(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】電子部品、フィルタおよびマルチプレクサ
(51)【国際特許分類】
H03H 9/25 20060101AFI20241121BHJP
H03H 9/64 20060101ALI20241121BHJP
H03H 9/72 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H03H9/25 A
H03H9/64 Z
H03H9/72
(21)【出願番号】P 2021037473
(22)【出願日】2021-03-09
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000204284
【氏名又は名称】太陽誘電株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004370
【氏名又は名称】弁理士法人片山特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川原 尚由
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 雅弘
(72)【発明者】
【氏名】黒坂 広幸
【審査官】石田 昌敏
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-034302(JP,A)
【文献】特開2008-288497(JP,A)
【文献】特開2012-204465(JP,A)
【文献】特表2017-501041(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H 9/145ー9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設けられた素子と、
前記基板の上方に設けられたリッドと、
前記基板と前記リッドとを接続し、第1はんだ層と、前記第1はんだ層に積層され前記第1はんだ層より厚い第1金属層と、を有し、前記素子を囲み前記素子を空隙に封止する第1封止部と、
前記基板と前記リッドとを接続し、第2はんだ層と、前記第2はんだ層に積層され、前記第2はんだ層より厚く前記第1金属層と離れた第2金属層と、を有し、前記第1封止部を囲むように設けられた第2封止部と、
を備え
、
前記第1はんだ層は前記基板に接合され、前記第1金属層は前記リッドに接合され、
前記第2はんだ層は前記リッドに接合され、前記第2金属層は前記基板に接合される電子部品。
【請求項2】
基板と、
前記基板上に設けられた素子と、
前記基板の上方に設けられたリッドと、
前記基板と前記リッドとを接続し、第1はんだ層と、前記第1はんだ層に積層され前記第1はんだ層より厚い第1金属層と、を有し、前記素子を囲み前記素子を空隙に封止する第1封止部と、
前記基板と前記リッドとを接続し、第2はんだ層と、前記第2はんだ層に積層され、前記第2はんだ層より厚く前記第1金属層と離れた第2金属層と、を有し、前記第1封止部を囲むように設けられた第2封止部と、
を備え、
前記第1はんだ層は前記リッドに接合され、前記第1金属層は前記基板に接合され、
前記第2はんだ層は前記基板に接合され、前記第2金属層は前記リッドに接合される電子部品。
【請求項3】
前記第1はんだ層と前記第2はんだ層とは離れている請求項
1または2に記載の電子部品。
【請求項4】
前記第1封止部と前記第2封止部との間に別の空隙が設けられている請求項1から
3のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項5】
前記第1金属層と前記第2金属層の融点は、前記第1はんだ層および前記第2はんだ層の融点より高い請求項1から
4のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項6】
前記第1金属層のうち最も厚い層の主成分と前記第2金属層のうち最も厚い層の主成分とは同じであり、
前記第1はんだ層の主成分と前記第2はんだ層の主成分とは同じである請求項1から
5のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項7】
前記素子は弾性波素子である請求項1から
6のいずれか一項に記載の電子部品。
【請求項8】
請求項
7に記載の電子部品を含むフィルタ。
【請求項9】
請求項
8に記載のフィルタを含むマルチプレクサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品、フィルタおよびマルチプレクサに関し、例えば封止部を有する電子部品、フィルタおよびマルチプレクサに関する。
【背景技術】
【0002】
基板上に素子が設けられ、素子を囲むように環状の封止部が設けられ、封止部上にリッドを設けることで、素子を空隙に封止する電子部品が知られている(例えば特許文献1~3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2016-152612号公報
