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  • 特許-油性オフセット印刷用紙 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】油性オフセット印刷用紙
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/32 20060101AFI20241121BHJP
   C08L 25/04 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B32B27/32 E
C08L25/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021057601
(22)【出願日】2021-03-30
(65)【公開番号】P2022154526
(43)【公開日】2022-10-13
【審査請求日】2024-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】糸日谷 太
(72)【発明者】
【氏名】足利 光洋
(72)【発明者】
【氏名】廣井 洋介
【審査官】緒形 友美
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-216117(JP,A)
【文献】特開2003-138080(JP,A)
【文献】特開2003-138079(JP,A)
【文献】特開2020-001252(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0003096(US,A1)
【文献】特開2003-291521(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00- 33/00
C08L 23/00- 35/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィン系樹脂を含む基材層と、
ポリスチレン系樹脂、及びスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を含む溶剤遮断層と、
を備え、
前記ポリスチレン系樹脂のスチレンに基づく構成単位の量が70質量%以上であり、
前記共重合体のスチレンに基づく構成単位の量が20質量%以上70質量%未満であり、
前記共重合体のオレフィンに基づく構成単位の量が20質量%以上50質量%以下である、
油性オフセット印刷用紙。
【請求項2】
前記ポリスチレン系樹脂に対する前記共重合体の質量比は0.01~0.30である、請求項1に記載の油性オフセット印刷用紙。
【請求項3】
前記溶剤遮断層は、ポリオレフィン系樹脂をさらに含む、請求項1又は2に記載の油性オフセット印刷用紙。
【請求項4】
前記溶剤遮断層が少なくとも一方向に延伸されている、請求項1~3のいずれか一項に記載の油性オフセット印刷用紙。
【請求項5】
前記共重合体における前記オレフィンがエチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の線状オレフィンを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の油性オフセット印刷用紙。
【請求項6】
前記溶剤遮断層上に溶剤吸収層をさらに備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の油性オフセット印刷用紙。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は油性オフセット印刷用紙に関する。
【背景技術】
【0002】
油性オフセット印刷は多色印刷が容易にできるため、種々の印刷媒体への適用が行われている。オフセット印刷は、印刷速度の向上のため、印刷後のインキ乾燥時間の短縮化が求められている。このため、オフセット印刷には、オフセット印刷インキのビヒクルとして乾性油に樹脂と鉱油(高沸点石油系溶剤)を配合した速乾性インキが使用されている。オフセット印刷インキにおける汎用的な速乾性オフセット印刷インキ(以下、速乾性インキともいう)の組成の例を表1及び図1に示す。速乾性オフセット印刷インキを印刷すると、酸化重合性の乾性油が硬化し鉱油が揮発することによって、乾燥して印刷層となる。
【0003】
【表1】
【0004】
しかし、ポリオレフィンフィルムやポリオレフィンに無機フィラーを含有させたフィルムの延伸物よりなる合成紙に、速乾性インキとして通常のパルプ紙用の枚葉インキ(例えば、高沸点石油系溶剤を20~40質量%含むインキ)を用いたオフセット印刷を行うと、速乾性インキ中のビヒクル(特に鉱油等の高沸点石油系溶剤)によってポリオレフィン自体が膨潤されて、印刷した合成紙の表面に部分的に凹凸を生じたり、カールしたりするという問題があった。そこで、合成紙へのオフセット印刷の一部では速乾性を犠牲にして鉱油を使用しない特殊なオフセットインキ(非紙用インキ)を使用することもあった。
【0005】
