(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】絶縁型DC/DCコンバータ及びAC/DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H02M 3/28 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
H02M3/28 H
(21)【出願番号】P 2020199660
(22)【出願日】2020-12-01
【審査請求日】2023-11-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】湯 翼飛
(72)【発明者】
【氏名】名手 智
【審査官】今井 貞雄
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-033025(JP,A)
【文献】特許第6747569(JP,B1)
【文献】特開2017-143416(JP,A)
【文献】特開2020-089033(JP,A)
【文献】特開2004-096982(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 3/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに絶縁された一次側巻線及び二次側巻線を有する電力用トランスを用いて、一次側における一次側電圧から二次側における二次側電圧を生成する絶縁型DC/DCコンバータにおいて、
前記一次側に配置される回路であって、前記一次側巻線に対して直列に接続されたスイッチング素子をスイッチングする一次側制御回路と、
前記二次側に配置される回路であって、前記二次側電圧に基づき第1制御情報及び第2制御情報を含む制御信号を生成する二次側制御回路と、
前記制御信号に含まれる各制御情報を絶縁形式で前記一次側制御回路に伝送する絶縁伝送回路と、を備え、
前記二次側制御回路は、前記二次側電圧に応じたフィードバック電圧と所定の基準電圧との差分に応じた誤差電圧を生成する誤差電圧生成部と、前記誤差電圧と所定範囲内で変動するスロープ電圧とに基づいて前記制御信号を生成する制御信号生成部と、を有し、
前記制御信号生成部は、前記誤差電圧に応じた周波数を有し且つ前記誤差電圧及び前記スロープ電圧の比較結果に応じたパルス幅を持つ信号を前記制御信号として生成し、
前記第1制御情報は前記制御信号の周波数の情報であって、前記第2制御情報は前記制御信号のパルス幅の情報であり、
前記絶縁伝送回路は、前記第1及び第2制御情報を、前記一次側及び二次側に亘って設けられた絶縁素子を用いて前記一次側に伝送することにより、前記第1制御情報を有する第1受信信号及び前記第2制御情報を有する第2受信信号を前記一次側において生成し、
前記一次側制御回路は、前記第1及び第2受信信号に基づき、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を制御するとともに、前記スイッチング素子を通じて前記一次側巻線に流れる一次側電流のピーク値を制御する
、絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項2】
前記制御信号は、第1レベル又は第2レベルの信号レベルをとる矩形波信号であり、
前記制御信号の各周期において前記制御信号の信号レベルが前記第2レベルとなる期間の長さが前記制御信号のパルス幅に相当し、
前記制御信号生成部は、前記誤差電圧に応じた周波数で前記制御信号の信号レベルを前記第1レベルから前記第2レベルに遷移させ、その遷移タイミングから始まる前記制御信号の各周期において前記誤差電圧及び前記スロープ電圧の比較結果に基づき前記制御信号の信号レベルを前記第2レベルから前記第1レベルに遷移させ、
前記絶縁伝送回路は、前記絶縁素子を用いて、前記制御信号の信号レベルにおける前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に同期したパルスを含む前記第1受信信号を前記一次側において生成し、且つ、前記制御信号の信号レベルにおける前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移に同期したパルスを含む前記第2受信信号を前記一次側において生成し、
前記一次側制御回路は、前記第2受信信号に基づき所定の電圧範囲内で判定電圧を可変設定する判定電圧設定部を有し、前記第1受信信号中のパルスのタイミングに同期して前記スイッチング素子のターンオンさせた後、前記一次側電流に比例する電流センス電圧が前記判定電圧に達すると前記スイッチング素子をターンオフさせる
、請求項
1に記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項3】
前記制御信号生成部は、前記誤差電圧に応じた周波数で前記制御信号の信号レベルを前記第1レベルから前記第2レベルに遷移させ、その遷移タイミングから始まる前記制御信号の各周期において、前記スロープ電圧が所定初期電圧より所定方向に向けて単調変化し、当該遷移タイミングから所定時間が経過する前に前記誤差電圧及び前記スロープ電圧間の大小関係が反転するときには当該遷移タイミングより前記所定時間だけ後のタイミングにて、当該遷移タイミングから前記所定時間が経過して以降に前記大小関係が反転するときには当該反転のタイミングにて、前記制御信号の信号レベルを前記第2レベルから前記第1レベルに遷移させる
、請求項
2に記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項4】
前記判定電圧設定部は、前記第1受信信号中のパルスに同期した前記スイッチング素子のターンオンを経て前記スイッチング素子がターンオフされるまでは前記判定電圧を固定し、前記スイッチング素子がターンオフされると前記判定電圧を前記電圧範囲内の最大電圧に設定し、その後、前記第2受信信号中のパルスを契機に前記判定電圧を前記電圧範囲内の最大電圧から所定規則に沿って低下させてゆき、前記第1受信信号にて次のパルスが生じると前記判定電圧の低下を止める
、請求項
2又は3に記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項5】
前記絶縁素子は、コンデンサにより構成される
、請求項
1~4の何れかに記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項6】
前記絶縁素子は、コンデンサにより構成され、
前記絶縁伝送回路は、前記制御信号の信号レベルにおける前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移を前記コンデンサを用いて前記一次側に伝送することで前記第1受信信号を生成し、前記制御信号の信号レベルにおける前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移を前記コンデンサを用いて前記一次側に伝送することで前記第2受信信号を生成する
、請求項
2~4の何れかに記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項7】
前記絶縁素子は、パルストランスにより構成される
、請求項
1~4の何れかに記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項8】
前記絶縁素子は、第1及び第2パルストランスを含み、
前記絶縁伝送回路は、前記制御信号の信号レベルにおける前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移を前記第1パルストランスを用いて前記一次側に伝送することで前記第1受信信号を生成し、前記制御信号の信号レベルにおける前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移を前記第2パルストランスを用いて前記一次側に伝送することで前記第2受信信号を生成する
、請求項
2~4の何れかに記載の絶縁型DC/DCコンバータ。
【請求項9】
交流電圧を全波整流する整流回路と、
全波整流された電圧を平滑化することで直流電圧を生成する平滑コンデンサと、
前記直流電圧としての前記一次側電圧から直流の前記二次側電圧を出力電圧として生成する、請求項
1~8の何れかに記載の絶縁型DC/DCコンバータと、を備えた
、AC/DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、絶縁型DC/DCコンバータ及びAC/DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
第1タイプの絶縁型DC/DCコンバータでは、二次側電圧の情報をフォトカプラを用いて一次側に伝達する。一次側制御回路は、伝達された情報に基づき、電力用トランスの一次側巻線に接続されたスイッチングトランジスタをスイッチング駆動し、これによって二次側電圧の安定化を図る(下記特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
部品点数や実装面積の削減などを考慮し、第2タイプの絶縁型DC/DCコンバータも検討される。第2タイプの絶縁型DC/DCコンバータでは、フォトカプラと異なる絶縁素子(例えばパルストランス)を利用し、二次側電圧の情報を表す制御信号をデジタル信号形式で一次側に伝送する。この際、二次側電圧に応じた周波数を有する制御信号を二次側で生成し、制御信号を一次側に伝送することで、制御信号に同期してスイッチングトランジスタをスイッチングさせることができる。
【0005】
しかし、単にスイッチング周波数を制御するだけでは、制御として十分でないことが多く、改善が要望される。例えば、負荷が重くなることで制御信号の周波数が一次側の最大動作周波数に達した際、それ以上の制御ができなくことが懸念される。
【0006】
本開示は、良好なスイッチング制御の実現に寄与する絶縁型DC/DCコンバータ及びAC/DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る絶縁型DC/DCコンバータは、互いに絶縁された一次側巻線及び二次側巻線を有する電力用トランスを用いて、一次側における一次側電圧から二次側における二次側電圧を生成する絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記一次側に配置される回路であって、前記一次側巻線に対して直列に接続されたスイッチング素子をスイッチングする一次側制御回路と、前記二次側に配置される回路であって、前記二次側電圧に基づき第1制御情報及び第2制御情報を含む制御信号を生成する二次側制御回路と、前記制御信号に含まれる各制御情報を絶縁形式で前記一次側制御回路に伝送する絶縁伝送回路と、を備え、前記一次側制御回路は、前記第1制御情報に基づき、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を制御し、前記第2制御情報に基づき、前記スイッチング素子を通じて前記一次側巻線に流れる一次側電流のピーク値を制御する構成(第1の構成)である。
【0008】
上記第1の構成に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記二次側制御回路は、前記二次側電圧に応じたフィードバック電圧と所定の基準電圧との差分に応じた誤差電圧を生成する誤差電圧生成部と、前記誤差電圧と所定範囲内で変動するスロープ電圧とに基づいて前記制御信号を生成する制御信号生成部と、を有する構成(第2の構成)であっても良い。
