(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】センサ保持部材及びセンサ取り付け方法
(51)【国際特許分類】
G01R 15/18 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
G01R15/18 A
(21)【出願番号】P 2021046377
(22)【出願日】2021-03-19
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000000262
【氏名又は名称】株式会社ダイヘン
(74)【代理人】
【識別番号】100115749
【氏名又は名称】谷川 英和
(74)【代理人】
【識別番号】100166811
【氏名又は名称】白鹿 剛
(72)【発明者】
【氏名】大瀧 泰生
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-38996(JP,A)
【文献】特開2020-139781(JP,A)
【文献】特開平6-201734(JP,A)
【文献】特表2015-533427(JP,A)
【文献】特開2013-2894(JP,A)
【文献】特開2014-142284(JP,A)
【文献】特開平8-334533(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 15/18
G01R 33/02
G01R 19/00
G01R 1/04
G01D 18/00
H01F 27/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
線状の測定対象部材に取り付けられるセンサ保持部材であって、
第一方向において第一端部と第二端部とのそれぞれに開口部を有するように形成され、前記測定対象部材が貫通可能である通線部と、
前記通線部に通じており、第二方向に沿うような姿勢で嵌め込まれた前記測定対象部材が、前記センサ保持部材に対して第一方向に対して垂直な軸周りに回転するのに伴って前記通線部に案内されるように形成された入線部と、
第一方向から見て前記通線部を囲む環状をなすようにロゴスキーコイルを保持するように外周部に形成された保持部とを備える、センサ保持部材。
【請求項2】
前記保持部は、前記ロゴスキーコイルを保持するように外周面から窪む保持溝部を有し、
前記保持部は、前記ロゴスキーコイルが全体として螺旋状をなすように、前記ロゴスキーコイルを保持する、請求項1に記載のセンサ保持部材。
【請求項3】
前記入線部は、下側から前記測定対象部材を嵌め込み可能に構成されており、
前記通線部の内面のうち上側には、前記通線部内の前記測定対象部材に接触し、第一方向に対して垂直な方向であって上下方向に対して垂直な方向における寸法が上に行くにつれて狭くなるように形成された支持面が設けられている、請求項1又は2に記載のセンサ保持部材。
【請求項4】
前記入線部は、
外周面から前記通線部に向けて深さを有し、第二方向において第一溝端と第二溝端との2つの端部を有し、前記測定対象部材が第二方向に沿うような姿勢で嵌まるように形成された入線溝部と、
前記第一端部の前記開口部から前記第一溝端に通じるように、前記外周面の一部を欠くように前記通線部から外側に開放された第一導入部と、
前記第二端部の前記開口部から前記第二溝端に通じるように、前記外周面の一部を欠くように前記通線部から外側に開放された第二導入部とを有する、請求項1から3のいずれかに記載のセンサ保持部材。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のセンサ保持部材を用いて、ロゴスキーコイルを活線である電線に取り付けるセンサ取り付け方法であって、
第一方向から見て前記通線部を囲む環状をなすように前記ロゴスキーコイルが
前記保持部に保持されている状態の前記センサ保持部材を間接活線工具で保持する
第一工程と、
前記第一工程の後で、前記センサ保持部材に対する前記電線の沿う向きが第二方向となるようにした状態で前記入線部に前記電線を嵌め込む
第二工程と、
前記第二工程の後で、前記センサ保持部材を第一方向に対して垂直な軸周りに前記電線に対して回転させることにより前記電線を前記通線部内に配置する
