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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】建材
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/82 20060101AFI20241121BHJP
   E06B 3/67 20060101ALI20241121BHJP
   G10K 11/172 20060101ALI20241121BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E04B1/82 M
E04B1/82 J
E06B3/67 B
G10K11/172
G10K11/16 120
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2020113831
(22)【出願日】2020-07-01
(65)【公開番号】P2022012181
(43)【公開日】2022-01-17
【審査請求日】2023-05-01
(73)【特許権者】
【識別番号】504163612
【氏名又は名称】株式会社LIXIL
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】菅 彰一郎
(72)【発明者】
【氏名】松田 宏
【審査官】伊藤 昭治
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-146725(JP,A)
【文献】特開2007-262765(JP,A)
【文献】特開2005-338795(JP,A)
【文献】特開2020-008855(JP,A)
【文献】国際公開第2019/138969(WO,A1)
【文献】特開2007-100394(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 1/62 - 1/99
G10K 11/00 - 11/36
E06B 3/67
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一部が透明又は半透明な本体と、
前記本体の透明又は半透明な部分に設けられ、透明又は半透明な材料で構成されたヘルムホルツ共振器と、
を備え
前記ヘルムホルツ共振器が設けられた空間のうち前記ヘルムホルツ共振器の周囲の空間の体積が前記ヘルムホルツ共振器の空洞部の内部の体積以下である建材。
【請求項2】
少なくとも一部が透明又は半透明な本体と、
前記本体の透明又は半透明な部分に設けられ、透明又は半透明な材料で構成されたヘルムホルツ共振器と、
を備え、
前記本体に設けられたヘルムホルツ共振器の内部に、そのヘルムホルツ共振器よりも共鳴周波数が高い別のヘルムホルツ共振器が設けられる建材。
【請求項3】
前記ヘルムホルツ共振器は、遮音周波数特性の異なる複数の種類のヘルムホルツ共振器を含む請求項1又は2に記載の建材。
【請求項4】
前記本体は複数の板材を含み、
前記複数の板材のそれぞれにヘルムホルツ共振器が設けられる請求項1から3のいずれかに記載の建材。
【請求項5】
前記複数の板材は、それぞれ異なる遮音周波数特性を有する請求項に記載の建材。
【請求項6】
前記複数の板材のうち内側の板材にヘルムホルツ共振器が設けられる請求項又はに記載の建材。
【請求項7】
前記ヘルムホルツ共振器は、空洞部と、前記空洞部に気体を導入するための開口部と、を含み、前記開口部は前記本体の外部と連通しないように設けられる請求項1からのいずれかに記載の建材。
【請求項8】
前記ヘルムホルツ共振器は、空洞部と、前記空洞部に気体を導入するための開口部と、前記開口部と前記空洞部の間に設けられ前記空洞部よりも内径の小さい首部と、を含み、前記空洞部と前記首部を合わせた厚みが20mm以下である請求項1から7のいずれかに記載の建材。
【請求項9】
少なくとも1つのヘルムホルツ共振器の開口部の半径が10mm以下である請求項1から8のいずれかに記載の建材。
【請求項10】
少なくとも1つのヘルムホルツ共振器の空洞部の断面の半径が0.2mm以上である請求項1から9のいずれかに記載の建材。
【請求項11】
前記ヘルムホルツ共振器の表面に反射材が設けられる請求項1から10のいずれかに記載の建材。
【請求項12】
