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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】回転機器
(51)【国際特許分類】
   H02K 7/14 20060101AFI20241121BHJP
   H02K 5/20 20060101ALI20241121BHJP
   H02K 9/06 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H02K7/14 A
H02K5/20
H02K9/06 C
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020145022
(22)【出願日】2020-08-28
(65)【公開番号】P2022039822
(43)【公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベアミツミ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】岩田 仁
(72)【発明者】
【氏名】清水 道弘
(72)【発明者】
【氏名】大沢 直生
(72)【発明者】
【氏名】西方 俊之
(72)【発明者】
【氏名】加納 剛
(72)【発明者】
【氏名】山西 生馬
(72)【発明者】
【氏名】天城 雄太
(72)【発明者】
【氏名】千田 祐也
【審査官】津久井 道夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-132180(JP,A)
【文献】特開2002-070794(JP,A)
【文献】登録実用新案第3089663(JP,U)
【文献】特開2006-105121(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 7/14
H02K 5/20
H02K 9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部材と、
前記軸部材に対して回転可能な筒状の回転体と、
前記回転体を囲む筒状のハウジングと、
前記回転体を前記軸部材に対して支持する第1軸受と、
前記回転体を前記軸部材に対して支持する第2軸受と、
前記回転体の内側にあるステータと、
前記回転体に設けられた、前記第1軸受と前記第2軸受の間にある動翼と、
前記軸部材の軸方向において、前記第1軸受と前記動翼との間にある前記回転体の第1部分に設けられた、空気の第1通気口と、
前記軸部材の軸方向において、前記第2軸受と前記動翼との間にある前記回転体の第2部分に設けられた、空気の第2通気口と、
を備え、
前記動翼は2つの部材を備え、当該2つの部材は、前記軸部材の軸方向に重ね合わせられている、回転機器。
【請求項2】
前記動翼は複数の羽根を備え、
前記複数の羽根がそれぞれ、前記2つの部材で形成されている、請求項1に記載の回転機器。
【請求項3】
前記複数の羽根において、前記軸部材の軸方向の途中に、前記2つの部材間の境目がある、請求項2に記載の回転機器。
【請求項4】
前記複数の羽根のそれぞれは、前記軸部材の軸方向の一方側から見て、前記軸部材の周方向における隣の羽根と、位置が重なっている、請求項2または3に記載の回転機器。
【請求項5】
前記複数の羽根のそれぞれの、隣の羽根と重なっている位置同士が、それぞれ、前記2つの部材の別の部材に当たる、請求項4に記載の回転機器。
【請求項6】
前記羽根は捻じれた形状を有する、請求項~5のいずれかに記載の回転機器。
【請求項7】
前記羽根は、前記軸部材の径方向において、前記回転体側にある端部と、前記ハウジング側にある端部と、を備え、
前記羽根は、前記回転体側にある端部から前記ハウジング側にある端部に向かう方向において、湾曲している、請求項6に記載の回転機器。
【請求項8】
前記羽根は、前記軸部材の軸方向において、前記2つの部材のうち一方の部材側にある端部と、他方の部材側にある端部と、を備え、
前記羽根は、前記一方の部材側にある端部から前記他方の部材側にある端部に向かう方向において、湾曲している、請求項6または7に記載の回転機器。
【請求項9】
前記動翼は、前記軸部材の径方向において、前記複数の羽根の前記回転体側にある端部が接続されたリングを備える、請求項~8のいずれかに記載の回転機器。
【請求項10】
前記リングが、2つのリング部を備え、当該2つのリング部は、それぞれ、前記2つの部材の別の部材に相当する、請求項9に記載の回転機器。
【請求項11】