【文献】特開2014-143640号公報
【文献】特開2013-115664号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
素子を囲む封止部がはんだ層とはんだ層より厚い金属層とを有するときに、封止部の幅が狭いと気密性が劣化する。封止部の幅が広いと熱応力により封止部と基板またはリッドとがはがれやすくなり、封止性が劣化する。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、封止性の劣化を抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられた素子と、前記基板の上方に設けられたリッドと、前記基板と前記リッドとを接続し、第1はんだ層と、前記第1はんだ層に積層され前記第1はんだ層より厚い第1金属層と、を有し、前記素子を囲み前記素子を空隙に封止する第1封止部と、前記基板と前記リッドとを接続し、第2はんだ層と、前記第2はんだ層に積層され、前記第2はんだ層より厚く前記第1金属層と離れた第2金属層と、を有し、前記第1封止部を囲むように設けられた第2封止部と、を備え、前記第1はんだ層は前記基板に接合され、前記第1金属層は前記リッドに接合され、前記第2はんだ層は前記リッドに接合され、前記第2金属層は前記基板に接合される電子部品である。
【0008】
本発明は、基板と、前記基板上に設けられた素子と、前記基板の上方に設けられたリッドと、前記基板と前記リッドとを接続し、第1はんだ層と、前記第1はんだ層に積層され前記第1はんだ層より厚い第1金属層と、を有し、前記素子を囲み前記素子を空隙に封止する第1封止部と、前記基板と前記リッドとを接続し、第2はんだ層と、前記第2はんだ層に積層され、前記第2はんだ層より厚く前記第1金属層と離れた第2金属層と、を有し、前記第1封止部を囲むように設けられた第2封止部と、を備え、前記第1はんだ層は前記リッドに接合され、前記第1金属層は前記基板に接合され、前記第2はんだ層は前記基板に接合され、前記第2金属層は前記リッドに接合される電子部品である。
【0010】
上記構成において、前記第1はんだ層と前記第2はんだ層とは離れている構成とすることができる。
【0011】
上記構成において、前記第1封止部と前記第2封止部との間に別の空隙が設けられている構成とすることができる。
【0012】
上記構成において、前記第1金属層と前記第2金属層の融点は、前記第1はんだ層および前記第2はんだ層の融点より高い構成とすることができる。
【0013】
上記構成において、前記第1金属層のうち最も厚い層の主成分と前記第2金属層のうち最も厚い層の主成分とは同じであり、前記第1はんだ層の主成分と前記第2はんだ層の主成分とは同じである構成とすることができる。
【0014】
上記構成において、前記素子は弾性波素子である構成とすることができる。
【0015】
本発明は、上記電子部品を含むフィルタである。
【0016】
本発明は、上記フィルタを含むマルチプレクサである。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、封止性の劣化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1(a)は、実施例1に係る電子部品の断面図、
図1(b)は、平面図である。
【
図2】
図2は、実施例1における封止部の層構造を示す断面拡大図である。
【
図3】
図3は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
【
図4】
図4(a)および
図4(b)は、実施例1に係る電子部品の製造方法を示す平面図である。
【
図5】
図5は、実施例1に係る電子部品の製造方法を示す断面図である。
【
図6】
図6(a)から
図6(c)は、それぞれ実施例1の変形例1~3に係る電子部品の断面図である。
【
図7】
図7(a)および
図7(b)は、それぞれ実施例1の変形例4および5に係る電子部品の断面図である。
【
図8】
図8は、実施例1の変形例5における弾性波素子を示す断面図である。
【
図9】
図9(a)および
図9(b)は、比較例1に係る電子部品の断面模式図、
図9(c)および
図9(d)は、それぞれ実施例1の変形例3および実施例1に係る電子部品の断面模式図である。
【
図10】
図10(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図、
図10(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0020】
図1(a)は、実施例1に係る電子部品の断面図、
図1(b)は、平面図である。基板10の厚さ方向をZ方向、基板10の平面方向をX方向およびY方向とする。
図1(b)は、基板10、弾性波素子12、封止部20および24を示している。
