(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】自動ドア、光学センサの診断支援装置、光学センサ、自動ドアの診断方法、光学センサの診断支援方法、自動ドアの診断プログラム、光学センサの診断支援プログラム
(51)【国際特許分類】
E05F 15/74 20150101AFI20241121BHJP
G01V 8/20 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E05F15/74
G01V8/20 N
(21)【出願番号】P 2020192778
(22)【出願日】2020-11-19
【審査請求日】2023-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】503405689
【氏名又は名称】ナブテスコ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】清政 良有
(72)【発明者】
【氏名】来海 大輔
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-061320(JP,A)
【文献】特開2015-017990(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0255154(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05F 15/00-15/79
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、その反射光を受光する少なくとも一つの受光素子を備え、当該受光素子での受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサと、
前記受光素子での受光情報に基づき、前記複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定部と、
前記異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を、前記異常セグメントの受光情報と比較し、その結果が所定値未満の場合に、前記周辺セグメント
に異常
があると診断する周辺セグメント診断部と、
前記周辺セグメント
に異常が
あると診断されなかった場合、前記異常セグメントに投光する前記投光素子、その反射光を受光する前記受光素子の少なくとも一方に異常があると診断する光学センサ診断部と
を備える自動ドア。
【請求項2】
前記投光素子は、複数の前記検知セグメントに同時に投光し、
前記異常セグメントと同一の投光素子を使用する同一投光素子セグメントの受光情報を、前記異常セグメントの受光情報と比較し、その結果が所定値未満の場合に、前記同一投光素子セグメント
に異常
があると診断する同一投光素子セグメント診断部を備え、
前記光学センサ診断部は、前記同一投光素子セグメント
に異常が
あると診断されなかった場合、前記異常セグメントの前記受光素子に異常があると診断し、前記同一投光素子セグメント
に異常が
あると診断された場合、前記異常セグメントの前記投光素子に異常があると診断する
請求項1に記載の自動ドア。
【請求項3】
前記投光素子は、隣接しない複数の前記検知セグメントに同時に投光する
請求項2に記載の自動ドア。
【請求項4】
前記受光素子は、複数の前記検知セグメントの反射光を同時に受光し、
前記異常セグメントと同一の受光素子を使用する同一受光素子セグメントの受光情報を、前記異常セグメントの受光情報と比較し、その結果が所定値未満の場合に、前記同一受光素子セグメント
に異常
があると診断する同一受光素子セグメント診断部を備え、
前記光学センサ診断部は、前記同一受光素子セグメント
に異常が
あると診断されなかった場合、前記異常セグメントの前記投光素子に異常があると診断し、前記同一受光素子セグメント
に異常が
あると診断された場合、前記異常セグメントの前記受光素子に異常があると診断する
請求項1から3のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項5】
前記受光素子は、隣接しない複数の前記検知セグメントの反射光を同時に受光する
請求項4に記載の自動ドア。
【請求項6】
前記光学センサ診断部が異常があると診断した前記投光素子または前記受光素子を使用する前記検知セグメントに基づく前記検知情報の生成を停止する検知情報生成停止部を備える
請求項1から5のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項7】
前記検知情報生成停止部は、所定の時間帯に前記検知情報の生成を停止する
請求項6に記載の自動ドア。
【請求項8】
前記検知情報生成停止部によって前記検知情報の生成が停止された場合、その旨を自動ドアの開閉駆動を行う制御部に報知する報知部を備える
請求項6または7に記載の自動ドア。
【請求項9】
前記光学センサ診断部による診断内容を記憶する記憶部を備える
請求項1から8のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項10】
前記光学センサ診断部による診断内容を提示する提示部を備える
請求項1から9のいずれかに記載の自動ドア。
【請求項11】
検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、その反射光を受光する少なくとも一つの受光素子を備え、当該受光素子での受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサの診断支援装置であって、
前記受光素子での受光情報に基づき、前記複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定部と、
前記異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を取得する周辺セグメント情報取得部と、
前記異常セグメントの受光情報と、前記周辺セグメントの受光情報を比較する比較部と
を備える診断支援装置。
【請求項12】
前記投光素子は、複数の前記検知セグメントに同時に投光し、
前記異常セグメントと同一の投光素子を使用する同一投光素子セグメントの受光情報を取得する同一投光素子セグメント情報取得部を備え、
前記比較部は、前記異常セグメントの受光情報と、前記同一投光素子セグメントの受光情報を比較する
請求項11に記載の診断支援装置。
【請求項13】
前記受光素子は、複数の前記検知セグメントの反射光を同時に受光し、
前記異常セグメントと同一の受光素子を使用する同一受光素子セグメントの受光情報を取得する同一受光素子セグメント情報取得部を備え、
前記比較部は、前記異常セグメントの受光情報と、前記同一受光素子セグメントの受光情報を比較する
請求項11または12に記載の診断支援装置。
【請求項14】
自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサであって、
検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、
前記複数の検知セグメントからの反射光を受光し、前記検知情報を生成する少なくとも一つの受光素子と、
前記受光素子での受光情報に基づき、前記複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定部と、
