(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ユニバーサル抗原提示細胞およびその使用
(51)【国際特許分類】
C12N 5/0783 20100101AFI20241121BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241121BHJP
C07K 14/55 20060101ALI20241121BHJP
C12N 15/12 20060101ALN20241121BHJP
C12N 15/62 20060101ALN20241121BHJP
C12N 15/867 20060101ALN20241121BHJP
C12N 15/24 20060101ALN20241121BHJP
【FI】
C12N5/0783 ZNA
C12N5/10
C07K14/55
C12N15/12
C12N15/62 Z
C12N15/867 Z
C12N15/24
(21)【出願番号】P 2020544206
(86)(22)【出願日】2019-02-21
(86)【国際出願番号】 US2019018989
(87)【国際公開番号】W WO2019165097
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2022-02-18
(32)【優先日】2018-02-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】アン、ソニー、オー.ティー.
(72)【発明者】
【氏名】リウ、エンリー
(72)【発明者】
【氏名】レズヴァニ、ケイティ
(72)【発明者】
【氏名】シュポール、エリザベス、ジェー.
【審査官】市島 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特表2017-532353(JP,A)
【文献】特表2015-519890(JP,A)
【文献】国際公開第2018/013797(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 5/00
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
NK細胞を拡大するための方法であって、レトロウイルス導入により安定に形質転換され、細胞表面に(1)CD48および/またはCS1(CD319)、(2)膜結合型インターロイキン-21(mbIL-21)、および(3)41BBリガンド(41BBL)を発現するように操作された有効量のK562細胞の存在下で、
NK細胞を細胞間相互作用培養し、増殖させることを含む、方法。
【請求項2】
前記
NK細胞と前記K562細胞とが、3:1~1:3の比で培養される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記拡大が、IL-2の存在下におけるものである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記IL-2が、10~500U/mLの濃度で存在する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記K562細胞が、少なくとも2度加えられる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記
NK細胞が、臍帯血(CB)、末梢血(PB)、
または幹細
胞に由来する、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記CBが、2単位以上の個々の臍帯血単位からプールされる、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記NK細胞が、CB単核細胞(CBMC)である、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
NK細胞がさらに、CD56
+NK細胞と定義される、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記K562細胞が放射線照射されている、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記レトロウイルス導入が、pSFG-CS1-EGF
Pを含むレトロウイルスベクターによってなされる、請求項1に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、2018年2月21日出願の米国特許仮出願第62/633,587号の利益を主張し、その全体が参照により本明細書中に援用される。
【0002】
KB(Microsoft Windowsにおいて測定)であり、2019年2月21日に作成された「UTFCP1355WO_ST25.txt」という名称のファイルに含められる配列表は、電子提出により本明細書とともに出願され、参照により本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0003】
本発明は、概して医学および免疫学の分野に関する。より詳細には、本発明は、抗原提示細胞およびその使用、例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞の拡大に関する。
【0004】
ナチュラルキラー(NK)細胞は、T細胞とは対照的に、活性化するために事前に抗原に曝露する必要がないことから、腫瘍に対する免疫監視において非常に有効である。事前の活性化は必要ないが、意図的でない細胞傷害性および自己免疫を未然に防ぐために、NK細胞のとてつもない殺傷力には、厳しいコントロールが必要である。臨床的に十分な量かつ最適に機能するNK細胞を作製することが、もう1つの障害になっている。したがって、NK細胞媒介性の癌免疫療法を向上させるヘルパー細胞をデザインするために、「抵抗性」の標的細胞と「感受性」の標的細胞とを区別するNK細胞の働きを司る分子機構に注目することが必要とされる。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本開示のある特定の実施形態は、細胞療法および免疫療法を目的とした臨床グレードのNK細胞の製造、拡大、品質管理および機能の特徴付けに関する方法および組成物を提供する。
【0006】
第1の実施形態では、(1)CD48および/またはCS1(CD319)、(2)膜結合型インターロイキン-21(mbIL-21)、ならびに(3)41BBリガンド(41BBL)を発現するように操作されたユニバーサル抗原提示細胞(UAPC)が提供される。いくつかの態様において、UAPCは、CD48を発現する。他の態様において、UAPCは、CS1を発現する。特定の態様において、UAPCは、CD48およびCS1を発現する。
【0007】
いくつかの態様において、UAPCは、内在性のHLAクラスI、IIまたはCD1d分子を本質的に発現しない。ある特定の態様において、UAPCは、ICAM-1(CD54)およびLFA-3(CD58)を発現する。
【0008】
ある特定の態様において、UAPCはさらに、白血病細胞由来のaAPCと定義される。いくつかの態様において、白血病細胞由来のUAPCはさらに、K562細胞と定義される。
【0009】
いくつかの態様において、操作はさらに、レトロウイルス導入と定義される。いくつかの態様において、そのレトロウイルス導入はさらに、配列番号1および/または配列番号2のウイルス構築物の導入と定義される。ある特定の態様において、UAPCは、照射される。
【0010】
さらなる実施形態では、免疫細胞を拡大するための方法が提供され、その方法は、その免疫細胞を、有効量の上記実施形態のUAPC(例えば、(1)CD48および/またはCS1(CD319)、(2)膜結合型インターロイキン-21(mbIL-21)、ならびに(3)41BBリガンド(41BBL)を発現するように操作されたユニバーサル抗原提示細胞(UAPC))の存在下において培養する工程を含む。いくつかの態様において、免疫細胞とUAPCとは、3:1~1:3、例えば、3:1、3:2、1:1、1:2または1:3の比で培養される。特定の態様において、免疫細胞とUAPCとは、1:2の比で培養される。
【0011】
いくつかの態様において、拡大は、IL-2の存在下における拡大である。具体的な態様において、IL-2は、10~500U/mL(例えば、10~25、25~50、50~75、75~10、100~150、150~200、200~250、250~300、300~350、350~400または400~500U/mL)の濃度で存在する。ある特定の態様において、IL-2は、100~300U/mLの濃度で存在する。特定の態様において、IL-2は、200U/mLの濃度で存在する。いくつかの態様において、IL-2は、組換えヒトIL-2である。具体的な態様において、IL-2は、2~3日ごと(例えば、2日ごとまたは3日ごと)に補充される。
【0012】
ある特定の態様において、UAPCは、少なくとも2度加えられる。いくつかの態様において、免疫細胞は、NK細胞またはT細胞である。特定の態様において、免疫細胞は、NK細胞である。
【0013】
特定の態様において、免疫細胞は、臍帯血(CB)、末梢血(PB)、幹細胞または骨髄に由来する。具体的な態様において、幹細胞は、誘導多能性幹細胞である。いくつかの態様において、免疫細胞は、CBから得られる。特定の態様において、CBは、2単位以上の個々の臍帯血単位からプールされる。具体的な態様において、CBは、3、4、5、6、7または8単位の個々の臍帯血単位からプールされる。
【0014】
いくつかの態様において、NK細胞は、CB単核細胞(CBMC)である。ある特定の態様において、NK細胞はさらに、CD56+NK細胞と定義される。
【0015】
ある特定の態様において、上記方法は、無血清培地中で行われる。
【0016】
さらなる態様において、免疫細胞は、キメラ抗原レセプター(CAR)を発現するように操作されている。いくつかの態様において、CARは、CD19、CD123、メソテリン、CD5、CD47、CLL-1、CD33、CD99、U5snRNP200、CD200、CS1、BAFF-R、ROR-1またはBCMAの抗原結合ドメインを含む。いくつかの態様において、CARは、ヒト化CARである。いくつかの態様において、CARは、IL-15を含む。ある特定の態様において、CARは、自殺遺伝子を含む。いくつかの態様において、自殺遺伝子は、CD20、CD52、EGFRv3または誘導性カスパーゼ9である。
【0017】
上記実施形態(例えば、上記免疫細胞を、有効量の上記実施形態のUAPC(例えば、(1)CD48および/またはCS1(CD319)、(2)膜結合型インターロイキン-21(mbIL-21)、ならびに(3)41BBリガンド(41BBL)を発現するように操作されたユニバーサル抗原提示細胞(UAPC))の存在下において培養すること)に従って作製され、拡大された免疫細胞の集団が、さらに本明細書中に提供される。
