(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】自動運転制御方法及び自動運転制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 30/14 20060101AFI20241121BHJP
B60W 40/04 20060101ALI20241121BHJP
B60W 40/06 20120101ALI20241121BHJP
B60W 40/105 20120101ALI20241121BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241121BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B60W30/14
B60W40/04
B60W40/06
B60W40/105
B60W60/00
G08G1/16 D
(21)【出願番号】P 2021003515
(22)【出願日】2021-01-13
【審査請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】110002468
【氏名又は名称】弁理士法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大澤 丈明
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-079232(JP,A)
【文献】特開2019-156270(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60W 10/00-10/30
30/00-60/00
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周辺状況に応じて自車両の走行を制御する自動運転制御方法であって、
前記自車両の走行路上の車両交差領域を検出し、
前記車両交差領域において前記自車両の走行路に交錯する可能性があると推定される推定交錯車両を検出するための推定交錯車両検出処理を実行し、
前記推定交錯車両を検出すると、前記自車両を所定の目標地点に移動させる交錯防止処理を実行し、
前記交錯防止処理では、
前記推定交錯車両の検出タイミング及び検出位置に基づいて、前記目標地点を前記推定交錯車両による交錯行動の実行のための時間的猶予が無くなる位置に設定
し、
前記自車両が現在位置から前記目標地点に到達するまでの区間における自車両車速を、前記推定交錯車両が検出されない場合に設定される基本目標車速よりも大きい補正目標車速に設定し、
前記検出タイミングを基点として、該推定交錯車両が前記検出位置から前記交錯行動を開始する行動開始タイミングまでの時間を処理猶予時間として演算し、
前記処理猶予時間内に前記自車両が前記目標地点に到達するように、前記補正目標車速を演算する、
自動運転制御方法。
【請求項2】
周辺状況に応じて自車両の走行を制御する自動運転制御方法であって、
前記自車両の走行路上の車両交差領域を検出し、
前記車両交差領域において前記自車両の走行路に交錯する可能性があると推定される推定交錯車両を検出するための推定交錯車両検出処理を実行し、
前記推定交錯車両を検出すると、前記自車両を所定の目標地点に移動させる交錯防止処理を実行し、
前記交錯防止処理では、
前記推定交錯車両の検出タイミング及び検出位置に基づいて、前記目標地点を前記推定交錯車両による交錯行動の実行のための時間的猶予が無くなる位置に設定し、
前記自車両が現在位置から前記目標地点に到達するまでの区間における自車両車速を、前記推定交錯車両が検出されない場合に設定される基本目標車速よりも大きい補正目標車速に設定し、
さらに、前記自車両の走行路が前記推定交錯車両の走行路に対する優先走行路であるか否かを判定し、
該判定の結果が肯定的であると、前記推定交錯車両検出処理を実行し、
該判定の結果が否定的であると、前記自車両の車速を前記基本目標車速に維持する、
自動運転制御方法。
【請求項3】
周辺状況に応じて自車両の走行を制御する自動運転制御方法であって、
前記自車両の走行路上の車両交差領域を検出し、
前記車両交差領域において前記自車両の走行路に交錯する可能性があると推定される推定交錯車両を検出するための推定交錯車両検出処理を実行し、
前記推定交錯車両を検出すると、前記自車両を所定の目標地点に移動させる交錯防止処理を実行し、
前記交錯防止処理では、
前記推定交錯車両の検出タイミング及び検出位置に基づいて、前記目標地点を前記推定交錯車両による交錯行動の実行のための時間的猶予が無くなる位置に設定し、
前記推定交錯車両検出処理では、
前記車両交差領域内において、前記自車両と並走する並走車両と交錯する可能性がある他車両をさらに前記推定交錯車両として検出する、
自動運転制御方法。
【請求項4】
請求項
1又は2に記載の自動運転制御方法であって、
前記交錯防止処理では、前記補正目標車速の上限を、前記自車両の走行路に設定される法定速度、及び所定の加速度制限値の少なくとも何れか一方に基づいて設定する、
自動運転制御方法。
【請求項5】
周辺状況に応じて自車両の走行を制御する自動運転制御装置であって、
前記自車両の走行路上の車両交差領域を検出し、
前記車両交差領域において前記自車両の走行路に交錯する可能性があると推定される推定交錯車両を検出するための推定交錯車両検出処理を実行し、