【0021】
図1(a)および
図1(b)に示すように、基板10上に弾性波素子12および配線14が設けられている。弾性波素子12は例えば弾性表面波素子である。基板10を貫通するビア配線16が設けられている。基板10の下面に端子18が設けられている。ビア配線16は配線14と端子18とを電気的に接続する。基板10の上方にリッド30が設けられている。弾性波素子12を囲むように環状の封止部20が設けられ、封止部20を囲むように封止部24が設けられている。封止部20および24は、基板10とリッド30との間を接続する。封止部20および24とリッド30は弾性波素子12を空隙32に封止する。
【0022】
封止部20は、積層された金属層21およびはんだ層22を有する。金属層21は、リッド30の下面に接合されている。基板10の上面に金属層23が設けられている。はんだ層22は金属層21と23とを接合する。封止部24は、積層された金属層25およびはんだ層26を有する。金属層25は、基板10の上面に接合されている。リッド30の下面に金属層27が設けられている。はんだ層26は金属層25と27とを接合する。金属層21の厚さT1ははんだ層22の厚さT2より大きい。金属層25の厚さT5ははんだ層26の厚さT6より大きい。
【0023】
基板10は、例えば単結晶タンタル酸リチウム基板、単結晶ニオブ酸リチウム基板または単結晶水晶基板等の圧電基板である。単結晶タンタル酸リチウム基板、単結晶ニオブ酸リチウム基板は、例えば回転YカットX伝搬基板である。リッド30は、コバール板等の金属板、シリコン板またはサファイア板等の絶縁板、タンタル酸リチウム基板またはニオブ酸リチウム基板等の圧電板である。リッド30の下面に弾性波素子等の素子が設けられていてもよい。配線14、ビア配線16および端子18は、例えば銅層、金層、銀層、チタン層、ニッケル層、タングステン層等の金属層の単層またはこれらの層の積層である。
【0024】
封止部20および24の例を説明する。
図2は、実施例1における封止部の層構造を示す断面拡大図である。
図2に示すように、金属層21は積層された層21a~21dを有し、金属層25は積層された層25a~25dを有する。層21aおよび25aは、厚さが0.05μmのチタン層であり、リッド30と封止部20との密着層および基板10と封止部24との密着層である。層21bおよび25bは、厚さが0.3μmの銅層であり、めっきのためのシード層である。層21a、25a、21bおよび25bはスパッタリング法を用い形成する。層21cおよび25cは、厚さが20μmの銅層であり、封止部20および24の中で最も厚い。層21dおよび25dは、厚さが4μmのニッケル層であり、層21cとはんだ層22とのバリア層および層25cとはんだ層26とのバリア層である。はんだ層22および26は、厚さが4μmの金錫層である。層21c、21dおよびはんだ層22は、層21bをシード層として電解めっき法により形成される。層25c、25dおよびはんだ層26は、層25bをシード層として電解めっき法により形成される。金属層23および27は、厚さが0.2μmの金層であり、金属層23とリッド30との密着性がよく、金属層27と基板10との密着性がよい。
【0025】
図2の例以外にも、金属層21、25は、例えば銅層、金層、銀層、チタン層、ニッケル層、タングステン層等の金属層の単層またはこれらの層の積層である。はんだ層22および26は、例えば金錫はんだ、銀錫はんだ、もしくは銀銅錫はんだ等の錫を主成分とするはんだ、またはインジウムを主成分とするはんだである。はんだ層22および26の融点は金属層21、23、25、27より低く、例えば300℃以下である。金属層23および27は、はんだ層22および26との濡れ性がよい金属であり、例えば金層である。基板10および/またはリッド30がはんだ層22および26の濡れ性が良い場合、金属層23および/または27は設けられていなくてもよい。封止部20の幅W1および封止部24の幅W2は、一例として10μmであり、例えば5μm~20μmである。封止部20と24との間隔W3は、0μmでもよいが、封止部20と24との合わせマージンを考慮すると、間隔W3は0μmより大きく10μm以下である。封止部20と24との間には空隙33が形成される。基板10の厚さは、例えば50μm~200μmであり、リッド30の厚さは、例えば10μm~200μmである。基板10およびリッド30のX方向およびY方向の幅は、例えば0.1mm~5mmである。
【0026】
図3は、実施例1における弾性波素子の平面図である。
