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特許7591368流動層式燃焼炉において使用された流動媒体の再生方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】流動層式燃焼炉において使用された流動媒体の再生方法
(51)【国際特許分類】
   F23J 1/00 20060101AFI20241121BHJP
   F23C 10/24 20060101ALI20241121BHJP
   B24B 31/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F23J1/00 Z
F23C10/24
B24B31/00 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020139647
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035378
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-06-15
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100108903
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和広
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100217179
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 智史
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(72)【発明者】
【氏名】高間 智宏
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-015761(JP,A)
【文献】特開2020-073839(JP,A)
【文献】特開昭56-117016(JP,A)
【文献】特開2016-147287(JP,A)
【文献】特開2012-152872(JP,A)
【文献】特開昭56-160513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23J1/00,3/00
F23C10/00-10/32
B24B31/00-31/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動層式燃焼炉において使用された流動媒体の再生方法であって、前記方法は、前記使用された流動媒体を研磨して、前記使用中に流動媒体の表面に付着した付着物を剥離する研磨処理工程、および研磨処理工程において剥離した剥離物を分離除去する剥離物分離除去工程を含み、研磨処理工程の開始後に、酸および研磨剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む研磨補助剤を添加し、研磨剤が、珪砂、ジルコン砂、クロマイト砂、オリビン砂および鉄を主成分とする金属粒からなる群から選択される少なくとも1種であり、研磨剤の平均粒径が5~100μmであることを特徴する方法。
【請求項2】
流動媒体が球状耐火粒子である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
研磨処理工程が、前記使用された流動媒体どうしを接触または衝突させる研磨工程である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
剥離物分離除去工程が、研磨処理工程後の流動媒体に空気を送り込んで流動させ、排出空気に随伴して排出された剥離物を集塵する工程である、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動層式燃焼炉において使用された流動媒体の再生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマス燃料を用いた流動層式燃焼炉の運用が求められている。燃焼炉内には燃焼効率の向上(保温効果)のため、砂状の流動媒体を流動させている。しかしながら燃焼を続けていると、バイオマス燃料はアルカリ成分(灰分)を多く含み、このアルカリ成分は低融点の化合物を生じさせる。このような低融点の化合物は流動媒体に付着して流動不良を引き起こす可能性があるため、定期的に流動媒体を交換する必要がある。
交換の際に燃焼炉から抜き出した使用済み流動媒体は、従来、廃棄されていたが、灰分が付着した使用済み流動媒体から付着物を剥離して、流動媒体を再生することができれば、流動媒体の再利用が可能となる。
たとえば、特許文献1は、物理的研磨により、使用済み流動媒体から付着物を剥離して、流動媒体を再生する技術を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-278018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、使用済み流動媒体に低融点の化合物が強固に付着していると、物理的な研磨だけでは除去しづらい問題があることが判明した。
本発明の課題は、使用済み流動媒体に付着している灰分(アルカリ成分)の研磨処理による剥離効率を向上させることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、使用済み流動媒体の研磨処理工程中に、研磨補助剤(水、酸、界面活性剤または研磨剤)を添加することにより研磨効率が向上することを見いだし、本発明を完成した。