【0018】
別の実施形態では、上記実施形態の拡大された免疫細胞の集団および薬学的に許容され得るキャリアを含む薬学的組成物が提供される。被験体における疾患または障害の処置において使用するための、有効量の上記実施形態の拡大された免疫細胞を含む組成物が、さらに本明細書中に提供される。
【0019】
さらなる実施形態は、被験体における疾患または障害を処置する方法を提供し、その方法は、治療有効量の、上記実施形態の拡大された免疫細胞をその被験体に投与する工程を含む。
【0020】
いくつかの態様において、上記疾患または障害は、癌、炎症、移植片対宿主病、移植片拒絶、自己免疫障害、免疫不全症、B細胞悪性疾患または感染症である。特定の態様において、癌は、白血病である。いくつかの態様において、白血病は、急性リンパ芽球性白血病(ALL)、慢性リンパ性白血病(CLL)、急性骨髄性白血病(AML)または慢性骨髄性白血病(CML)である。特定の態様において、上記障害は、移植片対宿主病(GVHD)である。いくつかの態様において、上記障害は、多発性硬化症、炎症性腸疾患、関節リウマチ、I型糖尿病、全身性エリテマトーデス、接触過敏症、喘息またはシェーグレン症候群である。いくつかの態様において、被験体は、ヒトである。
【0021】
ある特定の態様において、免疫細胞は、同種異系である。いくつかの態様において、免疫細胞は、自家性である。いくつかの態様において、免疫細胞は、NK細胞またはT細胞である。
【0022】
さらなる態様において、上記方法は、少なくとも1つの第2の治療薬を投与する工程をさらに含む。いくつかの態様において、その少なくとも1つの第2の治療薬は、治療有効量の抗癌剤、免疫調節剤または免疫抑制剤である。ある特定の態様において、その抗癌剤は、化学療法、放射線療法、遺伝子療法、手術、ホルモン療法、抗血管新生療法または免疫療法である。
【0023】
いくつかの態様において、免疫抑制剤は、カルシニューリン阻害剤、mTOR阻害剤、抗体、化学療法剤照射、ケモカイン、インターロイキン、またはケモカインもしくはインターロイキンの阻害剤である。
【0024】
さらなる態様において、免疫細胞および/または少なくとも1つの第2の治療薬は、静脈内に、腹腔内に、気管内に、腫瘍内に、筋肉内に、内視鏡的に、病巣内に、経皮的に、皮下に、領域性に、または直接注射もしくは灌流によって投与される。いくつかの態様において、第2の治療薬は、抗体である。ある特定の態様において、抗体は、モノクローナル抗体、二重特異性抗体または三重特異性抗体である。いくつかの態様において、抗体は、リツキシマブである。
【0025】
本発明の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明から明らかになるだろう。しかしながら、当業者には、本発明の趣旨および範囲を超えない様々な変更および修正がこの詳細な説明から明らかになるので、詳細な説明および具体例は、本発明の好ましい実施形態を示すが、単に例証として与えられることに注意するべきである。
【0026】
以下の図面は、本明細書の一部を成し、本開示のある特定の態様をさらに示すために含められる。本開示は、本明細書中に提示される具体的な実施形態の詳細な説明と組み合わせて、これらの図面の1つ以上を参照することにより、さらに良く理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1A】ヒトナチュラルキラー細胞のレセプターと標的細胞のリガンドとの相互作用のジッパーモデル。ヒトNK細胞は、キラー免疫グロブリンレセプター(KIR)、天然細胞傷害性レセプター(NCR)、NKG2ファミリーのレセプター、ネクチン結合レセプター、SLAMファミリーレセプターなどをはじめとした多くのレセプターを介して標的細胞と相互作用する。NK細胞上のレセプターは、賦活性であるか(KIR2DL4、KIR3DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80、CD94-NKG2C、DAP10、NKG2D、DAP10、CRTAM、DNAM、2B4、NTB-A、CD3ゼータ、CD100、CD160)または阻害性である(KIR2DL1/2/3/5A/5B、KIR3DL1/2/3、CD94-NKG2A、TIGIT、CD96、CEACAM-1、ILT2/LILRB1、KLRG1、LAIR1、CD161、Siglec-3/7/9)。
【
図1B】ヒトナチュラルキラー細胞のレセプターと標的細胞のリガンドとの相互作用のジッパーモデル。ヒトNK細胞は、キラー免疫グロブリンレセプター(KIR)、天然細胞傷害性レセプター(NCR)、NKG2ファミリーのレセプター、ネクチン結合レセプター、SLAMファミリーレセプターなどをはじめとした多くのレセプターを介して標的細胞と相互作用する。NK細胞上のレセプターは、賦活性であるか(KIR2DL4、KIR3DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80、CD94-NKG2C、DAP10、NKG2D、DAP10、CRTAM、DNAM、2B4、NTB-A、CD3ゼータ、CD100、CD160)または阻害性である(KIR2DL1/2/3/5A/5B、KIR3DL1/2/3、CD94-NKG2A、TIGIT、CD96、CEACAM-1、ILT2/LILRB1、KLRG1、LAIR1、CD161、Siglec-3/7/9)。
【
図1C】ヒトナチュラルキラー細胞のレセプターと標的細胞のリガンドとの相互作用のジッパーモデル。ヒトNK細胞は、キラー免疫グロブリンレセプター(KIR)、天然細胞傷害性レセプター(NCR)、NKG2ファミリーのレセプター、ネクチン結合レセプター、SLAMファミリーレセプターなどをはじめとした多くのレセプターを介して標的細胞と相互作用する。NK細胞上のレセプターは、賦活性であるか(KIR2DL4、KIR3DS1、NKp30、NKp44、NKp46、NKp80、CD94-NKG2C、DAP10、NKG2D、DAP10、CRTAM、DNAM、2B4、NTB-A、CD3ゼータ、CD100、CD160)または阻害性である(KIR2DL1/2/3/5A/5B、KIR3DL1/2/3、CD94-NKG2A、TIGIT、CD96、CEACAM-1、ILT2/LILRB1、KLRG1、LAIR1、CD161、Siglec-3/7/9)。
【0028】
【
図2A】IL-2またはAPCを用いたときの、新鮮NK細胞または凍結NK細胞の拡大倍率。
【
図2B】IL-2またはAPCを用いたときの、新鮮NK細胞または凍結NK細胞の拡大倍率。
【
図2C】NK細胞におけるCD3およびCD56の発現についての、0日目、7日目または14日目のフローサイトメトリー。
【
図2D】APCで刺激されたNT-NK細胞またはSG4-NK細胞の細胞数。
【
図2E】クローン9APCまたはUAPCで刺激されたNK細胞の増殖動態。
【0029】
【
図3A】記載のマーカーに対する、親K562細胞のフローサイトメトリー。mb-IL21、41BBL、CD48およびSLAMF7(CS1)の発現は観察されなかった。
【
図3B】クローン46導入後のAPCのフローサイトメトリー解析(mbIL-21、41BBL)。
【
図3C】CD48を発現させるためのuAPC構築物導入後のAPCのフローサイトメトリー解析(nmIL-21、41BBLおよびCD48)。
【
図3D】CS1を発現させるためのuAPC2構築物導入後のAPCのフローサイトメトリー解析(mbIL-21、41BBLおよびCS1)。
【0030】
【
図4A】MMLV-レトロウイルス導入構築物のマップおよびアノテーション。mb-IL21に対するレトロウイルストランスファーベクター。
【
図4B】MMLV-レトロウイルス導入構築物のマップおよびアノテーション。41BBLに対するレトロウイルストランスファーベクター。
【
図4C】MMLV-レトロウイルス導入構築物のマップおよびアノテーション。CD48-Katushkaに対するレトロウイルストランスファーベクター。
【
図4D】MMLV-レトロウイルス導入構築物のマップおよびアノテーション。CS1-EGFPに対するレトロウイルストランスファーベクター。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本研究において、NK細胞は当初、自然免疫コンパートメントの他の構成要素とは異なる抗腫瘍機能および抗同種異系細胞溶解機能について特徴付けられた。NK細胞の挙動を支配する無数の免疫受容体を、
図1に「シッパー」グラフとして例証する。その一連のシグナル伝達物質は、2大グループ、すなわち、賦活性と阻害性に大まかに分類され得る。構造およびシグナル伝達の様式によって、それらのカテゴリーがさらに免疫受容体の関連ファミリーに分けられる。NK細胞の膜プロテオームは、まだ完全に解明されていないが、NK細胞「ジッパー」の中の機能的冗長性が、相補的経路と拮抗性経路との複雑かつ動的な平衡を保ちつつ、細胞溶解機能を調節するために活用された。
【0032】
したがって、本開示のある特定の実施形態は、細胞療法および免疫療法を目的とした臨床グレードのNK細胞の製造、拡大、品質管理および機能の特徴付けに関する方法および組成物を提供する。時間の制約を満たしつつ、患者に注入するために臨床的に妥当な数のNK細胞を増殖し、形成することは、最善の状況であっても困難である。ある特定の態様において、本開示の方法および組成物は、NK細胞製造の技術的プロセス、達成可能なNK細胞拡大の詳細および動態、ならびに細胞形成の成功を検証するための分子の特徴付けを詳述する。
【0033】
さらなる実施形態では、腫瘍に対してヒトナチュラルキラー(NK)細胞を条件付ける、形成する、および兵器化するためのユニバーサル抗原提示細胞(UAPC)として具体化されるロバストなプラットフォーム技術が、本明細書中に提供される。「UAPC」は、本明細書中では、NK細胞などの免疫細胞の最適化された拡大のためにデザインされた抗原提示細胞のことを指す。本UAPCを、阻害シグナルを克服するため、およびNK細胞の最適かつ特異的な殺滅機能を誘導するために、ユニークな組み合わせの共刺激分子によって作製した。大規模な試験から、UAPCが、NK細胞の機構および改善された腫瘍消失を微調整することが示された。本UAPCは、NK細胞媒介性の癌免疫療法に使用され得る。
【0034】
例示的なAPCは、NK細胞感受性K562抗原提示細胞株(APC)(クローン46と称される)における膜結合型インターロイキン21(mbIL-21)および4-1BBリガンドの強制発現によって作製される。別の実施形態では、K562細胞においてmbIL-21、4-1BBリガンドおよびCD48を強制発現することによって、UAPCを作製した(ユニバーサルAPC(UAPC)と呼ばれる)。別の実施形態では、K562細胞においてmbIL-21、4-1BBリガンドおよびCS1を強制発現することによって、UAPCを作製した(UAPC2と呼ばれる)。それらのUAPCは、mbIL-21、41BBLおよびNK細胞特異的抗原(例えば、SLAMファミリー抗原(表1))を発現するように作製され得る。
