(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ノズル
(51)【国際特許分類】
B01J 8/02 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B01J8/02 B
(21)【出願番号】P 2020121423
(22)【出願日】2020-07-15
【審査請求日】2023-04-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】欠間 肇
(72)【発明者】
【氏名】角 浩志
(72)【発明者】
【氏名】杉本 貴
(72)【発明者】
【氏名】柚木 弘己
【審査官】宮部 裕一
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第0967585(KR,B1)
【文献】実開昭61-040136(JP,U)
【文献】特開2002-301355(JP,A)
【文献】特開2007-090215(JP,A)
【文献】特開2008-246470(JP,A)
【文献】特公昭49-038428(JP,B1)
【文献】米国特許第05222533(US,A)
【文献】米国特許第05228484(US,A)
【文献】米国特許第04568029(US,A)
【文献】国際公開第98/002239(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 8/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状の固形物が充填された管体へガスを供給する導管に接続可能なノズルであって、
前記ガスを流通させる流路が形成されている胴部と、
前記胴部において前記流路の基端側に形成される基端開口部と、
前記胴部において前記流路の先端側に形成される先端開口部と、
前記胴部において前記先端開口部に隣接して形成される先端部と、
前記胴部において前記先端開口部よりも基端側に形成され、前記流路を流れる前記ガスの一部を基端側へ向けて吐出させる側孔と、を有し、
前記先端部は、前記流路が延びる方向に沿って前記基端側から前記先端側に尖るように形成され、
前記先端開口部は、前記先端部に形成され、
前記先端開口部の軸線は、前記先端部がなす
最先端の点を通る軸線からずれているノズル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多管式反応器の反応管など、管体内に充填された粒状の固形物を抜き出すために使用されるノズルに関する。
【背景技術】
【0002】
石油化学工業の分野において、管式反応器を用いた炭化水素類の分解反応、改質反応、酸化反応、アンモ酸化反応、還元反応などの接触反応は数多く実施されている。これらの反応に使用される反応器には数千から数万本もの反応管(以下、「管体」と言うこともある)が備えられ、反応管内には各々の接触反応に適した触媒や不活性物質等の粒状の固形物が充填されている(以下、管体内部に充填された触媒等の粒状固形物を「充填物」と言うこともある)。例えば、特許文献1には、モリブデン、ビスマス及び鉄を必須の構成成分とする第一段反応用触媒を充填した層と、モリブデン及びバナジウムを必須の構成成分とする第二段反応用触媒を充填した層との間に不活性物質の充填層を設け、一つの熱交換型多管式反応器を用いて二段階の接触気相酸化反応によりプロピレンからアクリル酸を合成する方法が開示されている。
【0003】
これら接触反応に使用される触媒等の充填物は、化学プラントにて長期間使用されると、被毒、コーキング、シンタリングなどによって活性や選択率などの触媒機能が損なわれたり、機械的強度が低下したり、圧力損失が増大したりして、安定かつ効率的なプラントの操業ができなくなる。そのため、性能等が低下した触媒等の固形物は、別の新しい触媒等と入れ替えるために管体から抜き出される。また、反応器や管体等を修繕したり、検査したりする場合にも管体から触媒等の固形物を抜き出す作業が実施されることもある。
【0004】
反応器内の管体からこれら触媒等の固形物を抜き出す方法としては、例えば、管体の下端に形成された開口部を利用する方法が知られている。この方法では、作業者が反応器の内部に入り、管体の下端に形成された開口部から棒状の部材等を挿入して触媒等の充填物を突き上げ、管体の内部の固形物を解しながら落下させる。
【0005】
上記の方法では、作業者が棒状の部材で突き上げる度に管体の内部に充填された触媒等の固形物やこれらの破砕物が落下して作業者に降り注ぐことになる。また、作業場所は大量の粉塵が発生して劣悪な環境となることから、作業者は防塵服、防塵マスク、ゴーグル、手袋等の着用が不可避である。このように、上記方法による抜き出し作業は効率面や衛生面の観点から好ましい方法とは言えない。
【0006】
特許文献2に記載された方法では、上記のような課題を考慮して、例えば第1の実施形態として、管体の内部に挿入した吸引ホースにより吸引力を発生させて固形物を管体の上端に形成された開口部から抜き出す作業手順を採用している。また、第2の実施形態として、固形物をより一層効率良く抜き出すために、管体の内部に吸引力を発生させつつ、管体の内部に挿入した噴出管から固形物に向けてエア等のガスを吐出させることで、管体の内部の充填物を流動させて抜き出す作業手順が採用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平11-130722号公報
【文献】特開2007-90215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、特許文献2の噴出管に相当し得るノズルに、先端開口部に加えて側孔を設け、先端開口部と側孔から吐出するガスの流量を規定することによって固形物の抜き出し作業の効率化を図ろうとしている。ただし、上記のような性能等が低下した触媒を抜き出す際に、触媒等充填物とノズルの先端部が衝突するなどしてノズルの先端部に外力が加わると、ガスを吐出する先端開口部の形状が変形するおそれがある。ノズルの先端開口部の形状が変形すると、先端開口部から吐出されるガス流量と側孔から吐出されるガス流量の比が変化して、固形物の抜き出し作業の効率に影響を与え得る。
【0009】