前記異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を、前記異常セグメントの受光情報と比較し、その結果が所定値未満の場合に、前記周辺セグメント
に異常
があると診断する周辺セグメント診断部と、
前記周辺セグメント
に異常が
あると診断されなかった場合、前記異常セグメントに投光する前記投光素子、その反射光を受光する前記受光素子の少なくとも一方に異常があると診断する光学センサ診断部と
を備える光学センサ。
【請求項15】
検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、その反射光を受光する少なくとも一つの受光素子を備え、当該受光素子での受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサを備える自動ドアの診断方法であって、
前記受光素子での受光情報に基づき、前記複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定ステップと、
前記異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を、前記異常セグメントの受光情報と比較し、その結果が所定値未満の場合に、前記周辺セグメント
に異常
があると診断する周辺セグメント診断ステップと、
前記周辺セグメント
に異常が
あると診断されなかった場合、前記異常セグメントに投光する前記投光素子、その反射光を受光する前記受光素子の少なくとも一方に異常があると診断する光学センサ診断ステップと
を備える自動ドアの診断方法。
【請求項16】
検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、その反射光を受光する少なくとも一つの受光素子を備え、当該受光素子での受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサの診断支援方法であって、
前記受光素子での受光情報に基づき、前記複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定ステップと、
前記異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を取得する周辺セグメント情報取得ステップと、
前記異常セグメントの受光情報と、前記周辺セグメントの受光情報を比較する比較ステップと
を備える診断支援方法。
【請求項17】
検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、その反射光を受光する少なくとも一つの受光素子を備え、当該受光素子での受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサを備える自動ドアの診断プログラムであって、
前記受光素子での受光情報に基づき、前記複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定ステップと、
前記異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を、前記異常セグメントの受光情報と比較し、その結果が所定値未満の場合に、前記周辺セグメント
に異常
があると診断する周辺セグメント診断ステップと、
前記周辺セグメント
に異常が
あると診断されなかった場合、前記異常セグメントに投光する前記投光素子、その反射光を受光する前記受光素子の少なくとも一方に異常があると診断する光学センサ診断ステップと
をコンピュータに実行させる自動ドアの診断プログラム。
【請求項18】
検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、その反射光を受光する少なくとも一つの受光素子を備え、当該受光素子での受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサの診断支援プログラムであって、
前記受光素子での受光情報に基づき、前記複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定ステップと、
前記異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を取得する周辺セグメント情報取得ステップと、
前記異常セグメントの受光情報と、前記周辺セグメントの受光情報を比較する比較ステップと
をコンピュータに実行させる診断支援プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動ドアの診断技術、特に光学センサの診断支援技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気等の動力で自動的に開閉する自動ドアにおいて、通行者の検知精度を高めるため、自動ドア付近の検知エリアを複数の検知セグメントに分割し、その検知セグメント毎に光学センサの投受光による検知を行う技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者は、以上のように複数の検知セグメントが設けられる自動ドアの課題を独自に検討し、各検知セグメントに生じうる異常の類型について次の知見を得るに至った。第一の類型の異常は、各検知セグメントに使用される投光素子または受光素子の故障等に基づくものである。第二の類型の異常は、外乱等の外部環境に基づくものである。第一の類型では修理等の早急な保守対応が求められるが、第二の類型では投光素子および受光素子に異常がないため早急な保守対応は不要である。しかしながら、従来の技術では、これらの類型を区別することができず、保守対応が不要な第二の類型の異常を、保守対応が必要な第一の類型の異常と誤認し、無駄な保守対応をしてしまう恐れがあった。
【0005】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、光学センサを効果的に診断可能な自動ドア等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の自動ドアは、検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、その反射光を受光する少なくとも一つの受光素子を備え、当該受光素子での受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサと、受光素子での受光情報に基づき、複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定部と、異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を、異常セグメントの受光情報と比較し、その結果が所定値未満の場合に、周辺セグメントの異常を診断する周辺セグメント診断部と、周辺セグメントの異常が診断されなかった場合、異常セグメントに投光する投光素子、その反射光を受光する受光素子の少なくとも一方に異常があると診断する光学センサ診断部とを備える。
【0007】
