(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】クレーン作業における人物検知システム
(51)【国際特許分類】
B66C 23/88 20060101AFI20241121BHJP
B66C 13/00 20060101ALI20241121BHJP
B66C 15/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B66C23/88 D
B66C13/00 D
B66C15/00 E
B66C23/88 Z
(21)【出願番号】P 2020194176
(22)【出願日】2020-11-24
【審査請求日】2023-10-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104927
【氏名又は名称】和泉 久志
(72)【発明者】
【氏名】市川 政美
(72)【発明者】
【氏名】安田 幸生
(72)【発明者】
【氏名】請川 誠
(72)【発明者】
【氏名】石橋 桂一
(72)【発明者】
【氏名】柴田 靖
【審査官】板澤 敏明
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-002369(JP,A)
【文献】特開2018-160153(JP,A)
【文献】特開2020-138844(JP,A)
【文献】実開昭61-197081(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2002/0175824(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 19/00-23/94
B66C 13/00-15/06
H04N 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンに取り付けられた
吊荷の下方領域を撮影する人物検知用カメラと、前記人物検知用カメラの近傍に取り付けられ、作業面までの距離を計測する距離計と、前記人物検知用カメラを制御するカメラ制御部と、クレーン運転席に設けられ、前記人物検知用カメラで撮影された画像を表示する人物検知用モニタと
、前記人物検知用カメラで撮影された画像を処理し、危険領域に作業者が存在するか否を判定するとともに、作業者が存在する場合には警報信号を発する画像処理部とからなり、
前記画像処理部では、前記人物検知用カメラから送信された画像データに危険領域を付加するとともに、この危険領域が付加された画像データを前記人物検知用モニタに送信し、
前記カメラ制御部は、吊荷を中心とした作業面上の領域である危険領域が、前記人物検知用モニタに一定の大きさで表示されるように、前記距離計で計測した距離と連動して自動でズームするオートズーム機能
を備えて
おり、
吊荷作業関係者のヘルメットの色と、それ以外の作業者のヘルメットの色とを区分けしておき、前記画像処理部において、吊荷作業関係者のヘルメットのみが危険領域で検知された場合には警報を発しないが、吊荷作業関係者以外の作業者のヘルメットが危険領域で検知された場合には警報信号を発するようにしたことを特徴とするクレーン作業における人物検知システム。
【請求項2】
クレーンの吊り芯が撮影可能な位置に吊荷撮影用カメラが設けられ、クレーン運転席に前記吊荷撮影用カメラで撮影された画像を表示する吊荷表示用モニタが設けられている請求項1記載のクレーン作業における人物検知システム。
【請求項3】
前記人物検知用モニタに表示される前記危険領域の大きさが
吊荷長さに応じて任意に設定可能である請求項1
、2いずれかに記載のクレーン作業における人物検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーン作業における吊荷の下方領域の危険領域内に存在する人物を検知するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
クレーンにより吊下げられた吊荷の下方領域に作業者が立ち入ることは非常に危険である。このため、クレーン作業を行う際は、作業面上にいる作業者の安全を確保するため、監視者や合図者を配置し、その合図によってオペレーターがクレーン操作を行っている。
【0003】