そこで本発明は、固形物の抜き出し作業を行う際に、先端部に衝撃等の外力が加わっても先端開口部と側孔から吐出されるガスの流量比が変わらないノズルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一形態に係るノズルは、粒状の固形物が充填された管体へガスを供給する導管に接続可能であり、胴部と、基端開口部と、先端開口部と、先端部と、側孔と、を有する。胴部はガスを流通させる流路を形成している。基端開口部は胴部において流路の基端側に形成される。先端開口部は胴部において流路の先端側に形成される。先端部は胴部において先端開口部に隣接して形成される。側孔は、胴部において先端開口部よりも基端側に形成され、流路を流れるガスの一部を基端側へ向けて吐出させる。先端部は、流路が延びる方向に沿って基端側から先端側に尖るように形成される。先端開口部は、先端部に形成され、先端開口部の軸線は先端部がなす最先端の点を通る軸線からずれている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るノズルによれば、固形物の抜き出し作業を行った際において、先端部に衝撃等の外力が加わった場合でも、先端開口部の形状が変形することを防止又は抑制でき、先端開口部と側孔から吐出されるガスの流量比が変わらないため、固形物の抜き出し作業を長期にわたって効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】第1実施形態に係る抜き出し装置の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図5】
図1に係るノズル及び導管の長手方向(
図3の5-5線)に沿う縦断面図である。
【
図6】第1実施形態に係る反応器を簡略的に示す図である。
【
図7】第1実施形態に係る管体の内部を示す断面図である。
【
図8】第1実施形態に係る固形物の抜き出し方法を説明するための断面図である。
【
図9】第1実施形態に係る固形物の抜き出し方法を説明するための断面図である。
【
図10】第1実施形態に係る固形物の抜き出し方法を説明するための断面図である。
【
図11】第1実施形態に係る固形物の抜き出し方法を説明するための断面図である。
【
図12】第2実施形態に係る抜き出し装置の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図16】ノズル及び導管の長手方向に沿う縦断面図である。
【
図17】第3実施形態に係る抜き出し装置の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図18】
図18に係るノズル及び導管の長手方向に沿う断面図である。
【
図19】第1実施形態の変形例に係る抜き出し装置の一部を拡大して示す斜視図である。
【
図22】
図19に係るノズル及び導管の長手方向(
図21の22-22線)に沿う縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(第1実施形態)
以下、添付した図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。以下の記載は特許請求の範囲に記載される技術的範囲や用語の意義を限定するものではない。また、図面の寸法比率は説明の都合上誇張されており、実際の比率とは異なる場合がある。
【0016】
図1~
図5は、第1実施形態に係る固形物の抜き出し装置(以下、「抜き出し装置」とする)10、ノズル100、及び導管200を示す図、
図6は第1実施形態に係る固形物の抜き出しシステム(以下、「抜き出しシステム」とする)1及び反応器500を簡略的に示す図である。
図7は第1実施形態に係る管体510の内部513を示す断面図、
図8~
図11は、第1実施形態に係る固形物の抜き出し方法(以下、単に「抜き出し方法」とする)を説明するための断面図である。
【0017】
本実施形態に係る抜き出し方法は、例えば、
図6、
図7に示すように、化学プラントに設置された反応器500の管体510の内部513に充填された粒状の固形物(以下、単に「固形物」とする)M1を管体510の外部へ抜き出すために実施することができる。
【0018】
管体510は、例えば、粒状の触媒、粒状のセラミックス(例えば、シリカの球状体、アルミナの球状体、ジルコニアの球状体)、粒状の金属製ラシヒリングなどが充填される反応管である。管体510の高さ方向(
図6、
図7に示す矢印z1-z2方向)の上端には、管体510の外部と連通する上端開口部511が形成されている。管体510の高さ方向の下端には、管体510の外部と連通する下端開口部512が形成されている。管体510は、目的とする接触反応にもよるが、例えば、内径が10mm~60mmで、高さが1000mm~15000mmに形成することができる。
【0019】
管体510の内部513には、同一種の固形物のみが充填されていてもよいし、例えば、
図6及び
図7に示すように異なる種類の固形物M1、M2により構成された複数の層L1、L2が、管体510の高さ方向の異なる位置に充填されていてもよい。管体510の内部513に異なる種類の固形物が充填されている場合、第1の層L1は、粒状の固形物M1で構成することができる、第2の層L2は、粒状の固形物M2で構成することができる。固形物M1は、例えば、外径が1mm~15mmに形成された球形の接触反応用の触媒を用いることができる。固形物M2は、例えば、固形物M1とは異なる形状または組成を有する接触反応用の触媒や、リング形状(環状)に成型された金属製のラシヒリングを用いることができる。図示は省略するが、管体510の内部513において、第2の層L2よりも下端側には、さらに、固形物M1又は固形物M2と同種あるいは異種の粒状の固形物により他の層が形成されていてもよい。
【0020】
管体510は化学プラントに設置された反応器500の反応管に限定されることはない。また、各固形物M1、M2の種類は例示したものに限定されることはない。また、各固形物M1、M2の形状や大きさも限定されることはない。また、各固形物M1、M2が管体510の内部513に充填される形態(層の形成の有無、各層の高さ、層の数等)も限定されることはない。また、管体510は
図6に示すように鉛直方向に配置されていなくてもよく、例えば、斜め方向や水平方向に配置されていてもよい。
