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特許7591423ケーシングロッドのロッド先端位置計測システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】ケーシングロッドのロッド先端位置計測システム
(51)【国際特許分類】
   E21B 7/00 20060101AFI20241121BHJP
   E02D 7/00 20060101ALI20241121BHJP
   E02F 5/02 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E21B7/00 A
E02D7/00 Z
E02F5/02 E
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2021025814
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2022127682
(43)【公開日】2022-09-01
【審査請求日】2023-12-20
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 第14回地盤改良シンポジウム 開催日: 令和2年12月3日(木)・4日(金)
(73)【特許権者】
【識別番号】303057365
【氏名又は名称】株式会社安藤・間
(73)【特許権者】
【識別番号】520104374
【氏名又は名称】システム建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592093833
【氏名又は名称】青山機工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】足立 有史
(72)【発明者】
【氏名】グエン ホン ソン
(72)【発明者】
【氏名】高田 守康
(72)【発明者】
【氏名】高植 俊彰
【審査官】松本 泰典
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-133296(JP,A)
【文献】特開2003-314179(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0038849(US,A1)
【文献】特開2013-002197(JP,A)
【文献】特開2019-019453(JP,A)
【文献】特開平11-131469(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21B 7/00
E02F 5/02
E02D 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の管状のケーシングロッドが継ぎ足されたケーシング掘削機において、
それぞれの前記ケーシングロッドの内部に配置される位置計測装置と、
前記互いに継ぎ足された複数のケーシングロッドのジョイント部において、それぞれのケーシングロッドの内部に取り付けられた複数のアンテナと、
前記互いに継ぎ足された複数のケーシングロッドの内部において、前記位置計測装置と前記アンテナとの間に接続され、前記位置計測装置で得られた計測データを送受信する通信ケーブルとを具備し、
前記複数のアンテナは、前記互いに継ぎ足された複数のケーシングロッドのジョイント部において、一方のケーシングロッドから他方のケーシングロッドに向けて前記ケーシングロッドの継ぎ足し方向に互いに逆向きに延び、また、前記複数のアンテナは、両アンテナの間にロッドの半径方向に隙間が形成され、且つ、両アンテナの先端部分同士は前記ケーシングロッドの継ぎ足し方向にオーバーラップして設置され、アンテナ同士間で無線通信を行い
前記ケーシングロッドは一端に凸側部分を有し、他端に嵌合孔が形成された側部分を有し、ケーシングロッドを継ぎ足すとき、一方のケーシングロッドの凸側部分を他方のケーシングロッドの凹側部分の嵌合孔に挿入して繋いで行き、
前記凸側部分の前端部には前記複数のアンテナのうちの第1アンテナが取り付けられ、
前記凹側部分の嵌合孔内には前記複数のアンテナのうちの第2アンテナが取り付けられ、
前記位置計測装置からは通信ケーブルが延びて第1アンテナ及び第2アンテナに接続されていることにより、前記管状のケーシングロッド内においては有線による通信を行い、また、ケーシングロッドのジョイント部においては前記オーバーラップして設置された前記第1アンテナ及び第2アンテナに間で無線通信を行い、
