(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】特に基体にコーティング又は印刷を施すための水性のインク又はラッカー組成物
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20241121BHJP
C09D 11/40 20140101ALI20241121BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20241121BHJP
B41M 5/00 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C09D11/30
C09D11/40
B41J2/01 501
B41M5/00 120
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020175323
(22)【出願日】2020-10-19
【審査請求日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】10 2019 216 004.2
(32)【優先日】2019-10-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】510051657
【氏名又は名称】マラブ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【氏名又は名称】胡田 尚則
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【氏名又は名称】高橋 正俊
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン エンゲル
(72)【発明者】
【氏名】ヨッヘン ゾンマールクシュ
(72)【発明者】
【氏名】レギーナ ツェルベル
(72)【発明者】
【氏名】ラビア キュチュク
【審査官】松原 宜史
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-002909(JP,A)
【文献】特開2017-110130(JP,A)
【文献】米国特許第06900260(US,B1)
【文献】特表2003-522212(JP,A)
【文献】特開2010-241911(JP,A)
【文献】特開2019-056020(JP,A)
【文献】特表2001-520297(JP,A)
【文献】特表2008-538788(JP,A)
【文献】特開2019-143058(JP,A)
【文献】特表2003-510400(JP,A)
【文献】特開2017-190430(JP,A)
【文献】特表2007-529589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性のインク組成物であって、
- 少なくとも1種の増粘剤と、
- 少なくとも1種の結合剤と、
- 少なくとも1種の有機溶剤と、
- 水と、
を有しており、
前記少なくとも1種の増粘剤が少なくとも1種の会合性増粘剤であり、そして前記少なくとも1種の結合剤が、前記少なくとも1種の会合性増粘剤とは異なる化合物であり、前記化合物が、ポリアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリウレタン、アクリロニトリル-ブタジエン-ゴム(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチロール-ゴム(ABS)、メタクリレート-ブタジエン-スチロール(MBS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチロール、及び上記結合剤のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されており、
前記少なくとも1種の会合性増粘剤がコポリマーであり、前記コポリマーが、アニオン性モノマーと、疎水性モノマーと、非イオン性モノマーとを重合することにより形成されており、
前記水性のインク組成物の、前記少なくとも1種の結合剤と前記少なくとも1種の会合性増粘剤との比が、前記水性のインク組成物中に含有される、前記少なくとも1種の結合剤の合計の固体含量及び前記少なくとも1種の会合性増粘剤の合計の固体含量を基準として、5以上:1であり、
前記少なくとも1種の会合性増粘剤と前記少なくとも1種の結合剤と
の合計が、前記インク組成物の総重量を基準として、0.1重量%~10重量%の含有率を有している、
水性のインク組成物。
【請求項2】
前記水性のインク組成物の粘度が、前記水性のインク組成物中の前記少なくとも1種の会合性増粘剤の含有率が増大するのに伴って、線形に上昇することを特徴とする、請求項1に記載の水性のインク組成物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の会合性増粘剤が、疎水性改質ポリアクリレート(HASE)、疎水性改質セルロースエーテル(HEC)、疎水性改質ポリアクリルアミド(HMPAM)、疎水性改質ポリエーテル(HMPE)、会合性ポリウレタン増粘剤、及び上記会合性増粘剤のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の水性のインク組成物。
【請求項4】
- 前記アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ホスホエチルメタクリレート、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、ナトリウムビニルスルホネート、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、無水マレイン酸、及び上記アニオン性モノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されており、
且つ/又は、
- 前記疎水性モノマーが、界面活性エステル、C8-C30-アルキルフェノキシ(エチレンオキシ)6-100-エチルアクリレート、C8-C30-アルキルフェノキシ(エチレンオキシ)6-100-エチルメタクリレート、C8-C30-アルコキシ(エチレンオキシ)6-50-エチルアクリレート、C8-C30-アルコキシ(エチレンオキシ)6-50-エチルメタクリレート、C8-C30-アルキル-フェノキシエチルアクリレート、C8-C30-アルキル-フェノキシエチルメタクリレート、C8-C30-アルコキシエチルアクリレート、C8-C30-アルコキシエチルメタクリレート、C18H37(EO)20-アクリレート、C18H37(EO)20-メタクリレート、C20H25(EO)23-アクリレート、C20H25(EO)23-メタクリレート、及び上記疎水性モノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されており、
且つ/又は、
- 前記非イオン性モノマーが、アクリル酸のC1~C7-アルキルエステル、メタクリル酸のC1~C7-アルキルエステル、アクリル酸のC2~C7-ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸のC2~C7-ヒドロキシアルキルエステル、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、スチロール、ビニルトルエン、t-ブチルスチロール、イソプロピルスチロール、p-クロロスチロール、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルカプロレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、及び上記非イオン性モノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されている
ことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の水性のインク組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1種の結合剤は、モル重量が≧10,000g/molのポリアクリレートであることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の水性のインク組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1種の結合剤が、アクリル酸のエステルと少なくとも1種のコモノマーとから成るポリアクリレートであることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項に記載の水性のインク組成物。
【請求項7】
前記アクリル酸の前記エステルが、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソ-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、及び前記アクリル酸の上記エステルのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されており、且つ/又は、前記少なくとも1種のコモノマーが、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、アクリルアミド、スチロール、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルアルコール、ウレタン、及び上記コモノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されていることを特徴とする、請求項6に記載の水性のインク組成物。
【請求項8】
前記少なくとも1種の有機溶剤が、3-メチル-3-メトキシブタノール(MMB)、メトキシブタノール(MB)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MP)、グリコールエーテル、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、DMSO、ヘキサン-1,6-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、2-ピロリドン、グリセリン、及び上記有機溶剤のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されていることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項に記載の水性のインク組成物。
【請求項9】
前記少なくとも1種の有機溶剤が、前記インク組成物の総重量を基準として、≦20重量%の含有率を有していることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の水性のインク組成物。
【請求項10】
前記水が、前記インク組成物の総重量を基準として、≧50重量%の含有率を有していることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の水性のインク組成物。
【請求項11】
基体にコーティング又は印刷を施す方法であって、基体に、請求項1から10までのいずれか1項に記載の水性のインク組成物でコーティング又は印刷を施すことを特徴とする、方法。
【請求項12】
基体であって、前記基体に、請求項1から10までのいずれか1項に記載の水性のインク組成物で少なくとも部分的にコーティング又は印刷が施されていることを特徴とする、基体。
【請求項13】
請求項1から10までのいずれか1項に記載の1種又は2種以上の水性のインク組成物を有するインクセットであって、前記水性のインク組成物が少なくとも着色剤に関して、互いに異なっていることを特徴とする、インクセット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に基体にコーティング又は印刷を施すための水性のインク又はラッカー組成物、基体にコーティング又は印刷を施す方法、インク又はラッカー組成物で少なくとも部分的にコーティング又は印刷が施された基体、インクセット、並びに、基体にコーティング及び/又は印刷を施すための水性のインク又はラッカー組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
水性インク組成物の粘度調節のために、通常はいわゆる増粘剤が使用される。相応するインク組成物が例えば欧州特許第2 046 902 B1号明細書並びに独国特許第602 15 508 T2号明細書から公知である。
【0003】
欠点は、水性インク組成物の粘度に顕著な影響を与えるために、多量の増粘剤によって処理しなければならないことである。このことは通常、インク組成物の特性を損なう。例えば、増粘剤の含有率が高いと、インク組成物が印刷ヘッドに堆積することによって印刷ヘッドの始動挙動が悪化し、インク組成物はコーティング済又は印刷済の基体上で摩耗強度が低下するおそれがある。
【0004】
前述の欠点に対処するために、インク組成物はしばしば高含有率の有機溶剤を有する。しかしながら、これによりしばしばインク組成物の乾燥時間が長くなる。さらに、高含有率の有機溶剤は環境の観点からもますます望ましいものではなくなっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って本発明の課題は、コンベンショナルな水性のインク又はラッカー組成物の関連において知られている欠点を少なくとも部分的に回避する、水性のインク又はラッカー組成物を提供することである。さらに本発明の課題は、基体にコーティング又は印刷を施す方法、水性のインク又はラッカー組成物で少なくとも部分的にコーティングが施された基体、インクセット、並びに、水性のインク又はラッカー組成物の使用を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
これらの課題は、独立請求項1に記載された水性のインク又はラッカー組成物によって、請求項13に記載の基体にコーティング又は印刷を施す方法によって、請求項14に記載の基体によって、請求項15に記載のインクセットによって、そして明細書中に開示された本発明の態様によって解決される。有利な構成が従属請求項並びに明細書に定義されている。ここでは請求項全体の文言は、本明細書の内容と表現上関連させることにより作成される。
本開示は、下記の態様を含む。
<態様1>
特に基体にコーティング又は印刷を施すための水性のインク又はラッカー組成物であって、
- 少なくとも1種の増粘剤と、
- 少なくとも1種の結合剤と、
- 少なくとも1種の有機溶剤と、
- 水と、
を有しており、
前記少なくとも1種の増粘剤が少なくとも1種の会合性増粘剤であり、そして前記少なくとも1種の結合剤が、前記少なくとも1種の会合性増粘剤とは異なる化合物であり、前記化合物が、ポリアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリウレタン、アクリロニトリル-ブタジエン-ゴム(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチロール-ゴム(ABS)、メタクリレート-ブタジエン-スチロール(MBS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチロール、及び上記結合剤のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されている、
水性のインク又はラッカー組成物。
<態様2>
前記水性のインク又はラッカー組成物の粘度が、前記水性のインク又はラッカー組成物中の前記少なくとも1種の会合性増粘剤の含有率が増大するのに伴って、特に少なくとも2種の上昇に伴って線形に上昇することを特徴とする、態様1に記載の水性のインク又はラッカー組成物。
<態様3>
前記少なくとも1種の会合性増粘剤が、疎水性改質ポリアクリレート(HASE)、疎水性改質セルロースエーテル(HEC)、疎水性改質ポリアクリルアミド(HMPAM)、疎水性改質ポリエーテル(HMPE)、会合性ポリウレタン増粘剤、及び上記会合性増粘剤のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されていることを特徴とする、態様1又は2に記載の水性のインク又はラッカー組成物。