【0009】
上記第2の構成に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記制御信号は、前記誤差電圧に応じた周波数の情報を前記第1制御情報として有し、且つ、前記誤差電圧と前記スロープ電圧との比較結果に応じた情報を前記第2制御情報として有する構成(第3の構成)であっても良い。
【0010】
上記第3の構成に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記制御信号生成部は、前記誤差電圧に応じた周波数を有し且つ前記誤差電圧及び前記スロープ電圧の比較結果に応じたパルス幅を持つ信号を前記制御信号として生成し、前記第1制御情報は前記制御信号の周波数の情報であって、前記第2制御情報は前記制御信号のパルス幅の情報であり、前記絶縁伝送回路は、前記第1及び第2制御情報を、前記一次側及び二次側に亘って設けられた絶縁素子を用いて前記一次側に伝送することにより、前記第1制御情報を有する第1受信信号及び前記第2制御情報を有する第2受信信号を前記一次側において生成し、前記一次側制御回路は、前記第1及び第2受信信号に基づき、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を制御するとともに、前記スイッチング素子を通じて前記一次側巻線に流れる前記一次側電流のピーク値を制御する構成(第4の構成)であっても良い。
【0011】
上記第4の構成に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記制御信号は、第1レベル又は第2レベルの信号レベルをとる矩形波信号であり、前記制御信号の各周期において前記制御信号の信号レベルが前記第2レベルとなる期間の長さが前記制御信号のパルス幅に相当し、前記制御信号生成部は、前記誤差電圧に応じた周波数で前記制御信号の信号レベルを前記第1レベルから前記第2レベルに遷移させ、その遷移タイミングから始まる前記制御信号の各周期において前記誤差電圧及び前記スロープ電圧の比較結果に基づき前記制御信号の信号レベルを前記第2レベルから前記第1レベルに遷移させ、前記絶縁伝送回路は、前記絶縁素子を用いて、前記制御信号の信号レベルにおける前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に同期したパルスを含む前記第1受信信号を前記一次側において生成し、且つ、前記制御信号の信号レベルにおける前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移に同期したパルスを含む前記第2受信信号を前記一次側において生成し、前記一次側制御回路は、前記第2受信信号に基づき所定の電圧範囲内で判定電圧を可変設定する判定電圧設定部を有し、前記第1受信信号中のパルスのタイミングに同期して前記スイッチング素子のターンオンさせた後、前記一次側電流に比例する電流センス電圧が前記判定電圧に達すると前記スイッチング素子をターンオフさせる構成(第5の構成)であっても良い。
【0012】
上記第5の構成に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記制御信号生成部は、前記誤差電圧に応じた周波数で前記制御信号の信号レベルを前記第1レベルから前記第2レベルに遷移させ、その遷移タイミングから始まる前記制御信号の各周期において、前記スロープ電圧が所定初期電圧より所定方向に向けて単調変化し、当該遷移タイミングから所定時間が経過する前に前記誤差電圧及び前記スロープ電圧間の大小関係が反転するときには当該遷移タイミングより前記所定時間だけ後のタイミングにて、当該遷移タイミングから前記所定時間が経過して以降に前記大小関係が反転するときには当該反転のタイミングにて、前記制御信号の信号レベルを前記第2レベルから前記第1レベルに遷移させる構成(第6の構成)であっても良い。
【0013】
上記第5又は第6の構成に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記判定電圧設定部は、前記第1受信信号中のパルスに同期した前記スイッチング素子のターンオンを経て前記スイッチング素子がターンオフされるまでは前記判定電圧を固定し、前記スイッチング素子がターンオフされると前記判定電圧を前記電圧範囲内の最大電圧に設定し、その後、前記第2受信信号中のパルスを契機に前記判定電圧を前記電圧範囲内の最大電圧から所定規則に沿って低下させてゆき、前記第1受信信号にて次のパルスが生じると前記判定電圧の低下を止める構成(第7の構成)であっても良い。
【0014】
上記第4~第7の構成の何れかに係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記絶縁素子は、コンデンサにより構成される構成(第8の構成)であっても良い。
【0015】
上記第5~第7の構成の何れかに係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記絶縁素子は、コンデンサにより構成され、前記絶縁伝送回路は、前記制御信号の信号レベルにおける前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移を前記コンデンサを用いて前記一次側に伝送することで前記第1受信信号を生成し、前記制御信号の信号レベルにおける前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移を前記コンデンサを用いて前記一次側に伝送することで前記第2受信信号を生成する構成(第9の構成)であっても良い。
【0016】
上記第4~第7の構成の何れかに係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記絶縁素子は、パルストランスにより構成される構成(第10の構成)であっても良い。
【0017】
上記第5~第7の構成の何れかに係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記絶縁素子は、第1及び第2パルストランスを含み、前記絶縁伝送回路は、前記制御信号の信号レベルにおける前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移を前記第1パルストランスを用いて前記一次側に伝送することで前記第1受信信号を生成し、前記制御信号の信号レベルにおける前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移を前記第2パルストランスを用いて前記一次側に伝送することで前記第2受信信号を生成する構成(第11の構成)であっても良い。
【0018】
本開示に係るAC/DCコンバータは、交流電圧を全波整流する整流回路と、全波整流された電圧を平滑化することで直流電圧を生成する平滑コンデンサと、前記直流電圧としての前記一次側電圧から直流の前記二次側電圧を出力電圧として生成する、上記第1~第11の構成の何れかに係る絶縁型DC/DCコンバータと、を備えた構成(第12の構成)である。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、良好なスイッチング制御の実現に寄与する絶縁型DC/DCコンバータ及びAC/DCコンバータを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本開示の第1実施形態に係るAC/DCコンバータの全体構成を示す図である。
【
図2】本開示の第1実施形態に係り、AC/DCコンバータに含まれるDC/DCコンバータの構成図である。
【
図3】本開示の第1実施形態に係り、AC/DCコンバータの動作の流れを示す図である。
【
図4】本開示の第1実施形態に係る二次側制御回路の構成図である。
【
図5】本開示の第1実施形態に係る絶縁伝送回路の構成図である。
【
図6】本開示の第1実施形態に係り、二次側で生成される制御信号と、その制御信号に基づき一次側で発生又は生成される複数の信号の波形図である。
【
図7】本開示の第1実施形態に係る一次側制御回路の構成図である。
【
図8】本開示の第1実施形態に係り、一次側電流に比例する電流センス電圧と対比されるべき判定電圧の変動方法の説明図である。
【
図9】本開示の第1実施形態に係り、負荷の消費電力が比較的小さい状態で二次側電圧が目標電圧にて安定化しているケースにおける各電圧及び信号等の波形図である。
【
図10】本開示の第1実施形態に係り、負荷の消費電力が比較的大きい状態で二次側電圧が目標電圧にて安定化しているケースにおける各電圧及び信号等の波形図である。
【
図11】本開示の第1実施形態に係り、誤差電圧が徐々に増大する過渡状態での各電圧及び信号等の波形図である。
【
図12】本開示の第2実施形態に係る絶縁伝送回路の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本開示の実施形態の例を、図面を参照して具体的に説明する。参照される各図において、同一の部分には同一の符号を付し、同一の部分に関する重複する説明を原則として省略する。尚、本明細書では、記述の簡略化上、情報、信号、物理量、素子又は部位等を参照する記号又は符号を記すことによって、該記号又は符号に対応する情報、信号、物理量、素子又は部位等の名称を省略又は略記することがある。例えば、後述の“M1”によって参照されるスイッチングトランジスタは(
図2参照)、スイッチングトランジスタM1と表記されることもあるし、トランジスタM1と略記されることもあり得るが、それらは全て同じものを指す。
【0022】
まず、本開示の実施形態の記述にて用いられる幾つかの用語について説明を設ける。レベルとは電位のレベルを指し、任意の注目した信号又は電圧についてハイレベルはローレベルよりも高い電位を有する。任意の注目した信号又は電圧について、信号又は電圧がハイレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがハイレベルにあることを意味し、信号又は電圧がローレベルにあるとは信号又は電圧のレベルがローレベルにあることを意味する。信号についてのレベルは信号レベルと表現されることがあり、電圧についてのレベルは電圧レベルと表現されることがある。任意の注目した信号又は電圧において、ローレベルからハイレベルへの切り替わりをアップエッジ(或いはライジングエッジ)と称し、ローレベルからハイレベルへの切り替わりのタイミングをアップエッジタイミング(或いはライジングエッジタイミング)と称する。同様に、任意の注目した信号又は電圧において、ハイレベルからローレベルへの切り替わりをダウンエッジ(或いはフォーリングエッジ)と称し、ハイレベルからローレベルへの切り替わりのタイミングをダウンエッジタイミング(或いはフォーリングエッジタイミング)と称する。
【0023】
MOSFETを含むFET(電界効果トランジスタ)として構成された任意のトランジスタについて、オン状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が導通している状態を指し、オフ状態とは、当該トランジスタのドレイン及びソース間が非導通となっている状態(遮断状態)を指す。FETに分類されないトランジスタについても同様である。MOSFETは、特に記述無き限り、エンハンスメント型のMOSFETであると解される。MOSFETは“metal-oxide-semiconductor field-effect transistor”の略称である。PWMはパルス幅変調(pulse width modulation)の略称である。