前記推定交錯車両を検出すると、前記自車両を所定の目標地点に移動させる交錯防止処理を実行し、
前記交錯防止処理では、
前記推定交錯車両の検出タイミング及び検出位置に基づいて、前記目標地点を前記推定交錯車両による交錯行動の実行のための時間的猶予が無くなる位置に設定
し、
前記自車両が現在位置から前記目標地点に到達するまでの区間における自車両車速を、前記推定交錯車両が検出されない場合に設定される基本目標車速よりも大きい補正目標車速に設定し、
前記検出タイミングを基点として、該推定交錯車両が前記検出位置から前記交錯行動を開始する行動開始タイミングまでの時間を処理猶予時間として演算し、
前記処理猶予時間内に前記自車両が前記目標地点に到達するように、前記補正目標車速を演算する、
自動運転制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動運転制御方法及び自動運転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、前方交差点において自車両と交錯可能性のある他車両に対して、自車両が非優先車両の場合、該他車両が交差点を通過してから自車両が該交差点を通過するように自車両の制動制御を実行する車両制御装置が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、特定の車両の高リスクな交錯行動(無理な右折又は直進など)に起因して、交差点や合流路における車両同士の接触が引き起こされるシーンも想定される。しかしながら、特許文献1の制御では、このような高リスクな交錯行動に対して対処することができないという問題がある。
【0005】
したがって、本発明の目的は、交差領域内において他車両の高リスクな交錯行動の実行を抑制することのできる自動運転制御方法及び自動運転制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のある態様によれば、周辺状況に応じて自車両を所定の車速を制御する自動運転制御方法が提供される。この自動運転制御方法では、自車両の走行路上の車両交差領域を検出し、車両交差領域において自車両の走行路に交錯する可能性があると推定される推定交錯車両を検出する推定交錯車両検出処理を実行する。そして、推定交錯車両を検出すると、自車両を所定の目標地点に移動させる交錯防止処理を実行する。特に、この交錯防止処理では、推定交錯車両の検出タイミング及び検出位置に基づいて、上記目標地点を推定交錯車両による交錯行動の実行のための時間的猶予が無くなる位置に設定する。また、交錯防止処理では、検出タイミングを基点として、推定交錯車両が検出位置から交錯行動を開始する行動開始タイミングまでの時間を処理猶予時間として演算し、処理猶予時間内に自車両が前記目標地点に到達するように、補正目標車速を演算する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、交差領域内において他車両の高リスクな交錯行動の実行を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態に適用される車両制御システムの構成を説明するブロック図である。
【
図2】
図2は、本実施形態による自動運転制御方法を説明するフローチャートである。
【
図3】
図3は、推定交錯車両検出処理の詳細を説明するフローチャートである。
【
図4】
図4は、交錯防止処理の詳細を説明するフローチャートである。
【
図5】
図5は、本実施形態の自動運転制御方法が適用される具体的シーンの第1の例を説明する図である。
【
図6】
図6は、本実施形態の自動運転制御方法が適用される具体的シーンの第2の例を説明する図である。
【
図7】
図7は、本実施形態の自動運転制御方法が適用される具体的シーンの第3の例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して、本発明の各実施形態について説明する。なお、本明細書における「自動運転」は、車両のドライバによる運転操作の一部を支援する車両の動作制御(自動運転レベル=1~4)、及びドライバによる操作無しの車両の動作制御(自動運転レベル=5)の双方を含む概念である。
【0010】
[システム構成の説明]
図1は、本実施形態による自動運転制御方法を実行するための車両制御システム10の構成を説明する図である。
【0011】
図示のように、車両制御システム10は、外部センサ1と、内部センサ2と、ナビゲーションシステム3と、通信インターフェース(以下、「通信IF4」と称する)と、道路構造データベース(以下、「道路構造DB5」と称する)と、車体サイズデータベース(以下、単に「車体サイズDB6」と称する)と、アクチュエータ7と、コントローラ20と、を備える。この車両制御システム10は、本実施形態の自動運転制御方法を実行すべき対象となる車両(以下では、「自車両α」と称する)に搭載される。
【0012】
外部センサ1は、自車両αの周辺状況を検出する検出機器である。特に、外部センサ1は、車載カメラ1a、及びレーダー1bを含む。
【0013】
車載カメラ1aは、自車両αの周辺を撮像する撮像機器である。車載カメラ1aは、例えば、自車両αのフロントガラスの車室内側に設けられる。なお、車載カメラ1aは、単眼カメラ又はステレオカメラにより構成される。車載カメラ1aは、撮像した自車両αの周辺画像をコントローラ20へ出力する。
【0014】