第三工程とを備える、センサ取り付け方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、センサ保持部材及びセンサ取り付け方法に関し、特に、ロゴスキーコイルを線状の測定対象部材に設置するために用いられるセンサ保持部材及びセンサ取り付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電流を計測するためのセンサプローブとして、ロゴスキーコイルが用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。一般的に、ロゴスキーコイルは、基端部と先端部とを接続して環をなすようにして用いられる。環状のロゴスキーコイルの内部配置された電線に流れる電流を、ロゴスキーコイルにより測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ロゴスキーコイルを線状の測定対象部材に対して設置するには、上述のように、測定対象部材を環状に囲むようにロゴスキーコイルを配して、環状のままとなるように基端部と先端部とを接続する作業を行う必要がある。そのため、ロゴスキーコイルの設置に手間がかかるという問題がある。
【0005】
この発明はそのような問題点を解決するためになされたものであり、ロゴスキーコイルを線状の測定対象部材に容易に設置することができるセンサ保持部材及びセンサ取り付け方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第一の発明のセンサ保持部材は、線状の測定対象部材に取り付けられるセンサ保持部材であって、第一方向において第一端部と第二端部とのそれぞれに開口部を有するように形成され、測定対象部材が貫通可能である通線部と、通線部に通じており、第二方向に沿うような姿勢で嵌め込まれた測定対象部材が、センサ保持部材に対して第一方向に対して垂直な軸周りに回転するのに伴って通線部に案内されるように形成された入線部と、第一方向から見て通線部を囲む環状をなすようにロゴスキーコイルを保持するように外周部に形成された保持部とを備える、センサ保持部材である。
【0007】
かかる構成により、ロゴスキーコイルを線状の測定対象部材に対して容易に設置することができる。
【0008】
また、本第二の発明のセンサ保持部材は、第一の発明に対して、保持部は、ロゴスキーコイルを保持するように外周面から窪む保持溝部を有し、保持部は、ロゴスキーコイルが全体として螺旋状をなすように、ロゴスキーコイルを保持する、センサ保持部材である。
【0009】
かかる構成により、ロゴスキーコイルを保持溝により確実に保持することができ、また、容易にセンサ保持部材に取り付けることができる。
【0010】
また、本第三の発明のセンサ保持部材は、第一又は二の発明に対して、入線部は、下側から測定対象部材を嵌め込み可能に構成されており、通線部の内面のうち上側には、通線部内の測定対象部材に接触し、第一方向に対して垂直な方向であって上下方向に対して垂直な方向における寸法が上に行くにつれて狭くなるように形成された支持面が設けられている、センサ保持部材である。
【0011】
かかる構成により、測定対象部材を、通線部内の所定の位置に容易に位置決めすることができる。
【0012】
また、本第四の発明のセンサ保持部材は、第一から三のいずれかの発明に対して、入線部は、外周面から通線部に向けて深さを有し、第二方向において第一溝端と第二溝端との2つの端部を有し、測定対象部材が第二方向に沿うような姿勢で嵌まるように形成された入線溝部と、第一端部の開口部から第一溝端に通じるように、外周面の一部を欠くように通線部から外側に開放された第一導入部と、第二端部の開口部から第二溝端に通じるように、外周面の一部を欠くように通線部から外側に開放された第二導入部とを有する、センサ保持部材である。
【0013】
かかる構成により、測定対象部材を、第一導入部及び第二導入部を通して入線溝部から通線部にスムーズに案内することができる。
【0014】
また、本第五の発明のセンサ取り付け方法は、第一から四のいずれかのセンサ保持部材を用いて、ロゴスキーコイルを活線である電線に取り付けるセンサ取り付け方法であって、ロゴスキーコイルが取り付けられている状態のセンサ保持部材を間接活線工具で保持する工程と、センサ保持部材に対して電線の沿う向きが第二方向となるようにした状態で入線部に測定対象部材を嵌め込む工程と、センサ保持部材を電線に対して第一方向に対して垂直な軸周りに回転させることにより電線を通線部内に配置する工程とを備える、センサ取り付け方法である。
【0015】