本発明者の独自の検討の結果、上記の第二の類型の異常、すなわち外乱等の外部環境に基づく異常が生じる多くの場合、一定の範囲に含まれる複数の検知セグメントに同時に異常が現れることが判明した。例えば、何らかの外部環境要因で強い光線が検知エリアに照射された場合、それが一つの検知セグメントのみにピンポイントで照射されることは極めて稀で、大抵は一定範囲内の複数の検知セグメントに一斉に照射され、同時に異常を引き起こす。そこで、本態様の自動ドアでは、ある検知セグメントに異常が生じた場合、その周辺セグメントでの類似の異常の有無を受光情報の比較に基づき診断する。周辺セグメントも含めて異常が発生している場合は、上記の第二の類型の異常である可能性が高い。一方、周辺セグメントに異常が発生していない場合は、上記の第一の類型の異常、すなわち異常セグメントの投光素子または受光素子の異常の可能性が高い。
【0008】
本発明の別の態様は、診断支援装置である。この装置は、検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、その反射光を受光する少なくとも一つの受光素子を備え、当該受光素子での受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサの診断支援装置であって、受光素子での受光情報に基づき、複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定部と、異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を取得する周辺セグメント情報取得部と、異常セグメントの受光情報と、周辺セグメントの受光情報を比較する比較部とを備える。
【0009】
本発明のさらに別の態様は、光学センサである。この光学センサは、自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサであって、検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、複数の検知セグメントからの反射光を受光し、検知情報を生成する少なくとも一つの受光素子と、受光素子での受光情報に基づき、複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定部と、異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を、異常セグメントの受光情報と比較し、その結果が所定値未満の場合に、周辺セグメントの異常を診断する周辺セグメント診断部と、周辺セグメントの異常が診断されなかった場合、異常セグメントに投光する投光素子、その反射光を受光する受光素子の少なくとも一方に異常があると診断する光学センサ診断部とを備える。
【0010】
本発明のさらに別の態様は、自動ドアの診断方法である。この方法は、検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、その反射光を受光する少なくとも一つの受光素子を備え、当該受光素子での受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサを備える自動ドアの診断方法であって、受光素子での受光情報に基づき、複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定ステップと、異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を、異常セグメントの受光情報と比較し、その結果が所定値未満の場合に、周辺セグメントの異常を診断する周辺セグメント診断ステップと、周辺セグメントの異常が診断されなかった場合、異常セグメントに投光する投光素子、その反射光を受光する受光素子の少なくとも一方に異常があると診断する光学センサ診断ステップとを備える。
【0011】
本発明のさらに別の態様は、診断支援方法である。この方法は、検知エリアを構成する複数の検知セグメントに投光する少なくとも一つの投光素子と、その反射光を受光する少なくとも一つの受光素子を備え、当該受光素子での受光情報に基づき自動ドアの開閉駆動のための検知情報を生成する光学センサの診断支援方法であって、受光素子での受光情報に基づき、複数の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する異常セグメント特定ステップと、異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を取得する周辺セグメント情報取得ステップと、異常セグメントの受光情報と、周辺セグメントの受光情報を比較する比較ステップとを備える。
【0012】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、自動ドアの光学センサを効果的に診断できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図2】自動ドアの内外で相互に通信可能な各種の構成機器を模式的に示す図である。
【
図3】センサによる投光および受光の態様を模式的に示す図である。
【
図4】センサが投受光する検知エリアを模式的に示す図である。
【
図5】センサの診断支援装置の機能を表すブロック図である。
【
図6】センサの診断支援装置による診断の具体例を示す図である。
【
図7】センサの診断支援装置による診断処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
最初に、
図1および
図2を参照して、本発明の実施形態が適用される自動ドア100の概要を説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る自動ドア100を概略的に示す正面図である。自動ドア100は、開閉駆動される扉部10と、自動ドア100全体を制御するコントローラ20と、通行者を検知するセンサ30(起動センサ31、補助センサ32の総称)と、動力を発生させるドアエンジン40と、動力を扉部10に伝達する動力伝達部50とを主に備える。なお、以下の説明では、
図1における左右方向を水平方向とし、
図1における上下方向を鉛直方向とするが、自動ドア100は任意の姿勢で設置することができ、その設置方向が以下の例に限定されるものではない。
【0016】
扉部10は、それぞれ水平方向に可動に設けられる第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rと、第1の可動扉11Lおよび第2の可動扉11Rが開状態のときにそれぞれと重なる位置に設けられる第1の固定扉12Lと第2の固定扉12Rと、第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rの水平方向の動作をガイドするガイド機構13を備える。第1の可動扉11L、第2の可動扉11R、第1の固定扉12L、第2の固定扉12Rは、鉛直方向の寸法が水平方向の寸法よりも大きい縦長の矩形状に構成される。扉部10の開駆動時には、
図1で左側に示される第1の可動扉11Lが左方向に駆動され、
図1で右側に示される第2の可動扉11Rが右側に駆動される。また、扉部10の閉駆動時には、開駆動時とは逆に、第1の可動扉11Lが右方向に駆動され、第2の可動扉11Rが左方向に駆動される。なお、扉部10を構成する扉の数や形状は上記に限られず、設置場所のニーズに合わせて適宜設計可能である。また、同様に、扉部10の可動方向も水平方向に限られず、水平方向から傾斜した方向としてもよい。
【0017】