一方、生産性等の観点から、合成紙にもパルプ紙と同様に枚葉インキを用いてオフセット印刷を行いたいという根強い要求もあった。このため、下地に非晶性樹脂を用いることにより、速乾性インキを使用しても凹凸又はカールを生じにくいフィルムが検討されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2002-036470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に開示されるフィルムでは、凹凸又はカールの発生の抑制に一定の効果があるものの、非晶性樹脂を他の層と積層した際、或いは、他の材料と併せて層を構成した際に、層間或いは相間での剥離が生じることがあった。
【0008】
本発明は、凹凸又はカールの発生を抑制しつつ、層間(相間)強度の低下を抑制可能な油性オフセット印刷用紙を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は鋭意検討を重ねた結果、ポリスチレン系樹脂、及びスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を含む溶剤遮断層を用い、これらの樹脂のスチレン由来の構成単位の量を特定の範囲とすることにより、凹凸又はカールの発生を抑制しつつ、層間(相間)強度の低下を抑制可能な油性オフセット印刷用紙を得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち本発明は、以下の通りのものである。
(1)ポリオレフィン系樹脂を含む基材層と、ポリスチレン系樹脂、及びスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を含む溶剤遮断層と、を備え、前記ポリスチレン系樹脂のスチレンに基づく構成単位の量が70質量%以上であり、前記共重合体のスチレンに基づく構成単位の量が20質量%以上70質量%未満であり、前記共重合体のオレフィンに基づく構成単位の量が20質量%以上50質量%以下である、油性オフセット印刷用紙。
(2)前記ポリスチレン系樹脂に対する前記共重合体の質量比は0.01~0.30である、(1)に記載の油性オフセット印刷用紙。
(3)前記溶剤遮断層は、ポリオレフィン系樹脂をさらに含む、(1)又は(2)に記載の油性オフセット印刷用紙。
(4)前記溶剤遮断層が少なくとも一方向に延伸されている、(1)~(3)のいずれかに記載の油性オフセット印刷用紙。
(5)前記共重合体における前記オレフィンがエチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の線状オレフィンを含む、(1)~(4)のいずれかに記載の油性オフセット印刷用紙。
(6)前記溶剤遮断層上に溶剤吸収層をさらに備える、(1)~(5)のいずれかに記載の油性オフセット印刷用紙。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、凹凸又はカールの発生を抑制しつつ、層間(相間)強度の低下を抑制可能な油性オフセット印刷用紙を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】オフセット印刷インキの基本組成を示す系統樹である。
図2】油性オフセット印刷用紙の層構成の一例を模式的に示す断面図である。
図3】油性オフセット印刷用紙の層構成の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の油性オフセット印刷用紙について詳細に説明する。以下は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
【0014】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。
【0015】
[油性オフセット印刷用紙]
図2は、本実施形態の油性オフセット印刷用紙の層構成の一例を模式的に示す断面図である。図2に示す油性オフセット印刷用紙100は、ポリオレフィン系樹脂を含む基材層20のいずれか一方の面に、ポリスチレン系樹脂、及びスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を含む溶剤遮断層10を少なくとも備える。また、図3に示すように、本実施形態の油性オフセット印刷用紙100は、溶剤遮断層10の上に、速乾性インキ中のビヒクルを吸収するための溶剤吸収層30を更に備えていてもよい。すなわち、本実施形態の油性オフセット印刷用紙100は、溶剤吸収層30と、溶剤遮断層10と、基材層20とをこの順に有していてもよい。油性オフセット印刷層は、図2の溶剤遮断層10側又は図3の溶剤吸収層30側の面上に設けられる。
【0016】
本明細書において「ポリスチレン系樹脂」とは、スチレン系単量体の単独重合体又は他の単量体成分との共重合体であって、ポリスチレン系樹脂のスチレンに基づく構成単位の量が70質量%以上である樹脂をいう。
本明細書において「スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体」とは、スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体であって、当該共重合体のスチレンに基づく構成単位の量が70質量%未満である樹脂をいう。
【0017】
(溶剤遮断層)
溶剤遮断層は、基材層上に設けられ、本実施形態の油性オフセット印刷用紙の最表面に位置され得る。溶剤遮断層は、主として、オフセット印刷時の速乾性インキ中のビヒクル(特に鉱油等の高沸点石油系溶剤)を遮断することで基材層へのビヒクルの到達を防ぎ、基材層の膨潤を抑制し、油性オフセット印刷用紙全体の凹凸又はカールの発生を抑制する。
