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  • 特許-半導体部品 図1
  • 特許-半導体部品 図2
  • 特許-半導体部品 図3
  • 特許-半導体部品 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】半導体部品
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20241121BHJP
   H01L 23/31 20060101ALI20241121BHJP
   H01L 25/07 20060101ALI20241121BHJP
   H01L 25/18 20230101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L23/30 R
H01L25/04 C
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020170934
(22)【出願日】2020-10-09
(65)【公開番号】P2022062802
(43)【公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000144393
【氏名又は名称】株式会社三社電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090310
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 正俊
(72)【発明者】
【氏名】前田 昂太郎
【審査官】栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-324963(JP,A)
【文献】特開2010-135373(JP,A)
【文献】特開2003-017517(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/29
H01L 25/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁基板と、
前記絶縁基板の一面に形成された半導体用回路板と、
前記半導体用回路板上に設けられた半導体チップと、
前記絶縁基板の前記一面に、前記半導体用回路板と間隔をあけて形成された回路板と、
前記絶縁基板と、前記半導体用回路板と、前記半導体チップと、前記回路板とを、内部に封止した樹脂モールド製の封止体とを、
有し、前記封止体に、樹脂非付着部が形成され、前記封止体が前記樹脂モールドによって形成される際に前記絶縁基板の押え具が接触する前記絶縁基板の前記回路板に対応する位置に、前記封止体の前記樹脂非付着部が形成されている半導体部品。
【請求項2】
請求項1記載の半導体部品において、前記回路板は、前記半導体チップに接続されるリードの突出方向と反対側の前記絶縁基板上に形成されている半導体部品。
【請求項3】
請求項1または2記載の半導体部品において、前記樹脂非付着部に、前記回路板の一部が露出している半導体部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体部品に関し、特に樹脂モールド製の封止体を有するものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来の半導体部品の一例が、特許文献1に開示されている。特許文献1の技術では、リードフレームの一部であるダイパッド部に半導体素子を搭載し、リード端子を接続し、リードフレームを概略直方体状の樹脂体が樹脂封止している。樹脂封止は、リード端子を金型から突出させ、樹脂成形用の金型内にリードフレームを配置し、金型内に樹脂を注入することによって行われ、封止後の外観は、特許文献1の図9に示すように、リードフレームのダイパッド部の一部は外部に露出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-92389号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ダイパットの一部が露出する要因として、このように金型内に樹脂を注入する際に、リードフレームを金型内に形成した突起等で押さえることにある。この場合、突起が存在していた部分には樹脂が付着せず、樹脂体からリードフレームの一部であるダイパッドが押さえられていた箇所が露出することになる。このような半導体部品を導通させると、ダイパッドの露出した箇所にも電流が流れ、手で触れると感電する場合がある。絶縁を維持するため、金型から取り出した後、樹脂が付着していない部分に、樹脂を注入して露出部を覆う場合には、樹脂注入を複数回にわたって行う必要がある。
【0005】
本発明は、樹脂の注入が一度であっても絶縁を維持することができる半導体部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様の半導体部品では、絶縁基板の一面に半導体用回路板が形成されている。前記半導体用回路板上に半導体チップが設けられている。半導体用回路板には、半導体チップから電流が流れるものを使用することができる。前記絶縁基板の前記一面に、前記半導体用回路板と間隔をあけて回路板が形成されている。回路板は、例えば半導体部品をヒートシンクに固定する際に使用するボルト等を通過させるために使用することができる。絶縁基板と、半導体用回路板と、回路板とで基材を構成している。例えば絶縁基板の一面に金属膜が形成された基材を用い、金属膜をエッチングすることによって、絶縁基板の一面に半導体用回路板及び回路板を形成することができる。基材とはして、DCB基板を使用することもできる。前記絶縁基板と、前記半導体用回路板と、前記半導体チップと、前記回路板とを、樹脂モールド製の封止体がその内部に封止している。前記封止体には、樹脂非付着部が形成されている。前記封止体が前記樹脂モールドによって形成される際に前記絶縁基板の押え具が接触する前記絶縁基板の前記回路板に対応する位置に、前記封止体の前記樹脂非付着部が形成されている。樹脂モールドとしては、例えばトランスファモールドを使用することができる。
【0007】
このような半導体部品では、通常には、一体に形成される半導体用回路板と回路板とは、封止体内において距離をおいて配置されているので、互いに絶縁されており、封止体に樹脂非付着部が存在していても、絶縁を保つことができ、樹脂非付着部を樹脂で埋める必要が無い。
【0008】
上記の態様の半導体部品において、前記回路板は、前記半導体チップに接続されるリードの突出方向と反対側の前記絶縁基板上に形成することができる。
