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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】オゾン発生装置およびオゾン発生方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 13/10 20060101AFI20241121BHJP
   A61L 9/015 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C01B13/10 Z
A61L9/015
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021022453
(22)【出願日】2021-02-16
(65)【公開番号】P2022124680
(43)【公開日】2022-08-26
【審査請求日】2023-11-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000128496
【氏名又は名称】株式会社オーク製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090169
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 孝
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】吉田 悠太
【審査官】廣野 知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/168350(WO,A1)
【文献】特開2017-116187(JP,A)
【文献】実開平06-019737(JP,U)
【文献】特表2005-523775(JP,A)
【文献】特開2021-001099(JP,A)
【文献】特開2012-034771(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 13/00-13/10
A61L 9/015
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線照射によりオゾン生成するエキシマランプと、
オゾン処理対象空間へ向けてオゾンを含むガスを放出させる送風機と、
前記オゾン処理対象空間の大きさに応じた位置でオゾン濃度を検出可能なオゾンセンサと、
設定された前記オゾン処理対象空間の大きさに応じて、前記エキシマランプを一定の点灯時間および消灯時間で周期的に点滅させ、前記送風機を一定の風量で運転させるオゾン発生動作を、継続して行わせる制御部とを備え、
前記制御部が、設定された前記オゾン処理対象空間が大きいほど、前記点灯時間が長く、前記消灯時間が短くなり、また、前記送風機の風量が連続的あるいは段階的に大きくなるように、前記点灯時間および消灯時間と、前記風量とを設定し、
前記オゾンセンサが、設定された前記点灯時間および前記消灯時間に従う前記エキシマランプの点滅周期よりも長い時間間隔で、オゾン濃度を検出することを特徴とするオゾン発生装置。
【請求項2】
前記エキシマランプが、前記送風機によるガスの流れの中に配置され、
前記制御部が、前記エキシマランプが、ランプ点灯からランプ表面温度最大となる前に消灯し、ランプ消灯からランプ表面温度最小となる前に点灯するように、前記点灯時間および消灯時間を設定することを特徴とする請求項1に記載のオゾン発生装置。
【請求項3】
前記エキシマランプが、172nmにピーク波長をもつ紫外線を放射し、
前記制御部が、前記エキシマランプのランプ点灯時とランプ消灯時でのランプ表面温度の変化が30%未満となるように、前記点灯時間および消灯時間と、前記風量とを設定することを特徴とする請求項1または2に記載のオゾン発生装置。
【請求項4】
前記制御部が、前記点灯時間を、0.1秒~1秒の範囲で設定し、前記消灯時間を、0.1秒~10秒の範囲で設定することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項5】
前記制御部が、所定の閾値を超えたオゾン濃度が検出されると、前記エキシマランプの点滅動作を一時的に中断する一方、前記送風機の運転を継続させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項6】