前記軸部材の回転軸方向において、前記動翼は、前記回転体の中央部に設けられている、請求項1~10のいずれかに記載の回転機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転機器に関し、特に、吸気あるいは送風の目的で風を起こす回転機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々な用途や要求される性能に応じて、吸気あるいは送風の目的で風を起こす各種回転機器が開発・製造され、用いられてきた。その中で、風を起こす上での基本的な性能である高速回転化や風量増加といった性能の向上の要求と、装置全体としてのより一層の小型化の要求とがあり、両要求のより高い次元での実現が求められている。
【0003】
一方、小型化や風量増加、風速向上の要求に対しては、動翼の羽根の形状や大きさを適切なものに設計することが望まれる。しかし、羽根の形状が、捻じれがあったり、あるいは、隣り合う羽根同士が重なり合っていたり等、複雑な形状であると、動翼の成形のための金型が複雑化して、高コスト化に繋がり、さらには成形が困難になる場合もあり、設計の自由度を狭める虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2004-64800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明は、容易に成形することができる回転機器を提供することを目的の一例とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明により解決される。即ち、本発明の回転機器は、軸部材と、
前記軸部材に対して回転可能な筒状の回転体と、
前記回転体を囲む筒状のハウジングと、
前記回転体を前記軸部材に対して支持する軸受と、
前記回転体の内側にあるステータと、
前記回転体に設けられた動翼と、
を備え、
前記動翼は2つの部材を備え、当該2つの部材は、前記軸部材の軸方向に重ね合わせられている。
【0007】
また、本発明の回転機器においては、前記動翼は複数の羽根を備え、
前記複数の羽根がそれぞれ、前記2つの部材で形成されていてもよい。
この場合に、前記複数の羽根において、前記軸部材の軸方向の途中に、前記2つの部材間の境目があってもよい。
【0008】
また、この場合に、前記複数の羽根のそれぞれは、前記軸部材の軸方向の一方側から見て、前記軸部材の周方向における隣の羽根と、位置が重なっていてもよい。
さらに、この場合に、前記複数の羽根のそれぞれの、隣の羽根と重なっている位置同士が、それぞれ、前記2つの部材の別の部材に当たる状態であってもよい。
【0009】
本発明の回転機器において、前記羽根は捻じれた形状を有していてもよい。
この場合に、前記羽根は、前記軸部材の径方向において、前記回転体側にある端部と、前記ハウジング側にある端部と、を備え、
前記羽根は、前記回転体側にある端部から前記ハウジング側にある端部に向かう方向において、湾曲していてもよい。
【0010】
また、この場合に、前記羽根は、前記軸部材の軸方向において、前記2つの部材のうち一方の部材側にある端部と、他方の部材側にある端部と、を備え、
前記羽根は、前記一方の部材側にある端部から前記他方の部材側にある端部に向かう方向において、湾曲していてもよい。
【0011】
本発明の回転機器において、前記動翼は、前記軸部材の径方向において、前記複数の羽根の前記回転体側にある端部が接続されたリングを備えていてもよい。
また、前記軸部材の回転軸方向において、前記動翼は、前記回転体の中央部に設けられていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の一例である実施形態にかかる回転機器の透過斜視図である。
図2】本発明の一例である実施形態にかかる回転機器の軸線xを含む断面の透過断面図である。
図3図2におけるA-A断面の断面図である。
図4】本発明の一例である実施形態にかかる回転機器から動翼、及び、動翼が取り付けられた軸部材の一部を抜き出した下方からの斜視図である。
図5】本発明の一例である実施形態にかかる回転機器から動翼のみを抜き出した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態にかかる回転機器について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一例である実施形態にかかる回転機器1の断面図であり、図2は、回転機器1の軸線xを含む断面の透過断面図である。図1及び図2において、ハウジング7が、想像線(二点鎖線)で描かれることで、透過状態で示されている。また、図3は、回転機器1の軸線x方向と垂直な断面(図1におけるA-A断面)の断面図である。図3においては、ハウジング7を示す想像線が省略されている。
