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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】情報処理方法、及び、情報処理装置
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241121BHJP
   G06Q 50/10 20120101ALI20241121BHJP
【FI】
G08G1/00 C
G06Q50/10
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021023892
(22)【出願日】2021-02-18
(65)【公開番号】P2022126049
(43)【公開日】2022-08-30
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 誠
(72)【発明者】
【氏名】木村 光樹
(72)【発明者】
【氏名】小田嶋 成幸
(72)【発明者】
【氏名】金山 雅人
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-173270(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0160695(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
G06Q 50/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交通状況に対するイベントの影響を判定する情報処理方法であって、
前記イベントの発生位置に関連するリンクを対象リンクに設定する第1リンク設定ステップと、
前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を判定する判定ステップと、
前記判定ステップの判定結果に基づき、前記対象リンクに隣接するリンクを新たな前記対象リンクとして設定する第2リンク設定ステップと、
前記第2リンク設定ステップで特定した前記対象リンクに対して前記判定ステップの処理を行うステップと、を含み、
前記判定ステップは、
第1時間帯における前記対象リンクの旅行時間の分布を示す第1ヒストグラムと、前記第1時間帯よりも前記イベントの発生時刻から離れている第2時間帯における前記対象リンクの旅行時間の分布を示す第2ヒストグラムと、を作成し、
前記第1ヒストグラムと前記第2ヒストグラムとの相違度合を算出し、
前記相違度合を所定の閾値と比較することによって、前記対象リンクに対する前記イベントの影響度を判定する
情報処理方法。
【請求項2】
上記判定ステップは、上記相違度合を、以下の式(1)、式(2)、式(3)、式(4)と(5)のいずれかにより算出する
【数1】

但し、D KL (X ||X ):KLダイバージェンスによる第1ヒストグラムと第2ヒストグラムの相違度合、D JS : JSダイバージェンスによる第1ヒストグラムと第2ヒストグラムの相違度合、X :第1ヒストグラムのデータを表すベクトル、X :第2ヒストグラムのデータを表すベクトル(X とX は同サイズのベクトル)、i:対象リンクの旅行時間を所定時間単位で分類した階級のインデックス。
【数2】

但し、D:第1ヒストグラムと第2ヒストグラムの相違度合、ベクトルの根号は各ベクトルの要素に対して根号を適用したベクトルを意味する。また、Tはベクトルの転置を表す記号である。
【数3】

但し、p^:第1ヒストグラムと第2ヒストグラムの相違度合、P(a)は、aとなる確率を示す記号。
請求項1記載の情報処理方法。
【請求項3】
前記判定ステップにおいて、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度が低いと判定した場合に、前記第2リンク設定ステップを実行しない、
請求項1又は請求項2に記載の情報処理方法。
【請求項4】
前記判定ステップにおいて、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を、前記対象リンクにおける移動方向毎に判定する、
請求項1から請求項3のうちいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項5】
前記判定ステップにおいて、前記対象リンクが規模の大きい道路である場合に、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を、前記対象リンクにおける移動方向毎に判定する、
請求項4に記載の情報処理方法。
【請求項6】
前記判定ステップにおいて、前記第1ヒストグラムと前記第2ヒストグラムとの分布の広がりの差に基づいて前記閾値を補正し、補正した前記閾値を用いて判定を行う、
請求項1から請求項5のうちいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項7】
前記判定ステップにおいて、
前記対象リンクが、第1方向、及び、前記第1方向とは逆の第2方向の通行が可能な道路である場合に、
前記イベントが前記対象リンクの前記第1方向の交通状況に与える影響度を判定する場合の前記閾値を、前記対象リンクの前記第2方向の交通状況に基づき補正する、
請求項1から請求項6のうちいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項8】
前記判定ステップにおいて、
前記対象リンクが規模の大きい道路でない場合に、前記イベントが前記対象リンクの前記第1方向の交通状況に与える影響度を判定する場合の前記閾値を、前記対象リンクの前記第2方向の交通状況に基づき補正する、
請求項7に記載の情報処理方法。
【請求項9】
前記第1リンク設定ステップでは、前記発生位置に対応付けられた施設のうち前記イベントの種類に関連付けられた種類の前記施設に近いリンクを、前記対象リンクとして設定する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の情報処理方法。
【請求項10】
ノード及びリンクに関する道路データに基づいて、交通状況に対するイベントの影響を判定する情報処理装置であって、
前記イベントの発生位置に関連するリンクを対象リンクに設定し、
前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を判定する判定処理を実行し、
前記判定処理の結果に基づき、前記対象リンクに隣接するリンクを新たな前記対象リンクとして設定し、
特定した前記対象リンクに対して前記判定処理を行い、
前記判定処理として、