前記エキシマランプが、前記オゾン処理対象空間に向けてオゾンを含むガスを放出させる放出口および前記送風機の供給口それぞれと向かい合うように配置されたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のオゾン発生装置。
【請求項7】
作業者により設定されたオゾン処理対象空間の大きさに応じて、前記エキシマランプを一定の点灯時間および消灯時間で周期的に点滅させ、前記送風機を一定の風量で運転させるオゾン発生動作を、継続して行わせ、
設定された前記オゾン処理対象空間が大きいほど、前記点灯時間が長く、前記消灯時間が短くなり、また、前記送風機の風量が連続的あるいは段階的に大きくなるように、前記点灯時間および消灯時間と、前記風量とを設定し、
オゾンセンサによって、前記オゾン処理対象空間の大きさに応じた位置でオゾン濃度を検出するとともに、設定された前記点灯時間および前記消灯時間に従う前記エキシマランプの点滅周期よりも長い時間間隔で、オゾン濃度を検出し、
紫外線照射により生成されたオゾンを含むガスをオゾン発生装置からオゾン処理対象空間へ放出させることを特徴とするオゾン発生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エキシマランプを用いたオゾン発生装置およびオゾン発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エキシマランプを備えたオゾン発生装置では、エキシマランプによる紫外線照射によってオゾンを発生させ、送風ファンなどによってオゾンを外部へ放出させる。除菌、消臭などに必要な単位時間当たりのオゾン発生量は、装置の設置場所の空間容積(床面積)によって異なる。そのため、室内の空間容積に応じたオゾン発生量を設定する操作部を設け、オペレータによって設定されたオゾン発生量に基づき、自然環境下でのオゾン濃度を超えないようにオゾン発生動作を数分から数十分間隔をあけて断続的に行う(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
一方、オゾンが人体などへ影響するのを防ぐため、オゾン濃度を検出するオゾンセンサを設けてオゾン発生量を調整することが可能である。検出されるオゾン濃度が上限値を超えるとオゾン生成動作を停止させ、下限値を下回るとオゾン生成動作を再開させることによって、人が常在する部屋での使用を容易にする(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】実開平6-19737号公報
【文献】特開2012-34771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
装置の設置場所の空間容積が大きいほど、除菌・消臭処理のため室内を所定のオゾン濃度で所定の暴露時間を維持するために、オゾン生成量と風量を高める必要がある。その場合、オゾン発生動作を開始させてから短時間で所望するオゾン濃度に達することが、作業効率の観点から望ましい。しかしながら、エキシマランプを使用する紫外線照射方式のオゾン発生方法では、短時間で高濃度のオゾンが発生しやすく、オゾン濃度にムラのあるガスが装置外へ放出する状況が生じやすい。
【0006】
そのため、できるだけ速やかに目標とするオゾン濃度へ到達させようとすると、オゾンを室内に放出させている間、室内のオゾンの拡散が不十分であると、オゾン濃度が高いあるいは低いガスの空間領域が局所的に生じる。その結果、オゾン発生装置の周辺に配置したオゾンセンサがオゾン濃度の変化に逐次反応して、オゾン発生動作の停止および再開が過剰に繰り返されることになり、電源回路や制御基板などへの負荷(ストレス)が大きくなって装置劣化を生じさせる。特に、高周波高電圧が印加されて点灯するエキシマランプは、電源回路の昇圧トランスや石英ガラスに封着された電極を用いるため、絶縁性を維持する観点で装置劣化の影響が大きい。
【0007】
したがって、エキシマランプを使用するオゾン発生装置において、装置への負荷を抑制しながら、使用場所のオゾンによる除菌・消臭処理などを行う空間の大きさに合わせてオゾンを発生させることが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のオゾン発生装置は、紫外線照射によりオゾン生成するエキシマランプと、オゾン処理対象空間へ向けてオゾンを含むガスを放出させる送風機と、エキシマランプの点灯および送風機の運転によるオゾン発生動作を制御する制御部とを備える。例えば、オゾン発生装置は、コンパクト型装置として構成することが可能であり、例えば、エキシマランプが送風機によるガスの流れの中に配置されるように構成することが可能である。あるいは、オゾン処理対象空間に向けてオゾンを含むガスを放出させる放出口および送風機の供給口それぞれと向かい合うように配置することができる。
