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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】産業用ロボット
(51)【国際特許分類】
   B25J 19/00 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
B25J19/00 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021029404
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022130804
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷口 祐介
(72)【発明者】
【氏名】小山 潤悟
【審査官】臼井 卓巳
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-175188(JP,A)
【文献】特開平10-034588(JP,A)
【文献】特開2015-168037(JP,A)
【文献】特開2018-167359(JP,A)
【文献】特開2020-151802(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0098190(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 9/06-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基台と、
前記基台に取付けられ、前記基台に対して、第1軸の周りに旋回する旋回フレームと、
前記旋回フレームに対して、第2軸の周りに回動自在に枢着されたロアアームを有した多関節アームと、
前記基台からロアアームの先端に向かって配設されたケーブルと、を有した産業用ロボットであって、
前記旋回フレームは、前記基台に取付けられた台座部と、前記台座部からロアアームに向かって立ち上がった立ち上がり部と、前記立ち上がり部の先端側において前記ロアアームに連結される連結部と、を有しており、
前記第2軸に沿った前記立ち上がり部の一方側において、前記ロアアームが前記連結部に取付けられており、
前記第2軸に沿った前記立ち上がり部の他方側において、前記ロアアームを回動させる駆動モータが取付けられており、
前記立ち上がり部には、前記ケーブルが挿通される貫通孔が、前記一方側から他方側に沿って形成されており、
前記ケーブルには、
前記一方側から前記他方側に向かって、前記貫通孔に挿通された挿通部と、
前記他方側に配設された前記挿通部から、前記ロアアームに向かうように湾曲した湾曲部と、
前記湾曲部から、前記ロアアームの長手方向に沿って、前記ロアアームに取付けられた取付け部と、が形成されており、
前記ケーブルは、前記挿通部よりも前記一方側の部分において、前記第1軸よりも前記一方側の位置で、第1拘束具により前記台座部に拘束された第1被拘束部と、前記取付け部において、第2拘束具により、前記ロアアームに拘束された第2被拘束部と、を有しており、前記第2被拘束部は、前記ロアアームの長手方向に沿って配向されるように、拘束されており、
前記第1被拘束部と前記第2被拘束部との間において、前記ケーブルは、前記旋回フレームおよび前記ロアアームに対して非拘束な状態にあり、
前記第1および第2軸に直交する方向から視て、前記貫通孔は、前記第1軸よりも前記一方側から、前記第1軸を通過して、前記第1軸よりも他方側まで形成されていることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記貫通孔は、前記第2軸と平行に延在しており、
前記第2軸に沿った方向から視た前記貫通孔は、前記第1軸に対して直交する方向に拡がった長孔であることを特徴とする請求項1記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記貫通孔の両端に形成された開口部のうち、前記他方側に形成された開口部に隣接するように、前記ケーブルが非拘束で挿通されるガイド部材が設けられており、
前記旋回フレームは、金属材料からなり、前記ガイド部材は、樹脂材料からなることを特徴とする請求項1または2に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
基台と、
前記基台に取付けられ、前記基台に対して、第1軸の周りに旋回する旋回フレームと、
前記旋回フレームに対して、第2軸の周りに回動自在に枢着されたロアアームを有した多関節アームと、