第1時間帯における前記対象リンクの旅行時間の分布を示す第1ヒストグラムと、前記第1時間帯よりも前記イベントの発生時刻から離れている第2時間帯における前記対象リンクの旅行時間の分布を示す第2ヒストグラムと、を作成し、
前記第1ヒストグラムと前記第2ヒストグラムとの相違度合を算出し、
前記相違度合を所定の閾値と比較することによって、前記対象リンクに対する前記イベントの影響度を判定する処理を実行する
情報処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理方法、及び、情報処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、スポーツイベントや催事などのイベントが交通状況に与える影響を判定する手法が提案されている。例えば、特許文献1は、地域を緯度及び経度に基づいて格子状に複数のエリアに分割し、予測対象エリアの平日の平均混雑度や休日の平均混雑度を利用して、混雑予測を行う手法を開示する。また、特許文献1は、予測対象エリアを選別する手法として、居住者が多いエリアを予測対象エリアとする、POIが存在するエリアを予測対象エリアとする、エリア毎の過去の混雑度に基づいて選別する、等を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-110360号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、地域を分割したエリア毎に交通状況を判定する処理では、エリアに含まれる多数の道路における交通状況を判定する必要があり、効率が低いという課題がある。
本発明はかかる背景に鑑みてなされたものであり、イベントが交通状況に与える影響を判定する処理を、効率よく行うことが可能な手法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するための第1態様として、交通状況に対するイベントの影響を判定する情報処理方法であって、前記イベントの発生位置に関連するリンクを対象リンクに設定する第1リンク設定ステップと、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を判定する判定ステップと、前記判定ステップの判定結果に基づき、前記対象リンクに隣接するリンクを新たな前記対象リンクとして設定する第2リンク設定ステップと、
前記第2リンク設定ステップで特定した前記対象リンクに対して前記判定ステップの処理を行うステップと、を含み、前記判定ステップは、第1時間帯における前記対象リンクの旅行時間の分布を示す第1ヒストグラムと、前記第1時間帯よりも前記イベントの発生時刻から離れている第2時間帯における前記対象リンクの旅行時間の分布を示す第2ヒストグラムと、を作成し、前記第1ヒストグラムと前記第2ヒストグラムとの相違度合を算出し、前記相違度合を所定の閾値と比較することによって、前記対象リンクに対する前記イベントの影響度を判定する情報処理方法が挙げられる。
上記判定ステップは、上記相違度合を、下記の式(1)、式(2)、式(3)、式(4),(5)のいずれかにより算出する、構成としてもよい。
【0006】
上記情報処理方法において、前記判定ステップにおいて、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度が低いと判定した場合に、前記第2リンク設定ステップを実行しない構成としてもよい。
【0007】
上記情報処理方法において、前記判定ステップにおいて、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を、前記対象リンクにおける移動方向毎に判定する構成としてもよい。
【0008】
上記情報処理方法において、前記判定ステップにおいて、前記対象リンクが規模の大きい道路である場合に、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を、前記対象リンクにおける移動方向毎に判定する構成としてもよい。
【0011】
上記情報処理方法において、前記判定ステップにおいて、前記第1ヒストグラムと前記第2ヒストグラムとの分布の広がりの差に基づいて前記閾値を補正し、補正した前記閾値を用いて判定を行う構成としてもよい。
【0012】
上記情報処理方法において、前記判定ステップにおいて、前記対象リンクが、第1方向、及び、前記第1方向とは逆の第2方向の通行が可能な道路である場合に、前記イベントが前記対象リンクの前記第1方向の交通状況に与える影響度を判定する場合の前記閾値を、前記対象リンクの前記第2方向の交通状況に基づき補正する構成としてもよい。
【0013】
上記情報処理方法において、前記判定ステップにおいて、前記対象リンクが規模の大きい道路でない場合に、前記イベントが前記対象リンクの前記第1方向の交通状況に与える影響度を判定する場合の前記閾値を、前記対象リンクの前記第2方向の交通状況に基づき補正する構成としてもよい。
【0014】
上記情報処理方法において、前記第1リンク設定ステップでは、前記発生位置に対応付けられた施設のうち前記イベントの種類に関連付けられた種類の前記施設に近いリンクを、前記対象リンクとして設定する構成としてもよい。
【0015】
上記目的を達成するための第2態様として、ノード及びリンクに関する道路データに基づいて、交通状況に対するイベントの影響を判定する情報処理装置であって、前記イベントの発生位置に関連するリンクを対象リンクに設定し、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を判定する判定処理を実行し、前記判定処理の結果に基づき、前記対象リンクに隣接するリンクを新たな前記対象リンクとして設定し、特定した前記対象リンクに対して前記判定処理を行い、前記判定処理として、第1時間帯における前記対象リンクの旅行時間の分布を示す第1ヒストグラムと、前記第1時間帯よりも前記イベントの発生時刻から離れている第2時間帯における前記対象リンクの旅行時間の分布を示す第2ヒストグラムと、を作成し、前記第1ヒストグラムと前記第2ヒストグラムとの相違度合を算出し、前記相違度合を所定の閾値と比較することによって、前記対象リンクに対する前記イベントの影響度を判定する処理を実行する情報処理装置が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
上記構成によれば、イベントが対象リンクの交通状況に与える影響度を判定した結果をもとに新たな対象リンクを設定することにより、判定の対象を拡大するので、イベントが交通状況に与える影響を判定する処理を効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】情報処理装置の概略構成図。