クレーン作業における安全性向上のため、従来においては、例えば下記特許文献1、2などに開示されるように、クレーンのブーム先端部などに固定されたカメラによって吊荷の下方領域を撮影し、前記カメラによって撮影された画像をオペレーター室に設けられたモニターに表示して、作業者が吊荷下部の危険領域に入った場合などに、警報信号を発するなどの措置が講じられていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-241548号公報
【文献】特開2020-7134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブーム先端部に固定されたカメラによって撮影された画像は、クレーン作業中の吊り芯を確認する目的としても使用されるため、通常、遠距離画像にしており、何か確認したいときに、適宜、手動(ボタン)でズームし、近距離画像に切り替えるようになっている。
【0006】
モニターに表示された画像の確認はオペレーターの目視によるため、見落としなどのヒューマンエラーが発生しやすい。また、遠距離画像にしておくことが多いため、画質的に、撮影された画像から作業者が存在するか否かを人やコンピュータが認識できる範囲に限界があった。
【0007】
そこで本発明の主たる課題は、クレーン作業における吊荷下部の危険領域内に存在する人を検知することにより、クレーン災害の防止に資することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に係る本発明として、クレーンに取り付けられた吊荷の下方領域を撮影する人物検知用カメラと、前記人物検知用カメラの近傍に取り付けられ、作業面までの距離を計測する距離計と、前記人物検知用カメラを制御するカメラ制御部と、クレーン運転席に設けられ、前記人物検知用カメラで撮影された画像を表示する人物検知用モニタと、前記人物検知用カメラで撮影された画像を処理し、危険領域に作業者が存在するか否を判定するとともに、作業者が存在する場合には警報信号を発する画像処理部とからなり、
前記画像処理部では、前記人物検知用カメラから送信された画像データに危険領域を付加するとともに、この危険領域が付加された画像データを前記人物検知用モニタに送信し、
前記カメラ制御部は、吊荷を中心とした作業面上の領域である危険領域が、前記人物検知用モニタに一定の大きさで表示されるように、前記距離計で計測した距離と連動して自動でズームするオートズーム機能を備えており、
吊荷作業関係者のヘルメットの色と、それ以外の作業者のヘルメットの色とを区分けしておき、前記画像処理部において、吊荷作業関係者のヘルメットのみが危険領域で検知された場合には警報を発しないが、吊荷作業関係者以外の作業者のヘルメットが危険領域で検知された場合には警報信号を発するようにしたことを特徴とするクレーン作業における人物検知システムが提供される。
【0009】
上記請求項1記載の発明では、クレーンに人物検知用カメラ及び距離計が取り付けられ、前記人物検知用カメラで撮影された画像がクレーン運転席に設けられた人物検知用モニタに表示されるようになっている。このとき、前記人物検知用カメラを制御するカメラ制御部では、予め設定した吊荷を中心とした作業面上の領域である危険領域が、前記人物検知用モニタに一定の大きさで表示されるように、前記距離計で計測した距離と連動して自動でズームするオートズーム機能が備えられている。このように、クレーン作業によって作業面との距離が変化しても、前記人物検知用モニタには、危険領域が常に一定の大きさで表示されるため、作業面上の人物が検知しやすくなり、事故の要因となる作業行動を事前に検知でき、クレーン災害の防止に資するようになる。
【0010】
本発明では、前記人物検知用カメラで撮影された画像を処理し、危険領域に作業者が存在するか否を判定するとともに、作業者が存在する場合には警報信号を発する画像処理部が設けられており、前記画像処理部では、前記人物検知用カメラから送信された画像データに危険領域を付加するとともに、この危険領域が付加された画像データを前記人物検知用モニタに送信する。そして、吊荷作業関係者のヘルメットの色と、それ以外の作業者のヘルメットの色とを区分けしておき、前記画像処理部において、吊荷作業関係者のヘルメットのみが危険領域で検知された場合には警報を発しないが、吊荷作業関係者以外の作業者のヘルメットが危険領域で検知された場合には警報信号を発するようにしている。従って、クレーンオペレータの見落としなどが防止でき、より確実にクレーン災害が防止できるようになる。