ガイド機構13は、走行レール131と、戸車132と、ガイドレール133と、振れ止め部134を備える。走行レール131は、可動扉11L、11Rの上方において、その可動域の全体に亘って水平方向に延伸する柱状のレール部材である。戸車132は、可動扉11L、11Rの上部にそれぞれ二つずつ設けられ、各可動扉11L、11Rを走行レール131に懸架する。各可動扉11L、11Rが水平方向に開閉駆動される際、戸車132が走行レール131を転動するため、円滑な開閉動作が可能となる。ガイドレール133は、可動扉11L、11Rの下方において、その可動域の全体に亘って水平方向に延伸する溝状のレール部材である。振れ止め部134は、可動扉11L、11Rの下部から張り出して溝状のガイドレール133に収まる。各可動扉11L、11Rが水平方向に開閉駆動される際、振れ止め部134がガイドレール133に沿って動くため、各可動扉11L、11Rの見込み方向(
図1の紙面に垂直な方向)の振動を抑制できる。
【0018】
なお、扉部10の開閉に関する各種のパラメータはコントローラ20で設定可能である。例えば、開閉速度、開閉強度、開口幅等を設定できる。開閉速度は、第1の可動扉11Lおよび第2の可動扉11Rの水平方向の速度であり、両扉の速度の方向は互いに逆向きである。両扉で速度の大きさ(速さ)は等しくするのが好適であるが、異なる速さとしてもよい。また、開閉速度は、通常開閉時とそれ以外の時で異なる値を設定してもよい。例えば、扉部10の通常の閉駆動中に、閉じる可動扉11L、11Rに通行者が挟まれるのを緊急回避するために開駆動に切り替えるいわゆる反転の場合、その開駆動時の可動扉11L、11Rの速度は、通常の開駆動時の速度と異なる値を設定してもよい。
【0019】
開閉強度は、可動扉11L、11Rの開閉時の力の大きさであり、後述するモータ42の発生トルク値で制御される。上記の開閉速度と同様に、基本的には可動扉11L、11Rで等しい開閉強度とするのが好適である。また、通常開閉時とそれ以外の時で異なる開閉強度を設定してもよい。開口幅は、扉部10が全開のときの第1の可動扉11Lと第2の可動扉11Rの水平方向の間隔である。
図1に示されるように、第1の可動扉11Lの全閉位置と全開位置の間の移動距離をW1、第2の可動扉11Rの全閉位置と全開位置の間の移動距離をW2とすれば、開口幅はW1+W2で表される。ここで、移動距離W1、W2は、自動ドア100の水平方向寸法に収まる範囲で個別に設定できる。
【0020】
図1には、センサ30の例として、光学センサとしての起動センサ31と、補助センサ32が設けられる。起動センサ31は、扉部10の上方の無目60の表面に設けられる光電センサである。起動センサ31は、赤外線等の光を床面に向けて投光する投光部と、床面からの反射光を受光する受光部を備える。通行者等の物体が自動ドア100に近づいて光を遮ると受光部の受光量が変化するため、物体を検知できる。このような起動センサ31での検知情報がコントローラ20に入力されると、ドアエンジン40の駆動により扉部10が開く。なお、起動センサ31は室内側(例えば
図1の紙面の表側)と室外側(例えば
図1の紙面の裏側)にそれぞれ設けられ、いずれの側から近づく通行者も検知できる。以下で両者を区別する必要がある場合は、それぞれ室内側起動センサ31、室外側起動センサ31と記載する。
【0021】
なお、起動センサ31は、マイクロ波等の電波や超音波の反射により通行者を検知する構成としてもよい。また、
図1で31Aとして示すように、可動扉11Lおよび11Rの少なくとも一方に設けられるタッチプレートが通行者によって押されることで、扉部10を駆動する構成としてもよい。また、観光施設やアミューズメントパーク等では、通行者の検知や操作に加えてまたは代えて、施設の係員の操作で扉部10を駆動する態様も想定される。このとき、施設の係員は、扉部10から離れた位置に設けられる操作盤や、自動ドア100と通信可能な操作端末で遠隔から扉部10を駆動できる。
【0022】
補助センサ32は、扉部10の第1の固定扉12Lと第2の固定扉12Rに設けられる光電センサである。補助センサ32は、第1の固定扉12Lおよび第2の固定扉12Rの一方に設けられる投光部と、他方に設けられる受光部を備える。投光部と受光部は床面から同じ高さに設けられ、投光部から水平方向に投光される赤外線等の光を受光部で受光する。扉部10が開いている状態で、その開口部を通行者が通過して光を遮ると受光部の受光量が変化するため、通行者を検知できる。補助センサ32の主な目的は閉保護であり、可動扉11L、11Rの閉動作中に補助センサ32が通行者を検知すると、コントローラ20は閉駆動を中止して開駆動に切り替える反転制御を行う。これにより、通行者が閉じる可動扉11L、11Rに挟まれるのを防止できる。なお、このような閉保護の制御において、補助センサ32と同様に光電センサで構成される起動センサ31の検知情報を併用することで、通行者の検知精度を高めて安全性を更に向上できる。
【0023】
なお、補助センサ32は、マイクロ波等の電波や超音波の反射により通行者を検知する構成としてもよい。また、補助センサ32は固定扉12L、12Rとは異なる場所に設けてもよい。例えば、起動センサ31と同様に無目60に設けてもよいし、自動ドア100近傍の天井に設置してもよい。このような補助センサ32を複数設ければ、コスト高にはなるものの、安全性が飛躍的に高まる。
【0024】
上記の起動センサ31および補助センサ32は、出力段に増幅器を備えており、各センサでの検知情報を、後段のコントローラ20で扱える所定のレベルまで増幅する。したがって、センサの検出強度が低い場合は増幅率が高くなり、センサの検出強度が大きい場合は増幅率が低くなる。このように、各センサの増幅率は各センサの検出強度を示すデータになっている。
【0025】
ドアエンジン40は、モータ駆動部41と、モータ42と、駆動プーリ43を備える。モータ駆動部41は、インテリジェントパワーモジュール(IPM)で構成され、コントローラ20の制御の下でモータ42を駆動する電圧ないし電流を発生させる。回転動力を発生させる動力源としてのモータ42は、各種の公知のモータとして構成できるが、本実施形態では、一例として、ホール素子を用いたエンコーダを備えるブラシレスモータとする。エンコーダで検出されたモータ42の回転子の位置がモータ駆動部41に入力され、それに応じた駆動電圧ないし駆動電流がモータ42に印加されることで、所望の回転動力が発生される。モータ42によって回転駆動される駆動プーリ43は、図示しない歯車機構等を介してモータ42の回転子と連結され、連動して回転する。
【0026】
動力伝達部50は、ドアエンジン40で発生された動力を扉部10に伝達し、可動扉11L、11Rを開閉駆動する。動力伝達部50は、動力伝達ベルト51、従動プーリ52、連結部材53を備える。動力伝達ベルト51は、内周面に多数の歯が形成された環状のタイミングベルトであり、
図1の右側において駆動プーリ43に巻き付けられ、
図1の左側において従動プーリ52に巻き付けられる。この状態において動力伝達ベルト51の水平方向の寸法は、駆動プーリ43と従動プーリ52の水平方向の距離に等しく、また可動扉11L、11Rの可動域の水平方向の寸法と同程度である。モータ42により駆動プーリ43が回転すると、動力伝達ベルト51を介して従動プーリ52が連動して回転する。
【0027】
連結部材53は、可動扉11L、11Rをそれぞれ動力伝達ベルト51に連結して、開閉駆動する。ここで、一方の可動扉は動力伝達ベルト51の上側に連結され、他方の可動扉は動力伝達ベルト51の下側に連結される。
図1の例では、動力伝達ベルト51が反時計回りに回転すると、第1の可動扉11Lが左側に移動し第2の可動扉11Rが右側に移動する開動作となり、動力伝達ベルト51が時計回りに回転すると、第1の可動扉11Lが右側に移動し第2の可動扉11Rが左側に移動する閉動作となる。