<態様4>
前記少なくとも1種の会合性増粘剤がコポリマーであり、前記コポリマーが、アニオン性モノマーと、疎水性モノマーと、非イオン性モノマーとを重合することにより形成されていることを特徴とする、態様1から3までのいずれかに記載の水性のインク又はラッカー組成物。
<態様5>
- 前記アニオン性モノマーが、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ホスホエチルメタクリレート、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、ナトリウムビニルスルホネート、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、無水マレイン酸、及び上記アニオン性モノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されており、
且つ/又は、
- 前記疎水性モノマーが、界面活性エステル、C8-C30-アルキルフェノキシ(エチレンオキシ)6-100-エチルアクリレート、C8-C30-アルキルフェノキシ(エチレンオキシ)6-100-エチルメタクリレート、C8-C30-アルコキシ(エチレンオキシ)6-50-エチルアクリレート、C8-C30-アルコキシ(エチレンオキシ)6-50-エチルメタクリレート、C8-C30-アルキル-フェノキシエチルアクリレート、C8-C30-アルキル-フェノキシエチルメタクリレート、C8-C30-アルコキシエチルアクリレート、C8-C30-アルコキシエチルメタクリレート、C18H37(EO)20-アクリレート、C18H37(EO)20-メタクリレート、C20H25(EO)23-アクリレート、C20H25(EO)23-メタクリレート、及び上記疎水性モノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されており、
且つ/又は、
- 前記非イオン性モノマーが、アクリル酸のC1~C7-アルキルエステル、メタクリル酸のC1~C7-アルキルエステル、アクリル酸のC2~C7-ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸のC2~C7-ヒドロキシアルキルエステル、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、スチロール、ビニルトルエン、t-ブチルスチロール、イソプロピルスチロール、p-クロロスチロール、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルカプロレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、及び上記非イオン性モノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されている
ことを特徴とする、態様4に記載の水性のインク又はラッカー組成物。
<態様6>
前記少なくとも1種の結合剤は、モル重量が≧10,000g/mol、特に≧10,000g/mol~≦1,000,000g/mol、有利には≧10,000g/mol~≦200,000g/mol、特に有利には≧10,000g/mol~≦45,000g/mol、特に≧25,000g/mol~≦35,000g/molのポリアクリレートであることを特徴とする、態様1から5までのいずれかに記載の水性のインク又はラッカー組成物。
<態様7>
前記少なくとも1種の結合剤が、アクリル酸のエステルと少なくとも1種のコモノマーとから成るポリアクリレートであり、前記アクリル酸の前記エステルが有利には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソ-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、及び前記アクリル酸の上記エステルのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されており、且つ/又は、前記少なくとも1種のコモノマーが有利には、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、アクリルアミド、スチロール、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルアルコール、ウレタン、及び上記コモノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されていることを特徴とする、態様1から6までのいずれか1項に記載の水性のインク又はラッカー組成物。
<態様8>
前記少なくとも1種の会合性増粘剤と前記少なくとも1種の結合剤とが一緒に、前記インク又はラッカー組成物の総重量を基準として、0.1重量%~10重量%、特に1重量%~5.5重量%、有利には1.1重量%~4.6重量%の含有率を有していることを特徴とする、態様1から7までのいずれかに記載の水性のインク又はラッカー組成物。
<態様9>
前記水性のインク又はラッカー組成物の、前記少なくとも1種の結合剤と前記少なくとも1種の会合性増粘剤との比が、前記水性のインク又はラッカー組成物中に含有される、前記少なくとも1種の結合剤及び前記少なくとも1種の会合性増粘剤の固体含量を一緒に基準として、少なくとも5:1、特に5:1~20:1、特に5:1~15:1、有利には5:1~10:1であることを特徴とする、態様1から8までのいずれかに記載の水性のインク又はラッカー組成物。
<態様10>
前記少なくとも1種の有機溶剤が、3-メチル-3-メトキシブタノール(MMB)、メトキシブタノール(MB)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MP)、グリコールエーテル、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、DMSO、ヘキサン-1,6-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、2-ピロリドン、グリセリン、及び上記有機溶剤のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されていることを特徴とする、態様1から9までのいずれかに記載の水性のインク又はラッカー組成物。
<態様11>
前記少なくとも1種の有機溶剤が、前記インク又はラッカー組成物の総重量を基準として、≦20重量%、特に10重量%~20重量%、有利には13重量%~18重量%の含有率を有していることを特徴とする、態様1から10までのいずれかに記載の水性のインク又はラッカー組成物。
<態様12>
前記水が、前記インク又はラッカー組成物の総重量を基準として、≧50重量%、特に>60重量%、有利には>70重量%の含有率を有していることを特徴とする、態様1から11までのいずれかに記載の水性のインク又はラッカー組成物。
<態様13>
基体にコーティング又は印刷、特にデジタル印刷を施す方法であって、基体、特に基体の表面に、態様1から12までのいずれかに記載の水性のインク又はラッカー組成物でコーティング又は印刷、特にデジタル印刷を施すことを特徴とする、方法。
<態様14>
基体であって、前記基体に、態様1から12までのいずれかに記載の水性のインク又はラッカー組成物で少なくとも部分的にコーティング又は印刷、特にデジタル印刷が施されていることを特徴とする、基体。
<態様15>
態様1から12までのいずれかに記載の1種又は2種以上のインク組成物を有するインクセットであって、前記インク組成物が少なくとも着色剤、特に染料及び/又は顔料に関して、互いに異なっていることを特徴とする、インクセット。
【発明を実施するための形態】
【0007】
第1の態様によれば、本発明は、基体、特に基体表面にコーティング又は印刷、特にデジタル印刷を施すための水性のインク又はラッカー組成物に関する。
【0008】