【0011】
請求項2に係る本発明として、クレーンの吊り芯が撮影可能な位置に吊荷撮影用カメラが設けられ、クレーン運転席に前記吊荷撮影用カメラで撮影された画像を表示する吊荷表示用モニタが設けられている請求項1記載のクレーン作業における人物検知システムが提供される。
【0012】
上記請求項2記載の発明では、前記人物検知用カメラとは別に、吊荷撮影用カメラが設けられているため、クレーン作業中の吊り芯の確認などが簡単にできる。
【0013】
請求項3に係る本発明として、前記人物検知用モニタに表示される前記危険領域の大きさが吊荷長さに応じて任意に設定可能である請求項1、2いずれかに記載のクレーン作業における人物検知システムが提供される。
【0014】
上記請求項3記載の発明では、前記人物検知用モニタに表示される前記危険領域の大きさを吊荷長さに応じて任意に設定できるようにしている。これにより、危険領域内をより詳細に確認したいとき、又は危険領域の周辺を広範囲に確認したいときなどに対応できる。
【発明の効果】
【0015】
以上詳説のとおり本発明によれば、クレーン作業における吊荷下部の危険領域内に存在する人物が検知でき、クレーン災害の防止に資することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】(A)は吊り高さが低い場合、(B)は吊り高さが高い場合の人物検知システム1の概略構成図である。
【
図2】本発明に係る人物検知システム1のブロック図である。
【
図3】吊荷を低位置から高位置に移動した場合の、(A)はクレーンの概略構成図、(B)は人物検知用モニタ9の表示画像である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳述する。
【0018】
本発明に係る人物検知システム1は、クレーン作業における吊荷の下方領域の危険領域内に人(作業者)が存在するか否かをカメラで撮影した画像データから検知することにより、クレーン災害の防止を図ったものである。
【0019】
本人物検知システム1は、
図1及び
図2に示されるように、クレーン2に取り付けられた吊荷4の
下方領域を撮影する人物検知用カメラ5と、この人物検知用カメラ5の近傍に取り付けられ、作業面6までの距離H1、H2を計測する距離計7と、前記人物検知用カメラ5を制御するカメラ制御部8と、クレーン運転席に設けられ、前記人物検知用カメラ5で撮影された画像を表示する人物検知用モニタ9とを備えている。
【0020】
前記クレーン2は、図示例のようにブーム3(ジブ)が備えられたジブクレーンでもよいし、天井クレーンや橋形クレーンなどでもよい。
図1では、車輪などにより走行可能とされた移動式のクレーンが図示されているが、固定式のものでもよい。
【0021】
前記人物検知用カメラ5は、一般にクレーンカメラと呼ばれるもので、吊荷4の下部周辺を撮影するカメラである。前記人物検知用カメラ5は、吊荷4を吊り下げるために垂下するワイヤの基端部近傍のクレーン本体部に取り付けられており、図示されたジブクレーンの場合には、ブーム3の先端部に取り付けられている。前記人物検知用カメラ5としては、光学ズーム30倍程度のズーム機能が備えられたものが用いられる。前記人物検知用カメラ5で撮影された画像は、クレーン運転席に設けられた人物検知用モニタ9にリアルタイムで表示されるようになっている。
【0022】
前記作業面6とは、吊荷4の下方領域において作業者Wが作業を行う面のことであって、地上に置かれた荷を建物の上面に吊り上げる場合、吊り上げ当初は地面のことであり、吊荷を吊り下ろす段階では建物の上面のことである。このように、吊荷4の水平移動に伴って、作業面6のレベル高さが変化する場合がある。
【0023】
前記距離計7としては、光学式、超音波式、レーザー式など公知の非接触の距離計を制限なく用いることができ、このうち高精度で安価なレーザー式のものが特に好適である。
【0024】
本人物検知システム1では、前記カメラ制御部8は、吊荷4を中心とした作業面6上の領域である危険領域10が、前記人物検知用モニタ9に一定の大きさで表示されるように、前記距離計7で計測した距離と連動して自動でズームするオートズーム機能を備えている。すなわち、前記カメラ制御部8は、