レーダー1bは、電波を利用して自車両αの外部に存在する他の車両などの物体を検出する。電波は、例えばミリ波である。より詳細には、レーダー1bは、電波を自車両αの周囲に送信し、物体で反射された電波を受信して物体を検出する。レーダー1bは、例えば物体までの距離又は方向を物体情報(特に、周辺車両情報)として出力することができる。レーダー1bは、検出した周辺車両検出データをコントローラ20へ出力する。なお、レーダー1bに代えて、又はレーダー1bとともに、光を利用して自車両αの外部の物体を検出するライダー(LIDER:Laser Imaging Detection and Ranging)を外部センサ1として搭載しても良い。
【0015】
内部センサ2は、自車両αの走行状態に応じた各種情報を検出する検出器である。例えば、内部センサ2は、自車両αの車速(以下では、「自車両車速Vα」とも称する)を検出する車速センサ及び自車両αの加速度を検出する加速度センサ等を含む。
【0016】
ナビゲーションシステム3は、自車両αのドライバ等の乗員によって地図上に設定された目的地までの走行ルート情報を求め、コントローラ20に出力する装置である。より具体的に、ナビゲーションシステム3は、GPS(Global Positioning System)によって測定された自車両αの位置情報と所定の地図データベースの地図情報とに基づいて、自車両αに設定される走行ルートを走行ルート情報として求める。
【0017】
通信IF4は、所定の外部サーバから自車両αの走行に必要な情報及び乗員が指摘する情報等を受信してコントローラ20に送信するための各種通信プロトコルにより構成される。通信IF4は、例えば、コントローラ20と他車両との通信(車車間通信)を可能とするV2V(Vehicle to Vehicle)、コントローラ20と信号機等のインフラ設備との通信(路車間通信)を可能とするV2I(Vehicle to Infrastructure)、及びコントローラ20と所定の外部サーバ(クラウドを含む)との通信を可能とするV2N(Vehicle to Network)などにより実現される。
【0018】
道路構造DB5は、上述の地図情報に含まれている各道路に対して、それぞれ車線数、路肩の大きさ、交差点の有無などの道路構造に関する情報(以下、単に「道路構造情報」とも称する)を紐づけて記憶する。車体サイズDB6は、自車両αを含む各種車両において想定される車種と当該車種に応じた車体サイズ(車長及び車幅など)に関する情報(以下、単に「車体サイズ情報」とも称する)を紐づけて記憶する。なお、道路構造DB5又は車体サイズDB6の機能は、コントローラ20の外部の記憶領域により実現されても良いし、内部メモリにより実現されても良い。
【0019】
アクチュエータ7は、自車両αをコントローラ20からの指令に応じた走行状態に操作するための装置である。特に、アクチュエータ7は、駆動アクチュエータ7a、ブレーキアクチュエータ7b、及びステアリングアクチュエータ7cを含む。
【0020】
駆動アクチュエータ7aは、自車両αの駆動力を調節するための装置である。特に、自車両αが走行駆動源としてエンジンを搭載している場合には、駆動アクチュエータ7aはエンジンに対する空気の供給量(スロットル開度)を調節するスロットルアクチュエータなどで構成される。一方、自車両αが走行駆動源としてモータを搭載しているハイブリッド車両又は電気自動車である場合には、駆動アクチュエータ7aはモータに供給する電力を調節可能な回路(インバータ及びコンバータなど)などで構成される。
【0021】
ブレーキアクチュエータ7bは、自車両αに作用する制動力を調節する装置である。ブレーキアクチュエータ7bは、自車両αの制動力を摩擦力によって得るための構成(ディスクブレーキなど)、及び/又は走行駆動源として搭載されるモータの回生力により得るための構成(回生ブレーキ)により実現される。
【0022】
ステアリングアクチュエータ7cは、電動パワーステアリングシステムのうちステアリングトルクを制御するアシストモータなどで構成される。
【0023】
自動運転制御装置としてのコントローラ20は、中央演算装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RΑM)、及び入出力インターフェース(I/Oインターフェース)を備えたコンピュータで構成される。そして、コントローラ20は、後述する自動運転制御方法における各処理が実行可能となるようにプログラムされている。
【0024】
コントローラ20の機能は、自車両αの運転制御に関する主要処理を行うADAS(Advanced Driver Assistance Systems)/AD(Autonomous Driving)コントローラなどにより実現される。なお、コントローラ20の機能は、これ以外に、モータコントローラ、ECU(Engine Control Unit)、又は車両制御ユニット(VCU:Vehicle Control Unit)などの自車両αに搭載される任意のコンピュータにより実現されても良い。また、コントローラ20は一台のコンピュータハードウェアにプログラムを実装させることで構成されていても良いし、複数台のコンピュータハードウェアに各処理を分散させたプログラムを実装して、当該複数のコンピュータハードウェアを統合して各実施形態の自動運転制御方法を実行する構成としても良い。
【0025】