前記本体の両側に共鳴周波数が同じ又は異なるヘルムホルツ共振器がそれぞれ設けられる請求項1から11のいずれかに記載の建材。
【請求項13】
前記ヘルムホルツ共振器の空洞部は、円柱、角柱、円錐台、又は角錐台の形状を有する請求項1から1のいずれかに記載の建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、建材に関する。
【背景技術】
【0002】
住宅、施設、移動体などの居住空間において、外部からの音、温度、風などの影響を防ぎつつ、外部から採光したり外部を視認したりすることができるようにするために、ガラスや樹脂などの透明又は半透明な建材が使用されている。
【0003】
高い採光性や視認性が要求されない用途においては、建材に厚い吸音材などを設けることにより遮音性を向上させることができる。また、高い遮音性が要求されない用途においては、透過率の高い材料で薄い建材を構成することにより採光性や視認性を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開昭63-034775号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、住宅の窓などの用途においては、高い採光性と高い遮音性の双方が要求される。したがって、建材の採光性と遮音性の双方を両立させるための技術が必要である。
【0006】
本開示は、このような課題に鑑みてなされ、その目的は、建材の採光性と遮音性を両立させることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の建材は、少なくとも一部が透明又は半透明な本体と、本体の透明又は半透明な部分に設けられ、透明又は半透明な材料で構成されたヘルムホルツ共振器と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】実施の形態に係る建材の構成を示す図である。
図2】実施の形態に係る建材に設けられるヘルムホルツ共振器の構造を示す図である。
図3】実施の形態に係る建材の様々な例の断面を示す図である。
図4】実施の形態に係る建材の別の例の断面を示す図である。
図5】実施の形態に係る建材においてヘルムホルツ共振器を設ける密度の条件を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施の形態として、遮音性に優れた透明又は半透明な建材について説明する。透明又は半透明な建材は、可動窓、固定窓、ドア、間仕切り、内装、外装、フェンス、屋根など、採光性や視認性が要求される用途に使用される。本実施の形態では、ガラスや樹脂など、可視光の少なくとも一部を透過する材料で構成された建材の採光性や視認性を維持しつつ、建材に遮音性を付与する技術を開示する。本実施の形態では、主に、窓に使用される板材について説明するが、本実施の形態の技術は、ドア、間仕切り、内装、外装、フェンス、屋根などに使用される建材にも適用可能である。
【0010】
図1は、実施の形態に係る建材の構成を示す。建材1は、ガラスの板材である本体2と、本体2の透明な部分に設けられたヘルムホルツ共振器3とを備える。ヘルムホルツ共振器3は、ガラスや樹脂など、可視光の少なくとも一部を透過する透明又は半透明な材料で構成される。これにより、建材1の採光性や視認性を維持しつつ、建材1に遮音性を付与することができる。
【0011】
図2は、実施の形態に係る建材に設けられるヘルムホルツ共振器3の構造を示す。ヘルムホルツ共振器3は、空洞部4と、空洞部4に気体を導入するための開口部5と、空洞部4と開口部5の間に設けられ空洞部4よりも内径の小さい首部6とを含む。ヘルムホルツ共振器3は、空洞部4の体積、開口部5の断面積、及び首部6の長さによって定まる共鳴周波数の音の運動エネルギーを熱エネルギーに変換して吸音する。共鳴周波数fは、開口部5の断面の半径r1、首部6の厚みh1、空洞部4の底面の半径r2、空洞部4の厚みh2、音速vを用いて、次式で表される。
【数1】
【0012】
ヘルムホルツ共振器3は、材料自体が音を吸収するのではなく、図2に示す構造によって音を吸収するので、吸音材などを設ける場合と異なり、任意の材料により構成することができる。したがって、建材1の用途や設置場所などに応じて、透過させたい波長の光の透過率が高い材料を選択したり、耐火性、耐湿性、耐候性、断熱性などの物理的特性が高い材料を選択したりすることができる。これにより、建材1の採光性、視認性、耐火性などの性能を高く保ちつつ、建材1の遮音性を向上させることができる。