【0009】
上記の2つの態様のいずれかにおいて、前記樹脂非付着部に、前記回路板の一部を露出させることもできる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明による半導体部品では、樹脂非付着部が樹脂封止体に形成されても、その樹脂非付着部に樹脂を注入する必要が無く、樹脂の注入が一度であっても絶縁を維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の1実施形態の半導体部品の中央縦断側面図である。
図2図1の半導体部品の側面図である。
図3図1の半導体部品の正面図である。
図4図1の半導体部品の内部構造の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の1実施形態の半導体部品は、ディスクリート半導体、例えばMOSFETで、図1乃至図3に示すように樹脂製の封止体2を有している。封止体2は、概略、扁平な直方体状に形成されている。
【0013】
封止体2の内部に、図1に示すように長方形状の絶縁基板4が封止されている。絶縁基板4の一方の面全域に金属、例えば銅製の放熱板6が形成され、放熱板6は、封止体2の一方の面に露出している。この放熱板6が、ヒートシンクに接触した状態で取り付けられる。
【0014】
絶縁基板4における放熱板6と反対側の面には、図1及び図4に示すように、半導体用回路板8が形成されている。半導体用回路板8も例えば銅からなる金属製で、絶縁基板4の一方の端側から絶縁基板4の中央を幾分超えた付近までの位置に位置し、概略長方形状に形成されている。この半導体用回路板8上には、MOSFETの半導体チップ10が取り付けられている。半導体チップ10の一方の面にドレイン領域が形成され、このドレイン領域が半導体用回路板8に電気的に接続されている。半導体チップ10の他方の面にはゲートパッド12、ソースパッド14、14、ソースセンスパッド16が形成され、パッド12にはゲートリード18が接続され、ソースパッド14、14には、先端が2又部であるソースリード20が接続され、ソースセンスパッド16には、ソースセンスリード22が接続されている。また、ソース領域が接続されている半導体用回路板8には、ドレインリード24が接続されている。
【0015】
絶縁基板4の他方の橋側からその中央付近までの位置に、回路板26が形成されている。回路板26と半導体用回路板8とは離れて位置しており、互いに絶縁されている。回路板26は、一部が欠除された長方形状に形成されている。この欠除部分の絶縁基板4には、挿通孔28が形成されている。この挿通孔28には、この半導体部品をヒートシンク等に取り付けるためのボルトが挿通される。なお、図1に示すように、挿通孔28に対応して樹脂封止体2にも挿通孔30が形成され、また、放熱板6にも挿通孔28に対応して挿通孔32が形成されている。
【0016】
なお、放熱用回路板6、半導体用回路板8及び回路板26は、絶縁基板4の両面に銅を直接に焼結もしくはロウ付けしたDCB基板を、例えばエッチングすることによって形成されている。
【0017】
樹脂封止体2の形成は、例えば次のようにして行われる。図4に示すように絶縁基板4上の半導体用回路板8に半導体チップ10が接続され、半導体チップ10のパッド12、14、14、16及び半導体用回路板8にリード18、20、22、24が接続される。これらをトランスファーモールド用の上下2つの金型によって形成される空洞内に配置する。この金型の空洞は、樹脂製封止体2の外形と相補の内部形状を持っている。挿入孔28、30、32に対応する部分に樹脂が侵入するのを防止するための突部(図示せず)が空洞内に形成されている。また、この突部の両側には、それぞれ押さえ具となる突部が空洞内に形成されている(図4に破線で示す)。少なくとも絶縁基板4に接触するように、押さえ具となる突部が、空洞の壁に配置されている。これら突部は、各リード18、20、22、24が上下2つの金型の合わせ面によって押さえられているので、絶縁基板4が樹脂の注入時に移動したり、反ったりすることを防止するために、これらリード18、20、22、24と反対側の位置に形成されている。これら突部は充分な接触面積を確保するために、図4に示すように、一部が絶縁基板4の回路板26にも接触している。樹脂を金型に注入したとき、押さえ具としての突部に対応する部分にも樹脂が侵入しない。そのため、空洞への樹脂の注入終了後に型から取りだしたとき、図2及び図3に示すように、挿入孔30の両側には樹脂非付着部34が形成されている。
【0018】
この樹脂非付着部34では、図3に示すように回路板26の一部が露出している。もし半導体用回路板8と回路板26とが一体に形成されていると、樹脂非付着部34に露出している回路板26にもドレイン電流が流れる。この状態で絶縁を保つためには、この樹脂非付着部34に再度樹脂を注入して、樹脂非付着部34を樹脂によって埋める必要がある。しかし、この実施形態では、回路板26と半導体基板8とが絶縁されているので、回路板26には電流が流れない。従って、感電する恐れがないことから樹脂非付着部34を樹脂で埋める必要が無く、製造工程を簡略化することができる。
【0019】
回路板26を形成しないことも考えられるが、回路板26がない場合には樹脂封止する際に突部で押さえられる強度が不足し、完成後の半導体部品の強度も低下してしまう。また、絶縁基板4の一面の銅箔を、回路板26に相当する面積だけエッチング等によって除去すると、金属部分の面積が一部分だけ除去されることとなり、重量や放熱量及び反り量などの観点から、絶縁基板を挟んだ両面のバランス、及び絶縁基板の一面の半導体用回路が形成された下側(リード端子側)と上側とのバランスが崩れてしまい、半導体部品全体とし、反りが大きくなる恐れがある。これに対し、回路板26を残した場合、回路板26と半導体用回路板8とを分離できるようにエッチングすればよいので、絶縁基板を挟んだ両面及び上下左右のいずれにおいても、金属部分の面積のバランスが取れるため、反りが大きくなることが防止できる。
【0020】
上記の実施形態では、本発明をMOSFETに実施したが、これに限ったものではなく、半導体用回路板に電流が流れる半導体素子であれば、どのようなものにも使用することができる。上記の実施形態では、DCB基板から絶縁基板4、放熱用回路板6、半導体用回路板8、回路板26を形成したが、DCB基板ではなく、通常の印刷回路基板から絶縁基板4、放熱用回路板6、半導体用回路板8、回路板26を形成することもできる。
【符号の説明】
【0021】
2 樹脂封止体
4 絶縁基板
8 半導体用回路板
10 半導体チップ
18 20、22 24 リード
34 樹脂非付着部
図1
図2
図3
図4