(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】アスファルト合材の供給方法
(51)【国際特許分類】
E01C 19/02 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
E01C19/02
(21)【出願番号】P 2021003205
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-12-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000226482
【氏名又は名称】日工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】蓬莱 秀人
(72)【発明者】
【氏名】川村 克裕
(72)【発明者】
【氏名】田村 彰啓
【審査官】高橋 雅明
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-026042(JP,U)
【文献】特開平10-183519(JP,A)
【文献】特開2000-248507(JP,A)
【文献】特開昭49-118165(JP,A)
【文献】特開平08-319603(JP,A)
【文献】登録実用新案第3143857(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01C 19/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスファルト合材を収容して搬送可能とする気密性及び断熱性を有した貯蔵容器を用意する一方、アスファルトプラントと舗装現場との間に前記貯蔵容器を一時的に保管する
テント倉庫タイプの保管庫を設置し、該保管庫には庫内を
約30~35℃程度に保温する保温手段を具備すると共に、前記アスファルトプラントにて製造直後のアスファルト合材を前記貯蔵容器に収容し、かつ不活性ガスを充填した上で前記保管庫に搬入して保温状態で保管しておき、舗装工事の際には前記保管庫に保管しておいた前記貯蔵容器ごと、または前記貯蔵容器からアスファルト合材を取り出した上で、前記舗装現場まで搬送してアスファルト合材を供給することを特徴とするアスファルト合材の供給方法。
【請求項2】
前記貯蔵容器には収容したアスファルト合材の温度を検出する温度センサを具備したことを特徴とする請求項1記載のアスファルト合材の供給方法。
【請求項3】
前記貯蔵容器を導電体で形成し、前記保管庫の近傍には誘導加熱装置を備え、舗装工事の際には前記保管庫に保管しておいた前記貯蔵容器を前記誘導加熱装置にて誘導加熱することで貯蔵容器内のアスファルト合材を再加熱してから前記舗装現場まで搬送することを特徴とする請求項1または2記載のアスファルト合材の供給方法。
【請求項4】
前記貯蔵容器には貯蔵容器内の酸素を検出する酸素検出手段を具備したことを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載のアスファルト合材の供給方法。
【請求項5】
前記貯蔵容器には貯蔵容器内の酸素を除去する酸素除去手段を具備したことを特徴とする請求項1乃至4の何れかに記載のアスファルト合材の供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスファルトプラントで製造されるアスファルト合材を舗装現場に供給する供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アスファルト合材製造工場に設置されるアスファルトプラントでは、各種粒径の骨材を、例えば約160~170℃程度もの高温に加熱した上で、フィラー(石粉)や溶融アスファルト等と所定量ずつミキサーで撹拌・混合してアスファルト合材を製造している。製造直後の高温で適度に軟化状態にあるアスファルト合材は、大気下では時間の経過と共に徐々に温度低下、酸化劣化が進んでいき、それらの進行度合いによっては粘性が高まって舗装現場でのワーカビリティー(施工性)が低下したり、硬化して道路舗装材として使用できなくなる可能性がある。
【0003】
特に、製造したアスファルト合材を搬送車両の荷台に積み込んで舗装現場まで出荷する際には、アスファルト合材が大気と接しやすいことなどから温度低下、酸化劣化は一段と進みやすく、現状、荷台に積み込んだアスファルト合材の上から養生シートで覆うなどの保温対策を図ってはいるものの、通常は出荷から約1時間半以内に届けられる範囲の舗装現場にしか供給できず、これを超えるような遠隔地への供給は難しいものがある。
【0004】
これに対し、アスファルトプラントと、該アスファルトプラントからは遠隔地にある舗装現場との間にサテライト方式と呼ばれる気密性及び断熱性に優れた大型の貯蔵サイロを設置し、アスファルトプラントにて製造したアスファルト合材を一旦前記貯蔵サイロに投入して温度低下・酸化劣化を抑制しながら一時的に貯蔵しておき、舗装工事の際には前記舗装現場から比較的近傍に位置する前記貯蔵サイロよりアスファルト合材を所定量払い出して前記舗装現場まで搬送・供給するようにしたものがある(特許文献1参照)。また、断熱壁より構成され、かつヒータを具備した箱体状の貯蔵容器に、アスファルトプラントにて製造直後のアスファルト合材を収容し、加熱・保温しながら舗装現場まで搬送・供給するようにしたものもある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平4-169610号公報