図3に示すように、弾性波素子12は弾性表面波共振器またはLamb波共振器である。基板10は圧電基板であり、基板10上にIDT(Interdigital Transducer)40と反射器42が形成されている。IDT40は、互いに対向する1対の櫛型電極40aを有する。櫛型電極40aは、複数の電極指40bと複数の電極指40bを接続するバスバー40cとを有する。反射器42は、IDT40の両側に設けられている。IDT40が圧電基板である基板10に弾性表面波を励振する。弾性波の波長は一対の櫛型電極40aの一方の櫛型電極40aの電極指40bのピッチにほぼ等しい。すなわち、弾性波の波長は一対の櫛型電極40aの電極指40bのピッチの2倍にほぼ等しい。IDT40および反射器42は例えばアルミニウム膜、銅膜またはモリブデン膜により形成される。基板10上にIDT40および反射器42を覆うように保護膜または温度補償膜が設けられていてもよい。弾性波素子12は、弾性波を励振する電極を含む。このため、弾性波を制限しないように、弾性波素子12は空隙32に覆われている。
【0027】
図4(a)および
図4(b)は、実施例1に係る電子部品の製造方法を示す平面図である。
図5は、実施例1に係る電子部品の製造方法を示す断面図である。
図4(a)に示すように、基板10であるウエハ10a上に複数の封止部24を形成する。封止部24はそれぞれ弾性波素子12を囲む。封止部24の内側に金属層23(不図示)を形成する。
図4(b)に示すように、リッド30であるウエハ30a上に複数の封止部20を形成する。封止部20の外側に金属層27を形成する。
【0028】
図5に示すように、ウエハ10aと30aとを加熱し、矢印50および51のように押圧する。これにより、ウエハ10aと30aとが熱圧着される。はんだ層22および26が金錫の場合、ウエハ10aおよび30aの温度を約320℃に加熱する。これにより、はんだ層22および26が溶融し金属層23および27と接合する。はんだ層22および26を各々金層と錫層と、熱圧着のときにはんだ層22および26が形成されてもよい。その後、ウエハ10aおよび30aを切断することにより個片化する。これにより、実施例1の電子部品が製造される。
【0029】
[実施例1の変形例1]
図6(a)は、実施例1の変形例1に係る電子部品の断面図である。
図6(a)に示すように、封止部20の金属層21は基板10に接合されており、はんだ層22は、リッド30の下面に接合された金属層23と接合されている。封止部24の金属層25はリッド30に接合されており、はんだ層26は、基板10の上面に接合された金属層27と接合されている。このように、はんだ層22がリッド30側に設けられ、はんだ層26が基板側に設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0030】
[実施例1の変形例2]
図6(b)は、実施例1の変形例2に係る電子部品の断面図である。
図6(b)に示すように、封止部20の金属層21および封止部24の金属層25は基板10に接合されており、はんだ層22および26は、リッド30の下面に接合された金属層23および27にそれぞれ接合されている。このように、はんだ層22および26がリッド30側に設けられている。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。
【0031】
[実施例1の変形例3]
図6(c)は、実施例1の変形例3に係る電子部品の断面図である。
図6(c)に示すように、金属層23と27は共通に設けられている。これにより、はんだ層22および26が濡れ広がったときに、はんだ層22と26とが接触し一体となる。その他の構成は実施例1の変形例2と同じであり説明を省略する。
【0032】
[実施例1の変形例4]
図7(a)は、実施例1の変形例4に係る電子部品の断面図である。
図7(a)に示すように、基板10上に絶縁層11aが設けられ、絶縁層11a上に圧電層11bが設けられている。圧電層11b上に弾性波素子12が設けられている。領域55および56において絶縁層11aおよび圧電層11bが除去されている。領域55において、基板10上に封止部20および24が設けられている。領域56において、ビア配線16は基板10を貫通している。配線14は領域56のビア配線16上から圧電層11b上まで設けられている。
【0033】
基板10は、例えばサファイア基板、アルミナ基板、スピネル基板、水晶基板またはシリコン基板である。絶縁層11aは、例えば酸化シリコン層、窒化シリコン層、酸化アルミニウム層または窒化アルミニウム層等の単層膜またはこれらの積層膜である。一例として、絶縁層11aは、基板10上に設けられた酸化アルミニウム層と、酸化アルミニウム層上に設けられた酸化シリコン層である。圧電層11bは、例えば単結晶タンタル酸リチウム層または単結晶ニオブ酸リチウム層である。単結晶タンタル酸リチウム層、単結晶ニオブ酸リチウム層は、例えば回転YカットX伝搬基板である。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例1~3において、絶縁層11aおよび圧電層11bが設けられていてもよい。
【0034】
[実施例1の変形例5]
図7(b)は、実施例1の変形例5に係る電子部品の断面図である。
図7(b)に示すように、基板10上に弾性波素子12として圧電薄膜共振器が設けられている。基板10は、例えばサファイア基板、スピネル基板、アルミナ基板、ガラス基板、水晶基板またはシリコン基板である。