前記ケーシングロッドの凸側部分においては、前端面から後方へ向けて当該ケーシングロッドの管体内部にアンテナ設置孔が形成され、
前記第1アンテナは当該アンテナ設置孔の中に収容設置され、
ケーシングロッドの凹側部分は、前記凸側部分受け入れる嵌合孔を有するとともに、この嵌合孔の終端となる段差面を有し、
前記段差面近辺の内周面には、前記第2アンテナを収容設置するアンテナ設置部が設けられており、
前記第2アンテナは当該アンテナ設置部の中に収容設置され、
前記一方のケーシングロッドの凸側部分を他方のケーシングロッドの凹側部分の嵌合孔に挿入したとき、前記アンテナ設置孔の中に収容設置された前記第1アンテナと、前記アンテナ設置部の中に収容設置された前記第2アンテナとは、ケーシングロッドの半径方向へ隙間を開けて対面配置され、
前記第1アンテナは、アンテナ設置孔の中に収容設置された状態で、その先端がケーシングロッドの凸側部分の前端面よりも前方へ突出することがないように前記第1アンテナの設置位置が設定され、
前記ケーシングロッドの凹側部分においては、アンテナ設置部は、最奥端から後方へ窟孔として延び、前記段差面に一致した部位でハーフパイプ状の溝に連続して嵌合孔の空間部に露出して延び、
前記第2アンテナは、前記アンテナ設置部の中に、窟孔からハーフパイプ状の溝にまたがって収容設置されることにより、前記第1アンテナと、前記第2アンテナは、ケーシングロッドのジョイント部においてオーバーラップして配置される、
ことを特徴とするケーシングロッドのロッド先端位置計測システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、掘削機等に用いられるケーシングロッドのロッド先端位置計測システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、地下に建造物を構築する際には、周りの土砂の崩落を防止するために、土留めのための連続壁が構築される。このような連続壁を構築するには例えば水平回転式掘削機(以下、単に「掘削機」という)が用いられる。代表的な回転式掘削工法としてはオーガー撹拌工法(SMW工法)があり、この技術は、例えば特許文献1等により開示されている。
【0003】
掘削機により上記のような連続壁を構築するには、連続壁が隣接する敷地との間で敷地境界線近くで構築されるため、掘削孔施工の精度管理が重要になる。そのためには、掘削孔施工中における掘削機の先端位置を正確に計測することが必要で、かかる掘削機の先端位置を計測する技術としては例えば特許文献2に記載されたものがある。
【0004】
上記特許文献2に記載された従来技術は、中空のロッドの内部に、密封された傾斜測定装置と、アンテナ部材(例:棒体)とを収容し、傾斜測定装置の容器の上下に、アンテナ部材が挿入される凹部が形成される一方、この凹部には、容器の内側にアンテナ部(無線回路)が設けられ、傾斜センサで測定された測定データは、アンテナ部とアンテナ部材との間で送受信されてデータ収集部へ無線で送信される、というものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】HYPERLINK "javascript:void(0)" HYPERLINK "javascript:void(0)" 特開平11-131469号公報
【文献】HYPERLINK "javascript:void(0)" HYPERLINK "javascript:void(0)" 特開2017-133296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献2に記載された技術は、簡易な構成により掘削機の先端位置を計測することができるという利点はあるが無線通信による作動不良や通信障害を受けやすく、計測データの伝送のためには未だ十分とはいえなかった。
【0007】