【0009】
本発明では、オゾン発生装置が、オゾン処理対象空間の大きさに応じて、エキシマランプの紫外線照射量と送風機の風量とを関連付けたオゾン発生動作を制御する。例えば、オゾン発生装置の動作を全体的にあるいは部分的に制御する制御部が、そのような動作制御部を備えることが実行可能である。
【0010】
ここでの「オゾン処理対象空間の大きさ」は、空間容積として定めるだけでなく、部屋の高さが略一定などを考慮し、床面積によって定めることも可能であるため「床面積」として解釈することも可能である。「エキシマランプの紫外線照射量(放射量ともいえる)と送風機の風量とを関連付けたオゾン発生動作制御」には、様々な動作制御を実現可能である。例えば、エキシマランプの連続的点灯の変化、間欠的点灯、また、間欠点灯時の周期性、被周期性、間欠点灯時の消灯時間あるいは点灯時間の長さに応じた送風機の風量に基づく動作制御が含まれる。また、点灯時間と消灯時間を繰り返す周期的な点滅の点灯時間と消灯時間との大小やタイミングと関連付けた送風機の風量に基づく動作制御も可能である。
【0011】
オゾン発生装置は、オゾン処理対象空間の大きさに応じて定められるオゾン生成量および風量に基づいて、エキシマランプの間欠的点灯および送風機の連続的運転によるオゾン発生動作を、継続して行うことが可能である。例えば、エキシマランプが、設定された一定の点灯時間および消灯時間に従って点滅し、送風機が、設定された一定風量で運転することができる。
【0012】
この場合、オゾン処理対象空間が大きいほど、エキシマランプの周期的点滅の点灯時間が長くて消灯時間が短くなり、また、送風機の風量が連続的あるいは段階的に大きくなるように設定することが可能である。例えば、点灯時間は、0.1秒~1秒の範囲で設定可能であり、また、消灯時間は、0.1秒~10秒の範囲で設定可能である。
【0013】
一方で、エキシマランプが、送風機によるガスの流れの中に配置され、ランプ点灯からランプ表面温度最大となる前に消灯し、ランプ消灯からランプ表面温度最小となる前に点灯することもできる。また、エキシマランプが、172nmにピーク波長をもつ紫外線を放射する場合、ランプ点灯時とランプ消灯時でのランプ表面温度の変化が30%未満となるように、設定された一定の点灯時間および消灯時間に従った周期で点滅し、送風機が、点滅の周期に応じて設定された一定風量で運転するようにしてもよい。
【0014】
例えば、オゾン処理対象空間の大きさに応じた位置でオゾン濃度を検出可能なオゾンセンサをさらに備えるようにしてもよい。例えば、エキシマランプが周期的な点滅を行う場合、オゾンセンサは、エキシマランプが点滅する周期の時間間隔よりも長い時間間隔で、オゾン濃度を検出すればよい。オゾン発生装置は、所定の閾値を超えたオゾン濃度が検出されると、エキシマランプの点滅動作を一時的に中断する一方、送風機の運転は継続することができる。
【0015】
本発明の他の態様におけるオゾン発生方法は、作業者により設定されたオゾン処理対象空間の大きさに応じて、オゾン発生量および風量を設定し、オゾン発生量に応じたエキシマランプの紫外線照射量と風量とに基づいて、エキシマランプを紫外線照射させるとともに、送風機を運転させて、紫外線照射により生成されたオゾンを含むガスをオゾン発生装置からオゾン処理対象空間へ放出させるオゾン発生方法であって、オゾン発生動作中、エキシマランプを間欠的に点灯させ、送風機を連続的に運転させる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、エキシマランプを使用するオゾン発生装置において、装置への負荷を抑制しながら、使用場所の除菌・消臭処理などを行う空間の大きさに合わせてオゾンを発生させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本実施形態であるオゾン発生装置の概略的内部構成図である。
図2】オゾン発生装置のブロック図である。
図3】処理空間の大きさに応じたオゾン発生量と、オゾン発生量に応じたエキシマランプの点滅動作の消灯時間に対する点灯時間の割合および送風機のPWMデューティー比との対応関係を表すテーブルを示している。
図4】処理空間の大きさに応じたエキシマランプの点滅動作のタイミングチャートを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下では、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