【文献】登録実用新案第3143857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1にあるサテライト方式の前記貯蔵サイロは比較的大掛かりな設備であって、基礎工事やサイロ内へアスファルト合材を投入するためのエレベータ等の付属設備を必須とするものであるため、設置に時間を要する上、単体でもそれなりにコストが掛かり、仮に離間した複数の舗装現場に対応しようとした場合にはアスファルトプラントの周囲に複数設置する必要があることから採用が難しい場合も予想される。一方、特許文献2にある前記貯蔵容器の場合には、貯蔵サイロの場合よりはコスト面での負担は軽減されると予想されるものの、比較的規模の大きいアスファルトプラントでは、自ずとアスファルト合材の出荷量も多くなるため前記貯蔵容器を多数用意する必要が生じ、その全てにヒータ設備を具備するとなればメンテナンス面での負担が増える上、相応にコストアップを招き、前記同様に場合によっては採用が難しくなることが予想される。
【0007】
本発明は上記の点に鑑み、比較的シンプルで低廉な構成ながらも遠隔地の舗装現場へも供給可能とするアスファルト合材の供給方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本発明に係る請求項1記載のアスファルト合材の供給方法では、アスファルト合材を収容して搬送可能とする気密性及び断熱性を有した貯蔵容器を用意する一方、アスファルトプラントと舗装現場との間に前記貯蔵容器を一時的に保管するテント倉庫タイプの保管庫を設置し、該保管庫には庫内を約30~35℃程度に保温する保温手段を具備すると共に、前記アスファルトプラントにて製造直後のアスファルト合材を前記貯蔵容器に収容し、かつ不活性ガスを充填した上で前記保管庫に搬入して保温状態で保管しておき、舗装工事の際には前記保管庫に保管しておいた前記貯蔵容器ごと、または前記貯蔵容器からアスファルト合材を取り出した上で、前記舗装現場まで搬送してアスファルト合材を供給することを特徴としている。
【0009】
また、本発明に係る請求項2記載のアスファルト合材の供給方法では、前記貯蔵容器には収容したアスファルト合材の温度を検出する温度センサを具備したことを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る請求項3記載のアスファルト合材の供給方法では、前記貯蔵容器を導電体で形成し、前記保管庫の近傍には誘導加熱装置を備え、舗装工事の際には前記保管庫に保管しておいた前記貯蔵容器を前記誘導加熱装置にて誘導加熱することで貯蔵容器内のアスファルト合材を再加熱してから前記舗装現場まで搬送することを特徴としている。
【0011】
また、本発明に係る請求項4記載のアスファルト合材の供給方法では、前記貯蔵容器には貯蔵容器内の酸素を検出する酸素検出手段を具備したことを特徴としている。
【0012】
また、本発明に係る請求項5記載のアスファルト合材の供給方法では、前記貯蔵容器には貯蔵容器内の酸素を除去する酸素除去手段を具備したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る請求項1記載のアスファルト合材の供給方法によれば、アスファルト合材を収容して搬送可能とする貯蔵容器を用意する一方、アスファルトプラントと舗装現場との間に前記貯蔵容器を保管するテント倉庫タイプの保管庫を設置し、該保管庫には庫内を約30~35℃程度に保温する保温手段を具備すると共に、製造直後のアスファルト合材を前記貯蔵容器に収容し、かつ不活性ガスを充填した上で前記保管庫に搬入して保温状態で保管しておき、舗装工事の際には前記保管庫に保管しておいた前記貯蔵容器ごと、または前記貯蔵容器からアスファルト合材を取り出した上で、前記舗装現場まで搬送してアスファルト合材を供給するので、比較的シンプルで低廉な構成ながらも遠隔地の舗装現場へも好適にアスファルト合材を供給できる。
【0014】
また、本発明に係る請求項2記載のアスファルト合材の供給方法によれば、前記貯蔵容器には収容したアスファルト合材の温度を検出する温度センサを具備したので、保管庫内で保管中のアスファルト合材の温度管理を精度良く行え、舗装現場に対する適正温度での供給がより確実なものとなって品質面において好適である。
【0015】
また、本発明に係る請求項3記載のアスファルト合材の供給方法によれば、前記貯蔵容器を導電体で形成し、前記保管庫の近傍には誘導加熱装置を備え、舗装工事の際には前記保管庫に保管しておいた前記貯蔵容器を前記誘導加熱装置にて誘導加熱することで貯蔵容器内のアスファルト合材を再加熱してから前記舗装現場まで搬送するので、例え保管庫内での保管中にアスファルト合材が多少温度低下を来すようなことがあっても、その場で比較的簡単に再加熱することができて使い勝手がよい。
