(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ポリマー-金属複合体、タイヤ、及びポリマー物品
(51)【国際特許分類】
B32B 15/085 20060101AFI20241121BHJP
B32B 25/08 20060101ALI20241121BHJP
B60C 1/00 20060101ALI20241121BHJP
B60C 9/00 20060101ALI20241121BHJP
B60C 9/20 20060101ALI20241121BHJP
C08F 8/00 20060101ALI20241121BHJP
C08F 210/00 20060101ALI20241121BHJP
C08F 212/00 20060101ALI20241121BHJP
C08F 236/04 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B32B15/085 Z
B32B25/08
B60C1/00 C
B60C9/00 J
B60C9/20 G
C08F8/00
C08F210/00
C08F212/00
C08F236/04
(21)【出願番号】P 2020206266
(22)【出願日】2020-12-11
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100119530
【氏名又は名称】冨田 和幸
(74)【代理人】
【識別番号】100195556
【氏名又は名称】柿沼 公二
(72)【発明者】
【氏名】高野 重永
(72)【発明者】
【氏名】杉 信一郎
【審査官】岩本 昌大
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-170214(JP,A)
【文献】特開2015-143312(JP,A)
【文献】特開2020-050688(JP,A)
【文献】特表平06-506004(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0061409(US,A1)
【文献】国際公開第2018/230250(WO,A1)
【文献】特開2001-097002(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B60C1/00-19/12
C09J1/00-5/10,9/00-201/10
D06M10/00-16/00,19/00-23/18
D07B1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゴム成分及び/又は樹脂成分を含むポリマー部材と金属部材とが接着層を介して接着されたポリマー-金属複合体であって、
前記接着層は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有し、ブチレン単位を有さず、且つ変性基を有する変性共重合体を含有
し、
前記変性基が、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子、ハロゲン原子及び金属原子から選択される少なくともいずれかを有し、
前記接着層は、前記変性共重合体の含有量が95質量%以上であり、
前記変性共重合体は、スチレン-ブタジエン共重合体の水添物を含まない、ことを特徴とする、ポリマー-金属複合体。
【請求項2】
前記変性共重合体が、芳香族ビニル単位を更に有する、請求項1に記載のポリマー-金属複合体。
【請求項3】
前記芳香族ビニル単位が、α-メチルスチレン単位、o-メチルスチレン単位、m-メチルスチレン単位又はp-メチルスチレン単位を含む、請求項2に記載のポリマー-金属複合体。
【請求項4】
前記芳香族ビニル単位が、p-メチルスチレン単位のみからなる、請求項3に記載のポリマー-金属複合体。
【請求項5】
前記変性基が、カルボニル部分(-C(=O)-)及びチオカルボニル部分(-C(=S)-)の少なくともいずれかを備える、請求項
1~4のいずれかに記載のポリマー-金属複合体。
【請求項6】
前記変性基が、エステル結合(-C(=O)O-)及びジチオエステル結合(-C(=S)S-)の少なくともいずれかを備える、請求項
5に記載のポリマー-金属複合体。
【請求項7】
前記変性共重合体における前記変性基の割合が0.1質量%以上10.0質量%以下である、請求項1~
6のいずれかに記載のポリマー-金属複合体。
【請求項8】
前記変性共重合体における共役ジエン単位の割合が10mol%以上である、請求項1~
7のいずれかに記載のポリマー-金属複合体。
【請求項9】
前記変性共重合体における共役ジエン単位の割合が25mol%以上である、請求項
8に記載のポリマー-金属複合体。
【請求項10】
前記変性共重合体において、共役ジエン単位がブタジエン単位であり、非共役オレフィン単位がエチレン単位である、請求項1~
9のいずれかに記載のポリマー-金属複合体。
【請求項11】
前記ポリマー部材が、コバルト含有化合物を実質的に含有しない、請求項1~1
0のいずれかに記載のポリマー-金属複合体。
【請求項12】
前記ポリマー部材は、ゴム成分及び/又は樹脂成分100質量部に対する硫黄の含有量が3質量部未満である、請求項1~1
1のいずれかに記載のポリマー-金属複合体。
【請求項13】
前記接着層が、パーオキサイドを更に含有する、請求項1~1
2のいずれかに記載のポリマー-金属複合体。
【請求項14】
前記パーオキサイドの1時間半減期温度が、前記変性共重合体の融点よりも高い、請求項1
3に記載のポリマー-金属複合体。
【請求項15】
前記パーオキサイドの1時間半減期温度が110℃以上である、請求項1
3又は1
4に記載のポリマー-金属複合体。
【請求項16】
請求項1~1
5のいずれかに記載のポリマー-金属複合体であって、前記ポリマー部材がゴム成分を含む当該ポリマー-金属複合体を備えることを特徴とする、タイヤ。
【請求項17】
請求項1~1
5のいずれかに記載のポリマー-金属複合体を備えることを特徴とする、ポリマー物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー-金属複合体、タイヤ、及びポリマー物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジエン系ゴム部材等のポリマー部材と金属部材との接着及び複合化には、直接加硫接着法及び間接加硫接着法が多用されている。
【0003】
直接加硫接着法は、ポリマー部材に対し、硫黄をはじめとする加硫系、及び必要に応じコバルト塩に代表される接着促進剤をあらかじめ配合するとともに、金属部材の表面に黄銅等の接着性金属層をあらかじめ形成しておくことで、上記加硫系の加硫反応(架橋反応)により、金属層との接着を発現する接着方法である。一方、間接加硫接着法は、ポリマー部材及び金属部材にあらかじめ塗布した接着剤が、加硫エネルギーを得て接着を発現する接着方法である。
【0004】
上述した接着法に関しては、接着性を向上させるため、ポリマー部材自体の材料の検討も進められている。例えば特許文献1には、金属補強材とゴム部材との接着性向上のため、無水マレイン酸で変性させたSEBS(スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー)をゴム部材に配合することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
直接加硫接着法は、上述の通り、接着させる金属部材の表面に所定の接着性金属層を形成する必要がある。また、直接加硫接着法においてポリマー部材に配合するコバルト塩は、環境負荷低減の観点で使用量の低減が求められる傾向にある。更に、直接加硫接着法において加硫系として通常用いられる硫黄は、加工性の悪化、熱劣化、酸素劣化等に影響することから、その使用量が少ないことが望ましい。
【0007】
一方、間接加硫接着法では、通常は接着剤に有機溶剤を用いるものの、有機溶剤は、環境負荷などの観点から、その使用量が少ない、特には使用しないことが望ましい。
【0008】
これらの事情を踏まえた上で、ポリマー部材と金属部材とを強固に接着させる改良技術が求められる。
【0009】
そこで、本発明は、ポリマー部材と金属部材とが強固に接着したポリマー-金属複合体を提供することを課題とする。
また、本発明は、かかるポリマー-金属複合体を用いた、強度の高いタイヤ及びポリマー物品を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決する本発明の要旨構成は、以下の通りである。
【0011】
本発明のポリマー-金属複合体は、ゴム成分及び/又は樹脂成分を含むポリマー部材と金属部材とが接着層を介して接着されたポリマー-金属複合体であって、
前記接着層は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有し、ブチレン単位を有さず、且つ変性基を有する変性共重合体を含有する、ことを特徴とする。
かかる本発明のポリマー-金属複合体は、ポリマー部材と金属部材とが強固に接着している。
【0012】
本発明のポリマー-金属複合体においては、前記変性共重合体が、芳香族ビニル単位を更に有することが好ましい。この場合、共重合体自体の耐破壊特性が向上し、ポリマー部材と金属部材との剥離を効果的に抑制することができる。
【0013】
本発明のポリマー-金属複合体においては、前記芳香族ビニル単位が、α-メチルスチレン単位、o-メチルスチレン単位、m-メチルスチレン単位又はp-メチルスチレン単位を含むことが好ましい。この場合、変性基の導入がより容易となって製造性が向上する。
【0014】
本発明のポリマー-金属複合体においては、上記と同様の観点から、前記芳香族ビニル単位が、p-メチルスチレン単位のみからなることが好ましい。
【0015】
本発明のポリマー-金属複合体においては、前記変性基が、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子、ハロゲン原子及び金属原子から選択される少なくともいずれかを有することが好ましい。この場合、ポリマー部材と金属部材との接着効果をより向上させることができる。
【0016】
本発明のポリマー-金属複合体においては、ポリマー部材と金属部材とをより強固に接着させる観点から、前記変性基が、カルボニル部分(-C(=O)-)及びチオカルボニル部分(-C(=S)-)の少なくともいずれかを備えることが好ましい。
【0017】
本発明のポリマー-金属複合体においては、上記と同様の観点から、前記変性基が、エステル結合(-C(=O)O-)及びジチオエステル結合(-C(=S)S-)の少なくともいずれかを備えることがより好ましい。
【0018】
本発明のポリマー-金属複合体においては、前記変性共重合体における前記変性基の割合が0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。この場合、ポリマー部材と金属部材とをより強固に接着させることができ、また、変性基同士の反応によるゲル化を十分に抑制することができる。
【0019】
本発明のポリマー-金属複合体においては、前記変性共重合体における共役ジエン単位の割合が10mol%以上であることが好ましい。この場合、ポリマー部材との接着性をより向上させることができる。
【0020】
本発明のポリマー-金属複合体においては、前記変性共重合体における共役ジエン単位の割合が25mol%以上であることが好ましい。この場合、ポリマー部材との接着性をより一層向上させることができる。
【0021】
本発明のポリマー-金属複合体は、ポリマー部材と金属部材とをより強固に接着させる観点から、前記変性共重合体において、共役ジエン単位がブタジエン単位であり、非共役オレフィン単位がエチレン単位であることが好ましい。
【0022】