基体は例えば、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチロール-コポリマー、ポリスチロール、上記材料のうちの少なくとも2種のコポリマー、及び、上記材料のうちの少なくとも2種のブレンド、すなわち混合物から成る群から選択された材料を有するか、又は材料から成っていてよい。
【0009】
基体はフォイル、特に食料品包装フォイルであると有利である。あるいは、基体は例えば紙、厚紙包装材料、又は壁紙であってもよい。
【0010】
水性のインク又はラッカー組成物は、
- 少なくとも1種の増粘剤と、
- 少なくとも1種の結合剤と、
- 少なくとも1種の有機溶剤と、
- 水と、
を有している。
【0011】
前記少なくとも1種の増粘剤は少なくとも1種の会合性増粘剤であってよい。
【0012】
前記少なくとも1種の結合剤は、前記少なくとも1種の増粘剤もしくは前記少なくとも1種の会合性増粘剤とは異なる化合物であり、前記化合物が、ポリアクリレート、ウレタンアクリレート、ポリウレタン、アクリロニトリル-ブタジエン-ゴム(NBR)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチロール-ゴム(ABS)、メタクリレート-ブタジエン-スチロール(MBS)、メチルメタクリレート-ブタジエン-スチロール、及び上記結合剤のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されている。
【0013】
特に、前記少なくとも1種の結合剤は、前記少なくとも1種の増粘剤もしくは前記少なくとも1種の会合性増粘剤とは異なるポリアクリレートであってよい。
【0014】
「水性のインク組成物」という表現は本発明の意味において、水性の、すなわち水を有する溶液、又は水性の、すなわち水を有する分散体であって、少なくとも1種の着色剤、特に少なくとも1種の染料及び/又は少なくとも1種の顔料を有するものと理解されるべきである。適切な着色剤、特に適切な顔料及び/又は染料に関しては、さらに以下の詳細が参照される。
【0015】
「水性のラッカー組成物」という表現は本発明の意味において、水性コーティング組成物であって、特に保護目的(いわゆる保護ラッカー)及び/又は装飾目的(光学作用及び/又は所定の色効果)及び/又は機能目的(例えば特別な表面特性及び/又は変更された導電性)で基体上に被着されるものと理解されるべきである。
【0016】
「増粘剤」という表現は本発明の意味において、結合されていない水を、特に膨潤下で/膨潤によって、特に膨潤下でのみ/膨潤によってのみ結合させ得る化合物と理解されるべきである。
【0017】
「会合性増粘剤」という表現は本発明の意味において、その分子、通常は高分子が疎水性及び親水性の末端、及び/又は疎水性及び親水性の側鎖を有している増粘剤と理解されるべきである。
【0018】
「結合剤」という表現は本発明の意味において、一方ではインク又はラッカー組成物の成分を互いに結合させ、そして他方では基体、特に基体の表面に対する付着を支援する化合物と理解されるべきである。
【0019】
「アクリロニトリル-ブタジエン-ゴム(NBR)」という表現は本発明の意味において、アクリロニトリル構造要素と1,3-ブタジエン構造要素とを有する、又はアクリロニトリル構造要素と1,3-ブタジエン構造要素とから成るコポリマーと理解されるべきである。アクリロニトリル構造要素及び/又は1,3-ブタジエン構造要素は、改質、特に官能化されていてよい。例えば、アクリロニトリル構造要素及び/又は1,3-ブタジエン構造要素は、カルボキシル基及び/又はカルボキシル基を有する置換基で改質、特に官能化されていてよい。あるいは、アクリロニトリル構造要素及び/又は1,3-ブタジエン構造要素は、改質されていなくてもよい。本発明の意味における好適なアクリロニトリル-ブタジエン-ゴム(NBR)は例えば、製造業者Zeon Corporation(Nipolシリーズ)、Emerald Materials(Nychemシリーズ)、並びにSynthomer社(Litexシリーズ)のカルボキシル-アクリロニトリル-ブタジエン-コポリマーである。
【0020】
「アクリロニトリル-ブタジエン-スチロール-ゴム(ABS)」という表現は本発明の意味において、アクリロニトリル構造要素とブタジエン構造要素とスチロール構造要素とを有する、又はアクリロニトリル構造要素とブタジエン構造要素とスチロール構造要素とから成るターポリマーと理解されるべきである。有利には、アクリロニトリル-ブタジエン-スチロール-ゴム(ABS)は本発明の意味において、ボリブタジエンをベースとする主鎖に、スチロール-アクリロニトリル-コポリマー(SAN)から成る側鎖が共有結合されている熱可塑性ターポリマーである。アクリロニトリル構造要素及び/又はブタジエン構造要素及び/又はスチロール構造要素は、改質、特に官能化されていてよい。例えば、アクリロニトリル構造要素及び/又はブタジエン構造要素及び/又はスチロール構造要素は、カルボキシル基及び/又はカルボキシル基を有する置換基で改質、特に官能化されていてよい。あるいは、アクリロニトリル構造要素及び/又はブタジエン構造要素及び/又はスチロール構造要素は、改質されていなくてもよい。好適なアクリロニトリル-ブタジエン-スチロール-ゴム(ABS)は例えば、Emerald Materials(Nychemシリーズ)、並びにSynthomer(Litexシリーズ)のカルボキシル化アクリロニトリル-ブタジエン-スチロール-コポリマーである。
【0021】
「メタクリレート-ブタジエン-スチロール(NBS)」という表現は本発明の意味において、メタクリレート構造要素とブタジエン構造要素とを有する、又はメタクリレート構造要素とブタジエン構造要素とから成るコポリマーと理解されるべきである。メタクリレート構造要素及び/又はブタジエン構造要素は、改質、特に官能化されていてよい。例えば、メタクリレート構造要素及び/又はブタジエン構造要素は、カルボキシル基及び/又はカルボキシル基を有する置換基で改質、特に官能化されていてよい。あるいは、メタクリレート構造要素及び/又はブタジエン構造要素は、改質されていなくてもよい。好適なメタクリレート-ブタジエン-スチロール-コポリマーは例えば、SynthomerのLitexシリーズのカルボキシル化メタクリレート-ブタジエン-スチロール-コポリマーである。
【0022】
「メチルメタクリレート-ブタジエン-スチロール」という表現は本発明の意味において、メチルメタクリレート構造要素とブタジエン構造要素とスチロール構造要素とを有する、又はメチルメタクリレート構造要素とブタジエン構造要素とスチロール構造要素とから成るコポリマー又はゴムと理解されるべきである。メチルメタクリレート構造要素及び/又はブタジエン構造要素及び/又はスチロール構造要素は、改質、特に官能化されていてよい。例えば、メチルメタクリレート構造要素及び/又はブタジエン構造要素及び/又はスチロール構造要素は、カルボキシル基及び/又はカルボキシル基を有する置換基で改質、特に官能化されていてよい。あるいは、メチルメタクリレート構造要素及び/又はブタジエン構造要素及び/又はスチロール構造要素は、改質されていなくてもよい。
【0023】
増粘剤もしくは会合性増粘剤と結合剤との本発明による組み合わせによって、組成物の場合によっては生じるチキソトロピー特性を妨げることなしに、加工可能性の観点から十分な粘度を有する、水性のインク又はラッカー組成物を製造し得ることを示すことができた。これにより特に、良好な印刷可能性(静止時間後の印刷ヘッドの問題のない始動、信頼性の高い液滴形成、運転中のノズルの故障がないこと)を達成することができる。
【0024】
さらに、水性のインク又はラッカー組成物の粘度調節のために、増粘剤及び結合剤は僅かな量しか必要とされない点が有利である。これにより、インク又はラッカー組成物の所望の特性を損なうことを回避し得る。
【0025】
別の利点は、増粘剤と結合剤との本発明による組み合わせによって、有機溶剤がより僅かな量しか必要とならず、これにより、一方では水性のインク又はラッカー組成物の乾燥時間を著しく短くすることができ、また他方では、水性のインク又はラッカー組成物が遭遇する環境上の懸念がより小さくなることである。
【0026】