【0014】
なお、本実施形態の説明において、上方乃至下方と云う時は、図1及び図2における上下関係を意味し、重力方向における上下関係とは、必ずしも一致しない。
さらに、軸線x方向(以下、「軸方向」ともいう。)において矢印a方向を上側aとし、矢印b方向を下側bとする。そして、回転軸xを中心とする円周方向(上側aから見た円周方向)の時計回りを周方向e、及び、反時計回りを周方向fとする。
【0015】
また、本実施形態の説明において、回転機器1内で回転する部分を「回転側」と、当該回転側の部材を支持して、自らは回転せず固定される部分を「固定側」と、それぞれ称する場合がある。また、自らは回転せず固定される部分は回転する部分に対して相対的に静止しているので、自らは回転せず固定される部分を静止部と呼称する場合がある。
【0016】
また、以下の実施形態に記載される、吸引口や排出口は通気口であり、空気の流れの方向に対応させる関係上、便宜的に吸引口あるいは排出口として記載している。しかし、空気の流れの方向により、吸引口が排出口に、排出口が吸引口にもなり、実施形態における吸引口及び排出口の記載により本発明は限定されない。
【0017】
本実施形態の回転機器1は、軸部材5と、当該軸部材5に対して回転可能な筒状の回転体であるロータ3と、ロータ3を囲む筒状のハウジング7と、ロータ3を軸部材5に対して支持する軸受4と、ロータ3の内側にあるステータ2と、ロータ3に設けられた複数の動翼6と、を備えている。
【0018】
ステータ2は、軸部材5に固定され、軸部材5を軸として外周側に放射状に延びる磁極部23を有するステータコア21と、磁極部23に巻き回されたコイル22と、を含む。図示のステータ2は、第1軸受41とステータ2との間隙と、第2軸受42とステータ2との間隙とが等しくなるように、ハウジング7内に配置されている。
また、ステータコア21は、珪素鋼板等の磁性体を積み重ねた積層体となっており、軸部材5を取り囲むように同軸上に配された円環部24と、円環部24から外周側へ向かって径方向に放射状に延びるように形成された複数の磁極部23と、からなる。
【0019】
コイル22は、ステータコア21において、複数の磁極部23の各々の周囲に巻き回されている。ステータコア21とコイル22とは、絶縁体で形成されたインシュレータ25によって絶縁されている。なお、インシュレータ25に代えて、ステータコア21の表面に絶縁膜を塗装してコイルと絶縁しても構わない。
【0020】
ロータ3は、ステータ2の外周側で磁極部23と対向するマグネット31と、筒状の筒部材32と、を含む。筒部材32の内周面には、マグネット31が配置されている。筒部材32は、軸部材5の軸を中心とする円筒状であり、ステータ2を取り囲んだ状態になっている。筒部材32は、筒部材32内部からの磁界の漏れを防ぐ機能を併せ持ち、磁性体により形成されている。なお、筒部材32は、特性上問題がなければ、例えば、アルミニウムやプラスチック等の非磁性体で形成されていても構わない。
【0021】
マグネット31は、ステータ2と対向するように筒部材32の内周面に取り付けられている。マグネット31は環状の形状を有しており、N極に着磁された領域と、S極に着磁された領域とが円周方向に沿って一定周期(又は一定の間隔)で交互に設けられている。マグネット31は環状の一体成形物であってもよいが、複数のマグネットを筒部材32の内周面に並べて取り付けて筒状に配置しても構わない。
【0022】
軸受4は、軸部材5の軸方向において、ステータ2の両側に配置されており、上側aに位置する第1軸受41及び下側bに位置する第2軸受42の2つを有する。即ち、マグネット31とステータ2は、軸部材5の軸方向において、第1軸受41と第2軸受42との間に位置する。第1軸受41及び第2軸受42は、同一構成(形状、構造、大きさ、材質が同一)の部材を用いている。以下、第1軸受41を取り上げて説明するが、第2軸受42についても同様に適用される。
【0023】
第1軸受41は、外輪41aと、内輪41bと、外輪41a及び内輪41b間に介在するベアリングボール41cと、を備える、いわゆるボールベアリングである。ベアリングボール41cが外輪41aと内輪41bとの間で転がることにより、外輪41aに対する内輪41bの回転抵抗が大幅に少なくなるようになっている。第1軸受41は、その機能から、例えば、鉄等の硬質の金属やセラミックス等の部材で形成されている。
【0024】