かかる構成により、間接活線工具を利用して、ロゴスキーコイルを活線に対して容易に取り付けることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によるセンサ保持部材によれば、ロゴスキーコイルを線状の測定対象部材に容易に設置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態の1つに係るセンサ保持部材を示す斜視図
【
図3】同センサ保持部材を用いて保持されるロゴスキーコイルの一例を示す斜視図
【
図5】同センサ保持部材を用いたセンサ取り付け方法に用いられる間接活線工具の一例を示す図
【
図6】同センサ保持部材を用いたセンサ取り付け方法を示すフローチャート
【
図7】同センサ保持部材の電線へ取り付ける場合の姿勢について説明する図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、センサ保持部材等の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
なお、以下の説明において、図面において示される座標は、各図同士で共通している。以下において、各方向を示して各部の形状や位置関係を説明することがあるが、これらはあくまで説明の便宜のために定義したものであって、本発明に係るセンサ保持部材の使用時における向きや姿勢などを限定するものではない。
【0020】
(実施の形態)
【0021】
図1は、本発明の実施の形態の1つに係るセンサ保持部材1を示す斜視図である。
図2は、同センサ保持部材1を下側から見た斜視図である。
図3は、同センサ保持部材1を用いて保持されるロゴスキーコイル70の一例を示す斜視図である。
図4は、同センサ保持部材1を第一方向から見た図である。
【0022】
図1及び
図2においては、ロゴスキーコイル70が取り付けられていない状態のセンサ保持部材1が示されている。また、
図4において、センサ保持部材1に対して保持されるロゴスキーコイル70のパス(配線される経路)が太線の二点鎖線で示されている。
【0023】
本実施の形態において、センサ保持部材1は、線状の測定対象部材90(
図4に示す)に取り付けられて用いられる。本実施の形態において、線状の測定対象部材90とは、例えば電線であるが、これに限られない。以下において、測定対象部材90を電線90bと呼ぶことがある。
【0024】
なお、線状の測定対象部材90には、例えば、湾曲可能な線状部材のほか、棒状の部材など、長さを有する部材が含まれていてもよい。センサ保持部材1は、後述のように、ロゴスキーコイル70などのセンサプローブを線状の測定対象部材90の周囲に配置するために用いることができるものである。なお、測定対象部材90は円形の断面を有するものであってもよいし、楕円形や多角形形状等の断面を有するものであってもよい。
【0025】
なお、以下において、第一方向は、センサ保持部材1について所定の方向を指すものである。また、第二方向は、センサ保持部材1について所定の方向を指すものであって、第一方向とは異なる方向を指す。また、本実施の形態においては、センサ保持部材1について通常用いられる姿勢を想定して上や下の各方向が規定されている。第一方向は、上下方向に対して垂直な方向である。第二方向は、第一方向に対して垂直な方向であって、上下方向に対して垂直な方向である。なお、第二方向は、第一方向に対して垂直な方向ではなくてもよい。第二方向は、第一方向とは平行ではない方向であればよい。また、第一方向に対して垂直な方向であって、センサ保持部材1の中央部から離れたり中央部に近づいたりする方向を、径方向ということがある。径方向は、後述の通線部31から離れたり通線部31に近づいたりする方向であると表現してもよい。
【0026】
図1に示されるように、センサ保持部材1は、外周部11と、第一端部13と、第二端部15とを有している。センサ保持部材1は、本実施の形態において、第一方向において第一端部13と第二端部15との2つの端部を有する、略円柱形状を有している。本実施の形態において、センサ保持部材1は、第一方向に沿って延びる軸周りの外周面を有している。外周面は、センサ保持部材1の外周部11の表面である。なお、センサ保持部材1の全体形状はこれに限られない。センサ保持部材1は、全体として角柱形状を有していてもよいし、その他の形状を有していてもよい。第一端部13や第二端部15は、センサ保持部材1の第一方向における端部となる部位であればよく、センサ保持部材1の長手方向における端部に限られない。