【0024】
以下、任意のトランジスタについて、オン状態、オフ状態を、単に、オン、オフと表現することもある。任意のトランジスタについて、オフ状態からオン状態への切り替わりをターンオンと表現し、オン状態からオフ状態への切り替わりをターンオフと表現する。また、任意のトランジスタについて、トランジスタがオン状態となっている期間をオン期間と称することがあり、トランジスタがオフ状態となっている期間をオフ期間と称することがある。ハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる任意の信号について、当該信号のレベルがハイレベルとなる期間をハイレベル期間と称し、当該信号のレベルがローレベルとなる期間をローレベル期間と称する。ハイレベル又はローレベルの電圧レベルをとる任意の電圧についても同様である。
【0025】
<<第1実施形態>>
本開示の第1実施形態を説明する。
図1は、第1実施形態に係るAC/DCコンバータ1の全体構成図である。AC/DCコンバータ1は、フィルタ2と、整流回路3と、絶縁型DC/DCコンバータ4であるDC/DCコンバータ4と、平滑コンデンサC1と、出力コンデンサC2と、を備える。出力コンデンサC2はDC/DCコンバータ4の構成要素に含まれると解しても構わない。詳細は後述の説明から明らかとなるが、AC/DCコンバータ1では、一次側電圧V
Pからトランスを用いスイッチング方式にて二次側電圧V
Sを生成する。
【0026】
AC/DCコンバータ1は、AC/DCコンバータ1の一次側に配置された一次側回路とAC/DCコンバータ1の二次側に配置された二次側回路とから成り、一次側回路と二次側回路とは互いに電気的に絶縁される。本明細書において、絶縁とは直流の信号及び電力の伝達が遮断されていることを意味する。フィルタ2、整流回路3及び平滑コンデンサC1は一次側回路に配置され、出力コンデンサC2は二次側回路に配置される。DC/DCコンバータ4は一次側回路と二次側回路に亘って配置される。尚、DC/DCコンバータ4に注目した場合、上記一次側回路は、DC/DCコンバータ4を構成する回路の内の一次側に配置された回路であって、且つ、上記二次側回路は、DC/DCコンバータ4を構成する回路の内の二次側に配置された回路である、と解しても良い。
【0027】
一次側回路におけるグランドは“GND1”にて参照され、二次側回路におけるグランドは“GND2”にて参照される。一次側電圧VPを含む、一次側回路における任意の電圧又は信号は、グランドGND1を基準とする電圧又は信号であって、グランドGND1から見た電位を有する。二次側電圧VSを含む、二次側回路における任意の電圧又は信号は、グランドGND2を基準とする電圧又は信号であって、グランドGND2から見た電位を有する。一次側回路及び二次側回路の夫々において、グランドは0V(ゼロボルト)の基準電位を有する基準導電部(所定電位点)を指す又は基準電位そのものを指す。但し、グランドGND1とグランドGND2は互いに絶縁されているため、互いに異なる電位を有し得る。基準導電部は金属等の導体にて形成される。
【0028】
フィルタ2は、AC/DCコンバータ1に入力された交流電圧VACのノイズを除去する。交流電圧VACは商用交流電圧であって良い。整流回路3は、フィルタ2を通じて供給された交流電圧VACを全波整流するダイオードブリッジ回路である。平滑コンデンサC1は全波整流された電圧を平滑化することで直流電圧を生成する。平滑コンデンサC1にて生成された直流電圧は一次側電圧VPとして機能する。一次側電圧VPは一対の入力端子TM1H及びTM1L間に加わる。詳細には、平滑コンデンサC1の低電位側の端子はグランドGND1に接続されると共に入力端子TM1Lに接続され、平滑コンデンサC1の高電位側の端子は入力端子TM1Hに接続される。そして、入力端子TM1Lにおける電位を基準に入力端子TM1Hに一次側電圧VPが加わる。
【0029】
DC/DCコンバータ4は、一次側電圧VPをスイッチング方式にて電力変換(直流-直流変換)することで、所定の目標電圧VTGにて安定化された二次側電圧VSを生成する。二次側電圧VSはAC/DCコンバータ1の出力電圧に相当し、一対の出力端子TM2H及びTM2L間に加わる。詳細には、出力コンデンサC2の低電位側の端子はグランドGND2に接続されると共に出力端子TM2Lに接続され、出力コンデンサC2の高電位側の端子は出力端子TM2Hに接続される。そして、出力端子TM2Lにおける電位を基準に出力端子TM2Hに二次側電圧VSが加わる。一対の入力端子TM1H及びTM1LはDC/DCコンバータ4における入力端子対に相当すると考えて良く、一対の出力端子TM2H及びTM2LはAC/DCコンバータ1又はDC/DCコンバータ4における出力端子対に相当すると考えて良い。
【0030】
図1には負荷LDも示されている。負荷LDは、AC/DCコンバータ1の負荷であると考えることもできるし、DC/DCコンバータ4に注目すればDC/DCコンバータ4の負荷であると考えることもできる。負荷LDは、一対の出力端子TM
2H及びTM
2Lに接続され、二次側電圧V
Sに基づき駆動する任意の負荷である。例えば、負荷LDは、マイクロコンピュータ、DSP(Digital Signal Processor)、電源回路、照明機器、アナログ回路又はデジタル回路である。
【0031】
図2に、AC/DCコンバータ1に設けられるDC/DCコンバータ4の内部構成例を示す。DC/DCコンバータ4は、一次側巻線W1及び二次側巻線W2を有する電力用トランスであるトランスTRを備える。トランスTRにおいて、一次側巻線W1と二次側巻線W2とは電気的に絶縁されつつ互いに逆極性にて磁気結合されている。
【0032】
DC/DCコンバータ4の一次側回路(換言すればAC/DCコンバータ1の一次側回路)には、一次側巻線W1に加えて、一次側制御回路10と、一次側電源回路11と、スナバ回路12と、平滑コンデンサC1と、スイッチング素子の例としてのスイッチングトランジスタM1と、センス抵抗RCSと、が設けられる。DC/DCコンバータ4に注目した場合、平滑コンデンサC1は入力コンデンサC1とも称される。上述したように、入力端子TM1L及びTM1H間に入力コンデンサC1が設けられ、入力コンデンサC1の両端子間に一次側電圧VPが加わる。
【0033】
スイッチングトランジスタM1はNチャネル型のMOSFET(metal-oxide-semiconductor field-effect transistor)として構成されている。一次側巻線W1の一端は入力端子TM1Hに接続されて直流の一次側電圧VPを受ける。一次側巻線W1の他端はスイッチングトランジスタM1のドレインに接続され、スイッチングトランジスタM1のソースはセンス抵抗RCSを介してグランドGND1に接続される。一次側電源回路11は、一次側電圧VPを直流―直流変換することで所望の電圧値を有する電源電圧VCCを生成して一次側制御回路10に供給する。一次側制御回路10は電源電圧(駆動電圧)VCCに基づいて駆動する。
【0034】
一次側制御回路10はスイッチングトランジスタM1のゲートに接続され、スイッチングトランジスタM1のゲートに駆動信号DRVを供給することでスイッチングトランジスタM1をスイッチング駆動する。駆動信号DRVは、信号レベルがローレベル及びハイレベル間で切り替わる矩形波状の信号である。トランジスタM1のゲートにローレベル、ハイレベルの信号が供給されているとき、トランジスタM1は、夫々、オフ状態、オン状態となる。スナバ回路12は一次側巻線W1に並列接続され、トランジスタM1のターンオフ時にトランジスタM1のドレインに生じうる過渡的な高電圧を吸収する。
【0035】
DC/DCコンバータ4の二次側回路(換言すればAC/DCコンバータ1の二次側回路)には、二次側巻線W2に加えて、二次側制御回路20と、整流ダイオードD2と、分圧回路DIVと、出力コンデンサC2と、が設けられる。
【0036】
二次側巻線W2の一端は整流ダイオードD2のアノードに接続され、整流ダイオードD2のカソードは出力端子TM2Hに接続される。二次側巻線W2の他端は出力端子TM2Lに接続される。上述したように、出力端子TM2L及びTM2H間に出力コンデンサC2が設けられ、出力コンデンサC2の両端子間に二次側電圧VSが加わる。分圧回路DIVは複数の分圧抵抗から成り、二次側電圧VSを分圧することで二次側電圧VSに応じたフィードバック電圧VFBを生成する。ここでは、分圧回路DIVは分圧抵抗Ra及びRbの直列回路から成り、分圧抵抗Raの一端が出力端子TM2Hに接続され、分圧抵抗Raの他端が分圧抵抗Rbを介してグランドGND2に接続されているものとする。そうすると、分圧抵抗Ra及びRb間の接続ノードには二次側電圧VSの分圧であるフィードバック電圧VFBが加わる。二次側制御回路20は二次側電圧VSを電源電圧(駆動電圧)として用いて駆動する。
【0037】
一次側回路において、入力端子TM1Hから、一次側巻線W1、スイッチングトランジスタM1及びセンス抵抗RCSを通じてグランドGND1へと流れる電流を一次側電流と称し、記号“IP”にて参照する。二次側回路において、グランドGND2から二次側巻線W2を通じ整流ダイオードD2のアノードに向けて流れる電流を二次側電流と称し、記号“IS”にて表す。また、センス抵抗RCSの両端間に生じる電圧(即ちセンス抵抗RCSでの電圧降下)を電流センス電圧VCSと称する。電流センス電圧VCSは、グランドGND1の電位を基準とする電圧であって、一次側電流IPに比例する(より詳細には一次側電流IPの瞬時値に比例する)電圧値を有する。
【0038】
DC/DCコンバータ4において、一次側回路と二次側回路とに亘って絶縁伝送回路30が設けられている。絶縁伝送回路30は、一次側制御回路10及び二次側制御回路20間の通信を実現するための回路である。絶縁伝送回路30を介した通信は絶縁形式の通信である(即ち一次側回路と二次側回路とを絶縁した状態での通信である)。本実施形態において、絶縁伝送回路30を介した通信は二次側制御回路20から一次側制御回路10への一方向通信である。但し、制御回路10及び20間で双方向通信が可能となるようDC/DCコンバータ4を構成しても良い。以下では、二次側制御回路20から一次側制御回路10への一方向通信にのみ注目する。
【0039】
一次側制御回路10は、二次側制御回路20に依らず電流センス電圧VCSに基づいて駆動信号DRVを生成することができる他、絶縁伝送回路30を介した二次側制御回路20の制御の下で、駆動信号DRVを生成することもできる。
【0040】
一次側制御回路10には複数の端子が設けられており、一次側制御回路10に設けられた複数の端子には、電源電圧VCCを受ける端子TM11と、グランドGND1に接続される端子TM12と、スイッチングトランジスタM1のゲートに接続される端子TM13と、電流センス電圧VCSを受ける端子TM14と、一次側にて絶縁伝送回路30に接続される端子TM15と、が含まれる。端子TM15は2以上の端子にて構成されることもある。
【0041】
二次側制御回路20には複数の端子が設けられており、二次側制御回路20に設けられた複数の端子には、二次側電圧VSを受ける端子TM21と、グランドGND2に接続される端子TM22と、フィードバック電圧VFBを受ける端子TM23と、二次側にて絶縁伝送回路30に接続される端子TM24と、が含まれる。端子TM24は2以上の端子にて構成されることもある。尚、分圧回路DIVは二次側制御回路20に内蔵されるものであっても良く、この場合、端子TM23は二次側制御回路20の内部端子を表す。