【0035】
UAPCプラットフォームは、T細胞(例えば、アルファ-ベータおよびガンマ-デルタT細胞)をはじめとした他の免疫エフェクターを拡大するためにも適用され得る。それらの免疫細胞(例えば、NK細胞およびT細胞)は、末梢血、臍帯血、骨髄または幹細胞(誘導多能性幹細胞を含む)に由来し得る。これらの免疫細胞は、癌免疫療法などの臨床的に妥当な用途に向けて意味ある数に達するための培養に必要な、本UAPCを用いたエキソビボでの拡大および活性化に供され得る。
【0036】
したがって、本開示は、癌免疫療法のためのヒト免疫細胞(例えば、NK細胞)を条件付けるため、調節するため、プライミングするため、および拡大するためにデザインされ、製造された一連のヘルパー細胞株を提供する。
I.定義
【0037】
本明細書中で使用されるとき、特定の構成要素に関して「本質的に含まない」は、その特定の構成要素が、ある組成物中に意図的に処方されていないことおよび/または夾雑物としてしかもしくは微量でしか存在しないことを意味するために本明細書中で使用される。ゆえに、ある組成物の任意の意図されない混入に起因するその特定の構成要素の総量は、0.05%をはるかに下回り、好ましくは、0.01%を下回る。その特定の構成要素の量が標準的な分析方法で検出できない組成物が最も好ましい。
【0038】
本明細書中で使用されるとき、「a」または「an」は、1つ以上を意味し得る。請求項において使用されるとき、単語「a」または「an」は、単語「含む」とともに使用されるとき、1つまたは1つより多いことを意味し得る。
【0039】
請求項における用語「または」の使用は、選択肢のみを指すと明示的に示されない限り、または選択肢が相互排他的でない限り、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢のみのことを指す定義と「および/または」とを支持する。本明細書中で使用されるとき、「別の」は、少なくとも1つの第2のものまたはそれ以上のものを意味し得る。用語「約」、「実質的に」および「およそ」は、一般に、述べられる値プラスまたはマイナス5%を意味する。
【0040】
「免疫障害」、「免疫関連障害」または「免疫介在性障害」とは、免疫応答が疾患の発生または進行において重要な役割を果たす障害のことを指す。免疫介在性障害としては、自己免疫障害、同種移植片拒絶、移植片対宿主病、ならびに炎症性およびアレルギー性の状態が挙げられる。
【0041】
「免疫応答」は、刺激に対する免疫系の細胞(例えば、B細胞またはT細胞または自然免疫細胞)の応答である。1つの実施形態において、その応答は、特定の抗原に特異的である(「抗原特異的応答」)。
【0042】
「自己免疫疾患」とは、免疫系が、正常な宿主の一部である抗原(すなわち、自己抗原)に対して免疫応答(例えば、B細胞応答またはT細胞応答)を引き起こして組織に対して損傷を生じる疾患のことを指す。自己抗原は、宿主細胞に由来し得るか、または通常、粘膜表面にコロニー形成する微生物(共生生物として知られる)などの共生生物に由来し得る。
【0043】
疾患もしくは状態を「処置する」またはそれらの処置とは、その疾患の徴候または症状を軽減する目的で1つ以上の薬物を患者に投与することを含み得るプロトコルの実行のことを指す。望ましい処置の効果としては、疾患の進行速度を低下させること、疾患状態を軽減することまたは緩和すること、および緩解または予後の改善が挙げられる。軽減は、疾患または状態の徴候または症状が現れる前、ならびにそれらが現れた後に生じ得る。したがって、「処置する」または「処置」は、疾患もしくは望ましくない状態を「予防する」またはそれらの「予防」を含み得る。さらに、「処置する」または「処置」は、徴候または症状の完全な軽減を必要とせず、治癒を必要とせず、具体的には、患者に対して限界効果だけをもたらすプロトコルを含む。
【0044】
用語「治療効果」または「治療的に有効な」は、本願全体で使用されるとき、この状態の医学的処置に関して被験体の健康を増進するまたは向上させるもののことを指す。これには、疾患の徴候または症状の頻度または重症度の低下が含まれるが、これらに限定されない。例えば、癌の処置は、例えば、腫瘍サイズの減少、腫瘍の侵襲性の低下、癌の成長速度の低下、または転移の予防を含み得る。癌の処置とは、癌を有する被験体の生存時間の延長のことも指し得る。
【0045】
「被験体」および「患者」とは、ヒトまたは非ヒト(例えば、霊長類、哺乳動物および脊椎動物)のことを指す。特定の実施形態において、被験体は、ヒトである。
【0046】
句「薬学的または薬理学的に許容され得る」とは、必要に応じてヒトなどの動物に投与されたとき、副作用、アレルギー反応または他の有害反応を引き起こさない分子実体および組成物のことを指す。抗体またはさらなる活性成分を含む薬学的組成物の調製は、本開示に照らして、当業者に公知である。さらに、動物(例えば、ヒト)への投与の場合、調製物は、FDA Office of Biological Standardsが要求するような無菌性、発熱性、全般的な安全性および純度の基準を満たすべきであることが理解される。
【0047】
本明細書中で使用されるとき、「薬学的に許容され得るキャリア」には、当業者に公知であり得るように、任意のおよびあらゆる水性溶媒(例えば、水、アルコール溶液/水溶液、食塩水溶液、非経口ビヒクル、例えば、塩化ナトリウム、リンガーデキストロースなど)、非水溶媒(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、植物油および注射可能な有機エステル、例えば、オレイン酸エチル)、分散媒、コーティング、界面活性剤、酸化防止剤、保存剤(例えば、抗菌剤または抗真菌剤、酸化防止剤、キレート剤および不活性ガス)、等張剤、吸収遅延剤、塩、薬物、薬物安定剤、ゲル、結合剤、賦形剤、崩壊剤、潤滑剤、甘味剤、香味剤、色素、補液および栄養補給剤、それらのそのような材料および組み合わせが含まれる。薬学的組成物中の様々な構成要素のpHおよび正確な濃度は、周知のパラメータに従って調整される。
【0048】
用語「ハプロタイピングまたは組織タイピング」とは、例えば、特定の被験体のリンパ球上にどのHLA遺伝子座(または複数の遺伝子座)が発現されているかを明らかにすることによる、被験体のハプロタイプまたは組織タイプを特定するために用いられる方法のことを指す。HLA遺伝子は、6番染色体の短腕上の領域である主要組織適合遺伝子複合体(MHC)に配置されており、細胞間相互作用、免疫応答、臓器移植、癌の発生、および疾患に対する感受性に関わる。移植において重要な遺伝子座は6つあり、HLA-A、HLA-B、HLA-CおよびHLA-DR、HLA-DPおよびHLA-DQと命名されている。各遺伝子座に、いくつかの異なる対立遺伝子のいずれかが存在し得る。
【0049】
ハプロタイピングのために広く用いられている方法は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を用いて、MHC抗原をコードする遺伝子の公知のセグメントと被験体のDNAを比較する。それらの遺伝子のこれらの領域の多様性が、被験体の組織タイプまたはハプロタイプを決定する。血清学的方法も、細胞表面上の血清学的に定義された抗原を検出するために用いられる。HLA-A、-Bおよび-C決定基は、公知の血清学的手法によって計測され得る。簡潔には、被験体由来の(新鮮末梢血から単離された)リンパ球を、公知のすべてのHLA抗原を認識する抗血清とともにインキュベートする。それらの細胞を、様々な種類の抗血清が入った微細ウェルを備えるトレーに広げる。それらの細胞を30分間インキュベートした後、さらに60分間、インキュベーションを補完する。リンパ球が、抗血清中の抗体によって認識される抗原を表面上に有する場合、そのリンパ球は溶解される。色素を加えることにより、細胞膜の透過性の変化および細胞死を示すことができる。溶解によって破壊された細胞のパターンは、組織学的不適合性の程度を示す。例えば、HLA-A3について試験されているある人物由来のリンパ球が、HLA-A3に対する抗血清を含むウェルにおいて破壊された場合、その検査は、この抗原群について陽性である。
【0050】
用語「抗原提示細胞(APC)」とは、免疫系の特定のエフェクター細胞によって認識可能なペプチド-MHC複合体の形態で1つ以上の抗原を提示することができ、それによって、提示される抗原に対する有効な細胞免疫応答を誘導することができる、細胞のクラスのことを指す。用語「APC」は、インタクトなホールセル(例えば、マクロファージ、B細胞、内皮細胞、活性化T細胞および樹状細胞)、または抗原を提示することができる天然に存在するかもしくは合成の分子(例えば、y2-ミクログロブリンと複合体化した精製MHCクラスI分子)を包含する。
II.ユニバーサル抗原提示細胞
【0051】
本開示のいくつかの実施形態は、ユニバーサル抗原提示細胞(UAPC)の作製および使用に関する。UAPCは、免疫細胞(例えば、NK細胞およびT細胞)の拡大のために使用され得る。UAPCは、膜結合型IL-21(mbIL-21)および41BBL(CD137リガンド)を発現するように操作され得る。
【0052】
UAPCは、CD137リガンドおよび/または膜結合型サイトカインを発現するように操作され得る。膜結合型サイトカインは、mIL-21またはmIL-15であり得る。特定の実施形態において、UAPCは、CD137リガンドおよびmIL-21を発現するように操作される。APCは、白血病細胞などの癌細胞に由来し得る。APCは、内在性のHLAクラスI、IIまたはCD1d分子のいずれも発現しないことがある。APCは、ICAM-1(CD54)およびLFA-3(CD58)を発現し得る。特に、APCは、K562細胞(例えば、CD137リガンドおよびmIL-21を発現するように操作されたK562細胞)であり得る。APCは、照射され得る。上記操作は、当該分野で公知の任意の方法、例えば、レトロウイルス導入による操作であり得る。
【0053】
サイトカインは、免疫細胞の全クラス(NK細胞を含む)に対して非常に強力な調節を発揮し、細胞の運命、活性および細胞応答の有効性に影響する。NK細胞を活性化させるサイトカイン刺激の力は、それらの「天然の」エフェクター機能が環境的介入に高度に感受性であること、およびプライミングが、インビボにおいてNK細胞の挙動を制御し得ることを裏付ける。
【0054】