【0035】
図8は、実施例1の変形例5における弾性波素子を示す断面図である。
図8に示すように、弾性波素子12は圧電薄膜共振器である。基板10上に圧電膜46が設けられている。圧電膜46を挟むように下部電極44および上部電極48が設けられている。下部電極44と基板10との間に空隙45が形成されている。圧電膜46の少なくとも一部を挟み下部電極44と上部電極48とが対向する領域が共振領域47である。共振領域47において、下部電極44および上部電極48は圧電膜46内に、厚み縦振動モードの弾性波を励振する。下部電極44および上部電極48は例えばルテニウム膜等の金属膜である。圧電膜46は例えば窒化アルミニウム膜である。空隙45の代わりに弾性波を反射する音響反射膜が設けられていてもよい。その他の構成は実施例1と同じであり説明を省略する。実施例1の変形例1~3において、弾性波素子12は圧電薄膜共振器でもよい。
【0036】
図9(a)および
図9(b)は、比較例1に係る電子部品の断面模式図、
図9(c)および
図9(d)は、それぞれ実施例1の変形例3および実施例1に係る電子部品の断面模式図である。金属層23および27の図示を省略している。
図9(a)に示すように、比較例1では、封止部20が設けられ、封止部24は設けられていない。封止部20において金属層21がはんだ層22より厚い理由は、はんだ層22が厚いと熱圧着のときにリッド30と基板10との距離を維持できないためである。封止部20の幅が狭いとき、封止部20と基板10およびリッド30との界面から空隙32内に外部から水分等が侵入しやすく、封止性(例えば気密性)が悪い。熱応力等により、リッド30が湾曲しても、封止部20の金属層21が湾曲しリッド30からの応力を緩和する。このため、はんだ層22による接合は良好である。
【0037】
図9(b)に示すように、封止部20の幅を広くすると、封止部20と基板10およびリッド30との界面が広くなり、封止性が向上すると考えられる。しかし、金属層21の幅が広いため金属層21が湾曲し難い。このため、矢印54のように、はんだ層22とリッド30との接合が破断することがある。これにより、空隙32の気密性が低下してしまう。
【0038】
図9(c)のように、実施例1の変形例3では、封止部20の金属層21と封止部24の金属層25とが離れて設けられている。これにより、リッド30が湾曲したときに、金属層21および25がリッド30に追従して湾曲する。これにより、はんだ層22および26とリッド30との接合が破断することが抑制される。また、封止部20および24の合計の幅を広くできるため、封止性が向上する。
【0039】
図9(d)に示すように、実施例1では、実施例1の変形例3と同様に、リッド30が湾曲したときに、金属層21および25がリッド30に追従して湾曲する。仮に、金属層25の湾曲がリッド30の湾曲に追従できずに、はんだ層26とリッド30との接合が破断しても、金属層21とリッド30との接合により、封止部20の封止が維持され、気密性が保持できる。
【0040】
図9(a)から
図9(d)では、リッド30とはんだ層22との接合が基板10と金属層21との接合より弱い場合について説明した。基板10と金属層21との接合がリッド30とはんだ層22との接合より弱い場合には、基板10と金属層21または25との接合が破断する。また、リッド30が湾曲する例を説明したが、基板10の湾曲がリッド30の湾曲より大きい場合もある。
【0041】
実施例1およびその変形例によれば、封止部20(第1封止部)は、はんだ層22(第1はんだ層)と、はんだ層22に積層されはんだ層22より厚い金属層21(第1金属層)と、を有する。封止部24(第2封止部)は、はんだ層26(第2はんだ層)と、はんだ層26に積層され、はんだ層26より厚く金属層21と離れた金属層25(第2金属層)と、を有する。このように、厚い金属層21と25とが離れているため、
図9(c)において説明したように、リッド30および基板10の少なくとも一方が湾曲しても金属層21および25が追従して湾曲するため、接合の破断を抑制できる。また、封止部20と24とで封止性を高めるため、封止性を向上できる。金属層21および25の厚さT1およびT5は、はんだ層22および26の厚さT2およびT6の2倍以上が好ましく、5倍以上がより好ましい。封止部20および24を湾曲させる観点から、封止部20および24の厚さは、封止部20および24の各々の幅の1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましい。
【0042】
実施例1のように、はんだ層22は基板10に接合され、金属層21はリッド30に接合される。はんだ層26はリッド30に接合され、金属層25は基板10に接合される。実施例1の変形例1のように、はんだ層22はリッド30に接合され、金属層21は基板10に接合される。はんだ層26は基板10に接合され、金属層25はリッド30に接合される。これにより、封止部24において、リッド30との接合が基板10との接合より弱い場合、封止部20において、リッド30との接合は基板10との接合より強くなる。よって、封止部20とリッド30との接合が破断しても封止部24とリッド30との破断は抑制される。よって、封止性が保持される。