図2】開始位置設定データの構成例を示す模式図。
図3】情報処理装置の動作を示すフローチャート。
図4】情報処理装置の動作を示すフローチャート。
図5】情報処理装置の動作を示すフローチャート。
図6】リンクを探索する動作の説明図。
図7】リンクを探索する動作の説明図。
図8】情報処理装置が作成するヒストグラムの例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[1.情報処理装置の構成]
図1は、本発明の一実施形態に係る情報処理装置1の概略構成図である。情報処理装置1は、道路の交通状況に関するデータを処理するコンピュータである。情報処理装置1は、通信ネットワーク2を介して、交通データベース50に接続される。
【0019】
本実施形態の情報処理装置1は、イベントが開催されたときに、リンクの交通状況が受ける影響をリンク毎に判定することにより、イベントが交通状況に与える影響を予測するための予測データ55を生成する。
【0020】
以下の説明において、イベントとは、展示会、スポーツイベント、エンターテイメントイベント、商業イベント、政治的または非政治的集会、及び、その他の人為的に開催される催事を含む事象である。イベントは、事故等の意図的でなく発生する人為的な事象、及び、災害を含む自然現象等の人為的でない事象を含んでもよい。また、イベントは、上記の各種事象に起因して発生する事象を含んでもよい。
【0021】
情報処理装置1は、制御部10、通信部31、入力部32、及び、出力部33を備える。制御部10は、プロセッサ11及びメモリ21を備える。プロセッサ11は、CPU(Central Processing Unit)やマイクロコントローラにより構成される。メモリ21は、プロセッサ11が実行するプログラムやデータを記憶する。メモリ21は、プログラムやデータを不揮発的に記憶する不揮発性の記憶装置であってもよい。また、メモリ21は、プロセッサ11のワークエリアを形成する揮発性の記憶装置であってもよい。
【0022】
プロセッサ11は、情報取得部12、及び、処理部13を備える。
情報取得部12は、通信部31を制御して、通信ネットワーク2を介して交通データベース50からデータを取得する。
処理部13は、情報取得部12によって取得されたデータを処理する。処理部13は、処理結果のデータを、通信部31によって交通データベース50に送信する。
【0023】
通信部31は、通信ネットワーク2を接続するコネクタ、送受信回路、エンコーダ、デコーダ等を有する通信インターフェース装置である。通信部31は、制御部10の制御に従って、交通データベース50との間でデータ通信を実行する。
入力部32は、情報処理装置1のオペレータの操作を受け付ける入力インターフェースである。入力部32には、例えば、キーボード、マウス、トラックパッド等の入力デバイスが接続される。入力部32は、入力デバイスから入力される操作信号を取得して、操作内容を示すデータを制御部10に出力する。
出力部33は、制御部10の制御に従って情報を出力する。出力部33は、例えば、ディスプレイに接続され、ディスプレイに映像を表示させる。また、出力部33は、プリンターに接続され、プリンターにより印刷を実行させる構成であってもよい。
【0024】
情報処理装置1は、通信部31によって不図示の端末装置に接続され、端末装置からのリモートアクセスを受け付けて動作する構成であってもよい。また、図1には、情報処理装置1が交通データベース50と別体として構成される例を示すが、情報処理装置1は交通データベース50と同一のサーバ装置であってもよい。また、複数のサーバ装置が分散処理を行うシステムによって、情報処理装置1及び交通データベース50を構成してもよい。
【0025】
交通データベース50は、道路データ51、施設データ52、交通データ53、開始位置設定データ54、及び、予測データ55を格納する。
【0026】
道路データ51は、道路に関する地理データであり、ノード、及び、リンクに関する情報を含む。例えば、道路データ51は、ノードについて、ノード番号、位置座標、標高、ノード種別、接続リンク本数、接続ノード番号、交差点名称等を含む。また、例えば、道路データ51は、リンクについて、リンク番号、道路種別、路線番号、重用する路線情報、リンク長、供用状況、幅員区分、車線数、車道幅員、中央帯幅員、補間点の位置座標、補間点の標高、高速道路ナンバリング等を含む。リンク番号は、リンクの起点及び終点のノード番号であってもよい。また、道路データ51は、リンクについて、橋、高架、トンネル、洞門、踏切、歩道橋、アンダーパス等の属性を含んでもよい。
【0027】
施設データ52は、自治体庁舎、サービスエリア、パーキングエリア、道の駅、フェリー発着所、鉄道駅、空港等の施設について、位置、名称等のデータを含む。
【0028】
交通データ53は、道路データ51に含まれるリンクの交通状況に関するデータを含む。具体的には、交通量、及び、リンク旅行時間を含む。交通データ53は、リンク、リンクにおける通行方向、及び、日付と時間帯とを含む日時区分に対応付けて、交通量及びリンク旅行時間を含む。交通データ53は、1つのリンク、通行方向、及び日時区分に対応する複数のデータを含む。また、交通データ53は、車両の通行に関するデータで構成されてもよいが、複数種類の移動体のデータを含んでもよい。例えば、交通データ53は、車両の交通量及びリンク旅行時間と、歩行者の交通量及びリンク旅行時間とを含んでもよい。旅行時間とは、車両がリンクを通過するために要した時間をいう。
【0029】
交通データ53は、道路データ51に含まれるリンクの交通状況を観測し、集計したデータである。交通データ53は、例えば、過去にイベントが発生した日時、イベントが開催されている時間帯、及び、その他の時間帯に観測されたデータを含む。例えば、道路データ51に含まれるリンクについて、交通状況を一定時間間隔で観測するシステムによって観測された過去のデータが、交通データ53に含まれる。
【0030】
開始位置設定データ54は、イベントがリンクの交通状況に与える影響を判定する処理において、判定の初期位置となる施設の種類を指定するデータである。
【0031】
図2は、開始位置設定データ54の構成例を示す模式図である。
図2に示すように、開始位置設定データ54は、判定の初期位置となる施設の種類と、イベントの種類とを対応付ける。例えば、イベントの種類が学会及び展示会である場合、判定の初期位置、すなわち開始位置となる施設は、駅が対応付けられる。学会とは、例えば、学術的会議やその他の協議会)を含む。また、例えば、イベントの種類が野球等のスポーツイベントである場合には、開始位置となる施設として駐車場が対応付けられる。