【0042】
このように構成されたDC/DCコンバータ4では、スイッチングトランジスタM1をスイッチングすることにより一次側電圧VPから二次側電圧VSを得ることができる。このスイッチングにより、スイッチングトランジスタM1は交互にオン、オフとされる。スイッチングトランジスタM1のオン期間において一次側巻線W1にエネルギが蓄積される。そして、蓄積されたエネルギがスイッチングトランジスタM1のオフ期間にて二次側巻線W2から放出されることにより(詳細には、上記蓄積されたエネルギに基づく二次側電流ISがスイッチングトランジスタM1のオフ期間にて整流ダイオードD2を通じて流れることにより)出力コンデンサC2が充電されて二次側電圧VSが得られる。
【0043】
尚、一次側電源回路11を設ける代わりに、トランスTRに補助巻線を設けておき、補助巻線を含んで構成される自己電源回路にて一次側制御回路10の電源電圧VCCが生成されるようにしても良い。
【0044】
また、ここでは、ダイオード整流方式が採用されたDC/DCコンバータ4の構成を例に挙げたが、DC/DCコンバータ4は、一次側巻線W1に加わる一次側電圧VPからスイッチング方式によりトランスTRの二次側において二次側電圧VSを生成する絶縁型DC/DCコンバータであれば任意である。例えば、二次側回路において整流ダイオードD2の代わりに同期整流トランジスタ(不図示)を設けることで、同期整流方式のDC/DCコンバータ4を構成するようにしても良い。この場合、二次側巻線W2の一端と出力端子TM2H又はTM2Lとの間に同期整流トランジスタが挿入され、スイッチトランジスタM1のオフ期間の全部又は一部において二次側制御回路20により同期整流トランジスタがオンとされる。また例えば、DC/DCコンバータ4を、フォワード方式の絶縁型DC/DCコンバータとして構成しても良く、この場合にも同期整流方式及びダイオード整流方式の何れかが採用されて良い。
【0045】
図3はAC/DCコンバータ1及びDC/DCコンバータ4の動作フローチャートである。AC/DCコンバータ1に対する交流電圧V
ACの入力が開始されると(ステップSTP1)、一次側電圧V
Pが上昇することで一次側制御回路10が起動可能な電源電圧VCCが生成されて一次側制御回路10が起動する(ステップSTP2)。一次側制御回路10が起動すると、一次側制御回路10は、まず所定のバースト動作を行う(ステップSTP3)。バースト動作は、二次側制御回路20に依らず、一次側制御回路10単体で実行される。バースト動作において、一次側制御回路10は、スイッチングトランジスタM1をターンオンした後、電流センス電圧V
CSの電圧値が所定値に達した時点でスイッチングトランジスタM1をターンオフするという動作を周期的に繰り返し実行する。これにより、出力コンデンサC2が充電されてゆき、二次側電圧V
Sが所定の二次側起動電圧に達すると二次側制御回路20が起動する(ステップSTP4)。二次側制御回路20の起動後、制御回路10及び20の協働によりトランジスタM1がスイッチング駆動されるフィードバック制御が開始される(ステップSTP5)。
【0046】
以下、本実施形態では、二次側制御回路20の起動後に実行されるフィードバック制御の内容、及び、フィードバック制御を行うための構成について説明する。
【0047】
[二次側制御回路20]
図4に二次側制御回路20の内部構成を示す。二次側制御回路20は、誤差電圧V
ERRを生成する誤差電圧生成部210と、制御信号TXを生成する制御信号生成部220を有する。フィードバック電圧V
FB、誤差電圧V
ERR、後述の基準電圧V
REF及びスロープ電圧V
SLP、並びに、制御信号TXは、二次側回路における電圧又は信号であり、故にグランドGND2から見た電位を有する(グランドGND2の電位を0Vとした電位を有する)。
【0048】
誤差電圧生成部210はエラーアンプ211を有する。エラーアンプ211の反転入力端子及び非反転入力端子には、夫々、フィードバック電圧VFB及び基準電圧VREFが入力され、エラーアンプ211の出力端子からフィードバック電圧VFB及び基準電圧VREF間の差分に応じた誤差電圧VERRが出力される。基準電圧VREFは、二次側制御回路20内で生成された正の直流電圧であって、グランドGND2の電位よりも高い所定電圧値を有する。エラーアンプ211は、フィードバック電圧VFBが基準電圧VREFよりも低いときには誤差電圧VERRが上昇するように、自身の出力端子を通じて誤差電圧VERRが加わる配線に対し電流を出力し、フィードバック電圧VFBが基準電圧VREFよりも高いときには誤差電圧VERRが低下するように、自身の出力端子を通じて誤差電圧VERRが加わる配線から電流を引き込む。フィードバック電圧VFBが基準電圧VREFと一致するようにフィードバック制御が行われるため、二次側電圧VSは基準電圧VREFと分圧回路DIVの分圧比とで定まる目標電圧VTGにて安定化される。
【0049】
図4の構成例では、誤差電圧生成部210にコンデンサ212及び抵抗213が設けられ、エラーアンプ211、コンデンサ212及び抵抗213により積分回路が形成される。即ち、
図4の構成例では、エラーアンプ211の出力端子に抵抗213の一端が接続され、抵抗213の他端がコンデンサ212を介してエラーアンプ211の反転入力端子に接続される。結果、フィードバック電圧V
FB及び基準電圧V
REF間の差分の時間方向への積分が誤差電圧V
ERRとして得られる。
【0050】
制御信号生成部220は、スロープ電圧V
SLPを生成するスロープ電圧生成部221を有し、誤差電圧V
ERRとスロープ電圧V
SLPとに基づいてデジタルの制御信号TXを生成する。スロープ電圧V
SLPは、所定のスロープ可変範囲内で時間経過と共に変動する電圧であり、三角波又は鋸波状の電圧であって良い。制御信号TXはローレベル又はハイレベルの信号レベルを持つ矩形波信号である。
図6に制御信号TXの波形例が示されている。制御信号TXの周波数を記号“f
TX”にて表す。制御信号TXの1周期分の期間は、制御信号TXのハイレベル期間と、それに隣接する制御信号TXのローレベル期間とから成り、制御信号TXの各周期における制御信号TXのハイレベル期間の長さをパルス幅PW
TXと称する。ここでは、制御信号TXの各周期は制御信号TXのハイレベル期間から始まると考える。制御信号TXのハイレベルの電位は制御信号TXのローレベルの電位よりも所定電圧V
Qだけ高い。
【0051】
制御信号生成部220は、誤差電圧VERRに基づいて制御信号TXの周波数fTXを決定及び制御すると共に、誤差電圧VERR及びスロープ電圧VSLPの比較結果に基づきパルス幅PWTXを決定及び制御する。このため、制御信号TXは、周波数fTXの情報である第1制御情報と、パルス幅PWTXの情報(誤差電圧VERR及びスロープ電圧VSLPの比較結果に応じた情報)である第2制御情報と、を有する。
【0052】
[絶縁伝送回路30]
図5に絶縁伝送回路30の内部構成を示す。絶縁伝送回路30は、上記の第1及び第2制御情報を、一次側及び二次側に亘って設けられた絶縁素子を用いて一次側に伝送し、これによって、第1制御情報を有する第1受信信号(換言すれば第1受信側生成信号)及び第2制御情報を有する第2受信信号(換言すれば第2受信側生成信号)を一次側において生成する。後述の信号SET、IPCNTは、第1、第2受信信号の例である。第1実施形態では、絶縁素子としてコンデンサが用いられる。具体的には、
図5の絶縁伝送回路30は、コンデンサCA及びCYと、コンデンサCPと、抵抗R
PDと、コンパレータCMP1及びCMP2と、を備える。
図5に示される端子311~314は絶縁伝送回路30に設けられた内部端子又は金属パッドである。端子311及び313は二次側回路内に設けられ、端子312及び314は一次側回路内に設けられる。
【0053】
コンデンサCA及びCYは、夫々に、一次側及び二次側に亘って設けられるコンデンサ(換言すれば一次側回路及び二次側回路に亘って設けられるコンデンサ)であり、高耐圧セラミックコンデンサ等にて構成される。コンデンサCAの一端は二次側回路内において端子311に接続され、コンデンサCAの他端は一次側回路内において端子312に接続される。コンデンサCYの一端は二次側回路内において端子313に接続され、コンデンサCYの他端は一次側回路内において端子314に接続される。端子313はグランドGND2に接続され、端子313の電位を基準に制御信号TXが端子311に入力される。制御信号TXがローレベルであるとき端子311及び313間の電位差はゼロであり、制御信号TXがハイレベルであるとき、端子313の電位から見て端子311の電位は電圧V
Q(
図6参照)だけ高くなる。
図2に示される端子TM24を通じて制御信号TXが端子311に入力される。
【0054】
コンデンサCPと、抵抗RPDと、コンパレータCMP1及びCMP2は、一次側回路に設けられる。コンデンサCP及び抵抗RPDの各一端は端子312に接続される一方、コンデンサCP及び抵抗RPDの各他端は端子314に接続される。端子314はグランドGND1に接続される。端子314の電位から見て端子312に生じる信号を信号RXと称し、信号RXの電位を持つ電圧を電圧VRXと称する。端子312はコンパレータCMP1の非反転入力端子及びコンパレータCMP2の反転入力端子に共通接続される。このため、コンパレータCMP1の非反転入力端子及びコンパレータCMP2の反転入力端子には信号RXが入力される(換言すれば電圧VRXが入力される)。コンパレータCMP1の反転入力端子には所定の正の閾電圧VTH1が入力され、コンパレータCMP2の非反転入力端子には所定の負の閾電圧VTH2が入力される。
【0055】
コンパレータCMP1は、電圧VRXと閾電圧VTH1とを比較し、その比較結果に基づく信号SETを出力する。コンパレータCMP2は、電圧VRXと閾電圧VTH2とを比較し、その比較結果に基づく信号IPCNTを出力する。閾電圧VTH1、VTH2及びVRX、並びに、信号RX、SET及びIPCNTは、一次側回路における電圧又は信号であり、故にグランドGND1から見た電位を有する(グランドGND1の電位を0Vとした電位を有する)。
【0056】
信号SETはハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる二値化信号である。具体的には、コンパレータCMP1は、電圧V
RXが閾電圧V
TH1より高い場合には信号SETをハイレベルとし、電圧V
RXが閾電圧V
TH1より低い場合には信号SETをローレベルとする(
図6も参照)。“V
RX=V
TH1”の場合には、信号SETはハイレベル又はローレベルとなる。信号IPCNTもハイレベル又はローレベルの信号レベルをとる二値化信号である。具体的には、コンパレータCMP2は、閾電圧V
TH2が電圧V
RXより高い場合には信号IPCNTをハイレベルとし、閾電圧V
TH2が電圧V
RXより低い場合には信号IPCNTをローレベルとする(
図6も参照)。“V
RX=V
TH2”の場合には、信号IPCNTはハイレベル又はローレベルとなる。
【0057】
コンパレータCMP1及びCMP2の夫々は、一次側回路で生成された、一次側回路における正の直流電圧を正側の電源電圧V
POSとして用い、且つ、一次側回路で生成された、一次側回路における負の直流電圧を負側の電源電圧V
NEGとして用いて駆動する。正側の電源電圧V
POS(例えば3V)は閾電圧V
TH1(例えば1.5V)よりも高い。負側の電源電圧V
NEG(例えば-3V)は閾電圧V
TH2(例えば-1.5V)よりも低い。正側の電源電圧V
POSは電源電圧VCC(