【0028】
以上のような構成の自動ドア100において、起動センサ31が通行者を検知すると、コントローラ20の制御の下、ドアエンジン40が反時計回りの回転動力を発生させ、扉部10を開駆動する。また、開駆動後、通行者が検知されない状態が所定時間継続した場合は、コントローラ20の制御の下、ドアエンジン40が時計回りの回転動力を発生させ、扉部10を閉駆動する。なお、閉駆動中に補助センサ32や起動センサ31が通行者を検知すると、コントローラ20が閉駆動から開駆動に切り替える反転制御を行う。
【0029】
図2は、自動ドア100の内外で相互に通信可能な各種の構成機器を模式的に示す。自動ドア100は、各構成機器が接続され、構成機器間のデータ通信を行うバス2を有する。バス2は、任意の通信規格、例えばCAN(Controller Area Network)に則って構成される。CANは、ホストコンピュータを介さずに構成機器が相互に通信できるように設計されており、自動ドアに限らず様々なシステムの制御情報の伝送に広く利用されている。バス2に接続された各構成機器は、バス2を介して他の構成機器に情報を送信でき、他の構成機器がバス2に送信した情報のうち自身に必要な情報を選択的に受信できる。
【0030】
図2には、バス2に接続される構成機器として、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32、操作盤33、認証装置34、電気錠コントローラ35、外部インターフェース36、表示装置37が例示され、いずれの構成機器も自動ドア100を構成する。なお、本図は、バス2に接続されうる構成機器を例示列挙したものであり、
図1に示されない構成機器も含まれている。また、実際の自動ドア100に設ける構成機器は目的に応じて選択でき、図示される全ての構成機器を設ける必要はない。例えば、通行者の検知や操作のみで扉部10を駆動する自動ドア100においては、係員等の操作を行うための操作盤33は設ける必要はない。逆に、観光施設やアミューズメントパーク等で、施設の係員の操作のみで扉部10を駆動する自動ドア100においては、通行者の検知や操作のための起動センサ31やタッチプレート31Aを設ける必要はない。ただし、自動ドア100全体を制御するコントローラ20は、多くの場合で必須の構成機器である。
【0031】
図示される構成機器のうち、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32については前述したので説明を省略する。
【0032】
操作盤33は、観光施設やアミューズメントパーク等で施設の係員が操作し、扉部10を駆動する制御盤である。例えば、利用者が所定のタイミングで異なる部屋を移動するアトラクションにおいては、その移動タイミングに合わせて係員が操作盤33を操作し、各部屋の扉部10を開閉制御することで利用者が円滑に移動できる。なお、操作盤33は、施設に固定的に設置されたものでもよいし、係員が携帯できるものでもよい。また、後述する外部インターフェース36を介してコントローラ20等と通信可能なタブレットやスマートフォン等の通信端末に操作盤33の機能を実装してもよい。
【0033】
認証装置34は、集合住宅やオフィスの入口など、高いレベルのセキュリティが要求される場所で、通行を許可すべき通行者を認証するものである。認証の方法は、扉部10近傍に設けられるキーパッドの入力によるパスワード認証や、指紋等の通行者の生体情報を用いた生体認証などがある。認証装置34での認証が成功すると、コントローラ20が扉部10を開駆動し、通行者は自動ドア100を通行できる。認証装置34での認証が失敗すると、たとえ起動センサ31が通行者を検知していたとしても、コントローラ20は扉部10を開駆動せず、未認証の通行者の不正な通行を阻止できる。
【0034】
電気錠コントローラ35は、自動ドア100を施錠する電気錠35Aを制御する。電気錠35Aは、錠を施錠位置と解錠位置の間で駆動する錠駆動手段として、例えば通電状態に応じた駆動力を発生するソレノイドを備える。
【0035】
外部インターフェース36は、有線または無線の接続により、自動ドア100外の各種の外部機器36Aとの間で信号を入出力する。外部機器36Aとしては、自動ドア100の設置や保守点検のために現場に赴いた作業員が使用する調整器等の作業端末や、インターネット等の公衆情報通信網を介して接続された遠隔のサーバやコンピュータが例示される。このような外部機器36Aの入力操作により、自動ドア100の各構成機器の制御やパラメータ調整等の各種設定を行える。また、外部機器36Aは、自動ドア100の各構成機器や、それらに付随して設けられるメモリから情報を読み取り、状態診断や保守点検を行える。なお、上述の通り、自動ドア100内のバス2はCAN規格に則って構成されるが、外部機器36Aと外部インターフェース36の間の通信が、それとは別の規格、例えば、Bluetooth(登録商標)やWi-Fi(登録商標)で行われる場合、外部インターフェース36は一方の規格に基づく信号を他方の規格に基づく信号に変換するプロトコル変換器として機能する。
【0036】
表示装置37は、他の構成機器から受信した情報に基づいて自動ドア100の稼働状況等を表示する表示部である。この表示装置37がタッチパネル等の入力機能を備える場合は、表示画面上のタッチ操作により、自動ドア100の各構成機器の制御やパラメータ調整等の各種設定を行える。なお、表示装置37は、扉部10の付近に設けてもよいし、扉部10から離れた場所、例えば、自動ドア100と同じ建物内でその管理を行うバックヤードに設けてもよい。
【0037】
以上で例示列挙した自動ドア100を構成する構成機器、すなわち、コントローラ20、起動センサ31、タッチプレート31A、補助センサ32、操作盤33、認証装置34、電気錠コントローラ35、外部インターフェース36、表示装置37は、CAN規格に則ったバス2を介して相互に通信可能である。つまり、各構成機器はCAN通信のためのCANトランシーバとCANコントローラを内蔵している。外部インターフェース36は、これらに加え、外部機器36Aが利用する通信規格とCAN規格のプロトコル変換を行うプロトコル変換部を有する。これにより、外部インターフェース36に接続された外部機器36Aは、自動ドア100の他の構成機器とバス2を介して相互に通信可能である。
【0038】
以上、
図1および
図2を参照して、本発明の実施形態が適用される自動ドア100の概要を説明した。続いて、本実施形態を詳細に説明する。
【0039】
図3は、本実施形態のセンサ30による投光および受光の態様を模式的に示す。センサ30は、検知エリア90に投光する投光部70と、検知エリア90からの反射光を受光する受光部80を備える。投光部70は、mを自然数として、m個の投光素子71-1、71-2・・・71-m(投光素子71と総称する)と、m個の投光レンズ72-1、72-2・・・72-m(投光レンズ72と総称する)を備える。受光部80は、nを自然数として、n個の受光素子81-1、81-2・・・81-n(受光素子81と総称する)と、n個の受光レンズ82-1、82-2・・・82-nを備える(受光レンズ82と総称する)。検知エリア90は、センサ30の設置態様によって異なるが、
図1に示した起動センサ31においては、赤外線が投受光される床面に相当する。なお、図示の都合上、投光部70と受光部80を別体として示したが、一体として構成してもよい。特に、投光部70を構成する各投光素子71と受光部80を構成する各受光素子81はフォトカプラとして一体的に構成できる。