【0019】
図1は、本実施形態であるオゾン発生装置の概略的内部構成図である。
【0020】
オゾン発生装置10は、筐体20内にエキシマランプ30、送風機(ここでは軸流式の給気ファン)40を備え、筐体20からオゾン処理対象空間(オゾンによる除菌・消臭処理などの対象となる空間)へ放出されたオゾンを含むガスを利用して、除菌・消臭処理などを行うことが可能である。ここでのオゾン発生装置10は、ホテルの客室、娯楽施設の共有スペース、病院の病床など、様々なオゾン処理空間(以下、対象空間ともいう)の場所へ持ち運んで使用可能なコンパクト型装置として構成され、例えば直上に設置可能である。
【0021】
オゾン発生装置10では、送風機40の運転によって筐体(流路管)20の底部20Aから原料ガス(ここでは空気)が流入する。エキシマランプ30は、送風機40の下流側で原料ガスの供給口と向かい合うように、ランプ軸Eが装置上下方向、すなわち流路FPに沿うように配置され、送風機40は、筐体20の底部20Aで筐体20に対して同軸配置されている。なお、エキシマランプ30を筐体20の中心側ではなく側壁側に配置してもよく、ランプ軸Eを装置横方向(水平方向)に設置してもよい。
【0022】
オゾン発生装置10の筐体20の上面側には、オゾン発生動作スイッチ、オゾン発生動作時間設定などを行うために操作される操作部50が設けられ、その周囲に開口部(以下流出口という)20Bがエキシマランプ30と向かい合うような位置に形成されている。作業者がオゾン発生動作時間を設定し、オゾン発生動作スイッチを操作などを行うことによってオゾン発生動作が開始すると、送風機40が運転し、エキシマランプ30が点灯する。
【0023】
エキシマランプ30は、筐体20内を上昇する原料ガス(流体)に対して紫外線を照射し、これによってオゾンが生成する。生成したオゾンを含むガスが開口部(以下、流出口という)20Bから流出し、開口部20Bを通じて装置外部であるオゾン処理対象空間へ向けて放出される。タイマー設定により設定された時間(以下、オゾン発生動作時間という)が経過すると、オゾン発生動作が終了する。
【0024】
オゾン濃度を検出するオゾンセンサ100は、所定の長さを有するケーブルCBを介してオゾン発生装置10に接続されている。ここでは、ケーブルCBが設置場所の除菌・消臭処理を行う空間容積または空間床面積のサイズに応じて複数用意されている。具体的には、設置場所の床の一辺の長さ、あるいは対角線の長さに対応したケーブルCBが用意される。なお、オゾンセンサは、オゾン発生装置に無線により接続してもよく、人感センサを設けてもよい。
【0025】
図2は、オゾン発生装置10のブロック図である。
【0026】
制御部60は、オゾン発生装置10の動作を制御し、操作部50からの操作信号に基づいて、送風機40、電源部70などへ制御信号を出力する。昇圧トランスなどを含む電源部70は、制御部60からの制御信号に基づいてエキシマランプ30の点灯(電圧印加)を制御する。送風機40は、ここではPWM制御によって運転する。
【0027】
操作部50には、オゾン発生動作スイッチ等のボタン形式のスイッチが複数設けられている。また、操作部50による設定された、装置が使用される設置場所の除菌・消臭処理が行われる空間容積または床面積、オゾン濃度レベル、オゾン発生動作時間などを表示する表示部が設けられている。なお、タッチパネルスクリーンなどで表示する構成にしてもよい。
【0028】
オゾン発生装置を使用する作業者は、オゾン発生装置10の操作部50を操作することによって、オゾン発生動作時間、オゾン濃度レベル、設置場所(処理空間)の大きさなどを選択し、設定することが可能である。制御部60は、選択されたオゾン発生動作時間、オゾン濃度レベル、設置場所(処理空間)の大きさなどの値やレベルは選択された時間、レベル、設置場所の大きさを設定し、設定値やレベルなどの変更に合わせて設定変更する。
【0029】
作業者が操作部50のオゾン発生動作スイッチを操作することによって、オゾン発生動作が開始し、設定されたオゾン発生動作時間が経過すると、オゾン発生動作が終了する。制御部60は、オゾン発生動作の間、オゾンセンサ100によって検出されるオゾン濃度が所定の閾値(例えば、人体に影響を与えるオゾン濃度)を超えると、オゾン発生動作を一時的に中断する。
【0030】
オゾン発生装置10は、オゾン発生動作中、設置場所の除菌・消臭処理などが行われる空間の大きさに応じて、エキシマランプ30の間欠的点灯および送風機40の連続的運転によるオゾン発生動作を継続して実行する。以下、これについて詳述する。