【0032】
交通データベース50は、地域毎の開始位置設定データ54を有していてもよい。また、例えば、交通データベース50は、市街地に適用される開始位置設定データ54と、郊外に適用される開始位置設定データ54とを有していてもよい。
【0033】
[2.情報処理装置の動作]
図3図4、及び図5は、情報処理装置1の動作を示すフローチャートである。図6及び図7は、情報処理装置1がリンクを探索する動作の説明図である。図8は、情報処理装置1が作成するヒストグラムの例を示す図である。以下、これらの図を参照して、情報処理装置1の動作を説明する。
【0034】
[2-1.全体シーケンス]
制御部10は、イベントが発生した位置に関連する開始ノードまたは開始リンクを決定する(ステップS11)。ステップS11の詳細を説明する。制御部10は、開始位置設定データ54を参照し、イベントの種類に対応付けられた施設の種類を特定する。制御部10は、イベントが発生した位置にある施設(「イベント発生施設」という)および/またはイベントが発生した位置に対応付けられた施設であって、開始位置設定データ54で指定された種類の施設(「関連種類施設」という)に基づいて、開始ノードまたは開始リンクを設定する。イベントの発生位置に対応付けられた施設とは、イベントが発生した位置に最も近い施設や、イベントが発生した位置から所定範囲内にある施設であってよい。
制御部10は、処理の開始位置として開始ノードを設定する場合、道路データ51に含まれるノードのうち、イベント発生施設、イベント発生施設に最も近いノード、或いは、当該施設に関連付けられたノードを、開始ノードに設定する。これに代えてまたはこれに加えて、制御部10は、処理の開始位置として開始ノードを設定する場合、道路データ51に含まれるノードのうち、関連種類施設に最も近いノード、或いは、当該施設に関連付けられたノードを、開始ノードに設定する。ここで「施設に関連付けられたノード」とは、例えば、当該施設の名称や略称が付けられた交差点や施設に隣接する道路リンクに接続される交差点などが挙げられる。また、開始リンクを設定する場合、制御部10は、道路データ51に含まれるリンクのうち、イベント発生施設に隣接する道路リンク、或いは、当該施設に関連付けられた道路リンクを、開始リンクに設定する。これに代えてまたはこれに加えて、制御部10は、処理の開始位置として開始リンクを設定する場合、道路データ51に含まれるリンクのうち、関連種類施設に隣接する道路リンク、或いは、当該施設に関連付けられた道路リンクを、開始リンクに設定する。ここで「施設に関連付けられたリンク」とは、例えば、当該施設または当該施設に併設される施設の入口や出口に接続するリンクや、当該施設の名称や略称を有する道路リンクなどが挙げられる。これらを総称して、イベント発生施設に近いリンクとする。
【0035】
制御部10は、開始ノードまたは開始リンクを中心とする探索範囲を設定する(ステップS12)。ステップS12で、制御部10は、例えば、開始ノードに接続するリンク、開始ノードに近接するリンク、または、開始リンクを含む範囲を探索範囲とする。これにより、イベントの発生位置に関連するリンクが対象リンクに設定される。
【0036】
制御部10は、探索範囲内のリンクに関する交通データ53を取得する(ステップS13)。制御部10は、ステップS13で取得した交通データ53を、イベントが発生したときのデータと、イベントが発生していないときのデータに分類する(ステップS14)。ステップS14で、制御部10は、例えば日時によってデータを分類する。詳細には、制御部10は、イベントが発生した日時または時間帯を含むか、イベントが発生した日時に近い時間帯の交通データ53と、それ以外の時間帯の交通データ53とに分類する。
【0037】
制御部10は、探索範囲内のリンクから、判定の対象とする1のリンクを選択して、対象リンクに設定する(ステップS15)。
制御部10は、判定処理を実行する(ステップS16)。判定処理は、イベントが対象リンクの交通状況に与えた影響度を判定する処理である。例えば、判定処理によって、イベントが発生したことによって対象リンクの交通状況が影響を受けたか否かを判定する。或いは、制御部10は、判定処理によって、イベントが対象リンクの交通状況に与えた影響度の指標を算出する。判定処理については、図4を参照して後述する。
【0038】
制御部10は、判定処理の結果を、対象リンクに対応付けて一時的に保持する(ステップS17)。例えば、制御部10は、判定処理の結果と判定されたリンクを示す情報とを対応付けて、メモリ21に記憶する。
【0039】
制御部10は、探索範囲内のリンクのうち、判定処理がなされていないリンクの有無を判定する(ステップS18)。判定処理がなされていないリンクがある場合(ステップS18;YES)、制御部10はステップS15に戻り、次の対象リンクを選択する(ステップS15)。
【0040】
判定処理がなされていないリンクがない場合(ステップS18;NO)、制御部10は、ステップS17で保持した判定結果に基づき、探索範囲の外において、判定の候補となるリンクがあるか否かを判定する(ステップS19)。候補となるリンクは、具体的には、イベントの影響度が大きいリンク、或いは、イベントの影響を受けたと判定されたリンクに隣接するリンクであって、探索範囲外のリンクである。ステップS19の判定は、ステップS17で保持された判定結果に基づき、行われる。候補となるリンクがある場合(ステップS19;YES)、制御部10は、候補となるリンクを含むように探索範囲を変更(拡大)し(ステップS20)、ステップS13に戻る。イベントの影響度が大きいと判定されたリンクが複数ある場合、及び、イベントの影響度が大きいと判定されたリンクに隣接するリンクが複数ある場合は、これら複数のリンクの全てを含むように、探索範囲が変更(拡大)される。
【0041】
探索範囲の変更(拡大)について図6及び図7を参照して説明する。なお、以下の説明では単に拡大と記す。
図6には、ノードN1~N14及びリンクL1~L17を含む範囲において探索範囲を設定する様子を示す。図6の例は、制御部10がノードN1を開始ノードに設定した例である。この例で、制御部10は、ノードN1に接続するリンクL1、L2、L3を探索範囲に設定する。
【0042】
制御部10は、リンクL1、L2、L3について判定処理を実行する。リンクL1が、イベントの影響を受けたと判定された場合、リンクL1に隣接するリンクが候補リンクとなる。図6の例でリンクL1に隣接するリンクとは、リンクL1の端点であるノードN2に接続するリンクL4、L5である。
【0043】