本発明はこのような問題に鑑みてなされたもので、その目的は、ケーシングロッドにおけるロッド先端位置の計測データを適所に配置した有線伝送路と無線伝送路により伝送し、精度よく、且つ確実な送受信によりロッド先端位置を認定することが可能なケーシングロッドのロッド先端位置計測システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は上記目的を達するために、複数の管状のケーシングロッドが継ぎ足されたケーシング掘削機において、それぞれの前記ケーシングロッドの内部に配置される位置計測装置と、前記互いに継ぎ足された複数のケーシングロッドのジョイント部において、それぞれのケーシングロッドの内部に取り付けられた複数のアンテナと、前記互いに継ぎ足された複数のケーシングロッドの内部において、前記位置計測装置と前記アンテナとの間に接続され、前記位置計測装置で得られた計測データを送受信する通信ケーブルとを具備し、前記複数のアンテナは、前記互いに継ぎ足された複数のケーシングロッドのジョイント部において、一方のケーシングロッドから他方のケーシングロッドに向けて前記ケーシングロッドの継ぎ足し方向に互いに逆向きに延び、また、前記複数のアンテナは、両アンテナの間にロッドの半径方向に隙間が形成され、且つ、両アンテナの先端部分同士は前記ケーシングロッドの継ぎ足し方向にオーバーラップして設置され、アンテナ同士間で無線通信を行い前記ケーシングロッドは一端に凸側部分を有し、他端に嵌合孔が形成された凹側部分を有し、ケーシングロッドを継ぎ足すとき、一方のケーシングロッドの凸側部分を他方のケーシングロッドの凹側部分の嵌合孔に挿入して繋いで行き、前記凸側部分の前端部には前記複数のアンテナのうちの第1アンテナが取り付けられ、前記凹側部分の嵌合孔内には前記複数のアンテナのうちの第2アンテナが取り付けられ、前記位置計測装置からは通信ケーブルが延びて第1アンテナ及び第2アンテナに接続されていることにより、前記管状のケーシングロッド内においては有線による通信を行い、また、ケーシングロッドのジョイント部においては前記オーバーラップして設置された前記第1アンテナ及び第2アンテナに間で無線通信を行い、前記ケーシングロッドの凸側部分においては、前端面から後方へ向けて当該ケーシングロッドの管体内部にアンテナ設置孔が形成され、前記第1アンテナは当該アンテナ設置孔の中に収容設置され、ケーシングロッドの凹側部分は、前記凸側部分受け入れる嵌合孔を有するとともに、この嵌合孔の終端となる段差面を有し、前記段差面近辺の内周面には、前記第2アンテナを収容設置するアンテナ設置部が設けられており、前記第2アンテナは当該アンテナ設置部の中に収容設置され、前記一方のケーシングロッドの凸側部分を他方のケーシングロッドの凹側部分の嵌合孔に挿入したとき、前記アンテナ設置孔の中に収容設置された前記第1アンテナと、前記アンテナ設置部の中に収容設置された前記第2アンテナとは、ケーシングロッドの半径方向へ隙間を開けて対面配置され、前記第1アンテナは、アンテナ設置孔の中に収容設置された状態で、その先端がケーシングロッドの凸側部分の前端面よりも前方へ突出することがないように前記第1アンテナの設置位置が設定され、前記ケーシングロッドの凹側部分においては、アンテナ設置部は、最奥端から後方へ窟孔として延び、前記段差面に一致した部位でハーフパイプ状の溝に連続して嵌合孔の空間部に露出して延び、前記第2アンテナは、前記アンテナ設置部の中に、窟孔からハーフパイプ状の溝にまたがって収容設置されることにより、前記第1アンテナと、前記第2アンテナは、ケーシングロッドのジョイント部においてオーバーラップして配置される、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、ケーシングロッドにおけるロッド先端位置の計測データを適所に配置した有線伝送路と、一対のアンテナ間通信による無線伝送路により伝送ようにしたため、精度よく、且つ確実な送受信によりケーシングロッドのロッド先端位置を計測することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明のケーシングロッド先端位置計測システムが適用されるケーシング掘削機の概略構成を示す全体図である。
図2】(a)本実施の形態のシステムにおいて採用されるケーシングロッドの内部構造及びその内部におけるケーシングロッド先端位置計測装置の設置状態を示す断面図である。(b)図2(a)において部分的な破断断面部を拡大して示す破断面拡大図である。
図3】上記実施の形態に係るケーシングロッド先端位置計測システムの収納ボックスの内部構造を示す平面断面図である。
図4】本発明の一実施の形態に係るケーシングロッド先端位置計測システムの測器ノードの内部構造を示す平面断面図である。
図5】上記実施の形態に係るケーシングロッド先端位置計測システムのジョイント部の構造を示す部分側面図である。
図6】(a)上記実施の形態で用いられるケーシングロッドの構造を示す正面図である。(b)図6(a)において示されたケーシングロッドを側方から見た側面図である。