コントローラ20は、外部センサ1、内部センサ2、ナビゲーションシステム3、通信IF4、道路構造DB5、及び車体サイズDB6から受信する各種情報を入力として本実施形態の自動運転制御方法を実行するための各種演算を行い、得られた演算結果に基づいてアクチュエータ7を操作する。
【0026】
特に、コントローラ20は、自車両車速Vαが所定の基本目標車速Vα_bt又は補正目標車速Vα_ctをとるようにアクチュエータ7を操作して当該自車両αを加減速させる。なお、基本目標車速Vα_btは、自車両αの走行に関連する走行関連情報に基づいて定められる自車両車速Vαの基本的な目標値である。例えば、基本目標車速Vα_btは、自車両αと他車両βである先行車両に適切な車間距離で追従する観点、自車両車速Vαを各道路に設定された法定速度以下とするなどの法令上の要請を守る観点、及び/又は所定の停止予定地点(停止線など)における停止の際に適切な減速度で自車両αを停止させる観点などに基づいて適切な値(特に、走行状態に応じた可変値)に設定される。さらに、本実施形態の基本目標車速Vα_btの概念には、後述する車両交差領域Ctにおいて、推定交錯車両β1の走行路L2が自車両αの走行路L1に対して優先道路に設定されている場合(自車両αが非優先車両である場合)に、推定交錯車両β1を検出すると自車両αを減速させる公知の制御(例えば、上記特許文献1に開示されている制御)において設定される自車両車速Vαの目標値も含まれる。なお、補正目標車速Vα_ctについては後述する。
【0027】
そして、後に詳細に説明するように、本実施形態のコントローラ20は、自車両αの周辺状況(特に、推定交錯車両β1の挙動)に応じて、基本目標車速Vα_bt又は補正目標車速Vα_ctを設定して自車両αの走行を制御する。以下では、その詳細を説明する。
【0028】
[制御の詳細]
図2は、本実施形態の自動運転制御方法を説明するフローチャートである。なお、コントローラ20は、以下に説明する処理を所定の制御周期ごとに繰り返し実行する。また、本実施形態では、
【0029】
先ず、ステップS100において、コントローラ20は、各種入力情報を取得する。具体的に、コントローラ20は、外部センサ1で検出される情報(特に、周辺車両の情報)、内部センサ2で検出される各種情報、ナビゲーションシステム3により得られる走行ルート情報、通信IF4により得られる各種情報、道路構造DB5からの道路構造情報、及び車体サイズDB6からの車体サイズ情報を入力情報として取得する。
【0030】
ステップS200において、コントローラ20は、自車両αの走行路L1に車両交差領域Ctが存在するか否かを判定する。ここで、車両交差領域Ctとは、交差点及び合流部分などの自車両αの走行路L1と、当該走行路L1とは異なる2以上の車両用の走行路L2と、が交錯する領域を意味する。
【0031】
より詳細には、コントローラ20は、自車両αの現在位置Pα及び走行ルート情報などに基づいて、当該現在位置Pαに対して所定距離以内の範囲に車両交差領域Ctが存在するか否かを判定する。なお、この所定距離は、適宜、現実的にステップS300以降の処理を実行する必要があると考えられる程度の大きさに設定することができる。言い換えると、所定距離は、自車両αの現在位置Pαに対して離れすぎている車両交差領域Ctを除外する観点から適切な値に設定される。
【0032】
ステップS300において、コントローラ20は、自車両αが優先車両である否かを判定する。具体的に、コントローラ20は、道路構造DB5の道路構造情報などを参照して、走行路L1が走行路L2に対して優先道路に設定されている場合に自車両αが優先車両であると判断し、そうでない場合に自車両αが優先車両ではない(非優先車両である)と判断する。そして、コントローラ20は、自車両αが優先車両であると判断すると、ステップS400の推定交錯車両検出処理を実行する。
【0033】
図3は、推定交錯車両検出処理(ステップS400)の詳細を説明するフローチャートである。
【0034】
ステップS410において、コントローラ20は、自車両αの現在位置Pα及び自車両車速Vα(特に、基本目標車速Vα_bt)に基づいて、自車両αが車両交差領域Ctに到達すると予測される時刻としての自車両到達時刻tαを演算する。具体的に、コントローラ20は、自車両αの現在位置Pαから車両交差領域Ctまでの距離に基づいて自車両到達時刻tαを求める。
【0035】
ステップS420において、コントローラ20は、自車両到達時刻tαに基づいて、第1検出対象領域R1を演算する。第1検出対象領域R1は、自車両車速Vαを基本目標車速Vα_btに設定した前提とした場合に、該自車両αが現在位置Pαから車両交差領域Ctに到達するまでの時間内において、車両交差領域Ct内の走行路L1に対する交錯行動を開始する可能性のある他車両βを推定交錯車両β1として絞り込む観点から適切な範囲に設定される。なお、本実施形態において交錯行動とは、車両交差領域Ct内において走行路L2を走行する他車両βが、自車両αの走行路L1の一部を跨いで走行する行為(交差点の直線又は右折など)を意味する。
【0036】
ステップS430において、コントローラ20は、第1検出対象領域R1に他車両βが存在するか否かを判定する。コントローラ20は、当該判定結果が肯定的である場合にステップS470の処理に移行し、否定的である場合にステップS440の処理に移行する。
【0037】
特に、コントローラ20は、第1検出対象領域R1に他車両βが存在すると判断した場合に、当該他車両βの検出時刻(以下、「交錯車両検出タイミングtβ1_1」とも称する)及びその検出位置(以下、「交錯車両検出位置Pβ1_1」とも称する)を、所定の記憶領域に記憶する。