前記基台からロアアームの先端に向かって配設されたケーブルと、を有した産業用ロボットであって、
前記旋回フレームは、前記基台に取付けられた台座部と、前記台座部からロアアームに向かって立ち上がった立ち上がり部と、前記立ち上がり部の先端側において前記ロアアームに連結される連結部と、を有しており、
前記第2軸に沿った前記立ち上がり部の一方側において、前記ロアアームが前記連結部に取付けられており、
前記第2軸に沿った前記立ち上がり部の他方側において、前記ロアアームを回動させる駆動モータが取付けられており、
前記立ち上がり部には、前記ケーブルが挿通される貫通孔が、前記一方側から他方側に沿って形成されており、
前記ケーブルには、
前記一方側から前記他方側に向かって、前記貫通孔に挿通された挿通部と、
前記他方側に配設された前記挿通部から、前記ロアアームに向かうように湾曲した湾曲部と、
前記湾曲部から、前記ロアアームの長手方向に沿って、前記ロアアームに取付けられた取付け部と、が形成されており、
前記ケーブルは、前記挿通部よりも前記一方側の部分において、前記第1軸よりも前記一方側の位置で、第1拘束具により前記台座部に拘束された第1被拘束部と、前記取付け部において、第2拘束具により、前記ロアアームに拘束された第2被拘束部と、を有しており、前記第2被拘束部は、前記ロアアームの長手方向に沿って配向されるように、拘束されており、
前記第1被拘束部と前記第2被拘束部との間において、前記ケーブルは、前記旋回フレームおよび前記ロアアームに対して非拘束な状態にあり、
前記貫通孔は、前記第2軸と平行に延在しており、
前記第2軸に沿った方向から視た前記貫通孔は、前記第1軸に対して直交する方向に拡がった長孔であることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項5】
前記貫通孔の両端に形成された開口部のうち、前記他方側に形成された開口部に隣接するように、前記ケーブルが非拘束で挿通されるガイド部材が設けられており、
前記旋回フレームは、金属材料からなり、前記ガイド部材は、樹脂材料からなることを特徴とする請求項4に記載の産業用ロボット。
【請求項6】
基台と、
前記基台に取付けられ、前記基台に対して、第1軸の周りに旋回する旋回フレームと、
前記旋回フレームに対して、第2軸の周りに回動自在に枢着されたロアアームを有した多関節アームと、
前記基台からロアアームの先端に向かって配設されたケーブルと、を有した産業用ロボットであって、
前記旋回フレームは、前記基台に取付けられた台座部と、前記台座部からロアアームに向かって立ち上がった立ち上がり部と、前記立ち上がり部の先端側において前記ロアアームに連結される連結部と、を有しており、
前記第2軸に沿った前記立ち上がり部の一方側において、前記ロアアームが前記連結部に取付けられており、
前記第2軸に沿った前記立ち上がり部の他方側において、前記ロアアームを回動させる駆動モータが取付けられており、
前記立ち上がり部には、前記ケーブルが挿通される貫通孔が、前記一方側から他方側に沿って形成されており、
前記ケーブルには、
前記一方側から前記他方側に向かって、前記貫通孔に挿通された挿通部と、
前記他方側に配設された前記挿通部から、前記ロアアームに向かうように湾曲した湾曲部と、
前記湾曲部から、前記ロアアームの長手方向に沿って、前記ロアアームに取付けられた取付け部と、が形成されており、
前記ケーブルは、前記挿通部よりも前記一方側の部分において、前記第1軸よりも前記一方側の位置で、第1拘束具により前記台座部に拘束された第1被拘束部と、前記取付け部において、第2拘束具により、前記ロアアームに拘束された第2被拘束部と、を有しており、前記第2被拘束部は、前記ロアアームの長手方向に沿って配向されるように、拘束されており、
前記第1被拘束部と前記第2被拘束部との間において、前記ケーブルは、前記旋回フレームおよび前記ロアアームに対して非拘束な状態にあり、
前記貫通孔の両端に形成された開口部のうち、前記他方側に形成された開口部に隣接するように、前記ケーブルが非拘束で挿通されるガイド部材が設けられており、
前記旋回フレームは、金属材料からなり、前記ガイド部材は、樹脂材料からなることを特徴とする産業用ロボット。
【請求項7】
前記ロアアームには、前記長手方向に沿って、前記取付け部の一部を収容する収容溝が、形成されていることを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の産業用ロボット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多関節アームを有した産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、この種の産業用ロボットとして、特許文献1には、基台に対して、第1軸の周りに旋回する旋回フレームと、旋回フレームに対して、第2軸の周りに回動自在に枢着された多関節アームを有した産業用ロボット(ロボット)が提案されている。多関節アームは、旋回フレームに対して第2軸の周りに回動自在に取付けられたロアアームと、ロアアームに回動自在に取付けられたアッパアームと、を有している。