図7】(a)図6に示されたケーシングロッドを反時計方向に90度回転させてロッドの凸側部分の構造を示す拡大正面図である。(b)図7(a)において示されたケーシングロッドの凸側部分を側方から見て内部構造を示す拡大側面断面図である。
図8】(a)図7に示されたケーシングロッドの凹側部分を側方から見て内部構造を示す拡大側面断面図である。(b)図8(a)において示されたケーシングロッドの凹側部分を後ろから見た拡大背面図である。
図9図6乃至図8に示されたケーシングロッドの凸側部分におけるアンテナの取り付け状態を表す斜視図である。
図10図6乃至図8に示されたケーシングロッドの凹側部分におけるアンテナの取り付け状態を表す斜視図である。
図11】上記実施の形態に係るケーシングロッド先端位置計測システムにおける計測結果の表示画面(専用ソフトウェアの処理結果画面)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明のロッド先端位置計測システムが適用される、回転式のケーシング掘削機(以下、単に「掘削機」という)の概略構成を示す全体図である。掘削機1は、駆動部3と、ケーシングロッド(以下、単に「ロッド」という)5と、データ収集・解析部7等を備えて成る。
【0015】
掘削機1のベースマシン2には鉛直方向に延びてロッド5を支持するガイドバー4が設けられている。ガイドバー4には、カッターを回転駆動する駆動部3が配置され、この駆動部3はベースマシン2とガイドバー4にわたって設置された昇降装置(図示していない)によりガイドバー4に沿って昇降される。
【0016】
駆動部3の先端には、ロッド5が接続される。ロッド5は複数個(5a、5b、5c、5d)が用いられ、複数のロッド5は、互いにジョイント部6において接続されて削孔装置を構成している。各ロッド5の外周にはスクリュー羽が設けられる場合がある。また、複数のロッド5の先端51にはボーリングビット又は撹拌翼が固定される。なお、掘削機1は、例えば、3連のオーガーを有する。
【0017】
ベースマシン2には、測定データをデータ処理するデータ収集・解析部7が配置される。データ収集・解析部7は、例えばコンピュータによって構成される。当該コンピュータとしては、例えばパーソナルコンピュータやタブレット端末が用いられても良い。データ収集・解析部7は、各ロッド5の位置、或いは傾斜の測定データを収集し、オーガーの傾斜、或いはロッド5の先端位置を算出することができる。
【0018】
次に、ロッド先端位置計測装置(以下、単に「位置計測装置」という)について説明する。図2は、本実施の形態のシステムにおいて採用されるロッド5の内部構造及びその内部における位置計測装置の設置状態を示す断面図である。図2において、符号10は位置計測装置を示す。ロッド5は図1に示されたロッド5a、5b、5cが例として示され、且つロッド5bについての位置計測装置10の設置状態が示されている。各ロッド5a、5b、5cには1基又は複数の位置計測装置10が設けられている。位置計測装置10はロッド5bの内面に固定取り付けされ、この位置計測装置10からはロッド5cの方へ向けて通信ケーブル11aが延びている。通信ケーブル11aはロッド5bとロッド5cとのジョイント部6の近辺でロッド5b側のアンテナである第1アンテナ12aに接続されている。また、位置計測装置10からはロッド5aの方へ向けても通信ケーブル11bが延びている。通信ケーブル11bはロッド5bとロッド5aとのジョイント部6の近辺でロッド5b側のアンテナである第2アンテナ12bに接続されている。ロッド5b側の第1アンテナ12aの隣接位置にはロッド5c側の位置計測装置10から延びた通信ケーブル11bに接続された第2アンテナ12bが設置され、上記第1アンテナ12aと第2アンテナ12bとは、互いに逆向きになって近接した状態でオーバーラップして配置されている。
【0019】