本発明のポリマー-金属複合体において、前記ポリマー部材は、環境規制の観点から、コバルト含有化合物を実質的に含有しないことが好ましい。
【0023】
本発明のポリマー-金属複合体において、前記ポリマー部材は、加工性の悪化、熱劣化及び酸素劣化を抑制する観点から、ゴム成分及び/又は樹脂成分100質量部に対する硫黄の含有量が3質量部未満であることが好ましい。
【0024】
本発明のポリマー-金属複合体においては、前記接着層が、パーオキサイドを更に含有することが好ましい。この場合、複合体を高温環境下に置いたとしても、ポリマー部材と金属部材との一層強固な接着を保持することができる。
【0025】
本発明のポリマー-金属複合体においては、前記パーオキサイドの1時間半減期温度が、前記変性共重合体の融点よりも高いことが好ましい。この場合、あらかじめ変性共重合体と混練する際に、パーオキサイドが早まって反応するのを効果的に抑制することができる。
【0026】
本発明のポリマー-金属複合体においては、前記パーオキサイドの1時間半減期温度が110℃以上であることが好ましい。この場合、あらかじめ変性共重合体と混練する際に、パーオキサイドが早まって反応するのを効果的に抑制することができる。
【0027】
本発明のタイヤは、上述したポリマー-金属複合体であって、前記ポリマー部材がゴム成分を含む当該ポリマー-金属複合体を備えることを特徴とする。かかる本発明のタイヤは、強度が高い。
【0028】
本発明のポリマー物品は、上述したポリマー-金属複合体を備えることを特徴とする。かかる本発明のポリマー物品は、強度が高い。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、ポリマー部材と金属部材とが強固に接着したポリマー-金属複合体を提供することができる。
また、本発明によれば、かかるポリマー-金属複合体を用いた、強度の高いタイヤ及びポリマー物品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明を、実施形態に基づき詳細に説明する。
【0031】
(ポリマー-金属複合体)
本発明の一実施形態のポリマー-金属複合体(以下、「本実施形態の複合体」と称することがある。)は、ゴム成分及び/又は樹脂成分を含むポリマー部材と金属部材とが、接着層を介して接着される。また、本実施形態の複合体は、上記接着層が、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有し、ブチレン単位を有さず、且つ変性基を有する変性共重合体(以下、単に「変性共重合体」と称することがある。)を含有する。
【0032】
本実施形態の複合体において、接着層に含有される上記変性共重合体は、金属部材に対し、変性基に由来した水素結合などによって高度に結着することができる。また、接着層に含有される上記変性共重合体は、共役ジエン単位を有するため、共架橋反応によってゴム成分を含む部材との連結を形成することができる。また、接着層に含有される変性共重合体は、非共役オレフィン単位を有するため、互いに溶融することによって樹脂成分を含む部材との連結を形成することができる。これらの作用により、本実施形態の複合体においては、上述した接着層を介してポリマー部材と金属部材とを強固に接着させることができるものと考えられる。
【0033】
更に、本実施形態の複合体においては、接着層として上述した変性共重合体を用いればよく、即ち、一層で接着性を発現できるため、製造が容易であるという利点もある。
【0034】
なお、本実施形態の複合体は、後述するタイヤ、コンベヤベルト、ホース、クローラ等の各種ゴム物品、或いは、各種樹脂物品に利用することができる。
【0035】
<金属部材>
本実施形態の複合体に用いる金属部材の形状としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えばコード状、平板状等が挙げられる。特に、スチールコードに代表されるコード状の金属部材としては、金属ワイヤー(金属鋼線)を複数本撚り合わせてなるもの、又は金属ワイヤーの単線からなるものが挙げられる。
【0036】
金属部材の材質としては、例えば、鉄、鋼(ステンレス鋼)、鉛、アルミニウム、銅、黄銅、青銅、モネル金属合金、ニッケル、亜鉛等が挙げられる。但し、本実施形態において金属部材の材質は特に限定されず、いずれの材質であっても、ポリマー部材との強固な接着を発現することができる。また、本実施形態の複合体に用いる金属部材は、任意の金属を用いたメッキが表面に施されていてもよい。また、金属部材が表面にメッキを有する場合、当該金属部材の本体の材質は、非金属であってもよい。表面のメッキは、特に限定されないが、例えば、銅メッキ、亜鉛メッキ、ブラス(真鍮)メッキ等が挙げられる。
【0037】
<ポリマー部材>
本実施形態の複合体におけるポリマー部材は、上記金属部材への接着対象となるものであり、また、ゴム成分及び/又は樹脂成分を含む部材である。便宜的に、少なくともゴム成分を含む当該ポリマー部材は、「ゴム部材」と称することができ、また、少なくとも樹脂成分を含む当該ポリマー部材は、「樹脂部材」と称することができる。なお、ポリマー部材は、ゴム成分及び樹脂成分の両方を含んでもよい。
【0038】
ポリマー部材の形状としては、特に限定されず、目的に応じて適宜選択することができ、例えば平板状等が挙げられる。また、金属部材がコード状である場合、ポリマー部材は、当該金属部材の周面を(接着層を介して)被覆することができる。また、本実施形態の複合体におけるポリマー部材がゴム成分を含む場合、当該ポリマー部材は、加硫物とすることができる。
【0039】
ポリマー部材は、少なくともゴム成分又は樹脂成分を含有するポリマー組成物から作製することができる。
ゴム成分を用いる場合、当該ゴム成分は、ジエン系ゴムを含むことが好ましく、ジエン系ゴムのみからなることがより好ましい。これにより、ポリマー部材と接着層に含まれる変性共重合体とが共架橋して、接着性をより向上させることができる。ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、スチレン-イソプレン-ブタジエンゴム(SIBR)、ブチルゴム、エチレン-プロピレンゴム(EPM)、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)等が挙げられる。ゴム成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。特に、ゴム成分としては、高い破壊特性の観点から、天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレン-ブタジエンゴム、ブチルゴム、アクリロニトリルブタジエンゴム、クロロプレンゴム又はエチレン-プロピレンゴムを用いることが好ましく、天然ゴムを用いることがより好ましい。
【0040】
樹脂成分を用いる場合、当該樹脂成分としては、最終的に製造されるポリマー物品(樹脂物品)に所望される性能に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリスチレン等の単独重合体;エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-エチルアクリレート共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等の共重合体、及びこれらのアイオノマー樹脂等のポリオレフィン樹脂;ビニルアルコール単独重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体等のポリビニルアルコール樹脂;ポリ(メタ)アクリル酸樹脂及びそのエステル樹脂;脂肪族ポリアミド樹脂、芳香族ポリアミド樹脂等のポリアミド樹脂;ポリエチレングリコール樹脂;カルボキシビニル共重合体;スチレン-マレイン酸共重合体;ビニルピロリドン単独重合体、ビニルピロリドン-酢酸ビニル共重合体等のポリビニルピロリドン樹脂;ポリエステル樹脂;セルロース樹脂;メルカプトメタノール;水素化スチレン-ブタジエン;シンジオタクチックポリブタジエン、トランスポリブタジエン、トランスポリイソプレン等が挙げられる。樹脂成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、樹脂成分は、変性共重合体との親和性の観点から、非共役オレフィン単位を有する樹脂成分であることが好ましく、ポリオレフィン樹脂であることがより好ましく、また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン-プロピレン共重合体が更に好ましい。
【0041】
また、ポリマー部材の作製に用いるポリマー組成物は、必要に応じ、カーボンブラック及びシリカ等の充填剤、シランカップリング剤等の充填剤改質剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、亜鉛華等の加硫促進助剤、オイル等の軟化剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、加工助剤、潤滑剤、粘着付与剤、着色剤などを、目的に応じて適宜含有することができる。
【0042】
なお、ポリマー部材の作製に用いるポリマー組成物は、環境規制の観点から、コバルト含有化合物を実質的に含有しないことが好ましい。同様に、本実施形態の複合体に用いるポリマー部材は、環境規制の観点から、コバルト含有化合物を実質的に含有しないことが好ましい。コバルト塩等のコバルト含有化合物は、従来、接着性向上を目的としてゴム等に配合することがあるが、本実施形態においては、ポリマー部材にコバルト含有化合物を用いなくとも、金属部材との高い接着性を発現させることができる。
【0043】
また、ポリマー部材の作製に用いるポリマー組成物は、加工性の悪化、熱劣化及び酸素劣化を抑制する観点から、ゴム成分及び/又は樹脂成分100質量部に対する硫黄の含有量が3質量未満であることが好ましい。同様に、本実施形態の複合体に用いるポリマー部材は、加工性の悪化、熱劣化及び酸素劣化を抑制する観点から、ゴム成分及び/又は樹脂成分100質量部に対する硫黄の含有量が3質量未満であることが好ましい。硫黄は、従来、接着性向上を目的として多量にゴム等に配合することがあるが、本実施形態においては、ポリマー部材に多量の硫黄を用いなくとも、金属部材との高い接着性を発現させることができる。
【0044】
ポリマー組成物は、特に限定されず、例えば、常法に従って上述した各成分を配合して混練することにより調製することができる。なお、混練に際しては、バンバリーミキサー、ニーダー等の混練機を用いることができる。更に、ポリマー組成物を用いてシート状や帯状等のポリマー部材に成形する場合には、押出成形機、プレス機等の公知の成形機を用いることができる。
【0045】
また、ポリマー組成物がゴム成分を含む場合には、当該ポリマー組成物を接着層(変性共重合体)と接触させた状態で加硫することにより、ポリマー部材を形成してもよい。
【0046】
<接着層(変性共重合体)>
本実施形態の複合体に用いる接着層は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有し、ブチレン単位を有さず、且つ変性基を有する変性共重合体を少なくとも含有する。かかる接着層は、通常は、上記変性共重合体を含有する層の一層のみからなる。
【0047】
なお、上記接着層は、必要に応じて、パーオキサイド(後述)、カーボンブラック及びシリカ等の充填剤、シランカップリング剤等の充填剤改質剤、硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、亜鉛華等の加硫促進助剤、オイル等の軟化剤、老化防止剤、スコーチ防止剤、加工助剤、潤滑剤、粘着付与剤、着色剤などのその他の添加剤を、目的に応じて適宜含有することができる。但し、上記接着層は、所望の効果を確実に得る観点から、変性共重合体の含有量が95質量%以上であることが好ましく、98質量%以上であることがより好ましく、100質量%である(即ち、接着層が、変性共重合体のみからなる)ことが更に好ましい。