ここでは、リンクL1、L2がイベントの影響を受けたと判定され、リンクL3が、イベントの影響を受けていないと判定された例を示す。つまり、リンクL1に隣接するリンクL4及びリンクL5並びにリンクL2に隣接するリンクL6及びリンクL7が候補リンクとなり、リンクL3に隣接するリンクであるリンクL8、リンクL9及びリンクL10は、候補リンクとならない。制御部10は、これらの判定結果に基づき、探索範囲を拡大する。
【0044】
図7は、図6に示す状態から探索範囲を拡大した後の様子を示す。
図7では、リンクL4、L5、L6、L7を含むように探索範囲が拡大されている。この後、制御部10は、探索範囲の拡大により新たに探索範囲に含まれることとなったリンクL4、L5、L6、L7について判定を行う。
【0045】
図3に戻り、候補となるリンクがない場合(ステップS19;NO)、制御部10は、ステップS17で保持した判定結果に基づき、影響度推定データを生成する(ステップS21)。影響度推定データは、イベントの発生により交通状況に影響を受けたリンクを示すデータを含む。影響度推定データは、イベントの発生により交通状況に影響を受けたリンクに接するノードや、リンクの交通状況に影響が生じた時間帯、イベントの種類等の情報を含んでも良い。制御部10は、影響度推定データに基づき予測モデルを生成し(ステップS22)、動作を終了する。予測モデルは、人工知能(AI)の学習モデルが、影響度推定データを学習用データとする機械学習を実行することによって得られる。予測モデルを用いて、仮想のイベントが発生する場合の交通状況に対する影響を評価することが可能である。ステップS22は、学習モデルに学習を実行させるステップであり、影響度推定データが蓄積されてから実行されてもよい。例えば、制御部10は、ステップS21で生成した影響度推定データを、交通データベース50に蓄積して記憶させてもよい。この場合、機械学習モデルに影響度推定データを学習させる処理を、情報処理装置1とは異なる装置により実行してもよい。また、制御部10または交通データベース50によって、影響度推定データのデータ項目の整理や集約を行うことにより、学習用データを新たに生成してもよい。学習モデルが実行する学習は、教師あり学習であってもよいし、その他の学習方式を採用することも勿論可能である。また、新たに生成された影響度推定データを利用して、学習済みの予測モデルにさらなる学習を実行させてもよい。
【0046】
上記動作において、ステップS12~S15は、第1リンク設定ステップの一例に対応する。ステップS16は判定ステップの一例に対応し、ステップS19は第2リンク設定ステップの一例に対応する。
【0047】
[2-2.判定処理]
図4は、図3のステップS16に示した判定処理を詳細に示す。
制御部10は、対象リンクの交通データ53を、通行方向、及び、時間帯で分類する(ステップS31)。例えば、制御部10は、対象リンクが南北方向に伸びる道路である場合、交通データ53を南行きのデータと北行きのデータに分類する。
【0048】
制御部10は、さらに、交通データ53を時間帯別に分類する。制御部10は、例えば、交通データ53を、第1時間帯のデータと第2時間帯のデータとに分類する。第1時間帯は、判定対象のリンクにイベントの影響が及ぶと推定される時間帯である。例えば、第1時間帯は、イベントが発生した日時またはイベントが発生していた時間帯を含む時間帯である。また、第1時間帯は、イベントが発生した日時またはイベントが発生していた時間帯に近い時間帯であってもよい。対象リンクが、イベントが発生した場所から遠く離れている場合は、イベントの発生日時と対象リンクに影響が波及するタイミングとの時間差が大きいことが推定される。このような場合、制御部10は、第1時間帯を、イベントの発生日時及びイベントが発生していた時間帯を含まない時間帯に設定してもよい。第2時間帯は、第1時間よりも、イベントの発生日時及びイベントが発生していた時間帯のいずれからも離れている時間帯である。第2時間帯は、対象リンクに、イベントの影響が及んでいないと推定される時間帯である。
【0049】
制御部10は、通行方向毎に第1時間帯と第2時間帯のヒストグラムを作成する(ステップS32)。ステップS32で、制御部10は、対象リンクの旅行時間を所定時間単位で階級に分類し、階級を横軸、度数を縦軸としてヒストグラムを作成する。
【0050】
詳細には、ステップS32において、制御部10は、1つの通行方向について、第1時間帯の交通データ53に基づいて第1ヒストグラムを作成する。さらに、この通行方向について、制御部10は、第2時間帯の交通データ53に基づいて第2ヒストグラムを作成する。
【0051】
図8は、制御部10が作成するヒストグラムの例であり、1つの対象リンクの1つの通行方向について制御部10が作成する2つのヒストグラムを示す。ヒストグラムH1は第1ヒストグラムに相当し、ヒストグラムH2は第2ヒストグラムに相当する。理解の便宜を図るため、図8には、交通データ53の度数分布を示す近似曲線をヒストグラムH1、H2として図示する。
【0052】
図8の例では、イベントの影響によってヒストグラムの差異が生じている。
ヒストグラムH1は、ヒストグラムH2に比べて裾が広く、中央値から離れた階級に多くのデータを含んでいる。例えば、図8のヒストグラムH1に含まれるデータの最大値をVa、ヒストグラムH2に含まれるデータの最大値をVbとすると、ヒストグラムH1はVa-Vb間に多数のデータを含む。階級値の高いデータはリンクの旅行時間が長いことを示しているので、図8のヒストグラムH1は、イベントの影響で対象リンクの交通に渋滞または混雑が発生したことを示している。
【0053】
図中にヒストグラムH1の平均値をM1、ヒストグラムH2の平均値をM2として示す。平均値M1、M2は、ヒストグラムH1、H2のデータのうち度数が高いデータの影響を強く受けるため、度数が低い階級における差が反映されにくい。図8の例においても、平均値M1と平均値M2との差は、階級値Vaと階級値Vbの差に比べて明らかに小さい。このように、ヒストグラムの差異を示す指標として平均値を用いると、ヒストグラムH1とヒストグラムH2との差が小さく評価されてしまうため、イベントの影響を精度よく判定することが難しい。
【0054】
図4に戻り、制御部10は、第1時間帯の第1ヒストグラムと、第2時間帯の第2ヒストグラムとの分布間差異を算出する(ステップS33)。例えば、制御部10は、ヒストグラムの分布間差異を示す指標として、第1ヒストグラムと第2ヒストグラムとの距離指標を求める。
【0055】
距離指標としては、例えば、下記式(1)に示すKLダイバージェンスを利用できる。また、下記式(2)に示すJSダイバージェンスを利用してもよい。なお、下記式(1)、(2)、(3)において、Xnは第1ヒストグラムのデータを表すベクトル、Xeは第2ヒストグラムのデータを表すベクトルで、Xn、Xeは共に同サイズのベクトルである。またiは階級のインデックスである。
