において圧入孔21よりも抵抗体1から離間した位置には挿通孔22が形成され、同様に、第二電極体3において圧入孔31よりも抵抗体1から離間した位置には挿通孔32が形成されている。
【0020】
圧入孔21及び圧入孔31には、本体4の圧入部42(取り付け部)がそれぞれ圧入される。図において、圧入孔21は第一電極体2を貫通し、圧入孔31は第二電極体3を貫通しているが、共に貫通する必要はなく圧入部42の長さに相当する深さの凹部であってもよい。
【0021】
挿通孔22,32には、バスバー等の配線部材(不図示)と接続するための締結ボルト(不図示)がそれぞれ挿通される。
【0022】
図2A,B、図3A,Bに示すように、端子部の本体4は、円筒形の形状を有し、円筒形の径の大きい部分を構成する固定部41と、径の小さい部分を構成する圧入部42とを含む。なお本体4の形状は、円筒形以外に、6角柱等の角柱形状でもよい。
【0023】
また、本体4には、固定部41と圧入部42を連通するようにネジ孔43が形成されている。ネジ孔43には端子部を構成する端子用ネジ44が螺合する。また端子用ネジ44は、圧着端子5の開口部に挿通した状態でネジ孔43に螺合する。
【0024】
ここで、図3Aに示す固定部41の外径A及び端子用ネジ44の頭の部分の外径は、圧着端子5の外径とほぼ同じ大きさであることが好ましい。これにより、圧着端子5の固定部41及び端子用ネジ44との間の位置ずれを低減することができる。また、固定部41の動径方向の厚みBと、軸方向の長さCは、B:Cが0.8以上となるように設計することが好ましい。これにより、後述の抵抗器100の抵抗値及びTCRのバラつきを低減できる。
【0025】
固定部41の圧入部42側の端面には、凸型のリング状の段差部411が形成されている。図2Bに示すように、端子部の本体4において、ネジ孔43、圧入部42、段差部411、及び固定部41が同心円を形成するように配置されている。
【0026】
図3Aに示すように、圧入部42の径は圧入孔21,31の径よりもやや大きくなっている。
【0027】
よって、図3Bに示すように、圧入部42を圧入孔21,31に圧入すると、圧入部42が圧入孔21,31の内径を拡径するように圧入される。また、段差部411も第一電極体2の圧入孔21の周囲、及び第二電極体3の圧入孔31の周囲に圧入させることができる。
【0028】
ここで、端子部の材料(例えば炭素鋼)は、第一電極体2及び第二電極体3の材料(例えば銅)よりも硬度の高い材料を適用することが好適であるが、同種の金属を適用してもよい。
【0029】
本体4の圧入部42を圧入孔21,31に圧入した後、端子用ネジ44を用いて圧着端子5を本体4の固定部41に取り付けることができる。さらに、締結用ボルト(不図示)を第一電極体2の挿通孔22、及び第二電極体3の挿通孔32に挿通してバスバー等の配線部材に締結することで、本実施形態の抵抗器100を固定することができる。
【0030】
[電位分布]
本願発明者は、比較例の抵抗器101と本実施形態の抵抗器100において、電圧(電流)を印加したときの電位分布について調査した。
【0031】
<比較例の抵抗器101の電位分布>
図4Aは、比較例の抵抗器101の圧着端子5の組み付け前の斜視図である。図4Bは、比較例の抵抗器101の圧着端子5の組み付け後の斜視図である。図4Cは、比較例の抵抗器101の電位分布図(断面図)である。図4Dは、比較例の抵抗器101のネジ孔311付近の電位分布図(平面図)である。なお、比較例の抵抗器101において本実施形態の抵抗器100と共通する構成要素には同一の符号を付している。また、図4C図4Dにおいて、端子用ネジ44は省略している。
【0032】
図4Aに示すように、比較例の抵抗器101は、その外形は本実施形態の抵抗器100と同様の構造となっているが、本実施形態の圧入孔21,31に相当する部分がネジ孔211,311になっている。そして、図4Bに示すように、圧着端子5を第一電極体2及び第二電極体3に接触させ、端子用ネジ44を圧着端子5の開口部に挿通してネジ孔211,311に螺合させることで圧着端子5を第一電極体2及び第二電極体3に固定している。
【0033】
比較例の抵抗器101において、第一電極体2及び第二電極体3の間に電圧(電流)を印加すると、図4C図4Dに示す電位分布が形成される。電位分布は、所定の電位差(刻み幅)を有する等電位線により表される。図4Cに示すように、抵抗器101においては抵抗体1の抵抗値が第一電極体2及び第二電極体3の抵抗値に比べて大きい。このため、抵抗体1における等電位線は第一電極体2及び第二電極体3よりも密に分布する。
【0034】