【0048】
上記変性共重合体は、少なくとも共役ジエン単位を有する。ここで、上記共役ジエン単位は、単量体としての共役ジエン化合物由来の単位に相当する構成単位である。また、共役ジエン化合物とは、共役系のジエン化合物を意味する。共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン等が挙げられる。そして、上記変性共重合体における共役ジエン単位は、ポリマー部材との接着性をより向上させる観点から、ブタジエン単位(1,3-ブタジエン由来の単位に相当する構成単位)及び/又はイソプレン単位を含むことが好ましく、ブタジエン単位のみからなることがより好ましい。上記変性共重合体における共役ジエン単位は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0049】
変性共重合体における共役ジエン単位の割合は、10mol%以上であることが好ましい。10mol以上であれば、ポリマー部材との接着性をより向上させることができる。同様の観点から、変性共重合体における共役ジエン単位の割合は、25mol%以上であることがより好ましく、40mol%以上であることが更に好ましく、また、80mol%以下であることが好ましく、70mol%以下であることがより好ましく、60mol%以下であることが更に好ましい。
【0050】
また、上記変性共重合体は、少なくとも非共役オレフィン単位を有する。ここで、上記非共役オレフィン単位は、単量体としての非共役オレフィン化合物由来の単位に相当する構成単位である。また、非共役オレフィン化合物とは、脂肪族不飽和炭化水素で、炭素-炭素二重結合を1個以上有する化合物を意味する。非共役オレフィン化合物としては、例えば、エチレン、プロピレン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン等のα-オレフィン、ピバリン酸ビニル、1-フェニルチオエテン、N-ビニルピロリドン等のヘテロ原子置換アルケン化合物等が挙げられる。そして、上記変性共重合体における非共役オレフィン単位は、所望の効果をより確実に発揮させる観点から、エチレン単位及び/又はプロピレン単位を含むことが好ましく、エチレン単位のみからなることがより好ましい。上記変性共重合体における非共役オレフィン単位は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0051】
変性共重合体における非共役オレフィン単位の割合は、20mol%以上であることが好ましい。20mol%以上であれば、所望の効果を一層確実に発揮させることができる。同様の観点から、変性共重合体における非共役オレフィン単位の割合は、30mol%以上であることがより好ましく、40mol%以上であることが更に好ましい。また、変性共重合体における非共役オレフィン単位の割合は、共役ジエン単位等によって奏される効果を十分に得る観点から、99mol%以下であることがより好ましく、90mol%以下であることが更に好ましい。
【0052】
また、変性共重合体は、所望の効果を確実に得る観点から、ブチレン単位を有しないこととする。つまり、変性共重合体は、例えば、ブタジエンの水添によって得られたポリマーや、スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン(SEBS)といった、スチレン-ブタジエン共重合体の水添物を含まないことが好ましい。
【0053】
変性共重合体は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位のほか、芳香族ビニル単位を更に有することが好ましい。変性共重合体が芳香族ビニル単位を更に有することで、共重合体自体の耐破壊特性が向上し、ポリマー部材と金属部材との剥離を効果的に抑制することができる。
【0054】
ここで、上記芳香族ビニル単位は、単量体としての芳香族ビニル化合物由来の単位に相当する構成単位である。また、芳香族ビニル化合物とは、少なくともビニル基で置換された芳香族化合物を意味し、共役ジエン化合物には包含されないものとする。芳香族ビニル化合物としては、例えば、スチレン;α-メチルスチレン、o-メチルスチレン(2-メチルスチレン)、m-メチルスチレン(3-メチルスチレン)、p-メチルスチレン(4-メチルスチレン)等のメチルスチレン類;o,p-ジメチルスチレン;o-エチルスチレン、m-エチルスチレン、p-エチルスチレン等のエチルスチレン類;が挙げられる。そして、上記変性共重合体における芳香族ビニル単位は、変性基の導入がより容易となって製造性が向上する観点から、α-メチルスチレン単位、o-メチルスチレン単位、m-メチルスチレン単位又はp-メチルスチレン単位を含むことが好ましい。芳香族ビニル単位は、1種単独であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。但し、上記と同様の観点から、上記変性共重合体における芳香族ビニル単位は、p-メチルスチレン単位のみからなることがより好ましい。
【0055】
変性共重合体における芳香族ビニル単位の割合は、0.1mol%以上であることが好ましい。0.1mol%以上であれば、変性共重合体の耐破壊特性の向上効果を十分に得ることができる。同様の観点から、変性共重合体における芳香族ビニル単位の割合は、0.3mol%以上であることがより好ましく、0.5mol%以上であることが更に好ましい。また、変性共重合体における芳香族ビニル単位の割合は、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位によって奏される効果をそれぞれ十分に得る観点から、20mol%以下であることがより好ましく、10mol%以下であることが更に好ましく、5mol%以下であることが特に好ましい。
【0056】
変性共重合体は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が10,000以上、10,000,000以下であることが好ましい。変性共重合体のMwが10,000以上であることにより、機械的強度を十分に確保することができ、また、10,000,000以下であることにより、高い作業性を保持することができる。同様の観点から、変性共重合体のMwは、100,000以上であることがより好ましく、150,000以上であることが更に好ましく、また、9,000,000以下であることがより好ましく、8,000,000以下であることが更に好ましい。
【0057】
変性共重合体は、ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が10,000以上、10,000,000以下であることが好ましい。変性共重合体のMnが10,000以上であることにより、機械的強度を十分に確保することができ、また、10,000,000以下であることにより、高い作業性を保持することができる。同様の観点から、変性共重合体のMnは、50,000以上であることがより好ましく、100,000以上であることが更に好ましく、また、9,000,000以下であることがより好ましく、8,000,000以下であることが更に好ましい。
【0058】
変性共重合体は、分子量分布[Mw/Mn(重量平均分子量/数平均分子量)]が1.00以上4.00以下であることが好ましい。変性共重合体の分子量分布が4.00以下であれば、変性共重合体の物性に十分な均質性をもたらすことができる。同様の観点から、変性共重合体の分子量分布は、3.50以下であることがより好ましく、3.00以下であることが更に好ましい。また、変性共重合体の分子量分布は、1.50以上であることがより好ましく、1.80以上であることが更に好ましい。
【0059】
なお、上述した重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレンを標準物質として求める。
【0060】
変性共重合体は、示差走査熱量計(DSC)で測定した融点が30℃以上であることが好ましく、また、180℃以下であることが好ましい。変性共重合体の融点が30℃以上であれば、変性共重合体の結晶性が高くなり、耐亀裂性が更に向上し、また、180℃以下であれば、加熱時の加熱温度を過度に高める必要がなくなり、作業性が更に向上する。同様の観点から、上記変性共重合体の融点は、140℃以下であることがより好ましい。なお、共重合体に融点が2つ以上ある場合は、最も高い融点を採用する。
【0061】
変性共重合体は、結晶化度(ΔH/ΔH0×100、「結晶量」とも呼ぶ)が0.5%以上であることが好ましく、また、50%以下であることが好ましい。変性共重合体の結晶化度が0.5%以上であれば、非共役オレフィン単位に起因する結晶性を十分に確保して、耐亀裂性が更に向上する。また、変性共重合体の結晶化度が50%以下であれば、混練等の際の作業性が向上し、また、変性共重合体のタッキネスが向上するため、共重合体から作製した成形部材同士を貼り付ける際の作業性も向上する。同様の観点から、変性共重合体の結晶化度は、1%以上であることがより好ましく、1.5%以上であることが更に好ましく、また、45%以下であることが更に好ましい。
なお、結晶化度は、示差走査熱量計(DSC)で測定した、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)に対する、対象となる共重合体の吸熱ピークエネルギー(ΔH1)の比率(ΔH1/ΔH0×100)として求めることができる。なお、ポリエチレンの結晶融解熱(結晶融解エネルギー)は、293J/gである。
【0062】
変性共重合体は、主鎖が環状構造を有してもよく、或いは、主鎖が非環状構造のみからなってもよい。主鎖が非環状構造のみからなる場合には、耐亀裂成長性をより向上させることができる。なお、共重合体の主鎖が環状構造を有するか否かの確認には、NMRが主要な測定手段として用いられる。具体的には、主鎖に存在する環状構造に由来するピーク(例えば、三員環~五員環については、13C-NMRスペクトルチャートにおいて10~24ppmに現れるピーク)が観測されない場合、その共重合体の主鎖は、非環状構造のみからなることを示す。一方で、当該ピークが観測される場合、その共重合体の主鎖は、環状構造を有することを示す。
【0063】
そして、変性共重合体は、単量体単位としては、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位のみからなるか、或いは、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位のみからなることが好ましい。また、変性共重合体においては、ポリマー部材と金属部材とをより強固に接着させる観点から、共役ジエン単位がブタジエン単位であり、非共役オレフィン単位がエチレン単位であることが好ましい。
なお、共役ジエン単位、非共役オレフィン単位及び芳香族ビニル単位を有する共重合体としては、例えば、WO2017/065301A1に記載の共重合体を好ましく用いることができ、共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有する共重合体としては、例えば、WO2012/105258A1、WO2012/014463A1に記載の共重合体を好ましく用いることができる。
【0064】
次に、変性基に関して説明する。変性共重合体における変性基としては、当該共重合体の極性を高め得るものであれば、特に限定されない。但し、変性共重合体における変性基は、酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子、ハロゲン原子及び金属原子から選択される少なくともいずれかを有することが好ましい。この場合、ポリマー部材と金属部材との接着効果をより向上させることができる。