【0021】
<ノズル>
ノズル100は、粒状の固形物M1、M2が充填された管体510へガスを供給する導管200に接続可能なノズルである。ノズル100は、
図1、
図2、
図5に示すように胴部130を有する。胴部130は、ガスを流通させる流路140と、流路140の先端側に形成された先端開口部111と流路140の基端側に形成された基端開口部121を有する。胴部130は、先端開口部111に隣接して形成される先端部110と、先端開口部111よりも基端側に形成され、流路140を流れるガスの一部を基端側へ向けて吐出させる側孔150と、を有している。ここで、先端部とは、ノズルにおいて側孔よりも少なくとも先端側に位置する部位を意味する。先端開口部とは、先端部に形成された開口部を意味する。
【0022】
先端開口部111は、流路140の方向に向けて1以上形成されており、側孔150は、流路140の周方向に沿って1以上(例えば、
図3では6つの側孔を示している)形成されている。ノズル100は、該ノズル100の基端開口部121より先端側へ向けてガスを供給したときに、1以上の先端開口部111から吐出されるガス流量(Q1a)と1以上の側孔150から吐出されるガス流量(Q1b)の比(Q1a/Q1b)が0.05~0.7となるように、先端開口部111と側孔150が設けられている。
【0023】
各図面では、ノズル100の長手方向を長手方向Xと示し、長手方向Xと直交する第1方向を第1方向Yと示し、長手方向X及び第1方向Yの各々と直交する第2方向を第2方向Zと示す。また、第1方向Yと第2方向Zで形成される平面において胴部130の中心から径方向に延びる方向を径方向rと示す。また、胴部130の周方向、または角度方向を周方向θと示す。また、本明細書の説明において、ノズル100の先端側とは、管体510内への挿入方向の先端側(
図2の左側及び
図5の下側)を意味し、ノズル100の基端側とは、ノズル100に接続された導管200が配置される側(
図2の右側及び
図5の上側)を意味する。
【0024】
図8に示すように、ノズル100の先端開口部111から吐出されるガス流れa1は主に管体510の内部513に充填されている固形物M1をほぐし、ノズル100の1以上の側孔から吐出されるガス流れa2は主に解された該固形物M1を管体510の上端開口部511へ押し上げる(移動させる)役目がある。この結果、固形物M1を管体510の外部へ効率的に抜き出すことができる。
【0025】
ノズル100は、
図1、
図2に示すように、先端部110と、基端部120と、先端部110と基端部120との間に位置する胴部130と、を有している。
【0026】
先端部110は、先端側に向けて外径が小さくなるテーパー形状を有するように形成することができる。すなわち、先端部110は、
図2に示すように流路140が延びる方向に沿って基端側から先端側に尖るように、言い換えれば円錐の側面のように形成している。なお、先端部110の形状は特に限定されない。先端部110は、例えば、先端が先端側に向けて丸く湾曲した形状を有していてもよい。
【0027】
胴部130は、例えば、先端部110と基端部120との間で略一定の外径で延在するように形成することができる。基端部120は、例えば、胴部130と略同一の外径を有するように形成することができる。胴部130は、いわゆる円筒形状の部分を備えるように形成することができる。
【0028】
ノズル100は、例えば、金属材料で形成することができる。ノズル100を形成する金属材料としては、例えば、SUSを用いることができる。ただし、ノズル100を形成する材料は特に限定されない。ノズル100は、SUS以外の金属材料で形成してもよいし、樹脂などの金属材料以外の材料で形成してもよい。
【0029】
胴部130の断面形状(Y-Z平面で示される直交断面の形状)は、例えば、略円形に形成することができる。ノズル100の胴部130の断面形状が円形となるようにするには、例えば、六角形状の断面形状を有する管状部材の平坦な6つの平面の各々に側孔を1つずつ形成した後、当該断面形状が円形をなすように当該管状部材の各平面に対して面取り加工を施すことで製造することができる。なお、胴部130の断面形状は円形に限定されない。例えば、胴部130の断面形状は、楕円形であってもよいし、六角形状などの多角形であってもよい。ただし、胴部130の断面形状が円形(換言すると、胴部130の外形形状が円筒形状)である場合、ノズル100の基端側へ移動される固形物M1がノズル100と管体510の内壁との間に挟まりにくくなる。そのため、固形物M1の抜き出す作業を実施する際、固形物M1を管体510の上端側へ向けて円滑に移動させることが可能となり、管体510の内部で固形物M1の二次的閉塞が発生することを抑制できる。
【0030】
流路140は、
図2に示すように、先端部110の内部に形成された第1部位141と、胴部130の長手方向Xの中間部における内部に形成された第2部位142と、基端部120の内部に形成された第3部位143と、を有するように形成することができる。
【0031】
流路140は、円形の断面形状(Y-Z平面で示される直交断面の形状)を有するように形成することができる。例えば、
図2に示すように、第1部位141は、第2部位142及び第3部位143よりも内径(流路径)を小さく形成することができる。第1部位141と第2部位142との間には、先端側に向けて内径が次第に小さくなる移行部を形成することができる。なお、第3部位143の形成は省略してもよい。また、第1部位141と第2部位142は、略同一の内径を有していてもよいし、異なる内径を有していてもよい。
【0032】
図2、
図5に示すように、第3部位143には、導管200の先端部210をノズル100の基端部120に接続するための段差部143aを形成することができる。導管200は、導管200の先端部210を段差部143aに突き当てて配置した状態で、ノズル100と固定することができる。基端開口部121を形成する位置は、ノズル100の1以上の側孔150よりも基端側であり、かつ、流路140内にガスを供給することが可能な限り、特に限定されることはない。導管200とノズル100を固定する方法は特に限定されないが、導管200及びノズル100の材質等に応じて、接着、溶着、溶接等の方法を採用することができる。なお、導管200の先端部210の内部にノズル100の基端部120を挿入して、導管200とノズル100とを固定することもできる。また、導管200とノズル100は、別の管状部材(アダプター)を介して接続することもできる。