【0003】
さらに、多関節ロボットは、基台から旋回フレームを介してロアアームの先端に向かって配設されたケーブルをさらに備えている。ここで、基台から配置されたケーブルは、旋回フレームに形成された貫通孔を通過し、ロアアームの長手方向に沿って配置される。ここで、ケーブルは、旋回フレームの貫通孔のロアアーム側の開口近傍と、ロアアームの下端部で拘束され、これらの拘束した部分の間で、ケーブルが湾曲している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平10-175188公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に係るロボットでは、ケーブルの湾曲した部分の両側は、旋回フレームに形成された貫通孔よりもロアアーム側において、拘束されている。したがって、第2軸の周りのロアアームの回動を確保しようとすると、ケーブルは、旋回フレームとロアアームから外側に大きく膨らんでしまう。特許文献1では、ロアアームに拘束されるケーブルの被拘束部は、ケーブルを旋回フレームとロアアームの外側に膨らませるように、拘束具で拘束しなければならない。これにより、ロボットが機械的に干渉する干渉領域が大きくなってしまう。
【0006】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、旋回フレームからロアアームに配置されるケーブルの湾曲した部分が、旋回フレームとロアアームから外側に大きく膨らむことを抑えることができる産業用ロボットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を鑑みて、本発明に係る産業用ロボットは、基台と、前記基台に取付けられ、前記基台に対して、第1軸の周りに旋回する旋回フレームと、前記旋回フレームに対して、第2軸の周りに回動自在に枢着されたロアアームを有した多関節アームと、前記基台からロアアームの先端に向かって配設されたケーブルと、を有した産業用ロボットであって、前記旋回フレームは、前記基台に取付けられた台座部と、前記台座部からロアアームに向かって立ち上がった立ち上がり部と、前記立ち上がり部の先端側において前記ロアアームに連結される連結部と、を有しており、前記第2軸に沿った前記立ち上がり部の一方側において、前記ロアアームが前記連結部に取付けられており、前記第2軸に沿った前記立ち上がり部の他方側において、前記ロアアームを回動させる駆動モータが取付けられており、前記立ち上がり部には、前記ケーブルが挿通される貫通孔が、前記一方側から他方側に沿って形成されており、前記ケーブルには、前記一方側から前記他方側に向かって、前記貫通孔に挿通された挿通部と、前記他方側に配設された前記挿通部から、前記ロアアームに向かうように湾曲した湾曲部と、前記湾曲部から、前記ロアアームの長手方向に沿って、前記ロアアームに取付けられた取付け部と、が形成されており、前記ケーブルは、前記挿通部よりも前記一方側の部分において、前記第1軸よりも前記一方側の位置で、第1拘束具により前記台座部に拘束された第1被拘束部と、前記取付け部において、第2拘束具により、前記ロアアームに拘束された第2被拘束部と、を有しており、前記第2被拘束部は、前記ロアアームの長手方向に沿って配向されるように、拘束されており、前記第1被拘束部と前記第2被拘束部との間において、前記ケーブルは、前記旋回フレームおよび前記ロアアームに対して非拘束な状態にあることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、駆動モータにより、旋回フレームに対してロアアームが、第2軸の周りを回動する。旋回フレームからロアアームに配設されるケーブルには、立ち上がり部の一方側から、立ち上がり部に形成された貫通孔に沿って、立ち上がり部の他方側まで、ロアアームまで挿通されることで、挿通部が形成されている。さらに、ケーブルには、挿通部からロアアームに向かって湾曲した湾曲部が形成され、湾曲からロアアームの長手方向に沿って、取付け部が形成されている。
【0009】