臨床的に妥当な量のNK細胞を取得するという問題に対処するために、本方法は、本UAPCプラットフォーム技術におけるNK細胞の拡大のための駆動物質としてインターロイキン(IL-21)を使用し得る。ヒトでは、IL-10およびIL-21によるNK細胞刺激は、STAT3依存的様式でNKG2D発現を誘導する。サイトカインレセプターが、多くの免疫細胞において類似の細胞シグナル伝達構成要素を共有するが、NK細胞特異的なシグナル伝達は、増殖に対して、IL-21レセプター-STAT3の関係に依存する。
【0055】
サイトカインのシグナル伝達は、リンパ球の生存および増殖の維持にとって重要である。インビボでは、IL-2投与が、NK細胞を拡大するためにFDAに認められた唯一の方法である。別の強力なNK細胞活性化物質であるIL-15は、見込みのあるIL-2代替物として第I相臨床試験を行っている最中であるが、全身投与後に有意な毒性を有し得る。有意な毒性のほかに、これらのサイトカインは、NK細胞の残存性を制限しつつ、T細胞の増殖も誘導する。シグナル伝達に対して同じレセプターを共有するにもかかわらず、IL-2、IL-4、IL-7、IL-9、IL-15およびIL-21レセプターは、多様な細胞に対して異なるかつ特異的な影響を及ぼす。
A.膜結合型IL-21
【0056】
ある特定の実施形態において、NK細胞を特異的に作動させる場合、本UAPCを作製するためにIL-21を使用してもよい。IL-21レセプター(IL21R)は、共通サイトカインレセプターガンマ鎖(ガンマ(c)との二量体化によってシグナルを伝達することができるIL-2レセプターベータ鎖との密接な関係にあり、活性化ヒトNK細胞(誘発される準備の整った細胞)においてアップレギュレートされる。I型サイトカインであるIL-21は、T細胞、B細胞およびNK細胞の機能を調節し得るが、本研究は、ヒトNK細胞だけが、IL21レセプターシグナル伝達経路の活性化を介して有意な拡大を起こすことを見出した(すなわち、21日間にわたって1000倍)。逆に、IL21は、CD8+T細胞の縮小において重要な役割を果たす。
【0057】
IL21Rシグナル伝達は、主に、高度に強力な細胞増殖活性化物質であるSTAT3によって促進される。IL21R-STAT3の関係は、抗ホスホチロシン抗体を用いた免疫沈降およびウエスタンブロッティングによって検証される、GASおよびシス誘導性エレメントへのIL-21誘導性STAT3 DNA結合によって駆動される。IL21によって媒介される増殖の分子基盤は、IL-21によって誘導されるSTAT1およびSTAT33のリン酸化を媒介する、IL21R上のチロシン510(Y510)であると特異的に突き止められ得る。この機構は、Stat1/Stat3ダブルノックアウトマウスではIL-21応答が弱まることによってはっきりと示される。
【0058】
IL21Rシグナル伝達は、NK細胞傷害性にとって重要である。ヒトIL21R欠損は、51Crで標識されたK562標的細胞の細胞溶解の障害に関連するが、抗体依存性細胞傷害は、影響されない。一遺伝子性の非胚性致死欠損(IL21Rの機能喪失変異)は、生得的なNK細胞溶解反応を明確化する優れた機会を提供するので、その生得的なNK細胞溶解反応のモデリング、増強および形成に有用である。
【0059】
CD56dim細胞集団とCD56bright細胞集団の両方が、似た数の表面IL21Rを有したとしても、IL-21シグナル伝達は、NK細胞のサブセットを選択的に形成する。STAT1およびSTAT3リン酸化のIL-21誘導は、CD56dimNK細胞に対してCD56brightNK細胞においてより高い。対照的に、IL-21は、T細胞拡大も駆動するIL-2活性化経路であるSTAT5活性化には影響しない。IL-21シグナル伝達には、STAT3活性化に加えて、MAPKおよびPI3K経路が関与し、NK細胞において自然免疫応答性遺伝子(IFN-ガンマ、T-bet、IL-12Rベータ2およびIL-18Rを含む)の発現を誘導して、腫瘍細胞を殺滅するようにNK細胞をプライミングする。
【0060】
IL-21を効率的に利用するために、mbIL-21の発現(
図4A)を用いて、NK細胞上のIL21Rとのトランス相互作用を集中させ、局在化させてもよい。mbIL21は、膜に近接していることから、それが必要とされる場合にすぐに利用できるので、大量かつ高濃度のIL-21を外から供給しなくても、最適な細胞増殖を維持できる。照射されたK562-mb15-41BBLとの共培養により、末梢血からCD56+CD3-NK細胞の、中央値21.6倍の拡大が誘導された。この拡大は、IL-2、IL-12、IL-15、IL-21を単独でまたは組み合わせて含む共有γcファミリー由来の単なる可溶性のサイトカインによる刺激と比べてより大きい。比較すると、本UAPCは、NK細胞を14~21日間にわたって少なくとも1000倍(3-log)拡大し得る。UAPC上のmbIL21の発現は、外来性の臨床グレードのサイトカインも不必要にし得る。
B.4-1BBL(4-1BBリガンド、CD137リガンド、CD137L、TNFSF9)
【0061】
NK細胞の機能をサイトカインでプライミングするという考えに加えて、NK細胞における活性化分子との直接的な物理的相互作用も、細胞増殖応答を高める。CD137(4-1BB)は、腫瘍壊死レセプター(TNF-R)遺伝子ファミリーのメンバーであり、細胞増殖、分化およびプログラム細胞死(アポトーシス)を媒介する。マウスレセプターが最初に特徴付けられた後、ヒトホモログが特徴付けられ、それは、アミノ酸レベルで60%の同一性を共有し、細胞質/シグナル伝達ドメインが有意に保存されている。CD137は、主に、活性化T細胞および活性化NK細胞において発現され、胸腺細胞、骨髄性細胞および炎症部位の内皮細胞においても検出可能な様々なレベルで発現される。生理学的なCD137シグナル伝達は、1)Bcl-XL活性化によって生存を促進するNF-κB、および2)細胞周期の進行を特異的に駆動するPI3K/ERK1/2経路によって媒介される。
【0062】
活性化NK細胞では、CD137は、サイトカイン誘導性の共刺激分子であり、この共刺激分子は、細胞増殖およびIFN-γ分泌を増加させることによって、NK細胞において抗腫瘍応答を駆動する。CD137L-/-ノックアウトマウスを用いた研究によって、抗腫瘍免疫細胞の発達におけるCD137/CD137Lシグナル伝達の重要性が解明された。CD137-/-ノックアウトマウスは、コントロールマウスと比べて、腫瘍転移頻度が4倍高かった。
【0063】
TNFスーパーファミリーの34kDa糖タンパク質メンバーであるCD137リガンド(CD137L、4-1BBリガンド)は、主に、B細胞、マクロファージおよび樹状細胞を含む活性化抗原提示細胞(APC)上で検出され、活性化T細胞上でも低レベルで一過性に発現される。ヒトCD137Lは、マウス対応物に対してたった36%相同でしかない。作動性CD137抗体の抗腫瘍有効性と一致して、CD137Lの結合は、CTLおよび抗腫瘍活性を誘発すると示されている。
【0064】
したがって、本UAPCは、CD137に対する生理学的なカウンターレセプターである4-1BBリガンドを刺激のために発現するように操作され得る。
C.SLAM/CD48
【0065】
サイトカインによる条件づけおよび4-1BBLによる共刺激のほかに、NK細胞と標的細胞との直接的な物理的相互作用も、細胞応答、すなわち標的細胞の殺滅に影響する。免疫系において広く発現され、決定的役割を果たす、シグナル伝達リンパ球活性化分子(SLAM、以前はCD2スーパーファミリーとしても知られた)ファミリーの相同性の免疫グロブリンレセプターは、細胞間の相互作用に関して特に重要である。
【0066】
したがって、本開示のUAPCは、1つ以上のSLAMファミリー抗原を発現し得る。SLAMファミリーのメンバーとしては、CD2、CD48、CD58(LFA-3)、CD244(2B4)、CD229(Ly9)、CD319(CS1(CD2サブセット1);CRACC(CD2様レセプター活性化細胞傷害性細胞))およびCD352(NTB-A(NK-T-B抗原))が挙げられる。特定の態様において、UAPCは、CD48および/またはCS1を発現する。NK細胞は、SLAMファミリー(SLAMF)の少なくとも3つのメンバーを発現する。それらは、2B4、NK細胞、T細胞およびB細胞抗原(NTB-A)、ならびにCD2様レセプター活性化細胞傷害性細胞(CRACC)(これらは、標的細胞上およびおそらく他のNK細胞上の、それぞれのリガンドであるCD48、NTB-AおよびCRACCを認識する)である。SLAMF1、3、5、6、7、8および9は、同種親和性(自己リガンド)レセプターであるが、SLAMF2およびSLAMF4は、互いに対してカウンターレセプター(ヘテロ親和性)である。公知の同種親和性のアフィニティ(<1μM~200μMの解離定数Kd)が広範囲であること(3桁)は、SLAM糖タンパク質に対するシグナル伝達の機構が重複しているが異なることについての機構の基礎を示唆している。
【0067】
表1:SLAMファミリーメンバーの結合親和性。
【表1】
【0068】
特定の実施形態において、本UAPCは、細胞間相互作用を支えてNK細胞応答を高めるためにCD48を発現するように操作される。CD48は、NK細胞、T細胞、単球および好塩基球の表面上に見られるグリコシルホスファチジルイノシトールアンカー型タンパク質(GPI-AP)であり、これらの細胞における接着経路および活性化経路に関与する。細胞内ドメインを欠いているにもかかわらず、CD48の刺激は、脂質ラフトにおけるシグナル伝達因子の再配列、Lck-キナーゼ活性およびチロシンリン酸化を誘導する。接着共刺激分子として、CD48は、Bリンパ球およびTリンパ球、NK細胞、マスト細胞ならびに好酸球において数多くの作用を誘導する。ヒトNK細胞では、CD48は、NK細胞の重要なアクチベーターである2B426に対するカウンターレセプターである。ヘテロ親和性の相互作用は、MHC-IとCD244の相互作用について競合すると考えられている。ゆえに、2B4/CD48相互作用は、ヒトNK細胞において活性化シグナルを誘導するのに対して、マウスNK細胞では、阻害性シグナルを送る。
【0069】
同じ集団の細胞間の2B4-CD48相互作用、すなわち、NK細胞間の相互作用またはT細胞間の相互作用は、APC(例えば、正常にはCD48を欠くK562骨髄性細胞系列)上にCD48を発現することによって、活性化を強化するが、本UAPCは、NK細胞に対して強力な2B4シグナル伝達経路をトランスでオンにし得る。
D.SLAM/CS1
【0070】
いくつかの実施形態において、本UAPCは、NK細胞の殺傷力のスイッチをオンにする共刺激分子として、SLAMファミリーの別のメンバーであるCS1を発現するように操作される。2B4と相互結合するCD48とは異なり、CS1相互作用は、同種親和性であり、シス相互作用とトランス相互作用とを対比する状況において特徴付けられ得る。正常にはCS1を含まないK562細胞が、CS1を発現するように操作される。
E.核酸の送達
【0071】