【0006】
本発明は、流動層式燃焼炉において使用された流動媒体の再生方法であって、前記方法は、前記使用された流動媒体を研磨して、前記使用中に流動媒体の表面に付着した付着物を剥離する研磨処理工程、および研磨処理工程において剥離した剥離物を分離除去する剥離物分離除去工程を含み、研磨処理工程において、水、酸、界面活性剤および研磨剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む研磨補助剤を添加することを特徴する。
【0007】
本発明は、次の実施態様を含む。
[1]流動層式燃焼炉において使用された流動媒体の再生方法であって、前記方法は、前記使用された流動媒体を研磨して、前記使用中に流動媒体の表面に付着した付着物を剥離する研磨処理工程、および研磨処理工程において剥離した剥離物を分離除去する剥離物分離除去工程を含み、研磨処理工程において、水、酸、界面活性剤および研磨剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む研磨補助剤を添加することを特徴する方法。
[2]流動媒体が球状耐火粒子である、[1]に記載の方法。
[3]研磨処理工程が、前記使用された流動媒体どうしを接触または衝突させる乾式研磨工程である、[1]または[2]に記載の方法。
[4]剥離物分離除去工程が、研磨処理工程後の流動媒体に空気を送り込んで流動させ、排出空気に随伴して排出された剥離物を集塵する工程である、[1]~[3]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の流動媒体の再生方法は、使用により流動媒体の表面に付着した付着物を剥離する研磨処理における研磨効率が高い。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、流動層式燃焼炉において使用された流動媒体の再生方法に関する。特に、本発明は、主にバイオマス発電用に用いられる流動層式燃焼炉において使用された流動媒体の再生方法に関する。バイオマス発電は、建築廃材、生木、木屑、PKS(ヤシ殻)、EFB(空果房)、木質ペレット等のバイオマスを燃料として用い、それらバイオマス燃料を燃焼させ、発生した熱を用いて、たとえば蒸気タービンで、発電を行うシステムである。バイオマス発電用流動層式燃焼炉は、バイオマス発電において、バイオマス燃料を燃焼させるために用いられる流動床式または循環流動層式の燃焼炉である。流動層式燃焼炉には砂状の流動媒体が充填され、流動層式燃焼炉の下部から空気を送り込み、上向きに空気を噴出させることによって、流動媒体に働く空気の力と重力とがつりあい、流動媒体が空気中に懸濁浮遊した状態になり、その結果、流動媒体があたかも流体のように挙動する流動状態になる。
【0010】
流動媒体としては、天然の砂または人工の砂が用いられる。天然の砂としては、天然に産出する珪砂、たとえば、川砂、海砂、山砂等が挙げられる。人工の砂としては、人工的に製造された耐火粒子が挙げられる。なかでも好ましい流動媒体は、人工的に製造された球状耐火粒子であり、より好ましくは人工的に製造された表面が平滑な球状アルミノケイ酸塩粒子である。表面が平滑な球状耐火粒子を使用することにより、平滑性が良いことで付着分を除去し易くなって研磨効率が良くなるとともに、流動層式燃焼炉の保温効果がより良くなる。
流動媒体の平均粒径は、流動層式燃焼炉において流動状態が達成できる限り限定されないが、好ましくは50~2000μmであり、より好ましくは100~1500μmであり、さらに好ましくは150~1000μmである。ただし、流動媒体の平均粒径は、レーザー回折・散乱法で測定した平均粒径である。
【0011】
本発明の流動媒体の再生方法は、研磨処理工程および剥離物分離除去工程を含む。
【0012】
研磨処理工程は、流動層式燃焼炉において使用された流動媒体(以下単に「使用済み流動媒体」ともいう。)を研磨して、前記使用中に流動媒体の表面に付着した付着物を剥離する工程である。
流動媒体には、バイオマス発電用流動層式燃焼炉において使用している間に、バイオマスの燃焼で発生する灰分が付着してくる。灰分は、たとえば酸化ナトリウムや酸化カリウムなどのアルカリ金属酸化物、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどのアルカリ土類金属酸化物、その他の金属酸化物、その他の無機物などである。研磨処理工程は、この流動媒体の表面に付着した灰分(以下単に「付着物」ともいう。)を、研磨により、流動媒体の表面から剥離する工程である。
【0013】
研磨の方法は、流動媒体の表面から付着物を剥離することができる限り限定されず、いかなる研磨機を用いて行ってもよい。湿式研磨方法としては、たとえば回転型(水に浸した流動媒体を回転羽根によって攪拌作用与え、付着物を除去する方法)、水噴射型(水の噴射によって流動媒体に衝撃を与え、付着物を除去する方法)、超音波振動型(水に浸された流動媒体に超音波振動を加え、付着物を除去する方法)等の各装置が挙げられ、乾式研磨方法としては、たとえば、噴気流型(流動媒体を高速空気によって吹き飛ばして衝撃、摩擦を加えて付着物を除去する方法)、垂直軸回転型および水平軸回転型(回転体や羽根等によって流動媒体を跳ね飛ばす、または攪拌する、さらにはローターで加圧することによる流動媒体相互の衝撃、摩擦が行われ、付着物を剥離する方法)、振動型(振動力により流動媒体に攪拌作用を与え、主として摩擦作用によって付着物を除去する方法)等の各装置を用いた方法が挙げられ、適宜に採用されることとなる。研磨処理はバッチ式でも連続式でもよい。また、かかる研磨処理工程における研磨時間の如き研磨条件は、回収された流動媒体における表面への付着物の付着状態により、適宜に選定されるものである。