【0040】
投光素子71は、電気信号に基づいて発光するLED等の発光素子である。自動ドア100の通行者の妨げとならないように、非可視光である赤外線が用いられる。投光レンズ72は、投光素子71からの光を複数の光線に分割する。分割して生成する光線の本数は任意であるが、図示の例では、各投光レンズ72が二本の光線を生成する。投光素子71は全部でm個あり、それぞれの光が投光レンズ72で二本の光線に分割されるため、投光部70は合計2m本の光線を生成して検知エリア90に照射する。
【0041】
受光素子81は、検知エリア90からの反射光を受光して電気信号である受光情報を生成するフォトダイオード等である。受光素子81の受光可能な波長帯は、投光素子71が発する光(本例では赤外線)に合わせられる。受光レンズ82は、検知エリア90からの複数の光線を集め、対応する受光素子81に照射する。各受光レンズ82が集める光線の本数は任意であるが、図示の例では、各受光レンズ82が三本の光線を集める。受光レンズ82は全部でn個あり、それぞれが三本の光線を集めるため、受光部80は合計3n本の光線を検知エリア90から受け取る。
【0042】
投光部70が生成する2m本の光線と、受光部80が受け取る3n本の光線は、一対一に対応しており、総本数は等しい。つまり、2m=3nである。以下、この総本数が72の場合、すなわち、m(投光素子71および投光レンズ72の数)が36、n(受光素子81および受光レンズ82の数)が24の場合を例に説明する。なお、この例では、投光レンズ72の分割光線数を2、受光レンズ82の集約光線数を3としたが、これらも任意に設定でき、それに応じて投光素子71の数mと受光素子81の数nも任意に設定できる。具体的には、投光素子71の数mと、受光素子81の数nは、所望の光線総数(72)を上限とする任意の自然数でよい。投光素子71が最少の1個の場合、同じく1個の投光レンズ72が72本の光線を生成する。投光素子71が最多の72個の場合は、投光レンズ72で分光しなくても72本の光線が得られるので、投光レンズ72は不要である。受光素子81が最少の1個の場合、同じく1個の受光レンズ82が72本の光線を集める。受光素子81が最多の72個の場合は、光線を集約しなくてもよいので、受光レンズ82は不要である。
【0043】
図4は、センサ30が投受光する床面等の検知エリア90を模式的に示す。検知エリア90は、72本の光線に対応して、72個の検知セグメントに区分される。図示の例では、矩形状の検知エリア90が、6行12列の行列状ないし格子状に区分される。この検知エリア90は、自動ドア100の扉部10の開口部に面した床面であり、行番号が大きくなるほど開口部に近い。すなわち、行番号1の検知セグメントは開口部から最も遠く、行番号6の検知セグメントは開口部に最も近い。また、列番号L1~L6は、
図1における扉部10の左側の領域に対応し、列番号R1~R6は、
図1における扉部10の右側の領域に対応する。以上のように区分された検知セグメントには、図示のように1~72の固有のセグメント番号が付与されている。
【0044】
各検知セグメントには、投光番号と受光番号も付与される。投光番号は、その検知セグメントに投光する投光素子71を表す。受光番号は、その検知セグメントからの反射光を受光する受光素子81を表す。例えば、図の左上角の61番の検知セグメントは、1番の投光素子71-1から光を受けて1番の受光素子81-1に反射する。その右隣の62番の検知セグメントは、1番の投光素子71-1から光を受けて2番の受光素子81-2に反射する。また、図の右下角の12番の検知セグメントは、34番の投光素子71-34から光を受けて24番の受光素子81-24に反射する。
【0045】
投光番号に着目すると、各投光素子71-1~36は、左右方向に隣接する二つの検知セグメントに同時に投光する。例えば、1番の投光素子71-1は、左右方向に隣接する61番と62番の検知セグメントに同時に投光する。同様に、2番の投光素子71―2は、左右方向に隣接する63番と64番の検知セグメントに同時に投光する。
【0046】
受光番号に着目すると、各受光素子81-1~24は、
図4の上下方向(
図1の紙面に垂直な方向)に一つ置きで並ぶ、互いに隣接しない三つの検知セグメントからの反射光を同時に受光する。例えば、1番の受光素子81-1は、上下方向に一つ置きで並ぶ61番、37番、13番の三つの検知セグメントからの反射光を同時に受光する。同様に、13番の受光素子81-13は、上下方向に一つ置きで並ぶ49番、25番、1番の三つの検知セグメントからの反射光を同時に受光する。
【0047】
以上に示した、検知エリア90の検知セグメントへの区分、各検知セグメントで使用する投光素子71および受光素子81の選択、各検知セグメントへの各種番号の付与は一例に過ぎず、これ以外の態様でもよい。例えば、検知エリア90は、行列状ないし格子状に限らず、任意の形状で検知セグメントに区分できる。また、各検知セグメントで使用する投光素子71および受光素子81については、各投光素子71、各投光レンズ72、各受光素子81、各受光レンズ82の配置や構成を適宜調整することで、任意の投光素子71および任意の受光素子81を任意の検知セグメントに割り当てることができる。以上の例では、同一の投光素子71を左右方向に並ぶ複数の検知セグメントで使用し、同一の受光素子81を上下方向に並ぶ複数の検知セグメントで使用したが、これとは逆に、同一の投光素子71を上下方向に並ぶ複数の検知セグメントで使用し、同一の受光素子81を左右方向に並ぶ複数の検知セグメントで使用してもよい。また、以上の例では、同一の投光素子71を隣接する複数の検知セグメントで使用し、同一の受光素子81を一つ置きの互いに隣接しない複数の検知セグメントで使用したが、これとは逆に、同一の投光素子71を一つ置きの互いに隣接しない複数の検知セグメントで使用し、同一の受光素子81を隣接する複数の検知セグメントで使用してもよい。なお、同一の投光素子71または同一の受光素子81を共用する複数の検知セグメントの間隔は、以上の例のゼロ(隣接)や一セグメント(一つ置き)に限らず、任意の数のセグメントでよい。
【0048】
図5は、センサ30の診断支援装置300の機能を表すブロック図である。診断支援装置300は、異常セグメント特定部301と、周辺セグメント情報取得部302と、同一投光素子セグメント情報取得部303と、同一受光素子セグメント情報取得部304と、セグメント診断部305と、光学センサ診断部306と、記憶部307と、提示部308と、検知情報生成停止部309と、報知部310を備える。
【0049】
これらの各機能ブロックは、ハードウェア的には、演算機能、制御機能、記憶機能、入力機能、出力機能を有するコンピュータや、各種の電子素子、機械部品等で実現され、ソフトウェア的にはコンピュータプログラム等によって実現されるが、ここでは、それらの連携によって実現される機能ブロックが描かれる。したがって、これらの機能ブロックがハードウェア、ソフトウェアの組合せによって様々な形態で実現できることは、当業者には理解されるところである。また、これらの各機能ブロックは、
図2に示される自動ドア100の各種構成機器や外部機器36Aでも実現できる。特に
図5では、診断支援装置300をコントローラ20およびセンサ30と別体として示すが、診断支援装置300の各機能ブロックは、コントローラ20またはセンサ30の一部として構成してもよい。
【0050】