ここで、ケーブルは、挿通部よりも立ち上がり部の一方側の部分において、第1軸よりも一方側の位置で、第1拘束具により台座部に拘束された第1被拘束部と、取付け部において、第2拘束具によりロアアームに拘束された第2被拘束部とを、有しており、これらの間のケーブルの部分は、旋回フレームおよびロアアームに対して非拘束な状態にある。すなわち、旋回フレームからロアアームまでの間のより広い範囲で、拘束具等で拘束しない部分を、ケーブルに設けることができる。このため、旋回フレームに対してロアアームが、第2軸の周りを回動したとしても、この非拘束の状態となった部分が、ケーブルの遊び代となり、ケーブルに負担がかかり難い。第2被拘束部は、ロアアームの長手方向に沿って配向されるように、拘束することができ、これまでのように、第2被拘束部において、ケーブルを旋回フレームとロアアームの外側に膨らませるような拘束を行わなくてもよい。この結果、旋回フレームからロアアームまでの間に配設されるケーブルの湾曲部が、旋回フレームとロアアームから、その外側に大きく膨らむように、ケーブルを引き回す必要がなく、ケーブルをロボット本体に寄せて配設することができる。このようにして、産業用ロボット全体のスリム化を図ることができる。
【0010】
より好ましい態様としては、前記第1および第2軸に直交する方向から視て、前記貫通孔は、前記第1軸よりも前記一方側から、前記第1軸を通過して、前記第1軸よりも他方側まで形成されている。
【0011】
この態様によれば、第1軸よりも一方側から、第1軸を通過して、第1軸よりも他方側まで形成された貫通孔に、ケーブルの挿通部が配置されるので、第1軸を挟んだより長い区間のケーブルの挿通部を、貫通孔で案内することができる。このような結果、第1被拘束部および第2被拘束部の間が非拘束であったとしても、ロアアームの回動により、これらの区間のケーブルの振れ回りを抑えることができる。
【0012】
より好ましい態様としては、前記貫通孔は、前記第2軸と平行に延在しており、前記第2軸に沿った方向から視た前記貫通孔は、前記第1軸に対して直交する方向に拡がった長孔である。
【0013】
ここで、たとえば、ロアアームが起立した姿勢から第2軸の周りに倒れ込むように回動すると、ケーブルの挿通部は、貫通孔内で、第1軸に対して直交する方向に移動し易い。そこで、この態様によれば、貫通孔は、第1軸に対して直交する方向に拡がった長孔であるので、このようなロアアームの回動に対して、挿通部の移動代を確保することができる。さらに、このケーブルに対して、第1軸に対して直交する方向に、他のケーブルが並設されるように、他のケーブルを挿通したとしても、これらのケーブルの移動代が確保され易い。この結果、ロアアームの回動によるケーブルへの曲げまたは捩れ等の負担を抑えることができる。
【0014】
より好ましい態様としては、前記貫通孔の両端に形成された開口部のうち、前記他方側に形成された開口部に隣接するように、前記ケーブルが非拘束で挿通されるガイド部材が設けられており、前記旋回フレームは、金属材料からなり、前記ガイド部材は、樹脂材料からなる。
【0015】
ところで、他方側に形成された開口部は、ロアアーム側の開口部であるため、ロアアームの回動により、この開口部にケーブルが擦れ易い。そこで、この態様によれば、この開口部に隣接するように、樹脂製のガイド部材が設けられているので、ロアアームの回動により、ガイド部材内を移動する非拘束状態のケーブルの損傷を抑えることができる。
【0016】
より好ましい態様としては、前記ロアアームには、前記長手方向に沿って、前記取付け部の一部を収容する収容溝が、形成されている。この態様によれば、ケーブルの取付け部の一部を、収容溝に沿って、収容することができるので、ロアアームの長手方向の中心線側に、ケーブルを寄せて配設することができる。このような結果、ケーブルの湾曲部が、旋回フレームとロアアームから、外側に大きく膨らむことを抑えることができる
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、旋回フレームからロアアームに配置されるケーブルの湾曲部が、旋回フレームとロアアームから、外側に大きく膨らむことを抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る産業用ロボットを正面側から視た斜視図である。
図2図1に示す産業用ロボットを他の方向から視た斜視図である。
図3図1に示す産業用ロボットを背面側から視た斜視図である。
図4図2に示す方向から視た旋回フレームとケーブルの関係を示す斜視図である。
図5図4に示す旋回フレームに形成された貫通孔を説明するための図である。
図6図1に示す方向から視た旋回フレームとケーブルの関係を示す斜視図である。
図7図1に示す産業用ロボットの模式的断面図である。
図8図1に示すケーブルとロアアームとの配置関係を示した模式的斜視図である。