【0016】
また、本発明に係る請求項4記載のアスファルト合材の供給方法によれば、前記貯蔵容器には貯蔵容器内の酸素を検出する酸素検出手段を具備したので、アスファルト合材の酸化劣化の原因となる酸素の有無を貯蔵容器ごとに確認でき、舗装現場に対する適正な性状での供給がより確実なものとなって品質面において好適である。
【0017】
また、本発明に係る請求項5記載のアスファルト合材の供給方法によれば、前記貯蔵容器には貯蔵容器内の酸素を除去する酸素除去手段を具備したので、例え貯蔵容器内にアスファルト合材の酸化劣化の原因となる酸素が入り込んだとしても速やかに除去・低減でき、舗装現場に対する適正な性状での供給が一層確実なものとなって品質面において好適である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明に係るアスファルト合材の供給方法で使用する貯蔵容器の斜視図である。
【
図2】貯蔵容器に備える酸素検出手段、及び酸素除去手段を示す図である。
【
図3】本発明に係るアスファルト合材の供給方法の概略説明図である。
【
図4】アスファルト合材を貯蔵容器内に収容した際のアスファルト合材温度の経時変化についてのシミュレーション結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明に係るアスファルト合材の供給方法にあっては、アスファルト合材製造直後の高温(例えば、160~170℃程度)で適度に軟化状態にあるアスファルト合材を収容して搬送車両の荷台に積載した状態で搬送可能とする、気密性及び断熱性を有した貯蔵容器を複数用意する。また、アスファルト合材製造工場に設置されるアスファルトプラントと、該アスファルトプラントから遠隔地にあたる(例えば、搬送車両での移動に約1時間半を超える位置にある)舗装現場との間(例えば、中間地点等)に、複数の前記貯蔵容器を容器ごと搬入して一時的に保管可能とする保管庫を設置し、該保管庫には庫内を任意の温度に保温する空調設備等の保温手段を具備する。
【0020】
前記貯蔵容器としては、それ自体にヒータ設備を有さないシンプルな箱体構造のものとする。また、前記保管庫としては、適宜構造のものを採用し得るが、少なくとも庫内を外気と遮断できて保温が可能な程度のものであれば足り、例えば構造が比較的シンプルで低廉なテント倉庫タイプの保管庫などを好適に採用し得る。このようなテント倉庫タイプの保管庫の場合、従来の貯蔵サイロ等と比較して、基礎工事やアスファルト合材投入用エレベータ等の付属設備が不要で大幅なコストダウンが期待できると共に、短期間で設置でき、仮にアスファルトプラントの周囲に複数の保管庫を設置する必要がある場合や、舗装現場が変わることに応じて移設の必要が生じた場合でも比較的柔軟に対応することが可能となる。
【0021】
なお、前記保管庫の保温温度としては、舗装工事に供されるアスファルト合材の製造・出荷時の適正温度である約160~170℃にできるだけ近い温度の方がアスファルト合材の温度低下をより抑制できるものとなるが、あまり高温に維持しようとすると空調用のエネルギー代も嵩む上、保管庫での貯蔵容器の搬入・搬出作業に携わる作業者の作業効率や作業安全性等にも悪影響を及ぼす可能性があるため、例えば、約30~35℃程度に設定すると好ましい。この程度の保温温度に維持されておれば、庫内に保管している貯蔵容器中のアスファルト合材からの熱放散をそれなりに抑制でき、貯蔵容器自体に具備した断熱性能も加わって数十時間程度の保管が可能なものとなり、コストを抑えながらも十分に実用性の高いものとなる。
【0022】
また、好ましくは、前記貯蔵容器には収容したアスファルト合材の温度を検出する温度センサを具備するとよい。これにより、保管庫内で保管している貯蔵容器内のアスファルト合材の温度管理を個別に精度良く行え、舗装現場に対する適正温度でのアスファルト合材の供給がより確実なものとなって品質面において好適なものとなる。また、同じ配合のアスファルト合材を収容した貯蔵容器が複数保管されておれば、アスファルト合材温度の低いものから順に舗装現場へ出荷するといったことも可能となる。
【0023】
さらに、好ましくは、前記貯蔵容器を金属等の導電体で形成し、前記保管庫の近傍には誘導加熱装置を備え、舗装工事の際には前記保管庫に保管しておいた前記貯蔵容器を前記誘導加熱装置にて誘導加熱することで貯蔵容器内のアスファルト合材を再加熱してから前記舗装現場まで搬送するようにするとよい。これにより、例え保管庫内での保管中に貯蔵容器内のアスファルト合材が放熱して多少温度低下を来すようなことがあっても、貯蔵容器内にアスファルト合材を収容したまま、その場で比較的簡単に温度調整することができて使い勝手がよいものとなる。なお、前記貯蔵容器に温度センサを具備した場合には、該温度センサの検出値に基づいて再加熱するようにすれば、アスファルト合材を適正温度範囲に過不足なく調整することが可能となって一層好ましいものとなる。
【0024】
またさらに、好ましくは、前記貯蔵容器には貯蔵容器内の酸素を検出する、例えば、酸素検知剤や酸素濃度センサ等を利用した酸素検出手段を具備するとよい。これにより、アスファルト合材の酸化劣化の原因となる酸素の有無を貯蔵容器ごとに確認でき、舗装現場に対する適正な(酸化劣化のない、或いは少ない)性状での供給がより確実なものとなって品質面において好適なものとなる。