【0027】
センサ保持部材1は、絶縁性を有する素材を用いて成形されている。例えば、センサ保持部材1は、絶縁性を有する樹脂製の部材である。本実施の形態において、センサ保持部材1は、一体成型により成形されたものであるが、これに限られない。センサ保持部材1は、それぞれ形成された2以上の部品が互いに組みつけられることにより構成されているものであってもよい。また、センサ保持部材1は、少なくとも表面が絶縁性を有する素材により覆われているように構成されているものであってもよい。
【0028】
センサ保持部材1には、通線部31と、入線部41と、保持部51とが設けられている。これらの各部は、センサ保持部材1において形成されている面により規定されるスペース、孔部、溝部等であり、これらの各部を規定する面を通線部31、入線部41、又は保持部51などと呼んでもよい。
【0029】
通線部31は、第一方向において第一端部13と第二端部15とのそれぞれに開口部を有するように形成され、測定対象部材90が貫通可能に構成されている。本実施の形態において、通線部31は、センサ保持部材1を第一方向に貫くように設けられている。通線部31は、第一端部13において開口する第一開口部33と、第二端部15において開口する第二開口部35とを有している。通線部31は第一開口部33から第二開口部35に繋がる孔部であると表現してもよい。通線部31は、第一方向から見て、センサ保持部材1の略中央に位置している。
【0030】
本実施の形態において、通線部31は、支持面37を有している。支持面37は、通線部31の内面のうち、上側に形成されている。支持面37は、第一方向に対して垂直な方向であって上下方向に対して垂直な方向における寸法(本実施の形態においては、第二方向における寸法)が、上に行くにつれて狭くなるように形成されている。本実施の形態において、支持面37は、第一方向に平行であって、上に行くにつれて互いに近づく2つの傾斜面を有している。2つの傾斜面は、上端部で互いに接合され、角をなしている。なお、支持面37は、このような2つの傾斜面で構成されるものに限られない。上に凸となるように形成された1つの曲面であってもよいし、2つ以上の曲面であってもよい。また、2つの傾斜面のそれぞれの上端部が、他の平面に接続された形状であってもよい。
【0031】
このような支持面37が設けられていることにより、支持面37は、通線部31内において第一方向に沿って配置された線状の測定対象部材90に2つの面で接触しうる。これにより、支持面37に対する測定対象部材90の位置が、概ね位置決めされうる。すなわち、通線部31内に測定対象部材90が通されており、重力によりセンサ保持部材1が測定対象部材90に掛かっている状態において、測定対象部材90に対するセンサ保持部材1の位置が、概ね位置決めされる。
【0032】
なお、支持面37は、第一方向に沿って延びるように形成されているが、これに限られない。通線部31において、測定対象部材90に接触しうるように内側に突出するように形成された突起部の一部により支持面37が構成されていてもよい。例えば、支持面37は、第一方向において複数個所に形成されたリブ状の突起部の一部であってもよい。また、通線部31内において測定対象部材90が下方に位置している場合に、測定対象部材90と支持面37とは上下方向において離れているようにすることが好ましい。
【0033】
入線部41は、通線部31に通じている。入線部41には、下側から測定対象部材90を嵌め込み可能に構成されている。入線部41は、以下に示すように、第二方向に沿うような姿勢で嵌め込まれた測定対象部材90が、センサ保持部材1に対して第一方向に対して垂直な軸周りに回転するのに伴って通線部31に案内されるように形成されている。
【0034】
入線部41は、入線溝部42と、第一導入部43と、第二導入部45とを有している。
【0035】
入線溝部42は、外周面から通線部31に向けて深さを有するように形成された溝である。すなわち、入線溝部42は、外周部11から径方向内側に向けて形成された溝である。入線溝部42は、測定対象部材90が第二方向に沿うような姿勢で嵌まるように形成されている。すなわち、入線溝部42は、第二方向に沿って略直線状に形成された溝である。入線溝部42は、第二方向において、外周部11に達している2つの端部を有している。すなわち、入線溝部42は、第二方向において第一溝端421と第二溝端422との2つの端部を有している。入線溝部42は、上部において、通線部31の下部に繋がっている。