図1(A)に示されるように、前記距離計7で計測した距離H1が小さいときは、前記人物検知用カメラ5のズーム倍率を自動で下げ、
図1(B)に示されるように、前記距離計7で計測した距離H2が大きいときは、前記人物検知用カメラ5のズーム倍率を自動で上げるという制御を行っている。これにより、
図1(A)及び(B)の各(b)図に示されるように、人物検知用モニタ9には危険領域10が常に一定の大きさで表示されるようになっている。距離計7で計測した距離Hと、前記カメラ制御部8が制御する人物検知用カメラ5のズーム倍率との関係は、例えば、距離Hが10mの場合、ズーム倍率を1.0倍とし、距離Hが20mの場合、ズーム倍率を2.0倍とし、距離Hが35mの場合、ズーム倍率を3.5倍とするなどのように、比例関係となるように設定することができる。
【0025】
前記危険領域10は、吊荷4の中心部(吊り芯位置)を中心とした作業面6上の領域である。平面形状は、図示例のように円形が好ましいが、楕円形や長円形、多角形などとしてもよい。危険領域10の大きさ(半径)は、吊荷4の長手方向長さである吊荷長さに応じて、予め任意に設定できる。危険領域10の大きさは、その日のクレーン作業毎又は吊荷の種類毎に、吊荷長さを見込んで任意に設定できる。具体的に一例を挙げれば、吊荷長さが5mの場合、危険領域10の半径Rを10mに設定でき、吊荷長さが12mの場合、危険領域10の半径Rを18mに設定できる。
【0026】
このように、本人物検知システム1では、作業面6までの距離が変化しても、人物検知用モニタ9に、危険領域10が常に一定の大きさで表示されるため、クレーンオペレータが手動でズーム操作をせずとも、作業面6上の作業者Wが検知しやすくなり、クレーン作業時の関係者以外の立ち入りや、吊荷下部への作業員の立ち入りなど、事故の要因となる作業行動が事前に検知でき、クレーン災害の防止に資するようになる。
【0027】
図1及び
図2に示されるように、本人物検知システム1では、前記クレーン2の吊り芯が撮影可能な位置に、吊荷撮影用カメラ11が設けられるとともに、クレーン運転席に、前記吊荷撮影用カメラ11で撮影された画像を表示する吊荷表示用モニタ12が設けられている。前記吊荷撮影用カメラ11は、クレーンの吊り芯が撮影可能なように、図示されたジブクレーンの場合には、ブーム3の先端部に設けるのがよい。前記吊荷撮影用カメラ11では、
図1(A)及び(B)の各(c)図に示されるように、吊り芯が確認できるように、常時、遠距離画像、すなわちズーム倍率を下げた状態で固定しておくのが好ましい。したがって、前記吊荷撮影用カメラ11として、ズーム機能を有さないカメラを用いてもよい。
【0028】
前記吊荷撮影用カメラ11で撮影された画像は、
図1(A)及び(B)の各(c)図に示されるように、作業面までの高さH1が低いとき、作業者Wが大きく映し出されるが、作業面6までの高さH2が高いとき、作業者Wは小さくなり、画面上での認識が困難になる。
【0029】
本人物検知システム1では、
図2に示されるように、前記人物検知用カメラ5で撮影された画像を処理し、危険領域10に作業者Wが存在するか否かを判定するとともに、作業者Wが存在する場合には警報信号を発する画像処理部13が備えられている。前記画像処理部13では、前記人物検知用カメラ5から送信された画像データに対して危険領域10を付加するとともに、この危険領域10が付加された画像データを人物検知用モニタ9に送信する。また、危険領域10内に作業者Wが存在するか否かを判定し、作業者Wが存在する場合には警報発生器14に対して警報信号を発するように指令を送る。前記警報発生器14は、警報信号発出の指令を受信したとき、警告音を発する、人物検知用モニタ9に警告表示をする、クレーンの駆動を停止する、のいずれか1つの措置又は同時に2以上の措置をとることができる。
【0030】
前記画像処理部13において、危険領域10内に作業者Wが存在するか否かを判定するには、前記画像処理部13がヘルメットの色を識別することによって作業者Wを検知するのがよい。この画像処理部13では、例えば人工知能(AI:Artificial Intelligence)等の技術を用いて、適切な学習を行うことにより、画像データから作業者Wのヘルメットの色を精度良く識別することができるようになる。