【0038】
ステップS440において、コントローラ20は、並走車両β2が存在するか否かを判定する。ここで、並走車両β2とは、自車両αの走行路L1又はこれに対して隣接する隣接走行路であって、自車両αの走行方向と同一の方向に走行する他車両βを意味する。
【0039】
具体的に、コントローラ20は、外部センサ1からの情報(特にレーダー1bによる検出結果又は車載カメラ1aで取得される画像)を参照して、現在位置Pαから所定範囲における並走車両β2の存在の有無を判断する。なお、この所定範囲は、自車両αの現在位置Pα又は車両交差領域Ctに対して離れすぎている他車両βを並走車両β2の候補から除外する観点から適切な値に設定される。そして、コントローラ20は、当該判定結果が肯定的である場合にステップS450の処理に移行し、否定的である場合にステップS480の処理を実行する。
【0040】
ステップS450において、コントローラ20は、第2検出対象領域R2を演算する。第2検出対象領域R2は、並走車両β2が車両交差領域Ct内において上記推定交錯車両β1と接触する可能性がある程度に当該車両交差領域Ctに近づいている並走車両β2を絞り込む観点から適切な範囲に設定される。
【0041】
ステップS460において、コントローラ20は、並走車両β2が第2検出対象領域R2内に存在するか否かを判定する。具体的に、コントローラ20は、外部センサ1からの情報(特にレーダー1bによる検出結果又は車載カメラ1aで取得される画像)を参照して、第2検出対象領域R2内に並走車両β2が存在するか否かを判定する。そして、コントローラ20は、当該判定結果が肯定的である場合にステップS470の処理に移行し、否定的である場合にステップS480の処理に移行する。
【0042】
ステップS470において、コントローラ20は、処理要求フラグfを「1」に設定し、ステップS500の処理に進む。一方、ステップS480においては、処理要求フラグfを「0」に設定し、ステップS500の処理に進む。
【0043】
図2に戻り、ステップS500において、コントローラ20は、推定交錯車両β1が存在するか否かを判定する。具体的に、コントローラ20は、処理要求フラグfが「1」に設定されている場合に推定交錯車両β1が検出されたと判断し、処理要求フラグfが「0」に設定されている場合に推定交錯車両β1は検出されないと判断する。コントローラ20は、推定交錯車両β1が存在すると判断すると、ステップS600の交錯防止処理を実行する。
【0044】
図4は、交錯防止処理の詳細を説明するフローチャートである。
【0045】
図示のように、交錯防止処理では、先ず、ステップS610において、コントローラ20は、推定交錯車両β1の交錯車両検出タイミングtβ1_1、及び交錯車両検出位置Pβ1_1を読み出す。
【0046】
ステップS620において、コントローラ20は、推定交錯点P
cpを演算する。具体的に、コントローラ20は、交錯車両検出タイミングtβ
1_1及び交錯車両検出位置Pβ
1_1に基づいて、適宜、推定交錯車両β1の車速(以下、「推定交錯車両車速Vβ
1」とも称する)などの必要なパラメータを参照しつつ、推定交錯車両β1が自車両αの走行路L1に交錯すると予測される車両交差領域Ct内の地点(
図5等参照)を推定交錯点P
cpとして演算する。
【0047】
ステップS630において、コントローラ20は、交錯車両検出タイミングtβ1_1、及び交錯車両検出位置Pβ1_1に基づいて、推定交錯車両β1が交錯行動を開始すると推定される行動開始タイミングtβ1_2を演算する。
【0048】
具体的に、コントローラ20は、道路構造情報(特に、車両交差領域Ctにおける信号表示の切り替わりタイミングに関する情報を含む)、及び推定交錯車両β1に係る車体サイズ情報などを参照して、当該推定交錯車両β1が交錯行動を開始すると推定される位置(以下、「行動開始位置Pβ1_2」とも称する)を求める。さらに、コントローラ20は、交錯車両検出タイミングtβ1_1に、上記交錯車両検出位置Pβ1_1から行動開始位置Pβ1_2までの距離を推定交錯車両車速Vβ1で除して値を加算して行動開始タイミングtβ1_2を求める。
【0049】
次に、ステップS640において、コントローラ20は、行動開始タイミングtβ1_2から交錯車両検出タイミングtβ1_1を減算して得られた値を処理猶予時間Δtgrとして演算する。すなわち、処理猶予時間Δtgrは、推定交錯車両β1が検出されてから交錯行動が開始されるまでの猶予時間である。
【0050】
ステップS650において、コントローラ20は、交錯車両検出タイミングtβ1_1及び交錯車両検出位置Pβ1_1に基づいて、目標地点Pα_tを演算する。ここで、目標地点Pα_tとは、推定交錯車両β1による交錯行動の実行のための時間的猶予が無くなる位置として定義される。より具体的には、目標地点Pα_tは、推定交錯車両β1から見て、無理に交錯行動を実行すれば車両交差領域Ct内において自車両α又は並走車両β2と接触する可能性があると認識されるか、或いは客観的に接触すると判断できる程度に車両交差領域Ctに近い位置に設定される。
【0051】
例えば、コントローラ20は、以下の(I)~(III)のアルゴリズムにしたがい、推定交錯車両β1による交錯行動の実行のための時間的猶予が無くなる目標地点Pα_tを演算することができる。
【0052】
