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  • 特許-自己潤滑導電性軸受 図1
  • 特許-自己潤滑導電性軸受 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】自己潤滑導電性軸受
(51)【国際特許分類】
   F16C 17/02 20060101AFI20241121BHJP
   F16C 17/24 20060101ALI20241121BHJP
   F16C 33/12 20060101ALI20241121BHJP
   B64C 25/10 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F16C17/02 Z
F16C17/24
F16C33/12 Z
B64C25/10
【請求項の数】 5
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020102229
(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公開番号】P2020204399
(43)【公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-11-29
(31)【優先権主張番号】19180234.7
(32)【優先日】2019-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】520211513
【氏名又は名称】サフラン ランディング システムズ ユーケー リミティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】リッキー マンスフィールド
【審査官】小川 克久
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-060397(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0033261(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 17/02
F16C 17/24
F16C 33/12
B64C 25/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピンジョイントアセンブリにおいて、
前記ピンジョイントアセンブリは、
ジョイントピンと、
部品と、
導電性スリーブ(202)と自己潤滑性ライナー(208)とを備える軸受(200)であって、前記導電性スリーブ(202)は、それぞれ内面(206)及び外面を有する、第1の部分及び第2の部分を有し、前記自己潤滑性ライナーは、前記導電性スリーブ(202)の前記第1の部分の前記内面(206)にわたって延びて第1の管状容積部(214)を画定し、前記第1の管状容積部は第1の直径(A)及び第1の長手軸線を有し、前記導電性スリーブ(202)の前記第2の部分の内面(212)は第2の管状容積部(216)を画定し、前記軸受(200)が使用されている時に前記第2の管状容積部(216)は前記第1の管状容積部(214)と同じ直径及び同じ長手軸線を有する、軸受(200)とを備え、
前記部品が前記ジョイントピンに回動可能に結合されるように、前記ジョイントピンは、前記第1の部分の前記第1の管状容積部(214)及び前記第2の管状容積部(216)を占有し、前記第1の部分の前記外面(210)が前記部品に接触し、
前記導電性スリーブの前記第2の部分の前記外面(218)は、前記部品から隙間によって分離されている、ピンジョイントアセンブリ。
【請求項2】
前記導電性スリーブの前記第2の部分は、前記第1の部分から離れて前記第1の長手軸線と平行に突出する複数の接触部(322a、322b、322c)を備え、前記複数の接触部(322a、322b、322c)は、前記導電性スリーブの前記第2の部分に形成された複数の間隙(324a、324b)によって互いに分離されている請求項1に記載のピンジョイントアセンブリ
【請求項3】
フランジ(220)を備える、請求項1又は2に記載のピンジョイントアセンブリ
【請求項4】
前記フランジ(220)は、前記導電性スリーブの一端部から放射状に延びるフランジ本体を備える、請求項3に記載のピンジョイントアセンブリ