【0025】
またさらに、好ましくは、前記貯蔵容器には貯蔵容器内の酸素を除去する、例えば脱酸素剤等を利用した酸素除去手段を具備するとよい。これにより、例え貯蔵容器内にアスファルト合材の酸化劣化の原因となる酸素が入り込んだとしても速やかに除去・低減でき、舗装現場に対する適正な(酸化劣化のない、或いは少ない)性状での供給が一層確実なものとなって品質面において好適なものとなる。
【0026】
そして、前記アスファルト合材製造工場のアスファルトプラントから遠隔地にあたる前記舗装現場にアスファルト合材を供給する場合には、予め、前記アスファルトプラントにて製造直後の高温のアスファルト合材を前記貯蔵容器に収容し、かつ窒素や二酸化炭素等の不活性ガスを充填した上で搬送車両に積載して出荷し、前記舗装現場から比較的近傍に位置する前記保管庫にそのまま搬入して保温状態で一時的に保管しておく。そして、前記舗装現場にて舗装工事をする際には、前記保管庫に保管しておいた前記貯蔵容器ごと、または前記貯蔵容器からアスファルト合材を取り出した上で、搬送車両に積載して前記舗装現場まで搬送・供給する。
【0027】
このとき、前記保管庫から前記舗装現場までは比較的近い位置関係にあるため短時間で搬送でき、上記のように、アスファルト合材を貯蔵容器に収容したまま搬送する場合は勿論、舗装現場での取扱性等を優先して貯蔵容器からアスファルト合材を予め取り出して搬送車両の荷台に直接積載した状態で舗装現場まで搬送する場合であっても、アスファルト合材は温度低下、酸化劣化をさほど来すようなことはなく、舗装工事に適した性状を維持したまま舗装現場まで供給することができる。
【0028】
このように、本発明のアスファルト合材の供給方法によれば、基礎工事や投入用エレベータ等の付属設備が必須の貯蔵サイロや、ヒータ設備を具備した貯蔵容器などは用いず、ヒータ設備を有しない貯蔵容器と、前記貯蔵サイロに代えて前記貯蔵容器ごと搬入が可能なシンプルで低廉な構成の保管庫を用いるようにしたので、比較的採用もしやすくてアスファルトプラントから遠隔地の舗装現場へも好適にアスファルト合材を供給することが可能となる。
【0029】
また、前記貯蔵容器を多数用意すると共に、アスファルトプラントの周囲に複数の保管庫を設置するといったことも十分可能となるため、例えば、一基のアスファルトプラントを中心としてより広範囲の舗装現場へアスファルト合材を供給することが可能となり、従来、アスファルト合材の搬送が可能な範囲から外れるという理由から複数のアスファルトプラントを設置せざるを得なかった地域にあっても、場合によってはプラントの統合・集約化が期待できるものとなる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の一実施例を図面に基づいて説明する。
【0031】
図1中の1は、アスファルト合材搬送用の貯蔵容器の一例を示したものであって、例えば、金属等の導電体で形成した略円筒体形状の容器本体2を有し、該容器本体2の上下端部には投入口3及び排出口4を備えていると共に、該投入口3及び排出口4にはそれぞれ投入ゲート5及び排出ゲート6を開閉自在に備えている。なお、前記投入ゲート5及び排出ゲート6の閉鎖時には前記投入口3と排出口4とが密閉され、前記容器本体2内部の気密性が高く維持される構成としている。
【0032】
また、前記貯蔵容器1にはヒータ設備は設けず、それに代えて容器本体2を形成する各壁面内部(或いは表面)にロックウール等の断熱材(図示せず)を内蔵(或いは貼付)したり、真空構造を採用するなどして、メンテナンスが容易で、シンプルかつ低廉な構成ながらも高い断熱性を保持させている。
【0033】
また、前記容器本体2の上端縁部には、クレーン等の揚重機にて貯蔵容器1を吊り上げて搬送車両等に積み上げ、或いは積み下ろしたりする際に使用する吊り金具7を備えていると共に、前記投入ゲート5には、例えば、窒素や二酸化炭素などの不活性ガスを容器本体2内に充填するためのガス充填口8を備えている。
【0034】
図中の9は、前記容器本体2内に収容中のアスファルト合材の温度を検出する温度センサである。前記容器本体2内に収容したアスファルト合材の温度は、容器本体2中心部よりも表面側の方が早期に熱放散して温度低下するなどのバラツキが生じるため、本実施例では容器本体2の内壁面から容器本体2中心部側への距離毎(例えば、0.1~0.5m間隔毎)のアスファルト合材温度をそれぞれ検出可能なように複数の温度センサ9を備えており、容器本体2内のアスファルト合材の温度を精度良く把握可能なように図っている。なお、前記温度センサ9は、本実施例のように必ずしも複数備える必要は無く、例えば、温度低下しやすい容器本体2表面側のアスファルト合材温度だけを簡易的に確認できれば足りる場合には、容器本体2表面側の温度を検出する温度センサ9を単体で備えるようにしてもよい。
【0035】
図中の10は、前記貯蔵容器1の容器本体2内の酸素を検出する酸素検出手段である。前記酸素検出手段10は、