【0065】
変性基、特に、上記の酸素原子、窒素原子、ケイ素原子、硫黄原子、ハロゲン原子及び金属原子から選択される少なくともいずれかを含む変性基は、変性剤を用いることにより、共重合体に導入することができる。上記変性剤としては、例えば、下記化合物(a)~(l)から選ばれる少なくとも一種の化合物が好ましく挙げられる。
【0066】
化合物(a)は、下記一般式(1)で表される化合物である。
【0067】
【0068】
一般式(1)において、X11~X15は、それぞれ独立に水素原子、あるいはハロゲン原子、カルボニル基、チオカルボニル基、イソシアネート基、チオイソシアネート基、エポキシ基、チオエポキシ基、ハロゲン化シリル基、ヒドロカルビルオキシシリル基及びスルホニルオキシ基の中から選ばれる少なくとも一種を含み、かつ活性プロトン及びオニウム塩を含まない一価の官能基を示し、X11~X15の少なくとも1つは水素原子ではない。
R11~R15は、それぞれ独立に単結合又は炭素数1~18の二価の炭化水素基を示す。R11~R15の二価の炭化水素基としては、例えば典型的には、炭素数1~18のアルキレン基、炭素数2~18のアルケニレン基、炭素数6~18のアリーレン基、炭素数7~18のアラルキレン基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1~18のアルキレン基が好ましく、炭素数1~10のアルキレン基がより好ましい。アルキレン基、アルケニレン基は直鎖状、分岐状、環状のいずれであってもよく、直鎖状のものが好ましい。直鎖状のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基等が挙げられる。
また、X11~X15及びR11~R15のいずれかを介して複数のアジリジン環が結合していてもよい。また、一般式(1)において、X11が水素原子、かつR11が単結合であることを同時に満たさないことが好ましい。
【0069】
一般式(1)で表される変性剤としては、例えば典型的には、1-アセチルアジリジン、1-プロピオニルアジリジン、1-ブチルアジリジン、1-イソブチルアジリジン、1-バレリルアジリジン、1-イソバレリルアジリジン、1-ピバロイルアジリジン、1-アセチル-2-メチルアジリジン、2-メチル-1-プロピオニルアジリジン、1-ブチル2-メチルアジリジン、2-メチル-1-イソブチルアジリジン、2-メチル-1-バレリルアジリジン、1-イソバレリル-2-メチルアジリジン、2-メチル-1-ピバロイルアジリジン、エチル3-(1-アジリジニル)プロピオネート、プロピル3-(1-アジリジニル)プロピオネート、ブチル3-(1-アジリジニル)プロピオネート、エチレングリコールビス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、エチル3-(2-メチル-1-アジリジニル)プロピオネート、プロピル3-(2-メチル-1-アジリジニル)プロピオネート、ブチル3-(2-メチル-1-アジリジニル)プロピオネート、エチレングリコールビス[3-(2-メチル-1-アジリジニル)プロピオネート]、トリメチロールプロパントリス[3-(2-メチル-1-アジリジニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス[3-(1-アジリジニル)プロピオネート]、ネオペンチルグリコールビス[3-(2-メチル-1-アジリジニル)プロピオネート]、ジ(1-アジリジニルカルボニル)メタン、1,2-ジ(1-アジリジニルカルボニル)エタン、1,3-ジ(1-アジリジニルカルボニル)プロパン、1,4-ジ(1-アジリジニルカルボニル)ブタン、1,5-ジ(1-アジリジニルカルボニル)ペンタン、ジ(2-メチル-1-アジリジニルカルボニル)メタン、1,2-ジ(2-メチル-1-アジリジニルカルボニル)エタン、1,3-ジ(2-メチル-1-アジリジニルカルボニル)プロパン、1,4-ジ(2-メチル-1-アジリジニルカルボニル)ブタン等が挙げられる。
化合物(a)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0070】
化合物(b)は、下記一般式(2-1)~(2-5)で表されるハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物、又は有機金属化合物である。
【0071】
【0072】
一般式(2-1)~(2-5)において、R21~R23は、それぞれ独立に炭素数1~20の炭化水素基を示し、R24は炭素数1~20の炭化水素基を示し、側鎖にカルボニル基又はエステル基を含んでいてもよく、M21はスズ原子、ケイ素原子、ゲルマニウム原子又はリン原子を示し、Z21はハロゲン原子を示し、n21は0~3の整数を示す。
【0073】
一般式(2-1)~(2-3)で示されるハロゲン化有機金属化合物、ハロゲン化金属化合物としては、M21がスズ原子の場合、例えば典型的には、トリフェニルスズクロリド、トリブチルスズクロリド、トリイソプロピルスズクロリド、トリヘキシルスズクロリド、トリオクチルスズクロリド、ジフェニルスズジクロリド、ジブチルスズジクロリド、ジヘキシルスズジクロリド、ジオクチルスズジクロリド、フェニルスズトリクロリド、ブチルスズトリクロリド、オクチルスズトリクロリド、四塩化スズ等が挙げられる。
【0074】
M21がケイ素原子の場合、例えば典型的には、トリフェニルクロロシラン、トリヘキシルクロロシラン、トリオクチルクロロシラン、トリブチルクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ジヘキシルジクロロシラン、ジオクチルジクロロシラン、ジブチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、メチルジクロロシラン、フェニルクロロシラン、ヘキシルトリジクロロシラン、オクチルトリクロロシラン、ブチルトリクロロシラン、メチルトリクロロシラン、四塩化ケイ素等が挙げられる。
【0075】
M21がゲルマニウム素原子の場合、例えば典型的には、トリフェニルゲルマニウムクロリド、ジブチルゲルマニウムジクロリド、ジフェニルゲルマニウムジクロリド、ブチルゲルマニウムトリクロリド、四塩化ゲルマニウム等が挙げられるさらに、式(V)中、M’がリン原子の場合には、(b)成分としては、例えば三塩化リン等が挙げられる。
【0076】
また、化合物(b)としては、エステル基を分子中に含む上記一般式(2-4)で表される有機金属化合物、カルボニル基を分子中に含む上記一般式(2-5)で表される有機金属化合物が挙げられる。
化合物(b)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0077】
化合物(c)は、ヘテロクムレン化合物であり、分子中にY01=C=Y02結合(式中、Y01は炭素原子、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を示し、Y02は酸素原子、窒素原子又は硫黄原子を示す。)を含有する化合物である。
【0078】
化合物(c)が、Y01が炭素原子であり、かつY02が酸素原子の場合、ケテン化合物であり、Y01が炭素原子であり、かつY02が硫黄原子の場合、チオケテン化合物であり、Y01が窒素原子であり、かつY02が酸素原子の場合、イソシアナート化合物であり、Y01が窒素原子であり、かつY02が硫黄原子の場合、チオイソシアナート化合物であり、Y01及びY02がともに窒素原子の場合、カルボジイミド化合物であり、Y01及びY02がともに酸素原子の場合、二酸化炭素であり、Y01が酸素原子、Y02が硫黄原子の場合、硫化カルボニルであり、Y01及びY02がともに硫黄原子の場合、二硫化炭素である。化合物(c)は、変性剤としての機能を有する限り、Y01及びY02は上記の組み合わせに限定されるものではない。
【0079】
ケテン化合物としては、例えば典型的には、エチルケテン、ブチルケテン、フェニルケテン、トルイルケテン等が挙げられる。チオケテン化合物としては、例えば典型的には、エチレンチオケテン、ブチルチオケテン、フェニルチオケテン、トルイルチオケテン等が挙げられる。イソシアナート化合物としては、例えば典型的には、フェニルイソシアナート、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、ジフェニルメタンジイソシアナート、ポリメリックタイプのジフェニルメタンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等が挙げられる。チオイソシアナート化合物としては、例えば典型的には、フェニルチオイソシアナート、2,4-トリレンジチオイソシアナート、ヘキサメチレンジチオイソシアナート等が挙げられる。また、カルボジイミド化合物としては、例えば典型的には、N,N′-ジフェニルカルボジイミド、N,N′-エチルカルボジイミド等が挙げられる。
化合物(c)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0080】
化合物(d)は、下記一般式(3)で表される結合を有するヘテロ3員環化合物である。
【0081】
【0082】
一般式(3)において、Y31は酸素原子又は硫黄原子を示す。
化合物(d)は、Y31が酸素原子の場合、エポキシ化合物であり、硫黄原子の場合、チイラン化合物である。ここで、エポキシ化合物としては、例えば典型的には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、エポキシ化大豆油、エポキシ化天然ゴム等が挙げられる。また、チイラン化合物としては、例えば典型的には、チイラン、メチルチイラン、フェニルチイラン等が挙げられる。
化合物(d)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0083】
化合物(e)は、ハロゲン化イソシアノ化合物である。ハロゲン化イソシアノ化合物としては、例えば、>N=C-X01結合(X01はハロゲン原子である。)を含む化合物が挙げられる。
【0084】
ハロゲン化イソシアノ化合物としては、例えば典型的には、2-アミノ-6-クロロピリジン、2,5-ジブロモピリジン、4-クロロ-2-フェニルキナゾリン、2,4,5-トリブロモイミダゾール、3,6-ジクロロ-4-メチルピリダジン、3,4,5-トリクロロピリダジン、4-アミノ-6-クロロ-2-メルカプトピリミジン、2-アミノ-4-クロロ-6-メチルピリミジン、2-アミノ-4,6-ジクロロピリミジン、6-クロロ-2,4-ジメトキシピリミジン、2-クロロピリミジン、2,4-ジクロロ-6-メチルピリミジン、4,6-ジクロロ-2-(メチルチオ)ピリミジン、2,4,5,6-テトラクロロピリミジン、2,4,6-トリクロロピリミジン、2-アミノ-6-クロロピラジン、2,6-ジクロロピラジン、2,4-ビス(メチルチオ)-6-クロロ-1,3,5-トリアジン、2,4,6-トリクロロ-1,3,5-トリアジン、2-ブロモ-5-ニトロチアゾール、2-クロロベンゾチアゾール、2-クロロベンゾオキサゾール等が挙げられる。
化合物(e)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0085】
化合物(f)は、下記一般式(4-1)~(4-6)で表される、カルボン酸、酸ハロゲン化物、エステル化合物、炭酸エステル又は酸無水物である。
【0086】
【0087】
一般式(4-1)~(4-6)において、R41~R49は、それぞれ独立に炭素数1~50の炭化水素基、Z41はハロゲン原子、n41は1~5の整数を示す。
【0088】