【0018】
溶剤遮断層は、ポリスチレン系樹脂、及びスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を含み、ポリスチレン系樹脂のスチレンに基づく構成単位の量が70質量%以上であり、当該共重合体のスチレンに基づく構成単位の量が20質量%以上70質量%未満であり、当該共重合体のオレフィンに基づく構成単位の量が20質量%以上50質量%以下であることを特徴とする。
【0019】
<ポリスチレン系樹脂>
溶剤遮断層は、ポリスチレン系樹脂を含有する。溶剤遮断層がポリスチレン系樹脂を含有することにより、油性オフセット印刷用紙の凹凸又はカールの発生を抑制することができる。
【0020】
ポリスチレン系樹脂は、スチレン由来の構成単位を主に有する重合体であり、スチレン系単量体の単独重合体又は他の単量体成分との共重合体である。スチレン系単量体としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、p-エチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、ビニルナフタレン等が挙げられる。
【0021】
共重合体における他の単量体成分としては、例えば、オレフィンが好適に用いられる。オレフィンとしては、αオレフィン;ジエン系単量体;並びに、エチレン、プロピレン及びシクロヘキセン等のその他の単量体等が挙げられる。α-オレフィンの具体的な例としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセン等が挙げられる。ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレン等が挙げられる。共重合体は、単量体成分が2元系でも3元系以上の多元系でもよく、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
また、共重合体における他の単量体成分としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、無水マレイン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル等を用いてもよい。
【0022】
溶剤遮断層に用いられるポリスチレン系樹脂の具体的な例としては、スチレン単独重合体、スチレン・エチレン共重合体、スチレン・プロピレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・ブタジエン・ブチレン共重合体、スチレン・アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体等が挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。ポリスチレン系樹脂は水素添加物であってもよい。
【0023】
溶剤遮断層に用いられるポリスチレン系樹脂において、ポリスチレン系樹脂のスチレンに基づく構成単位の量が70質量%以上であり、80質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。ポリスチレン系樹脂のスチレンに基づく構成単位の量が上記下限値以上であれば、凹凸又はカールの発生を抑制することができる傾向がある。
【0024】
溶剤遮断層に用いられるポリスチレン系樹脂としてスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を用いた場合は、ポリスチレン系樹脂のオレフィンに基づく構成単位の量が30質量%未満であることが好ましく、20質量%未満であることがより好ましく、10質量%未満であることがさらに好ましい。
【0025】
溶剤遮断層におけるポリスチレン系樹脂の含有量は、凹凸又はカールの発生を抑制する観点から、20質量%以上が好ましく、25質量%以上がより好ましく、30質量%以上がさらに好ましい。一方、ポリスチレン系樹脂の含有量は、層間(相間)強度低下抑制の観点から、80質量%以下が好ましく、60質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0026】
<スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体>
溶剤遮断層は、スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を含有する。溶剤遮断層がスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を含有することで、ポリスチレン系樹脂と後述するポリオレフィン系樹脂との相溶性が向上し、油性オフセット印刷用紙の層間或いは相間剥離を効率的に抑制することができる。なお、本発明の効果を阻害しないのであれば、スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体は、スチレン及びオレフィン以外の他の構成単位を1種以上含むことができる。
【0027】
スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体は、スチレン由来の構成単位とオレフィン由来の構成単位を主に有する重合体である。オレフィンとしては、α-オレフィン;ジエン系単量体;並びに、エチレン、プロピレン及びシクロヘキセン等のその他の単量体等が挙げられる。α-オレフィンの具体的な例としては、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、及び1-デセン等が挙げられる。ジエン系単量体としては、ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレン等が挙げられる。
【0028】
なかでも、当該共重合体の構成単位に用いられるオレフィンは、エチレン、プロピレン、ブチレン、ブタジエン及びイソプレンからなる群より選択される少なくとも1種の線状オレフィンを含むことが好ましく、ブタジエンを含むことがより好ましい。
【0029】
溶剤遮断層に用いられるスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体の具体的な例としては、スチレン・エチレン共重合体、スチレン・プロピレン共重合体、スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、スチレン・エチレン・ブチレン共重合体、スチレン・エチレン・プロピレン共重合体、スチレン・ブタジエン・ブチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、メタクリル酸エステル・ブタジエン・スチレン共重合体、及びスチレン・エチレン・ブタジエン・スチレン共重合体等が挙げられる。共重合体は、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよいが、ブロック共重合体であることが好ましい。また、共重合体は水素添加物でもよい。
【0030】
スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体において、層間(相間)強度低下抑制の観点から、当該共重合体のスチレンに基づく構成単位の量が20質量%以上であり、30質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましい。一方、スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体において、層間(相間)強度低下抑制の観点から、当該共重合体のスチレンに基づく構成単位の量が70質量%未満である。
【0031】
また、スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体において、層間(相間)強度低下抑制の観点から、当該共重合体のオレフィンに基づく構成単位の量が20質量%以上であり、30質量%以上が好ましい。一方、スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体において、凹凸又はカールの発生及び層間(相間)強度低下抑制の観点から、当該共重合体のオレフィンに基づく構成単位の量が50質量%以下であり、40質量%以下が好ましい。
【0032】
溶剤遮断層におけるスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体の含有量は、層間(相間)強度低下抑制の観点から、0.1質量%以上が好ましく、1.0質量%以上がより好ましく、5.0質量%以上がさらに好ましい。一方、スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体の含有量は、凹凸又はカールの発生を抑制する観点から、15質量%以下が好ましく、10質量%以下がより好ましく、5.0質量%以下がさらに好ましい。
【0033】
ポリスチレン系樹脂に対するスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体の質量比(スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体/ポリスチレン系樹脂)は、層間(相間)強度低下抑制の観点から、0.01以上が好ましく、0.02以上がより好ましい。一方、同質量比は、凹凸又はカールの発生を抑制する観点から、0.3以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.1以下がさらに好ましい。
【0034】
<ポリオレフィン系樹脂>
溶剤遮断層は、ポリスチレン系樹脂、及びスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体のみを用いた樹脂フィルムであってもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲でポリスチレン系樹脂、及びスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体以外のポリオレフィン系樹脂が配合された樹脂フィルムであってもよい。
【0035】
溶剤遮断層がポリスチレン系樹脂に加えて更にポリオレフィン系樹脂を含有すると、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂との間で海島構造が形成される。さらに、溶剤遮断層が延伸フィルムである場合、海島構造を構成する各相が延伸により引き伸ばされて層状構造を有し易くなり、速乾性インキ中のビヒクル(特に鉱油等の高沸点石油系溶剤)が基材層内部へ侵入するのをより効率的に遮断することができ、印刷保管後の紙面の凹凸又はカールの発生を抑制することができる。