図2に詳細に示すように、容器本体2の側壁上部側の表面部に、両端を開放した略円筒形状の筒体11を突設し、該筒体11の基端開口部は所定サイズの網目を有したメッシュ部材12を介して容器本体2上部側(アスファルト合材収容時に空隙が形成される側)の内部と連通させている一方、遊端開口部は筒体11内部を視認可能なように透明な耐熱性のガラスや樹脂等の板体13で封止し、筒体11内部に酸素検知剤(所定濃度以上の酸素存在下で変色する特性を有した製剤)14を充填して構成している。
【0036】
前記酸素検出手段10によれば、前記ガス充填口8より不活性ガスを充填した状態の容器本体2内にアスファルト合材の酸化劣化の原因となる酸素が所定量以上(例えば、容器本体2内の酸素濃度が数%程度になるほど)入り込むようなことがあった場合に、前記筒体11内部に充填した酸素検知剤14が反応して、例えば赤色から青色へと変色し、作業者はそれを板体13越しに視認することで、容器本体2内にアスファルト合材の性状に悪影響を及ぼす程度の量の酸素が入り込んだことを一目で確認可能としている。
【0037】
なお、酸素検出手段としては、上記構成のものに限定されるものではなく、例えば、酸素濃度センサ等も有効に採用し得る。その場合、前記酸素濃度センサから出力される酸素濃度値の信号データを別途用意したパソコン等で逐次受け取ってモニター画面に表示したり、ハードディスク等の記憶装置に保存するようにすれば、作業者の負担を軽減しながらもアスファルト合材の品質管理をより好適に行うことが可能となる。このとき、酸素濃度値が所定値(例えば、前記酸素検知剤14が酸素を検出して変色する濃度値程度)以上であれば、前記モニター画面に注意情報を併せて表示したり、警報を発報するようにしてもよく、また前記記憶装置には酸素濃度値が所定値以上になったことを併せて記憶させるようにすれば品質管理面でより好ましいものとなる。
【0038】
また、前記筒体11内部には、酸素検知剤14と共に、貯蔵容器1の容器本体2内の酸素を除去する脱酸素剤15を充填しており、本実施例では、前記酸素検知手段10は酸素除去手段16を兼ねた構成としている。前記酸素除去手段16によれば、前記同様に、不活性ガスを充填した状態の容器本体2内に酸素が入り込むようなことがあった場合に、前記筒体11内部に充填した脱酸素剤15が前記酸素を速やかに吸収し、容器本体2内から酸素を除去或いは低減可能としている。
【0039】
このとき、前記筒体11内部に一緒に充填した酸素検知剤14は、容器本体2内の酸素が減少した(酸素濃度が所定濃度以下に低減した)ことを感知して、例えば青色から元の赤色へと戻り、作業者はそれを視認することで、容器本体2内に入り込んだ酸素が十分に除去されたことを確認可能としている。なお、本実施例では、一つの筒体11内に酸素検知剤14と脱酸素剤15とを一緒に充填し、前記酸素検知手段10と酸素除去手段16とを一体に構成したが、特にこれに限定されるものではなく、複数の筒体11内にそれぞれ酸素検知剤14と脱酸素剤15とを別々に充填し、酸素検知手段10と酸素除去手段16とを個別に構成するようにしてもよい。また、酸素除去効果を高める場合には、酸素除去手段16を複数設けるようにしてもよい。
【0040】
また、前記酸素検知剤14や脱酸素剤15は、外気に長時間接していると外気中の酸素に反応して酸素検知効果や脱酸素効果が低下するため、例えば、前記貯蔵容器1の容器本体2内にアスファルト合材を収容していないとき(未使用時)でも前記投入ゲート5及び排出ゲート6を閉鎖した上で容器本体2内に不活性ガスを充填した状態で保管しておいたり、或いは前記筒体11の基端開口部に備えたメッシュ部材12の網目を開閉するシャッター等の適宜の開閉機構を具備し、未使用時には前記メッシュ部材12の網目を閉鎖して容器本体2内部との連通を遮断し、筒体11内部の酸素検知剤14や脱酸素剤15が極力外気に接しないようにすると好ましい。なお、上記構成を採用した場合でも、前記酸素検知剤14や脱酸素剤15の酸素検知効果や脱酸素効果は徐々に低下していくため、定期的に交換するようにするとよい。
【0041】
前記貯蔵容器1(容器本体2)の形状としては、例えば直方体形状なども有効に採用し得るが、本実施例のように円筒体形状とすることにより、貯蔵容器1(容器本体2)の強度を高められるだけでなく、容器側面部の表面積を減らせる結果、収容したアスファルト合材の熱放散を軽減できてより好ましいものとなる。また、前記容器本体2の容量としては、少なくとも搬送車両に積載可能な範囲で適宜選定すればよいが、例えばアスファルトプラントのミキサにて混合・製造される1~数バッチ分程度のアスファルト合材を収容可能な容量とすると使い勝手がよいものとなる。
【0042】
図3は本発明に係るアスファルト合材の供給方法の概略説明図であって、図中の17は道路舗装材であるアスファルト合材を製造・出荷するアスファルト合材製造工場であり、その敷地内には各種粒径の骨材を所定温度、例えば約160~170℃程度の高温に加熱した上で、フィラーや溶融アスファルト等と共に所定量ずつ撹拌・混合してアスファルト合材を製造するアスファルトプラント18を設置している。また、図中の19a、19bは何れも前記アスファルト合材製造工場17(アスファルトプラント18)から遠隔地に位置する(例えば、搬送車両での移動に約1時間半を超える位置にある)舗装現場である。