さらに、水性のインク又はラッカー組成物は所期のコーティング又は印刷結果に関しても利点を有し、特に湿潤及び/又は乾燥摩擦に対する高い機械的化学的耐久性によって際立っている。
【0027】
さらなる利点は、本発明による結合剤が水性のインク又はラッカー組成物の粘度を全く又はほとんど変えていないことにある。
【0028】
最後に、本発明による水性のインク又はラッカー組成物によって数多くの異なる色(色空間サイズ(Farbraumgroesse))を印刷し得ることが有利な点である。
【0029】
本発明の構成では、前記水性のインク又はラッカー組成物の粘度が、前記水性のインク又はラッカー組成物中の前記少なくとも1種の増粘剤もしくは前記少なくとも1種の会合性増粘剤の含有率が増大するのに伴って、特に少なくとも2種の上昇に伴って線形に上昇する。
【0030】
本発明のさらなる構成では、前記少なくとも1種の会合性増粘剤が、疎水性改質ポリアクリレート(HASE)、疎水性改質セルロースエーテル(HEC)、疎水性改質ポリアクリルアミド(HMPAM)、疎水性改質ポリエーテル(HMPE)、会合性ポリウレタン増粘剤、及び上記会合性増粘剤のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されている。
【0031】
前記疎水性改質ポリアクリレートは、アルカリ溶解性エマルジョンポリマーであると有利である。
【0032】
本発明のさらなる構成では、前記少なくとも1種の会合性増粘剤、特に疎水性改質ポリアクリレートがコポリマーであり、前記コポリマーが、アニオン性モノマー、疎水性モノマー、並びに非イオン性モノマーを重合、つまり共重合することにより形成されている。
【0033】
アニオン性モノマーは、コポリマー中の重合単位としてカルボキシレート基を有することができる。カルボキシレート基は少なくとも部分的にアンモニウムイオン及び/又はモノアルキルアンモニウムイオン及び/又はジアルキルアンモニウムイオン及び/又はトリアルキルアンモニウムイオンによって中和された状態で存在する。これにより、コポリマーの相溶性(Vertraeglichkeit)並びに混和性(Einarbeitkeit)を改善することができる。
【0034】
コポリマーを製造するのに適したアニオン性モノマーは、モノマーが塩基性水溶液中にある場合には負電荷を含有するモノマーである。
【0035】
本発明のさらなる構成では、前記アニオン性モノマーは、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、ホスホエチルメタクリレート、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、ナトリウムビニルスルホネート、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸、モノメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノブチルフマレート、無水マレイン酸、及び上記アニオン性モノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されている。
【0036】
アニオン性モノマーはさらに重合単位として、コポリマーの総重量を基準として5重量%~75重量%、特に10重量%~60重量%、有利には20重量%~50重量%の含有率を有することができる。
【0037】
本発明のさらなる構成では、前記疎水性モノマーが、界面活性エステル、C8-C30-アルキルフェノキシ(エチレンオキシ)6-100-エチルアクリレート、C8-C30-アルキルフェノキシ(エチレンオキシ)6-100-エチルメタクリレート、C8-C30-アルコキシ(エチレンオキシ)6-50-エチルアクリレート、C8-C30-アルコキシ(エチレンオキシ)6-50-エチルメタクリレート、C8-C30-アルキル-フェノキシエチルアクリレート、C8-C30-アルキル-フェノキシエチルメタクリレート、C8-C30-アルコキシエチルアクリレート、C8-C30-アルコキシエチルメタクリレート、C18H37(EO)20-アクリレート、C18H37(EO)20-メタクリレート、C20H25(EO)23-アクリレート、C20H25(EO)23-メタクリレート、及び上記疎水性モノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されている。
【0038】
疎水性モノマーはさらに重合単位として、コポリマーの総重量を基準として1重量%~20重量%、特に1重量%~15重量%、有利には1重量%~10重量%の含有率を有することができる。
【0039】
本発明のさらなる構成では、非イオン性モノマーは、水溶液中に正又は負の電荷を含有していないモノマーである。有利には、非イオン性モノマーは、炭素原子数が7以下の炭素鎖を有する。
【0040】
有利には、非イオン性モノマーは、アクリル酸のC1~C7-アルキルエステル、メタクリル酸のC1~C7-アルキルエステル、アクリル酸のC2~C7-ヒドロキシアルキルエステル、メタクリル酸のC2~C7-ヒドロキシアルキルエステル、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルメタクリレート、スチロール、ビニルトルエン、t-ブチルスチロール、イソプロピルスチロール、p-クロロスチロール、ビニルアセテート、ビニルブチレート、ビニルカプロレート、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン、塩化ビニル、塩化ビニリデン、及び上記非イオン性モノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されている。
【0041】
非イオン性モノマーはさらに重合単位として、コポリマーの総重量を基準として30重量%~75重量%、特に35重量%~70重量%、有利には40重量%~65重量%の含有率を有することができる。
【0042】
あるいは、前記少なくとも1種の会合性増粘剤もしくは疎水性改質ポリアクリレートは、「BYK LP-R21675」という名称のもとに商業的に入手可能な会合性増粘剤であると、有利であり得る。
【0043】
本発明のさらなる構成では、前記少なくとも1種の結合剤は、モル重量が≧10,000g/mol、特に≧10,000g/mol~≦1,000,000g/mol、有利には≧10,000g/mol~≦200,000g/mol、特に有利には≧10,000g/mol~≦45,000g/mol、特に≧25,000g/mol~≦35,000g/molのポリアクリレートである。
【0044】
本発明のさらなる構成では、前記少なくとも1種の結合剤は、ポリアクリレート-コポリマー、特にポリアクリレート-ブロックコポリマーである。有利には、前記少なくとも1種の結合剤は、前記アクリル酸のエステル(ポリアクリル酸エステル)と少なくとも1種のコモノマーとから成るポリアクリレートもしくはポリアクリレート-コポリマーである。前記アクリル酸の前記エステルは有利には、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n-ブチルアクリレート、イソ-ブチルアクリレート、tert-ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベンジルアクリレート、及び前記アクリル酸の上記エステルのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されている。前記コモノマーは有利には、メタクリル酸、メチルメタクリレート、ブチルアクリレート、アクリルアミド、スチロール、アクリロニトリル、ビニルアセテート、ビニルアルコール、ウレタン、及び上記コモノマーのうちの少なくとも2種の組み合わせから成る群から選択されている。
【0045】
有利には、前記少なくとも1種の結合剤は、「Joncryl 538」という名称のもとに商業的に入手可能な結合剤である。これは、モル重量≧200,000g/mol、粘度(25℃、ブルックフィールド)250mPas、pH値7.7、密度(25℃)1.05g/cm3、並びにガラス転移温度(DSC)64℃のポリアクリレートである。