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の1つ又は複数のピンジョイントアセンブリ(400)を備える航空機着陸装置アセンブリ(420)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己潤滑導電性軸受に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機の着陸装置アセンブリは、カップリング又はジョイントを介して移動可能に連結される構造部品を含むことができる。例えば、前方ステイは、ステイが折り畳まれることを可能にするためにピンジョイントを使用して互いに回動可能に結合される第1及び第2の部品を有する。ピンジョイントは、典型的には、結合された複数の部品の係合突起内に収容される(典型的にはアルミニウム青銅又はステンレス鋼から作られる)犠牲摩耗ブッシュに対して着座された(従来ではクロムで被覆され、より最近では高速酸素燃料(HVOF)で被覆された)硬質被覆ピンから成る。
【0003】
着陸装置は、静電気の放電を可能にしかつ照明衝突に対する保護を確実にするために、航空機の車輪と着陸装置取り付け点との間に導電性経路を設けることが望ましい。ピンジョイントでは、例えば、導電性経路は、金属製ブッシュとジョイントピンとの間の導電性経路を用いて電気的に結合された複数の構造部品によって形成される。
【0004】
最近では、ジョイントの定期的なグリース補給の必要性を減らすために、ジョイントブッシュの裏打ち又は被覆のために、自己潤滑材料として一般に知られる低摩擦材料が使用されている。これらの自己潤滑材料は、一般に、貧弱な導体であり、したがって、ジョイントブッシュと部品とピンの間の金属から金属への接触から保証された電気的接合が失われる。
【0005】
接続ストラップは、結合された複数の部品の間に電流経路を提供するための1つの方法である。しかしながら、接続ストラップは、取り付け点及び締結具を必要とし、他の装置のスナッギングを引き起こす可能性がある。さらに、接続ストラップは、過剰なノイズを引き起こしジョイントの複雑さを増大させて、より高いメンテナンスレベルを必要とすることにつながる可能性がある。それゆえ、これらの問題を緩和することが望ましい。
【0006】
特許文献1(英国特許出願公開第2410986号明細書)には、接続構造と導電性基板とを備えた導電性自己潤滑軸受システムであって、潤滑材料6が被覆されていない導電性部分と面一になるように、導電性基板の谷の中に潤滑材料6が配置されている、導電性自己潤滑軸受システムが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】英国特許出願公開第2410986号明細書
【発明の概要】
【0008】
本発明の第1の態様によれば、導電性スリーブと、自己潤滑性ライナーとを備える軸受であって、前記導電性スリーブは、それぞれ内面及び外面を有する第1の部分及び第2の部分を備え、前記自己潤滑性ライナーは、前記導電性スリーブの前記第1の部分の内面にわたって延びて、第1の管状容積部を画定し、前記第1の管状容積部は、第1の直径及び第1の長手軸線を有し、前記導電性スリーブの前記第2の部分の内面は、第2の管状容積部を画定し、前記第2の管状容積部は、前記第1の管状容積部と同じ直径及び同じ長手軸線を有する、軸受が提供される。
【0009】
有利には、本発明の第1の態様による軸受は、ピンジョイントを介して移動可能に結合される複数の構造部品を電気的に結合する、ピンジョイントの外面とピンとの間に導電性経路を提供する。さらに、本発明の第1の態様による軸受は、ピンジョイント上の潤滑溝の必要性を低減し、ひいてはピンジョイントの空間及び全質量を低減し、改良されたピンジョイントを得ることができる。
【0010】
導電性スリーブの第1の部分の外面は、導電性スリーブの第2の部分の外面よりも第1の長手軸線から遠くに放射状に延びてもよい。
【0011】
導電性スリーブの第2の部分は、導電性スリーブの第2の部分に形成された間隙によって互いに分離されている、第1の部分から離れて第1長手軸線に平行に突出する複数の接触部を備えてもよい。
【0012】
軸受は、フランジを備えることができる。フランジは、導電性スリーブの一端部から放射状に延びるフランジ本体を備えることができる。
【0013】
本発明のさらなる態様によれば、ジョイントピンと、部品と、この態様による軸受とを備えるピンジョイントアセンブリであって、
該ジョイントピンは、第1及び第2の管状容積部を占有し、該部品が該ジョイントピンに回動可能に結合されるように、該第1の部分の外面が該部品に接触する、ピンジョイントアセンブリが提供される。
【0014】
導電性スリーブの第2の部分の外面は、部品から間隙によって分離されていてもよい。
【0015】
本発明のさらなる態様によれば、上記のジョイントアセンブリのうちの1つ又は複数を備える航空機用着陸装置アセンブリが提供される。
【0016】