なかでも、研磨処理工程は、好ましくは、使用済み流動媒体どうしを接触または衝突させる乾式研磨工程であり、より好ましくは、使用済み流動媒体の流動化を容易に行う観点から、垂直軸回転型、水平軸回転型、振動型の各装置を用いた研磨工程であり、中でも、垂直軸回転型の装置を用いる研磨工程が好ましい。
【0014】
本発明は、研磨処理工程において、研磨補助剤を添加することを特徴する。
研磨補助剤は、水、酸、界面活性剤および研磨剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む。
使用済み流動媒体に付着している灰分は、通常、酸化ナトリウムや酸化カリウムなどのアルカリ分を含むが、水または酸を添加することで、そのアルカリ分の一部を溶かし出すことにより、付着物に空隙等を作り、付着物を剥がしやすくすることができる。また、流動媒体は使用中に流動媒体どうしが焼結によりまたは表面に付着した灰分を介して結合し、粗粒が形成される場合があるが、水または酸を添加することで、結合していた流動媒体をばらばらにしやすくすることができる。また、界面活性剤または水を使用済み流動媒体に添加することにより、静電気を除去し、微粉が流動媒体に再付着するのを防いで、研磨効率を向上させることができる。また、研磨剤を添加することで、摩擦抵抗を増加させることにより、研磨処理工程における研磨効率を向上させることができる。
【0015】
研磨補助剤として用いる酸の種類は、研磨効率が改善される限り限定されない。
無機酸および有機酸のいずれをも用いることができる。
無機酸としては、硫酸、リン酸、塩酸、およびこれらのアンモニウム塩、または硫酸水素ナトリウム、リン酸水素ナトリウム、リン酸水素カリウムなどの酸性塩などが挙げられる。これら無機酸の中でも、流動媒体に対して腐食等の影響が少ない点でリン酸が好ましい。これら無機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
有機酸としては、スルホン酸類、カルボキシル基を有する酸などが挙げられる。スルホン酸類としては、キシレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、およびこれらのアンモニウム塩などが挙げられる。カルボキシル基を有する酸としては、ギ酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、リノール酸、オレイン酸およびこれらのアンモニウム塩などが挙げられる。これら有機酸の中でも、キシレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、ギ酸、酢酸、シュウ酸、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、クエン酸が好ましい。これら有機酸は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。また、これら有機酸と上述した無機酸とを併用してもよい。
酸は、常温で液体のものであってもよいし、固体のものであってもよいが、使用時の温度において液体であるものが、除去したい付着物に浸透しやすくなるため、より好ましい。
【0016】
酸を含む研磨補助剤としては、酸そのものや酸溶液を挙げることができる。酸溶液の溶媒は、水であってもよいし、有機溶媒であってもよい。有機溶媒に溶かした酸の具体例としては、クエン酸のエタノール溶液などが挙げられる。研磨補助剤として酸溶液を用いる場合、酸溶液の濃度および添加量は研磨効率が改善される限り限定されないが、装置の腐食問題や水分量が多くなると流動媒体が湿態化して研磨効率が悪くなる虞があることから事前に流動媒体を所定の濃度の酸溶液で滴定を行い、中和される量を測定しておくことで最適な濃度や添加量を決定するようにした方がよい。
測定方法としては試料50gを蒸留水100mLに入れて1時間攪拌した後、攪拌子および指示薬(メチルレッド)を入れて攪拌し、中和されるまで0.1N-HCLで滴定を行うことで、試料1g当たりの蒸留水に溶解してくるアルカリ量を算出する。これにより使用する酸の濃度および添加量を決定する。
その中でも酸溶液の濃度は、研磨効率が改善される限り限定されないが、好ましくは0.5~20質量%であり、より好ましくは1~10質量%であり、さらに好ましくは2~8質量%である。
酸溶液の添加量は、研磨効率が改善される限り限定されないが、使用済み流動媒体100質量部に対し、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.5~15質量部であり、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0017】
研磨補助剤として用いる界面活性剤の種類は、研磨効率が改善される限り限定されない。陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、シリコーン系界面活性剤およびフッ素系界面活性剤のいずれをも用いることができる。
【0018】
具体的には、陽イオン性界面活性剤としては、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、イミダゾリニウム塩等が挙げられる。