図2参照)と同じであって良い。負側の電源電圧V
NEGは、電源電圧VCCに基づきチャージポンプ回路等を用いて生成されて良い。信号SET及びIPCNTにおいて、ハイレベルは電源電圧V
POSと実質的に同じ電位を有し、ローレベルは実質的にグランドGND1と同じ電位を有する。
【0058】
図6に示す如く、制御信号TXのアップエッジに同期して電圧V
RXが微小時間だけ閾電圧V
TH1を超えることで、信号SETにパルスPLS1が生じる。つまり、信号SETでは周波数f
TXの逆数の間隔でパルスPLS1が生じるため、周波数f
TXの情報に相当する第1制御情報が信号SETに含まれることになる。パルスPLS1は、信号SETの一部であって、信号SETのハイレベル期間中の信号SETに相当する。制御信号TXのアップエッジタイミングと信号SET中のパルスPLS1の発生タイミングとの間には、実際には若干のずれがあるが、以下では、当該ずれの存在を無視する(ずれは無いと仮定する)。
【0059】
一方、制御信号TXのダウンエッジに同期して電圧V
RXが微小時間だけ閾電圧V
TH2を下回ることで、信号IPCNTにパルスPLS2が生じる。パルスPLS2はパルス幅PW
TXに依存するタイミングで生じるので、パルス幅PW
TXの情報に相当する第2制御情報が信号IPCNTに含まれることになる。パルスPLS2は、信号IPCNTの一部であって、信号IPCNTのハイレベル期間中の信号IPCNTに相当する。制御信号TXのダウンエッジタイミングと信号IPCNT中のパルスPLS2の発生タイミングとの間には、実際には若干のずれがあるが、以下では、当該ずれの存在を無視する(ずれは無いと仮定する)。尚、
図5の絶縁伝送回路30において、コンデンサCYは省略され得る。
【0060】
一次側回路において、信号SET及びIPCNTは一次側制御回路10に供給される。このように、絶縁伝送回路30によれば、デジタルの制御信号TXに含まれる第1及び第2制御情報が、絶縁形式で、デジタル信号(SET、IPCNT)として一次側制御回路10に伝送される。
【0061】
[一次側制御回路10]
図7に一次側制御回路10の内部構成を示す。一次側制御回路10は、駆動信号生成部110と、コンパレータ120と、判定電圧設定部130と、を備える。
図2の端子TM15は2つの端子TM15a及びTM15bを有し、端子TM15a及びTM15bに対し夫々信号SET及びIPCNTが入力される。
【0062】
駆動信号生成部110は、信号SETとコンパレータ120から供給される信号RSTに基づいて、スイッチングトランジスタM1のゲートに供給される駆動信号DRVを生成する。具体的には、
図7の駆動信号生成部110は、FF111及びドライバ112を備える。FF111は、RS型のフリップフロップであり、セット入力端子(S)と、リセット入力端子(R)と、出力端子(Q)と、備える。FF111において、セット入力端子(S)に対し信号SETが入力され、リセット入力端子(R)に対し信号RSTが入力される。
【0063】
FF111は、セット入力端子(S)への入力信号がハイレベルであって且つリセット入力端子(R)への入力信号がローレベルであるとき、“1”の論理値をラッチして保持し、セット入力端子(S)への入力信号がローレベルであって且つリセット入力端子(R)への入力信号がハイレベルであるとき、“0”の論理値をラッチして保持する。FF111は、セット入力端子(S)への入力信号及びリセット入力端子(R)への入力信号が共にローレベルであるとき、自身が保持している論理値をそのまま保持する。FF111において、セット入力端子(S)及びリセット入力端子(R)への入力信号が共にハイレベルとなることは無い。FF111は、自身が保持している論理値が“1”であるとき、ハイレベルの信号を出力端子(Q)から出力し、自身が保持している論理値が“0”であるとき、ローレベルの信号を出力端子(Q)から出力する。ドライバ112は、端子TM13を通じてトランジスタM1のゲートに接続され、FF111の出力信号をインピーダンス変換して得られる信号を駆動信号DRVとしてトランジスタM1のゲートに供給する。FF111の出力信号がハイレベルであるとき、駆動信号DRVもハイレベルとなってトランジスタM1がオン状態となり、FF111の出力信号がローレベルであるとき、駆動信号DRVもローレベルとなってトランジスタM1がオフ状態となる。
【0064】
コンパレータ120の非反転入力端子は、端子TM14を通じて、トランジスタM1のソースとセンス抵抗RCSとの接続ノードに接続され、電流センス電圧VCSを受ける。コンパレータ120の反転入力端子には判定電圧VOFFが供給される。コンパレータ120は、電流センス電圧VCSを判定電圧VOFFと比較し、比較結果を示す信号RSTを出力する。具体的には、コンパレータ120は、電流センス電圧VCSが判定電圧VOFFより高い場合には信号RSTをハイレベルとし、電流センス電圧VCSが判定電圧VOFFより低い場合には信号RSTをローレベルとする。“VCS=VOFF”の場合、信号RSTはハイレベル及びローレベルの何れかになるが、ここではハイレベルになると考える。電圧VCS及びVOFF並びに信号DRV及びRSTは、信号SET及びIPCNTと同様に、一次側回路における電圧又は信号であり、故にグランドGND1から見た電位を有する(グランドGND1の電位を0Vとした電位を有する)。
【0065】
上記の構成により、駆動信号生成部110の制御の下で、以下の単位動作が行われる。単位動作において、駆動信号生成部110は、信号SET中のパルスPLS1の発生タイミングに同期して駆動信号DRVをローレベルからハイレベルに切り替えることによりトランジスタM1をターンオンさせ、その後、電流センス電圧V
CSが判定電圧V
OFFに達すると駆動信号DRVをハイレベルからローレベルに切り替えることによりトランジスタM1をターンオフさせる。単位動作はパルスPLS1の発生周期にて繰り返し行われる。パルスPLS1の発生周期は、制御信号TXの周波数f
TXの逆数に相当するため(
図6参照)、トランジスタM1がスイッチング周波数は制御信号TXの周波数f
TXと一致する。即ち、一次側制御回路10では、周波数f
TXの情報に相当する第1制御情報(
図6参照)に基づき、トランジスタM1のスイッチング周波数が制御される。一次側電流I
Pのピーク値とセンス抵抗R
CSの抵抗値との積が判定電圧V
OFFに相当するので、判定電圧V
OFFにより一次側電流I
Pのピーク値が定められる、と言える。
【0066】
判定電圧設定部130は上述の第2制御情報に基づき所定の電圧範囲内で判定電圧V
OFFを可変設定する。制御信号TXの各周期において(
図6参照)、信号SETにパルスPLS1が発生してから信号IPCNTにパルスPLS2が発生するまでの時間長さは、第2制御情報に相当するパルス幅PW
TXを表している。第2制御情報は信号IPCNTに含まれるため、信号IPCNTに基づいて判定電圧V
OFFが設定される。但し、一次側回路において信号IPCNTから第2制御情報を抽出するためには信号SETを参照する必要がある。このため、信号SET及びIPCNTが判定電圧設定部130に入力され、判定電圧設定部130は信号SETを参照しつつ信号IPCNTから第2制御情報(パルス幅PW
TX)を取得する。一次側制御回路10では、パルス幅PW
TXに相当する第2制御情報に基づき判定電圧V
OFFが設定されることで一次側電流I
Pのピーク値が制御される。
【0067】
尚、上述したように、信号IPCNTから第2制御情報を抽出するためには信号SETを参照する必要があることから、第2制御情報は信号SET及びIPCNTの組に含まれる情報であると解しても良く、信号SET及びIPCNTに基づき判定電圧VOFFが設定されることで一次側電流IPのピーク値が制御されると解しても良い。
【0068】
[フィードバック制御]
上記の構成によるフィードバック制御について説明する。まずフィードバック制御の大枠を説明する。
【0069】
二次側電圧VSが目標電圧VTGで安定化されている状態において、負荷LDの消費電力が増大して二次側電圧VSが目標電圧VTGから低下すると誤差電圧VERRが上昇し、逆に負荷LDの消費電力が減少して二次側電圧VSが目標電圧VTGから上昇すると誤差電圧VERRが低下する。即ち、二次側電圧VSが目標電圧VTGで安定化されている状態を起点に考えると、負荷LDの消費電力の増大は誤差電圧VERRの上昇をもたらし、負荷LDの消費電力の減少は誤差電圧VERRの低下をもたらす。
【0070】
制御信号生成部220(
図4参照)は、誤差電圧V
ERRが高くなるほど制御信号TXの周波数f
TXを増大させ、誤差電圧V
ERRが低くなるほど制御信号TXの周波数f
TXを低下させる。但し、制御信号TXの周波数f
TXの可変範囲には上下限が定められている。即ち、周波数f
TXの可変範囲は、所定の最小周波数f
MIN(例えば25kHz)から所定の最大周波数f
MAX(例えば65kHz)までの範囲であり、制御信号生成部220は、周波数f
TXを、最小周波数f
MINより低く設定することは無く且つ最大周波数f
MAXより高く設定することは無い。当然ながら、最大周波数f
MAXは最小周波数f
MINよりも高い。
【0071】
加えて、制御信号生成部220(
図4参照)は、誤差電圧V
ERRが高くなるほど制御信号TXのパルス幅PW
TXを増大させ、誤差電圧V
ERRが低くなるほど制御信号TXのパルス幅PW
TXを減少させるパルス幅調整処理を実行する。このパルス幅調整処理は、周波数f
TXが最大周波数f
MAXより小さい状態においても、周波数f
TXが最大周波数f
MAXに達した状態においても実行される。但し、制御信号TXのパルス幅PW
TXの可変範囲には上下限が定められている。即ち、パルス幅PW
TXの可変範囲は、所定の最小パルス幅PW
MINから所定の最大パルス幅PW
MAXまでの範囲であり、制御信号生成部220は、パルス幅PW
TXを、最小パルス幅PW
MINより低く設定することは無く且つ最大パルス幅PW
MAXより高く設定することは無い。当然ながら、最大パルス幅PW
MAXは最小パルス幅PW
MINよりも大きい。
【0072】
一次側回路では、制御信号TXの周波数f
TXにてトランジスタM1がスイッチングされるので、負荷LDが重いほど(即ち負荷LDの消費電力が大きいほど)、周波数f
TXの増大を通じてトランジスタM1のスイッチング周波数が高くなる。また、判定電圧設定部130(
図7参照)は、トランジスタM1のオン期間において電流センス電圧V
CSと対比される判定電圧V
OFFを、第2制御情報により示されるパルス幅PW
TXが大きくなるほど、増大させる。このため、負荷LDが重いほど(即ち負荷LDの消費電力が大きいほど)トランジスタM1のスイッチングの各周期でトランスTRを介し一次側から二次側に伝達されるエネルギが大きくなる。従って、制御信号TXの周波数f
TXが最大周波数f
MAXに達した状態において、二次側電圧V
Sが目標電圧V
TGより低くなる程度に負荷LDが重い場合には、パルス幅PW
TXの増大を通じて上記伝達されるエネルギが増大し、二次側電圧V
Sが目標電圧V
TGに向かう。
【0073】
図8を参照して、判定電圧設定部130による判定電圧V
OFFの設定方法を説明する。
図8では、説明の便宜上、負荷LDの消費電力が比較的小さく、結果、トランジスタM1のオン期間における判定電圧V
OFFが比較的小さく設定される状況が想定されている。上述したように、判定電圧設定部130は所定の電圧範囲内で判定電圧V
OFFを可変設定するが、その電圧範囲は所定の最小電圧V
OFF_MINから所定の最大電圧V
OFF_MAXまでの範囲である(0<V