mbIL-21、41BBLおよび共刺激抗原は、当該分野で公知の方法のいずれかによって操作され得る。核酸は、通常、ウイルス発現ベクターなどの発現ベクターの形態で投与される。いくつかの態様において、発現ベクターは、レトロウイルス発現ベクター、アデノウイルス発現ベクター、DNAプラスミド発現ベクターまたはAAV発現ベクターである。いくつかの態様において、上記送達は、1つ以上のベクター、その1つ以上の転写物および/またはそれらから転写された1つ以上のタンパク質の送達によるものであり、上記細胞に送達される。
【0072】
ポリヌクレオチド構築物を動物細胞に導入するための方法は公知であり、それらとしては、非限定的な例として、ポリヌクレオチド構築物が細胞のゲノムにインテグレートされる安定な形質転換方法、ポリヌクレオチド構築物が細胞のゲノムにインテグレートされない一過性の形質転換方法、およびウイルス媒介性の方法が挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、例えば、組換えウイルスベクター(例えば、レトロウイルス、アデノウイルス)、リポソームなどによって細胞に導入され得る。例えば、いくつかの態様において、一過性の形質転換方法としては、マイクロインジェクション、エレクトロポレーションまたは粒子銃が挙げられる。いくつかの実施形態において、ポリヌクレオチドは、細胞において発現されることを考慮して、ベクター、より詳細には、プラスミドまたはウイルスに含められ得る。
【0073】
核酸の非ウイルス性送達の方法としては、リポフェクション、ヌクレオフェクション、マイクロインジェクション、微粒子銃、ビロソーム、リポソーム、免疫リポソーム、ポリカチオンまたは脂質:核酸コンジュゲート、裸のDNA、人工ビリオン、およびDNAの作用物質強化型取り込み(agent-enhanced uptake)が挙げられる。リポフェクションは、(例えば、米国特許第5,049,386号、同第4,946,787号;および同第4,897,355号)に記載されており、リポフェクション試薬は、市販されている(例えば、TransfectamTMおよびLipofectinTM)。ポリヌクレオチドの効率的なレセプター認識リポフェクションに適したカチオン性脂質および中性脂質としては、Feignerの脂質、WO91117424;WO91116024が挙げられる。送達は、細胞への送達(例えば、インビトロ投与またはエキソビボ投与)または標的組織への送達(例えば、インビボ投与)であり得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、送達は、核酸を送達するためのRNAウイルスまたはDNAウイルスに基づく系の使用による送達である。ウイルスベクターは、いくつかの態様において、患者に直接投与され得る(インビボ)か、またはウイルスベクターを用いてインビトロもしくはエキソビボで細胞を処置し、次いで、患者に投与され得る。いくつかの実施形態におけるウイルスに基づく系としては、遺伝子導入のためのレトロウイルスベクター、レンチウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターおよび単純ヘルペスウイルスベクターが挙げられる。
III.免疫細胞
【0075】
本開示のいくつかの実施形態は、癌免疫療法用などの免疫細胞(例えば、NK細胞またはT細胞)の単離および拡大に関する。
【0076】
ある特定の実施形態において、免疫細胞は、当該分野で周知の方法によって、ヒト末梢血単核球(PBMC)、未刺激の白血球搬出産物(PBSC)、ヒト胚性幹細胞(hESC)、誘導多能性幹細胞(iPSC)、骨髄または臍帯血から得られる。詳細には、免疫細胞は、臍帯血(CB)、末梢血(PB)、骨髄または幹細胞から単離され得る。特定の実施形態において、免疫細胞は、プールされたCBから単離される。CBは、2、3、4、5、6、7、8、10またはそれ以上の単位からプールされ得る。免疫細胞は、自家性または同種異系であり得る。単離された免疫細胞は、細胞療法を施される被験体とハプロタイプが一致し得る。NK細胞は、特異的な表面マーカー(例えば、ヒトではCD16、CD56およびCD8)によって検出され得る。
【0077】
ある特定の態様において、NK細胞は、NK細胞をエキソビボで拡大するという以前に報告された方法(Spanholtz et al.,2011;Shah et al.,2013)によって単離される。この方法では、CB単核細胞が、フィコール密度勾配遠心分離によって単離される。その細胞培養物は、CD3を発現する任意の細胞が枯渇していることがあり、CD56+/CD3-細胞またはNK細胞のパーセンテージを測定するために特徴付けられ得る。他の方法では、臍CBを用いることにより、CD34+細胞の単離によってNK細胞が得られる。この方法は、CD3、CD14および/またはCD19陽性細胞の枯渇を含み得る。
【0078】
単離された免疫細胞は、本UAPCの存在下において拡大され得る。その拡大は、約2~30日間(例えば、3~20日間、特に12~16日間、例えば、12、13、14、15、16、17、18または19日間、詳細には約14日間)であり得る。免疫細胞とUAPCとは、約3:1~1:3(例えば、2:1、1:1、1:2、詳細には約1:2)の比で存在し得る。拡大培養物は、拡大を促進するサイトカイン(例えば、IL-2)をさらに含み得る。IL-2は、約10~500U/mL(例えば、100~300U/mL、特に約200U/mL)の濃度で存在し得る。IL-2は、拡大培養物に、例えば、2~3日ごとに補充され得る。UAPCは、少なくとも2度(例えば、拡大の約7日後に)、培養物に加えられ得る。
【0079】
免疫細胞は、拡大後、直ちに注入されてもよいし、凍結保存などによって保存されてもよい。ある特定の態様において、それらの細胞は、約1、2、3、4、5日以内に、数日間、数週間または数ヶ月間、エキソビボでバルク集団として増殖され得る。
【0080】
拡大されたNK細胞は、自然免疫細胞と適応免疫細胞の両方を活性化するI型サイトカイン(例えば、インターフェロン-γ、腫瘍壊死因子-αおよび顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF))、ならびに他のサイトカインおよびケモカインを分泌し得る。これらのサイトカインの計測を用いることにより、NK細胞の活性化状態を測定することができる。さらに、NK細胞の活性化を測定するための当該分野で公知の他の方法を、本開示のNK細胞の特徴付けのために用いてもよい。
IV.キメラ抗原レセプター
【0081】
ある特定の実施形態において、本免疫細胞(例えば、T細胞またはNK細胞)は、キメラ抗原レセプター(CAR)を発現するように遺伝的に改変される。いくつかの実施形態において、CARは、a)細胞内シグナル伝達ドメイン、b)膜貫通ドメイン、およびc)抗原結合領域を含む細胞外ドメインを含む。
【0082】
CARは、ヒト白血球抗原(HLA)と無関係な細胞表面腫瘍関連抗原を認識し、1つ以上のシグナル伝達分子を用いて、殺滅、増殖およびサイトカイン産生に向けて、遺伝的に改変されたNK細胞を活性化する。ある特定の実施形態において、本NK細胞は、(i)エレクトロポレーションデバイス(例えば、ヌクレオフェクター)を用いた、非ウイルス性の遺伝子導入、(ii)エンドドメイン(例えば、CD28/CD3-ζ、CD137/CD3-ζまたは他の組み合わせ)を介してシグナル伝達するCAR、(iii)抗原認識ドメインを細胞表面とつなぐ種々の長さの細胞外ドメインを有するCAR、および場合によっては、(iv)CAR+NK細胞を確実かつ数値的に拡大することができるK562に由来する人工抗原提示細胞(aAPC)(Singh et al.,2011)を含む方法によって遺伝的に改変され得る。
【0083】
本開示の実施形態は、細胞内シグナル伝達ドメイン、膜貫通ドメイン、および1つ以上のシグナル伝達モチーフを含む細胞外ドメインを含む、免疫原性を低下させるようにヒト化されたCAR(hCAR)を含む抗原特異的CARポリペプチドをコードする核酸を含む核酸の使用に関する。ある特定の実施形態において、そのCARは、1つ以上の抗原の間で共有される空間を含むエピトープを認識し得る。ある特定の実施形態において、その結合領域は、モノクローナル抗体の相補性決定領域、モノクローナル抗体の可変領域および/またはその抗原結合フラグメントを含み得る。別の実施形態において、その特異性は、レセプターに結合するペプチド(例えば、サイトカイン)に由来する。
【0084】
ヒトCAR核酸は、ヒト患者に対する細胞免疫療法を向上させるために用いられるヒト遺伝子であり得ることが企図される。具体的な実施形態において、本方法は、完全長CARcDNAまたはコード領域を使用する。抗原結合領域または抗原結合ドメインは、特定のヒトモノクローナル抗体(例えば、参照により本明細書中に援用される米国特許第7,109,304号に記載されているもの)に由来する一本鎖可変フラグメント(scFv)のVH鎖およびVL鎖のフラグメントを含み得る。そのフラグメントは、ヒト抗原特異的抗体の任意の数の異なる抗原結合ドメインでもあり得る。より具体的な実施形態において、そのフラグメントは、ヒト細胞における発現のためにヒトコドン使用頻度について最適化された配列によってコードされる抗原特異的scFvである。
【0085】
配置は、多量体、例えば、ダイアボディまたはマルチマーであり得る。マルチマーは、たいてい、軽鎖および重鎖の可変部分が相互に対形成してダイアボディになることによって形成される。その構築物のヒンジ部分には、複数の選択肢があり、それらとしては、完全に削除されること、1番目のシステインが維持されること、セリンではなくプロリンに置換されること、1番目のシステインまで切断されることが挙げられる。Fc部分は、削除され得る。安定であるかつ/または二量体化する任意のタンパク質が、この目的にかない得る。Fcドメインの1つ、例えば、ヒト免疫グロブリン由来のCH2またはCH3ドメインのいずれかが、使用され得る。二量体化を改善するように改変されたヒト免疫グロブリンのヒンジ、CH2およびCH3領域が、使用され得る。他の態様では、単に免疫グロブリンのヒンジ部分またはCD8αの一部が、使用され得る。
【0086】
いくつかの実施形態において、CAR核酸は、他の共刺激レセプター(例えば、膜貫通ドメインおよび改変されたCD28細胞内シグナル伝達ドメイン)をコードする配列を含む。他の共刺激レセプターとしては、CD28、CD27、OX-40(CD134)、DAP10および4-1BB(CD137)のうちの1つ以上が挙げられるが、これらに限定されない。CD3ζによって惹起される1次シグナルに加えて、ヒトCARに挿入されたヒト共刺激レセプターによって提供されるさらなるシグナルは、NK細胞の完全な活性化にとって重要であり、インビボでの残存性の改善および養子免疫療法の治療の成功の改善を助け得る。
【0087】