また、陰イオン性界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、N-アシル-N-メチルグリシン塩、N-アシル-N-メチル-β-アラニン塩、N-アシルグルタミン酸塩、アルキルエーテルカルボン酸塩、アシル化ペプチド、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩、アルキルスルホ酢酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩、N-アシルメチルタウリン、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、第2級高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩、第2級高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸塩、モノグリサルフェート、脂肪酸アルキロールアミド硫酸エステル塩、アルキルエーテルリン酸エステル塩、アルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
さらに、両性界面活性剤としては、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、イミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。
加えて、非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン2級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(たとえば、エマルゲン(登録商標)911)、ポリオキシエチレンステロールエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル(たとえば、ニューポール(登録商標)PE-62)、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルアミン、アルキルアミンオキサイド、アセチレングリコール、アセチレンアルコール等が挙げられる。
【0019】
また、種々の界面活性剤のうち、特に、非極性部位としてシロキサン構造を有するものをシリコーン系界面活性剤といい、パーフルオロアルキル基を有するものをフッ素系界面活性剤という。
シリコーン系界面活性剤としては、ポリエステル変性シリコーン、アクリル末端ポリエステル変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、アクリル末端ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、アミノプロピル変性シリコーン等が挙げられる。
また、フッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル、パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基含有オリゴマー等が挙げられる。
【0020】
本発明においては、上述の如き各種の界面活性剤を、単独で、または2種類以上を混合して、用いることが可能である。
界面活性剤は、常温で液体のものであってもよいし、固体のものであってもよいが、使用時の温度において液体であるものが、均一に分散しやすくより好ましい。
【0021】
界面活性剤を含む研磨補助剤としては、界面活性剤そのものや界面活性剤溶液を挙げることができる。界面活性剤溶液の溶媒は、水であってもよいし、有機溶媒であってもよい。研磨補助剤として界面活性剤溶液を用いる場合、界面活性剤溶液の濃度は、研磨効率が改善される限り限定されないが、好ましくは0.001~15質量%であり、より好ましくは0.01~10質量%であり、さらに好ましくは0.1~5質量%である。
界面活性剤溶液の添加量は、研磨効率が改善される限り限定されないが、使用済み流動媒体100質量部に対し、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.5~15質量部であり、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0022】
研磨補助剤が水のみからなる場合(酸も界面活性剤も研磨剤も含まない水すなわち純水である場合)、水の添加量は、研磨効率が改善される限り限定されないが、使用済み流動媒体100質量部に対し、好ましくは0.1~20質量部であり、より好ましくは0.5~15質量部であり、さらに好ましくは1~10質量部である。
【0023】
研磨補助剤は、好ましくは、揮発性有機溶媒を含む。その中でも安全性などの観点からアルコールがより好ましい。研磨補助剤がアルコールを含むことにより、研磨補助剤を添加した後の流動媒体を乾燥しやすくすることができる。
アルコールとしては、メタノール、エタノール、プロパノール等を挙げることができる。研磨補助剤がアルコールを含む場合、研磨補助剤中のアルコールの濃度は、好ましくは1~90質量%であり、より好ましくは3~70質量%であり、さらに好ましくは5~50質量%である。
【0024】
研磨補助剤として用いる研磨剤の種類は、研磨効率が改善される限り限定されないが、研磨剤としては、珪砂、ジルコン砂、クロマイト砂、オリビン砂または鉄を主成分とする金属粒などが挙げられる。
【0025】