【0031】
図3は、処理空間の大きさ(ルームサイズ)に応じたオゾン発生量と、オゾン発生量に応じたエキシマランプ30の点滅動作中の消灯時間に対する点灯時間の割合および送風機(給気ファン)40のPWMデューティー比との対応関係を表すテーブルを示している。図4は、処理空間の大きさに応じたエキシマランプ30の点滅動作のタイミングチャートを示した図である。
【0032】
オゾン処理対象空間を所定のオゾン濃度で所定の暴露時間(オゾンによる除菌・消臭などの処理時間)とすることにより、除菌・消臭処理などを行うために必要なオゾン発生量(生成量)は、オゾン発生装置10の設置場所の処理空間の大きさによって相違し、処理空間サイズが大きいほど高いオゾン発生量を設定する必要がある。したがって、図3のテーブルTに示すように、単位時間当たりに生成するオゾン生成量(mg/h)は、処理空間の大きさ(ルームサイズ)が大きいほど大きい値に設定される。オゾン発生量は、ここでは処理空間の大きさに比例する。
【0033】
上述したように、作業者は設置場所の処理空間の大きさを操作部50において入力、設定可能であり、選択された処理空間の大きさに応じたオゾン発生量が定められる。なお、天井までの高さは建物の間で通常共通であることから、処理空間の大きさは部屋の床面積の大きさ(図3では、ルームサイズ)によって代替され、オゾン発生量は床面積の大きさに従って定められる。
【0034】
例えば、処理空間の大きさを部屋の大きさ以下に設定することが可能であり、部屋や設置場所の一部の空間領域だけを除菌・消臭処理するときは、部屋の大きさよりも小さい処理空間の大きさを設定すればよい。さらに、部屋の状況に応じてオゾン濃度レベルを設定することで、処理空間の大きさに応じて設定されたオゾン濃度(オゾン生成量や風量)よりも、高濃度、低濃度のオゾンを含むガスを放出させることも可能である。
【0035】
オゾン発生量は、エキシマランプ30による紫外線照射量に従う(比例する)が、放電方式のオゾン発生装置と比べ、ランプ点灯の開始瞬間に高濃度オゾンが発生しやすい。ところで、上述したようにオゾン発生装置10はコンパクト型装置として構成されているため、エキシマランプ30は、流入口20A(送風機40の流体供給口部)と流出口20Bの近くで向かい合うように配置される。
【0036】
その結果、流入口20Aと流出口20Bは、エキシマランプ30との間での絶縁破壊を防止できる最小限または最小限に近い距離間隔に定められている。特にここでは、筐体20の軸Eに沿ったエキシマランプ30の流出口20B側の一端と流出口20Bとの距離間隔は、流入口20Aとエキシマランプ30の流入口20A側の一端までの距離間隔より短い。そのため、エキシマランプ30の点灯開始直後には、高濃度のオゾンを含むガスが装置外部へ放出されやすい。
【0037】
また、エキシマランプ30の表面温度が上昇し過ぎると、紫外線照度は低下する。特に、波長200nm以下(例えば172nm)のピーク波長をもつ紫外線の場合、その傾向が顕著である。一般的に、紫外線照射によって生じるオゾンは、温度が高くなると分解が促進される。具体的には、オゾン分解が約40℃で始まり、約60℃になるとオゾン分解が活発になる。そのため、エキシマランプ30の表面温度が上昇し過ぎると、生成されたオゾンの分解が促進され、オゾン生成効率が低下する。
【0038】
このとき、エキシマランプ30の点灯時間の長さに対して周囲を流れるガスが低流量であると、エキシマランプ30の冷却が不十分で過熱状態となって照度低下を招き、また、オゾン濃度にムラのあるガスが装置外へ放出されやすい。その結果、オゾン発生装置の周辺にオゾンが滞留して十分に拡散されない状況が生じる。このように、オゾン発生量およびオゾン分解量は、エキシマランプ30周囲のガスの流れによるランプ冷却条件、すなわち送風機40の風量にも影響される。
【0039】
本実施形態では、オゾン発生動作中、エキシマランプ30の点灯と送風機40の運転とを関連付けたオゾン発生動作制御を行う。具体的には、エキシマランプ30は、それぞれ定められた一定時間に従い、点灯と消灯とを繰り返す間欠的点灯、すなわち一定周期での点滅を行う。オゾン発生動作を一度だけ、あるいは時間間隔を空けて複数回実行するのではなく、エキシマランプ30の周期性をもたせた間欠的点灯と送風機40の連続的運転とを組み合わせたオゾン発生動作を、設定されたオゾン発生動作時間が経過するまで持続的に行う。
【0040】