本発明のいくつかの実施形態を、添付図面を参照しながら、単なる例示的な例として説明する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、接続ストラップを備える公知のジョイントアセンブリである。
図2図2は、本発明の一実施形態による軸受の断面図である。
図3図3は、本発明の別の実施形態による軸受の断面図である。
図4図4は、本発明の一実施形態に係る着陸装置アセンブリを備える航空機の部分図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、ジョイントピン102及び複数の自己潤滑軸受を備える公知のピンジョイント100を示す。ピンジョイント100は、第1部品104と第2部品106とを結合し、第1部品104がジョイントピン102を中心として回動することによって第2部品106に対して移動できる。第1の部品104及び第2の部品106は、例えば、サイドステイのリンク、トルクリンク、ロックリンク、台車ピボットピン、アクチュエータアタッチメント又は着陸装置に一般的に用いられる他の類似の部品とすることができる。自己潤滑ブッシュ(図1では見えない)は、ジョイントピンと第1の部品104及び第2の部品106との間に配置される。この自己潤滑性ブッシュは、低摩擦材料からなり、ブッシュの定期的な潤滑を減らすか、又は不要にする。公知のピンジョイントの他の配置では、第1及び第2の部品の一方は、他方の部品のみがジョイントピンに対して移動することができるように、ジョイントピンにクロスボルトで接合することができる。
【0019】
自己潤滑ブッシュの低摩擦材は、導電不良の可能性がある。照明衝突から生じる静電放電又は電流が第1の部品104から第2の部品106に流れ得る導電性経路が存在することを確実にするために、導電性接続ストラップ110は、第1のストラップ取り付け点112aを介して、第2の部品106に、第2のストラップ取り付け点112bを介して、第1の部品104に結合される。接続ストラップは、導電性材料を備える。取り付け点112a及び112bは、接続ストラップ110を介して第1の部品104から第2の部品106に電流が流れることを可能にするように構成される。
【0020】
接続ストラップには、多くの欠点がある。例えば、それらは、他の装置のスナッギングを引き起こしたり、展開中に着陸装置を「ハングアップ(hang up)」させることがある。さらに、接続ストラップは過剰なノイズを発生させる可能性があり、取り付け点112a、112bは、部品104、106の構造的完全性に有害となり得るボルト及び締結具を必要とし得る。また、接続ストラップによって、結合アセンブリの複雑さが増し、その結果、より高いメンテナンスを必要となる。
【0021】
図2は、本発明の一実施形態による軸受200を備えるピンジョイントアセンブリの断面を示す。軸受200は、実質的に管状であり、導電性スリーブ202と自己潤滑性ライナー208とを備える。軸受200は、ジョイントピン(図2には図示せず)と構造部品204の内面との間に配置され、これにより、構造部品204が、導電性スリーブ202を介して構造部品204とジョイントピンとの間の電気的接続を維持しつつ、ジョイントピンを中心に回動することを可能にする。
【0022】
導電性スリーブ202は、互いに接触している(contiguous)、第1の部分及び第2の部分を備える。この実施形態では、導電性スリーブの第1の部分の内面206は、管状であるが、他の実施形態では内面206は管状でなく、例えば、ライナー208のスリーブへの付着性を向上させるために一様でない形状を有していてもよい。導電性スリーブの第1の部分の内面206は、第1の管状容積部214を画定する自己潤滑性ライナー208を形成する自己潤滑材料の層で裏打ちされる又は被覆される。
【0023】
自己潤滑性ライナー208は、ジョイントピンと接触するように配置された内側管状面を有し、これにより、ジョイントピンの周りの構造部品204の回動運動を容易にする。自己潤滑性ライナー208の内側管状面は、第1の直径Aを有する。
【0024】
この実施形態では、導電性スリーブの第1の部分の外面210は、構造部品204の表面と接触して適合するように配置される、管状表面で
ある。他の実施形態では、外面210は、長方形の直角プリズム、三角形の直角プリズム、又は構造部品204の表面の形状に適合する任意の他の形状を画定するように成形されてもよい。
【0025】
導電性スリーブの第2の部分の内面212は、管状であり、自己潤滑性ライナー208の内面によって画定される第1の管状容積部214と同じ直径A及び同じ長手軸線を有する第2の管状容積部216を画定する。図2の実施形態では、第2の管状容積部216は、第1の管状容積部に接触しているが、他の実施形態では、自己潤滑性ライナー208の内面と、導電性スリーブの第2の部分の内面212との間に隙間を有してもよく、その結果、第1の管状容積部214と第2の管状容積部216の間に隙間が生じうる。