第1軸受41の内輪41bは、軸部材5に隙間嵌めされた後、接着剤により固定される。よって第1軸受41の内輪41bと軸部材5との間の間隙には接着剤が充填される。あるいは、第1軸受41の内輪41bは、軸部材5に圧入されて固定される。このため、第1軸受41の内輪41bは軸部材5に対して固定され、軸部材5とともに静止部となる。また、第2軸受の内輪42bは、軸部材5に圧入により固定されており、軸部材5とともに静止部となる。ここで、軸部材5とハウジング7は、ロータ3に対して(相対的に)静止した部材である。よって、これらを総称して静止部材(静止部)と呼称している。
【0025】
第1軸受41の外輪41a及び第2軸受42の外輪42aは、筒部材32の両端部の内周面に固定されている。一方、第1軸受41の内輪41b及び第2軸受42の内輪42bは、軸部材5の外周面に固定される。これにより、軸部材5の軸線xを中心軸として、ロータ3が回転可能に構成されている。
【0026】
軸部材5は、軽量化のために、例えばアルミニウムで形成され、中空状態(より詳しくは円筒状態)になっている。本実施形態において、軸部材5は、固定側の部材である。ステータ2、ロータ3、軸受4及び動翼6をハウジング7に対して支持する機能を有する部材なので、当該機能に応じた剛性が求められる。
【0027】
軸部材5の途中(中間部)には、不図示の開口部が設けられており、コイル22に接続された不図示のリード線が、当該開口部から軸部材5内部の空洞に引き込まれ、軸部材5の不図示の端部開口から回転機器1の外部に引き出されるようになっている。
本実施形態にかかる回転機器1において、筒部材32は、その両端部が第1軸受41及び第2軸受42によって閉塞されている。この閉塞された空間内にあるステータ2のコイル22に対して、給電しなければならない。
【0028】
本実施形態にかかる回転機器1では、軸部材5内部の空洞にリード線を通すことによって、筒部材32及び軸受4等により閉塞された空間内とその外部とを電気的に繋いでいる。そのため、当該リード線によって、閉塞された空間内にあるステータ2のコイル22に給電できるようになっている。
【0029】
以上のように構成された回転機器1におけるモータ部分(ステータ2、ロータ3、軸受4及び軸部材5で構成される部分を云う。以下同じ。)は、軸部材5に固定されたステータ2に対して、ステータ2を取り囲むロータ3が回転可能となっており、いわゆるアウターロータ型のブラシレスモータを構成する。一般的なアウターロータ型のブラシレスモータでは、ロータに固定された軸部材が回転し、軸部材によって回転力が取り出されるようになっているが、本実施形態にかかる回転機器1では、軸部材5は固定側の部材であり、ロータ3から直接回転力が取り出されるように構成されている。
【0030】
ハウジング7は、円筒状の形状を有する部材であり、例えば、プラスチックあるいは金属等で形成されている。ハウジング7における軸方向の両端は、不図示ではあるが、開口部(以下、上側aの開口部を「上端開口部」、下側bの開口部を「下端開口部」と称する。)になっている。ハウジング7の内周面と、筒部材32の外周面と、の間には、上端開口部から下端開口部に連通する空間77が通気路として形成されている。
【0031】
本実施形態にかかる回転機器1においては、ハウジング7が、筒状の第1ハウジング(以下、上ハウジングと呼称する。)7aと第2ハウジング(以下、下ハウジングと呼称する。)7bの2部材により構成されている。上ハウジング7a及び下ハウジング7bを図1及び図2に示すように嵌合させて固定することによって、一体化したハウジング7が構成される。
【0032】
ハウジング7の内部には、回転機器1の構成部品の一部が収容されており、軸部材5が、上ハウジング7aの上端部及び下ハウジング7bの下端部に固定されている。上ハウジング7aの上端部及び下ハウジング7bの下端部は、それぞれ、上ハウジング7a及び下ハウジング7bの筒状の本体部(筒状部72)から連なる3本のスポーク部71aと該スポーク部71aが連結する円盤部71bと、を有し、円盤部71bに軸部材5が固定されている。
【0033】
ハウジング7及び軸部材5は、固定側の部材を構成している。また、上ハウジング7aの上端部及び下ハウジング7bの下端部には、上端開口部75と下端開口部76が設けられ、上端開口部75と下端開口部76は、それぞれ、円盤部71b及び軸部材5を囲んでいる。
【0034】
ロータ3の筒部材32の外周面には、軸部材5の軸方向(軸線x方向)における中央部に、ハウジング7の内周面に向けて(外周側へ)突出した動翼6が取り付けられている。動翼6は、その全体形状が、筒部材32の外周面に取り付けられたリング61と、当該リング61の外周面に取り付けられて放射状に延びる複数の羽根62と、からなっている。