【0036】
第一導入部43は、第一端部13の開口部33から第一溝端421に通じるように、外周面の一部を欠くように通線部31から外側に開放された部位である。また、第二導入部45は、第二端部15の開口部35から第二溝端422に通じるように、外周面の一部を欠くように通線部31から外側に開放された部位である。第一導入部43と第二導入部45とは、径方向において互いに反対の方向に向けて開放されている。上面視で、第一導入部43と第二導入部45とは、通線部31と入線溝部42とが重なる位置を中心に略点対称となる位置に設けられている。なお、第一導入部43及び第二導入部45は、通線部31のうち下側の部位のみが外側に開放され、測定対象部材90が通線部31に案内可能となるように構成されていることが好ましい。これにより、通線部31内において測定対象部材90が支持面37により略位置決めされている状態で、センサ保持部材1の姿勢が変化して測定対象部材90が第一導入部43や第二導入部45に位置するようになることを防止することができる。
【0037】
保持部51は、保持溝部52と、先端保持部53と、基端保持部55とを有している。保持部51は、ロゴスキーコイル70を、外周部11側において、通線部31を取り巻くように保持するように構成されている。保持部51は、外周部11に形成されている。保持部51には、ロゴスキーコイル70が、脱落しないように取り付けられる。本実施の形態においては、保持部51に設けられている溝や保持構造にロゴスキーコイル70が嵌め込まれることによりロゴスキーコイル70が脱落しないように保持されるように構成されているが、これに限られない。例えば、保持部51によりロゴスキーコイル70のパスが位置決めされている状態において、他の部材(例えば、外周部11に取り付けられる留め具や、接着剤や充填剤等)によりロゴスキーコイル70が脱落しないように保持されるようにしてもよい。ロゴスキーコイル70は、センサ保持部材1に対して着脱可能に取り付けられていてもよい。
【0038】
図3に示されるように、ロゴスキーコイル70としては、例えば、樹脂成型品等である先端部73と基端部75とを有し、その間において湾曲可能に構成されているものを用いることができる。基端部75に対して先端部73を嵌め込むことができるように構成されていることにより、測定対象に対して環状をなすように配置することができるように構成されている。なお、ロゴスキーコイル70の構成はこれに限られず、先端部73の有無や基端部75の有無、長さ等が異なるような種々のものを用いることができる。ロゴスキーコイル70は、一般的なもの、市販品等を用いることができる。
【0039】
本実施の形態において、
図4に示されるように、保持部51は、第一方向から見て、通線部31を囲む環状をなすように、ロゴスキーコイル70を保持する。換言すると、保持部51により保持されたロゴスキーコイル70の通るパスは、通線部31を囲む環状をなす。すなわち、本実施の形態において、先端部73から基端部75までの全部又は一部分の部位が、第一方向から見て通線部31の周囲を囲むような姿勢で取り回される。ここで、環状とは、円環状に限られず、広く閉曲線状であったり、渦巻形であったり、第一方向から見て完全に閉じていない形状であってもよい。環状とは、滑らかな曲線に限られず、多角形形状であると表現されるものも含まれてよい。
【0040】
なお、保持部51は、径方向において、ロゴスキーコイル70が通線部31を構成する面から離れた位置にあるように、ロゴスキーコイル70を保持する。これにより、通線部31内に位置する測定対象部材90とロゴスキーコイル70とが直接接触することが防止されている。すなわち、保持部51は、通線部31から間隔を空けた位置においてロゴスキーコイル70を保持するように構成されている。これにより、保持部51は、通線部31内に位置する測定対象部材90との絶縁を確実に確保するように、ロゴスキーコイル70を保持可能である。換言すると、センサ保持部材1は、通線部31に位置する測定対象部材90とロゴスキーコイル70との絶縁が保たれる位置に、ロゴスキーコイル70が保持されるように構成されている。
【0041】
保持部51には、ロゴスキーコイル70の先端部73の形状に対応する先端保持部53と、ロゴスキーコイル70の基端部75の形状に対応する基端保持部55とが設けられている。先端保持部53には先端部73が係合し、基端保持部55には基端部75が係合する。
【0042】