【0033】
ノズル100の先端開口部111は、胴部130において流路140の先端側に形成される。ノズル100の先端開口部111は、
図3に示すように、ノズル100の正面からの平面視において、円形に形成している。ノズル100は、導管200を介してノズル100の流路140内に流入したガスを、先端開口部111を介してノズル100の先端側へ向けて吐出させる。先端開口部111の軸線CL2は、
図5に示すように先端部110の軸線CL1から径方向r(
図1、
図3等参照)にずれるように構成している。先端開口部111の平面形状は、円形のみに限定されず、例えば、楕円形や多角形等であってもよい。また、ノズル100に形成される先端開口部111の個数は1以上であれば特に限定されない。また、先端開口部111は、ノズル100の先端側に固形物M1を流動させるためのガス流れを形成することが可能な限り具体的な形状等は特に限定されない。本発明において、軸線CL1とは流路140の軸線を意味し、本実施形態における先端部110の軸線、または、先端部110がなす軸線とは、先端部110の最先端の点を通り、流路140の軸線CL1と平行をなす軸線を意味する。ここで本実施形態の具体例を示した
図1、
図2、
図5では、先端部110が円錐の側面部分の形状となるように図示しており、この場合、流路140の軸線CL1が先端部110の最先端の点を通ることになり、先端部110の軸線と流路140の軸線CL1とが一致する。そのため、本実施形態においては便宜上、先端部110の軸線を「先端部110の軸線CL1」ともいうことにする。なお、本実施形態において先端部110は、
図1、
図2、
図5に示したような真円錐状の形状に限定されることはなく、先端部110の最先端の点が流路140の軸線CL1から径方向rにずれるように構成される形状としてもよい。また、先端開口部111は流路140の第1部位141によって先端部110の面上に設けられた開口部であり、先端開口部111の軸線CL2とは流路140の第1部位141における長手方向Xの中心軸を意味する。
【0034】
ノズル100には、流路140を流れるガスの一部をノズル100の基端側へ向けて吐出させるための側孔150がノズル100の周方向θに沿って1以上形成されている。
【0035】
ノズル100の側孔150は、
図2に示すように、X-Y平面で見た際の平面視において、略円形形状を有している。側孔150の個数は1以上であればよく、2以上が好ましい。一例として
図1~
図3では6つの側孔150を有するノズル100の例を示している。ノズル100では、6つの同一の形状をした側孔150を形成している。ただし、側孔150の外径等の形状は異なっていてもよい。また、ノズル100に形成される側孔150の数は、1以上であれば特に限定されない。また、側孔150の平面形状は、円形のみに限定されず、例えば、楕円形や多角形等であってよい。また、側孔150は、ノズル100の基端側へ向かうガス流れを形成し得る限り、ノズル100において形成される位置は特に限定されない。本実施形態において複数の側孔150は、長手方向Xにおいて略同一の位置に配置している。また、ノズル100に2以上の側孔150を形成する場合、それぞれの側孔はノズル100の周方向θにおいて互いに均等な間隔を空けて形成されることが好ましい。また、例えば、側孔150が2以上の場合、全ての側孔150が流路140の周方向θにおいて同一位置に沿って形成されていてもよいし、周方向θにおいて同一位置に沿って配置されていなくてもよい。
【0036】
ノズル100の先端開口部111の個数及び開口径や、ノズル100の側孔150の個数及び開口径は、1以上の先端開口部111から吐出されるガス流量(Q1a)と、1以上の側孔150から吐出されるガス流量(Q1b)との比が0.05~0.7になる範囲で適宜設定することができる。例えば、先端開口部111の開口形状が円形であり、先端開口部111が1つだけ設けられる場合、先端開口部111の直径d1(
図5を参照)は、0.5~4.0mmとすることができる。また、例えば、側孔150の開口形状が円形であり、側孔150が6つ設けられる場合、各側孔の径d2(
図5を参照)は、0.5~4.0mmとすることができる。
【0037】
図3において、ノズル100では、各側孔150同士が流路140の周方向θに沿って互いに均等な間隔を空けて配置されている。
図3に示すノズル100には、6つの側孔150が形成されており、流路140の周方向θにおいて隣り合う各側孔150の間の角度θ1は60°となっている。なお、角度θ1は、厳密に60°でなくてもよく、例えば、寸法公差の範囲でばらつきがあってもよい。また、ノズル100に形成される側孔150の数が6つ以外の個数である場合、角度θ1は、側孔の数に応じて変更することができる。また、側孔150の間に形成される角度θ1は、均一な大きさでなくてもよく、各側孔150の間で大きさが異なっていてもよい。ただし、側孔150からガスを吐出させた際に、ノズル100の周囲に均等なガス流れを形成する観点より、各側孔150の間の角度θ1は均等であることが好ましい。
【0038】
ノズル100の長手方向Xにおける1以上の側孔の位置については特に限定されない。上記位置について例示すれば、管体510の内部513において流動した固形物M1を速やかに管体510の上端開口部511の方へ移動させるために、ノズル100の先端開口部111から長手方向の基端側へ3mm~50mm離れた位置に1以上の側孔を形成することが好ましく、先端開口部111から長手方向Xの基端側へ5mm~25mmの位置に形成することがより好ましく、先端開口部111から長手方向Xの基端側へ5mm~15mmの位置に形成することがさらに好ましい。また、側孔150は、ノズル100に1以上形成される場合、ノズル100の長手方向Xにおいて異なる位置に形成されていてもよい。
【0039】
ノズル100の先端開口部111の開口面積は、例えば、0.2mm2~12.6mm2で形成することができる。また、ノズル100の先端開口部111の開口面積は、0.79mm2~4.9mm2が好ましく、1.13mm2~2mm2がより好ましい。
【0040】