図9図7に示すA-A線に沿った矢視方向の模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に、本発明の実施形態に係る産業用ロボット1(以下、ロボット1という)を図1図9を参照しながら詳述する。
【0020】
図1および図2に示すように、ロボット1は、その先端に把持装置、溶接装置などエンドエフェクタが取付けられるものである。
【0021】
1.ロボット1の全体構造
本実施形態に係るロボット1は、マニュピュレータである。なお、ロボット1は、各モータ等を制御する制御装置(図示せず)を備えており、制御装置により、ロボット1の動作が制御される。
【0022】
ロボット1は、基台10と旋回フレーム20とを備えており、基台10は、設置面に固定されている。旋回フレーム20は、減速機12(図7参照)を介して基台10に取付けられており、設置面に対して直交する方向に沿った第1軸J1の周りに旋回する。旋回フレーム20は、第1モータ61の出力軸(図示せず)に接続されている。これにより、旋回フレーム20を基台10に対して第1軸J1の周りに旋回させることができる。
【0023】
ロボット1は、多関節アーム1Aをさらに備えている。多関節アーム1Aは、旋回フレーム20に基端が枢着されたロアアーム30と、ロアアーム30の先端に枢着されるアッパアーム40と、アッパアーム40の先端に枢着された支持アーム50と、有している。これらのアームの接続部分が、多関節アーム1Aの関節部分となる。これらのアームは、金属製であり、たとえば、鋳鉄、またはアルニウム合金鋳物等の鋳物からなる。
【0024】
ロアアーム30は、第1軸J1と直交する方向に平行となる第2軸J2に、旋回フレーム20に対して回動自在に枢着されており、第2モータ62の動力により、ロアアーム30は、旋回フレーム20に対して第2軸J2の周りに回動する。本実施形態でいう第2モータ62が、本発明でいう「駆動モータ」に相当する。アッパアーム40は、第2軸J2と平行となる第3軸J3の周りに、ロアアーム30に対して回動自在に枢着されており、第3モータ63の動力により、アッパアーム40は、ロアアーム30に対して第3軸J3の周りに回動する。
【0025】
アッパアーム40は、ロアアーム30の先端に枢着される関節部41と、アッパアーム40の長手方向に沿った第4軸J4の周りに回動自在となるように、関節部41に取付けられたアーム本体42と、を備えている。具体的は、ロアアーム30と関節部41とが、上述した第3モータ63を介して、回動自在に枢着されている。アーム本体42は、第4モータ64の動力により、関節部41に対して第4軸J4の周りに回動する。
【0026】
さらに、アッパアーム40の先端は、ロボット1の手首部に相当する部分であり、エンドエフェクタ(図示せず)を支持する支持アーム50が取付けられている。本実施形態では、アッパアーム40には、支持アーム50をアーム本体42に対して枢動させる第5モータ(図示せず)が内蔵されている。
【0027】
第5モータは、アッパアーム40に内蔵された動力伝達ベルト等を介して、支持アーム50に接続されている。これにより、第5モータの動力が、アッパアーム40に内蔵された動力伝達ベルト(図示せず)に伝達されることで、支持アーム50は、アーム本体42に対して第5軸J5で枢動(揺動)する。さらに、アッパアーム40には、支持アーム50の軸心(具体的には第6軸J6)の周りに、支持アーム50の先端部(本体部)を回動させる第6モータ(図示せず)が内蔵されている。
【0028】
ロボット1は、上述した第1~第6モータ等に電力を供給する動力用のケーブル70A(第1ケーブル)と、ロボット1に取付けられたエンドエフェクタ(たとえば、溶接装置)等に電力を供給するアプリケーション用のケーブル(第2ケーブル)70Bと、を備えている。ケーブル70A、70Bは、基台10からロアアーム30の先端に向かって配設されている。
【0029】
2.旋回フレーム20の細部の構造について
図1および図2等で示すように、本実施形態に係る旋回フレーム20は、台座部21と、立ち上がり部22と、連結部23とを備えている。台座部21は、減速機(図示せず)等を介して基台10に取付けらており、第1モータ61を介して、基台10に対して回動する部分である。
【0030】
立ち上がり部22は、台座部21からロアアーム30に向かって立ち上がった部分であり、本実施形態では、ロボット1の前方側に傾斜するように、立ち上がっている。これにより、図2および図3に示すように、立ち上がり部22よりも、ロボット1の後方側(背面側)の台座部21に、ケーブル70A、70Bを中継する中継ボックス29、および第1モータ61を設置するスペースを確保することができる。さらに、ケーブル70A、70Bを拘束するためのスペースも確保することができる。