OFF_MIN<V
OFF_MAX)。
図8では、最小電圧V
OFF_MINが図示されていない。代わりに、“0<V
OFF_MIN<V
OFF_MID<V
OFF_MAX”を満たす所定の中間電圧V
OFF_MIDが図示されている。例えば、“V
OFF_MID=V
OFF_MAX×0.7”且つ“V
OFF_MIN=V
OFF_MAX×0.3”である。電圧V
OFF_MIN、V
OFF_MID及びV
OFF_MAXは、グランドGND1の電位から見た正の電圧である。
【0074】
トランジスタM1のオン期間を起点に判定電圧VOFFの変動を説明する。判定電圧設定部130は、トランジスタM1のオン期間において判定電圧VOFFの電圧値を固定する。そして、トランジスタM1のオン期間において“VCS>VOFF”又は“VCS≧VOFF”となると信号RSTのアップエッジが発生する。判定電圧設定部130は、信号RSTのアップエッジの発生を契機に判定電圧VOFFを最大電圧VOFF_MAXへと急峻に上昇させる。一方で、信号RSTのアップエッジに基づき駆動信号生成部110によりトランジスタM1がターンオフされる。その後、トランジスタM1のオフ期間において信号IPCNTにパルスPLS2が生じるまで判定電圧VOFFが最大電圧VOFF_MAXに維持される。トランジスタM1のオフ期間において信号IPCNTにパルスPLS2が生じると、パルスPLS2が生じたタイミングを起点に、判定電圧設定部130は判定電圧VOFFを所定規則に沿って低下させてゆく。
【0075】
本実施形態に係る例では、まず、パルスPLS2が生じたタイミングを起点に、判定電圧VOFFを最大電圧VOFF_MAXから中間電圧VOFF_MIDに向けて第1電圧低下率で単調に低下させてゆく。判定電圧VOFFが中間電圧VOFF_MIDまで低下すると、判定電圧設定部130は、判定電圧VOFFを中間電圧VOFF_MIDから最小電圧VOFF_MINに向けて第2電圧低下率で単調に低下させてゆく。この低下の過程で、信号SETにパルスPLS1が発生するとトランジスタM1の次のオン期間が始まるため、判定電圧VOFFの低下を止める。
【0076】
判定電圧VOFFが最小電圧VOFF_MINまで低下する状態は、制御信号TXの周波数fTX(従ってトランジスタM1のスイッチング周波数)が最小周波数fMIN(例えば25kHz)と一致する状態に相当する。即ち、“fTX=fMIN”である状態において、信号SETにパルスPLS1が発生する直前で、ちょうど、判定電圧VOFFが最小電圧VOFF_MINにまで低下するように、第1及び第2電圧低下率並びに電圧VOFF_MAX、VOFF_MID及びVOFF_MINが定められている。尚、第1電圧低下率は第2電圧低下率よりも大きい。但し、第1電圧低下率と第2電圧低下率を同じとする変形、又は、第2電圧低下率を第1電圧低下率より大きくする変形も可能である。この他、判定電圧VOFFを低下させてゆく上記所定規則は様々に変形可能である。
【0077】
図8は、トランジスタM1のオフ期間において判定電圧V
OFFが中間電圧V
OFF_MIDまで低下する前に信号SETにパルスPLS1が生じないことを前提としている。この前提の下での判定電圧V
OFFの挙動を説明したが、負荷LDの状態によっては当該前提が崩れる。トランジスタM1のオフ期間において判定電圧V
OFFが中間電圧V
OFF_MIDまで低下する前に信号SETにパルスPLS1が生じた場合には、判定電圧設定部130は、パルスPLS1の発生時点で判定電圧V
OFFの低下を止める(従って“V
OFF>V
OFF_MID”の状態で判定電圧V
OFFの低下を止める;
図10参照)。この場合には、当該パルスPLS1の発生時点から始まるトランジスタM1のオン期間において、中間電圧V
OFF_MIDより高い判定電圧V
OFFが設定されることになる。
【0078】
図9に、負荷LDの消費電力が比較的小さい状態で二次側電圧V
Sが目標電圧V
TGにて安定化しているケースにおける各電圧及び信号等の波形を示す。時間経過と共に、タイミングt
A1、t
A2、t
A3、t
A4がこの順番で訪れるものとする。タイミングt
A1及びt
A4間の長さは、
図9のケースにおける制御信号TXの1周期分の長さに相当する。
【0079】
上述したように、スロープ電圧VSLPは所定のスロープ可変範囲内で変動する電圧である。スロープ可変範囲は、所定の最小電圧VSLP_MINから所定の最大電圧VSLP_MAXまでの範囲である(0<VSLP_MIN<VSLP_MAX)。電圧VSLP_MIN及びVSLP_MAXは、グランドGND2の電位から見た正の電圧である。誤差電圧VERRは、最小電圧VSLP_MINより高く且つ最大電圧VSLP_MAXより低い電圧範囲内で変動する。但し、誤差電圧VERRが最大電圧VSLP_MAX以上となる状況がありえても良い。
【0080】
制御信号生成部220(
図4参照)は、内部信号TX
REFを生成し、内部信号TX
REFを参照しつつ制御信号TXを生成する。内部信号TX
REFは、制御信号TXと同様、ローレベル又はハイレベルの信号レベルをとる矩形波信号である。内部信号TX
REFの周波数は制御信号TXの周波数f
TXと同じであり、内部信号TX
REFのアップエッジと制御信号TXのアップエッジは同時に生じる。但し、制御信号TXのパルス幅PW
TXは、誤差電圧V
ERRに応じて、内部信号TX
REFのパルス幅PW
REFと一致することも、パルス幅PW
REFより大きくなることもある。従って、内部信号TX
REFのパルス幅PW
REFは、制御信号TXの最小パルス幅PW
MINに相当する。パルス幅PW
REFは固定された所定時間を有する(即ちパルス幅PW
REFの長さは固定され且つ所定の時間長さと一致する)。内部信号TX
REFの1周期分の期間は、内部信号TX
REFのハイレベル期間と、それに隣接する内部信号TX
REFのローレベル期間とから成り、内部信号TX
REFのパルス幅PW
REFは、内部信号TX
REFの各周期における内部信号TX
REFのハイレベル期間の長さを指す。
図9のタイミングt
A1及びt
A3間の長さはパルス幅PW
REFと一致する。
【0081】
制御信号生成部220は、誤差電圧V
ERRに応じて制御信号TXの周波数f
TXを設定し、周波数f
TXの逆数の間隔で信号TX
REF及びTXに同時にアップエッジを生じさせる。
図9のケースに関し、信号TX
REF及びTXにおける或るアップエッジタイミングt
A1に注目する。スロープ電圧生成部221(
図4参照)は、信号TX
REF及びTXのアップエッジタイミングt
A1においてスロープ電圧V
SLPを最小電圧V
SLP_MINに設定し、そのタイミングt
A1を起点に、スロープ電圧V
SLPを最小電圧V
SLP_MINから最大電圧V
SLP_MAXに向けて所定の電圧上昇率で単調に上昇させてゆく。
図9に示すケースでは、信号TX
REF及びTXのアップエッジタイミングt
A1から、信号TX
REF及びTXの次のアップエッジタイミングt
A4に至るまでの過程において、スロープ電圧V
SLPが最大電圧V
SLP_MAXに達しており、このケースでは、スロープ電圧V
SLPが最大電圧V
SLP_MAXに達した時点でスロープ電圧V
SLPの変化を停止させる。
【0082】
制御信号生成部220は、タイミングt
A1の後、誤差電圧V
ERRとスロープ電圧V
SLPを比較し、その比較結果に基づき“V
ERR>V
SLP”の状態から“V
ERR<V
SLP”の状態に切り替わるタイミングt
A2を検出する。そのタイミングt
A2が内部信号TX
REFのハイレベル期間内のタイミングであれば、制御信号生成部220は、内部信号TX
REFのダウンエッジと同時に制御信号TXのダウンエッジを発生させる。
図9は、このような状況に該当しており、タイミングt
A1からパルス幅PW
REF分の時間が経過したタイミングt
A3で信号TX
REF及びTXのダウンエッジが生じる。その後、タイミングt
A1から周波数f
TXの逆数分の時間が経過したタイミングt
A4において、信号TX
REF及びTXの次のアップエッジが生じる。タイミングt
A4から始まる周期及びそれ以降の各周期において、タイミングt
A1から始まる周期と同様の動作が行われる。
【0083】
図10に、負荷LDの消費電力が比較的大きい状態で二次側電圧V
Sが目標電圧V
TGにて安定化しているケースにおける各電圧及び信号等の波形を示す。
図10のケースは
図9のケースよりも負荷LDの消費電力が大きい。時間経過と共に、タイミングt
B1、t
B2、t
B3、t
B4がこの順番で訪れるものとする。タイミングt
B1及びt
B4間の長さは、
図10のケースにおける制御信号TXの1周期分の長さに相当する。
【0084】
制御信号生成部220は、誤差電圧V
ERRに応じて制御信号TXの周波数f
TXを設定し、周波数f
TXの逆数の間隔で信号TX
REF及びTXに同時にアップエッジを生じさせる。
図10のケースに関し、信号TX
REF及びTXにおける或るアップエッジタイミングt
B1に注目する。スロープ電圧生成部221(
図4参照)は、信号TX
REF及びTXのアップエッジタイミングt
B1においてスロープ電圧V
SLPを最小電圧V
SLP_MINに設定し、そのタイミングt
B1を起点に、スロープ電圧V
SLPを最小電圧V
SLP_MINから最大電圧V
SLP_MAXに向けて所定の電圧上昇率で単調に上昇させてゆく。
図10に示すケースでは、信号TX
REF及びTXのアップエッジタイミングt
B1の後、スロープ電圧V
SLPが最大電圧V
SLP_MAXに達する前に、信号TX
REF及びTXの次のアップエッジタイミングt
B4が生じている。
【0085】
制御信号生成部220は、タイミングt
B1の後、誤差電圧V
ERRとスロープ電圧V
SLPを比較し、その比較結果に基づき“V
ERR>V
SLP”の状態から“V
ERR<V
SLP”の状態に切り替わるタイミングt
B3を検出する。そのタイミングt
B3が内部信号TX
REFのローレベル期間内のタイミングであれば、制御信号生成部220は、タイミングt
B3にて制御信号TXのダウンエッジを発生させる。
図10は、このような状況に該当しており、故にタイミングt
B3にて制御信号TXにダウンエッジが生じる。
図10のタイミングt
B1及びt
B2間の長さはパルス幅PW
REFと一致しており、
図10のケースではタイミングt
B2にて内部信号TX
REFにダウンエッジが生じ、その後のタイミングt
B3にて制御信号TXにダウンエッジが生じている。タイミングt
B3の後、タイミングt
B1から周波数f
TXの逆数分の時間が経過したタイミングt
B4において、信号TX
REF及びTXの次のアップエッジが生じる。タイミングt
B4から始まる周期及びそれ以降の各周期において、タイミングt
B1から始まる周期と同様の動作が行われる。
【0086】
このように、制御信号生成部220は、制御信号TXの各周期において、“V
ERR>V
SLP”の状態から“V
ERR<V
SLP”の状態に切り替わるタイミング(t
A2、t
B3)を検出し、検出タイミングが内部信号TX
REFのハイレベル期間内のタイミングであれば内部信号TX
REFのダウンエッジと同時に制御信号TXのダウンエッジを発生させ(
図9参照)、検出タイミングが内部信号TX
REFのローレベル期間内のタイミングであれば当該検出タイミングにて制御信号TXのダウンエッジを発生させる(
図10参照)。これにより、パルス幅PW
TXが最小パルス幅(PW
REF)以上となることを確保しつつ、誤差電圧V
ERRに応じてパルス幅PW
TXを可変設定することができる。