図3は位置計測装置10の内部構造を示す平面図である。位置計測装置10は、ロッド先端51の位置計測を行う測器ユニット13と、測器ユニット13に電力を供給するバッテリー14と、これら測器ユニット13及びバッテリー14を収納保護する収納ボックス15とから成る。図3において、測器ユニット13とバッテリー14は収納ボックス15の内部に横並びに設置されて収納ボックス15の内部底面に固定取り付けされると共に、測器ユニット13とバッテリー14の間は電線23で接続されている。測器ユニット13とバッテリー14は収納ボックス15の内部側面に固定取り付けされていてもよい。収納ボックス15の左右端部の側壁には、通信ケーブル11a、11bを接続するためのケーブル接続端子16a、16bが設けられ、ケーブル接続端子16aには、図2を参照して説明された通信ケーブル11aが接続される一方、ケーブル接続端子16bには、通信ケーブル11bが接続される。収納ボックス15はまた、内部に水や泥水が侵入しないよう気密に保たれており、本実施の形態では、水圧10MN/m2 の防水試験をクリアし得る程度の防水機能を有している。なお、図3においては、位置計測装置10の内部構造をより分かりやすく示すため、収納ボックス15の蓋は外してある。
【0020】
図4は測器ユニット13の内部構造を示す平面図である。測器ユニット13は、ロッド先端51の位置計測を行うためのセンサーである2軸傾斜計17と、2軸傾斜計17の計測動作により取得された測定データを通信機へ向けて送信したり、通信機からの指令を受信したりする通信部18と、これら2軸傾斜計17及び通信部18を収容するボックス体19とから成る。2軸傾斜計17は傾斜測定センサーとして市販されているものが使われる。通信部18は回路基板の構造に製作され、ボックス体19の底部に固定取り付けされる。2軸傾斜計17は通信部18の回路基板の所定の位置にコネクター接続或いは半田付けなどの方法により接続されている。ボックス体19は、上記収納ボックス15と同様、内部に水等が侵入しないよう気密に保たれており、防水機能を有している。また、ボックス体19の左右端部の側壁には、電線取付部20a、20bが設けられている。さらにボックス体19の中央部分の内壁には、ボックスの外部から内部へ入った電気コード又は通信ケーブル11a、11bを2軸傾斜計17及び通信部18といった電子部品に接続するに当たって、線材の引っ張り等により電子部品に損傷が生じないよう仲立ちを行うための中継端子21が設けられている。図4においても図3の場合と同様、測器ユニット13の内部構造をより分かりやすく示すため、ボックス体19の蓋は外してある。
【0021】
図5は、図2に示したロッド5bとロッド5cとのジョイント部分における第1アンテナ12aと第2アンテナ12bの設置構造を示す正面図である。図5に示すように、ロッド5b側においては第1アンテナ12aがロッド5cの方に先端を向けてロッド5bの外周近辺に設置されている。他方、ロッド5c側においては第2アンテナ12bがロッド5bの方に先端を向けてロッド5cの外周から半径方向へ少し離れた位置に設置されている。第1アンテナ12aは、その先端がロッド5bとロッド5cとのジョイント部分と略同じ位置に設置されているのに対して、第2アンテナ12bは、その先端がロッド5bとロッド5cとのジョイント部分よりもロッド5b側に進入した位置に設置されている。また第1アンテナ12aのロッド5bの中心からの距離寸法(dとする)は、第2アンテナ12bのロッド5cの外周から中心からの距離寸法(Dとする)よりも小さく、
d < D
の関係に設定されている。これにより、第1アンテナ12aと第2アンテナ12bとの間にはロッドの半径方向に隙間ができ、且つ、両部材の先端部分同士はオーバーラップした状態で支持されている。
【0022】
この、第1アンテナ12aと第2アンテナ12bとの間にロッドの半径方向に隙間を作り、且つ、両部材の先端部分同士がオーバーラップした状態によるロッド5(例えば5b、5c)の結合構造および第1アンテナ12aと第2アンテナ12bとの取付け構造の一実現例について説明する。
【0023】
図6(a)はロッド5の構造を示す正面図であり、図6(b)は図6(a)において示されたロッド5を側方から見た側面図である。図7(a)は図6に示されたロッド5を反時計方向に90度回転させて当該ロッド5の凸側部分(Aで示す)を拡大して示す拡大正面図である。図7(b)は図7(a)において示されたロッド5の凸側部分Aを側方から見て内部構造を示す拡大側面断面図である。図8(a)は図7に示されたロッド5の凹側部分(Bで示す)を側方から見て内部構造を示す拡大側面断面図である。図8(b)は図8(a)において示されたロッド5の凹側部分Bを後ろから見た拡大背面図である。
【0024】