【0013】
図3は、実施の形態に係る建材の様々な例の断面を示す。図3(a)は、単層のガラス板材7に同一形状の複数のヘルムホルツ共振器3が設けられた例を示す。単層の透明弾性体に同一形状の複数のヘルムホルツ共振器3が設けられてもよい。首部6が設けられたガラス板材と空洞部4が設けられたガラス板材とが接着されて単層のガラス板材7とされてもよい。ヘルムホルツ共振器3が設けられたガラス板材とヘルムホルツ共振器3の開口部5を覆うためのガラス板材とが接着されて単層のガラス板材とされてもよい。ヘルムホルツ共振器3の首部6が、空洞部4よりガラス板材7の表面に近づいて設置されてもよい。楽器、冷蔵庫、空調機器など、特定の周波数の音を継続的に発生する装置や機械などが設置された部屋から音が漏れないように防音するためには、窓、ドア、内装、間仕切り、外装などに使用される建材が、室内で発生される特定の周波数の音を吸音するように構成すればよい。このような場合には、同一の形状を有し、同一の共鳴周波数を有するヘルムホルツ共振器3が、ガラス板材7を覆うように設けられる。
【0014】
図3(b)は、単層のガラス板材7に、複数の異なる形状のヘルムホルツ共振器3a、3bが設けられた例を示す。共鳴周波数の異なる複数のヘルムホルツ共振器3a及び3bを設けることにより、広い帯域の音を吸音して遮音することができる。単層の透明弾性体に複数の異なる形状のヘルムホルツ共振器3a、3bが設けられてもよい。複数の異なる形状の首部6が設けられたガラス板材と空洞部4が設けられたガラス板材とが接着されて単層のガラス板材7とされてもよい。複数の異なる形状のヘルムホルツ共振器3a、3bが設けられたガラス板材とヘルムホルツ共振器3a、3bの開口部5を覆うためのガラス板材とが接着されて単層のガラス板材とされてもよい。共鳴周波数の異なる複数のヘルムホルツ共振器3a、3bの首部6が、空洞部4より板材7の表面に近づいて設置されても良い。本図では、2種類の形状のヘルムホルツ共振器3a、3bが設けられた例を示すが、3種類以上の形状のヘルムホルツ共振器が設けられてもよい。ヘルムホルツ共振器3の形状は、建材1が設置される場所において多く発生する音の周波数を消音することが可能な形状であってもよい。例えば、車両、電車、飛行機、船舶などの移動体が発生する音や、人間、動物、昆虫などの生物が発生する音などが屋内に侵入しないように遮音するためには、窓、ドア、外装などに使用される建材が、屋外で発生される音と同じ帯域の音を吸音するように構成すればよい。このような場合には、屋外で発生される音と同じ帯域の共鳴周波数を有する複数の異なる形状のヘルムホルツ共振器3a、3bが、ガラス板材7を覆うように設けられる。
【0015】
図3(c)は、複層のガラス板材7a、7bに同一形状の複数のヘルムホルツ共振器3が設けられた例を示す。2枚のガラス板材7a及び7bを含む複層ガラス板材のガラス板材7bに同一形状の複数のヘルムホルツ共振器3が設けられる。これにより、建材の断熱性を高く保ちつつ、建材の遮音性を向上させることができる。なお、建材としての耐久性を持たせたり、耐火性、耐湿性、耐候性、断熱性などの物理的特性を向上させたりするために、3層以上のガラス板が積層された複層構造としてもよい。
【0016】
図3(d)は、複数のガラス板材7a、7b、7cに同一形状の複数のヘルムホルツ共振器3が隙間8を空けて設けられた例を示す。後述するように、ヘルムホルツ共振器3の間に隙間8があったとしても、隙間8の体積とヘルムホルツ共振器3の空洞部4の体積とが所定の条件を満たしていれば、隙間8を通過する音も消音することができる。これにより、建材1の遮音性を高く保ちつつ、建材1の採光性や視認性を向上させることができる。また、ヘルムホルツ共振器3を設けるガラス板材が、複層ガラス建材の内部の仕切り板材を兼ねることができるので、建材の厚みや製造コストの増大を抑えつつ、建材の遮音性を向上させることができる。
【0017】
図3(e)は、複数のガラス板材7a、7b、7cに複数の異なる形状のヘルムホルツ共振器3a、3cが設けられた例を示す。ガラス板材7bには、ヘルムホルツ共振器3aが設けられ、ガラス板材7cには、ヘルムホルツ共振器3aとは異なる共鳴周波数を有するヘルムホルツ共振器3cが設けられる。これにより、建材1の外側から伝達された音がガラス板材7bを通過するときにヘルムホルツ共振器3aの共鳴周波数の音域を吸音し、ガラス板材7cを通過するときにヘルムホルツ共振器3cの共鳴周波数の音域を吸音することができるので、ガラス板材7の全域にわたって、広い帯域の音を遮音することができる。