【0056】
【数1】
【0057】
さらに好ましい距離指標として、下記式(3)に示す距離指標Dを用いてもよい。距離指標Dは、第1ヒストグラムと第2ヒストグラムの間における、度数の小さい階級の差異が強調して反映される。従って、下記式(3)の距離指標Dを利用することによって、度数の小さいデータの影響を反映させて、第1ヒストグラムと第2ヒストグラムの差を求めることができる。下記式(3)において、ベクトルの根号は各ベクトルの要素に対し根号を適用したベクトルを意味する。またTはベクトルの転置を表す記号である。
【0058】
【数2】
【0059】
同様に好ましい距離指標として、下記式(4)で求められるpについて、下記式(5)でpの推定量を求め、これを距離指標としてもよい。下記式(4)においてP(a)はaとなる確率を表す記号である。
【0060】
【数3】
【0061】
さらに、第1ヒストグラムと第2ヒストグラムの差を示す指標として、ヒストグラムの裾の広がりを示す指標を用いてもよい。この指標として、第2ヒストグラムのBパーセンタイル値と、第1ヒストグラムに含まれるデータの最大値との差分Aを算出し、この差を指標として用いることができる。Bは自然数から任意に設定される。図8の例では、ヒストグラムH2の90パーセンタイル値Vxと、ヒストグラムH1に含まれるデータの最大値Vaとの差分Aを、指標として用いることができる。
【0062】
制御部10は、対象リンクが複数の通行方向を有する道路である場合、ステップS33で、通行方向毎にヒストグラムの分布間差異を算出する。
制御部10は、ヒストグラムの分布間差異を判定する閾値を設定する(ステップS34)。閾値は、予め設定された値であり、メモリ21または交通データベース50が記憶する。
【0063】
制御部10は、対象リンクである道路の規模に応じて閾値を補正する閾値補正処理を実行する(ステップS35)。閾値補正処理の詳細は後述する。
制御部10は、ステップS33で算出した分布間差異を、閾値と比較することにより、対象リンクに対するイベントの影響度を判定する(ステップS36)。
【0064】
ステップS36において、制御部10は、例えば、ステップS33で算出した分布間差異の値が閾値以上である場合に、対象リンクへのイベントの影響があったと判定し、分布間差異の値が閾値未満の場合に、対象リンクへのイベントの影響がなかったと判定する。対象リンクが複数の通行方向を有する道路である場合、制御部10は、ステップS36において、通行方向毎のヒストグラムの分布間差異を、それぞれ閾値と比較する。これにより、制御部10は、通行方向毎にイベントの影響度を判定する。さらに、制御部10は、通行方向毎の判定結果を合わせて、対象リンクの判定結果とする。
【0065】
例えば、対象リンクのいずれかの通行方向でイベントの影響があったと判定された場合、対象リンクへのイベントの影響があったと判定する。また、全ての通行方向でイベントの影響がなかったと判定された場合、対象リンクへのイベントの影響がなかったと判定する。ステップS36で判定結果を得た後、制御部10は、ステップS17に移行する。
【0066】
図4の処理において、制御部10は、イベントが対象リンクの交通状況に与える影響度を、対象リンクにおける通行方向毎に判定する。制御部10は、対象リンクが規模の大きい道路である場合に上記動作を行い、対象リンクが規模の大きい道路でない場合は、対象リンクの通行方向別の交通データ53を合成してもよい。この場合、対象リンクについて、通行方向を限定せずに、すなわち通行方向を分類せずにヒストグラムが作成され、全ての通行方向を合わせた交通状況について、イベントの影響度が判定される。
【0067】
このように、制御部10は、対象リンクが規模の大きい道路である場合に、イベントが対象リンクの交通状況に与える影響度を、対象リンクにおける移動方向毎に判定し、対象リンクが規模の大きい道路でない場合、イベントが対象リンクの交通状況に与える影響度を、前記対象リンクにおける移動方向を分類せずに判定する。
道路の規模が小さい場合、一の方向の通行が他方の方向の通行の影響を受け易い。従って、規模が小さい道路については、通行方向を区別せずにイベントによる影響度を判定することが好適な場合が有る。
【0068】
また、道路の規模が小さい場合、車両の通行量が多くないため、交通データ53のデータ数が少ない傾向がある。このような道路についてイベントの影響度を判定する場合に、従来の手法のように旅行時間等の平均値を用いると、データ量が少ないことが原因で判定の精度が低下することがある。例えば、特許文献1では、予測対象のエリアの平日の平均混雑度や休日の平均混雑度を利用して混雑予測を行うが、データの平均を利用するため、データの数が不足している場合や、データに外れ値が含まれる場合に、精度が低下する。
これに対し、本実施形態では、対象リンクのヒストグラムの分布間差異を求めることによって、交通状況に関するデータの平均を利用する場合に比べ、高い精度で判定を行うことが可能である。さらに、規模が大きくない道路について通行方向別の交通データ53を合成することによって、ヒストグラムの作成に用いるデータの見かけ上のデータ数を増すことができ、判定精度をより一層向上させることができる。
【0069】
[2-3.閾値補正処理]
図5は、図4のステップS35に示した閾値補正処理を詳細に示す。
制御部10は、対象リンクが規模の大きい道路でない場合に、閾値の補正を行う。規模の大きい道路とは、中央分離帯を有すること、及び/又は、幅員が設定値を超えること、を充足する道路である。制御部10は、対象リンクが規模の大きい道路であるか否かをステップS51~S53で選別する。以下の説明では、規模の大きい道路でない一例として、中央分離帯を有さず、かつ、幅員が設定値以下の道路を、「小規模な道路」と呼ぶ。
【0070】
制御部10は、対象リンクが中央分離帯を有する道路であるか否かを判定する(ステップS51)。中央分離帯を有する道路である場合(ステップS51;YES)、制御部10はステップS36に移行する。
【0071】
対象リンクが中央分離帯を有する道路でない場合(ステップS51;NO)、制御部10は、対象リンクが一方通行の道路であるか否かを判定する(ステップS52)。一方通行の道路である場合(ステップS52;YES)、制御部10はステップS36に移行する。
【0072】
対象リンクが一方通行の道路でない場合(ステップS52;NO)、制御部10は、対象リンクの幅員が設定値以下であるか否かを判定する(ステップS52)。幅員が設定値より大きい場合(ステップS53;NO)、制御部10はステップS36に移行する。
【0073】