【0031】
連結部23は、立ち上がり部22の先端側において、ロアアーム30に連結された部分であり、ロアアーム30は、連結部23に対して、第2軸J2の周りに枢動自在に取付けられている。より具体的には、第2軸J2に沿った立ち上がり部22の一方側において、ロアアーム30が、連結部23に取付けられている。さらに、連結部23には、第2軸J2に沿った立ち上がり部22の他方側において、ロアアーム30を回動させる第2モータ62が、減速機27を介して、取付けられている。
【0032】
本実施形態では、立ち上がり部22には、ケーブル70A、70Bが挿通される貫通孔24が形成されている。貫通孔24は、連結部23に対してロアアーム30が取付けられた側(立ち上がり部22の一方側)から、連結部23に対して第2モータ62が取付けられた側(立ち上がり部22の他方側)まで、第2軸J2と平行に延在している(たとえば図7参照)。
【0033】
さらに、本実施形態では、第1および第2軸J1、J2に対して直交する方向から視て(図7参照)、貫通孔24は、第1軸J1よりも立ち上がり部22の一方側から、第1軸J1を通過して、第1軸J1よりも立ち上がり部22の他方側まで形成されている。具体的には、図7に示すように、第1および第2軸J1、J2に対して直交する方向から視て、台座部21から連続した立ち上がり部22の根元部分において、貫通孔24は、第1軸J1を通過するように、形成されている。
【0034】
図5に示すように、本実施形態では、第2軸J2に沿った方向から視た貫通孔24は、第1軸J1に対して直交する方向に拡がった長孔である。後述するように、貫通孔24には、ケーブル70A、70Bが挿通されている。貫通孔24の高さは、ケーブル70A、70Bのそれぞれの直径よりも大きく、貫通孔24の幅は、ケーブル70Aの直径およびケーブル70Bの直径を合わせた大きさよりも大きい。より具体的には、貫通孔24の大きさは、後述するケーブル70A、70Bを拘束した状態において、ロアアーム30の回動により、ケーブル70A、70Bの非拘束部分の移動を妨げない大きさであってもよい。たとえば、ケーブル70A、70Bの非拘束部分が、貫通孔24の開口部24a、24bを除く貫通孔24の内壁面に接触しない大きさであってもよい。
【0035】
さらに、図6に示すように、貫通孔24の両端に形成された開口部24a、24bのうち、立ち上がり部22の他方側に形成された開口部24bに隣接するように、ケーブル70Aが非拘束で挿通されるガイド部材28が設けられている。上述した如く、旋回フレーム20は、鋳鉄等の金属材料からなり、ガイド部材28は、たとえば、ナイロン66等の樹脂材料からなる。
【0036】
具体的には、ガイド部材28は、ケーブル70Aが挿通される挿通孔28aがされている。挿通孔28aの大きさは、ケーブル70Aの直径よりも大きい。ガイド部材28には、ガイド部材28の本体を片持ちで支持する支持部28bが形成されており、ガイド部材28は、支持部28bの先端で、取付け具28cを介して、旋回フレーム20に取付けされている。
【0037】
本実施形態によれば、貫通孔24の開口部24bは、ロアアーム30側の開口部24bであるため、ロアアーム30の回動により、この開口部24bにケーブルが擦れ易い。そこで、開口部24bに隣接するように、樹脂製のガイド部材28が設けられているので、ケーブル70Aの削れ等の損傷を抑えることができる。
【0038】
さらに、上述した如く、ガイド部材28の取付け構造は、ガイド部材28の支持部28bが撓みやすい片持ち支持構造である。このため、ロアアーム30の回動により、ケーブル70Aが振れ回ったとしても、ケーブル70Aからの荷重を、ガイド部材28で吸収することができ、ケーブル70Aの削れ等の損傷を防止することができる。
【0039】
3.ロアアーム30の細部の構造について
ロアアーム30には、アーム本体31と、アーム本体31の両端に形成された連結部32、33とが形成されている。連結部32は、ロアアーム30の下端に形成されており、旋回フレーム20の連結部23に回動自在に連結されている。連結部33は、ロアアーム30の上端に形成されており、アッパアーム40に回動自在に連結されている。
【0040】
図7に示すように、アーム本体31には、中空部34が形成されており、アーム本体31を形成する壁のうち、対向する側壁35A、35Bには、中空部34に連通する連通口(肉抜き部)38A、38Bが形成されている。
【0041】