【0046】
前記少なくとも1種の結合剤の関連において上述したポリウレタンは、例えばNeoRez R-650の名称で商業的に入手可能なポリウレタンであってよい。この代わりに又は組み合わせにおいて、ポリウレタンは、Takelac WSシリーズのポリウレタン、例えば「Takelac WS-4022」の名称のもとで商業的に入手可能なポリウレタンであってよい。この代わりに又は組み合わせにおいて、ポリウレタンは、Takelac Wシリーズのポリウレタン、例えば「Takelac WS-5661」の名称のもとで商業的に入手可能なポリウレタンであってよい。
【0047】
前記少なくとも1種の結合剤の関連において上述したウレタンアクリレートは、例えばNeoPac E-200の名称で商業的に入手可能なウレタンアクリレートであってよい。
【0048】
本発明のさらなる構成では、前記水性のインク又はラッカー組成物の、前記少なくとも1種の結合剤と前記少なくとも1種の増粘剤もしくは前記少なくとも1種の会合性増粘剤との比が、前記水性のインク又はラッカー組成物中に含有される、前記少なくとも1種の結合剤及び前記少なくとも1種の増粘剤(もしくは前記少なくとも1種の会合性増粘剤)の固体含量を一緒に基準として、少なくとも5:1、特に5:1~20:1、特に5:1~15:1、有利には5:1~10:1である。
【0049】
有利には、前記水性のインク又はラッカー組成物は本発明による増粘剤もしくは会合性増粘剤の他に、さらなる増粘剤を有してはいない。換言すれば、本発明による少なくとも1種の増粘剤もしくは少なくとも1種の会合性増粘剤が、水性のインク又はラッカー組成物の唯一の増粘剤であると有利である。
【0050】
さらに、前記水性のインク又はラッカー組成物は本発明による結合剤の他に、さらなる結合剤を有してはいないことが有利である。換言すれば、本発明による少なくとも1種の結合剤が、水性のインク又はラッカー組成物の唯一の結合剤であると有利である。
【0051】
前段落に記載された増粘剤並びに結合剤を使用すると、本発明の利点が特に強く効力を発揮するようになる。
【0052】
さらに、前記水性のインク又はラッカー組成物は全体的に、前記水性のインク又はラッカー組成物の総重量を基準として<12重量%、特に3重量%~10重量%、有利には4重量%~9重量%の固形分含有率を有することができる。特にこの段落に記載された固形分含有率の利点は、水性のインク又はラッカー組成物の所望の特性を特に印刷ヘッドにおける加工可能性に関しても、湿潤及び/又は乾燥摩擦に対する耐久性に関しても、極度に損なうことがないことである。なるほど、高い固形分含有率は原理的には耐久性に関しては有利に作用するものの、水性のインク又はラッカー組成物の加工可能性に対しては不都合に作用する。逆に、低い固形分含有率は、加工可能性に関しては有利ではあるものの、インク又はラッカー組成物の耐久性に関しては不都合である。
【0053】
有利には、前記少なくとも1種の増粘剤もしくは前記少なくとも1種の会合性増粘剤の含有率は、前記水性のインク又はラッカー組成物の総重量を基準として、0.01重量%~0.5重量%、特に0.03重量%~0.35重量%、有利には0.06重量%~0.30重量%である。特に、この段落に記載された増粘剤含有率の利点は、これにより水性のインク又はラッカー組成物の所望の特性を特に印刷ヘッドにおける加工可能性に関して、且つ/又は湿潤及び/又は乾燥摩擦に対する耐久性に関して、全く又はほとんど損なうことがないことである。
【0054】
前記少なくとも1種の結合剤の含有率は有利には、前記水性のインク又はラッカー組成物の総重量を基準として、0.1重量%~10重量%、特に1重量%~5重量%、有利には1.1重量%~4.4重量%である。特に、この段落に記載された結合剤含有率は、水性のインク又はラッカー組成物の所望の特性を特に印刷ヘッドにおける加工可能性に関しても、湿潤及び/又は乾燥摩擦に対する耐久性に関しても、極度には損なわないようにするために有利であることが判っている。なるほど、高い結合剤含有率はインク又はラッカー組成物の耐久性に関しては有利ではあるものの、インク又はラッカー組成物の加工可能性に対しては不都合に作用する。逆に、低い結合剤含有率は、加工可能性に関しては有利ではあるものの、インク又はラッカー組成物の耐久性に関しては不都合である。
【0055】
本発明のさらなる構成では、前記少なくとも1種の増粘剤もしくは前記少なくとも1種の会合性増粘剤及び前記少なくとも1種の結合剤は一緒に、前記水性のインク又はラッカー組成物の総重量を基準として、0.1重量%~10重量%、特に1重量%~5.5重量%、有利には1.1重量%~4.6重量%の含有率を有する。特に、この段落に開示された前記少なくとも1種の増粘剤及び前記少なくとも1種の結合剤の総含有率は、特に印刷ヘッドにおける加工可能性に関する、且つ/又は湿潤及び/又は乾燥摩擦に対する耐久性に関する、水性のインク又はラッカー組成物の所望の特性の損失を阻止する又は実質的に阻止するために、有利であることが判っている。
【0056】
さらに、前記少なくとも1種の増粘剤もしくは前記少なくとも1種の会合性増粘剤は、平均粒径が0.01μm~1μm、特に0.02μm~0.5μm、有利には0.05μm~0.2μmであってよい。
【0057】
前記少なくとも1種の結合剤は、平均粒径が0.01μm~1μm、特に0.02μm~0.5μm、有利には0.05μm~0.2μmであってよい。
【0058】
さらに、前記水性のインク又はラッカー組成物は、0.005~0.35、特に0.01~0.3、有利には0.014~0.13の、前記少なくとも1種の結合剤に対する前記少なくとも1種の増粘剤もしくは前記少なくとも1種の会合性増粘剤の重量比を有することができる。これにより、水性のインク又はラッカー組成物の貯蔵安定性を特に有利に高めることができる。さらに、このようなインク又はラッカー組成物によって、乾燥済の印刷物のできる限り良好な機械的化学的耐久性を達成することができる。
【0059】
前記少なくとも1種の有機溶剤の蒸発数(Verdunstungszahl)は<5,000、特に<4,000、有利には<2,000である。溶剤混合物の場合、(平均)蒸発数は<2,000であることが好ましい。
【0060】
「蒸発数(Verdunstungszahl)」という表現は、本発明の意味において、前記少なくとも1種の有機溶剤の揮発性(「Fluechtigkeit」又は「Volatilitaet」)と理解されるべきである。前記少なくとも1種の有機溶剤の蒸発数を検出するためには、DIN 53170によれば、前記少なくとも1種の有機溶剤が完全に蒸発する時間が、ジエチルエーテル(易揮発性基準物質として)が蒸発するのに必要とする時間と相関させられる。高い蒸発数は比較的低速の蒸発、つまり僅かな揮発性を意味するのに対して、小さな蒸発数は急速な蒸発、つまり比較的高い揮発性を意味する。
【0061】
さらに、前記1種の有機溶剤はこのようなものとして25℃で粘度が>3.5mPas、特に4mPas~15mPas、有利には5mPas~10mPasであってよい。
【0062】
本発明のさらなる構成では、前記少なくとも1種の有機溶剤が、3-メチル-3-メトキシブタノール(MMB)、メトキシブタノール(MB)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(MP)、グリコールエーテル、1-(2-ヒドロキシエチル)-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)、N-エチルピロリドン(NEP)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、DMSO、ヘキサン-1,6-ジオール、ペンタン-1,5-ジオール、2-ピロリドン、グリセリン、及び上記有機溶剤のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されている。この段落に記載された有機溶剤は、前記水性のインク又はラッカー組成物の釣り合いが取れた乾燥時間を得ることに関して、そして基体のコーティング又は印刷に適した膜形成に関して、特に有利であることが判っている。
【0063】