上記のような寸法例で先端開口部111と各側孔150を形成することにより、ノズル100の基端開口部121よりガスを供給したときに、1以上の先端開口部111から吐出されるガス流量(Q1a)と1以上の側孔150から吐出されるガス流量(Q1b)の比(Q1a/Q1b)を所望の大きさ0.05~0.7とすることができる。
【0041】
ノズル100に形成された1以上の側孔150は、
図5に示すように、流路140の軸線CL1に対して、30°以上90°未満の角度でノズル100の基端側へ向けて開口させることができる。各側孔150が軸線CL1に対して傾斜する角度θ2は、例えば、
図5に示す長手方向Xに沿うノズル100の断面図上において、各側孔150が一定の径を有する場合、中心位置を通る直線h1と軸線CL1との間に形成される角度で定義することができる。また、側孔150が一定の径を有さない場合(例えば、テーパー状に径が変化するような断面形状を有する場合)、角度θ2は、例えばノズル100の内壁側に位置する側孔150の中心位置とノズル100の外壁側に位置する側孔150の中心位置とを結んだ線と、軸線CL1との間に形成される角度で定義することができる。
【0042】
側孔150が傾斜する角度θ2は、側孔150から吐出させたガスによりノズル100の基端側へ向けたガス流れを形成可能であればよく、その限りにおいて特に限定されない。例えば、側孔150が傾斜する角度θ2は、0°よりも大きければよい。ただし、ノズル100に側孔150を形成する際の作業性を考慮した場合、側孔150が傾斜する角度θ2は30°以上90°未満であることが好ましい。
【0043】
ノズル100は、各側孔150が上記のような角度で基端側へ向けて開口しているため、各側孔150からガスを吐出させた際、管体510の内部513で固形物M1を巻き上げた状態(
図8に示す状態)に容易に維持することができる。なお、各側孔150が基端側へ向けて開口する角度θ2は、管体510の内部513で固形物M1が巻き上がり、かつ、閉塞(ブロッキング)が起こりにくい状態をより安定的に維持することを考慮して、例えば、30°~60°が好ましく、40°~50°がより好ましい。なお、本実施形態では複数の側孔150のθ2を同一としているが、各々の側孔150のθ2が異なるように構成してもよい。
【0044】
ノズル100の各部の寸法は、特に限定されないが、例えば、ノズル100の長手方向Xの長さは、20mm~400mに形成することができる。また、流路140の第2部位142の内径は、例えば、4mmに形成することができる。また、流路140の胴部130の外径は、例えば、5mmに形成することができる。
【0045】
図3において側孔150は周方向θに6つ形成すると説明したが、側孔150の数は1以上であれば特に限定されない。例えば側孔の数は4つであってもよい。また、側孔150が複数形成される場合、側孔150の周方向θにおける間隔は均等であってもよく、均等でなくてもよい。
【0046】
以上のように、本実施形態に係るノズル100は、粒状の固形物M1が充填された管体510へガスを供給する導管200に接続可能に構成されたノズルである。ノズル100は、胴部130と、基端開口部121と、先端開口部111と、先端部110と、側孔150と、を有する。胴部130はガスを流通させる流路140を形成している。基端開口部121は胴部130において流路140の基端側に形成される。先端開口部111は胴部130において流路140の先端側に形成される。先端部110は胴部130において先端開口部111に隣接して形成している。側孔150は胴部130において先端開口部111よりも基端側に形成され、流路140を流れるガスの一部を基端側へ向けて吐出させる。先端部110は流路140が延びる方向に沿って基端側から先端側に尖るように形成される。先端開口部111の軸線CL2は先端部110がなす軸線CL1からずれるように構成している。
【0047】
上記のように構成することによって、ノズル100を用いて固形物M1を管体510から抜き出す際に固形物M1が先端開口部111に直接接触しないようにすることができる。これにより、抜き出し作業を行っている最中に固形物M1が仮に先端部110に衝突する等して先端部110が潰れても先端開口部111の形状に狭窄等の変形が生じることを防止又は抑制することができる。そのため、先端開口部111と側孔150から吐出されるガスの流量比が経時的に変化することを防止又は抑制し、ノズル100による管体510から固形物M1を抜き出す作業の効率が低下することを防止または抑制することができる。
【0048】
(第2実施形態)
図12~
図16は、第2実施形態に係るノズル100aを示す図である。第1実施形態では流路140が延びる方向に沿って先端部110が基端側から先端側に尖るように形成され、先端部110がなす軸線CL1から先端開口部111の軸線CL2がずれると説明した。ただし、上記以外にも以下のように構成することができる。なお、第2実施形態ではノズル100aの先端部110aおよび先端開口部111aの構成が上記第1実施形態と異なり、その他の構成は同様であるため、同様となる構成の説明を省略する。
【0049】
本実施形態において先端部110aの径方向rにおける内側は、
図12、
図13、
図16に示すように先端部110aの縁部から基端側に向かって凹むように構成している。
図16などにおいて先端部110aの凹部は、円錐台の斜面(側面)のように構成している。ただし、先端部110aの凹部の形状はこれに限定されず、上記以外にも半球等の曲面形状であってもよい。
【0050】
先端開口部111aは、
図16に示すように先端部110aの凹んだ部位に形成される。先端開口部111aは、先端部110aの凹んだ部位における基端側に形成される。先端開口部111aは、先端開口部111と同様にノズル100aの正面からの平面視において円形に形成し、先端開口部111aの軸線は流路140の軸線CL1と同軸または平行となるように構成している。
【0051】
以上のように本実施形態においてノズル100aの先端部110aの内側は基端側に向かって凹むように構成している。また、先端開口部111aは先端部110aの凹んだ部位に形成するように構成している。このように構成することによっても、管体510から固形物M1を抜き出す際に固形物M1が仮に先端部110aに衝突して先端部110aが変形しても先端開口部111aの形状が変形することを防止または抑制できる。これにより、先端開口部111aと側孔150から吐出されるガスの流量比が変化することを防止または抑制し、ノズル100aによる固形物M1の抜き出し作業の効率が低下することを防止または抑制できる。