【0036】
ポリオレフィン系樹脂の具体的な例としては、ポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、又はポリメチル-1-ペンテン等が挙げられる。
【0037】
ポリプロピレン系樹脂としては、主な単量体成分にプロピレンが用いられるのであれば特に限定されない。例えば、プロピレンを単独重合させたアイソタクティック重合体又はシンジオタクティック重合体等が挙げられる。また、主成分となるプロピレンと、エチレン、1-ブテン、1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、又は1-オクテン等のα-オレフィンとの共重合体である、プロピレン-α-オレフィン共重合体等を使用することもできる。共重合体は、単量体成分が2元系でも3元系以上の多元系でもよく、ランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。また、プロピレン単独重合体とプロピレン共重合体とを併用してもよい。
【0038】
ポリエチレン系樹脂としては、例えば密度が0.940~0.965g/cmの高密度ポリエチレン、密度が0.920~0.935g/cmの中密度ポリエチレン、密度が0.900g/cm以上0.920g/cm未満の直鎖線状低密度ポリエチレン、エチレン等を主体とし、プロピレン、ブテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、4-メチルペンテン-1等のα-オレフィンを共重合させた共重合体、マレイン酸変性エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、エチレン・アクリル酸共重合体、エチレン・アクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸アルキルエステル共重合体、エチレン・メタクリル酸共重合体の金属塩(金属は亜鉛、アルミニウム、リチウム、ナトリウム、カリウム等)、エチレン・環状オレフィン共重合体、又はマレイン酸変性ポリエチレン等が挙げられる。
【0039】
溶剤遮断層に用いられるポリオレフィン系樹脂としては、メルトフローレート(190℃、2.16kg荷重)が1~10g/10分の分枝ポリエチレン、直鎖状ポリエチレン;メルトフローレート(230℃,2.16kg荷重)が0.2~10g/10分のプロピレン単独重合体、(4-メチル-1-ペンテン)単独重合体、プロピレン・エチレン共重合体、プロピレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・エチレン・1-ブテン共重合体、プロピレン・4-メチル-1-ペンテン共重合体、プロピレン・3-メチル-1-ペンテン共重合体、ポリ(1-ブテン)、ポリ(4-メチル-1-ペンテン)、プロピレン・エチレン・3-メチル-1-ペンテン共重合体等が挙げられる。これらの中でも、エチレンを原料モノマーとして含むポリエチレン系樹脂及びプロピレンを原料モノマーとして含むポリプロピレン系樹脂の少なくともいずれか一方を含むことがより好ましく、プロピレン単独重合体、プロピレン・エチレンランダム共重合体、高密度ポリエチレンが、安価で成形加工性が良好であるためさらに好ましい。
【0040】
また、溶剤遮断層に用いられるポリオレフィン系樹脂は、融点(DSC曲線のピーク温度)が130~210℃であるものがより好ましい。なかでも、融点(DSC曲線のピーク温度)が155~174℃であり、メルトフローレート(JIS K7210:2014年)が0.5~10g/10分であるプロピレン単独重合体を好ましく使用することができる。ポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
溶剤遮断層がポリオレフィン系樹脂を含む場合におけるポリオレフィン系樹脂の含有量は、層間(相間)強度低下抑制の観点から、5質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、40質量%以上がさらに好ましい。一方、ポリオレフィン系樹脂の含有量は、凹凸又はカールの発生を抑制する観点から、75質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましく、60質量%以下がさらに好ましい。
【0042】
<フィラー>
溶剤遮断層は、フィラーを含有してもよい。使用できるフィラーとしては、例えば無機フィラー又は有機フィラー等が挙げられる。無機フィラー又は有機フィラーは、平均粒径が0.01~10μmであるものが好ましく、中でも0.05~8μmであるものがより好ましい。
【0043】
<<無機フィラー>>
無機フィラーとしては、例えば、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、焼成クレー、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、硫酸アルミニウム、シリカ、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、珪藻土等が挙げられる。
【0044】