キメラ抗原レセプターの細胞内シグナル伝達ドメインは、キメラ抗原レセプターが配置された免疫細胞の正常なエフェクター機能のうちの少なくとも1つの活性化に関わる。そのエフェクター機能は、NK細胞などの分化細胞の特殊機能である。具体的な実施形態において、CARにおける細胞内レセプターシグナル伝達ドメインには、T細胞抗原レセプター複合体の細胞内レセプターシグナル伝達ドメイン(例えば、CD3のゼータ鎖、また、FcγRIII共刺激シグナル伝達ドメイン、CD28、CD27、DAP10、CD137、OX40、CD2を単独でまたは例えばCD3ゼータと一続きで)が含まれる。具体的な実施形態において、細胞内ドメイン(細胞質ドメインと称され得る)は、TCRゼータ鎖、CD28、CD27、OX40/CD134、4-1BB/CD137、FcεRIγ、ICOS/CD278、IL-2Rベータ/CD122、IL-2Rアルファ/CD132、DAP10、DAP12およびCD40の1つ以上の一部または全部を含む。内在性のT細胞レセプター複合体の任意の部分が、細胞内ドメインにおいて使用され得る。いわゆる第3世代CARは、例えば、相加効果または相乗効果のために共に融合された、少なくとも2つまたは3つのシグナル伝達ドメインを有するので、1つまたは複数の細胞質ドメインを使用してもよい。
【0088】
CARのある特定の実施形態において、レセプターの抗原特異的部分(抗原結合領域を含む細胞外ドメインと称され得る)は、腫瘍関連抗原または病原体特異的抗原結合ドメインを含む。抗原には、Dectin-1などのパターン認識レセプターによって認識される糖鎖抗原が含まれる。腫瘍関連抗原は、腫瘍細胞の細胞表面上で発現される限り、任意の種類であってよい。腫瘍抗原結合ドメインは、CD19、CD20、癌胎児抗原、アルファフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、上皮性腫瘍抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、ERBB2、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rアルファ、カッパー鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIIIまたはVEGFR2であり得るが、これらに限定されない。CARは、ヒト化scFv(例えば、ヒト化CD19またはCD123)を含み得る。
【0089】
ある特定の実施形態において、CARは、腫瘍関連抗原の量が少ないとき、残存性を改善するために、サイトカインと共発現され得る。例えば、CARは、IL-15と共発現され得る。
【0090】
キメラレセプターをコードするオープンリーディングフレームの配列は、ゲノムDNA起源、cDNA起源から得ることができるか、または合成され得るか(例えば、PCRを介して)、またはそれらの組み合わせであり得る。イントロンがmRNAを安定化することが見出されているので、ゲノムDNAのサイズおよびイントロンの数に応じて、cDNAまたはそれらの組み合わせを使用することが望ましい場合がある。また、mRNAを安定化させるために内在性または外来性の非コード領域を使用することもさらに有益であり得る。
【0091】
キメラ構築物は、裸のDNAとしてまたは好適なベクターの形でNK細胞に導入され得ることが企図される。裸のDNAを使用してエレクトロポレーションによって細胞を安定にトランスフェクトする方法は、当該分野で公知である。例えば、米国特許第6,410,319号を参照のこと。裸のDNAとは、一般に、発現にとって適切な向きでプラスミド発現ベクターに含められる、キメラレセプターをコードするDNAのことを指す。
【0092】
あるいは、ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクターまたはレンチウイルスベクター)を使用することにより、キメラ構築物をNK細胞に導入することができる。本発明の方法に従って使用するのに適したベクターは、NK細胞において非複製である。ウイルスに基づく多数のベクターが知られており、細胞内で維持されるウイルスのコピー数は、その細胞の生存能を維持できるほど十分低く、例えば、HIV、SV40、EBV、HSVまたはBPVに基づくベクターである。
【0093】
CARは、自殺遺伝子(例えば、CD20、CD52、EGFRv3または誘導性カスパーゼ9)を発現し得る。
【0094】
CARは、腫瘍抗原結合ドメインを含み得る。その腫瘍抗原結合ドメインは、CD19、CD20、癌胎児抗原、アルファフェトプロテイン、CA-125、MUC-1、上皮性腫瘍抗原、黒色腫関連抗原、変異p53、変異ras、HER2/Neu、ERBB2、葉酸結合タンパク質、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp120、HIV-1エンベロープ糖タンパク質gp41、GD2、CD123、CD23、CD30、CD56、c-Met、メソテリン、GD3、HERV-K、IL-11Rアルファ、カッパー鎖、ラムダ鎖、CSPG4、ERBB2、EGFRvIIIまたはVEGFR2であり得るが、これらに限定されない。CARは、ヒト化scFv、例えば、ヒト化CD19、CD123、メソテリン、CD5、CD47、CLL-1、CD33、CD99、U5snRNP200、CD200、CS1、BAFF-R、ROR-1またはBCMAを含み得る。
V.使用方法
【0095】
本開示の実施形態は、免疫応答を誘発する免疫細胞集団を移入することによって内科疾患または障害を処置または予防するために本明細書中に提供される免疫細胞、例えば、NKまたはT細胞(例えば、本UAPCによって拡大されたもの)を使用するための方法に関する。その方法は、被験体に治療有効量の拡大された免疫細胞を投与することによって、その被験体における障害を処置または予防する工程を含む。本開示のある特定の実施形態では、免疫応答を誘発する免疫細胞集団を移入することによって、癌または感染症が処置される。免疫細胞は、炎症促進性サイトカインの放出に起因して、補助的な免疫細胞の分化、活性化および/または悪性疾患部位への動員を促進することによって、抗炎症性の腫瘍微小環境を逆転させ得、適応免疫応答を高め得る。
【0096】
本処置方法が有用な腫瘍としては、任意の悪性細胞タイプ、例えば、固形腫瘍または血液腫瘍に見られるタイプが挙げられる。例示的な固形腫瘍としては、膵臓、結腸、盲腸、胃、脳、頭部、頸部、卵巣、腎臓、喉頭、肉腫、肺、膀胱、黒色腫、前立腺および乳房からなる群より選択される器官の腫瘍が挙げられ得るが、これらに限定されない。例示的な血液腫瘍としては、骨髄の腫瘍、TまたはB細胞悪性疾患、白血病、リンパ腫、芽腫、ミエローマなどが挙げられる。本明細書中に提供される方法を用いて処置され得る癌のさらなる例としては、肺癌(小細胞肺癌、非小細胞肺癌、肺腺癌および肺扁平上皮癌を含む)、腹膜の癌、胃(gastric)癌または胃(stomach)癌(消化器癌および消化管間質癌を含む)、膵癌、子宮頸癌、卵巣癌、肝臓癌、膀胱癌、乳癌、結腸癌、直腸結腸癌、子宮内膜癌または子宮癌、唾液腺癌、腎臓癌または腎癌、前立腺癌、外陰癌、甲状腺癌、様々なタイプの頭頸部癌、ならびに黒色腫が挙げられるが、これらに限定されない。
【0097】
癌は、具体的には以下の組織型の癌であり得るが、これらに限定されない:新生物,悪性;癌腫;癌腫,未分化型;巨細胞および紡錘形細胞癌;小細胞癌;乳頭状癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;毛母癌;移行上皮癌;乳頭移行上皮癌;腺癌;ガストリノーマ,悪性;胆管癌;肝細胞癌;肝細胞癌・胆管癌の混合型;索状腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープ内腺癌;腺癌,家族性大腸ポリポーシス;充実性癌;カルチノイド腫瘍,悪性;細気管支肺胞腺癌;乳頭状腺癌;嫌色素性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒細胞癌;濾胞腺癌;乳頭状・濾胞腺癌;非被包性硬化癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;皮脂腺癌;耳垢腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭状嚢胞腺癌;乳頭状漿液性嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性導管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;パジェット病,乳房;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生を伴う腺癌;胸腺腫,悪性;卵巣間質腫瘍,悪性;莢膜細胞腫,悪性;顆粒膜細胞腫,悪性;アンドロブラストーマ,悪性;セルトリ細胞癌;ライディッヒ細胞腫瘍,悪性;脂質細胞腫瘍,悪性;傍神経節腫,悪性;乳房外傍神経節腫,悪性;褐色細胞腫;グロムス血管肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;悪性黒子黒色腫;末端黒子型黒色腫;結節性黒色腫;巨大色素性母斑内悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;青色母斑,悪性;肉腫;線維肉腫;線維性組織球腫,悪性;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胎児性横紋筋肉腫;胞巣状横紋筋肉腫;間質肉腫;混合腫瘍,悪性;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;間葉腫,悪性;ブレンナー腫瘍,悪性;葉状腫瘍,悪性;滑膜肉腫;中皮腫,悪性;未分化胚細胞腫;胎児性癌;奇形腫,悪性;卵巣甲状腺腫,悪性;絨毛癌;中腎腫,悪性;血管肉腫;血管内皮腫,悪性;カポジ肉腫;血管周囲細胞腫,悪性;リンパ管肉腫;骨肉腫;傍皮質骨肉腫;軟骨肉腫;軟骨芽細胞腫,悪性;間葉性軟骨肉腫;骨巨細胞腫瘍;ユーイング肉腫;歯原性腫瘍,悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;エナメル上皮腫,悪性;エナメル上皮歯牙肉腫;松果体腫,悪性;脊索腫;神経膠腫,悪性;上衣腫;アストロサイトーマ;原形質性アストロサイトーマ;細線維性アストロサイトーマ;星芽腫;神経膠芽腫;乏突起膠腫;希突起芽腫;原始神経外胚葉;小脳肉腫;神経節神経芽腫;神経芽細胞腫;網膜芽細胞腫;嗅神経原腫瘍;髄膜腫,悪性;神経線維肉腫;神経鞘腫,悪性;顆粒細胞腫,悪性;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;悪性リンパ腫,小リンパ球性;悪性リンパ腫,大細胞型,びまん性;悪性リンパ腫,濾胞性;菌状息肉腫;他の特定の非ホジキンリンパ腫;B細胞リンパ腫;低悪性度/濾胞性非ホジキンリンパ腫(NHL);小リンパ球性(SL)NHL;中悪性度/濾胞性NHL;中悪性度びまん性NHL;高悪性度免疫芽球性NHL;高悪性度リンパ芽球性NHL;高悪性度小非切れ込み細胞NHL;巨大病変(bulky disease)NHL;マントル細胞リンパ腫;AIDS関連リンパ腫;ワルデンシュトレームマクログロブリン血症;悪性組織球増殖症;多発性骨髄腫;肥満細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;形質細胞性白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病;骨髄性白血病;好塩基球性白血病;好酸球性白血病;単球性白血病;肥満細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;ヘアリーセル白血病;慢性リンパ性白血病(CLL);急性リンパ芽球性白血病(ALL);急性骨髄性白血病(AML);および慢性骨髄芽球性白血病。