【0035】
動翼6の複数の羽根62は、周方向において、リング61の外周面に所定の間隔で設けられている。また、図1及び図3を見ればわかるように、軸線x方向の一方側(例えば、図1における上側a。図3は、当該視点からの断面図である。)から動翼6を見ると、それぞれの羽根62が、軸部材5の周方向efにおける隣の羽根と、位置が一部重なって、隙間なく配置された状態になっている。
【0036】
図4に、本実施形態にかかる回転機器から動翼6、及び、動翼6が取り付けられた軸部材5の一部を抜き出した下方からの斜視図を示す。また、図5に、本実施形態にかかる回転機器から動翼6のみを抜き出した側面図を示す。
本実施形態において、動翼6は2つの部材6a,6bを備えている。以下、軸線x方向の一方側(図1においては上側a)の部材を上側動翼部材6aと称し、他方側(図1においては下側b)の部材を下側動翼部材6bと称する。
【0037】
上側動翼部材6aは、リング部61a及び羽根部62aを備えている。また、下側動翼部材6bは、リング部61b及び羽根部62bを備えている。動翼6の上側略半分が上側動翼部材6a、下側略半分が下側動翼部材6bによって構成されている。したがって、これら上側動翼部材6aと下側動翼部材6bとが重ね合わせられて、一体となったリング61と羽根62とが形成されて、全体として1つの動翼6が形成される。
【0038】
本実施形態において、羽根部62a,62bが、上側動翼部材6a及び下側動翼部材6bの2つの部材で形成されている。そして、それぞれの羽根62において、軸部材5の軸線x方向の途中に、上側動翼部材6a及び下側動翼部材6bの2つの部材間、即ち、羽根部62aと羽根部62bとの境目6Hがある。
なお、本実施形態において「重ね合わせられる」とは、2部材を軸方向から重ねて接合した際に、両者が合わさって1つの部材となり、全体として1つの動翼が形成される状態をいう。
【0039】
図4図5を見ればわかるように、本実施形態において、動翼6の複数の羽根62のそれぞれは、軸部材5の軸線x方向の一方側(例えば、図1における上側a)から見て、軸部材5の周方向efにおける隣の羽根と、位置が重なっている。そして、複数の羽根62のそれぞれの、隣の羽根と重なっている位置同士は、それぞれ、前記2つの部材の別の部材(即ち、上側動翼部材6a及び下側動翼部材6b)に当たる。
【0040】
また、図4図5を見ればわかるように、本実施形態において、動翼6の複数の羽根62は、捻じれた形状を有している。
なお、本実施形態において、「捻じれた形状」とは、平面の一端が固定されて、当該一端と他端とを結ぶ軸を中心として他端側を回転させた(捻った)形状をいう。具体的には、羽根62のリング61と接続する一端(換言すれば、軸部材5の径方向において、ロータ(回転体)3側にある端部)6Dが固定されて、当該一端6Dと他端(換言すれば、軸部材5の径方向において、ハウジング7側にある端部)6Eを含む軸(リング61の径方向と同じ方向の線)を中心として他端6E側(羽根62の外周端)を回転させた(捻った)形状になっている。
【0041】
また、羽根62は、一端6Dから他端6Eに向かう方向において、両矢印Bで示されるように湾曲している。
さらに、羽根62は、軸部材5の軸線x方向において、上側動翼部材(一方の部材)6a側にある端部6Fから下側動翼部材(他方の部材)6b側にある端部6Gに向かう方向において、両矢印Cで示されるように湾曲している。
【0042】
本実施形態における動翼6の如く、複数の羽根62が捻じれた複雑な形状の動翼を一体で形成しようとすると、動翼を成形するための金型が複雑化してしまう。特に、それぞれの羽根62が、軸線x方向の一方側(例えば、図1における上側a)から動翼6を見て、軸部材5の周方向efにおける隣の羽根と、位置が一部重なるような形状の場合、一般的な金型では、これら羽根同士が軸線x方向で干渉し合ってしまい、軸線x方向に型を開けても型から成形物を取り外すことができない。
【0043】
よって、成形のための極めて複雑な金型を用意する必要が生じるか、あるいは、如何にしても成形することができないか、といった状態になってしまう。そのため、動翼の成形のための金型が複雑化して高コスト化に繋がったり、さらには成形が困難な形状を避けなければならず、設計の自由度が狭まったり、といった虞がある。
【0044】
しかし、本実施形態によれば、動翼6が、上側動翼部材6a及び下側動翼部材6bの2つの部材に分かれて形成されているため、これら2つの部材6a,6bを別々に成形することができる。それぞれの部材6a,6bは、形状があまり複雑ではないため成形し易い。そのため、本実施形態によれば、動翼6の成形性が向上する。