前述の通り、センサ30は、72個の検知セグメントで構成される検知エリア90に投光部70から投光し、その反射光を受光部80で受光する。受光部80は、各受光素子81-1~24での受光情報に基づき自動ドア100の開閉駆動のための検知情報を生成し、コントローラ20に送信する。
【0051】
異常セグメント特定部301は、受光素子81-1~24での受光情報に基づき、72個の検知セグメントの中から所定条件を外れた異常セグメントを特定する。受光情報は、受光量に応じて生成される電気信号であり、その強度、継続時間、信号パターン等が正常稼働時に比べて所定量以上乖離したことをもって、異常セグメント特定の条件とすることができる。
【0052】
周辺セグメント情報取得部302は、異常セグメントの周辺セグメントの受光情報を取得する。周辺セグメントとは、異常セグメントの周囲の検知セグメント群であり、少なくとも異常セグメントに隣接する検知セグメントを含む。好ましくは、異常セグメントからの距離が所定値以内の検知セグメント群を周辺セグメントとする。さらに好ましくは、異常セグメントからの距離を、複数の検知セグメントが含まれる大きさとする。具体例を挙げて説明すると、
図4で左上角の61番の検知セグメントが異常セグメントであった場合、周辺セグメントに最低限含めるべき隣接セグメントは、右側の62番の検知セグメントと下側の49番の検知セグメントである。好ましくは、異常セグメントからの距離が1セグメント以内の検知セグメントとして、右下の50番の検知セグメントも周辺セグメントに含める。さらに好ましくは、異常セグメントからの距離を、複数の検知セグメント分、例えば2検知セグメント分とすることで、さらに外側を取り囲む37番、38番、39番、51番、63番の検知セグメントを周辺セグメントに含める。
【0053】
同一投光素子セグメント情報取得部303は、異常セグメントと同一の投光素子71を使用する同一投光素子セグメントの受光情報を取得する。
図4で左上角の61番の検知セグメントが異常セグメントであった場合、同一投光素子セグメントは、同一の投光素子71-1を使用する62番の検知セグメントである。
【0054】
同一受光素子セグメント情報取得部304は、異常セグメントと同一の受光素子81を使用する同一受光素子セグメントの受光情報を取得する。
図4で左上角の61番の検知セグメントが異常セグメントであった場合、同一受光素子セグメントは、同一の受光素子81-1を使用する37番および13番の検知セグメントである。
【0055】
セグメント診断部305は、周辺セグメント情報取得部302で取得された受光情報に基づき周辺セグメントの状態を診断し、同一投光素子セグメント情報取得部303で取得された受光情報に基づき同一投光素子セグメントの状態を診断し、同一受光素子セグメント情報取得部304で取得された受光情報に基づき同一受光素子セグメントの状態を診断する。これらの状態診断の目的は、周辺セグメント、同一投光素子セグメント、同一受光素子セグメントの各セグメントにおいて、異常セグメントと類似の異常の有無を診断することである。異常診断の方法はいくつか考えられるが、例えば、異常セグメント特定部301での異常特定に使用された条件と同様の条件を利用できる。異常セグメント特定部301の条件と同一の条件を利用してもよいが、セグメント診断部305では異常セグメントとの類否判定ができれば十分なので、異常セグメント特定部301よりも緩い条件を利用できる。また、異常診断の方法として、周辺セグメント、同一投光素子セグメント、同一受光素子セグメントの各セグメントの受光情報を、異常セグメントの受光情報とそれぞれ比較してもよい。異常セグメントの受光情報との比較結果が所定値未満のセグメントでは、異常セグメントと類似の異常が発生していると診断できる。なお、上記の異常セグメント特定部301と同一またはそれよりも緩い条件で、周辺セグメント、同一投光素子セグメント、同一受光素子セグメントの各セグメントの異常を診断する場合も、実質的には当該各セグメントと異常セグメントの受光情報を比較して診断しているのと等しい。
【0056】
光学センサ診断部306は、セグメント診断部305の診断結果に基づいて、センサ30を診断する。詳細は具体例を参照して後述するが、診断の概要は次の通りである。光学センサ診断部306は、周辺セグメントの異常が診断されなかった場合、異常セグメントに投光する投光素子71、その反射光を受光する受光素子81の少なくとも一方に異常があると診断する。光学センサ診断部306は、同一投光素子セグメントの異常が診断されなかった場合、異常セグメントの受光素子81に異常があると診断し、同一投光素子セグメントの異常が診断された場合、異常セグメントの投光素子71に異常があると診断する。光学センサ診断部306は、同一受光素子セグメントの異常が診断されなかった場合、異常セグメントの投光素子71に異常があると診断し、同一受光素子セグメントの異常が診断された場合、異常セグメントの受光素子81に異常があると診断する。
【0057】
記憶部307は、光学センサ診断部306による診断内容を記憶する。定期保守点検等の際に、作業員等が過去の一連の診断内容を確認できるように、過去の一定期間に亘って診断内容を記憶することが好ましい。なお、記憶部307は、コントローラ20や共通のバス2に設けられる汎用の共有メモリで実現してもよい。
【0058】
提示部308は、記憶部307に記憶されたものも含め、光学センサ診断部306による診断内容を各種の態様で提示する。提示の一態様として診断内容を表示する際は、
図2の表示装置37が提示部308として機能する。提示の他の態様として外部機器36Aに診断内容を通信する際は、
図2の外部インターフェース36が提示部308として機能する。なお、
図6に示すように、異常セグメント、周辺セグメント、同一投光素子セグメント、同一受光素子セグメントを、互いに異なる態様で提示するのが好ましい。
【0059】
検知情報生成停止部309は、光学センサ診断部306が異常があると診断した投光素子71または受光素子81を使用する検知セグメントに基づく検知情報の生成を停止する。このとき、受光部80は、コントローラ20に送信する検知情報を生成する際、検知情報生成停止にかかる検知セグメントから受光する特定の受光素子81の受光情報を考慮しない。これにより、異常が認められる投光素子71または受光素子81が実質的に無効化され、自動ドア100の開閉駆動に用いられなくなるため、安全性が向上する。一方で、投光素子71または受光素子81の一部を無効化することで、通行者を検知しづらくなり、自動ドア100の開閉駆動が通常より遅くなる可能性がある。そこで、通行量が少なく開閉駆動が遅くても大きな問題が生じない所定の時間帯、例えば夜間や休日に限って、検知情報生成停止部309による停止を有効にしてもよい。また、動作の不安定な投光素子71または受光素子81を無効化することで、人の少ない夜間や休日等の誤検知や誤動作を防止できるので、セキュリティ上のメリットもある。
【0060】
報知部310は、検知情報生成停止部309によって検知情報の生成が停止された場合、その旨を自動ドア100の開閉駆動を行うコントローラ20に報知する。これを受けたコントローラ20は、開閉速度、開閉強度、開口幅等の開閉駆動のパラメータの調整や、異常のある投光素子71または受光素子81の点検や復旧のための保守プロセスを開始できる。
【0061】
続いて、
図6を参照して、診断支援装置300による診断の具体例を示す。
【0062】