本発明のさらなる構成では、前記少なくとも1種の有機溶剤が、前記水性のインク又はラッカー組成物の総重量を基準として、≦20重量%、特に10重量%~20重量%、有利には13重量%~18重量%の含有率を有している。
【0064】
さらに、前記水が、前記水性のインク又はラッカー組成物の総重量を基準として、前記少なくとも1種の有機溶剤よりも高い含有率を有していると有利である。
【0065】
本発明のさらなる構成では、前記水性のインク又はラッカー組成物が、前記水性のインク又はラッカー組成物の総重量を基準として、≧50重量%、特に>60重量%、有利には>70重量%の水含有率を有している。
【0066】
前記水性のインク又はラッカー組成物はさらに、前記水性のインク又はラッカー組成物の総重量を基準として、20℃で、そして<12重量%、特に3重量%~10重量%、好ましくは4重量%~9重量%の総固形分含有率において、1mPas~40mPas、特に2mPas~<30mPas、有利には4mPas~15mPasの粘度を有することができる。
【0067】
有利には、前記水性のインク又はラッカー組成物はさらに、特に直接染料、酸染料、反応染料、及び上記染料のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択された少なくとも1種の染料、及び/又は、特に無機顔料、有機顔料、高分子中空球体顔料のような中空球体顔料、被覆アルミニウム顔料のようなアルミニウム顔料、及び上記顔料のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択された少なくとも1種の顔料を有している。
【0068】
直接染料及び/又は酸染料及び/又は反応染料は、リアクティブ・レッド23、リアクティブ・レッド180、リアクティブ・イエロー37、ダイレクト・ブルー86、ダイレクト・ブルー199、ダイレクト・レッド9、ダイレクト・レッド227、ダイレクト・イエロー86、ダイレクト・イエロー132、ダイレクト・イエロー142、ダイレクト・ブラック168、アシッド・レッド131、アシッド・レッド274、アシッド・ブルー198、アシッド・イエロー23、アシッド・ブラック194、及び上記の直接染料及び/又は酸染料及び/又は反応染料のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されていてよい。
【0069】
無機顔料は特に、二酸化チタン、カーボンブラック、ビスマス顔料、酸化物、水酸化物、鉄シアンブルー、ウルトラマリン、カドミウム顔料、クロム酸塩顔料、例えばクロムイエロー、クロムグリーン又はモリブデン酸塩、酸化鉄顔料、酸化クロム、混合相酸化物顔料、例えばリンマングリーン、及び上記無機顔料のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されていてよい。有機顔料は、特にキナクリドンを基剤とする顔料、イソインドリンを基剤とする顔料、イソインドリノンを基剤とする顔料、フタロシアニン基剤とする顔料、ベンズイミダゾールを基剤とする顔料、アゾ顔料、モノアゾ顔料、ジアゾ顔料、多環式顔料、及び上記有機顔料のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から選択されていてよい。
【0070】
被覆アルミニウム顔料は例えばリン含有の、そして特にフッ素化合物無しの被覆体を有することができる。
【0071】
被覆アルミニウム顔料を使用することによって、メタリック効果を有する水性のインク又はラッカー組成物を提供し得るので特に有利である。
【0072】
前記少なくとも1種の染料及び/又は前記少なくとも1種の顔料はさらに、前記水性のインク又はラッカー組成物の総重量を基準として、0重量%~15重量%、特に0.1重量%~15重量%、特に2重量%~10重量%、有利には2.5重量%~7重量%の含有率を有することができる。
【0073】
本発明のさらなる構成では、水性のラッカー組成物は無顔料及び/又は無染料、特に無染料である。
【0074】
前記水性のインク又はラッカー組成物はさらに、少なくとも1種のpH調節剤、少なくとも1種の殺生物剤、少なくとも1種の湿潤剤、少なくとも1種の消泡剤、少なくとも1種の保存剤、少なくとも1種の成膜補助剤、及び上記補助物質のうちの少なくとも2種の混合物から成る群から特に選択された少なくとも1種の添加剤を有することができる。
【0075】
第2の態様によれば、本発明は、特に第1発明態様に基づく水性のインク又はラッカー組成物を製造する方法に関する。方法は以下の工程、すなわち、
a) 水と、任意には少なくとも1種の有機溶剤とを用意し、そして
b) 少なくとも1種の結合剤を添加し、そして少なくとも1種の会合性増粘剤の形態を成す少なくとも1種の増粘剤を添加する
工程を有する。
【0076】
有利には、水は工程a)の実施時に脱イオン水の形態で用意される。
【0077】
さらに、工程b)の実施時に、先ず少なくとも1種の結合剤を、続いて少なくとも1種の増粘剤を添加すると有利であり得る。
【0078】
有利には、前記少なくとも1種の結合剤は工程b)の実施時に、少なくとも1種の有機溶剤を含有する分散体の成分として添加され、且つ/又は前記少なくとも1種の増粘剤を溶液の成分として添加される。前記少なくとも1種の結合剤は、前記水性のインク又はラッカー組成物の総重量を基準として、0.1重量%~10重量%、特に1重量%~5.5重量%、有利には1.15重量%~4.6重量%の含有率を有する。前記少なくとも1種の増粘剤は、前記水性のインク又はラッカー組成物の総重量を基準として、0.1重量%~0.5重量%、特に0.03重量%~0.35重量%、有利には0.06重量%~0.30重量%の含有率を有することができる。
【0079】
方法はさらに工程a)と工程b)との間に、pH調節剤を添加する工程ab)を有することができる。
【0080】
さらに、方法は、少なくとも1種の添加剤、例えば少なくとも1種の湿潤剤及び/又は少なくとも1種のpH調節剤及び/又は少なくとも1種の保存剤及び/又は少なくとも1種の消泡剤及び/又は少なくとも1種の成膜補助剤及び/又は少なくとも1種の(さらなる)有機溶剤及び/又は少なくとも1種の着色剤、特に少なくとも1種の染料及び/又は少なくとも1種の顔料を添加する工程c)を有することができる。有利には、工程c)の実施時に、先ず少なくとも1種のさらなる有機溶剤を、そして続いて少なくとも1種の着色剤、特に少なくとも1種の染料及び/又は少なくとも1種の顔料を添加する。
【0081】
方法はさらに、前記少なくとも1種の増粘剤をさらに添加する工程d)を有することができる。これにより、水性のインク又はラッカー組成物の最終的な粘度調節を達成し得るので特に有利である。
【0082】
方法のさらなる特徴及び利点に関しては、全体的に前述の説明が参照される。特に少なくとも1種の増粘剤、少なくとも1種の結合剤、少なくとも1種の添加剤、並びに少なくとも1種の着色剤、特に少なくとも1種の染料及び/又は少なくとも1種の顔料に関してそこに記載された特徴及び利点は、第2の発明態様の方法にも意味の上で当てはまる。
【0083】
第3の態様によれば、本発明は、基体にコーティング又は印刷、特にデジタル印刷を施す方法であって、基体、特に基体の表面に、第1発明態様に基づく水性のインク又はラッカー組成物でコーティング又は印刷、特にデジタル印刷を施す、方法に関する。
【0084】
「デジタル印刷」という表現は、本発明の意味において、静的な印刷版(Druckform)を利用することなしに、印刷画像がコンピュータのデータ又はデータ流から印刷機械へ直接に伝送される、印刷法と理解されるべきである。
【0085】
有利には、水性インク組成物は基体上、特に基体の表面上へインクジェット印刷によって転写される。インクジェット印刷(Tintenstrahldruck)(英語inkjet printing)は、液状インクの小さな液滴が生成されて対応基体上へ被着される印刷法である。一方では、連続的なインク流(連続インクジェット、CIJ)を生成することができ、あるいは他方では、必要時にのみ生成されて基体上に転写される個別の液滴の不連続な生成(ドロップ・オン・デマンド、DOD)も可能である。
【0086】