(I)道路構造情報及び推定交錯車両β1に係る車体サイズ情報などを参照しつつ、推定交錯車両β1による交錯行動の開始(行動開始タイミングtβ1_2)から完了までの時間(以下、「交錯行動実行時間」とも称する)を推定する。
【0053】
(II)自車両車速Vα(特に、基本目標車速Vα_bt)を前提として、未知数として仮定した目標地点Pα_tから推定交錯点Pcpまでの自車両αの走行時間を求める。
【0054】
(III)上記走行時間が交錯行動実行時間未満となるように未知数である目標地点Pα_tを定める。
【0055】
このようなアルゴリズムで定められた目標地点Pα_tに自車両αが存在すると、推定交錯車両β1による交錯行動の実行中に自車両αが推定交錯点Pcpに到達することとなる。すなわち、この目標地点Pα_tは、推定交錯車両β1による交錯行動の実行のための時間的猶予が無くなる位置と言える。
【0056】
なお、(III)の条件を満たしつつも、車両交差領域Ctに過度に近い位置に設定されないように目標地点Pα_tを定めることが好ましい。また、コントローラ20は、求めた自車両αが目標地点Pα_tに到着する推定されるタイミング(以下、「推定目標到達タイミングtα_t」とも称する)を求め、目標地点Pα_tと併せて所定の記憶領域に記憶させる。
【0057】
ステップS660において、コントローラ20は、交錯車両検出タイミングtβ1_1、処理猶予時間Δtgr、及び推定目標到達タイミングtα_tに基づいて、補正目標車速Vα_ctを定める。具体的に、コントローラ20は、交錯車両検出タイミングtβ1_1から推定目標到達タイミングtα_tまでの経過時間(以下、「制御継続時間区間[tβ1_1,tα_t]」とも称する)が上述の処理猶予時間Δtgr以下となるように、補正目標車速Vα_ctを求める。すなわち、補正目標車速Vα_ctは、推定交錯車両β1が交錯行動を開始する前に自車両αを目標地点Pα_tに到着させるように自車両車速Vαを調節する観点から定められる。したがって、補正目標車速Vα_ctは、制御継続時間区間[tβ1_1,tα_t]において通常設定される基本目標車速Vα_btよりも大きい値に設定される。一方、本実施形態において、補正目標車速Vα_ctは、制御継続時間区間[tβ1_1,tα_t]の外においては基本目標車速Vα_btと同一の値とされる。これにより、自車両車速Vαが基本目標車速Vα_btから変更される区間を、自車両αが目標地点Pα_tに到着するまでの必要なシーンに限ることができる。
【0058】
一方で、コントローラ20は、補正目標車速Vα_ctを基本目標車速Vα_btよりも大きい値に設定しつつも、自車両車速Vαが走行路L1に設定されている法定速度以下となるように、補正目標車速Vα_ctの上限を定めることが好ましい。また、自車両αの加速度が乗員又は貨物を保護する観点から定まる一定値以下となるように補正目標車速Vα_ctの上限を定めることが好ましい。特に、上述の自車両車速Vαを法定速度以下とすること、及び自車両αの加速度を一定値以下とすることの双方を満足するように補正目標車速Vα_ctの上限を定めることが特に好ましい。さらに、本実施形態のコントローラ20は、このような観点で定まる補正目標車速Vα_ctの上限に基づく制限により、自車両αを目標地点Pα_tに到着させることが可能な長さの制御継続時間区間[tβ1_1,tα_t]を確保できない場合には、補正目標車速Vα_ctを基本目標車速Vα_btと同一の値に設定する。これにより、処理猶予時間Δtgr内に交錯防止処理を完了させることができないシーンにおいては、制御継続時間区間[tβ1_1,tα_t]の内外にかかわらず通常の基本目標車速Vα_btに基づいて自車両αを走行を制御することができる。
【0059】
そして、コントローラ20は、補正目標車速Vα_ctを演算すると、ステップS800の処理に進む。
【0060】
一方で、
図2に戻り、コントローラ20は、ステップS200、ステップS300、及びステップS500の各判定の少なくとも一つの判定結果が否定的であると場合には、ステップS700の基本処理を実行する。
【0061】
ステップS700において、コントローラ20は、自車両車速Vαを既に説明した基本的な目標値(補正目標車速Vα_ctを定める観点以外の観点で定まる目標値)である基本目標車速Vα_btに維持する。
【0062】
そして、ステップS800において、コントローラ20は、自車両車速VαがステップS600で設定された補正目標車速Vα_ct、又はステップS700で設定された基本目標車速Vα_btに一致するようにアクチュエータ7を操作する。
【0063】
次に、
図5~
図7を参照して本実施形態の自動運転制御方法を具体的なシーンに適用した場合における制御結果の例を説明する。なお、各図においては参考のため、上記制御に係る各タイミング及び時間区間を破線により示している。
【0064】
図5は、上記自動運転制御方法が適用される第1の具体例を説明する図である。特に、
図5の例においては、上述した制御ロジックを構成する各要素を以下のように割り当てることで上記自動運転制御方法を適用することができる。
【0065】
・走行路L1:自車両αの走行車線
・走行路L2:自車両αの走行車線に対する対向車線
・車両交差領域Ct:自車両αの走行車線と当該走行車線に交差する交差車線の交差領域(交差点)
・推定交錯車両β1:対向車線を走行する他車両β
・交錯行動:推定交錯車両β1による右折
【0066】