一方、第一電極体2及び第二電極体3での等電位線は、抵抗体1よりも疎となるが、ネジ孔211,311(圧入孔21,31でも同様)の部分にやや蜜に分布する。これはネジ孔211,311の内側(空気)と電極(第一電極体2、第二電極体3)とで形成される電場が異なるため、図4Dに示すように、ネジ孔211,311の周囲の電位が歪められ、等電位線はネジ孔211,311の内壁に集中するように歪められることに起因する。
【0035】
図4Cに示すように、圧着端子5をネジ孔211,311の周囲となる位置に配置すると、ネジ孔211,311の周囲の圧着端子5は、接触している領域の電位分布が直接引き写された、換言すると直接拾う形となるため、接触している領域の電位分布の影響を直接受けることになる。したがって、圧着端子5の締め付け状態が変化する場合、又は圧着端子5の位置ずれが発生する場合、圧着端子5は検知する電位(平均値)が左右で異なり、検出器における電位差(電流)の検出値にバラつきが発生することになる。
【0036】
<本実施形態の抵抗器100の電位分布>
図5Aは、本実施形態の抵抗器100の斜視図である。図5Bは、本実施形態の抵抗器100において端子部の本体4を炭素鋼により形成した場合の電位分布図である。図5Cは、本実施形態の抵抗器100において端子部の本体4を銅により形成した場合の電位分布図である。図5Dは、図5Bに示す端子部の本体4の径を小さくした場合の図である。なお、図5B図5C図5Dにおいては、端子用ネジ44の図示を省略している。
【0037】
図5Aに示すように、本実施形態の抵抗器100には、端子部を構成する本体4を介して圧着端子5が取り付けられている。
【0038】
図5Bに示すように、本体4を備える端子部(圧入部42)には、電極(第一電極体2、第二電極体3)と接触する位置から電極(第一電極体2、第二電極体3)の電位分布が引き写される。しかし、固定部41において電極(第一電極体2、第二電極体3)から離れるほど等電位線が互いに離れるように放射状に広がった電位分布となる。すなわち、本体4を圧入、装着することにより、固定部41は、接触している領域の電位分布の影響を直接拾わず、等電位線間が広くなり、縦線は傾斜線になる。そして、固定部41の上端の電位分布における電位の最大値と最小値の差分が小さくなり、電位分布が平坦となる。したがって、固定部41の上端に接触する圧着端子5の電位分布における電位の最大値と最小値の差分も小さくなる。
【0039】
したがって、圧着端子5の締め付け状態が変化する場合、又は圧着端子5の位置ずれが発生する場合であっても、本体4の上部に装着される圧着端子5が検知する電位の変化は抑制され、検出器における電位差(電流)の検出精度の低下(バラつき)を低減することができる。
【0040】
特に、電極(第一電極体2、第二電極体3)と端子部(本体4)とが別体となるので、エンボス加工を用いて電極(第一電極体2、第二電極体3)に端子部(本体4)を一体で形成する場合よりも端子部(本体4)により、電極から上方へ突出する高さを高くすることができる。よって、その分、固定部41上面における電位分布をさらに平坦にすることができるので、圧着端子5の取り付け状態の変化に伴う検出精度の低下(バラつき)を低減することができる。
【0041】
図5Bでは、端子部(本体4)を炭素鋼で形成した場合の電位分布であり、図5Cは、図5Bの端子部と同じ形の端子部(本体4)を銅で形成した場合の電位分布であるが、いずれも固定部41上端において等電位線が拡散していることがわかる。なお、固定部41の径は、圧入部42の径よりも大きくなるように形成されている。これにより、固定部41と圧着端子5との接触面積を確保して、圧着端子5を安定的に固定部41に接続することできる。
【0042】
図5Dは、本体4を炭素鋼で形成した場合であって、本体4において圧入部42と固定部41の径がほぼ同じとなるように設計した場合の電位分布となっている。図5Dに示す端子部の圧入部42には、電極(第一電極体2、第二電極体3)から受ける電位分布が引き写される。しかし、上記のように、固定部41において電極(第一電極体2、第二電極体3)から離れるほど等電位線が互いに離れるように拡散した電位分布となる。さらに、図5Dに示す固定部41の上端は、図5B図5Cに示す固定部41の上端よりも小さくなっている。よって、固定部41上端における電位分布の最大値と最小値との差分は、図5B図5Cの場合よりもさらに小さくなる。したがって、固定部41の上端に接触する圧着端子5の電位分布における電位の最大値と最小値の差分も図5B図5Cの場合よりもさらに小さくなるので、検出器における電位差(電流)の検出精度の低下(バラつき)を低減することができる。
【0043】
[抵抗値のバラつきとTCRのバラつきの比較]
図6Aは、本実施形態の抵抗器の抵抗値のバラつきと比較例の抵抗器の抵抗値のバラつきを比較したグラフである。図6Bは、本実施形態の抵抗器のTCRのバラつきと比較例の抵抗器のTCRのバラつきとを比較した図である。
【0044】