さらに、水性のインク又はラッカー組成物はシングル・パス印刷によって基体、特に基体の表面上へ被着されると有利であり得る。シングル・パス印刷は、非可動式の印刷ヘッドが印刷幅全体にわたって配置されており、被覆又は印刷しようとする基体が印刷ヘッドの下方を通過案内される印刷法である。有利には、水性のインク又はラッカー組成物は一回の通過(パス)で基体、特に基体の表面上へ被着される。シングル・パス印刷の利点は、高い印刷速度、そして特に製造コストの節減にある。
【0087】
方法のさらなる特徴及び利点に関しては、全体的に前述の説明が参照される。特に水性のインク又はラッカー組成物に関してそこに記載された特徴及び利点は、第3の発明態様の方法にも意味の上で当てはまる。
【0088】
第4の態様によれば、本発明は、少なくとも部分的に、特に部分的にのみ、又は完全に、第1の発明態様に基づく水性のインク又はラッカー組成物でコーティング又は印刷、特にデジタル印刷が施されている、基体に関する。
【0089】
基体は例えば、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、ポリプロピレン、ポリエチレン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチロール-コポリマー、ポリスチロール、上記材料のうちの少なくとも2種のコポリマー、及び、上記材料のうちの少なくとも2種のブレンド、すなわち混合物から成る群から選択された材料を有するか、又は材料から成っていてよい。
【0090】
基体はフォイル、特に食料品包装フォイルであると有利である。あるいは、基体は例えば紙、厚紙包装材料、又は壁紙であってもよい。
【0091】
基体のさらなる特徴及び利点に関しては、第1及び第2の発明態様の枠内で為された説明が全体的に参照される。特に水性のインク又はラッカー組成物に関してそこに記載された特徴及び利点は、第4の発明態様の基体にも意味の上で当てはまる。
【0092】
第5の態様によれば、本発明は第1の発明態様に基づく1種又は2種以上のインク組成物を有するインクセットであって、前記インク組成物が少なくとも着色剤、特に染料及び/又は顔料に関して、互いに異なっている、インクセットに関する。
【0093】
インクセットのさらなる特徴及び利点に関しては、前記記述の枠内で為された説明が全体的に参照される。特に水性のインク又はラッカー組成物に関して、例えば使用し得る染料及び/又は顔料の点においてそこに記載された特徴及び利点は、第5の発明態様に基づくインクセットにも意味の上で当てはまる。
【0094】
第6の態様によれば、本発明は、基体にコーティング及び/又は印刷、特にデジタル印刷を施すための、第1の発明態様に基づく水性のインク又はラッカー組成物の使用に関する。
【0095】
使用のさらなる特徴及び利点に関しては、前記記述の枠内で為された説明が全体的に参照される。特に水性のインク又はラッカー組成物に関してそこに記載された特徴及び利点は、第6の発明態様に基づく使用にも意味の上で当てはまる。
【0096】
実施例の下記説明から、本発明のさらなる特徴及び利点が明らかになる。個々の特徴はそれぞれ個別に、又は互いの組み合わせの形で実現することができる。実施例は本発明をさらに説明するためのものにすぎず、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0097】
実施例部分
1.試験方法
1.1 印刷安定性
適宜の粘度を有するインクを標準パラメータで、これに適した印刷ヘッド上で、規定の、実用上慣例の周波数及び温度を用いて、20秒間にわたって印刷した。前後にノズル試験を行うことにより、印刷安定性の評価を可能にした。
【0098】
1.2 始動挙動
適宜の粘度を有するインクを、これに適した印刷ヘッドによって短時間印刷した(ノズル試験)。室温における30分間又は60分間の静止後、ノズル試験を繰り返し、乾燥させたノズルを検査した。
【0099】
1.3 貯蔵安定性
インクを50℃で4週間貯蔵した。粘度、表面張力、及び平均粒径は10%を超えて変化しているべきではない。
【0100】
1.4 化学的耐久性
スポンジを備えたクリーニングロッドを試験液で浸し、そして試験インクの乾燥させたドクター均し層(Rakelabzug)(12μm)上で擦った。下地が露出されるまで、往復摩擦行程の数を記録した。
【0101】
2. 本発明によるインク組成物の実施例
脱イオン水 58.05%
モノエタノールアミン(pH調節剤) 0.20%
Joncryl 538 (結合剤) 2.5%(1.15%の固体に相当)
BYK-LP-R21675 (増粘剤) 1.55%(0.23%の固体に相当)
エチルジグリコール(乾燥遅延剤) 15%
界面活性剤混合物 1.1%
殺生物剤 0.1%
消泡剤 0.1%
顔料分散体 21.4%
インクを印刷ヘッドDimatix Samba G3L上で24kHz及び32℃で印刷した。30分間の運転後に、ノズルの故障は確認できなかった(Dropwatcher上で検出)。
【0102】
始動挙動:上記印刷ヘッドを印刷試験から40分後に新たに始動させた。欠陥のあるノズルは確認できなかった。
貯蔵安定性:インクは1ヶ月にわたって50℃において安定であった(粘度、表面張力、粒径の変化は<10%)。
化学的耐久性:イソプロパノールを含浸させたスポンジで擦った:100回
【0103】
3. 本発明によるインク組成物のさらなる実施例
脱イオン水 48.03%
モノエタノールアミン(pH調節剤) 0.15%
Joncryl 538 (結合剤) 8.7%(4.0%の固体に相当)
BYK LP-R21675 (増粘剤) 2.5%(0.38%の固体に相当)
2-ピロリドン(乾燥遅延剤) 5.0%
3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール(乾燥遅延剤) 7.0%
ブチルジグリコール(乾燥遅延剤) 6.0%
界面活性剤混合物 1.12%
殺生物剤 0.1%
顔料分散体 21.4%
インクを印刷ヘッドKonica-Minolta 1024i MAE上で20kHz及び26℃で印刷した。20秒間の運転後、ノズルの故障は観察できなかった。
【0104】
始動挙動:上記印刷ヘッドを印刷試験から60分後に新たに始動させた。欠陥のあるノズルは確認できなかった。
貯蔵安定性:インクは1ヶ月にわたって50℃において、そして15ヶ月にわたって室温において安定であった(粘度、表面張力、粒径の変化は<10%)。
化学的耐久性:イソプロパノールを含浸させたスポンジで擦った:100回
【0105】
4 反例:本発明に基づかない製剤(粘度9.5mPas、20℃、511 1/s)
脱イオン水 46.28%
モノエタノールアミン(pH調節剤) 0.1%
Joncryl 538 (結合剤) 8.7%(4.0%の固体に相当)
Tafigel PUR 55 (増粘剤) 4.3%(0.86%の固体に相当)
2-ピロリドン(乾燥遅延剤) 5.0%
3-メチル-3-メトキシ-1-ブタノール(乾燥遅延剤) 7.0%
ブチルジグリコール(乾燥遅延剤) 6.0%
界面活性剤混合物 1.12%
殺生物剤 0.1%
顔料分散体 21.4%
インクを印刷ヘッドKonica-Minolta 1024i MAE上で20kHz及び26℃で印刷した。20秒間の運転後、ノズルの90%が故障していた。
【0106】
化学的耐久性:イソプロパノールを含浸させたスポンジで擦った:5回
【0107】
5 さらなる反例:本発明に基づかない製剤
脱イオン水 37.8%
モノエタノールアミン(pH調節剤) 0.1%
Joncryl 538 (結合剤) 12.9%(5.9%の固体に相当)
Tego Visko Plus 3010 (増粘剤) 10.0% (6%の固体に相当)
エチルジグリコール(乾燥遅延剤) 15.0%
界面活性剤混合物 1.1%
殺生物剤 0.1%
顔料分散体 22.9%
目標粘度8.03mPas(25℃、511 1/s)は、増粘剤含有率6%(固体)によって初めて達成できた。
インクを印刷ヘッドKonica-Minolta 1024i MAE上で20kHz及び26℃で印刷した。20秒間の運転後、事実上完全なノズル故障を記録することができた。
【0108】
化学的耐久性:イソプロパノールを含浸させたスポンジで擦った:2回