図6(a)に示されるように、ロッド5は一端に凸側部分Aを有し、他端に凹側部分Bを有し、ロッド5を継ぎ足すとき、一方のロッド(例えば図2の5b)の凸側部分Aを他方のロッド(例えば図2の5c)の凹側部分の嵌合孔31に挿入して繋いで行く。図6(a)において、符号12aは第1アンテナ12aを示す。また、図7に示されるように、第1アンテナ12aは、ロッド5の凸側部分Aにおいて、ロッド5の開放端面(前端面5gとする)から後方へ向けて当該ロッド5の管体内部にアンテナ設置孔30が形成され、当該アンテナ設置孔30の中に収容設置される。アンテナ設置孔30は、ロッド5の凸側部分Aの前端面5gから後方へ、トンネル構造の窟孔を穿設して成形され、前端面5gに対応する出口部分において外周面5fを削って一部が外部に表れる露出部30aとなっている。
【0025】
第1アンテナ12aは、アンテナ設置孔30の中に収容設置された状態で、その半径方向最外側がロッド5の外周面5fより外径側へはみ出すことがないように第1アンテナ12aの直径とアンテナ設置孔30の径が設定される一方、先端部分がアンテナ設置孔30の露出部30aにより外部に表れるようになっている。また、第1アンテナ12aは、アンテナ設置孔30の中に収容設置された状態で、その先端がロッド5の前端面5gよりも前方へ突出することがないように第1アンテナ12aの設置位置が設定されている。なおロッド5には、その凹側部分Bに近い場所の内部に位置計測装置10が配置されている。
【0026】
図8に示されるように、ロッド5の凹側部分Bにおいては、内部に、隣接するロッド5(例えば、図2におけるロッド5bに対して5cが相当する)の凸側部分Aを受け入れ収容する嵌合孔31が設けられている。嵌合孔31は、凸側部分Aの外径と略同じかそれよりも少し大きな内径寸法を持ち(上記受入れ収容のため)、ロッド5の後端から前方へ向けて延びており、その前端において段差面5hが形成されて終端となっている。段差面5hは、隣接するロッド5の凸側部分Aが嵌合孔31に挿入されたとき、その前端面5gが当接する面である。
【0027】
ロッド5の凸側部分Aのアンテナ設置孔30に対応する凹側部分Bの段差面5h部分近辺の内周面5iには、第2アンテナ12bを収容設置するアンテナ設置部32が設けられている。図8においてアンテナ設置部32は、嵌合孔31の内周面5iの天井部において、内周面5iの壁を削ってハーフパイプ状の溝を形成し、内周面5iが段差面5hに突き当たった部位において、上記ハーフパイプ状の溝に連続してトンネル構造の窟孔を穿設して成形されている。ここで「ハーフパイプ」とは、円管を縦軸方向へ半分に切って出来た半円経路部材(例:雨樋)を表す。すなわちアンテナ設置部32は、最奥端から後方(図8(a)で右方)へ窟孔として延び、段差面5hに一致した部位でハーフパイプ状の溝に連続して延び、後端部5kにおいて終わっている。したがってアンテナ設置部32は、ハーフパイプ状の溝に連続した部分から先(後方)は溝形状であるから、嵌合孔31の空間部に露出していることになる。
【0028】
第2アンテナ12bは、当該アンテナ設置部32の中に、窟孔からハーフパイプ状の溝にまたがって後方向き、すなわち、先端が嵌合孔31に露出する方向へ向けて収容設置される。したがって、第2アンテナ12bもまた、嵌合孔31の空間部に露出することになる。第2アンテナ12bは、アンテナ設置部32の中に収容設置された状態で、その半径方向最内側が嵌合孔31の空間部側へはみ出すことがないように第2アンテナ12bの直径とアンテナ設置部32(特に、ハーフパイプ状の溝部分)の径が設定されている。また、第2アンテナ12bは、アンテナ設置部32の中に収容設置された状態で、その先端がロッド5の後端部5kに到達するように第1アンテナ12aの設置位置が設定されている。したがって、第2アンテナ12bは、アンテナ設置部32の中に収容設置されたとき、その先端部分が段差面5hよりも後方(右側)まで延びて設置され、この先端部分が嵌合孔31の空間部に露出することになる。
【0029】
図9は、図6乃至図8に示されたロッドの凸側部分Aにおけるアンテナの取り付け状態を表す斜視図である。図9に示されているように、第1アンテナ12aは、アンテナ設置孔30の中に収容設置されている。第1アンテナ12aの半径方向最外側がロッド5の外周面5fより外径側へはみ出してはおらず、アンテナ設置孔30の中に入った状態で先端部分が露出部30aから露出している。また、第1アンテナ12aは、アンテナ設置孔30の中に収容設置された状態で、その先端がロッド5の前端面5gよりも前方へ突出していない。
【0030】