【0098】
特定の実施形態は、白血病を処置する方法に関する。白血病は、血液または骨髄の癌であり、血液細胞、通常は白血球細胞(白血球)の異常な増殖(分裂増殖による生成)を特徴とする。白血病は、血液新生物と呼ばれる広範囲な疾患群の一部である。白血病は、ある疾患範囲を網羅する広義語である。白血病は、臨床的および病理学的に、急性型と慢性型とに分けられる。
【0099】
急性白血病は、未熟な血液細胞の急速な増殖を特徴とする。この密集によって、骨髄は健康な血液細胞を産生できなくなる。急性型の白血病は、小児および若年成人において生じ得る。急性白血病では、急速な進行および悪性細胞の蓄積、次いでそれが血流にあふれ出て、身体の他の器官に広がることから、速やかな処置が必要とされる。中枢神経系(CNS)の関与は珍しいが、この疾患は、時として脳神経麻痺を起こし得る。慢性白血病は、比較的成熟しているがなおも異常な血液細胞の過剰な蓄積によって区別される。通常、数ヶ月から数年間かけて進行する間に、正常細胞よりもかなり速い速度で細胞が産生されて、血液中に多くの異常な白血球が生じる。慢性白血病は、たいていは高齢者に起きるが、理論的にはどの年齢群でも生じ得る。急性白血病は、直ちに処置しなければならないのに対して、慢性型は時折、治療の有効性が最大となるのを確実にするために、処置前にしばらくの間、監視される。
【0100】
さらに、上記疾患は、リンパ球性もしくはリンパ芽球性(正常にはリンパ球を形成し続けるあるタイプの骨髄細胞に癌化が起こったことを示す)および骨髄性または骨髄球性(正常には赤血球、いくつかのタイプの白血球および血小板を形成し続けるあるタイプの骨髄細胞に癌化が起こったことを示す)に分類される。
【0101】
急性リンパ性白血病(急性リンパ芽球性白血病、すなわちALLとしても知られる)は、低年齢小児において最も一般的なタイプの白血病である。この疾患は、成人、特に、65歳以上でも発症する。慢性リンパ性白血病(CLL)は、ほとんどの場合、55歳を超える成人で発症する。慢性リンパ性白血病(CLL)は、時折、それより若い成人でも生じるが、小児で発症することはほとんどない。急性骨髄性白血病(Acute myelogenous leukemia)(急性骨髄性白血病(acute myeloid leukemia)、すなわちAMLとしても知られる)は、通常、小児よりも成人において生じる。このタイプの白血病は、以前は急性非リンパ性白血病と呼ばれていた。慢性骨髄性白血病(CML)は、主に成人に生じる。
【0102】
リンパ腫は、リンパ球(脊椎動物の免疫系における白血球の1タイプ)から発生する癌のタイプである。リンパ腫には、多くのタイプが存在する。米国国立衛生研究所によると、リンパ腫は、米国における癌の全症例の約5パーセントを占め、特にホジキンリンパ腫は、米国における癌の全症例の1パーセント未満を占める。リンパ系は、身体の免疫系の一部であるので、HIV感染またはある特定の薬物もしくは薬物療法などによって免疫系が弱った患者も、リンパ腫の発生率が高い。
【0103】
本開示のある特定の実施形態において、免疫細胞は、それを必要とする個体(例えば、癌または感染症を有する個体)に送達される。次いで、それらの細胞は、その個体の免疫系を亢進して、それぞれの癌細胞または病原性細胞を攻撃する。いくつかの場合では、個体は、免疫細胞を1回以上提供される。個体が、免疫細胞を2回以上提供される場合、投与間の時間は、その個体において伝播のための時間が経過するのに十分な時間であるべきであり、具体的な実施形態において、投与間の時間は、l、2、3、4、5、6、7日またはそれ以上である。
【0104】
プレ活性化され、拡大される免疫細胞の起源は、任意の種類であってよいが、具体的な実施形態において、その細胞は、例えば、臍帯血、末梢血、ヒト胚性幹細胞または誘導多能性幹細胞のバンクから得られる。治療効果にとって好適な用量は、好ましくは一連の投与サイクルにおいて、1用量あたり例えば少なくとも105または約105~約1010細胞であり得る。例示的な投与レジメンは、0日目の少なくとも約105細胞から開始し、例えば、患者内用量漸増スキーム開始の数週間以内に約1010細胞という目標用量まで徐々に増加させるという用量漸増の1週間投与サイクルの4サイクルからなる。好適な投与様式としては、静脈内、皮下、腔内(例えば、レザバーアクセスデバイス)、腹腔内および腫瘤への直接注射が挙げられる。
【0105】
1つの例示的な方法では、NK細胞は、1単位以上の臍帯血単位などの生物学的サンプルに由来し得る。臍帯血単位は、凍結臍帯血単位であり得る。その臍帯血単位を解凍し、フィコール勾配に供することにより、単核細胞が得られ得る。その単核細胞は、CliniMASなどによって、CD3、CD14およびCD19陽性細胞が枯渇していることがある。次いで、ネガティブ選択されたNK細胞は、APCおよびIL-2(例えば、200U/mL)の存在下において培養され得る。次いで、そのNK細胞に、CARを発現するレトロウイルス上清が形質導入され得、γ線照射されたAPCおよびIL-2とともに培養され得る。最後に、その細胞は、CARの陽性発現(例えば、CD56、CD16、CD3、CD19、CD14またはCD45)についてソーティングされ得る。
【0106】
本方法に従って作製された免疫細胞には、実験用途および治療用途をはじめとした、多くの潜在的な用途がある。特に、そのような細胞集団は、望ましくないまたは不適当な免疫応答を抑制する際に極めて有用であることが想定される。そのような方法では、少数の免疫細胞を患者から取り出し、次いで、エキソビボで操作し、拡大した後、それを患者に再注入する。このように処置され得る疾患の例は、例えば、同種移植寛容のために、免疫活性の抑制が望ましい自己免疫疾患および自己免疫状態である。治療的な方法は、哺乳動物を準備する工程、その哺乳動物から免疫細胞を得る工程;上に記載された本方法の方法に従ってその免疫細胞をエキソビボで拡大する工程;および拡大された免疫細胞を処置される哺乳動物に投与する工程を含み得る。
【0107】
本開示の薬学的組成物は、単独でまたは癌の処置に有用な他の確立された作用物質と組み合わせて使用され得る。単独で送達されるのか、他の作用物質と組み合わせて送達されるのかに関係なく、本開示の薬学的組成物は、様々な経路を介して、哺乳動物、特にヒトの身体の様々な部位に送達されることにより、特定の効果が達成され得る。当業者は、2つ以上の経路を投与に用いることができるが、特定の経路が、別の経路よりも即効性かつ効果的な反応を提供できることを認識するだろう。例えば、黒色腫の処置の場合、吸入よりも皮内送達が有利に使用され得る。局所送達または全身送達は、体腔への製剤の適用もしくは滴下注入、エアロゾルの吸入もしくはガス注入、または筋肉内、静脈内、門脈内、肝臓内、腹膜、皮下もしくは皮内投与を含む非経口導入を含む投与によって達成され得る。
【0108】
本開示のある特定の実施形態は、免疫介在性障害を処置または予防するための方法を提供する。1つの実施形態において、被験体は、自己免疫疾患を有する。自己免疫疾患の非限定的な例としては、円形脱毛症、強直性脊椎炎、抗リン脂質抗体症候群、自己免疫性アジソン病、副腎の自己免疫疾患、自己免疫性溶血性貧血、自己免疫性肝炎、自己免疫性卵巣炎および自己免疫性睾丸炎、自己免疫性血小板減少症、ベーチェット病、水疱性類天疱瘡、心筋症、セリアックスペート-皮膚炎、慢性疲労免疫不全症候群(CFIDS)、慢性炎症性脱髄性多発ニューロパシー、チャーグ・ストラウス症候群、瘢痕性類天疱瘡、CREST症候群、寒冷凝集素病、クローン病、円板状狼瘡、本態性混合型クリオグロブリン血症、線維筋痛症-線維筋炎、糸球体腎炎、グレーブス病、ギランバレー、橋本甲状腺炎、特発性肺線維症、特発性血小板減少紫斑病(ITP)、IgAニューロパシー、若年性関節炎、扁平苔癬、エリテマトーデス、メニエール病、混合結合組織病、多発性硬化症、1型糖尿病または免疫介在性糖尿病、重症筋無力症、ネフローゼ症候群(例えば、微小変化群、巣状糸球体硬化症または膜性腎症)、尋常性天疱瘡、悪性貧血、結節性多発性動脈炎、多発性軟骨炎、多腺症候群、リウマチ性多発筋痛症、多発性筋炎および皮膚筋炎、原発性無ガンマグロブリン血症、原発性胆汁性肝硬変、乾癬、乾癬性関節炎、レイノー現象、ライター症候群、関節リウマチ、サルコイドーシス、強皮症、シェーグレン症候群、全身硬直症候群、全身性エリテマトーデス、エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、ブドウ膜炎、脈管炎(例えば、結節性多発性動脈炎、高安動脈炎、側頭動脈炎/巨細胞性動脈炎または疱疹状皮膚炎脈管炎)、白斑、ならびにヴェゲナー肉芽腫症が挙げられる。したがって、本明細書中に開示される方法を用いて処置され得る自己免疫疾患のいくつかの例としては、多発性硬化症、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、I型糖尿病、クローン病;潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、糸球体腎炎、強直性脊椎炎、脈管炎または乾癬が挙げられるが、これらに限定されない。被験体は、喘息などのアレルギー性障害も有し得る。
【0109】