一般式(4-1)で表されるカルボン酸としては、例えば典型的には、酢酸、ステアリン酸、アジピン酸、マレイン酸、安息香酸、アクリル酸、メタアクリル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、メリット酸、ポリメタクリル酸エステル化合物又はポリアクリル酸化合物の全あるいは部分加水分解物等が挙げられる。
【0089】
一般式(4-2)の酸ハロゲン化物としては、例えば典型的には、酢酸クロリド、プロピオン酸クロリド、ブタン酸クロリド、イソブタン酸クロリド、オクタン酸クロリド、アクリル酸クロリド、安息香酸クロリド、ステアリン酸クロリド、フタル酸クロリド、マレイン酸クロリド、オキサリン酸クロリド、ヨウ化アセチル、ヨウ化ベンゾイル、フッ化アセチル、フッ化ベンゾイル等が挙げられる。
【0090】
一般式(4-3)のエステル化合物としては、例えば典型的には、酢酸エチル、ステアリン酸エチル、アジピン酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、安息香酸メチル、アクリル酸エチル、メタアクリル酸エチル、フタル酸ジエチル、テレフタル酸ジメチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラオクチル、メリット酸ヘキサエチル、酢酸フェニル、ポリメチルメタクリレート、ポリエチルアクリレート、ポリイソブチルアクリレート等が挙げられ、一般式(4-4)で表される炭酸エステル化合物としては、例えば炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロピル、炭酸ジヘキシル、炭酸ジフェニル等が挙げられる。
【0091】
酸無水物としては、例えば典型的には、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水イソ酪酸、無水イソ吉草酸、無水ヘプタン酸、無水安息香酸、無水ケイ皮酸等の一般式(4-5)で表される分子間の酸無水物、また、一般式(4-6)で表される、例えば典型的には、無水コハク酸、無水メチルコハク酸、無水マレイン酸、無水グルタル酸、無水シトラコン酸、無水フタル酸、スチレン-無水マレイン酸共重合体等の酸無水物が挙げられる。
化合物(f)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0092】
上記化合物(f)として挙げた化合物は、本発明の目的を損なわない範囲で、例えばエーテル基、3級アミノ基等の非プロトン性の極性基を含むものであってもよい。また、化合物(f)は、フリーのアルコール基、フェノール基を含む化合物を不純物として含むものであってもよい。
化合物(f)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることもできる。
【0093】
化合物(g)は、下記一般式(5-1)~(5-3)で表されるカルボン酸の金属塩である。
【0094】
【0095】
一般式(5-1)~(5-3)において、R51~R57は、それぞれ独立に炭素数1~20の炭化水素基を示し、M51はスズ原子、ケイ素原子又はゲルマニウム原子を示し、n51は0~3の整数を示し、n52は0又は1の整数を示す。
【0096】
一般式(5-1)で表される化合物(g)としては、例えば典型的には、トリフェニルスズラウレート、トリフェニルスズ-2-エチルヘキサテート、トリフェニルスズナフテート、トリフェニルスズアセテート、トリフェニルスズアクリレート、トリ-n-ブチルスズラウレート、トリ-n-ブチルスズ-2-エチルヘキサテート、トリ-n-ブチルスズナフテート、トリ-n-ブチルスズアセテート、トリ-n-ブチルスズアクリレート、トリ-t-ブチルスズラウレート、トリ-t-ブチルスズ-2-エチルヘキサテート、トリ-t-ブチルスズナフテート、トリ-t-ブチルスズアセテート、トリ-t-ブチルスズアクリレート、トリイソブチルスズラウレート、トリイソブチルスズ-2-エチルヘキサテート、トリイソブチルスズナフテート、トリイソブチルスズアセテート、トリイソブチルスズアクリレート、トリイソプロピルスズラウレート、トリイソプロピルスズ-2-エチルヘキサテート、トリイソプロピルスズナフテート、トリイソプロピルスズアセテート、トリイソプロピルスズアクリレート、トリヘキシルスズラウレート、トリヘキシルスズ-2-エチルヘキサテート、トリヘキシルスズアセテート、トリヘキシルスズアクリレート、トリオクチルスズラウレート、トリオクチルスズ-2-エチルヘキサテート、トリオクチルスズナフテート、トリオクチルスズアセテート、トリオクチルスズアクリレート、トリ-2-エチルヘキシルスズラウレート、トリ-2-エチルヘキシルスズ-2-エチルヘキサテート、トリ-2-エチルヘキシルスズナフテート、トリ-2-エチルヘキシルスズアセテート、トリ-2-エチルヘキシルスズアクリレート、トリステアリルスズラウレート、トリステアリルスズ-2-エチルヘキサテート、トリステアリルスズナフテート、トリステアリルスズアセテート、トリステアリルスズアクリレート、トリベンジルスズラウレート、トリベンジルスズ-2-エチルヘキサテート、トリベンジルスズナフテート、トリベンジルスズアセテート、トリベンジルスズアクリレート、ジフェニルスズジラウレート、ジフェニルスズ-2-エチルヘキサテート、ジフェニルスズジステアレート、ジフェニルスズジナフテート、ジフェニルスズジアセテート、ジフェニルスズジアクリレート、ジ-n-ブチルスズジラウレート、ジ-n-ブチルスズジ-2-エチルヘキサテート、ジ-n-ブチルスズジステアレート、ジ-n-ブチルスズジナフテート、ジ-n-ブチルスズジアセテート、ジ-n-ブチルスズジアクリレート、ジ-t-ブチルスズジラウレート、ジ-t-ブチルスズジ-2-エチルヘキサテート、ジ-t-ブチルスズジステアレート、ジ-t-ブチルスズジナフテート、ジ-t-ブチルスズジアセテート、ジ-t-ブチルスズジアクリレート、ジイソブチルスズジラウレート、ジイソブチルスズジ-2-エチルヘキサテート、ジイソブチルスズジステアレート、ジイソブチルスズジナフテート、ジイソブチルスズジアセテート、ジイソブチルスズジアクリレート、ジイソプロピルスズジラウレート、ジイソプロピルスズ-2-エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズジステアレート、ジイソプロピルスズジナフテート、ジイソプロピルスズジアセテート、ジイソプロピルスズジアクリレート、ジヘキシルスズジラウレート、ジヘキシルスズジ-2-エチルヘキサテート、ジヘキシルスズジステアレート、ジヘキシルスズジナフテート、ジヘキシルスズジアセテート、ジヘキシルスズジアクリレート、ジ-2-エチルヘキシルスズジラウレート、ジ-2-エチルヘキシルスズ-2-エチルヘキサテート、ジ-2-エチルヘキシルスズジステアレート、ジ-2-エチルヘキシルスズジナフテート、ジ-2-エチルヘキシルスズジアセテート、ジ-2-エチルヘキシルスズジアクリレート、ジオクチルスズジラウレート、ジオクチルスズジ-2-エチルヘキサテート、ジオクチルスズジステアレート、ジオクチルスズジナフテート、ジオクチルスズジアセテート、ジオクチルスズジアクリレート、ジステアリルスズジラウレート、ジステアリルスズジ-2-エチルヘキサテート、ジステアリルスズジステアレート、ジステアリルスズジナフテート、ジステアリルスズジアセテート、ジステアリルスズジアクリレート、ジベンジルスズジラウレート、ジベンジルスズジ-2-エチルヘキサテート、ジベンジルスズジステアレート、ジベンジルスズジナフテート、ジベンジルスズジアセテート、ジベンジルスズジアクリレート、フェニルスズトリラウレート、フェニルスズトリ-2-エチルヘキサテート、フェニルスズトリナフテート、フェニルスズトリアセテート、フェニルスズトリアクリレート、n-ブチルスズトリラウレート、n-ブチルスズトリ-2-エチルヘキサテート、n-ブチルスズトリナフテート、n-ブチルスズトリアセテート、n-ブチルスズトリアクリレート、t-ブチルスズトリラウレート、t-ブチルスズトリ-2-エチルヘキサテート、t-ブチルスズトリナフテート、t-ブチルスズトリアセテート、t-ブチルスズトリアクリレート、イソブチルスズトリラウレート、イソブチルスズトリ-2-エチルヘキサテート、イソブチルスズトリナフテート、イソブチルスズトリアセテート、イソブチルスズトリアクリレート、イソプロピルスズトリラウレート、イソプロピルスズトリ-2-エチルヘキサテート、イソプロピルスズトリナフテート、イソプロピルスズトリアセテート、イソプロピルスズトリアクリレート、ヘキシルスズトリラウレート、ヘキシルスズトリ-2-エチルヘキサテート、ヘキシルスズトリナフテート、ヘキシルスズトリアセテート、ヘキシルスズトリアクリレート、オクチルスズトリラウレート、オクチルスズトリ-2-エチルヘキサテート、オクチルスズトリナフテート、オクチルスズトリアセテート、オクチルスズトリアクリレート、2-エチルヘキシルスズトリラウレート、2-エチルヘキシルスズトリ-2-エチルヘキサテート、2-エチルヘキシルスズトリナフテート、2-エチルヘキシルスズトリアセテート、2-エチルヘキシルスズトリアクリレート、ステアリルスズトリラウレート、ステアリルスズトリ-2-エチルヘキサテート、ステアリルスズトリナフテート、ステアリルスズトリアセテート、ステアリルスズトリアクリレート、ベンジルスズトリラウレート、ベンジルスズトリ-2-エチルヘキサテート、ベンジルスズトリナフテート、ベンジルスズトリアセテート、ベンジルスズトリアクリレート等が挙げられる。
【0097】
一般式(5-2)で表される化合物(g)としては、例えば典型的には、ジフェニルスズビスメチルマレート、ジフェニルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジフェニルスズビスオクチルマレート、ジフェニルスズビスオクチルマレート、ジフェニルスズビスベンジルマレート、ジ-n-ブチルスズビスメチルマレート、ジ-n-ブチルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジ-n-ブチルスズビスオクチルマレート、ジ-n-ブチルスズビスベンジルマレート、ジ-t-ブチルスズビスメチルマレート、ジ-t-ブチルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジ-t-ブチルスズビスオクチルマレート、ジ-t-ブチルスズビスベンジルマレート、ジイソブチルスズビスメチルマレート、ジイソブチルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジイソブチルスズビスオクチルマレート、ジイソブチルスズビスベンジルマレート、ジイソプロピルスズビスメチルマレート、ジイソプロピルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズビスオクチルマレート、ジイソプロピルスズビスベンジルマレート、ジヘキシルスズビスメチルマレート、ジヘキシルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジヘキシルスズビスオクチルマレート、ジヘキシルスズビスベンジルマレート、ジ-2-エチルヘキシルスズビスメチルマレート、ジ-2-エチルヘキシルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジ-2-エチルヘキシルスズビスオクチルマレート、ジ-2-エチルヘキシルスズビスベンジルマレート、ジオクチルスズビスメチルマレート、ジオクチルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジオクチルスズビスオクチルマレート、ジオクチルスズビスベンジルマレート、ジステアリルスズビスメチルマレート、ジステアリルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジステアリルスズビスオクチルマレート、ジステアリルスズビスベンジルマレート、ジベンジルスズビスメチルマレート、ジベンジルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジベンジルスズビスオクチルマレート、ジベンジルスズビスベンジルマレート、ジフェニルスズビスメチルアジテート、ジフェニルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジフェニルスズビスオクチルアジテート、ジフェニルスズビスベンジルアジテート、ジ-n-ブチルスズビスメチルアジテート、ジ-n-ブチルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジ-n-ブチルスズビスオクチルアジテート、ジ-n-ブチルスズビスベンジルアジテート、ジ-t-ブチルスズビスメチルアジテート、ジ-t-ブチルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジ-t-ブチルスズビスオクチルアジテート、ジ-t-ブチルスズビスベンジルアジテート、ジイソブチルスズビスメチルアジテート、ジイソブチルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジイソブチルスズビスオクチルアジテート、ジイソブチルスズビスベンジルアジテート、ジイソプロピルスズビスメチルアジテート、ジイソプロピルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジイソプロピルスズビスオクチルアジテート、ジイソプロピルスズビスベンジルアジテート、ジヘキシルスズビスメチルアジテート、ジヘキシルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジヘキシルスズビスメチルアジテート、ジヘキシルスズビスベンジルアジテート、ジ-2-エチルヘキシルスズビスメチルアジテート、ジ-2-エチルヘキシルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジ-2-エチルヘキシルスズビスオクチルアジテート、ジ-2-エチルヘキシルスズビスベンジルアジテート、ジオクチルスズビスメチルアジテート、ジオクチルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジオクチルスズビスオクチルアジテート、ジオクチルスズビスベンジルアジテート、ジステアリルスズビスメチルアジテート、ジステアリルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジステアリルスズビスオクチルアジテート、ジステアリルスズビスベンジルアジテート、ジベンジルスズビスメチルアジテート、ジベンジルスズビス-2-エチルヘキサテート、ジベンジルスズビスオクチルアジテート、ジベンジルスズビスベンジルアジテート等が挙げられる。
【0098】
また、一般式(5-3)で表される化合物(g)としては、例えば典型的には、ジフェニルスズマレート、ジ-n-ブチルスズマレート、ジ-t-ブチルスズマレート、ジイソブチルスズマレート、ジイソプロピルスズマレート、ジヘキシルスズマレート、ジ-2-エチルヘキシルスズマレート、ジオクチルスズマレート、ジステアリルスズマレート、ジベンジルスズマレート、ジフェニルスズアジテート、ジ-n-ブチルスズアジテート、ジ-t-ブチルスズアジテート、ジイソブチルスズアジテート、ジイソプロピルスズアジテート、ジヘキシルスズジアセテート、ジ-2-エチルヘキシルスズアジテート、ジオクチルスズアジテート、ジステアリルスズアジテート、ジベンジルスズアジテート等が挙げられる。
化合物(g)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0099】
化合物(h)は、N-置換アミノケトン、N-置換アミノチオケトン、N-置換アミノアルデヒド、N-置換アミノチオアルデヒド又は分子中に-C-(=M01)-N<結合(M01は、酸素原子又は硫黄原子を示す。)を有する化合物である。
【0100】
化合物(h)としては、例えば典型的には、4-ジメチルアミノアセトフェノン、4-ジエチルアミノアセトフェノン、1,3-ビス(ジフェニルアミノ)-2-プロパノン、1,7-ビス(メチルエチルアミノ)-4-ヘプタノン、4-ジメチルアミノベンゾフェノン、4-ジエチルアミノベンゾフェノン、4-ジ-t-ブチルアミノベンゾフェノン、4-ジフェニルアミノベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、4,4'-ビス(ジフェニルアミノ)ベンゾフェノン等のN-置換アミノケトン及び対応するN-アミノチオケトン類;4-ジメチルアミノベンズアルデヒド、4-ジフェニルアミノベンズアルデヒド、4-ジビニルアミノベンズアルデヒド等のN-置換アミノアルデヒド及び対応するN-置換アミノチオアルデヒド;N-メチル-β-プロピオラクタム、N-フェニル-β-プロピオラクタム、N-メチル-2-ピロリドン、N-フェニル-2-ピロリドン、N-t-ブチル-2-ピロリドン、N-フェニル-5-メチル-2-ピロリドン、N-メチル-2-ピペリドン、N-フェニル-2-ピペリドン、N-メチル-ε-カプロラクタム、N-フェニル-ε-カプロラクタム、N-メチル-ω-カプロラクタム、N-フェニル-ω-カプロラクタム、N-メチル-ω-ラウリロラクタム、N-ビニル-ω-ラウリロラクタム等のN-置換ラクタム類及び対応するN―置換チオラクタム類、また1,3-ジメチルエチレン尿素、1,3-ジビニルエチレン尿素、1,3-ジエチル-2-イミダゾリジノン、1-メチル-3-エチル-2-イミダゾリジノン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等のN-置換環状尿素類及び対応するN-置換環状チオ尿素類等の、分子中に-C-(=M01)-N<結合(M01は、酸素原子又は硫黄原子を示す。)を有する化合物;等が挙げられる。
化合物(h)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0101】
化合物(i)は、N≡C-結合を有する化合物である。
化合物(i)としては、N≡C-結合を有する化合物であれば特に制限はなく、例えば、2-シアノピリジン、3-シアノピリジン、アクリロニトリル等の一般式R-CNで表される有機シアノ化合物等が挙げられる。
化合物(i)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0102】
化合物(j)は、下記一般式(6)で表されるリン酸残基を有する化合物である。
【0103】
【0104】
一般式(6)において、R61及びR62は、それぞれ独立して炭素数1~20のアルキル基、炭素数3~20の一価の脂環式炭化水素基、又は炭素数6~20の一価の芳香族炭化水素基、又は水素原子を示す。
【0105】
一般式(6)で表されるリン酸残基としては、例えば典型的には、下記一般式(7)で表されるリン酸残基が挙げられる。
【0106】
【0107】
化合物(j)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0108】
化合物(k)は、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含む求電子化合物である。求電子化合物としては、例えば、ベンズアルデヒド、ベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、アリルグリシジルエーテル等のケトン、アルデヒド、エポキシに代表される求電子化合物が好ましく挙げられる。
化合物(k)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0109】
化合物(l)は、酸素原子、窒素原子及びケイ素原子から選ばれる少なくとも一種の原子を含む、ビニル基を有するビニル化合物である。ビニル化合物としては、例えば、リン酸ビニル、ビニル酢酸エーテル、ピバロイル酸ビニル、ビニルトリメチルシラン、トリエトキシビニルシラン等が好ましく挙げられる。
化合物(l)としては、上記化合物を一種単独で、又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0110】
また、変性共重合体を製造するための別の方法として、(i)未変性の共重合体(共役ジエン単位及び非共役オレフィン単位を有し、ブチレン単位を有さない共重合体)に、アルカリ金属化合物を添加する工程、及び、(ii)(i)工程で得られた生成物を所定の変性剤と反応させて、共重合体に変性基を導入する工程、を含む方法が挙げられる。
【0111】
上記(i)工程で添加するアルカリ金属化合物のアルカリ金属原子(M)としては、例えば、Li、Na、K、Rb、Csなどが挙げられる。アルカリ金属化合物としては、例えば、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物などが挙げられる。アルカリ金属化合物としては、有機アルカリ金属化合物が好ましい。
【0112】
有機アルカリ金属化合物としては、例えば、ヒドロカルビルリチウム及びリチウムアミド化合物などが挙げられる。
【0113】
ヒドロカルビルリチウムとしては、例えば、炭素数2~20のヒドロカルビル基を有するものが好ましく、例えば、エチルリチウム、n-プロピルリチウム、イソプロピルリチウム、n-ブチルリチウム、イソブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウム、tert-オクチルリチウム、n-デシルリチウム、フェニルリチウム、2-ナフチルリチウム、2-ブチルフェニルリチウム、4-フェニルブチルリチウム、シクロへキシルリチウム、シクロベンチルリチウム、ジイソプロペニルベンゼンとブチルリチウムとの反応生成物などが挙げられる。
【0114】
リチウムアミド化合物としては、例えば、リチウムヘキサメチレンイミド、リチウムピロリジド、リチウムピペリジド、リチウムへプタメチレンイミド、リチウムドデカメチレンイミド、リチウムジメチルアミド、リチウムジエチルアミド、リチウムジブチルアミド、リチウムジプロピルアミド、リチウムジへプチルアミド、リチウムジへキシルアミド、リチウムジオクチルアミド、リチウムジ-2-エチルへキシルアミド、リチウムジデシルアミド、リチウム-N-メチルピベラジド、リチウムエチルプロピルアミド、リチウムエチルブチルアミド、リチウムエチルベンジルアミド、リチウムメチルフェネチルアミドなどが挙げられる。
【0115】
より効率よく共重合体に変性基を導入する観点から、(i)工程で使用するアルカリ金属化合物は、sec-ブチルリチウムが好ましい。
【0116】
(i)工程でアルカリ金属化合物を添加することによって、共重合体のポリマー主鎖の一方の末端以外の部分(ポリマー主鎖の途中など)にアルカリ金属原子が導入され(炭化水素鎖の水素原子がアルカリ金属原子で置換され)、その導入されたアルカリ金属原子が変性剤と反応し、変性基が導入される。
【0117】
(i)工程でアルカリ金属原子が導入される部分としては、例えば、共重合体が芳香族ビニル単位としてのスチレン単位を含む場合には、スチレン単位のポリマー主鎖との結合部分の3級炭素原子が挙げられる。また、例えば、共重合体が芳香族ビニル単位としてのp-メチルスチレン単位を含む場合には、p-メチルスチレン単位のポリマー主鎖との結合部分の3級炭素原子及び4位のメチル基の1級炭素原子に、アルカリ金属原子が導入される。この場合、3級炭素原子よりも、1級炭素原子の方が、立体障害が小さいため、1級炭素原子の方にアルカリ金属原子が優先的に導入されると考えられる。また、共重合体が芳香族ビニル単位を含まない場合には、芳香族ビニル単位を含む場合より活性は劣るものの、アリル位の水素原子が追加で添加したアルカリ金属化合物のアルカリ金属原子と反応し、アルカリ金属原子が導入されると考えられる。