図10は、図6乃至図8に示されたロッド5の凹側部分Bにおけるアンテナの取り付け状態を表す斜視図である。この図10は、ロッド5の凹側部分Bの後端面側から嵌合孔31の内部に入って第2アンテナ12bの取り付け部分を見た状況を表しており、(a)は第2アンテナ12bが未だアンテナ設置部32の中に収容設置されていない状態を示し、(b)は第2アンテナ12bがアンテナ設置部32の中に収容設置されている状態を示す。図10に示されているように、第2アンテナ12bは、アンテナ設置部32の中に収容設置されている。第2アンテナ12bは、嵌合孔31の空間部に露出しており、その半径方向最内側が嵌合孔31の空間部側へはみ出すことなくアンテナ設置部32のハーフパイプ状の溝部分に入っている。また第2アンテナ12bは、アンテナ設置部32の中に収容設置された状態で、その先端部分が段差面5hよりもさらに後方まで延びており、上記ハーフパイプ状の溝部分に入った状態でその先端部分が嵌合孔31の空間部に露出している。
【0031】
以上の構成によりロッド5(5bとする)の凸側部分Aをロッド5(5cとする)の凹側部分Bに挿入して凸側部分Aの前端面5gが凹側部分Bの嵌合孔31内で段差面5hに当接したとき、ロッド5b側の露出部30aがロッド5c側のアンテナ設置部32のハーフパイプ状の溝部分に対面し、第1アンテナ12aと第2アンテナ12bとは、それぞれの先端部分がオーバーラップした状態で対面する。これにより、第1アンテナ12aと第2アンテナ12bとの間で無線通信が行えるようになる。
【0032】
動作説明
以上の構成を有する位置計測装置10を備えた掘削装置について、動作を説明する。掘削動作に際してはケーシングロッドが回転しながら地中へ掘り進んで行き、掘削孔が形成される。この間、各ロッド5a~5dの内部に設置された位置計測装置10はそれぞれのロッド5a~5dの傾斜の度合いを計測し測定値を得る。これらの測定データは各ロッド5a~5dの位置計測装置10からデータ収集・解析部7へ送信される。このデータ送信動作は位置計測装置10の通信部18が動作することにより行われ、送信信号はデータ収集・解析部7に設けられた通信部へ送られる。
【0033】
このデータ送信動作においては、マイクロ波を用いることが望ましく、例えば、周波数が500MHz~1THzの電波を用いることができる。ちなみに、本実施の形態で採用した第1アンテナ12aと第2アンテナ12bとの間に隙間を作り、両部材の先端部分同士をオーバーラップ構成にした無線通信においては920MHzの高周波を用いることで良好な通信状態が得られた。また、上記周波数帯を選ぶことにより通信基板の構成を比較的小型な回路基板で実現でき、測器ユニット13ひいては位置計測装置10をコンパクトにすることができる。また、第1アンテナ12aと第2アンテナ12bとをオーバーラップ構成にした状態での高周波通信動作では水中或いは泥土中などでの減衰がそれほど大きくないことが実験により判明した。すなわち、本実施の形態の構成は非接触ではあるが、両者の間は空間を有する状態となり、この構成について、水中においても60cm以内であれば無線通信が可能であることを通信試験により確認された。
【0034】
上記データ送信動作における送信手順の一例について説明する。各ロッド5a~5dの位置計測装置10がデータ収集・解析部7から測定指示を受信すると、各位置計測装置10の2軸傾斜計17は各ロッド5の傾斜を測定し、測定データを、通信部18により通信ケーブル11及びアンテナ部材12を介して一つ上方のロッド5の位置計測装置10に(本実施の形態でみれば、ロッド5aの位置計測装置10からロッド5bの位置計測装置10に)送信する。さらに、下方側のロッド5aの2軸傾斜計17で測定された結果を受信した一つ上方のロッド5bの位置計測装置10は、当該ロッド5bの傾斜測定結果と、一つ下のロッド5aの測定結果とを、一つ上方のロッド5cの位置計測装置10に送信する。
【0035】
以上のように、順次上方に、下方からの測定結果と自身の測定結果とを通信ケーブル11及びアンテナ12を介して送信して、それぞれの位置計測装置10における測定結果を上方に送信する。
【0036】
また、データ送信動作における送信手順の他の例としては、各ロッド5a~5dの位置計測装置10がデータ収集・解析部7から測定指示を受信すると、各位置計測装置10の2軸傾斜計17は対応するロッド(5aとする)の傾斜を測定し、測定データを、それぞれの通信タイミングで通信部18により通信ケーブル11及びアンテナ部材12を介して一つ上方のロッド(5b)の位置計測装置10に送信する。下方側のロッド5の2軸傾斜計17で測定された結果を受信した上方のロッド5bの位置計測装置10は、何らデータ追加処理をすることなく、そのまま一つ上方のロッド5cの位置計測装置10に送信する。ロッド5cの位置計測装置10もまた、何らデータ追加処理をすることなく、そのまま一つ上方のロッド5dの位置計測装置10に送信する。これを続けてロッド5aの測定データはデータ収集・解析部7へ送信される。