【0043】
実施例1と実施例1の変形例1はどちらでもよいが、金属層21および25に含まれる材料が弾性波素子12に影響する場合、または、金属層21および25をめっき法を用い形成するときにウィスカーが形成される場合は、実施例1のように、弾性波素子12に近い封止部20のはんだ層22が基板10に接合することが好ましい。
【0044】
実施例1の変形例2および3のように、はんだ層22および26はリッド30に接合され、金属層21および25は基板10に接合されていてもよい。また、はんだ層22および26は基板10に接合され、金属層21および25はリッド30に接合されていてもよい。このような構成でも、金属層21と25が離れていることにより、
図9(c)のように、リッド30が湾曲しても金属層21および25が湾曲し追従するため、封止部20または24の破断を抑制できる。
【0045】
実施例1の変形例2のように、はんだ層22と26とは離れている。これにより、はんだ層22と26とが独立してリッド30の湾曲に追従する。よって、封止部20または24の破断をより抑制できる。
【0046】
実施例1およびその変形例1および2のように、封止部20と24との間に別の空隙33が設けられている。これにより、はんだ層22と26とが独立してリッド30の湾曲に追従する。よって、封止部20または24の破断をより抑制できる。
【0047】
金属層21と25の融点は、はんだ層22および26の融点より高い。例えば、はんだ層22および26の融点は300℃以下であり、金属層21および25の融点は500℃以上である。このように、金属層21と25の融点は、はんだ層22および26の融点より200°以上高い。
【0048】
金属層21のうち最も厚い層21cの主成分と金属層25のうち最も厚い層25cの主成分とは同じであり、はんだ層22の主成分とはんだ層26の主成分とは同じである。これにより、封止部20と24の形成を簡略化できる。なお、ある層の主成分とは、ある層に意図的または意図せず含まれる不純物を除いた成分であり、例えばある層の50原子%以上の成分であり、80原子%以上の成分である。最も厚い層21cおよび25cの厚さはそれぞれ封止部20および24の厚さの例えば1/2以上であり、2/3以上であることが好ましい。
【0049】
実施例1およびその変形例では、素子として弾性波素子12(圧電薄膜共振器または弾性表面波共振器)の例を説明したが、素子は、インダクタまたはキャパシタ等の受動素子、トランジスタを含む能動素子、またはMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子でもよい。
【実施例2】
【0050】
図10(a)は、実施例2に係るフィルタの回路図である。
図10(a)に示すように、入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の直列共振器S1からS4が直列に接続されている。入力端子Tinと出力端子Toutとの間に、1または複数の並列共振器P1からP4が並列に接続されている。実施例2のフィルタを弾性波素子12で形成してもよい。直列共振器および並列共振器の個数等は適宜設定できる。フィルタとしてラダー型フィルタを例に説明したが、フィルタは多重モード型フィルタでもよい。
【0051】
図10(b)は、実施例2の変形例1に係るデュプレクサの回路図である。
図10(b)に示すように、共通端子Antと送信端子Txとの間に送信フィルタ60が接続されている。共通端子Antと受信端子Rxとの間に受信フィルタ62が接続されている。送信フィルタ60は、送信端子Txから入力された高周波信号のうち送信帯域の信号を送信信号として共通端子Antに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。受信フィルタ62は、共通端子Antから入力された高周波信号のうち受信帯域の信号を受信信号として受信端子Rxに通過させ、他の周波数の信号を抑圧する。送信フィルタ60および受信フィルタ62の少なくとも一方を実施例2のフィルタとすることができる。
【0052】
マルチプレクサとしてデュプレクサを例に説明したがトリプレクサまたはクワッドプレクサでもよい。
【0053】
以上、本発明の実施例について詳述したが、本発明はかかる特定の実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【符号の説明】
【0054】
10 基板
12 弾性波素子
14 配線
16 ビア配線
18 端子
20、24 封止部
21、23、25、27 金属層
22、26 はんだ層
30 リッド
32、33 空隙
60 送信フィルタ
62 受信フィルタ