【0087】
尚、制御信号TXの各周期において、制御信号TXのローレベル期間の長さには下限時間が定められている。便宜上、
図10のタイミングt
B4から当該下限時間だけ前のタイミングを強制ロータイミングと称する。
図10のケースにおいて、仮に、強制ロータイミングまでに“V
ERR<V
SLP”が成立しなかったとしても、制御信号生成部220は、強制ロータイミングにて制御信号TXにダウンエッジを生じさせる。
【0088】
図11に、二次側電圧V
Sが目標電圧V
TGより低いがために誤差電圧V
ERRが徐々に増大する過渡状態での各電圧及び信号等の波形を示す。誤差電圧V
ERRの増大に伴い、制御信号TXの周波数f
TXが徐々に増大してゆき、最終的には最大周波数f
MAXに達する。一方で、誤差電圧V
ERRの増大に伴い、制御信号TXのパルス幅PW
TXがパルス幅PW
REFを下限にしつつ徐々に増大してゆく。このため、制御信号TXの周波数f
TX(従ってトランジスタM1のスイッチング周波数)が最大周波数f
MAXに達した後は、誤差電圧V
ERRに応じて判定電圧V
OFFが調整される(トランジスタM1のオン期間における一次側電流I
Pのピーク値が調整される)。これは、誤差電圧V
ERRに応じたPWM制御にてトランジスタM1がスイッチング駆動されることに相当する。
【0089】
制御信号をデジタル信号として二次側から一次側に送信することでフィードバック制御を実現する場合、二次側電圧V
Sに応じて制御信号を生成し、制御信号に同期してトランジスタM1のスイッチングさせることができる。この際、一次側のスイッチング周波数(トランジスタM1のスイッチング周波数)は制御信号の周波数と一致することになるが、制御信号によってスイッチング周波数を制御するだけでは、制御信号の周波数が一次側の最大動作周波数に達した際、制御ができなくことが懸念される。これを考慮し、本実施形態では、二次側電圧V
Sに基づき二次側制御回路20にて周波数に関わる第1制御情報と他の第2制御情報を生成して第1及び第2制御情報を一次側制御回路10に伝送し、一次側制御回路10において、第1制御情報に基づきトランジスタM1のスイッチング周波数を制御すると共に、第2制御情報に基づき一次側電流I
Pのピーク値を制御するようにした。これにより、制御信号TXの周波数が最大動作周波数(周波数f
MAXに相当)に達した後でも、第2制御情報に基づく一次側電流I
Pのピーク値の調整によりフィードバック制御が有効に機能し(周波数f
MAXにてPWM制御が実行され;
図11参照)、安定した二次側電圧V
Sを得ることができる。
【0090】
尚、本実施形態に係る構成では、PLL方式を用いるような構成と比べて、応答速度が高く且つ回路面積を小さくできる。また、周波数スペクトルを拡散させるためのジッタを二次側で決めることができる(ジッタを実現しやすい)。
【0091】
<<第2実施形態>>
本開示の第2実施形態を説明する。第2実施形態は第1実施形態を基礎とする実施形態であり、第2実施形態において特に述べない事項に関しては、矛盾の無い限り、第1実施形態の記載が第2実施形態にも適用される。第2実施形態の記載を解釈するにあたり、第1及び第2実施形態間で矛盾する事項については第2実施形態の記載が優先されて良い。
【0092】
上述の第1及び第2制御情報を二次側から一次側に伝送するために、絶縁伝送回路30に設けられる絶縁素子はコンデンサに限定されない。当該伝送を実現できる限り、絶縁素子は任意である。第2実施形態では、絶縁素子としてパルストランスを用いる。絶縁素子としてパルストランスが用いられることに伴い、DC/DCコンバータ4内の回路構成が部分的に第1実施形態のそれから変更される。この変更点を以下に説明する。
【0093】
図12に第2実施形態に係る絶縁伝送回路30aの構成例を示す。第2実施形態では、絶縁伝送回路30aが
図2の絶縁伝送回路30として用いられる。絶縁伝送回路30aに対して制御信号TXが入力される。絶縁伝送回路30aには、第1制御情報を一次側から二次側に伝送するためのブロックと、第2制御情報を一次側から二次側に伝送するためのブロックとが設けられ、前者のブロックは送信部361、パルストランス362及び受信部363を備える一方、後者のブロックは送信部371、パルストランス372及び受信部373を備える。
【0094】
パルストランス362は、互いに絶縁されつつ磁気結合された一次側巻線362_1及び二次側巻線362_2から成る。パルストランス372は、互いに絶縁されつつ磁気結合された一次側巻線372_1及び二次側巻線372_2から成る。一次側巻線362_1及び372_1は一次側回路内に配置され、二次側巻線362_2及び372_2は二次側回路内に配置される。
【0095】
二次側巻線362_2の両端は送信部361に接続され、二次側巻線362_2の両端の内、一端のみがグランドGND2に接続される。二次側巻線372_2の両端は送信部371に接続され、二次側巻線372_2の両端の内、一端のみがグランドGND2に接続される。一次側巻線362_1の両端は受信部363に接続され、一次側巻線362_1の両端の内、一端のみがグランドGND1に接続される。一次側巻線372_1の両端は受信部373に接続され、一次側巻線372_1の両端の内、一端のみがグランドGND1に接続される。
【0096】
送信部361は、制御信号TXのアップエッジに同期して、パルストランス362の二次側巻線362_2に送信パルス信号TP1に出力する。送信パルス信号TP1を二次側巻線362_2に出力するとは、送信パルス信号TP1によるパルス状の電圧を二次側巻線362_2に供給することで二次側巻線362_2に流れる電流に変化を与えることを意味し、二次側巻線362_2に流れる電流に変化が生じる限りパルス状の電圧の供給の仕方は任意である。上記電流の変化により一次側巻線362_1にてパルス状の電圧が発生する。制御信号TXのアップエッジタイミングにおいて一次側巻線362_1にパルス状の電圧が発生するよう、送信部361は送信パルス信号TP1に出力する。
【0097】
受信部363は、一次側巻線362_1に発生した電圧に基づき、受信信号としての信号SETを生成する。ここで生成される信号SETは、第1実施形態の絶縁伝送回路30(
図5)にて生成される信号SETと等価なものである。受信部363は、例えば第1コンパレータを有し、第1コンパレータを用いて一次側巻線362_1の両端子間電圧の大きさを所定の閾電圧と比較し、一次側巻線362_1の両端子間電圧の大きさが閾電圧以上であるときに、微小時間だけハイレベルとなるパルスPLS1を信号SETに含める(
図6参照)。結果、制御信号TXと信号SETとの関係は、第1実施形態で述べたものと同等となる(
図6参照)。
【0098】
送信部371は、制御信号TXのダウンエッジに同期して、パルストランス372の二次側巻線372_2に送信パルス信号TP2に出力する。送信パルス信号TP2を二次側巻線372_2に出力するとは、送信パルス信号TP2によるパルス状の電圧を二次側巻線372_2に供給することで二次側巻線372_2に流れる電流に変化を与えることを意味し、二次側巻線372_2に流れる電流に変化が生じる限りパルス状の電圧の供給の仕方は任意である。上記電流の変化により一次側巻線372_1にてパルス状の電圧が発生する。制御信号TXのダウンエッジタイミングにおいて一次側巻線372_1にパルス状の電圧が発生するよう、送信部371は送信パルス信号TP2に出力する。
【0099】
受信部373は、一次側巻線372_1に発生した電圧に基づき、受信信号としての信号IPCNTを生成する。ここで生成される信号IPCNTは、第1実施形態の絶縁伝送回路30(
図5)にて生成される信号IPCNTと等価なものである。受信部373は、例えば第2コンパレータを有し、第2コンパレータを用いて一次側巻線372_1の両端子間電圧の大きさを所定の閾電圧と比較し、一次側巻線372_1の両端子間電圧の大きさが閾電圧以上であるときに、微小時間だけハイレベルとなるパルスPLS2を信号IPCNTに含める(
図6参照)。結果、制御信号TXと信号IPCNTとの関係は、第1実施形態で述べたものと同等となる(
図6参照)。
【0100】
第2実施形態によっても第1実施形態と同様の作用及び効果を得ることができる。但し。一次側で識別できる信号を伝送するにあたり、絶縁素子としてパルストランスを用いる場合、第1実施形態の如くコンデンサを用いる場合と比べて、消費電流が大きくなる。また、絶縁素子としてパルストランスを用いる場合、第1実施形態の如くコンデンサを用いる場合と比べて、一次側での受信信号の波高値が低いためノイズの影響を受けやすく、二次側から一次側への伝送遅延も大きくなりがちである。このため、第1実施形態の如く絶縁素子としてコンデンサを用いる構成の方が好ましい場合も多い。
【0101】
<<第3実施形態>>
本開示の第3実施形態を説明する。第3実施形態では、第1及び第2実施形態に適用可能な応用技術、変形技術などを説明する。
【0102】
DC/DCコンバータ4をAC/DCコンバータ1の構成要素として用いることを上述した。しかしながら、DC/DCコンバータ4は、直流電圧を生成する任意の電圧源(例えばバッテリ)の出力電圧を一次側電圧VPとして受けて、二次側電圧VSを生成するものであっても構わない。
【0103】
一次側制御回路10、二次側制御回路20及び絶縁伝送回路(30、30a)を1チップの半導体基板上に集積化した半導体装置SMC1(不図示)を構成するようにしても良い。一次側制御回路10、二次側制御回路20及び絶縁伝送回路(30、30a)が集積化された1チップの半導体基板が樹脂にて構成されたパッケージ(筐体)に収容されて封止されることで半導体装置SMC1が構成される。
【0104】
或いは、一次側制御回路10を第1半導体基板上に集積化した第1チップと、二次側制御回路20を第2半導体基板上に集積化した第2チップと、絶縁伝送回路(30、30a)を第3半導体基板上に集積化した第3チップとを作成し、第1~第3チップを共通のパッケージ(筐体)に収容して封止することで半導体装置SMC2(不図示)を構成しても良い。
【0105】
一次側制御回路10及び二次側制御回路20を別々の半導体装置として構成するようにしても良い。即ち、一次側制御回路10を第1半導体基板上に集積化した第1チップを第1パッケージに収容して封止することで半導体装置SMC3A(不図示)を構成し、これとは別に、二次側制御回路20を第2半導体基板上に集積化した第2チップを第2パッケージに収容して封止することで半導体装置SMC3B(不図示)を構成しても良い。この場合、絶縁伝送回路(30、30a)を、半導体装置SMC3A及びSMC3Bとは別に設けられたディスクリート部品にて構成しても良いし、絶縁伝送回路(30、30a)を第3半導体基板上に集積化した第3チップを第3パッケージに収容して封止することで半導体装置SMC3Cを構成しても良い。
【0106】
一次側制御回路10が集積化された半導体装置(SM1、SMC2又はSMC3A)に、スイッチングトランジスタM1が更に集積化されて含まれていても良いし、センス抵抗RCSが更に集積化されて含まれていても良い。
【0107】
上述の主旨を損なわない形で、任意の信号又は電圧に関して、それらのハイレベルとローレベルの関係を逆にしても良い。また、上述の主旨を損なわない形で、FETのチャネル型を任意に変更可能である。即ち例えば、スイッチングトランジスタM1がPチャネル型のMOSFETとして構成されるよう、DC/DCコンバータ4の構成が変形されても良い。
【0108】