【0052】
(第3実施形態)
図17~
図18は第3実施形態に係るノズル100bを示す図である。上記ではノズル100の先端部110が先端側に向かって尖り、ノズル100aの先端部110aは基端側に向かって凹むと説明したが、以下のように構成することもできる。なお、第3実施形態では先端部110bと先端開口部111bの構成が上記第1および第2実施形態と異なり、その他の構成は同様であるため、同様である構成の説明を省略する。
【0053】
本実施形態においてノズル100bは、
図17、
図18に示すように先端部110bが長手方向Xに対して略直交するような平坦な面を形成するように構成している。すなわち、先端部110bは円筒の底面のように平坦面のみからなるように構成している。ここで「先端部110bが平坦面のみからなる」とは、先端部110bが円筒形状の底面において先端開口部111bが設けられ、それ以外に凸部や凹部などの他の形状が設けられていないことを意味する。
【0054】
先端開口部111bは、
図17、
図18に示すように軸線が流路140の軸線CL1に沿い、平坦面を備えた先端部110bに形成するように構成している。先端開口部111bは先端開口部111、111aと同様にノズル100bの正面からの平面視において円形に形成するように構成している。ここで、先端開口部の軸線が流路の軸線に沿うとは、先端開口部の軸線が流路の軸線と一致する場合に加え、先端開口部の軸線と流路の軸線とが平行となる場合も含むことを意味する。すなわち、先端開口部111bは、先端部110bの平坦面の中心部に設けてもよいし、先端部110bの平坦面の中心から径方向rにずれるように設けてもよい。
【0055】
以上のように本実施形態ではノズル100bの先端部110bが平坦面のみからなり、先端開口部111bは軸線が流路140の軸線CL1に沿い、先端部110bの平坦面に形成するように構成している。このように構成することによっても管体510から固形物M1を抜き出す際に固形物M1が先端部110bに衝突して仮に先端部110bが変形しても先端開口部111bの形状が変形することを防止または抑制することができる。そのため、固形物M1の抜き出し作業の際に経時的に先端開口部111bと側孔150から吐出されるガスの流量比が変化し、ノズル100bによる抜き出し作業の効率が低下することを防止または抑制できる。
【0056】
(変形例)
なお、ノズルについての構成は上述した実施形態にのみ限定されず、特許請求の範囲において種々の変更が可能である。
図19~
図22は側孔の位置を変化させたノズル100cを示す図である。
【0057】
上記では1以上である複数の側孔150が胴部130の周方向θにおいて間隔を置くとともに長手方向Xにおいて同じ位置に配置すると説明した。ただし、これに限定されず、上記以外にも側孔150cは
図19~
図22に示すように胴部130の周方向θおよび軸方向に相当する長手方向Xにおいてらせんを描くように間隔をおいて複数配置するように構成してもよい。本変形例において側孔150cは、
図19~
図22に示す側孔151c~156cを包括した呼称に相当する。側孔150cは、周方向θにおいて略60度の間隔で配置しつつ、長手方向Xにおいて同じ位置ではなく、側孔150cの位置が変わるにつれて長手方向Xの位置が次第に先端側から基端側にずれることによって全体としてらせんを形成するように配置している。
【0058】
このように構成することによっても先端開口部111から吐出されるガスと側孔150cから吐出されるガスの流量比を適切な比率にてノズル100cによる固形物M1の抜き出し作業を実施することができる。なお、
図19~
図22では第1実施形態に係るノズル100の側孔150をらせん(状)に配置する変形例に係るノズル100cについて説明した。ただし、これに限定されず、第2実施形態に係るノズル100aまたは第3実施形態に係るノズル100bの側孔150をらせん(状)に配置するように構成する場合も本発明の一実施形態に含まれる。
【0059】
<導管>
以下、ノズル以外の構成について説明する。導管200は、
図5に示すように、内部に流路215が形成された中空の管状部材で構成することができる。
図5では、導管200の先端部210は、ノズル100の基端開口部121を介してノズル100の流路140に挿入されている。導管200の流路215は、ノズル100が接続された状態において、導管200の先端開口部211を介してノズル100の流路140と連通される。導管200の流路215内に供給されたガスは、導管200の流路215及び先端開口部211を介してノズル100の流路140内へ流入する。
【0060】
導管200は、例えば、ゴム製、樹脂製、金属製等の公知の配管(又は管状部材)で構成することができる。ただし、導管200は、管体510の上端開口部511側(
図7を参照)からノズル100の先端側へ向けて導管200に対して付与された押し込み力を、管体510に充填された固形物M1に対して伝達可能な材料等で構成することができる。
【0061】
固形物M1は、管体510の内部513において静置されている間に、水分等を吸着してダマ状に硬化したり、また、触媒反応を一定期間継続した際に反応副生物や触媒成分の一部などが固形物表面に付着して、固形物同士が固着したり、管体510の内壁に固形物M1が固着したりすることがある。上記のように導管200が押し込み力を伝達可能に構成されている場合、固形物M1を抜き出す作業を行う際、
図10に示すように、導管200を管体510の内部513へ押し込んで、管体510の内部513で固着した固形物M1に対してノズル100の先端部110を衝突させて衝撃力を付与することにより、固形物M1の固着をほぐすことができる。それにより、固形物M1を円滑に抜き出すことができる。また、上記のように衝撃力を付与する作業の際にノズル100の先端部110は経時的に変形しうる。固形物M1を抜き出す際、ノズル100にできるだけ衝撃力を加えないように意識して作業を行っていても、実際には多くの反応管について順次抜き出し作業を実施するため、固形物M1とノズル100との衝突を完全に避けることはできない。このような場合であっても先端開口部を上述のように構成することによって先端開口部と側孔から吐出するガスの流量比が変化することを防止することができる。