より具体的には、先端保持部53は、第二端部15側の下部に形成されている。すなわち、先端保持部53は、第二導入部45の下方に位置している。先端保持部53は、先端部73に係合し、その位置を固定可能に構成されている。本実施の形態においては、先端保持部53は、先端部73を収容可能となるように、外周面から径方向において内側に窪む凹部である。先端部73が先端保持部53に嵌め込まれて、センサ保持部材1に対する先端部73の位置が位置決めされる。
【0043】
また、基端保持部55は、第一端部13側の下部に形成されている。すなわち、基端保持部55は、第一導入部43の下方に位置している。基端保持部55は、基端部75に係合し、その位置を固定可能に構成されている。本実施の形態においては、基端保持部55は、基端部75を収容可能となるように、第一端部13から第一方向において窪む凹部である。基端部75が基端保持部55に嵌め込まれて、センサ保持部材1に対する基端部75の位置が位置決めされる。
【0044】
保持溝部52は、ロゴスキーコイル70を保持するように外周面から窪んでいる部位である。本実施の形態において、センサ保持部材1により保持されているロゴスキーコイル70のうち先端部73から基端部75までの間の部位は、保持溝部52に嵌め込まれた状態となる。すなわち、ロゴスキーコイル70は、保持溝部52に沿って取り回される。ロゴスキーコイル70のパスは、保持溝部52のパスと略一致する。保持溝部52は、入線部41が形成されていない外周部51において、外周面に沿って形成されている。
【0045】
本実施の形態において、保持部51は、ロゴスキーコイル70が全体として螺旋状をなすように、ロゴスキーコイル70を保持するように形成されている。螺旋の軸は第一方向に略平行となるようにすればよいが、第一方向とは異なる方向の軸であってもよい。なお、全体として螺旋状をなすとは、螺旋軸方向(例えば、第一方向に略一致する方向)に変位するにつれて螺旋軸周りに回転し続けるような曲線状であるもののほか、以下のようなもの(変形螺旋と表現してもよい)を含みうる。例えば、螺旋軸に平行な平面内の直線又は曲線で表される部位を含んだり、螺旋軸に垂直な平面内の直線又は曲線で表される部位を含んだりするような線状であってもよい。また、部分的に、他の部位とは曲率や曲がる方向が大きく異なるように湾曲するような部位を有するような線状であってもよい。
【0046】
本実施の形態においては、保持部51により保持されるロゴスキーコイル70のパスは、両端部近傍部位に設けられた円周状の部位と、両端部間において第一方向に延びる直線上の部位とが組み合わされて、全体として螺旋状をなすように構成されている。すなわち、保持溝部52は、第一端部13側の下部から、第一方向において入線端部と第一端部13との間にある外周面に沿って上部に延び、上部において第一端部13側から第二端部15側に延び、第一方向において入線端部と第二端部15との間にある外周面に沿って第二端部15側の下部に延びている。
【0047】
次に、このように構成されたセンサ保持部材1を用いて、ロゴスキーコイル70を測定対象部材90に取り付けるセンサ取り付け方法について説明する。ロゴスキーコイル70は、センサ保持部材1に保持された状態のセンサユニット100(
図7に示す)として取り付けられうる。以下に示す例では、高圧配電線である電線90bを測定対象部材90として説明するが、センサ保持部材1の適用対象はこれに限られない。種類、径、大きさ、用途等が異なる種々の電線や、その他の電流が流れる線状の部材に対して、広くセンサ保持部材1を用いることができる。
【0048】
図5は、同センサ保持部材1を用いたセンサ取り付け方法に用いられる間接活線工具95の一例を示す図である。
【0049】
従来において、センサ保持部材1を用いずに、例えば電線90bに無停電のままでロゴスキーコイル70を取り付ける際には、間接活線工具(ホットスティック)を用いる必要がある。しかしながら、比較的不安定な高所作業時に、ホットスティックを用いて、ロゴスキーコイル70の基端部75に先端部73を接続するというような細かな作業を行うことは困難である。また、基端部75を保持する作業者と先端部73を取り回す作業者との複数人の作業者で作業を行ったり、基端部75を保持しながら先端部73を移動させる開閉構造を設けたロゴスキーコイル70を用いたりする必要があるため、ロゴスキーコイル70の取り付けにコストがかかるという問題がある。
【0050】