【0043】
図中の20は、前記アスファルト合材製造工場17(アスファルトプラント18)と前記舗装現場19a、19bとの間(例えば、中間地点付近)に位置するサテライトサイトであって、前記アスファルト合材製造工場17から遠隔地に位置する複数の舗装現場19a、19bに対してアスファルト合材を効率よく供給するために設置される供給用の中継地点である。
【0044】
図中の21は前記アスファルトプラント18にて製造したアスファルト合材を直接、或いは前記貯蔵容器1に収容した上で積載し、前記アスファルトプラント18から前記サテライトサイト20に向けて、或いは前記サテライトサイト20から前記舗装現場19a、19bに向けて搬送・供給するダンプトラック等の搬送車両であると共に、図中の22は前記搬送車両21にて各舗装現場19a、19bに供給したアスファルト合材を転圧して舗装処理するロードローラ等の転圧機である。
【0045】
前記サテライトサイト20の敷地内には、前記アスファルト合材製造工場17から出荷・搬送されてくる、アスファルト合材を収容した貯蔵容器1をその容器ごと搬入して任意の温度にて保温しながら一時的に保管する保管庫23と、該保管庫23での保管中に幾分か温度低下した場合に、貯蔵容器1内のアスファルト合材を容器内に収容したままその場で再加熱し、舗装工事に供されるアスファルト合材の製造・出荷時の適正温度である約160~170℃に調整する誘導加熱装置24を備えている。
【0046】
前記保管庫23としては、適宜構造のものを採用し得るが、少なくとも庫内を外気と遮断できて保温が可能な程度のものであれば足り、例えば、構造が比較的シンプルで低廉なテント倉庫タイプの保管庫などを好適に採用し得る。このようなテント倉庫タイプの保管庫23の場合、従来の貯蔵サイロ等と比較して、基礎工事やアスファルト合材投入用エレベータ等の付属設備が不要で大幅なコストダウンが期待できると共に、設置場所も選ばずに比較的短期間で設置でき、仮にアスファルト合材製造工場17の周囲に複数の保管庫23を設置する必要がある場合や、舗装工事が進むにつれて舗装現場19a、19bの位置が変わることに応じて移設の必要が生じた場合でも比較的柔軟に対応することができる。
【0047】
図中の25は、前記保管庫23の庫内を保温する保温手段である空調設備である。前記保管庫23の保温温度としては、舗装工事に供されるアスファルト合材の製造・出荷時の適正温度である約160~170℃にできるだけ近い温度の方がアスファルト合材の温度低下をより抑制できるものとなるが、あまり高温に維持しようとすると前記空調設備25に掛かるエネルギー代(電気、ガス、燃料油代等)も嵩む上、保管庫23での貯蔵容器1の搬入・搬出作業に携わる作業者の作業効率や作業安全性等にも悪影響を及ぼす可能性があるため、例えば、30~35℃程度に設定すると好ましい。この程度の保温温度に庫内が維持されておれば、保管庫23内の貯蔵容器1に収容したアスファルト合材からの熱放散をそれなりに抑制でき、貯蔵容器1自体に具備した断熱性能も加わることで数十時間程度の保管(舗装工事への適用が可能な状態での保管)が可能なものとなり、コストを抑えながらも十分に実用性の高いものとなる。
【0048】
なお、前記保管庫23内の保温効果を高めるために、保管庫23の内壁面等に断熱シート等を貼着してもよく、その場合には、前記保管庫23内に保管される約160~170℃もの高温のアスファルト合材を収容した貯蔵容器1表面から発せられる放散熱でもって保管庫23の庫内温度を幾分かは高められ、前記空調設備25に掛かるエネルギー代の軽減が期待できるものとなる。
【0049】
一方、前記誘導加熱装置24は、磁力線発生用のコイル26と、発電機27とを主体に構成され、アスファルト合材を収容した前記貯蔵容器1の側部、及び上下の各外壁面を前記コイル26に非接触で近接させた上で、前記発電機27より前記コイル26に交流電流を流すとその周囲に磁力線Fが発生し、導電体からなる前記貯蔵容器1には渦電流が流れる結果、貯蔵容器1自体が直接加熱され(発熱し)、その内部に収容したアスファルト合材を、特に貯蔵容器1(容器本体2)内壁面付近のアスファルト合材を比較的効率よく短時間にて加熱・昇温できる。なお、前記コイル26に電流を供給する前記発電機27に代えて、搬送車両21から電流を供給する構成としてもよい。
【0050】
また、前記誘導加熱装置24にて前記貯蔵容器1を再加熱する際に、前記貯蔵容器1に具備した前記温度センサ9の検出値に基づいて(温度を確認しながら)加熱処理するようにすれば、貯蔵容器1内のアスファルト合材を製造・出荷時の適正温度である約160~170℃程度に過不足なく調整することができてより好ましい。
【0051】
ところで、アスファルト合材は比較的断熱性が高いことが分かっており(ロックウール等の断熱材と略同等程度)、一旦温度低下したアスファルト合材を再加熱するにあたり、単純に貯蔵容器1(容器本体2)外部より加熱しても容器本体2中心部付近のアスファルト合材まで効率よく短時間で昇温することは難しいと予想される。
【0052】