<<有機フィラー>>
有機フィラーとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリエチレンナフタレート、ポリスチレン、メラミン樹脂、ポリエチレンサルファイト、ポリイミド、ポリエチルエーテルケトン、ポリフェニレンサルファイト等が挙げられる。
【0045】
フィラーとしては、上記無機フィラー及び有機フィラーをそれぞれ単独で用いることもできるし、併用することもできる。
溶剤遮断層におけるフィラーの含有量(無機フィラーと有機フィラーを併用する場合は、その合計量)は、溶剤遮断層の空孔率を低減する観点から、5質量%以下が好ましく、3質量%以下がより好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。
【0046】
<その他の成分>
溶剤遮断層は、必要に応じて、紫外性吸収剤や、分散剤、架橋剤、帯電防止剤、又は蛍光増白剤等を含んでいてもよい。これらは本発明の効果を妨げない範囲で含有させることができる。
【0047】
溶剤遮断層は、無延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよいが、ポリスチレン系樹脂とポリオレフィン系樹脂を併用した際のより高い溶剤遮断効果を得る観点から、少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。
【0048】
<空孔率>
溶剤遮断層の空孔率は5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましい。溶剤遮断層の空孔率は、印刷用紙の任意の断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより求めた、溶剤遮断層中の空孔の面積割合をいう。空孔率を5%以下とすることにより、速乾性インキ中のビヒクルが空孔を通過して基材層に到達することを防止することができ、基材層の膨潤を抑制できるとともに、印刷用紙全体の凹凸又はカールの発生を抑制しやすくなる傾向がある。
【0049】
<厚み>
溶剤遮断層の厚みは、速乾性インキ中のビヒクルを十分に遮断する観点から、0.5μm以上が好ましく、1μm以上がより好ましい。一方、溶剤遮断層の厚みは、コスト低減等の観点から、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0050】
(基材層)
基材層は、ポリオレフィン系樹脂を含有する樹脂フィルムであり、油性オフセット印刷用紙の支持体として設けられる。したがって、油性オフセット印刷用紙全体の凹凸又はカールの発生の要因は基材層における膨潤の有無が支配的である。基材層は、単層構造であってもよく、2層又は3層以上の多層構造のものであってもよい。
【0051】
基材層に用いられるポリオレフィン系樹脂は、溶剤遮断層で挙げたポリオレフィン系樹脂を用いることができる。基材層は、ポリオレフィン系樹脂のみを用いた樹脂フィルムであってもよいし、本発明の効果を阻害しない範囲でポリオレフィン系樹脂以外の熱可塑性樹脂が配合されていてもよい。
【0052】
ポリオレフィン系樹脂以外の併用できる熱可塑性樹脂としては、例えば、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、ナイロン-6,12等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレートやその共重合体、ポリエチレンナフタレート、脂肪族ポリエステル等の熱可塑性ポリエステル系樹脂;芳香族ポリカーボネート、脂肪族ポリカーボネート等のポリカーボネート樹脂等が挙げられる。
【0053】
基材層は、フィラーを含有してもよい。基材層がフィラーを含有することにより、基材層が延伸フィルムである場合に、延伸によりフィラーを起点とした空孔が形成され多孔質層となる。基材層が多孔質層である場合、基材層、ひいては油性オフセット印刷用紙の軽量化が可能となる。さらには、基材層が多孔質層であることにより紙の風合いを有する白色フィルムが得られやすくなる。したがって、基材層中のフィラー含有の有無により、フィルムの白色度又は不透明度の調整が容易となる。また、基材層が空孔を有する場合、インキ中のビヒクルが一度基材層に到達すれば空孔間を通じて基材層深くに浸透しやすくなり、凹凸又はカールが発生しやすくなる。しかしながら、本実施形態に係る油性オフセット印刷用紙は上述の溶剤遮断層を備えるため、基材層が空孔を有する場合にも、凹凸又はカールの発生を抑制することができる。
【0054】
基材層に用いることができるフィラーは、溶剤遮断層で挙げたフィラーを用いることができる。フィラーとしては、無機フィラー及び有機フィラーをそれぞれ単独で用いることもできるし、併用することもできる。
【0055】
基材層におけるポリオレフィン系樹脂の含有量は20~90質量%であることが好ましく、無機フィラー及び/又は有機フィラーの含有量は合計で10~80質量%であることが好ましい。
【0056】
基材層は、無延伸フィルムであってもよく、延伸フィルムであってもよいが、印刷用紙の強度を高める観点から、少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムであることが好ましい。基材層が多層構造である場合、少なくとも一方向に延伸された延伸フィルムを含むことが好ましい。