これによって、急激な紫外線照度が連続的に続くことによる高濃度オゾン発生を抑制する一方、処理空間の大きさに応じたオゾン濃度に達するための必要なオゾン発生量を供給することが可能となる。更に、その処理空間とオゾン発生量に応じた風量を設定した結果、オゾン濃度の高いガスを含む空間領域が局所的(例えば装置周辺)に発生するのを抑制し、設置場所の処理空間全体へのオゾンの拡散が支配的となるように、オゾン濃度が均一に上昇していく。
【0041】
エキシマランプ30の間欠的点灯により、設置場所の処理空間の大きさに応じたオゾン濃度に到達するまでの時間は、エキシマランプ30を連続点灯させる場合と比べて長くなる。すなわち、オゾン濃度の上昇速さは緩やかになる。しかしながら、オゾンセンサ100の高濃度オゾン検知によってオゾン発生動作の強制的停止することが抑えられるため、結果的に、オゾン発生開始からオゾン発生終了までの間、オゾンによる除菌・消臭処理の対象となる空間全体に対してオゾンが十分に拡散し、所定のオゾン濃度へ均一に上昇させることができる。そして、所定の暴露時間(オゾンによる除菌・消臭処理等の時間)をオゾン発生終了後も含めて維持可能となることで、効果的に除菌・消臭処理などを行うことができる。
【0042】
図3のテーブルTでは、エキシマランプ30の点灯時間と消灯時間および点灯時間に対する消灯時間の割合(%)を表している。図4では、空間サイズが10(m)、15(m)、30(m)、120(m)のときのエキシマランプ30の点灯タイミングチャートを(A)~(D)でそれぞれ示している。図4に示すように、空間サイズが大きいほど、点滅における一回の消灯時間(期間)が短くなり、また、一回の点灯時間(期間)が長くなる。
【0043】
一方、送風機40に関しても、処理空間が大きいほど大きい風量に設定される。ここでは、処理空間が大きいほど点滅周期の点灯時間の長時間化と消灯時間の短縮化に応じて、送風機40の風量が定められている。ただし、送風機40は上述したようにPWM制御によって運転するため、PWM制御のディーティー比の設定数に制限があるなどの事情を鑑み、ここでは設定可能なオゾン発生量(ルームサイズ)をいくつかの大きさの範囲に分けて分類し、各範囲内のオゾン発生量に対して共通の風量が設定される。図3のテーブルTでは、風量がデューティー比で表される。例えば、オゾン発生量が30~60(mg/h)の場合、風量がデューティー比80%に定められている。このように、設定可能な範囲全体の傾向として、処理空間が大きいほど、風量が徐々に大きくなるように設定すればよい。
【0044】
例えば172nmのピーク波長をもつ紫外線の場合、表面温度が80℃まで上昇して一定となると、紫外線照度は点灯開始直後の90%にまで低下する。一方、エキシマランプ30の表面温度が過度に低下しすぎると、ランプ点灯を開始した直後だけ高照度の紫外線が放射されて、表面温度最大付近での紫外線照度(低照度)との差が大きくなり、点灯中における紫外線照度が安定せず、オゾン濃度にムラのあるガスが装置外へ放出される状況が生じやすい。
【0045】
エキシマランプ30の点滅動作期間における点灯条件を大きく変化させず、安定した紫外線照度をオゾン発生動作期間中に継続させるため、オゾン発生動作期間におけるエキシマランプ30の点滅動作は、エキシマランプ30の表面温度が最大温度に到達しないように、最大温度到達前のタイミングで点灯から消灯へ切り替わる。
【0046】
一方、消灯時間は、エキシマランプ30が消灯し、継続して運転する送風機40の風量にも影響されるランプ冷却によって、ランプ表面温度が所定の下限閾値、例えば外気に応じた温度(表面最小温度ともいう)を下回らないタイミングで消灯から点灯へ切り換わるように定められている。波長172nm以外の紫外線を照射する場合でも、紫外線の波長に応じたランプ表面温度に合わせて点灯、消灯の切り替わりタイミングを設定すればよい。
【0047】
また、同時にランプ表面温度の温度変化が30%以下となるように、処理空間の大きさに応じた点灯および消灯のサイクルが設定されている。より好ましくは、ランプ表面温度の温度変化が10%以下となるように定めるのがよい。ランプ表面温度変化を抑制する周期的な点滅を行うことによって、オゾン発生量と分解量とエキシマランプ30の表面温度とのバランスをとることができ、紫外線の放射照度が不安定とならず時系列的にみて略一様となり、高濃度、低濃度のオゾンを含むガスが局所的に生じるのを抑制することができる。
【0048】