研磨剤の平均粒径は好ましくは5~100μmであり、より好ましくは7~70μmであり、さらに好ましくは10~50μmである。ただし、研磨剤の平均粒径は、レーザー回折・散乱法で測定した平均粒径である。平均粒径が小さすぎると、大量に研磨剤を投入しないと研磨時に流動媒体の摩擦抵抗が増大しないために非効率、非経済的となり、また平均粒径が大きすぎると、流動媒体の粒径と研磨剤の粒径が近いために流動媒体どうしの間隙に研磨剤が侵入しづらくなり、結果として摩擦抵抗増大の効果が少なくなる。
【0026】
研磨剤の添加量は、使用済み流動媒体100質量部に対して、好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.5~8質量部であり、さらに好ましくは1~5質量部である。添加量が少なすぎると、研磨剤添加の効果が得られず、添加量が多すぎると、それ以上添加量を増やしても効果の増大が認められないため、不経済である。
【0027】
研磨剤は、摩擦抵抗を増加させるために添加するので、動摩擦係数が大きいか、またはその形状が多角形であることが好ましい。
研磨剤を使用したときは、研磨処理工程の後に、流動媒体から研磨剤を分離する。分離は、分級によって行うことができるが、分離の方法は限定されない。
【0028】
研磨補助剤は、水、酸、界面活性剤および研磨剤からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む。研磨補助剤は、水、酸、界面活性剤および研磨剤からなる群から選ばれるいずれか1種のみを含んでもよいし、水、酸および界面活性剤および研磨剤からなる群から選ばれるいずれか2種を含んでもよいし、水、酸、界面活性剤および研磨剤からなる群から選ばれるいずれか3種を含んでもよいし、水、酸、界面活性剤および研磨剤の4種すべてを含んでもよい。
【0029】
研磨処理工程に研磨補助剤を添加する方法は、特に限定されないが、たとえば、噴霧、滴下、重力落下式、スクリューフィーダー、空気輸送、浸漬等によって行うことができ、好ましくは研磨補助剤が液体の場合は噴霧または滴下がよく、研磨補助剤が固体の場合は、重力落下式、スクリューフィーダーまたは空気輸送によって添加する方法がよい。
【0030】
研磨補助剤の添加の時期は、研磨処理工程中であれば、特に限定されない。使用済み流動媒体と研磨補助剤を研磨機に入れて研磨処理を開始してもよいし、研磨処理工程の開始直後に研磨補助剤を添加してもよいし、研磨処理工程の途中で研磨補助剤を添加してもよいし、研磨処理工程中に2回以上に分けて研磨補助剤を添加してもよい。
研磨処理工程は、まず研磨補助剤を添加しないで、ある時間、研磨処理し、その後、研磨補助剤を添加して、さらに追加の時間、研磨処理してもよい。すなわち、研磨処理工程は、研磨補助剤を添加しないで行う研磨(粗研磨)と研磨補助剤を添加して行う研磨(本研磨)からなる段階方式で行ってもよい。
【0031】
本発明の方法は、研磨処理工程の後に、剥離物分離除去工程を含む。剥離物分離除去工程は、研磨処理工程において剥離した剥離物を分離除去する工程である。研磨処理工程の後で剥離物を除去することにより、付着した灰分・微粉を除去し、再生された流動媒体だけを取り出すことで再度流動媒体として利用できるものにする。剥離物を分離除去する方法は、剥離物を分離除去することができる限り限定されないが、たとえば、研磨処理工程後の流動媒体に空気を送り込んで流動させ、排出空気に随伴して排出された剥離物を集塵する工程によって実施することができる。より具体的に、研磨処理工程後の流動媒体を容器に入れ、容器の下部から空気を送り込み、上向きに空気を噴出させることによって、流動媒体を空気中に懸濁浮遊した状態すなわち流動状態にし、流動媒体の間を上向きに流れる空気が剥離物を伴って容器から排出され、排出空気に随伴して排出された剥離物を集塵機等で収集する。
【0032】
従来、廃棄していた流動媒体を本発明の方法で再生することにより、流動媒体の再利用が可能となる。
本発明の流動媒体の再生方法は、研磨処理工程において研磨補助剤を添加するので、研磨効率が高く、研磨処理時間を短くすることができる。
本発明の流動媒体の再生方法によれば、使用済み流動媒体に付着していた灰分および微粉を効果的に除去できる。
本発明の流動媒体の再生方法は、研磨補助剤を研磨処理工程中でも添加することができるため、研磨処理時間が増えない。本発明の流動媒体の再生方法は、前処理工程ではなく、研磨処理工程中に研磨補助剤を添加するので、再生方法の全工程の合計時間が増えない。
本発明の流動媒体の再生方法によれば、流動媒体どうしの焼結を減らすことができるため、流動媒体の流動性を維持することができる。
本発明の流動媒体の再生方法によれば、従来、灰分および流動媒体をともに廃棄していたのが、灰分のみの廃棄になるので、産業廃棄物量の大幅な削減に繋がる。
【0033】
なお、本発明に従う流動媒体の再生方法は、上記例示の実施形態に係る具体的な記述によって、何等限定的に解釈されるものでは決してなく、本発明が、当業者の知識に基づいて、種々なる変更、修正、改良等を加えた態様において実施され得るものであり、またそのような実施の態様が、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、いずれも、本発明の範疇に属するものであることが、理解されるべきである。
【実施例
【0034】
以下に、幾つかの試験例を用いて、本発明をさらに具体的に明らかにすることとするが、本発明が、そのような試験例の記載によって、何ら限定的に解釈されるものでないことが理解されるべきである。なお、以下の試験例において、「%」および「部」は、特に断りのない限りにおいて、いずれも、質量基準にて示されている。
【0035】
[原材料]
以下の実施例および比較例で使用した原材料は、次のとおりである。
(流動媒体)
珪砂:三菱商事建材株式会社製フラタリーサンド(平均粒径:249.8μm)