図5に示す例においては、上述したステップS430のYes、ステップS470、ステップS500のYes、ステップS600、及びステップS800で説明したロジックにしたがい、自車両αが現在位置Pαから目標地点Pα
_tに到達するまでの間は、自車両車速Vαの目標値が補正目標車速Vα
_ctに設定されることで自車両αが加速される。これにより、推定交錯車両β1に対して右折の実行が間に合わない程度に自車両αが交差点に近づいていることを認識させ、推定交錯車両β1の右折行為の実行を断念させることができる。
【0067】
図6は、上記自動運転制御方法が適用される第2の具体例を説明する図である。特に、
図6の例においては、上述した制御ロジックを構成する各要素を以下のように割り当てることで上記自動運転制御方法を適用することができる。
【0068】
・走行路L1:自車両αの走行車線
・走行路L2:自車両αの走行車線に対して合流する合流元車線
・車両交差領域Ct:自車両αの走行車線と当該走行車線に合流する合流車線の合流領域
・推定交錯車両β1:合流元車線上を走行する他車両β
・交錯行動:推定交錯車両β1による自車両αの走行車線への合流
【0069】
図6に示す例においても、
図5の例と同様のロジックにしたがい自車両αが制御される。これにより、推定交錯車両β1に対して合流の実行が間に合わない程度に自車両αが交差点に近づいていることを認識させ、推定交錯車両β1の合流行為の実行を断念させることができる。
【0070】
図7は、上記自動運転制御方法が適用される第3の具体例を説明する図である。特に、
図7の例においては、上述した制御ロジックを構成する各要素を以下のように割り当てることで上記自動運転制御方法を適用することができる。
【0071】
・走行路L1:自車両αの走行車線
・走行路L2:自車両αの走行車線に交差する交差車線
・車両交差領域Ct:自車両αの走行車線と上記交差車線とが交差する交差点
・並走車両β2:自車両αと同じ走行車線を走行する二輪車
・推定交錯車両β1:上記交差車線を走行する他車両β
・交錯行動:推定交錯車両β1による自車両αの走行車線を跨ぐ直進
【0072】
図7に示す例においては、ステップS430のNo、ステップS440のYes、ステップS450、ステップS450、ステップS460のYes、ステップS470、ステップS500のYes、ステップS600、及びステップS800で説明したロジックにしたがい、自車両車速Vαの目標値が補正目標車速Vα
_ctに設定されることで自車両αが加速される。
【0073】
これにより、推定交錯車両β1に対して交差点に対する直進が間に合わない程度に自車両αが交差点に近づいていることを認識させ、推定交錯車両β1の直進行動を断念させることができる。特に、
図7で示すシーンにおいては、並走車両β2である二輪車が車両交差領域Ctに比較的近いシーンにおいて自車両αがより交差点に近づくように制御される。このため、推定交錯車両β1が二輪車との間の距離を実際よりも長く錯覚することで、実際には二輪車が交錯の可能性がある程度に交差点に近づいているにもかかわらず、推定交錯車両β1が直進行動を開始してしまう事態を防止することができる。
【0074】
なお、
図5~
図7で説明した例は、本実施形態の自動運転制御方法を適用し得るシーンの例示であり、これらの例以外の種々のシーンにおいて当該自動運転制御方法を適用することが可能である。例えば、並走車両β2が存在する
図7の例では、並走車両β2が自車両αと同じ走行路L1を走行している例を示した。しかしながら、例えば、片側複数車線の道路などにおいて、自車両αと異なる車線を走行しつつ並走する並走車両β2が存在するシーンにおいても、本実施形態で説明した制御ロジックを同様に適用することができる。
【0075】
以上説明した本実施形態の構成及びそれによる作用効果を以下でまとめて説明する。
【0076】
本実施形態では、周辺状況に応じて自車両αの走行を制御する自動運転制御方法が提供される。この自動運転制御方法では、自車両αの走行路L1上の車両交差領域Ctを検出し(ステップS200のYes)、車両交差領域Ctにおいて自車両αの走行路L1に交錯する可能性があると推定される推定交錯車両β1を検出する推定交錯車両検出処理(ステップS400)を実行する。そして、推定交錯車両β1を検出すると、自車両αを所定の目標地点Pα_tに移動させる交錯防止処理(ステップS600)を実行する。
【0077】
さらに、交錯防止処理では、推定交錯車両β1の検出タイミング(交錯車両検出タイミングtβ1_1)及び検出位置(交錯車両検出位置Pβ1_1)に基づいて、目標地点Pα_tを推定交錯車両β1による交錯行動の実行のための時間的猶予が無くなる位置に設定する。
【0078】
これにより、交差点や合流部などの車両交差領域Ctにおいて自車両αの走行路L1に交錯する可能性のある推定交錯車両β1が存在する場合に、自車両αを目標地点Pα_tに移動させることで、当該推定交錯車両β1に交錯行動の実行ができないという認識を与えることができる。したがって、結果として、推定交錯車両β1による高リスクな交錯行動の実行を抑制することのできる制御ロジックが実現される。
【0079】
また、交錯防止処理では、自車両αが現在位置Pαから目標地点Pα_tに到達するまでの区間における自車両車速Vαを、推定交錯車両β1が検出されない場合に設定される基本目標車速Vα_btよりも大きい補正目標車速Vα_ctに設定する(ステップS660)。
【0080】
これにより、自車両αをより速やかに目標地点Pα_tに到達させ、推定交錯車両β1に交錯行動の実行させないように促すことができる。