【0062】
導管200は、上記のように管体510の内部513で固着した固形物M1に対して衝撃力を付与可能とするために、例えば、剛性が比較的高い樹脂もしくは金属材料で構成されていることが好ましい。
【0063】
導管200の外径は特に限定されないが、導管200を管体510の内部513に挿入した際、管体510の内壁と導管200との間に固形物M1や固形物M2が引っ掛かって詰まりが発生することを防止できる寸法で形成されていることが好ましい。導管200の内径については、固形物M1や固形物M2を解し、導管200の基端側に移動させることができる量のガスを導入できる程度の内腔を有していればよく、例えば、2mm~10mmのものを使用できる。
【0064】
また、導管200は、例えば、管体510の内部513で固着した固形物M1に対して衝撃力を付与可能とするために、
図11に示すように、導管200の延在方向に沿って分割されるとともに所定の剛性を備える複数の中継管250と、隣接する中継管250同士を接続する接続部251と、を有していてもよい。
【0065】
<抜き出し装置>
図1、
図5に示すように、抜き出し装置10は、ノズル100と、ノズル100が接続された導管200と、を有している。
【0066】
抜き出し装置10は、固形物M1の抜き出し方法に使用可能な装置として構成されている。導管200の内部(内腔)には、ガスを流通することが可能な流路215が形成されている。ノズル100は、導管200の先端部210に接続可能である。ノズル100は、導管200及び基端開口部121からノズル100の流路140内へ供給されたガスをノズル100の1以上の先端開口部111及び1以上の側孔150を介してノズル100の外部へ吐出させる。なお、ノズル100から吐出させるガスの種類については特に制限はなく、窒素や空気、窒素と空気を一定比率で混合したものなどを用いることができるが、安全面や経済面の観点から、空気が最も好ましい。
【0067】
抜き出し装置10は、
図7、
図9に示すように、ノズル100が接続された導管200とともに管体510の内部513に挿入可能に構成された衝撃力付与部材310を備えていてもよい。衝撃力付与部材310は、管体510の上端開口部511側からノズル100の先端側へ向けて付与された押し込み力を、管体510に充填された固形物M1に対して伝達可能に構成することができる。衝撃力付与部材310を用いることにより、ノズル100の変形を防止して、先端開口部と側孔から吐出されるガスの流量比をより維持することに寄与し得る。衝撃力付与部材310は、例えば、金属製の線状部材(ピアノ線等)や棒状部材で構成することができる。
【0068】
<抜き出しシステム>
抜き出しシステム1は、
図6及び
図7に示すように、ノズル100及び導管200を備える抜き出し装置10(
図1を参照)と、ノズル100及び導管200を介して管体510の内部513へガスを供給するガス供給機410と、管体510の内部513に吸引力を発生させ、固形物M1を管体510の外部へ移動させる吸引機420と、を有している。
【0069】
ガス供給機410は、例えば、圧縮した空気を送出可能な公知のコンプレッサーで構成することができる。導管200は、ガス供給機410と連結することができる。抜き出しシステム1には、例えば、導管200を延長してガス供給機410に接続するチューブ、ガス供給機410の出力を調整するユニット(制御装置)や所定のバルブ等を設けることができる。
【0070】
吸引機420は、例えば、ガスを吸引して負圧を発生させる公知の集塵機で構成することができる。吸引機420は、
図6、
図7に示すように、配管320、チューブt1、捕集容器430、及びチューブt2を介して、管体510と連結される。
【0071】
図7に示すように、配管320には、ガスが流通可能な内部空間321を形成することができる。チューブt1は、配管320の一端側に位置する開口部に接続することができる。配管320の他端側に位置する開口部は、管体510の上端開口部511に接続することができる。管体510の内部513は、配管320及びチューブt1を介して、捕集容器430に連結することができる。また、
図6に示すように、捕集容器430と吸引機420は、チューブt2を介して連結することができる。吸引機420を作動させると、管体510の内部513が吸引され、抜き出し対象である固形物M1が配管320、及びチューブt1を介して捕集容器430へ移される。
【0072】
各チューブt1、t2は、例えば、流路が内部に形成された中空の管状部材で構成することができる。捕集容器430は、例えば、金属製の容器(ドラム缶等)で構成することができる。
【0073】
配管320は、例えば、公知のL字管で構成することができる。
図7に示すように、配管320には、配管320の内部空間321を介して管体510の内部513にノズル100及び導管200を挿入するための孔321aと、配管320の内部空間321を介して管体510の内部513に衝撃力付与部材310を挿入するための孔321bを形成することができる。
【0074】
次に、固形物M1の抜き出し方法を説明する。ここでは、管体510に層状に充填された固形物M1、M2のうち、第1の層L1を形成する固形物M1を選択的に抜き出す際の作業手順の一例を説明する。
【0075】
本実施形態に係る抜き出し方法では、
図6、
図7に示すように、固形物M1が充填された管体510の内部513にノズル100及び導管200を挿入する。また、必要であれば、本実施形態に係る抜き出し方法では、抜き出し装置10に備えられる衝撃力付与部材310を管体510の内部513に挿入する。なお、抜き出し方法は、例えば、作業者H1と作業者H2のように複数人で行ってもよいし、作業者H1または作業者H2が単独で行ってもよい。
【0076】
図8に示すように、本実施形態に係る抜き出し方法では、導管200およびノズル100を介して固形物M1が充填された管体510の内部513にガス供給機410からガスを供給しつつ、吸引機420によって管体510の内部513に吸引力を発生させて固形物M1を管体510の外部へ抜き出す。本実施形態に係る抜き出し方法では、管体510の内部513へガスを供給する際、ノズル100に形成された先端開口部111(