図6(A)の例では、異常セグメント特定部301が、62番の検知セグメントを異常セグメントとして特定する。続いて、周辺セグメント情報取得部302が、異常セグメントを取り囲む61番、63~64番、49~52番の周辺セグメントの受光情報を取得する。セグメント診断部305での診断の結果、61番を除く周辺セグメントには異常セグメントと類似の異常が発見されない。異常セグメントの原因が外乱等の外部環境に基づくものであれば、異常セグメントの周辺セグメントにも何らかの異常が共通して現れるため、ほとんどの周辺セグメントに異常がないということは、外部環境に起因する異常ではないと判断できる。したがって、センサ30の故障や劣化に基づく異常であると推測される。具体的には、異常セグメントで使用される投光素子71-1、受光素子81-2、それに加えて新たに異常が確認された61番の周辺セグメントで使用される投光素子71-1、受光素子81-1の少なくともいずれか一つの異常が疑われる。そこで、同一投光素子セグメント情報取得部303は、投光素子71-1を共用する検知セグメントの受光情報を取得し、セグメント診断部305に診断させる。具体的には、既に異常が確認されている61番と62番の検知セグメントが投光素子71-1を共用しており、両検知セグメントに共通して異常が現れていることが再確認される。また、同一受光素子セグメント情報取得部304は、受光素子81-1、81-2を共用する検知セグメントの受光情報を取得し、セグメント診断部305に診断させる。具体的には、受光素子81-1に関しては37番および13番の検知セグメントが、受光素子81-2に関しては38番および14番の検知セグメントが、それぞれ同一受光素子セグメントとして診断される。この診断の結果、いずれの同一受光素子セグメントにも異常セグメントと類似の異常が発見されない。同一受光素子セグメントに異常がないということは、受光素子81-1、81-2には異常がないことを意味する。一方、上記の通り、投光素子71-1を共用する61番および62番の検知セグメントには共通して異常が発生していることから、結論として投光素子71-1に異常があると診断される。
【0063】
図6(B)の例では、異常セグメント特定部301が、51番の検知セグメントを異常セグメントとして特定する。続いて、周辺セグメント情報取得部302が、異常セグメントを取り囲む61~66番、49~50番、52~54番、37~42番の周辺セグメントの受光情報を取得する。セグメント診断部305での診断の結果、全ての周辺セグメントで異常セグメントと類似の異常が発見されない。したがって、この場合も外部環境に起因する異常ではないと判断でき、異常セグメントで使用される投光素子71-5、受光素子81-15の異常が疑われる。そこで、同一投光素子セグメント情報取得部303は、投光素子71-5を共用する52番の検知セグメントの受光情報を取得し、セグメント診断部305に診断させる。周辺セグメントの診断で既に確認されているように、52番の検知セグメントに異常は発生していない。したがって、投光素子71-5に異常はないことが分かる。続いて、同一受光素子セグメント情報取得部304が、受光素子81-15を共用する27番および3番の検知セグメントの受光情報を取得し、セグメント診断部305に診断させる。この結果、これらの同一受光素子セグメントに共通して異常が確認される。したがって、結論として受光素子81-15に異常があると診断される。なお、図示されるように、同一受光素子セグメントの診断を通じて新たに異常が確認された27番および3番の検知セグメントを新たに異常セグメントとして、その周辺セグメント、同一投光素子セグメント、同一受光素子セグメントを追加診断してもよい。図示の例では、この追加診断を通じて新たな異常は発見されず、受光素子81-15が異常であるとの結論に変更はない。
【0064】
以上の診断方法によれば、周辺セグメントの診断を通じて、外部環境に基づく異常と、センサ30の故障や劣化に基づく異常を区別できる。さらに、センサ30の故障や劣化に基づく異常については、同一投光素子セグメントと同一受光素子セグメントの診断を通じて、どの投光素子71または受光素子81に異常があるのかを特定できる。したがって、迅速かつ的確な保守対応が可能になる。
【0065】
また、以上の例では、各受光素子81が、隣接しない一つ置きの検知セグメントの反射光を受光するため、同一受光素子セグメントが周辺セグメントに含まれないようにできる。したがって、同一受光素子セグメントの診断と周辺セグメントの診断を別々に行うことができ、個々の診断精度が向上する。同様に、変形例として、各投光素子71が隣接しない検知セグメントに投光するようにしてもよい。これによって、同一投光素子セグメントの診断も周辺セグメントの診断と別々に行うことができるので、診断精度が更に向上する。
【0066】
図7は、診断支援装置300による診断処理を示すフローチャートである。本図において「S」はステップを表す。S1では、異常セグメント特定部301が異常セグメントを特定する。S2では、周辺セグメント情報取得部302が周辺セグメントの受光情報を取得し、セグメント診断部305がその診断を行う。S3では、セグメント診断部305が周辺セグメントに異常セグメントと類似の異常があるか否かを判定する。周辺セグメントに類似異常がある場合、S4で光学センサ診断部306が、外部環境に起因する異常と診断する。周辺セグメントに類似異常がない場合、S5で同一投光素子セグメント情報取得部303が同一投光素子セグメントの受光情報を取得し、セグメント診断部305がその診断を行う。S6では、セグメント診断部305が同一投光素子セグメントに異常セグメントと類似の異常があるか否かを判定する。同一投光素子セグメントに類似異常がある場合、S7で光学センサ診断部306が、異常セグメントで使用される投光素子の異常と診断する。同一投光素子セグメントに類似異常がない場合、S8で同一受光素子セグメント情報取得部304が同一受光素子セグメントの受光情報を取得し、セグメント診断部305がその診断を行う。S9では、セグメント診断部305が同一受光素子セグメントに異常セグメントと類似の異常があるか否かを判定する。同一受光素子セグメントに類似異常がある場合、S10で光学センサ診断部306が、異常セグメントで使用される受光素子の異常と診断する。同一受光素子セグメントに類似異常がない場合、S11で光学センサ診断部306が原因不明の異常と診断する。
【0067】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0068】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【0069】
本明細書で開示した実施形態のうち、複数の機能が分散して設けられているものは、当該複数の機能の一部又は全部を集約して設けても良く、逆に複数の機能が集約して設けられているものを、当該複数の機能の一部又は全部が分散するように設けることができる。機能が集約されているか分散されているかにかかわらず、発明の目的を達成できるように構成されていればよい。
【符号の説明】
【0070】
2 バス、20 コントローラ、30 センサ、31 起動センサ、32 補助センサ、70 投光部、71 投光素子、72 投光レンズ、80 受光部、81 受光素子、82 受光レンズ、90 検知エリア、100 自動ドア、300 診断支援装置、301 異常セグメント特定部、302 周辺セグメント情報取得部、303 同一投光素子セグメント情報取得部、304 同一受光素子セグメント情報取得部、305 セグメント診断部、306 光学センサ診断部、307 記憶部、308 提示部、309 検知情報生成停止部、310 報知部。