【0045】
上側動翼部材6aについて見てみると、図4及び図5に示されるように、羽根62aの捻じれはそれほど大きくない。また、それぞれの羽根62aが、軸線x方向の一方側(例えば、図1における上側a)から動翼6を見て、軸部材5の周方向efにおける隣の羽根と、位置が重ならない。したがって、上側動翼部材6aを成形しようとした場合、これら羽根同士が軸線x方向で干渉することがなく、一般的な金型を使用したとして軸線x方向に型を開けても、型から成形物を取り外すことができる。
以上のことは、上側動翼部材6aと形状が近似する下側動翼部材6bについても、同様である。
【0046】
したがって、本実施形態によれば、上側動翼部材6a及び下側動翼部材6bの2つの部材に分けて成形することができるため、動翼6の成形のための金型を比較的単純化することができ、低コスト化することができる。さらには、比較的複雑な形状の動翼6の成形が可能となり、低コスト化とともに、設計の自由度を向上させることができる。
【0047】
軸部材5の軸方向(軸線x方向)において、動翼6が、ロータ3(回転体)の外周面の中央部に配置されている。ロータ3の中央の位置は、軸部材5の軸方向において、ロータ3に生じた振動の振幅が比較的小さいため、ロータ3に生じた振動がハウジング7へと伝搬しにくくなり、回転機器全体における振動の発生を抑制することができる。
【0048】
動翼6は、ロータ3の回転に連れ回るようになっているため、ロータ3とともに回転し、動翼6の回転に応じて、空気の流れが生じる。この空気の流れは、ハウジング7とロータ3との間の空間77において、軸部材5の軸方向における上方向及び下方向のいずれかの方向に向けて、生じるようになっている。本実施形態の回転機器1においては、回転機器1を駆動させて動翼6を反時計回りの周方向fに回転させることで、上端開口部75から取り込んだ空気が下端開口部76から吹き出すように構成されている。
【0049】
ロータ3の筒部材32には、通気口としての吸引口33と通気口としての排出口34が設けられている。軸部材5の軸方向(軸線x方向)において、吸引口33は、第1軸受(軸受)41と動翼6との間にある筒部材32の部分に設けられている。排出口34は、第2軸受(軸受)42と動翼6との間にある筒部材32の部分に設けられている。吸引口33及び排出口34は、周方向efが長手となる長方形の形状に形成されている。複数の吸引口33と複数の排出口34はそれぞれ周方向efに等間隔に並んでいる。なお、ロータ3の回転方向に応じて、吸引口33が排出口になり、排出口34は吸引口になっても構わない。
【0050】
動翼6の回転によって、下方向(矢印b方向)に向けて空間77に生じた空気の影響により、吸引口33からロータ3の内部に空気が吸引され、排出口34から空気が排出される。吸引口33から取り込まれた空気は、ロータ3の内部で、ステータコア21及びコイル22を備えるステータ2を冷却しながら、ステータコア21の複数の磁極部23の間や、マグネット31とステータ2との間に形成された磁気ギャップGを通り、排出口34から排出される。
したがって、本実施形態にかかる回転機器1においては、多くの冷却用の空気をロータ3内部に送り込むことができ、加熱したコイルを備えるステータ2を効率的に冷却することができる。
【0051】
本実施形態にかかる回転機器1は、回転体であるロータ3の外周面に動翼6を設け、それを囲うように筒状のハウジング7を設けた構成にすることで、ハウジング7の両端開口部の一方を吸気口、他方を吐出口とし、ハウジング7の内部空間にモータ部分や動翼6を収納することができている。特に、空気が流れる流路(風路と呼称する場合もある。)に動翼6が位置するため、省スペース化でき、回転機器全体の小型化を実現することができる。
【0052】
また、本実施形態にかかる回転機器1では、上端開口部から下端開口部に連通する空間77は、スポーク部71a以外の部材により空気の流れが阻害されないよう、空洞になっている。さらに、空間77は、円柱状のモータが占める空間を除き、直管状なので、空気がまっすぐに流れる。そのため、動翼6を回転させることによって、空気を、上端開口部から下端開口部に向けて、まっすぐに送り出すことができる。したがって、本実施形態にかかる回転機器1によれば、空気を効率的に送り出すことができ、強風及び大風量の供給を実現することができる。
【0053】
また、回転する軸部材がモータから突出する従来のモータの構成による回転機器では、軸部材の一方側が支持されつつ回転し、突出した他端側から回転力を取り出すことになるため、回転のブレが生じやすいが、本実施形態にかかる回転機器1は、軸受4で支持されたロータ3自体が回転体として回転するため、ロータ3の回転が安定する。