そこで、本発明者らは検討を重ねたところ、逆の発想で、アスファルト合材自体が断熱材代わりとなり得るのではないかと考えた。即ち、容器本体2内に収容したアスファルト合材のうち、容器本体2内壁面付近の合材は大気への熱放散によって比較的急速に温度低下を来すものの、それ自体があたかも断熱層となり、容器本体2中心部付近のアスファルト合材は比較的長時間に亘って高温のまま維持されるのではないかと考えた。
【0053】
そして、本発明者らは上記推測の下、例えば、直径2.0mの円筒体形状の貯蔵容器内に製造直後の160℃のアスファルト合材を収容し、かつこのアスファルト合材が接する前記貯蔵容器の壁面温度が常に外気温度の15℃に維持されるものと仮定した上で、貯蔵容器内壁面から容器中心部(軸心部)側への水平距離毎(0m、0.1m、0.2m、0.3m、0.5m、1.0m地点毎)のアスファルト合材温度の経時変化についてシミュレーションを行ったところ、
図4のグラフに示すように、当初の予想通り、貯蔵容器内壁面に接する位置(0m地点)のアスファルト合材は僅か1時間程度で160℃から外気温度である約15℃程度まで急速に温度低下するものの、容器内壁面から容器中心部側に向かって0.2m地点のアスファルト合材では、1時間後で10℃程度、3時間後で25℃程度、5時間後で40℃程度、10時間後でも65℃程度しか温度低下しないとの結果を得た。
【0054】
また同様に、0.3m地点にあっては、1時間後で2℃程度、3時間後で10℃程度、5時間後で20℃程度、10時間後でも40℃程度しか温度低下せず、0.5m地点にあっては、1時間後で1℃程度、3時間後で2℃程度、5時間後で3℃程度、10時間後でも10℃程度しか温度低下せず、更に1.0m地点にあっては、10時間後であっても1℃程度しか温度低下しないとの結果を得た。
【0055】
上記シミュレーション結果より、貯蔵容器をある程度のサイズ(例えば、貯蔵容器の容器本体を円筒体形状とした場合には半径約0.5m以上程度のサイズ、より好ましくは半径約1.0m以上程度のサイズ)で形成すれば、貯蔵容器中心部付近のアスファルト合材は比較的長時間に亘って温度低下しにくく、特段保温処理等をせずとも出荷から数時間程度であれば基本的に再加熱は不要であり、熱放散によって温度低下しやすい貯蔵容器内壁面付近のアスファルト合材さえ再加熱できれば十分実用に足りるとの結論に至った。そして、貯蔵容器内壁面付近(例えば、貯蔵容器内壁面から約0.3m程度内部側まで)のアスファルト合材を数十℃程度昇温させるだけであれば、例えば、貯蔵容器を金属等の導電体で形成した上で、該貯蔵容器自体を直接加熱可能とする誘導加熱装置を再加熱手段として用意すれば、比較的シンプルな構成ながら効率よく再加熱できるとの考えに至り、本発明に採用するに至っている。
【0056】
なお、本実施例では、上記シミュレーションとは異なり、貯蔵容器1の容器本体2に断熱性を有したものを採用していると共に、前記貯蔵容器1の保管にあたっては、保温機能を有した保管庫23内に搬入して保温状態で保管するようにしており、またアスファルト合材が接する貯蔵容器1の壁面温度はシミュレーションのように外気温度に維持され続けるようなことはなく、当然ながら幾分かは温度上昇するため、貯蔵容器1内に収容したアスファルト合材の温度は容器本体2の中心部付近のものは勿論、容器本体2の内壁面付近のものであってもあまり低下しにくく、その結果、保管時間が数時間程度であれば前記誘導加熱装置24での再加熱を必要とせず、例え再加熱を必要とする場合でも比較的短時間にて舗装工事に適した適正温度に調整可能としている。
【0057】
ただし、保管時間が長時間に及ぶ場合には、比較的温度低下のしにくい貯蔵容器1中心部付近のアスファルト合材にあっても幾分か温度低下することは避けられない。このとき、前記のように、前記誘導加熱装置24にて貯蔵容器1中心部付近のアスファルト合材まで効率よく加熱・昇温することは難しいため、例えば、舗装工事に供されるアスファルト合材の製造・出荷時の適正温度(約160~170℃程度)に対し、アスファルト合材の性状に影響を及ぼさない範囲で、かつ保管時間等に応じて予想される温度低下分を見越してその分だけ予め高温にて(例えば、10~20℃程度高温にて)アスファルト合材を製造しておき、その状態で貯蔵容器1に収容するようにしておけば、より好適にアスファルト合材を保管可能となる。
【0058】
続いて、前記アスファルト合材製造工場17のアスファルトプラント18にて製造したアスファルト合材を遠隔地の舗装現場19a、19bに搬送・供給する場合について説明する。先ず、前記アスファルトプラント18にて製造直後の高温で軟化状態にあるアスファルト合材を、投入ゲート5を開放した状態の前記貯蔵容器1に収容後、投入ゲート5を閉鎖して密閉し、ガス充填口8より不活性ガスを貯蔵容器1(容器本体2)内に充填しておく。次いで、前記貯蔵容器1を搬送車両21の荷台に積載して出荷し、前記舗装現場19a、19bからは比較的近傍に位置する前記サテライトサイト20の保管庫23内に容器ごと搬入して保温状態で一時的に保管しておく。
【0059】