対象リンクの幅員が設定値以下である場合(ステップS53;YES)、制御部10は、閾値を補正し(ステップS54)、ステップS36に移行する。
ステップS54において、制御部10は、ステップS34(図4)で設定された閾値を補正することによって通行方向毎に異なる閾値を生成する。
【0074】
上述のように、幅員が小さい道路は交通データ53のデータ数が少ないので、精度良く判定を行うことが難しい。本実施形態では、対向車線の交通データを利用して閾値を補正することによって、判定の精度を高める。
【0075】
ここで、対象リンクの通行方向を、第1方向と、第1方向とは逆向きの第2方向とする。制御部10は、対象リンクの第1方向のヒストグラムの裾の特徴量TR1、及び、第2方向のヒストグラムの裾の特徴量TR2を算出する。
ヒストグラムの裾の特徴量TR1、TR2は、データ数(度数)が少ない階級における第1ヒストグラムと第2ヒストグラムとの差を示す指標である。例えば、上述した第2ヒストグラムのBパーセンタイル値と、第1ヒストグラムに含まれるデータの最大値との差分A、或いは、差分Aから求められる値を、特徴量TR1、TR2とすることができる。Bは自然数から任意に設定される。
【0076】
また、制御部10は、対象リンクの第1方向の閾値TR1,base、及び、第2方向の閾値TR2,baseを取得する。閾値TR1,base、TR2,baseは、第1方向及び第2方向における基本の閾値であり、ステップS34で設定される。閾値TR1,base、TR2,baseは、同一の値であってもよい。
制御部10は、対象リンクの第1方向の閾値を、下記式(6)により算出し、第2方向の閾値を、下記式(7)により算出する。
【0077】
ThrR1=TR1,base+αTR2 ・・・(6)
ThrR2=TR2,base+αTR1 ・・・(7)
ここで、αは所定の定数である。
【0078】
このように、閾値補正処理では、対象リンクが規模の大きい道路でない場合に、イベントが対象リンクの第1方向の交通状況に与える影響度を判定する場合の閾値を、対象リンクの第2方向の交通状況に基づき補正する。また、対象リンクが規模の大きい道路である場合は、イベントが対象リンクの第1方向の交通状況に与える影響度を判定する場合の閾値に、第2方向の交通状況に基づき補正する処理を行わない。これによって、小規模な道路に対するイベントの影響度の判定処理に、対向車線の交通状況を反映させることができる。幅員が狭く、両方向の通行が可能な道路では、一方の通行方向における渋滞や混雑の影響により、他方の通行方向でも渋滞や混雑が発生することが考えられる。このため対向車線の交通状況を反映させることによって、イベントの影響による交通渋滞や交通混雑が発生したかどうかを、高精度で判定できる。
【0079】
[3.他の実施形態]
上記実施形態は本発明を適用した一具体例を示すものであり、発明が適用される形態を限定するものではない。
【0080】
図5に示した閾値補正処理では、小規模な道路について閾値を補正する例を示したが、小規模な道路でない対象リンクについても閾値を補正してもよい。
例えば、制御部10は、ステップS34において、メモリ21または交通データベース50に記憶された閾値を、対象リンクに関する要素に基づき補正してもよい。対象リンクに関する要素とは、例えば、対象リンクと開始ノード或いはイベント発生施設との地理的関係、対象リンクと隣接するリンクとの交通状況の一致性、交通状況の影響を評価する時間帯が挙げられる。対象リンクと開始ノード或いはイベント発生施設との地理的関係は、例えば、開始ノード或いはイベント発生施設から対象リンクまでの距離である。交通状況の一致性とは、対象リンクにおけるヒストグラムの分布間差異と、対象リンクに隣接するリンクにおけるヒストグラムの分布間差異とが、同じ傾向を示しているか否かである。交通状況の影響を評価する時間帯とは、ヒストグラムの作成に係る第1時間帯、及び、第2時間帯と、イベントの発生日時との時間差が閾値以上であるか否かである。これらの要素の少なくともいずれかに基づいて、閾値を補正することにより、判定の精度の向上を図ることができる。例えば、イベントとは無関係の原因によって生じた交通渋滞や交通混雑の影響を排除できる、リンク間の交通渋滞や交通混雑の発生状況のばらつきの影響を抑制できる、等の効果が期待できる。
【0081】
また、例えば、制御部10は、ステップS34において、メモリ21または交通データベース50に記憶された閾値を、対象リンクのヒストグラムに基づき補正してもよい。この場合、制御部10は、第1ヒストグラムと第2ヒストグラムの裾の広がりの差に応じて、閾値を補正してもよい。例えば、制御部10は、上述した差分Aが設定値以上の場合は閾値を緩く補正することにより、イベントの影響があったと判定されやすくし、差分Aが設定値未満の場合は閾値を厳しく補正することにより、イベントの影響があったと判定されにくくする構成が挙げられる。この場合、ヒストグラムにおけるデータ数の少ない階級における変化を、判定結果に強く反映させることができ、より精度よくイベントの影響度を判定できる。
【0082】
また、上記実施形態では、制御部10がステップS16で判定を行い、この判定結果に基づいて候補となるリンクの有無を判定する例を説明した。この例では、対象リンクに対するイベントの影響度の判定、及び、探索範囲を拡大するか否かの判定が、実質的に、同じ基準を用いて行われる。
【0083】
制御部10は、ステップS19で候補リンクの有無を判定する場合に、ステップS16の判定処理とは異なる基準で判定を行ってもよい。すなわち、判定ステップにおいて、複数の閾値を用いて判定を行う構成であってもよい。
例えば、制御部10は、ステップS36で対象リンクについて判定を行った後、異なる閾値を用いて、候補リンクの有無を特定するための第2の判定を行ってもよい。この第2の判定では、ステップS36の判定よりも緩い閾値を用いてもよい。具体的には、ステップS36でイベントの影響度が無いと判定された対象リンクに対して、対象リンクに隣接するリンクを候補リンクにすると判定されるように、第2の判定の閾値が定められる。この場合、制御部10は、ステップS36の判定の後、第2の判定の閾値を通行方向毎に設定すればよい。この場合、探索範囲を拡大する処理において、イベントの影響が及ぶ可能性のあるリンクを漏れなく探索範囲に含めることができ、イベントの影響度の判定を、より精度よく行うことができる。
【0084】
[4.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成の具体例である。
【0085】