球状粒子(球状耐火粒子):花王クエーカー株式会社製ルナモス(登録商標)(平均粒径:205.3μm)
(研磨補助剤)
3%硫酸:硫酸を蒸留水で濃度3質量%に希釈したもの
5%リン酸:リン酸を蒸留水で濃度5質量%に希釈したもの
5%クエン酸:クエン酸を濃度5質量%になるように蒸留水に溶解したもの
5%クエン酸エタノール溶液:クエン酸を濃度5質量%になるように蒸留水とエタノールの質量比1:1混合液に溶解したもの
5%パラトルエンスルホン酸:パラトルエンスルホン酸を濃度5質量%になるように蒸留水に溶解したもの
1%界面活性剤水溶液:竹本油脂株式会社製パイオニンA-40を濃度1質量%になるように蒸留水に溶解したもの
研磨剤:アルミナ研磨剤(平均粒径:30μm)
【0036】
[実施例1]
流動媒体として珪砂を用い、バイオマス発電用流動層式燃焼炉において使用された使用済み流動媒体を用意した。
使用済み流動媒体500質量部および研磨補助剤として3%硫酸3質量部を、セラミックボールと共に円筒形容器に入れ、日陶科学株式会社製ポットミル回転台に設置し、回転速度58rpmで30分処理した(研磨処理工程)。
研磨処理工程実施後の流動媒体を、上部に集塵機が接続されており、下部に280メッシュの網が設置された円筒形の筒に入れ、剥離物分離除去工程を実施した。剥離物分離除去工程は下部から空気を30L/minの流量で送り込み、流動媒体を流動させ、使用済み流動媒体に含まれる剥離物を空気に随伴させて排出し、剥離物を含む排出空気を集塵機に導き、剥離物を収集することにより、実施した。剥離物分離除去工程は30分間実施した。
研磨処理工程前の流動媒体の質量Wおよび剥離物分離除去後の流動媒体の質量Wから、次式により、付着物除去率(質量%)を算出した。結果を表1に示す。
付着物除去率=(W-W)/W×100
【0037】
[実施例2]
実施例1において、3%硫酸に代えて5%リン酸を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表1に示す。
【0038】
[実施例3]
実施例1において、3%硫酸に代えて5%クエン酸を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表1に示す。
【0039】
[実施例4]
実施例1において、3%硫酸に代えて5%クエン酸エタノール溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表1に示す。
【0040】
[実施例5]
実施例1において、3%硫酸に代えて5%パラトルエンスルホン酸を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表1に示す。
【0041】
[実施例6]
実施例1において、3%硫酸に代えて水(蒸留水)を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表1に示す。
【0042】
[実施例7]
実施例1において、3%硫酸に代えて1%界面活性剤水溶液を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表1に示す。
【0043】
[実施例8]
実施例1において、3%硫酸3質量部に代えて研磨剤10質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表2に示す。なお、研磨剤は、剥離物分離除去工程において分離除去され、集塵機で収集した剥離物に含まれるが、表2の付着物除去率の数値は、研磨剤の量を差し引いた数値である。
【0044】
[実施例9]
実施例1において、3%硫酸の量を3質量部から7質量部に変更したこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表2に示す。
【0045】
[実施例10]
実施例1において、研磨補助剤として3%硫酸3質量部および研磨剤10質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表2に示す。なお、研磨剤は、剥離物分離除去工程において分離除去され、集塵機で収集した剥離物に含まれるが、表2の付着物除去率の数値は、研磨剤の量を差し引いた数値である。
【0046】
[実施例11]
実施例1において、研磨補助剤として3%硫酸3質量部および1%界面活性剤水溶液3質量部を用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表2に示す。
【0047】
[実施例12]
実施例1において、珪砂に代えて球状粒子を流動媒体として用いたこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表2に示す。
【0048】
[比較例1]
実施例1において、研磨補助剤を用いなかったこと以外は、実施例1と同様に実施し、付着物除去率を算出した。結果を表2に示す。
【0049】
[焼結実験]
実施例および比較例で得られた再生済み流動媒体を、磁性るつぼに入れた後に、800℃で12時間処理し、流動媒体どうしが焼結により結合するか否かを観察した。結果を表1、表2および表3に示す。表中、「有」は焼結(結合)が観察された場合を示し、「無」は焼結(結合)が観察されなかった場合を示す。焼結しないことが好ましい。
【0050】
【表1】
【0051】
【表2】
【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明の方法は、バイオマス発電用流動層式燃焼炉において使用された流動媒体の再生に好適に利用することができる。