【0054】
また、本実施形態にかかる回転機器1は、ロータ3の両端部に第1軸受41及び第2軸受42がそれぞれ固定されて、回転体となるロータ3が支持されているので、軸部材5に対してロータ3の回転が安定する。特に、回転体であるロータ3の構成部材であり、所定の重量を有するマグネット31が、軸部材5の軸方向において、ロータ3を回転可能に支持する第1軸受41と第2軸受42との間にあるので、軸方向におけるバランスが良好になり、ロータ3の回転が安定化する。
【0055】
なお、軸受の位置としては、本実施形態の如く、回転体の両端部であることがより望ましいが、回転体の両端部近傍であれば、軸部材に対する回転体の回転は十分に安定した状態になる。ここで云う「近傍」とは、回転体の両端部と中央部の間であって回転体の両端部寄りの位置であればよく、数値で明確に定義できるものではないが、例えば、回転体の軸方向における両端から20%の長さの領域、好ましくは両端から10%の長さの領域は、「両端部近傍」の概念に含まれる。
【0056】
また、本実施形態にかかる回転機器1においては、第1軸受41と第2軸受42とが同一構成の部材であるため、軸受4の一部である外輪41a,42aとロータ3とからなる回転部分の軸方向のバランスが良好になる。即ち、本実施形態にかかる回転機器1においては、回転機器1全体としての軸方向のバランスが良好になるため、かかる観点からも、ロータ3の回転が安定化する。
【0057】
以上のように、本実施形態にかかる回転機器1は、装置全体の小型化を実現できるとともに、ロータ3の回転にブレが生じ難く、高精度の安定化を達成することができる。
また、ロータ3の回転の安定化は、回転ムラが生じ難くなることを意味するため、回転機器1の高トルク化を実現することもできる。即ち、本実施形態にかかる回転機器1によれば、小型化を実現しながら、回転機器としての特性に優れたものを提供することができる。
【0058】
以上、本発明の回転機器について、好ましい実施形態を挙げて説明したが、本発明の回転機器は上記実施形態の構成に限定されるものではない。例えば、以上説明した実施形態では、軸部材5の上下両端部が、ハウジング7に固定されている構成を例に挙げているが、固定側の軸部材5が何らかの形でハウジング7に固定されればよいので、少なくとも一方の端部乃至軸部材5の一部分がハウジングに固定されていれば構わない。
【0059】
また、上記実施形態において、動翼6は、その全体形状が、筒部材32の外周面に取り付けられたリング61と、当該リング61の外周面に取り付けられて放射状に延びる複数の羽根部62a,62bと、からなる態様を例示している。しかし、動翼は、これに限定されず、複数の羽根が筒部材32に、リング61無しに直接、固定されていても構わない。
【0060】
この場合に、複数の羽根を軸部材の軸方向で上下2部材に分割し、それら分割された部材それぞれの羽根同士がリング部61aに依らずに連結された形状としておくことで、これら2部材を重ね合わせ、回転体(本実施形態では、詳しくは筒部材32)を嵌挿させて、一体化された動翼を形成することができる。
【0061】
あるいは、回転体(本実施形態では、詳しくは筒部材32)にそれぞれの羽根が直接固定された形状であって、複数の羽根とともに回転体をも軸部材の軸方向で上下2部材に分割された態様とすることで、複数の羽根と回転体が上下に分割された2部材を容易に成形することができる。そして、これら2部材を重ね合わせることで、動翼と該動翼が固定された回転体とを形成することができる。
【0062】
その他、当業者は、従来公知の知見に従い、本発明の回転機器を適宜改変することができる。かかる改変によってもなお本発明の構成を具備する限り、勿論、本発明の範疇に含まれるものである。
【符号の説明】
【0063】
1…回転機器、2…ステータ、3…ロータ(回転体)、4…軸受、5…軸部材、6…動翼、6a…上側動翼部材、6b…下側動翼部材、7…ハウジング、7a…上ハウジング、7b…下ハウジング、21…ステータコア、22…コイル、23…磁極部、24…円環部、25…インシュレータ、31…マグネット、32…筒部材、33…吸引口、34…排出口、41…第1軸受(軸受)、41a,42a…外輪、41b,42b…内輪、41c,42c…ベアリングボール、42…第2軸受(軸受)、61…リング、61a,61b…リング部、62…羽根、62a,62b…羽根部、71a…スポーク部、71b…円盤部、72…筒状部、77…空間
図1
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図5