なおも別の実施形態において、被験体は、臓器移植または幹細胞移植のレシピエントであり、拒絶を予防および/または処置するために免疫細胞が用いられる。特定の実施形態において、被験体は、移植片対宿主病を有するか、または移植片対宿主病を発症するリスクがある。GVHDは、血縁ドナーまたは非血縁ドナーからの幹細胞を使用するかまたは含む任意の移植で起き得る合併症である。GVHDには、急性と慢性の2種類がある。急性GVHDは、移植後最初の3ヶ月以内に現れる。急性GVHDの徴候としては、手および足における赤みを帯びた発疹が挙げられ、それは、広がって、より重篤になることがあり、皮膚剥脱または水疱形成を伴う。急性GVHDは、胃および腸にも影響することがあり、その場合、筋痙攣、悪心および下痢が現れる。皮膚および眼の黄変(黄疸)は、急性GVHDが肝臓に影響していることを示す。慢性GVHDは、その重症度に基づいてランク付けされる:ステージ/グレード1が軽度であり;ステージ/グレード4が重度である。慢性GVHDは、移植の3ヶ月後またはそれ以降に発症する。慢性GVHDの症状は、急性GVHDの症状と似ているが、さらに慢性GVHDは、眼の粘液腺、口の唾液腺、ならびに胃の内壁および腸を滑らかにする腺にも影響することがある。本明細書中に開示される任意の免疫細胞の集団が利用され得る。移植される器官の例としては、実質臓器の移植(例えば、腎臓、肝臓、皮膚、膵臓、肺および/または心臓)または細胞移植(例えば、膵島、肝細胞、筋芽細胞、骨髄、または造血性幹細胞もしくは他の幹細胞)が挙げられる。移植は、複合移植(例えば、顔面の組織)であり得る。免疫細胞は、移植の前、移植と同時、または移植の後に、投与され得る。いくつかの実施形態において、免疫細胞は、移植の前(例えば、移植の少なくとも1時間前、少なくとも12時間前、少なくとも1日前、少なくとも2日前、少なくとも3日前、少なくとも4日前、少なくとも5日前、少なくとも6日前、少なくとも1週間前、少なくとも2週前、少なくとも3週間前、少なくとも4週間前または少なくとも1ヶ月前)に投与される。1つの非限定的な具体例では、治療有効量の免疫細胞の投与は、移植の3~5日前に行われる。
【0110】
ある特定の実施形態において、免疫細胞は、第2の治療薬と組み合わせて投与される。例えば、第2の治療薬としては、T細胞、免疫調節剤、モノクローナル抗体または化学療法剤が挙げられ得る。非限定的な例において、免疫調節剤は、レノリドミドであり、モノクローナル抗体は、リツキシマブ、オファツマブまたはルミリキシマブであり、化学療法剤は、フルダラビンまたはシクロホスファミドである。
【0111】
本開示の組成物は、単位剤形で提供され得、ここで、各投与単位、例えば、注射剤は、所定の量のその組成物を単独でまたは他の活性な作用物質との適切な組み合わせで含む。単位剤形という用語は、本明細書中で使用されるとき、ヒトおよび動物被験体に対する単位投与量として適した物理的に不連続な単位のことを指し、各単位は、所望の効果をもたらすのに十分な量として計算された所定の量の本発明の組成物を、単独でまたは他の活性な作用物質と組み合わせて、必要に応じて薬学的に許容され得る希釈剤、キャリアまたはビヒクルと併せて、含む。本発明の新規の単位剤形についての仕様は、特定の被験体における、薬学的組成物に関連する特定の薬力学に依存する。
【0112】
望ましくは、長期間の特異的な抗腫瘍応答が確立されて、腫瘍サイズが減少するか、またはそのような処置が無い場合に生じ得る腫瘍の成長もしくは再成長が無くなるように、単離され、導入された有効量のまたは十分な数の免疫細胞が、組成物中に存在し、被験体に導入される。望ましくは、被験体に再導入されるその量の免疫細胞は、他の点では同じ条件(免疫細胞が存在しない)と比べて、腫瘍サイズを10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%または100%減少させる。
【0113】
したがって、投与される免疫細胞の量は、投与経路を考慮するべきであり、十分な数の免疫細胞が所望の治療反応を達成するように導入されるような量であるべきである。さらに、本明細書中に記載される組成物に含められる活性な作用物質の各々の量(例えば、接触される各細胞あたりの量またはある特定の体重あたりの量)は、用途によって異なり得る。一般に、免疫細胞の濃度は、望ましくは、処置される被験体において、少なくとも約1×106~約1×109免疫細胞、さらにより望ましくは、約1×107~約5×108免疫細胞を提供するのに十分であるべきであるが、それを超える量、例えば、5×108細胞を超える量、またはそれを下回る量、例えば、1×107細胞未満の量といった、任意の好適な量を利用できる。投与スケジュールは、確立された細胞ベースの治療に基づき得る(例えば、Topalian and Rosenberg,1987;米国特許第4,690,915号を参照のこと)か、または代わりの持続注入ストラテジーを用いることもできる。
【0114】
これらの値は、本発明を実施するために本発明の方法を最適化する際に実務家が利用する免疫細胞の範囲の一般的ガイダンスを提供する。そのような範囲の本明細書中の詳述は決して、特定の用途では保証され得る、それより多いまたは少ない量の構成要素の使用を排除しない。例えば、正確な用量およびスケジュールは、組成物が他の薬学的組成物と組み合わせて投与されるか否かに応じて、または薬物動態、薬物処分および代謝の個体差に応じて、異なり得る。当業者は、特定の状況の緊急事態に応じて、任意の必要な調整を容易に行うことができる。
VI.キット
【0115】
いくつかの実施形態において、例えば、UAPCおよび/または免疫細胞を作製するための1つ以上の培地および構成要素を含み得るキットが提供される。そのような製剤は、APCおよび/または免疫細胞と組み合わせるのに適した形態で因子のカクテルを含み得る。試薬系は、必要に応じて、水性媒質中にまたは凍結乾燥された形態で、包装され得る。キットの容器手段としては、一般に、構成要素が配置され得る、好ましくは、適切に分注され得る、少なくとも1つのバイアル、試験管、フラスコ、ボトル、シリンジまたは他の容器手段が挙げられる。キットに2以上の構成要素が存在する場合、そのキットは一般に、追加の構成要素が別々に入れられ得る第2、第3または他のさらなる容器も含み得る。しかしながら、構成要素の様々な組み合わせが、1つのバイアルに含められてもよい。キットの構成要素は、乾燥粉末として提供され得る。試薬および/または構成要素が、乾燥粉末として提供されるとき、その粉末は、好適な溶媒を加えることによって再構成され得る。その溶媒は、別の容器手段に提供されてもよいことが想定される。また、キットは、通常、商業的販売のためにキットの構成要素を厳重に閉じ込めた状態で含めるための手段も含み得る。そのような容器としては、所望のバイアルが保持される、射出成形またはブロー成形されたプラスチック容器が挙げられ得る。キットは、使用のための指示書(例えば、印刷された形式または電子的な形式、例えば、デジタル形式)も含み得る。
【実施例】
【0116】
VII.実施例
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を示すために含められる。以下の実施例に開示される手法は、本発明の実施においてうまく機能すると本発明者が発見した手法であり、ゆえに、それらの手法は、実施するための好ましい形態を構成すると見なされ得ることが、当業者によって認識されるべきである。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、開示される具体的な実施形態では、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく多くの変更が行われ得、なおも同様または類似の結果が得られることを認識するはずである。
【0117】
実施例1-mbIL21、4-1BBLおよびSLAM(CD48/CS1)の組み合わせ
CD48-KatushkaまたはCS1-EGFPのいずれかとともに、膜結合型IL-21および41BBL(CD137リガンド)に対するレトロウイルス構築物をK562細胞に形質導入することによって、ユニバーサル抗原提示細胞(UAPC)を作製した。MMLV-レトロウイルス構築物のマップおよびアノテーションを
図4A~4Dに示す。NK細胞感受性K562(HLA-A
-、HLA-B
-)APC(
図3A)におけるmbIL-21および41BBLの強制発現から、クローン46(
図3B)を作製した。K562細胞におけるmbIL-1、41BBLおよびCD48の強制発現によって、UAPCを作製した(
図3C)。K562細胞におけるmbIL-21、41BBLおよびCS1の強制発現によって、UAPC2を作製した(
図3D)。
【0118】
NK細胞の数値的拡大を、クローン46、UAPCまたはUAPC2による活性化を用いて行った。APC共培養によるNK細胞の増殖および拡大は、クローン46が、以前に発表されたクローン9(
図2B)と比べて、形質導入されていないNK細胞(NT-NK)とCARを形質導入されたNK細胞(SG4-NK)との両方を拡大する能力に優れていることを示した。
【0119】
UAPCとの共培養によるNK細胞の拡大は、以前に発表されたクローン9(33時間という倍加時間)と比べて、NK細胞の倍加時間を31.38時間まで短縮する能力に優れていると示され、2週間で44%という増殖性の利点をもたらした(UAPCの場合、1671倍の拡大に対して、クローン9の場合、1161倍の拡大)(
図2E)。倍加時間と拡大倍率と開始時の細胞集団との関係は、以下の式によって簡約される:
【数1】
【0120】
式中、Nfは、最終的な細胞数であり、Nbは、開始時の細胞であり、e=2.71828(オイラー数としても知られる数学定数)であり、Tは、時を単位とする培養の時間範囲であり、TDは、時を単位とする倍加時間である。倍加時間は、最終的な細胞数に指数関数的に影響するので、指定の細胞培養期間にわたって増殖性の利点をさらに大きくすることから、圧縮された時間枠において、臨床的に妥当な数の細胞の収集が可能になる。ゆえに、本方法は、UAPCとの共培養によるNK細胞の効率的な作製を可能にする。
【0121】
本プラットフォーム技術は、特定の治療的な組み合わせ経路を利用して、癌免疫療法を目的とした、臨床グレードの多数の高度に機能的かつ細胞傷害性のNK細胞を製造するための実用的な方法を提供する。拡大された細胞は、100%NK細胞であり、T細胞は検出不可能であることから、多くの免疫細胞調製物において共通する意図されない移植片対宿主の副作用が回避される。
【0122】
本明細書中に開示されるおよび特許請求される方法のすべてが、本開示に鑑みて、過度の実験を行うことなく、実施および実行され得る。本発明の組成物および方法を、好ましい実施形態に関して説明してきたが、本発明の概念、趣旨および範囲から逸脱することなく、本明細書中に記載される方法および方法の工程または工程の順序に変更が適用され得ることが当業者には明らかであろう。より詳細には、化学的かつ生理的に関係するある特定の作用物質が、本明細書中に記載される作用物質の代わりに用いられ得るが、同じまたは類似の結果が達成され得ることが明らかであろう。当業者に明らかなそのような類似の置換および修正のすべてが、添付の請求項によって定義される本発明の趣旨、範囲および概念を超えないとみなされる。
【0123】
以下の文献は、本明細書に記載されているものを補足する例示的な手順、又は他の詳細を提供する範囲で、参照により本明細書に具体的に組み込まれる。
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【配列表】