図8に示すように、本実施形態では、アーム本体31には、対向する側壁35A、35Bの両縁を長手方向に沿って連結する一対の連結壁36、36が形成されている。連結壁36、36は、対向する側壁35Bとは反対側に突出し、ロアアーム30の長手方向Lに沿った側壁35B側には、ケーブル70Aを収容する空間が形成されている。本実施形態では、図1に示すように、このケーブル70Aを収容する空間を塞ぐように、連結壁36、36には、カバー91が取付けられている。
【0042】
さらに、連結壁36、36を繋ぐように、補強リブ37が設けられており、補強リブ37には、ケーブル70Aを収容する凹部37aが形成されている。さらに、図9に示すように、ロアアーム30には、長手方向Lに沿って、後述するケーブル70Aの取付け部73の一部を収容する収容溝35aが、形成されている。
【0043】
4.ケーブル70A、70Bの取付け構造について
以下に、ケーブル70A、70Bの取付け構造について説明する。本実施形態では、ケーブル70A、70Bは、基台10からロアアーム30の先端に向かって配設されている。図1図7等には直接的には示していないが、ケーブル70A、70Bは、基台10において、第1軸J1に沿って形成された挿通孔を通過し、図2に示すように、第2モータ62近傍(具体的には、立ち上がり部22)まで上方に延在し、そこから下方にある台座部21に向かって湾曲している。
【0044】
さらに、ケーブル70Aには、ケーブル70Aの長手方向に沿って、挿通部71、湾曲部72、および取付け部73が形成されている。挿通部71は、立ち上がり部22の一方側から立ち上がり部22の他方側に向かって、貫通孔24に挿通されたケーブルの部分である。本実施形態では、挿通部71は、貫通孔24の一方の開口部24aから、その他方の開口部24bまで、第2軸J2と平行な線に沿って配設されている。本実施形態では、図7に示すように、第1軸J1および第2軸J2から直交する方向から視て、挿通部71は、第1軸J1を横切っている。
【0045】
なお、本実施形態では、図4図8には、具体的には示してないが、ケーブル70Aと並設するように、ケーブル70Bが配設されている。詳細に説明しないが、ケーブル70Bも、ケーブル70Bと同じような形状で配置され、その拘束位置および非拘束区間も同様である。
【0046】
本実施形態では、貫通孔24は、第1軸J1に対して直交する方向に拡がった長孔であるので、このようなロアアーム30の回動に対して、ケーブル70Aの挿通部71の移動代を確保することができる。さらに、このケーブル70Aに対して、第1軸J1に対して直交する方向に、ケーブル70Bが並設されるように、ケーブル70Bを挿通したとしても、これらのケーブル70A、70Bの移動代が確保され易い。この結果、ロアアーム30の回動によるケーブル70Aへの曲げまたは捩れ等の負担を抑えることができる。
【0047】
ケーブル70Aの湾曲部72は、他方側に配設された挿通部71から、ロアアーム30に向かうように湾曲しており、旋回フレーム20およびロアアーム30が連結された部分から、外側に膨らむように形成されている。本実施形態では、挿通部71寄りの湾曲部72の端部は、ガイド部材28に挿通されている。同様に、ケーブル70Bも、ケーブル70Aと並ぶようにして、旋回フレーム20およびロアアーム30が連結された部分から、外側に膨らんでいる。
【0048】
取付け部73は、湾曲部72から、ロアアーム30の長手方向Lに沿って、ロアアーム30に取付けられている。具体的には、図8に示すように、本実施形態では、取付け部73の一部が、図8に示すように、補強リブ37に形成された凹部37a、側壁35Bに形成された収容溝35aに収容された状態で、結束バンド等の拘束具82、84、85により、ロアアーム30に拘束されている。ケーブル70Bは、図1に示すように、カバー91の表面において、結束バンド等の拘束具86、87により、ロアアーム30に拘束されている。
【0049】
ケーブル70Aの取付け部73の一部(ケーブル70Aの径方向の一部)を、収容溝35aに沿って収容することができるので、ロアアーム30の長手方向Lの中心線側に、ケーブル70Aを寄せて配設することができる。このような結果、後述するケーブル70Aの湾曲部72が、旋回フレーム20とロアアーム30から、外側に大きく膨らむことを抑えることができる。
【0050】
図4および図7等に示すように、ケーブル70Aは、挿通部71よりも、立ち上がり部22の一方側の部分75において、第1軸J1よりも一方側の位置(すなわち、第2モータ62側の位置)で、結束バンド等の第1拘束具81により台座部21に拘束された第1被拘束部78Aを有している。ここで、第1被拘束部78Aは、たとえば、ゴムシート、樹脂シート等の保護部材89に巻かれた状態で、第1拘束具81により、台座部21に拘束されてもよい。図示しないが、ケーブル70Bも、ケーブル70A等と同様に、第1軸J1よりも立ち上がり部22の一方側の部分において、第1軸J1よりも一方側の位置で、拘束されている。