上述の任意のトランジスタは、任意の種類のトランジスタであって良い。例えば、MOSFETとして上述された任意のトランジスタ(特に例えばスイッチングトランジスタM1)を、接合型FET、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)又はバイポーラトランジスタに置き換えることも可能である。任意のトランジスタは第1電極、第2電極及び制御電極を有する。FETにおいては、第1及び第2電極の内の一方がドレインで他方がソースであり且つ制御電極がゲートである。IGBTにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がゲートである。IGBTに属さないバイポーラトランジスタにおいては、第1及び第2電極の内の一方がコレクタで他方がエミッタであり且つ制御電極がベースである。
【0109】
<<付記>>
上述の各実施形態にて具体化された本開示の構成について以下に付記する。
【0110】
本開示の一側面に係る絶縁型DC/DCコンバータは、互いに絶縁された一次側巻線(W1)及び二次側巻線(W2)を有する電力用トランス(TR)を用いて、一次側における一次側電圧(VP)から二次側における二次側電圧(VS)を生成する絶縁型DC/DCコンバータ(4)において、前記一次側に配置される回路であって、前記一次側巻線に対して直列に接続されたスイッチング素子(M1)をスイッチングする一次側制御回路(10)と、前記二次側に配置される回路であって、前記二次側電圧に基づき第1制御情報及び第2制御情報を含む制御信号(TX)を生成する二次側制御回路(20)と、前記制御信号に含まれる各制御情報を絶縁形式で前記一次側制御回路に伝送する絶縁伝送回路(30、30a)と、を備え、前記一次側制御信回路は、前記第1制御情報に基づき、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を制御し、前記第2制御情報に基づき、前記スイッチング素子を通じて前記一次側巻線に流れる一次側電流のピーク値を制御する構成X1である。
【0111】
具体的には例えば、構成X1に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記二次側制御回路は、前記二次側電圧に応じたフィードバック電圧(VFB)と所定の基準電圧(VREF)との差分に応じた誤差電圧(VERR)を生成する誤差電圧生成部(210)と、前記誤差電圧と所定範囲内で変動するスロープ電圧(VSLP)とに基づいて前記制御信号(TX)を生成する制御信号生成部(220)と、を有する構成X2であって良い。
【0112】
更に具体的には例えば、構成X2に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記制御信号(TX)は、前記誤差電圧に応じた周波数の情報を前記第1制御情報として有し、且つ、前記誤差電圧と前記スロープ電圧との比較結果に応じた情報を前記第2制御情報として有する構成X3であって良い。
【0113】
更に具体的には例えば、構成X3に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記制御信号生成部は、前記誤差電圧に応じた周波数を有し且つ前記誤差電圧及び前記スロープ電圧の比較結果に応じたパルス幅を持つ信号を前記制御信号として生成し、前記第1制御情報は前記制御信号の周波数(fTX)の情報であって、前記第2制御情報は前記制御信号のパルス幅(PWTX)の情報であり、前記絶縁伝送回路は、前記第1及び第2制御情報を、前記一次側及び二次側に亘って設けられた絶縁素子を用いて前記一次側に伝送することにより、前記第1制御情報を有する第1受信信号(SET)及び前記第2制御情報を有する第2受信信号(IPCNT)を前記一次側において生成し、前記一次側制御回路は、前記第1及び第2受信信号に基づき、前記スイッチング素子のスイッチング周波数を制御するとともに、前記スイッチング素子を通じて前記一次側巻線に流れる前記一次側電流のピーク値を制御する構成X4であって良い。
【0114】
更に具体的には例えば、構成X4に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記制御信号は、第1レベル(例えばローレベル)又は第2レベル(例えばハイレベル)の信号レベルをとる矩形波信号であり、前記制御信号の各周期において前記制御信号の信号レベルが前記第2レベルとなる期間の長さが前記制御信号のパルス幅(PWTX)に相当し、前記制御信号生成部は、前記誤差電圧に応じた周波数で前記制御信号の信号レベルを前記第1レベルから前記第2レベルに遷移させ、その遷移タイミングから始まる前記制御信号の各周期において前記誤差電圧及び前記スロープ電圧の比較結果に基づき前記制御信号の信号レベルを前記第2レベルから前記第1レベルに遷移させ、前記絶縁伝送回路は、前記絶縁素子を用いて、前記制御信号の信号レベルにおける前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移に同期したパルスを含む前記第1受信信号(SET)を前記一次側において生成し、且つ、前記制御信号の信号レベルにおける前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移に同期したパルスを含む前記第2受信信号(IPCNT)を前記一次側において生成し、前記一次側制御回路は、前記第2受信信号に基づき所定の電圧範囲内で判定電圧(VOFF)を可変設定する判定電圧設定部(130)を有し、前記第1受信信号中のパルスのタイミングに同期して前記スイッチング素子のターンオンさせた後、前記一次側電流に比例する電流センス電圧(VCS)が前記判定電圧に達すると前記スイッチング素子をターンオフさせる構成X5であって良い。
【0115】
更に具体的には例えば、構成X
5に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記制御信号生成部は、前記誤差電圧に応じた周波数で前記制御信号の信号レベルを前記第1レベル(例えばローレベル)から前記第2レベル(例えばハイレベル)に遷移させ、その遷移タイミングから始まる前記制御信号の各周期において、前記スロープ電圧が所定初期電圧(例えばV
SLP_MIN)より所定方向(例えば上昇方向)に向けて単調変化し、当該遷移タイミングから所定時間(パルス幅PW
REFの長さに相当)が経過する前に前記誤差電圧及び前記スロープ電圧間の大小関係が反転するときには当該遷移タイミングより前記所定時間だけ後のタイミングにて(
図9参照)、当該遷移タイミングから前記所定時間が経過して以降に前記大小関係が反転するときには当該反転のタイミングにて(
図10参照)、前記制御信号の信号レベルを前記第2レベルから前記第1レベルに遷移させる構成X
6であって良い。
【0116】
また例えば、構成X
5又はX
6に係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記判定電圧設定部は、前記第1受信信号中のパルスに同期した前記スイッチング素子のターンオンを経て前記スイッチング素子がターンオフされるまでは前記判定電圧を固定し、前記スイッチング素子がターンオフされると前記判定電圧を前記電圧範囲内の最大電圧(V
OFF_MAX)に設定し、その後、前記第2受信信号中のパルスを契機に(
図9ではタイミングt
A3に対応;
図10ではタイミングt
B3に対応)前記判定電圧を前記電圧範囲内の最大電圧から所定規則に沿って低下させてゆき、前記第1受信信号にて次のパルスが生じると(
図9ではタイミングt
A4に対応;
図10ではタイミングt
B4に対応)前記判定電圧の低下を止める構成X
7であって良い。
【0117】
また例えば、構成X
4~X
7の何れかに係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、前記絶縁素子は、コンデンサ(例えば
図5のコンデンサCAを含む)により構成される構成X
8であって良い。
【0118】
或いは例えば、構成X
5~X
7の何れかに係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて、 前記絶縁素子は、コンデンサ(例えば
図5のコンデンサCAを含む)により構成され、前記絶縁伝送回路は、前記制御信号の信号レベルにおける前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移を前記コンデンサを用いて前記一次側に伝送することで前記第1受信信号(SET)を生成し、前記制御信号の信号レベルにおける前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移を前記コンデンサを用いて前記一次側に伝送することで前記第2受信信号(IPCNT)を生成する構成X
9であって良い。
【0119】
或いは例えば、構成X
4~X
7の何れかに係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて(
図12参照)、前記絶縁素子は、パルストランスにより構成される構成X
10であって良い。
【0120】
また例えば、構成X
5~X
7の何れかに係る絶縁型DC/DCコンバータにおいて(
図12参照)、前記絶縁素子は、第1及び第2パルストランス(362、372)を含み、前記絶縁伝送回路は、前記制御信号の信号レベルにおける前記第1レベルから前記第2レベルへの遷移を前記第1パルストランスを用いて前記一次側に伝送することで前記第1受信信号(SET)を生成し、前記制御信号の信号レベルにおける前記第2レベルから前記第1レベルへの遷移を前記第2パルストランスを用いて前記一次側に伝送することで前記第2受信信号(IPCNT)を生成する構成X
11であって良い。
【0121】
尚、上述の各実施形態において、第1レベルはローレベルに相当し、第2レベルはハイレベルに相当するが、第1及び第2レベルは互いに相違するレベルであれば任意である。
【0122】
また上述の各実施形態において、スロープ電圧VSLPの単調変化の方向である上記所定方向は上昇方向であるが、上記所定方向が低下方向になるように変形しても良い。この変形が適用される場合、スロープ電圧VSLPに関わる電圧の変化方向及び高低関係等が適切に逆転される。即ち、上記変形が適用される場合、例えば、上記の所定初期電圧はスロープ電圧VSLPにおける最大電圧VSLP_MAXとされ、誤差電圧VERR及びスロープ電圧VSLP間の大小関係の反転とは“VERR<VSLP”から“VERR>VSLP”への変化を意味し、エラーアンプ211は“VFB<VREF”のときには誤差電圧VERRが低下するように、且つ、“VFB>VREF”のときには誤差電圧VERRが上昇するように誤差電圧VERRを制御すれば良い。
【0123】
本開示の実施形態は、特許請求の範囲に示された技術的思想の範囲内において、適宜、種々の変更が可能である。以上の実施形態は、あくまでも、本開示の実施形態の例であって、本開示ないし各構成要件の用語の意義は、以上の実施形態に記載されたものに制限されるものではない。上述の説明文中に示した具体的な数値は、単なる例示であって、当然の如く、それらを様々な数値に変更することができる。
【符号の説明】
【0124】
1 AC/DCコンバータ
2 フィルタ
3 整流回路
4 DC/DCコンバータ
10 一次側制御回路
20 二次側制御回路
30、30a 絶縁伝送回路
M1 スイッチングトランジスタ
TR トランス
W1 一次側巻線
W2 二次側巻線
110 駆動信号生成部
120 コンパレータ
130 判定電圧設定部
210 誤差電圧生成部
220 制御信号生成部