これに対して、本実施の形態においては、センサ保持部材1を用いることにより、電線90bの任意の位置に、活線のままで、容易に、ロゴスキーコイル70を配置することができる。特に電柱等に架線された状態の電線90bに対しても、間接活線工法に用いられる間接活線工具95を用いて、容易にロゴスキーコイル70を設置することができる。
【0051】
図5に示されるように、間接活線工具95は、一般的に間接活線工法に用いられるものである。間接活線工具95は、絶縁性を有する素材で構成されている。間接活線工具95は、例えば、先端部に把持工具951を有し、把持工具951によりセンサユニット100を把持することができるように構成されている。なお、間接活線工具95の構成はこれに限られない。例えば、把持工具951に替えて、センサユニット100を電線90bに取り付けるために保持することができるように構成された工具を有するものが用いられてもよい。
【0052】
図6は、同センサ保持部材1を用いたセンサ取り付け方法を示すフローチャートである。
【0053】
センサ保持部材1を用いて、ロゴスキーコイル70を電線90bに取り付けるには、作業者は、例えば以下のような取り付け方法を採用することができる。
【0054】
(ステップS11)作業者は、センサ保持部材1の保持部51にロゴスキーコイル70を取り付ける。これにより、ロゴスキーコイル70が全体として螺旋状をなすように保持されたセンサユニット100が構成される。
【0055】
(ステップS12)センサ保持部材1すなわちセンサユニット100を、間接活線工具95により保持する。
【0056】
(ステップS13)センサユニット100を電線90bの近傍まで移動させ、センサ保持部材1に対する電線90bの沿う向きが第二方向となるようにして、入線部41に電線90bを嵌め込む。
【0057】
(ステップS14)その後、第一方向に対して垂直な軸周りに、センサ保持部材1を電線90bに対して回転させて、電線90bを通線部31内に配置する。
【0058】
以上の手順により、電線90bが通線部31内に配置された状態すなわち第一方向から見て電線90bを囲む環状にロゴスキーコイル70が配置された状態とすることができる。
【0059】
ここで、上述のステップS13及びステップS14の動作は、具体的には以下のようにすることができる。
【0060】
図7は、同センサ保持部材1の電線90bへ取り付ける場合の姿勢について説明する図である。
【0061】
ステップS31に示されるように、まず、第二方向に電線90bが沿うような姿勢になるようにして、電線90bの上部にセンサユニット100を配置する。換言すると、電線90bに入線溝部42が沿うようにセンサユニット100を配置する。この状態で、矢印D1で示すように、電線90bに向けてセンサユニット100を変位させる。センサユニット100が重力により変位するようにしてもよい。そうすると、ステップS32に示されるように、入線溝部42に電線90bが嵌め込まれた状態が得られる。
【0062】
次に、電線90bに対して、矢印R方向にセンサユニット100を回転させる。すなわち、第一方向に垂直であって第二方向に垂直な回転軸(上下方向に平行な回転軸)を中心に、センサユニット100を回転可能な向きに回転させる。本実施の形態においては、90度回転させることができる。換言すると、電線90bが、第一導入部43を経由して第一開口部33を通り、かつ、第二導入部45を経由して第二開口部35を通るように、センサユニット100を回転させる。これにより、ステップS33で示される状態になる。
【0063】
この状態で、矢印D2で示すように、電線90bに対してセンサユニット100を下方に変位させる。センサユニット100が重力により変位するようにしてもよい。そうすると、ステップS34に示されるように、通線部31内において、電線90bが支持面37に当接した状態となり、ロゴスキーコイル70に対する電線90bの位置が略所定の位置に位置決めされる。また、上下方向に平行な回転軸を中心に電線90bに対してセンサユニット100が回転することが防止される。
【0064】
なお、
図7に示されるような手順は、活線である電線90bにセンサユニット100を取り付ける際だけでなく、活線でない電線90bやその他の測定対象部材90にセンサユニット100を取り付ける際にも、同様に行うことができる。その場合、間接活線工具95を用いなくてもよい。
【0065】