【0018】
図3(f)は、複数のガラス板材7a、7b、7cに複数の異なる形状のヘルムホルツ共振器3a、3cが設けられた例を示す。図3(e)の例では、同一形状のヘルムホルツ共振器3a、3cがそれぞれ設けられたガラス板材が複数枚積層されたが、図3(f)の例では、異なる複数の形状のヘルムホルツ共振器3a、3cが設けられた、遮音周波数特性がそれぞれ異なるガラス板材が複数枚積層される。この場合も、建材1の外側の音が内側に伝達される経路上に、共鳴周波数の異なる複数のヘルムホルツ共振器3a、3cが設けられるようにガラス板材7b、7cが配置されるのが好ましい。これにより、ガラス板材7の全域にわたって、広い帯域の音を遮音することができる。
【0019】
図3(g)は、ガラス板材7bの両側にヘルムホルツ共振器3aが設けられた例を示す。これにより、建材1の厚みの増大を抑えつつ、建材1の遮音性を向上させることができる。また、ガラス板材7bの両側にヘルムホルツ共振器3を概ね同軸に配置することにより、遮音効果を向上させることができる。
【0020】
図3(h)は、ガラス板材7bの両側にヘルムホルツ共振器3a、3dが設けられた例を示す。図3(g)の例では、同一形状のヘルムホルツ共振器3がガラス板材7bの両側に対称的に設けられたが、図3(h)の例では、異なる形状のヘルムホルツ共振器3a、3dがガラス板材7bの両側に非対称的に設けられる。これにより、建材1の厚みの増大を抑えつつ、広い帯域の音を遮音することができる。
【0021】
ヘルムホルツ共振器3は、開口部5が建材1の外部と連通しないように設けられるのが好ましい。これにより、開口部5から空洞部4の内部に水分や異物が侵入するのを防ぐことができるので、防水性や防塵性を向上させることができる。
【0022】
ヘルムホルツ共振器3は、本体2の透明な部分の全体を覆うように設けられてもよい。この場合、ヘルムホルツ共振器3の空洞部4の断面は、平面充填可能な形状を有してもよい。ヘルムホルツ共振器3の空洞部4の断面は、例えば、正三角形、正方形、正六角形、平行四辺形、平行六辺形、三角形、四角形であってもよい。異なる複数の断面形状の空洞部4を有するヘルムホルツ共振器3が混在してもよい。
【0023】
ヘルムホルツ共振器3の空洞部4は、円柱、角柱、円錐台、又は角錐台の形状を有してもよい。また、空洞部4の断面と首部6の断面が異なる形状を有してもよい。また、空洞部4の内部の形状にテーパーをつけてもよい。これにより、ヘルムホルツ共振器3の遮音周波数特性を広帯域化することができるので、より広い帯域の音を遮音することができる。
【0024】
ヘルムホルツ共振器3の表面に、反射材がコーティングされてもよい。これにより、ヘルムホルツ共振器3の内部に進入した光の屈折や回折などを抑え、本体2を透過する光の量を高く保つことができるので、建材1の採光性や視認性を向上させることができる。
【0025】
ヘルムホルツ共振器3の形状は、遮音したい音の周波数、建材1のサイズ、厚み、加工性などを考慮して調整するのが好ましい。例えば、窓に使用されるガラス板材の場合、ヘルムホルツ共振器3の厚みは、標準的な窓に使用されるガラス板材の厚みよりも薄いことが好ましい。また、複層ガラス板材の場合、ヘルムホルツ共振器3の厚みは、標準的な窓に使用される複層ガラス板材の内部空間の厚みよりも薄いことが好ましい。この観点から、ヘルムホルツ共振器3の厚み、すなわち図2に示したh1とh2の和は、例えば、50mm以下、40mm以下、30mm以下、20mm以下、15mm以下、10mm以下、5mm以下、4mm以下、3mm以下、2mm以下、1mm以下であってもよい。
【0026】
h1=1mm、h2=4mmとした例におけるヘルムホルツ共振器3の形状を、数1を用いて考察する。100Hzの音を遮音するためのヘルムホルツ共振器3のr1とr2の関係は、数1に上記の値を代入することにより、r2=270r1となる。標準的な窓の最大辺は180cm程度であるので、r2≦90cmとすると、r1≦3.3mmとなる。この観点から、ヘルムホルツ共振器3の開口部5の断面の半径は、例えば、10mm以下、9mm以下、8mm以下、7mm以下、6mm以下、5mm以下、4mm以下、3.5mm以下、3.3mm以下、3mm以下、2.5mm以下、2mm以下、1.5mm以下、1mm以下、0.5mm以下であってもよい。