【0118】
(ii)工程で用いる変性剤としては、例えば、炭酸ガス(二酸化炭素)、二硫化炭素、アルデヒドなどが挙げられる。変性基をより容易に導入する観点から、(ii)工程で用いる変性剤は、炭酸ガスであることが好ましい。
【0119】
変性剤として炭酸ガスを用いた場合、変性基は、-C(=O)OM(Mは、アルカリ金属原子である)となり得る。また、例えば、変性剤として二硫化炭素を用いた場合、変性基は、-C(=S)SM(Mは、アルカリ金属原子である)となり得る。また、例えば、変性剤としてアセトアルデヒドなどのアルデヒドを用いた場合、変性基は、-OM(Mは、アルカリ金属原子である)となり得る。
【0120】
また、変性共重合体を製造するための更に別の方法として、共役ジエン化合物、非共役オレフィン化合物、芳香族ビニル化合物等の基礎的単量体のいずれかに予め変性基を付与させたものを単量体として用い、共重合する方法も挙げられる。
【0121】
そして、変性共重合体における変性基は、ポリマー部材と金属部材とをより強固に接着させる観点から、カルボニル部分(-C(=O)-)及びチオカルボニル部分(-C(=S)-)の少なくともいずれかを備えることが好ましい。同様の観点から、変性共重合体における変性基は、エステル結合(-C(=O)O-)及びジチオエステル結合(-C(=S)S-)の少なくともいずれかを備えることがより好ましい。かかる変性基としては、例えば、カルボン酸塩に相当する基、即ち、-C(=O)OR(Rは、任意の基である)、ジチオカルボン酸塩に相当する基、即ち、-C(=S)SR(Rは、任意の基である)が挙げられ、特に、カルボン酸金属塩に相当する基、即ち、-C(=O)OM(Mは、アルカリ金属原子である)、ジチオカルボン酸金属塩に相当する基、即ち、-C(=S)SM(Mは、アルカリ金属原子である)で表される基が挙げられる。かかる変性共重合体は、例えば、上述した化合物(a)~(l)から適切な変性剤を選択する、上述した(i)工程及び(ii)工程を含む方法を採用する、等により、適切に調製することができる。
【0122】
上記変性共重合体における変性基の割合は、0.1質量%以上10.0質量%以下であることが好ましい。変性基の割合が0.1質量%以上であれば、ポリマー部材と金属部材とをより強固に接着させることができる。また、変性基の割合が10.0質量%以下であれば、変性基同士の反応によるゲル化を十分に抑制することができる。同様の観点から、上記変性共重合体における上記変性基の割合は、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.5質量%以上であることが更に好ましく、1.0質量%以上であることが一層好ましく、また、7.0質量%以下であることがより好ましく、5.0質量%以下であることが更に好ましく、3.0質量%以下であることが一層好ましい。
なお、変性共重合体における変性基の割合は、例えば、変性剤の投入量を増やす、上述したアルカリ金属化合物の投入量を増やす、共重合体における芳香族ビニル単位の量を増やす、更には芳香族ビニル単位としてのメチルスチレン系の単位(α-メチルスチレン谷、o-メチルスチレン単位、m-メチルスチレン単位又はp-メチルスチレン単位)の量を増やす、等により、高めることができる。
また、変性共重合体における変性基の割合は、1H-NMRスペクトルから算出することができる。
【0123】
本実施形態の複合体においては、上記接着層が、変性共重合体に加えて、パーオキサイドを更に含有することが好ましい。この場合、オレフィン単位の存在に起因した変性共重合体の軟化が有意に抑制されるため、複合体を高温環境下に置いたとしても、接着層の自己破断や自己剥離が抑えられて、ポリマー部材と金属部材との一層強固な接着を保持することができる。なお、上記パーオキサイドを用いる場合には、あらかじめ変性共重合体にパーオキサイドを配合し、常法に従って混練することが好ましい。また、上記接着層においては、上記のパーオキサイドが、変性共重合体中で架橋構造を形成していてもよい。
【0124】
パーオキサイドとしては、例えば、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0125】
ケトンパーオキサイドとしては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド等が挙げられる。
【0126】
パーオキシケタールとしては、例えば、1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブタン、n-ブチル4,4-ジ(t-ブチルパーオキシ)バレレート、エチル3,3-ジ(t-ブチルパーオキシ)ブチレート、1,1-ジ(t-アミルパーオキシ)シクロヘキサン等が挙げられる。
【0127】
ジアルキルパーオキサイドとしては、例えば、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,3-ジ(2-t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-t-ブチルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、ジ-t-アミルパーオキサイド等が挙げられる。
【0128】
ハイドロパーオキサイドとしては、例えば、1,1,3,3-テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド、t-アミルハイドロパーオキサイド等が挙げられる。
【0129】
ジアシルパーオキサイドとしては、例えば、ジイソノナノイルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等が挙げられる。
【0130】
パーオキシエステルとしては、例えば、3-ヒドロキシ-1,1-ジメチルブチルパーオキシネオデカノエート、α-クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオヘプタノエート、t-ブチルパーオキシピバレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソノナノエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート、t-アミルパーオキシネオデカノエート、t-アミルパーオキシピバレート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシノルマルオクトエート、t-アミルパーオキシアセテート、t-アミルパーオキシイソノナノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。
【0131】
パーオキシジカーボネートとしては、例えば、ジ(2-エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(セカンダリーブチル)パーオキシジカーボネート等が挙げられる。
【0132】
上述したものの中でも、パーオキサイドとしては、ジアルキルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドが好ましく、とりわけ、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキサンがより好ましい。
【0133】
上記パーオキサイドは、1時間半減期温度が、変性共重合体の融点よりも高いことが好ましい。この場合、あらかじめ変性共重合体と混練する際に、パーオキサイドが早まって反応するのを効果的に抑制することができる。なお、かかる1時間半減期温度を有するパーオキサイドは、使用する変性共重合体の融点を考慮して、上述したものから適宜選択することができる。
【0134】
上記パーオキサイドは、1時間半減期温度が110℃以上であることが好ましい。この場合、あらかじめ変性共重合体と混練する際に、パーオキサイドが早まって反応するのを効果的に抑制することができる。同様の観点から、パーオキサイドの1時間半減期温度は、120℃以上であることがより好ましく、125℃以上であることが更に好ましい。なお、かかる1時間半減期温度を有するパーオキサイドは、上述したものから適宜選択することができる。
【0135】
上記接着層におけるパーオキサイドの含有量は、変性共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましい。この場合、パーオキサイドを配合することの効果を十分に得ることができる。同様の観点から、変性共重合体100質量部に対するパーオキサイドの含有量は、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましい。また、変性共重合体100質量部に対するパーオキサイドの含有量は、特に限定されず、5質量部以下であることが好ましい。
【0136】
<ポリマー-金属複合体の製造>
本実施形態の複合体の製造方法は、特に限定されず、金属部材と、接着層と、ポリマー部材とがこの順で接触するように配置することにより、ポリマー-金属複合体を製造することができる。また、ポリマー部材がゴム成分を含む場合には、金属部材と、接着層と、ポリマー部材(未加硫)とがこの順で接触するように配置し、加硫することにより、ポリマー-金属複合体を製造することができる。
【0137】
加硫を行う場合、加硫温度は、120~200℃、特には130~170℃とすることができ、加硫時間は、3分~6時間とすることができる。但し、上述したパーオキサイドを用いる場合、上記加硫温度は、当該パーオキサイドの1時間半減期温度と同じか又はそれ以上であることが好ましい。より具体的に、上記加硫温度は、140℃以上、145℃以上、又は150℃以上であることが好ましい。この場合、加硫時にパーオキサイドによる架橋作用(ひいては、軟化抑制作用)を効果的に発現させることができる。
【0138】
また、加硫を行うとともに、上述したパーオキサイドを用いる場合には、あらかじめ、変性共重合体にパーオキサイドを配合し、常法に従って混練してもよい。その際、混練温度は、変性共重合体の融点と同じか又はそれ以上であることが好ましく、また、パーオキサイドの1時間半減期温度よりも低いことが好ましい。この場合、混練をより容易にするとともに、加硫前にパーオキサイドが早まって反応するのを効果的に抑制できる。また、混練時間は、1~10分とすることができる。
【0139】
混練の際、上記変性共重合体へのパーオキサイドの配合量は、変性共重合体100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましい。この場合、パーオキサイドを配合することの効果を十分に得ることができる。同様の観点から、変性共重合体100質量部に対するパーオキサイドの配合量は、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることが更に好ましい。また、変性共重合体100質量部に対するパーオキサイドの配合量は、特に限定されず、5質量部以下であることが好ましい。
【0140】
更に、上記の製造方法においては、ポリマー部材を接着層に接触させる前に、金属部材及び接着層を加熱して溶着させてもよい。その際、溶着時の温度は、例えば100~160℃とすることができる。
【0141】
(タイヤ)
本発明の一実施形態のタイヤは、上述したポリマー-金属複合体であって、ポリマー部材がゴム成分を含む当該ポリマー-金属複合体を備えることを特徴とする。かかるタイヤは、ポリマー部材(ゴム部材)と金属部材とが強固に接着した上記ポリマー-金属複合体(ゴム-金属複合体)を用いているため、強度が高い。