また、以上の方法では、電線90bを入線溝部42に嵌め込む際にはセンサユニット100が電線90bの上方に位置するが、センサユニット100の電線90bに対する位置はこれに限られない。例えば、電線90bの横から電線90bが入線溝部42に嵌め込まれてもよい。なお、センサユニット100を電線90bに取り付けた後においてセンサ保持部材1の周囲を囲む部材を取り付けるなど、別の部材を付加的に用いてもよい。これにより、どのような姿勢においてもセンサユニット100を電線90bに取り付けたまま保持することができる。付加的に用いる部材としては、例えば、電線90bが入線部41から脱落しないようにする部材や、センサ保持部材1が回転して電線90bが第二方向に沿う状態になることを防止する部材を用いることができる。
【0066】
以上説明したように、本実施の形態においては、センサ保持部材1を用いて、測定対象部材90の周囲に、ロゴスキーコイル70を略螺旋状をなすように容易に配置することができる。第一方向すなわち電流が流れる方向から見たロゴスキーコイル70を環状に維持することができるので、ロゴスキーコイル70を用いた電流の計測を行うことができる。センサ保持部材1の入線部41は、測定対象部材90を入線後にセンサ保持部材1の姿勢を回転させることによって測定対象部材90を通線部31に案内することができるように構成されているので、容易にロゴスキーコイル70の配置作業を行うことができる。ロゴスキーコイル70を常に所定の形状をなす状態に保持することができるので、ロゴスキーコイル70を用いて得られる計測値の変動を小さくすることができる。
【0067】
本実施の形態においては、第一方向に沿って形成された支持面37が形成されているので、ロゴスキーコイル70に対する測定対象部材90の位置を所定の位置に位置決めし、測定対象部材90の姿勢を拘束することができる。したがって、カバー等の別の部材を用意したり取り付けたりする必要がなく、容易にかつ低コストでロゴスキーコイル70の設置を行うことができる。
【0068】
汎用製品のロゴスキーコイル70を用いることができ、かつ、容易にロゴスキーコイル70の取り付け作業を行うことができるので、ロゴスキーコイル70を設置するためのコストを大幅に低減することができる。したがって、低い部品コスト及び作業コストで、送電網の多くの地点における電流を計測できるようにすることができる。このような効果は、例えば、いわゆる再生可能エネルギーの有効利用や省エネルギー化が求められていることを背景にした、スマートグリッドの実現が強く求められている状況下において、特に顕著なものとなるといえる。
【0069】
(その他)
【0070】
本発明は、以上の実施の形態に限定されることなく、種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものである。
【0071】
例えば、センサ保持部材は、第一方向から見て2周以上ロゴスキーコイルが巻回されるように保持部が構成されているものであってもよい。周方向に数回転するような螺旋状にロゴスキーコイルを保持するように構成されている場合であっても、ロゴスキーコイルが配線されていない部位から通線部に通じるように設けられた通線部を設けることで、容易にロゴスキーコイルを測定対象部材に配置することができる。なお、このような場合に、センサ保持部材を弾性変形させながら測定対象部材を通線部に配置させることができるように構成されていてもよい。
【0072】
上述の実施の形態の構成そのものに限られず、上述の実施の形態の一部の構成要素や機能が省略されていてもよい。例えば、支持面は設けられていなくてもよい。また、入線部は、第二方向に沿うように配置された測定対象部材が嵌め込まれてから、深さ方向に測定対象部材が変位するのに伴ってセンサ保持部材が回転することにより、測定対象部材が通線部に案内されるように構成されていてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
以上のように、本発明にかかるセンサ保持部材は、ロゴスキーコイルを線状の測定対象部材に容易に設置することができるという効果を有し、センサ保持部材等として有用である。
【符号の説明】
【0074】
1 センサ保持部材、11 外周部、13 第一端部、15 第二端部、31 通線部、33 第一開口部、35 第二開口部、37 支持面、41 入線部、42 入線溝部、421 第一溝端、422 第二溝端、43 第一導入部、45 第二導入部、51 保持部、52 保持溝部、53 先端保持部、55 基端保持部、70 ロゴスキーコイル、90 測定対象部材、90b 電線、95 間接活線工具