【0031】
また、玉掛者、玉外者、合図者、監視者等の吊荷作業関係者のヘルメットの色と、それ以外の作業者のヘルメットの色とを区分けしておき、画像処理部13において、吊荷作業関係者のヘルメットのみが危険領域10で検知された場合には警報信号を発しないが、吊荷作業関係者以外の作業者のヘルメットが危険領域10で検知された場合には警報信号を発するように構成してもよい。ヘルメットの色は、ヘルメットバンドやヘルメットカバーの色で区分けすることができる。
【0032】
次に、実際のクレーン作業における人物検知システム1の動作状況について、
図3に基づいて説明する。クレーン作業として、
図3(A)に示されるように、地上に置かれた荷を建物の上部に吊り上げる場合を想定する。
図3(A)は、(a)から(d)に向けて順に移動する吊荷4の移動過程を1つの図面上に重ねて示したものであり、
図3(B)は、(a)~(d)の各吊荷位置における人物検知用モニタ9に表示される画像を順に示したものである。吊荷作業関係の作業者Wsは、黒色のヘルメットを装着し、それ以外の作業者Wtは、白色のヘルメットを装着している。
【0033】
(a)~(d)の各吊荷位置でブーム3の先端と作業面6との距離は異なるが、カメラ制御部8により人物検知用カメラ5のズーム倍率が適切に制御されているため、いずれの吊荷位置においても、人物検知用モニタ9に表示される画像には、危険領域10がほぼ同じ大きさで表示されている。このため、作業面6上の作業者Ws、Wtが認識しやすくなるとともに、ヘルメットの色によってWsとWtの識別がしやすくなっている。
【0034】
吊荷位置(a)及び(d)においては、危険領域10内に吊荷作業関係者Wsが存在するが、吊荷作業に関係しない作業者は存在しないため、警報は発しない。一方、吊荷位置(b)においては、危険領域10内に吊荷作業関係以外の作業者Wtが存在するため、画像処理部13は警報発生器14に対して警報信号を発する指令を出し、警報が発出される。
【0035】
本人物検知システム1では、
図4に示されるように、人物検知用モニタ9に表示される危険領域10の大きさが任意に設定できるようになっている。
図4(A)及び(B)はいずれも、危険領域10の半径Rを20mとしたものであるが、人物検知用モニタ9に表示される危険領域10の大きさは、
図4(A)の方が大きく、(B)の方が小さくしている。すなわち、人物検知用カメラ5のズーム倍率が、
図4(A)の方が大きく、(B)の方が小さくなっている。これによって、
図4(A)では、危険領域10に存在する作業者Wをより明確に認識することができ、
図4(B)では、危険領域10の外側であるが、その周辺に存在する作業者Wも把握することができるようになる。画面上の危険領域10の大小は、クレーンオペレータなどによって任意に変更可能であり、クレーン作業の開始前に所定の大きさに設定できるようにしてもよいし、クレーン作業中に簡単なボタン操作で大小が切り替えできるようにしてもよい。
【0036】
また、
図5に示されるように、危険領域10の半径の設定値の変更に連動して、人物検知用カメラ5のズーム倍率が自動で変更され、人物検知用モニタ9に表示される危険領域10が一定の大きさに保持されるようにすることができる。これによって、危険領域10の半径の設定値にかかわらず、自動で危険領域10が人物検知用モニタ9に常に一定の大きさで表示されるようになる。
【実施例】
【0037】
遠距離画像、中距離画像、近距離画像の場合において、実際の画像データを用いて、目視検出した人の数(P0)と、前記画像処理部13でコンピュータによって自動で検出された人の数(Pc)とを比較し、検出率(D=Pc/P0×100%)を算出した。
【0038】
【0039】
表1に示されるように、遠距離画像より近距離画像になるに従いコンピュータによる自動検出精度が向上する。近距離画像では、AIによる追加学習により更なる検出率の向上が見込めるが、遠距離画像では、画質等の関係で、検出率の大幅な向上は見込めない。
【符号の説明】
【0040】
1…人物検知システム、2…クレーン、3…ブーム、4…吊荷、5…人物検知用カメラ、6…作業面、7…距離計、8…カメラ制御部、9…人物検知用モニタ、10…危険領域、11…吊荷撮影用カメラ、12…吊荷表示用モニタ、13…画像処理部、14…警報発生器