【0051】
さらに、図7および図8等に示すように、ケーブル70Aは、取付け部73において、第2拘束具82により、ロアアーム30に拘束された第2被拘束部78Bと、を有している。そして、本実施形態では、第1被拘束部78Aと第2被拘束部78Bとの間において、ケーブル70Aは、旋回フレーム20およびロアアーム30に対して非拘束な状態にある。すなわち、ケーブル70Aは、第1被拘束部78Aと第2被拘束部78Bとの間において、結束バンド等の拘束具により、ロボット1に拘束されていない。
【0052】
ここでいう、「非拘束な状態にある」とは、結束バンド、クランパー等の拘束具により、ケーブルの長手方向と直交する断面において、ケーブル70Aが周方向に沿って、拘束されていない状態にあることをいう。たとえば、「非拘束な状態にある」とは、旋回フレーム20に対するロアアーム30の回動により、貫通孔24に対して、ケーブル70A(の挿通部71)が常時定位置になく、貫通孔24内で移動可能な状態にあることをいう。
【0053】
さらに、第2被拘束部78Bは、ロアアーム30の長手方向Lに沿って配向されるように、ロアアーム30の取付け支持部92に拘束されている。なお、取付け支持部92は、第2被拘束部78Bが、ロアアームの長手方向Lに沿って案内するように凹んでおり、取付け支持部92に向かって、第2拘束具82で、第2被拘束部78Bを拘束することにより、第2被拘束部78Bは、ロアアーム30の長手方向Lに沿って配向させることができる。
【0054】
本実施形態によれば、ケーブル70Aは、挿通部71よりも立ち上がり部22の一方側の部分75において、第1軸J1よりも立ち上がり部22の一方側の位置で、第1拘束具81により台座部21に拘束されている。さらに、ケーブル70Bは、第1軸J1よりも立ち上がり部22の他方側の位置で、第2拘束具82によりロアアーム30に拘束されている。このように拘束された第1および第2被拘束部78A、78Bの間のケーブル70Aの部分は、旋回フレーム20およびロアアーム30に対して非拘束な状態となる部分である。
【0055】
したがって、旋回フレーム20に対してロアアーム30が、第2軸J2の周りを回動したとしても、この非拘束の状態となった部分が、ケーブル70Aの遊び代となり、ケーブル70Aに負担がかかり難い。この結果、旋回フレーム20からロアアーム30に配置されるケーブル70Aの湾曲部72が、旋回フレーム20とロアアーム30から、その外側に大きく膨らませるように、ケーブル70Aを引き回す必要がない。具体的には、第2被拘束部78Bは、ロアアーム30の長手方向Lに沿って配向されるように、拘束することができ、これまでのように、第2被拘束部78Bにおいて、ケーブル70Aを旋回フレーム20とロアアーム30の外側に膨らませるような拘束を行わなくてもよい。このような結果、ケーブル70Aの湾曲部72を、旋回フレーム20とロアアーム30とに寄せて配設することができ、さらには、ケーブル70Bも、旋回フレーム20とロアアーム30とに寄せて配設することができる。このような結果、ロボット1全体のスリム化を図ることができる。
【0056】
さらに、本実施形態では、第1軸J1よりも立ち上がり部22の一方側から、第1軸J1を通過して、第1軸J1よりも立ち上がり部22の他方側まで形成された貫通孔24に、ケーブル70Aの挿通部71が配置される。これにより、第1軸J1を挟んだより長い区間のケーブル70Aの挿通部71を、貫通孔24で案内することができる。このような結果、第1被拘束部78Aおよび第2被拘束部78Bの間が非拘束であったとしても、ロアアーム30の回動により、これらの区間のケーブル70Aの振れ回りを抑えることができる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、前記の実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の精神を逸脱しない範囲で、種々の設計変更を行うことができるものである。
【符号の説明】
【0058】
1:ロボット(産業用ロボット)、1A:多関節アーム、10:基台、20:旋回フレーム、21:台座部、22:立ち上がり部、23:連結部、24:貫通孔、28:ガイド部材、30:ロアアーム、62:第2モータ(駆動モータ)、70A:ケーブル、71:挿通部、72:湾曲部、73:取付け部、78A:第1被拘束部、78B:第2被拘束部、81:第1拘束具、82:第2拘束具
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9