【0081】
さらに、本実施形態の交錯防止処理では、交錯車両検出タイミングtβ1_1を基点として、該推定交錯車両β1が交錯車両検出位置Pβ1_1から交錯行動を開始する行動開始タイミングtβ1_2までの時間を処理猶予時間Δtgrとして演算する(ステップS640)。そして、処理猶予時間Δtgr内に自車両αが目標地点Pα_tに到達するように、補正目標車速Vα_ctを演算する。
【0082】
これにより、推定交錯車両β1が交錯行動を開始する前の段階で、自車両αを目標地点Pα_tにより確実に到達させるための具体的な制御ロジックが提供される。結果として、推定交錯車両β1による交錯行動が実際に始まる前の段階で、当該交錯行動の実行が許容されない程度に自車両αが車両交差領域Ctに近づいていることを認識させることができる。結果として、推定交錯車両β1による高リスクな交錯行動の抑止効果をより速やかに発揮させることができるとともに、推定交錯車両β1が交錯行動を始めた後にその中断を促す場合に比べて交通の流れに与える影響も低減することができる。
【0083】
さらに、自車両αの走行路L1が推定交錯車両β1の走行路L2に対する優先走行路(優先道路)であるか否かを判定する(ステップS300)。そして、判定の結果が肯定的であると、推定交錯車両検出処理を実行する(ステップS300のYes及びステップS400)。一方、判定の結果が否定的であると、自車両車速Vαを基本目標車速Vα_btに設定する(ステップS300のNo、ステップS700、及びステップS800)。
【0084】
これにより、自車両αが優先車両である場合には推定交錯車両検出処理(ステップS400)以下の処理が実行され、自車両αが非優先車両である場合には自車両車速Vαは基本目標車速Vα_btに設定されることとなる。これにより、自車両αが優先車両である場合に推定交錯車両β1が存在すると上記交錯防止処理が実行される(補正目標車速Vα_ctが設定される)一方、非優先車両である場合には、通常の基本目標車速Vα_btが設定されることとなる。すなわち、より適切なシーンにおいて交錯防止処理を実行するための具体的な制御ロジックが実現される。
【0085】
特に、上述のように、本実施形態の基本目標車速Vα_btは、車両交差領域Ctにおいて自車両αが非優先車両である場合に推定交錯車両β1を検出すると自車両αを減速させる処理を実現するように設定されている。このため、自車両αが非優先車両であり、推定交錯車両β1が検出される場合には自車両αを減速させることができ、車両交差領域Ct内における推定交錯車両β1との接触も回避することができる。
【0086】
さらに、本実施形態では、交錯防止処理において、補正目標車速Vα_ctの上限を、自車両αの走行路L1に設定される法定速度、及び所定の加速度制限値の少なくとも何れか一方に基づいて設定する。これにより、上述した自車両車速Vαの制御を実現しつつも、車速が制限される現実の状況をより適切に評価した上でこれに応じて自車両車速Vαを制限することのできる制御ロジックが実現される。
【0087】
また、推定交錯車両検出処理(ステップS400)では、車両交差領域Ct内において、自車両αと並走する並走車両β2と交錯する可能性がある他車両βをさらに推定交錯車両β1として検出する(ステップS440のYes、ステップS460のYes、及びステップS470)。
【0088】
これにより、車両交差領域Ct内において並走車両β2と推定交錯車両β1との間の接触が懸念される状況を特定した上で上記交錯防止処理を実行するための制御ロジックが実現される。すなわち、自車両αとは別の並走車両β2と他車両βの進路交錯が生じ得るシーンにおいても、自車両αを目標地点Pα_tに移動させて、推定交錯車両β1による交錯行動の実行を抑制することができる。したがって、例えば、自車両αが中型車両であって、並走車両β2が二輪車等の小型車両である場合に本実施形態の制御を実行することで、推定交錯車両β1が当該並走車両β2との間の距離感を錯覚して並走車両β2が近づいているにもかかわらず、無理に交錯行動を実行する事態の発生を防止することができる。
【0089】
また、本実施形態によれば、上記自動運転制御方法における各処理を実行可能にプログラムされた自動運転制御装置としてのコントローラ20が提供される。すなわち、上記自動運転制御方法を実行するための好適なコンピュータ構成が実現されることとなる。
【0090】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の適用例の一部を示したに過ぎず、本発明の技術的範囲を上記実施形態の具体的構成に限定する趣旨ではない。例えば、車車間通信により他車両βが交錯行動を実行する意図が無いことを事前に確認できる場合には、推定交錯車両β1の検出の有無にかかわらず、交錯防止処理を実行しない構成(基本目標車速Vα_btを維持する構成)を採用しても良い。
【0091】
なお、上記各実施形態で説明した自動運転制御方法をコンピュータであるコントローラ20に実行させるための自動運転制御プログラム、及び当該自動運転制御プログラムを記憶した記憶媒体も、本出願における出願当初の明細書等に記載された事項の範囲内に含まれる。
【符号の説明】
【0092】
1 外部センサ
1a 車載カメラ
1b レーダー
2 内部センサ
3 ナビゲーションシステム
4 通信インターフェース
5 道路構造DB
6 車体サイズDB
7 アクチュエータ
20 コントローラ