上述したオゾン拡散および紫外線照度の安定化を実現するため、図3のテーブルTに示すように、点灯時間は0.1秒~1.0秒の範囲で設定され、消灯時間は0.1秒~10秒の範囲に設定されている。オゾン発生動作期間中にオゾンセンサがオゾン濃度を検出する一定時間間隔(サンプリング時間)よりも短い時間間隔(周期)で、エキシマランプ30を点滅させている。
【0049】
例えば、高周波高電圧によって瞬間的にエキシマランプ30を点灯開始させるときの短絡電流と、送風機40の運転開始時の突入電流とが同時に流れると、装置によっては誤動作を発生させたり、エキシマランプ30や電源部70の構成部品への負荷(ストレス)が大きくなって装置劣化を生じさせる場合がある。
【0050】
エキシマランプ30に対し周期性のある間欠的点灯をさせることで、過大な短絡電流が流れなるのを防ぎ、また、送風機40が適切な風量で連続的運転を継続することによってより効果的に防止することができる。なお、短絡電流と突入電流とが同時に流れないように、電気特性を含めた遅延時間を設定することも可能である。また、ランプ連続点灯エラーやランプ不点灯エラーをオゾン発生動作開始から所定時間経過後に検出するように構成した場合、その時間を超えないように点灯時間、消灯時間の上限値を設定すればよい。
【0051】
以上説明したように、オゾン発生動作期間中、オゾン濃度検出のサンプリング時間間隔よりも比較的短い時間間隔でエキシマランプ30を点滅させ、送風機40を適切な風量で連続運転するオゾン発生動作によって、オゾン濃度上昇スピードを適度に調整し、オゾン発生装置からのオゾンを含むガスの放出と室内への拡散やオゾン分解などによるオゾン供給と消滅のバランスが良好となり、最終的にオゾン濃度が平衡状態に到達する。
【0052】
また、平衡状態から何らかの理由によって、オゾン発生動作中にオゾンセンサ100から検出されるオゾン濃度が所定の上限閾値を超えた場合、エキシマランプ30の間欠的点灯を一時的に中断する、すなわち消灯させる。その一方、送風機40は運転を中止せず、継続して運転する。その後、オゾン濃度が所定の下限閾値を下回ると、エキシマランプ30の間欠的点灯が再開する。
【0053】
上述したように、オゾンセンサ100は、オゾン発生装置が使用される設置場所(処理空間)の床面積の一辺の長さあるいは対角線の長さに応じたケーブルCBによって、オゾン発生装置10に接続されている。オゾン発生装置10の周囲ではなく、オゾンが十分に拡散されたことで処理空間全体でのオゾン濃度を検出可能な場所にオゾンセンサ100を設置可能であるため、オゾンセンサ100が、オゾンの十分な拡散される前のオゾン濃度の変化に逐次反応せず、オゾン濃度を検出する時間間隔に対してオゾン濃度は略一様となり、オゾン発生動作の停止および再開が過剰に繰り返される状況になることを防ぐことができる。
【0054】
例えば、床の壁に沿ってケーブルCBを配置できない空間の場合、対角線の長さに応じたケーブルCBを用意することによってオゾンセンサ100をオゾン発生装置10から最も離れた場所に設置することができる。また、長方形状の床の場合、長手方向の長さに沿ったケーブルCBを用意し、オゾン発生装置10とオゾンセンサ100を壁に沿って配置することが可能である。このようなケーブルCBの長さの設定は、上述したオゾン発生動作に適した推奨床面積や推奨設置方法の指標として把握することができる。なお、このような長さのケーブルは、上述したオゾン発生装置以外にも適用可能である。
【0055】
例えば、従来では、上記特許文献2のようにケーブルCBの長さを考慮せずにオゾンセンサをオゾン発生装置に接続していたが、処理空間のサイズに関係なくケーブル長さが定められていたため、処理空間の大きさに合わせてオゾン濃度が適切であるか否かを判断することが困難であったが、上述したケーブルCBを用いることによって、処理空間の大きさに合わせて適切なオゾン濃度を作業終了まで維持することができる。
【0056】
すなわち、オゾン発生装置と、オゾン濃度を検出可能なオゾンセンサとを接続するケーブルであって、オゾン処理対象空間の床面積の一辺の長さまたは対角線の長さに応じたケーブル長さを有するオゾン発生装置用ケーブルを提供することができる。
【0057】
エキシマランプ30の点灯制御に関しては、周期的な間欠的点灯に限定されず、非連続的点灯を行ってもよい。あるいは、電圧調整によって紫外線照射量を強弱させながら連続点灯させてもよい。送風機40の風量については、非連続的な運転にすることも可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 オゾン発生装置
20 筐体
30 エキシマランプ
40 送風機
50 操作部
60 制御部
図1
図2
図3
図4