図2を参照)から管体510の内部513に充填された固形物M1に向けてガスを吐出させつつ、ノズル100に形成された1以上の側孔150からノズル100の基端側へ向けてガスを吐出させる。吸引機420の吸引により発生するガス流れの方向は、導管200およびノズル100を通して供給されるガスの供給方向と逆方向、すなわち、管体510の上端開口部511側へ向かう方向とすることが好ましい。なお、
図8において、吸引機420によるガスの吸引を矢印bで示す。
【0077】
前述したように、本発明のノズル100は、その基端開口部121側からガスを供給したときに、1以上の先端開口部111から吐出されるガス流量(Q1a)と、1以上の側孔150から吐出されるガス流量(Q1b)の比(Q1a/Q1b)が0.05~0.7となる。そのため、1以上の先端開口部111から吐出されるガスの流量と、1以上の側孔150から吐出されるガスの合計の流量が適切なバランスに調整される。したがって、ノズル100は、充填された固形物M1に対して直接的に噴き付けられるガスの流量が過度に大きくなったり、過度に小さくなったりすることを抑制できる。また、ノズル100は、複数の固形物M1が管体510の内部513で固着しているような場合にも、先端開口部111から吐出させたガスによって固形物M1の固着をほぐすことができ、管体510の上端開口部511側へ固形物M1を容易に巻き上げることができる。
【0078】
管体510の上端開口部511側へ巻き上げられた固形物M1は、1以上の側孔150からノズル100の基端側へ向けて吐出されたガスが噴き付けられることにより、管体510の内部513で巻き上げられた状態に維持される。ノズル100から吐出させたガスにより固形物M1を巻き上げつつ、吸引機420を作動させて管体510の内部513に吸引力を発生させることにより、管体510の上端開口部511を介して固形物M1を管体510の外部へ円滑に移動させて抜き出すことができる。
【0079】
ここで、固形物M1を抜き出す方法では、1以上の先端開口部111及び1以上の側孔150から吐出されるガスの単位時間当たりの合計の吐出量(Q1)と、管体510の内部513を単位時間当たりに吸引する吸引量(Q2)の比(Q1/Q2)を1以下に設定することが好ましい。Q1/Q2を1よりも大きくしても固形物M1を抜き出すことは可能であるが、Q1/Q2が1以下の方が管体510の上端側まで移動させた固形物M1を反応器500の外部に配置された捕集容器430へ効率よく排出することができる。また、このようにガスの吐出量(Q1)と吸引量(Q2)の関係を調整することにより、管体510の内部513に供給されるガスの流入量と、管体510の内部513から吸引されるガスの吸引量のバランスが適切なものとなる。例えば、ガスの吸引量と比較してガスの吐出量が過剰に大きいと、ガスが管体510の下端開口部512まで流れてしまい、第1の層L1よりも下側に位置する第2の層L2に充填された固形物M2が流動してしまう。その結果、固形物M2が管体510の内部513で巻き上がって、固形物M1とともに固形物M2が管体510の外部へ移動してしまう。また、例えば、ガスの吸引量と比較してガスの流入量が過剰に小さいと、管体510の下端開口部512を介して管体510の内部513へ管体510の外部の空気が引き込まれてしまうため、第1の層L1よりも下側に位置する第2の層L2に充填された固形物M2が流動してしまう。その結果、ガスの吸引量と比較してガスの流入量が過剰に大きい場合と同様に、固形物M1とともに固形物M2が管体510の外部へ移動してしまう。
【0080】
これに対して、先端開口部111及び1以上の側孔150から吐出されるガスの単位時間当たりの合計の吐出量(Q1)と管体510の内部513の単位時間当たりの吸引量(Q2)の比(Q1/Q2)を1以下とすることで、管体510の内部513に供給されるガスの流入量と、管体510の内部513から吸引されるガスの吸引量のバランスが適切なものとなり、第1の層L1に充填された固形物M1を精度良く抜き出すことが可能になる。
【0081】
なお、上記のように、先端開口部111及び1以上の側孔150から吐出されるガスの単位時間当たりの合計の吐出量(Q1)と管体510の内部513の単位時間当たりの吸引量(Q2)の比(Q1/Q2)は、1以下であることが好ましいが、管体510の内部513へのガスの流入量と管体510の内部513から吸引されるガスの吸引量のバランスを考慮して、0.3~0.8が好ましく、0.5~0.7がより好ましい。
【0082】
管体510の内部513で固形物M1が固着している場合、例えば、
図9に示すように衝撃力付与部材310を使用して、管体510の内部513で固着した固形物M1に衝撃力を付与することにより、固形物M1の固着をほぐすことができる。なお、衝撃力付与部材310を使用して衝撃力を付与する際、ノズル100からのガスの吐出は継続してもよいし、停止してもよい。例えば、第2の層L2まで衝撃力が付与される可能性がある場合には、ノズル100からのガスの吐出を停止させることにより、第2の層L2に充填された固形物M2がガスにより過剰に流動することを抑制できる。
【0083】
また、
図10、
図11に示すように、導管200を先端側へ押し込んで、ノズル100を介して直接、衝撃力を付与することにより、固形物M1の固着をほぐすことができる。衝撃力付与部材310を使用して衝撃力を付与する作業と、導管200を使用して衝撃力を付与する作業は、一つの管体510から固形物M1を抜き出す作業において任意に組み合わせて実施することが可能である。また、固形物M1に対して衝撃力を付与する作業を実施するタイミングや回数等は特に限定されない。また、固形物M1を抜き出す作業と、固形物M1に対して衝撃力を付与する作業は、一人の作業者H1が実施してもよいし、複数の作業者で実施してもよい。
【符号の説明】
【0084】
1 抜き出しシステム
10 抜き出し装置
100、100a、100b、100c ノズル
110、110a、110b 先端部
111、111a、111b 先端開口部
120 基端部
121 基端開口部
130 胴部
140 流路
150、150c 側孔
200 導管
510 管体
CL1、CL2 軸線
M1、M2 固形物