一実施形態のタイヤにおいては、上述したポリマー-金属複合体を、カーカス、ベルト、ビードコア等に対して好ましく適用することができる。
【0142】
(ポリマー物品)
本発明の一実施形態のポリマー物品は、上述したポリマー-金属複合体を備えることを特徴とする。かかるポリマー物品は、ポリマー部材と金属部材とが強固に接着した上記ポリマー-金属複合体を用いているため、強度が高い。
ゴム物品(ポリマー部材がゴム成分を含むポリマー-金属複合体を備えるポリマー物品)としては、特に限定されず、例えば、タイヤ以外に、コンベヤベルト、ホース、ゴムクローラ、免震装置、防振装置、被覆電線等が挙げられる。
樹脂物品(ポリマー部材が樹脂成分を含むポリマー-金属複合体を備えるポリマー物品)としては、特に限定されず、例えば、樹脂被覆電線等が挙げられる。
【実施例】
【0143】
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例になんら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更可能である。
【0144】
(変性共重合体A1の調製)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのスチレン16g及びトルエン364gを加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、モノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体(1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2)0.025mmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C6F5)4]0.025mmol及びトリイソブチルアルミニウム0.75mmolを仕込み、トルエン15mLを加えて触媒溶液とした。その触媒溶液を上記耐圧ステンレス反応器に加え、60℃に加温した。
次いで、その耐圧ステンレス反応器に、非共役オレフィン化合物としてのエチレンを圧力0.6MPaで投入し、75℃で61分間共重合を行った。また、共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエン80gを含むトルエン溶液260gを、4.0~7.0mL/minの速度で連続的に加えた。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLをその耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。そして、大量のメタノールを用いた分離、及び50℃での真空乾燥を行い、共重合体A0(変性基導入前)を得た。
【0145】
1Lガラス瓶に、上記の共重合体20g及びシクロヘキサン380gを加え、80℃の湯浴で2時間撹拌して、共重合体をシクロヘキサンに溶解させた。次いで、そのガラス瓶に、sec-ブチルリチウム3.4mmolを含むヘキサン溶液とテトラメチルエチレンジアミン3.4mmolとを加え、80℃で1時間反応させた。反応後、ガラス瓶を湯浴から取り出し、反応後の溶液に対し、炭酸ガス(CO2)を、バブリングにより1分間投入した。その後、室温で一晩静置し、変性反応を完了させた。そして、大量のメタノールを用いた分離、及び50℃での真空乾燥を行い、最終的に、変性基(-C(=O)OLi)を有する(特に、スチレン単位のポリマー主鎖との結合部分の3級炭素原子に主として有する)共重合体A1を得た。
【0146】
(変性共重合体B1の調製)
十分に乾燥した2000mL耐圧ステンレス反応器に、芳香族ビニル化合物としてのp-メチルスチレン7g及びトルエン373gを加えた。
窒素雰囲気下のグローブボックス中で、ガラス製容器に、モノ(ビス(1,3-tert-ブチルジメチルシリル)インデニル)ビス(ビス(ジメチルシリル)アミド)ガドリニウム錯体(1,3-[(t-Bu)Me2Si]2C9H5Gd[N(SiHMe2)2]2)0.025mmol、トリチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[Ph3CB(C6F5)4]0.025mmol及びトリイソブチルアルミニウム0.75mmolを仕込み、トルエン15mLを加えて触媒溶液とした。その触媒溶液を上記耐圧ステンレス反応器に加え、60℃に加温した。
次いで、その耐圧ステンレス反応器に、非共役オレフィン化合物としてのエチレンを圧力0.6MPaで投入し、75℃で117分間共重合を行った。また、共役ジエン化合物としての1,3-ブタジエン80gを含むトルエン溶液260gを、2.0~4.0mL/minの速度で連続的に加えた。
次いで、2,2’-メチレン-ビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)(NS-5)5質量%のイソプロパノール溶液1mLをその耐圧ステンレス反応器に加えて反応を停止させた。そして、大量のメタノールを用いた分離、及び50℃での真空乾燥を行い、共重合体B0(変性基導入前)を得た。
【0147】
1Lガラス瓶に、上記の共重合体20g及びシクロヘキサン380gを加え、80℃の湯浴で2時間撹拌して、共重合体をシクロヘキサンに溶解させた。次いで、そのガラス瓶に、sec-ブチルリチウム3.4mmolを含むヘキサン溶液とテトラメチルエチレンジアミン3.4mmolとを加え、80℃で1時間反応させた。反応後、ガラス瓶を湯浴から取り出し、反応後の溶液に対し、炭酸ガス(CO2)を、バブリングにより1分間投入した。その後、室温で一晩静置し、変性反応を完了させた。そして、大量のメタノールを用いた分離、及び50℃での真空乾燥を行い、最終的に、変性基(-C(=O)OLi)を有する(特に、p-メチルスチレン単位の4位のメチル部分に主として有する)共重合体B1を得た。
【0148】
上記共重合体について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー[GPC:東ソー社製HLC-8220GPC/HT、カラム:東ソー社製GMHHR-H(S)HT×2本、検出器:示差屈折率計(RI)]で単分散ポリスチレンを基準として、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、分子量分布(Mw/Mn)を求めた。なお、測定温度は140℃である。結果を表1に示す。
【0149】
また、示差走査熱量計(DSC、ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン社製、「DSCQ2000」)を用い、上記共重合体を、-150℃~150℃まで、10℃/minで昇温し、その時の0℃~100℃の吸熱ピークエネルギー(ΔH1)及び100℃~150℃の吸熱ピークエネルギー(ΔH2)を測定した。そして、100%結晶成分のポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)の値を用い、当該ポリエチレンの結晶融解エネルギー(ΔH0)に対する、共重合体の吸熱ピークエネルギーの比率((ΔH1/ΔH0)×100、(ΔH2/ΔH0)×100)から、共重合体の0℃~100℃の結晶化度及び100℃~150℃の結晶化度を算出した。結果を表1に示す。なお、上記結晶化度は、0~150℃の範囲における結晶化度であり、例えば、0~100℃の結晶化度と100℃~150℃の結晶化度に分けて記載されている場合には、それらを合算した値が0~150℃の結晶化度となる。
【0150】
また、上記共重合体中の共役ジエン単位(1,3-ブタジエン単位)、非共役オレフィン(エチレン単位)、及び芳香族ビニル単位(スチレン単位、p-メチルスチレン単位)の割合(mol%)を、1H-NMRスペクトル(100℃、d-テトラクロロエタン標準:6ppm)の各ピークの積分比より求めた。結果を表1に示す。
【0151】
また、上記共重合体における変性基の割合を、1H-NMRスペクトルから算出した。結果を表1に示す。
【0152】
また、上記共重合体について、13C-NMRスペクトルを測定した。得られた13C-NMRスペクトルチャートにおいて、10~24ppmにピークが観測されなかった。このことから、合成した共重合体はいずれも、主鎖が非環状構造のみからなることを確認した。
【0153】
【0154】
(ポリマー部材の作製)
表2に示す配合処方に従い、バンバリーミキサーを用いて混練し、ポリマー組成物(ゴム組成物)を調製した。得られたゴム組成物を150mm×150mm×厚み4mmに成型して、ポリマー部材(ゴム部材)(未加硫)を作製した。
【0155】
【0156】
*1 老化防止剤A:N-フェニル-N-イソプロピル-p-フェニレンジアミン
*2 加硫促進剤A:N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド
*3 加硫促進剤B:ジフェニルグアニジン
【0157】
(ポリマー-金属複合体の作製)
各実施例において、100mm×25mm×厚み1mmに加工した金属部材(黄銅製)の直上に、表1に示すいずれかの共重合体(変性共重合体A1又は変性共重合体B1)を厚みが0.3mmとなるようにして配置し、金属部材-共重合体(接着層)の積層体を得た。得られた積層体を、厚み1.8mmの2枚の平板モールドで挟持し、130℃、10分の条件で溶着させ、その後10分冷却した。
次いで、溶着した積層体を、室温下で、十分に大きな厚み3mmの平板モールド上に、金属部材がモールド側となるようにして間隔をあけて複数配置した。次いで、上述のポリマー部材(未加硫)を、上記複数の積層体を覆うように且つ共重合体に接するように配置した。そして、もう一つの平板モールドを用いてプレスしながら、160℃で20分間加硫を行い、その後10分冷却した。このようにして、ポリマー部材と金属部材とが接着層(変性共重合体A1又は変性共重合体B1)を介して接着されたポリマー-金属複合体を作製した。
【0158】
(接着性の評価)
上述のようにして作製したポリマー-金属複合体について、日本工業規格JIS K 6854-2に準拠して、接着力(N/25mm幅)を測定した。その結果、接着層として共重合体A1を用いたポリマー-金属複合体では30N/25mm、接着層として共重合体B1を用いたポリマー-金属複合体では90N/25mmであった。
この結果より、変性共重合体A1及び変性共重合体B1のような、変性基を有する所定の共重合体を用いることで、ポリマー部材と金属部材との接着性が発現することが分かる。これに対し、変性基が導入されていない共重合体を用いた場合には、ポリマー部材と金属部材との間で界面剥離が生じ、所望の接着性が発現しないものと考えられる。
【0159】
ここで、変性共重合体A1においては、少なくともスチレン基に変性基が導入されており、一方、変性共重合体B1においては、少なくともp-メチルスチレン基に変性基が導入されている。そして、上記結果の通り、変性共重合体A1よりも変性共重合体B1の方が、高い接着性を発現することが示された。これは、p-メチルスチレンの変性基導入効率が、スチレンのそれに比べて高いためであると推察される。
【0160】
なお、上記実施例では、平板状の金属部材と平板状のポリマー部材とを接着させたが、本発明はこれに限定されず、例えば、スチールコード等のコード状の金属部材と当該金属部材を被覆する被覆ゴムとの接着などに適用することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0161】
本発明によれば、ポリマー部材と金属部材とが強固に接着したポリマー-金属複合体を提供することができる。
また、本発明によれば、かかるポリマー-金属複合体を用いた、強度の高いタイヤ及びポリマー物品を提供することができる。