【0027】
20kHzの音を遮音するためのヘルムホルツ共振器3のr1とr2の関係は、数1に上記の値を代入することにより、r2=1.35r1となる。ガラス板材にヘルムホルツ共振器3を加工する際の精度や、加工の際に出たくずによる目詰まりや、ヘルムホルツ共振器3内に流入する空気の粘性などの影響を考慮して、r1≧0.5mmとすると、r2≧0.67mmとなる。この観点から、ヘルムホルツ共振器3の空洞部4の断面の半径は、例えば、0.2mm以上、0.3mm以上、0.4mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、0.67mm以上、0.7mm以上、0.8mm以上、0.9mm以上、1mm以上、1.5mm以上、2mm以上であってもよい。
【0028】
図4は、実施の形態に係る建材の別の例の断面を示す。図4に示した例では、ガラス板材7bの両側に高音遮蔽用のヘルムホルツ共振器3eが設けられ、ガラス板材7dの両側に中音遮蔽用のヘルムホルツ共振器3fが設けられ、ガラス板材7cの両側に低音遮蔽用のヘルムホルツ共振器3gが設けられる。ガラス板材7cの両側に設けられた低音遮蔽用のヘルムホルツ共振器3gは、ガラス板材7cに隣接して設けられたガラス板材7b及び7dを空洞部4の側面として利用し、ガラス板材7b及び7dに設けられた孔5gを開口部5として利用する。すなわち、低音遮蔽用のヘルムホルツ共振器3gの内部に高音遮蔽用のヘルムホルツ共振器3e及び中音遮蔽用のヘルムホルツ共振器3fが設けられる。これにより、建材の厚みの増大を抑えつつ、広い帯域の音を効果的に遮音することができる。ガラス板材7b及び7dに設けられた孔5gは、弾性部材などによって塞がれてもよい。これにより、ガラス板材7aとガラス板材7bの間の空間と、ガラス板材7bとガラス板材7cの間の空間との間で空気が環流するのを防ぐことができるので、複層ガラス板材の断熱性能を高く保ちつつ、遮音性を向上させることができる。
【0029】
図5は、実施の形態に係る建材においてヘルムホルツ共振器を設ける密度の条件を説明するための図である。図5(a)は、同一形状のヘルムホルツ共振器3がガラス板材7aとガラス板材7bの間に設けられた例を示す。ヘルムホルツ共振器3が消音できる空気の体積は、空洞部4の内部の体積に概ね等しい。したがって、ヘルムホルツ共振器3が設けられたガラス板材7aとガラス板材7bの間の空間のうち、ヘルムホルツ共振器3の周囲の空間の体積V1a+V1b+V1cと、ヘルムホルツ共振器3の空洞部4の内部の空間の体積V2との関係が、V1a+V1b+V1c≦V2となっていれば、隣接するヘルムホルツ共振器3の間に隙間があっても、ガラス板材7aの外側から伝達される音を遮音することができる。
【0030】
図5(b)は、異なる形状のヘルムホルツ共振器3a、3bがガラス板材7aとガラス板材7bの間に設けられた例を示す。この場合も、ヘルムホルツ共振器3aの周囲の空間の体積V1a+V1b+V1cがヘルムホルツ共振器3aの空洞部の内部の体積V2以下で、ヘルムホルツ共振器3bの周囲の空間の体積V1a’+V1b’+V1c’がヘルムホルツ共振器3bの空洞部の内部の体積V2’以下となっていれば、隣接するヘルムホルツ共振器3aと3bの間の隙間も消音することができる。V1b、V1c、V1a’、V1b’の値は、ヘルムホルツ共振器3aと3bの間の空間をどこで区切るかによって変化しうるが、要は、V1a+V1b+V1c+V1a’+V1b’+V1c’≦V2+V2’となっていればよい。ヘルムホルツ共振器3が多数設置される場合も、同様に、(V1a+V1b+V1c)+(V1a’+V1b’+V1c’)+(V1a’’+V1b’’+V1c’’)+・・・≦V2+V2’+V2’’+・・・となっていればよい。
【0031】
このような構造によれば、建材の外側の音を効果的に遮音しつつ、ヘルムホルツ共振器3の隙間から光を透過させることができるので、建材の遮音性と採光性の双方を向上させることができる。
【0032】
以上、実施の形態に基づき本発明を説明したが、実施の形態は、本発明の原理、応用を示すにすぎない。また、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 建材、2 本体、3 ヘルムホルツ共振器、4 空洞部、5 開口部、6 首部、7 ガラス板材、8 隙間。
図1
図2
図3
図4
図5