【0026】
使用時に、ジョイントピンが第1及び第2の管状容積部214、216を占有し、導電性スリーブの第1の部分の外面210から導電性スリーブの第2の部分の内面212まで電流経路が存在し、したがって、構造部品204をジョイントピンに電気的に結合するように、軸受は配置される。
【0027】
好ましくは、かつ図2に図示されるように、導電性スリーブの第2の部分の外面218は、導電性スリーブの第1の部分の外面210が、導電性スリーブの第2の部分の外面よりも、第1及び第2の管状容積部214、216の長手軸線からより遠くに放射状に延びるので、導電性スリーブの第2の部分の外面218は、構造部品204と接触せず、したがって、第2の部分の内面212とは反対のアンダーカットレリーフを生成する。換言すれば、導電性スリーブの第2の部分は、その内面がジョイントピンに接触するが、その外面が構造部品204に接触しないように成形される。アンダーカットレリーフ又は凹部の存在により、使用時にジョイントピンと接触する導電性スリーブ202の第2の部分に、少量の柔軟性、すなわち弾性が提供される。この柔軟性は、使用時に、導電性スリーブの第2の部分が全軸受荷重を担持しないことを意味するので有利である。というのは、第2の部分は、全軸受荷重が導電性スリーブの第1の部分及び自己潤滑性ライナー208によって担持されるように、わずかに弾性変形するからである。スリーブの裏打ちされていない第2の部分によって担持される負荷を低減することによって、導電性スリーブ及びジョイントピンの望ましくない磨耗及び/又はスコーリング(scoring)の一部が回避される。
【0028】
他の実施形態では、導電性スリーブの第2の部分の外面218は、導電性スリーブの第1の部分の外面210と整列(位置合わせ)されてもよい。
図2の実施形態では、軸受は、一端においてフランジ220を備える。フランジ220は、導電性スリーブの一端部から放射状に延びるフランジ本体を備え、ジョイントピン又は構造部品204に対する軸受200の軸方向の移動を制限するように配置される。他の実施形態では、フランジを有していなくてもよい。
【0029】
図2では、2つの軸受が図示されており、2つの軸受は互いに鏡像である。2つの軸受の両方は、フランジと、導電性スリーブの裏打ちされていない内面と反対においてアンダーカットレリーフとを備える。しかしながら、他のジョイントの構成では、1つの軸受のみであってもよいし、1つの軸受のみがフランジを有していてもよいし、1つの軸受のみがアンダーカットレリーフを有していてもよい。他の構成では、上述したように、1つの軸受が存在し、第2の軸受は、裏打ちされていない第2の部分を欠くことができる。すなわち、第2の軸受は、導電性スリーブの内面の全面にわたって延びる自己潤滑性ライナーを有することができる。当業者は、上記の種々の組合せが可能であることを理解するであろう。
【0030】
図3は、本発明の別の実施形態を示す。図3の軸受は、図2の軸受と実質的に類似しているが、図3の実施形態では、導電性スリーブの第2の部分は、キャステレーションの付けられた(castellated)周囲を有し、複数の接触部322a、322b、322cが、導電性スリーブの第1の部分202から離れて突出し、第1及び第2の管状容積部214、216の長手軸線に平行に突出している。これら接触部322a、322b、322cは、導電性スリーブの第2の部分に形成された間隙324a、324bによって互いに分離されている。図3の実施形態では、上記の部材は長方形のキャステレーションを形成するが、他の実施形態では、鋸歯パターン又は任意の他の類似の形状を形成してもよい。図3の実施形態では、導電性スリーブの第2の部分は、スロット付きリングを形成し、これは、単にレリーフアンダーカットによって提供されるものよりも、スリーブの第2の部分の柔軟性を高める。
【0031】
図4は、主着陸支柱440と、車輪430と、本発明の実施形態による軸受を有する少なくとも1つのジョイントアセンブリ400とを有する、着陸装置アセンブリ420を有する、航空機410の部分概略図を示す。
【0032】
上述の自己潤滑性ライナーは、炭素、アラミド、ガラス、PTFE、ポリエステルなどの連続繊維、又はそれらの組合せを含み得る合成繊維で強化された重合体(ポリマー)としうる。自己潤滑性ライナーは、グラファイトなどの乾燥潤滑剤の粒子を含むエポキシと、PTFE繊維及び炭素繊維の連続的に織り込まれた混合物とを備えうる。当業者は、上記が単なる例であり、低摩擦特性を有する任意の材料をその場所で使用してもよいことを認識するであろう。自己潤滑性ライナーを導電性スリーブの第1の部分の内面206に注入してもよい。
図1
図2
図3
図4