本願発明者は、図4Aに示す比較例の抵抗器101と図5A等に示す本実施形態の抵抗器100において所定の電流を印加し、検出器を用いて二つの圧着端子5間の電圧(抵抗器100に印加される電圧)を計測し、電圧/電流により、抵抗値を算出した。また、抵抗器100,101に印加する電流を変化させることで抵抗体1の発熱量(温度)を変化させ、それによる抵抗値の変化からTCR(抵抗温度係数:Temperature Coefficient Of Resistance)を算出した。さらに、圧着端子5の付け外しを複数回繰り返し、その都度上記の抵抗値及びTCRを算出した。以上より、図6Aに示す抵抗値のバラつき[%]、図6Bに示すTCRのバラつき[ppm/k]を算出した。
【0045】
本実施形態の端子部がない比較例の抵抗器101(図4A)では、上記のように圧着端子5は電極(第一電極体2、第二電極体3)において圧着端子5が接触している部分の電位分布がそのまま引き写された形となる。
【0046】
よって、比較例の抵抗器101において、圧着端子5の締め付け状態が変化し、又は位置ずれが発生する場合には、図6Aに示すように、抵抗値のバラつきが顕著となる。
【0047】
一方、本実施形態の抵抗器100(図5A)では、上記のように、圧着端子5が接触する端子部(固定部41)の上端において等電位線は拡散している。したがって、本実施形態の抵抗器100において、圧着端子5の締め付け状態が変化し、又は位置ずれが発生する場合であっても、図6Aに示すように、抵抗値のバラつきは低減される。
【0048】
また、図6Aに示すように、TCRについても、比較例の抵抗器101(端子部無)ではバラつきが大きいが、本実施形態の抵抗器100(端子部有)ではバラつきが大きく低減されている。これは、固定部41により圧着端子5が電極(第一電極体2、第二電極体3)から離間するため、その分、圧着端子5に流れ込む電流成分が小さくなるだけでなく、固定部41から引き写される電位分布も平坦となる(等電位線も疎となる)ことに起因している。
【0049】
[第1変形例]
図7Aは、第1変形例の抵抗器102であって、リベット変形前の状態を示す断面図である。図7Bは、第1変形例の抵抗器102であって、リベット変形後の状態を示す断面図である。第1変形例では、端子用ネジ44の代わりにリベット45が適用される。リベット45を適用する場合、端子部の本体4のネジ孔43のネジ切りを省略して単なる挿通孔としてもよい。
【0050】
第1変形例の抵抗器102の組み付け方法は、上記の基本構成と同様であるが、図7Aに示すように、圧着端子5にリベット45を挿通した状態で電極(第一電極体2、第二電極体3)に圧入後の端子部の本体4にリベット45を挿通する。そして、図7Bに示すように、リベット45の先端をカシメにより塑性変形させることで圧着端子5を本体4(固定部41)に固定することができる。
【0051】
[第2変形例]
図8Aは、第2変形例の抵抗器103であって、圧着端子5の組み付け前の平面図である。図8Bは、第2変形例の抵抗器103であって、圧着端子5の組み付け後の平面図である。図8Cは、第2変形例の抵抗器103であって、圧着端子5の組み付け後の断面図である。
【0052】
第2変形例でも、上記の基本構成及び第1変形例と同様に、端子部(本体4)を圧入孔21,31に圧入している。しかし、第2変形例では、図8Cに示すように、端子部(本体4)のネジ孔43(挿通孔)が省略されている。そして、固定部41の上端に圧着端子5を挟み込む挟み込み部46を配置している。
【0053】
挟み込み部46は、圧着端子5の厚みよりやや狭い間隔のスリットを固定部41の上端との間に形成するものであり、本実施形態では、例えば、三個形成されている。図8Aに示すように、挟み込み部46は、例えば、圧着端子5(固定部41)の周方向で互いに対向する位置に一対配置し、残りの一つを周方向で90度回転した位置に配置する。
【0054】
そして、図8Bに示すように、固定部41において挟み込み部46が配置されていない方向から圧着端子5を挟み込み部46に挿入して圧着端子5を挟み込み部46に挟み込ませる。
【0055】
[本実施形態の効果]
本実施形態の抵抗器100によれば、抵抗体1と、抵抗体1に接続された一対の電極(第一電極体2、第二電極体3)と、電極(第一電極体2、第二電極体3)に配置された端子部と、を備えた抵抗器100において、端子部は、電極(第一電極体2、第二電極体3)に取り付けられる取付け部(圧入部42)と、取付け部(圧入部42)を電極(第一電極体2、第二電極体3)に取り付けたときに電極(第一電極体2、第二電極体3)から突出するとともに、検出用の端子(圧着端子5)が固定される固定部41と、を含む。
【0056】