(第1項)交通状況に対するイベントの影響を判定する情報処理方法であって、前記イベントの発生位置に関連するリンクを対象リンクに設定する第1リンク設定ステップと、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を判定する判定ステップと、前記判定ステップの判定結果に基づき、前記対象リンクに隣接するリンクを新たな前記対象リンクとして設定する第2リンク設定ステップと、を含み、前記第2リンク設定ステップで特定した前記対象リンクに対して前記判定ステップの処理を行う、情報処理方法。
第1項の情報処理方法によれば、イベントが対象リンクの交通状況に与える影響度を判定した結果をもとに新たな対象リンクを設定することにより、判定の対象を拡大するので、イベントが交通状況に与える影響を判定する処理を効率よく行うことができる。
【0086】
(第2項)前記判定ステップにおいて、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度が低いと判定した場合に、前記第2リンク設定ステップを実行しない、第1項記載の情報処理方法。
第2項の情報処理方法によれば、イベントによる影響を受けている可能性が低いリンクを判定の対象としないので、イベントが交通状況に与える影響を判定する処理を、より効率よく行うことができる。
【0087】
(第3項)前記判定ステップにおいて、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を、前記対象リンクにおける移動方向毎に判定する、第1項または第2項記載の情報処理方法。
第3項の情報処理方法によれば、イベントが交通状況に与える影響を、より高精度で判定できる。
【0088】
(第4項)前記判定ステップにおいて、前記対象リンクが規模の大きい道路である場合に、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を、前記対象リンクにおける移動方向毎に判定する、第3項記載の情報処理方法。
第4項の情報処理方法によれば、規模が大きくない道路では交通状況に関するデータが少ない可能性があることを考慮し、イベントが交通状況に与える影響を、より高精度で判定できる。
【0089】
(第5項)前記判定ステップにおいて、第1時間帯における前記対象リンクの旅行時間の分布を示す第1ヒストグラムと、前記第1時間帯よりも前記イベントの発生時刻から離れている第2時間帯における前記対象リンクの旅行時間の分布を示す第2ヒストグラムと、を作成し、前記第1ヒストグラムと前記第2ヒストグラムとの分布間差異に基づいて、前記対象リンクの交通状況に対する前記イベントの影響度を判定する、第1項から第4項のいずれか1項に記載の情報処理方法。
第5項の情報処理方法によれば、時間帯毎に複数のヒストグラムを作成し、ヒストグラムの分布間差異を利用して判定を行う。これにより、データの外れ値の影響や、データが少ないことによる影響を抑制し、イベントが交通状況に与える影響を、より高精度で判定できる。
【0090】
(第6項)前記判定ステップにおいて、前記第1ヒストグラムと前記第2ヒストグラムとの間の距離指標を算出し、前記距離指標を閾値と比較することにより、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度の有無を判定する、第5項記載の情報処理方法。
第6項の情報処理方法によれば、複数のヒストグラムの距離指標を利用することによって、対象リンクにおいて現れるヒストグラムの差異を正確に評価できる。これにより、イベントが交通状況に与える影響を、より高精度で判定できる。
【0091】
(第7項)前記判定ステップにおいて、前記第1ヒストグラムと前記第2ヒストグラムとの分布の広がりの差に基づいて前記閾値を補正し、補正した前記閾値を用いて判定を行う、第6項記載の情報処理方法。
第7項の情報処理方法によれば、複数のヒストグラムの広がりの差に基づいて閾値を補正することにより、イベントが交通状況に与える影響を、より高精度で判定できる。
【0092】
(第8項)前記判定ステップにおいて、前記対象リンクが、第1方向、及び、前記第1方向とは逆の第2方向の通行が可能な道路である場合に、前記イベントが前記対象リンクの前記第1方向の交通状況に与える影響度を判定する場合の前記閾値を、前記対象リンクの前記第2方向の交通状況に基づき補正する、第6項または第7項記載の情報処理方法。
第8項の情報処理方法によれば、対象リンクにおける交通状況を、対向する方向における交通状況を加味して評価し、判定を行うことができる。これにより、イベントが交通状況に与える影響を、より高精度で判定できる。
【0093】
(第9項)前記判定ステップにおいて、前記対象リンクが規模の大きい道路でない場合に、前記イベントが前記対象リンクの前記第1方向の交通状況に与える影響度を判定する場合の前記閾値を、前記対象リンクの前記第2方向の交通状況に基づき補正する、第8項記載の情報処理方法。
第9項の情報処理方法によれば、対象リンクが小規模な道路である場合に、対象リンクにおける交通状況を、対向する方向における交通状況を加味して評価する。これにより、イベントが交通状況に与える影響を、より高精度で判定できる。
【0094】
(第10項)前記第1リンク設定ステップでは、前記発生位置に対応付けられた施設のうち前記イベントの種類に関連付けられた種類の前記施設に近いリンクを、前記対象リンクとして設定する、第1項から第9項のいずれか1項に記載の情報処理方法。
第10項の情報処理方法によれば、探索の起点となる対象リンクを、イベントの種類に対応して適切に設定することができる。これにより、イベントが交通状況に与える影響を、より高精度で判定できる。
【0095】
(第11項)交通状況に対するイベントの影響を判定する情報処理装置であって、前記イベントの発生位置に関連するリンクを対象リンクに設定し、前記イベントが前記対象リンクの交通状況に与える影響度を判定する判定処理を実行し、前記判定処理の結果に基づき、前記対象リンクに隣接するリンクを新たな前記対象リンクとして設定し、特定した前記対象リンクに対して前記判定処理を行う、情報処理装置。
第11項の情報処理装置によれば、イベントが対象リンクの交通状況に与える影響度を判定した結果をもとに新たな対象リンクを設定することにより、判定の対象を拡大するので、イベントが交通状況に与える影響を判定する処理を効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0096】
1…情報処理装置、10…制御部、11…プロセッサ、12…情報取得部、13…処理部、21…メモリ、31…通信部、32…入力部、33…出力部、50…交通データベース、51…道路データ、52…施設データ、53…交通データ、54…開始位置設定データ、55…予測データ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8