【0037】
ロッド5b以下の測定データもまた、同様にしてデータ収集・解析部7へ送信される。このような通信動作を採ると、全体の位置計測装置10(複数)のうちの1つにおいて2軸傾斜計17が計測不能になっても、通信部18が正常であれば測定データの送信は可能であり(但し、送信される測定データは減る)、ほぼ正確なケーシングロッドのロッド先端51の位置を計測することができる。
【0038】
データ収集・解析部7へ送信された測定データはここで解析処理され、ケーシングロッドのロッド先端51の位置が演算により算出される。本実施の形態では、専用ソフトウェアを備えるパーソナルコンピュータ(端末)をデータ収集・解析部7として用い、一定間隔及び任意の時間において傾斜データを無線通信により取得してケーシングロッドのロッド先端51の位置を計測する。この演算によって算出された結果はデータ収集・解析部7に備えられた出力部から出力される。出力方法としては、プリンターによる文書の出力、スピーカーからの音声による伝達、モニターによる画像表示などがある。本実施の形態では、パーソナルコンピュータの画面25に画像表示する。
【0039】
その画像表示例が図11に示されている。画面25には、そのデータ収集・解析部7における計測タイミング種別表示欄26と、測定データ表示欄27と、ロッド先端51の位置表示欄28等が表示されている。計測タイミング種別表示欄26は計測タイミングを任意にするか、一定時間間隔で行うかの種別を選択する欄である。測定データ表示欄27は各位置計測装置10から送信されてきた測定データを一覧表形式で表示する欄である。ロッド先端51の位置表示欄28は演算により算出されたロッド5(具体的にはロッド5a)の先端51の位置(地中の位置)を画面上にグラフ形式で表す欄である。ロッド先端51の位置表示欄28には、水平面にX,Y座標成分を設定し、このX,Y座標成分に対して直角の方向にZ成分を設定するX、Y、Z三次元直交座標(Zは深さ)を設定してロッド5の先端のX-Z座標位置を表すX-Z位置表示欄28aと、ロッドの先端のY-Z座標位置を表すY-Z位置表示欄28bと、掘削孔の予定中心位置(設計値)からの変位を表す変位表示欄28cとが含まれている。X-Z位置表示欄28aには、掘削進行の任意の時間おける、ロッド先端51の、ロッド深度方向の設計値に対するX座標方向の水平変位がグラフ図として表示されており、最下点が現在のX座標方向の水平変位である。Y-Z位置表示欄28bには、掘削進行の任意の時間おける、ロッド先端51の、ロッド深度方向の設計値に対するY座標方向の水平変位がグラフ図として表示されており、最下点が現在のY座標方向の水平変位である。変位表示欄28cには、掘削孔の設計値を座標の中心(原点)とする角座標が設定され、ロッド5の先端が現在、掘削孔の設計値からどの方向(例えば、東、西、南、または北)へどれ位の距離だけ水平変位している(離れている)かが表示されている。
【0040】
上述の画像表示により、操作者は、ロッド5の先端が地中深さのどの位置にあるか、及びそのロッド5の先端は掘削孔の設計値からどの程度ずれているかを把握することができる。よって、さらに継続して掘削作業を行うに当たって、どの進み方向へどれ位の距離だけ掘削すればよいかの判断及び決定をすることができる。
【0041】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属する。
【符号の説明】
【0042】
1 掘削機
2 ベースマシン
3 駆動部
4 ガイドバー
5 ケーシングロッド
6 ジョイント部
7 データ収集・解析部
10 位置計測装置
11a、11b 通信ケーブル
12a 第1アンテナ
12b 第2アンテナ
13 測器ユニット
14 バッテリー
15 収納ボックス
16a、16b ケーブル接続端子
17 2軸傾斜計
18 通信部
19 ボックス体
20 電線取付部
21 中継端子
23 電線
25 画面
26 計測タイミング種別表示欄
27 測定データ表示欄
28a X-Z位置表示欄
28b Y-Z位置表示欄
30 アンテナ設置孔
31 嵌合孔
32 アンテナ設置部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11