そして、前記各舗装現場19a、19bにて舗装工事をする際には、先ず、前記保管庫23に保管しておいた前記貯蔵容器1の温度センサ9の検出値や、酸素検知手段10の検知結果(酸素検知剤14の色)から、貯蔵容器1内のアスファルト合材が、舗装工事に供されるアスファルト合材の製造・出荷時の適正温度である約160~170℃に維持されていること、並びに酸化劣化の抑えられた好適な状態(無酸素下或いは低酸素下)で保管されていることを確認した上で、前記貯蔵容器1ごと搬送車両21に積載して舗装現場19aへと搬送・供給し(図中A)、または前記貯蔵容器1からアスファルト合材を取り出した後、搬送車両21に直接積載し、必要に応じて養生シートで覆うなどの保温対策を図りながら舗装現場19bへと搬送・供給する(図中B)。そして、前記各舗装現場19a、19bでは、搬送・供給されたアスファルト合材を所定の層厚に敷き均した上で、転圧機22にて転圧して舗装処理を行う。
【0060】
このとき、前記サテライトサイト20の保管庫23から各舗装現場19a、19bまでは比較的近い位置関係にあるため短時間で搬送でき、図中Aのように、アスファルト合材を気密性及び断熱性を有した貯蔵容器1に収容したまま舗装現場19aまで搬送する場合は勿論、図中Bのように、舗装現場19bでの取扱性等を優先して、貯蔵容器1からアスファルト合材を予め取り出して搬送車両21の荷台に直接積載した状態で舗装現場19bまで搬送する場合であっても、アスファルト合材は温度低下、酸化劣化をさほど来すようなことはなく、舗装工事に適した性状を維持したまま各舗装現場19a、19bまで供給することができる。
【0061】
一方、前記保管庫23に保管しておいた前記貯蔵容器1の温度センサ9の検出値が前記適正温度から外れておれば(例えば、160℃よりも低ければ)、前記サテライトサイト20内に備えた前記誘導加熱装置24に前記貯蔵容器1をかけて誘導加熱処理を行う。そして、前記温度センサ9の検出値を確認しながら前記貯蔵容器1内のアスファルト合材を前記適正温度範囲に収まるように再加熱した後、前記同様に、搬送車両21に貯蔵容器1ごと、或いは貯蔵容器1から取り出したアスファルト合材を直接積載し、各舗装現場19a、19bまで搬送・供給する。
【0062】
また、前記貯蔵容器1の容器本体2内に前記酸素除去手段16の酸素除去能力を超える量の酸素が入り込むなどして、前記貯蔵容器1の酸素検知手段10の検知結果から、容器本体2内にアスファルト合材の性状に悪影響を及ぼす程度の量(濃度)の酸素が存在していることが確認された場合には、酸化劣化が進んだ可能性があるものと見なした上で、現物を確認しながら使用の可否を慎重に判断する。
【0063】
このように、本発明のアスファルト合材の供給方法によれば、基礎工事や投入用エレベータ等の付属設備を要する貯蔵サイロや、ヒータ設備を具備した貯蔵容器などは用いず、ヒータ設備を有しない貯蔵容器1と、前記貯蔵サイロに代えてテント倉庫タイプ等のシンプルかつ低廉な保管庫23を用いるようにしたので、比較的採用もしやすくてアスファルトプラント18から遠隔地の舗装現場19a、19bへも好適にアスファルト合材を供給することが可能となる。
【0064】
なお、本実施例では、比較的遠隔地の舗装現場19a、19bへアスファルト合材を搬送・供給する場合を例示したが、必ずしもこれに限定されるものではなく、アスファルト合材製造工場17から近傍の舗装現場へアスファルト合材を直接(サテライトサイト20を介さずに)供給する場合においても、前記貯蔵容器1内にアスファルト合材を収容し、不活性ガスを充填した上で搬送・供給するようにしてもよい。その場合でも、前記同様に、温度低下や酸化劣化の軽減が期待できる上、搬送中の臭気や粉塵の飛散も抑えられ、周辺環境への負荷を軽減できて好ましいものとなる。
【0065】
また、従来、各舗装現場からアスファルト合材製造工場に出荷要請が集中した場合、多くの搬送車両がアスファルト合材製造工場にてアスファルト合材の製造・出荷待ちを余儀なくされていたものの、本発明によれば、製造したアスファルト合材を保管庫23内に一時的に保管しておくことができるため、例えば、アスファルト合材製造工場17の空いた時間に予めある程度余分にアスファルト合材を製造し、保管庫23内に搬入して保温・貯蔵しておくようにすれば、上記のようなアスファルト合材製造工場17でのアスファルト合材の製造・出荷待ちをする搬送車両21を減らすことが可能となる。
【0066】
このとき、アスファルト合材製造工場17では、アスファルトプラント18の余裕を持った運転が可能となると共に、間欠運転を減らせることで運転効率を高められて省エネ効果も期待できる。また、各舗装現場19a、19bに対しては近傍に位置する保管庫23から保管中のアスファルト合材を即納できるようになり、例えば緊急の出荷要請があった場合にも柔軟に対応可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は、アスファルトプラントで製造されるアスファルト合材を舗装現場に供給する場合に広く利用できる。
【符号の説明】
【0068】
1…貯蔵容器 2…容器本体(貯蔵容器)
8…ガス充填口 9…温度センサ
10…酸素検知手段 16…酸素除去手段
17…アスファルト合材製造工場 18…アスファルトプラント
19a、19b…舗装現場 20…サテライトサイト
21…搬送車両 22…転圧機
23…保管庫 24…誘導加熱装置
25…空調設備(保温手段)