上記構成により、端子部(本体4)の取り付け部(圧入部42)は、電極(第一電極体2、第二電極体3)と接触する位置から電極(第一電極体2、第二電極体3)の電位分布を拾うことになるが、固定部41において電極(第一電極体2、第二電極体3)から離れるほど等電位線が互いに離れるように拡散するので、固定部41の上端の電位分布における電位の最大値と最小値の差分が小さくなり、電位分布が平坦となる。よって、固定部41の上端に接触する検出用の端子(圧着端子5)の電位分布における電位の最大値と最小値の差分も小さくなる。
【0057】
したがって、検出用の端子(圧着端子5)の締め付け状態が変化する場合、又は検出用の端子(圧着端子5)の位置ずれが発生する場合であっても、検出用の端子(圧着端子5)が検知する電位の変化は抑制され、検出器における電位差(電流)の検出精度の低下(バラつき)を低減することができる。
【0058】
特に、電極(第一電極体2、第二電極体3)と端子部(本体4)とが別体となるので、エンボス加工を用いて電極(第一電極体2、第二電極体3)に端子部(本体4)を一体で形成する場合よりも端子部(本体4)の突出する長さを長くすることができる。よって、その分、端子部(固定部41)上面における電位分布をさらに平坦にすることができるので、検出用の端子(圧着端子5)の取り付け状態の変化に伴う検出精度の低下(バラつき)を低減することができる。
【0059】
本実施形態の抵抗器100であって、端子部(本体4)は、電極(第一電極体2、第二電極体3)とは異種の金属で形成されている。
【0060】
本実施形態の抵抗器100であって、取付け部(圧入部42)は、電極(圧入孔21,31)に圧入される圧入部42である。これにより、簡易な構成で端子部(本体4)を電極(圧入孔21,31)に取り付けることができる。
【0061】
本実施形態の抵抗器100であって、端子部(本体4)は、電極(第一電極体2、第二電極体3)の材料(例えば銅)よりも硬度の高い材料(例えば炭素鋼)で形成されている。これにより、端子部(本体4)を電極(第一電極体2、第二電極体3)に容易に圧入させることができる。また、端子部(本体4)の耐久性を高めることができるので、検出用の端子(圧着端子5)を固定部41への付け外しを繰り返して行う場合において好適な構成となる。
【0062】
本実施形態の抵抗器100であって、電極(第一電極体2、第二電極体3)には凹部(圧入孔21,31)が形成され、圧入部42は、凹部(圧入孔21,31)に圧入されている。これにより、圧入部42を容易に凹部(圧入孔21,31)に圧入することができる。
【0063】
本実施形態の抵抗器100であって、固定部41は、その径が圧入部42の径よりも大きくなるように形成されている。これにより、検出用の端子(圧着端子5)を安定的に固定部41に取り付けることができる。
【0064】
本実施形態の抵抗器100であって、固定部41は、その径が圧入部42の径と略同一となるように形成されている。これにより、検出用の端子(圧着端子5)と固定部41との接触面積が小さくなるので、引き写される電位分布において電位の最大値と最小値との差分も小さくできるので、抵抗値のバラつきを低減することができる。
【0065】
本実施形態の抵抗器100であって、端子部は、少なくとも固定部41に螺合しつつ検出用の端子を固定部41とともに挟み込む端子用ネジ44を含む。これにより、簡易な構成で検出用の端子(圧着端子5)を固定部41に固定することができる。
【0066】
本実施形態の抵抗器100であって、電極(第一電極体2、第二電極体3)は、抵抗体1を挟むように一対で配置され、電極(第一電極体2、第二電極体3)と抵抗体1は、端面同士を突き合せた状態で互いに接合している。これにより、電位差(電流)を高精度に検出可能な抵抗器100となる。
【0067】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。例えば、本実施形態では、端子部(本体4)を電極(第一電極体2、第二電極体3)に圧入する構成としているが、取り付け部(圧入部42)を雄ネジ構造にし、圧入孔21,31をネジ孔として形成して取り付け部を当該ネジ孔に螺合させる構成としてもよい。
【0068】
また、本実施形態では、抵抗体1の端面と電極(第一電極体2、第二電極体3)の端面を互いに突き合せて接合した構成としているが、一対の電極の上に抵抗体1を重ね合わせるとともに、電極において端子部を配置する部分を抵抗体1から露出させた構成においても適用可能である。
【符号の説明】
【0069】
1 抵抗体
2 第一電極体
3 第二電極体
41 固定部
42 圧入部
5 圧着端子
100 抵抗器
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5A
図5B
図5C
図5D
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C