【0057】
基材層を一軸延伸させたフィルムとする場合には、ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の少なくともいずれか一方であることが好ましく、ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂の合計の含有量が20質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましく、30質量%以上がよりさらに好ましい。一方、同含有量は50質量%以下がより好ましい。この時、無機フィラー及び/又は有機フィラーは合計で50質量%以上が好ましく、また、80質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、70質量%以下がさらに好ましい。
【0058】
基材層を二軸延伸させたフィルムとする場合には、ポリオレフィン系樹脂がポリエチレン系樹脂及びポリプロピレン系樹脂の少なくともいずれか一方であることが好ましい。ポリエチレン系樹脂及び/又はポリプロピレン系樹脂の合計の含有量が55質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。一方、同含有量は90質量%以下が好ましい。このとき、無機フィラー及び/又は有機フィラーは合計で10質量%以上が好ましく、また、45質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、35質量%以下がさらに好ましい。
【0059】
<空孔率>
基材層はボイド(孔)を多数含有しているものが好ましい。空孔率は不透明化や軽量化の観点から1%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上がさらに好ましい。一方、延伸成形時の安定性の観点から、空孔率は60%以下が好ましく、55%以下がより好ましく、50%以下がさらに好ましく、40%以下が特に好ましい。
【0060】
<厚み>
基材層の厚みは、印刷用紙の強度を高める観点から、30μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。一方、基材層の厚みは、150μm以下が好ましく、130μm以下がより好ましい。
【0061】
(溶剤吸収層)
本実施形態の油性オフセット印刷用紙は、溶剤遮断層の上に、速乾性インキ中のビヒクル(特に鉱油等の高沸点石油系溶剤)を吸収するための溶剤吸収層をさらに備えることが好ましい。溶剤吸収層を設けることにより、インキの乾燥性及び密着性を高めることができる。また、油性オフセット印刷用紙が溶剤遮断層上にさらに溶剤吸収層を備えることにより、印刷インキ中のビヒクルを溶剤吸収層中に保持して溶剤遮断層に到達するビヒクルを低減することができる。その結果、凹凸又はカールの発生の抑制をより高い水準で実現しやすくなる。
【0062】
溶剤吸収層は多数の空孔を有する多孔質層であり、当該空孔内にインキ中のビヒクルを吸収してインキの乾燥性を高めることができる。多孔質層の空孔が互いに連通する割合が多いほど、インキの乾燥性が向上する。一方、多孔質層において独立した空孔の割合が多いとビヒクルの吸収量は小さくなり、インキの乾燥性が低下する。
【0063】
溶剤吸収層は、連通する空孔の形成性の観点から、熱可塑性樹脂及びフィラーを含有することが好ましい。溶剤吸収層に用いられる熱可塑性系樹脂及びフィラーには、基材層で挙げた熱可塑性樹脂及びフィラーを用いることができる。無機フィラー又は有機フィラーは、粒子径の比較的小さいフィラーを樹脂中に分散させる観点から、脂肪酸等により表面処理されていてもよい。フィラーを含む熱可塑性樹脂を延伸した場合、フィラーを核とした微細な空孔を多数形成することが容易となる。
【0064】
フィラーの平均粒子径は、多孔質層内に均一に分散させる観点から、好ましくは0.01μm以上であり、より好ましくは0.1μm以上である。また、フィラーの平均粒子径は、インキ中の顔料及びバインダー等の成分と溶剤成分との分離を容易にし、インキの色沈み又は乾燥不良を防ぐ観点から、好ましくは10μm以下であり、より好ましくは3μm以下であり、さらに好ましくは1.5μm以下であり、特に好ましくは1.3μm以下である。
なお、フィラーの粒子径は、例えば、フィルムの切断面を電子顕微鏡で観察し、フィラーの粒子の少なくとも10個の最大径を測定し、その平均値として求めることができる。
【0065】
溶剤吸収層中のフィラーの含有量は、空孔の形成性の観点から、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは45質量部以上であり、より好ましくは60質量部以上であり、さらに好ましくは75質量部以上であり、特に好ましくは100質量部以上である。一方、溶剤吸収層中のフィラーの含有量は、溶剤吸収層の強度を適度に維持する観点から、熱可塑性樹脂100質量部に対して、好ましくは250質量部以下であり、より好ましくは200質量部以下であり、さらに好ましくは150質量部以下であり、特に好ましくは125質量部以下である。
【0066】
<空孔率>
多孔質層中の空孔の割合を表す空孔率は、連通孔を増やす観点から、10%以上であることが好ましく、15%以上であることがより好ましく、20%以上であることがさらに好ましく、25%以上であることが特に好ましい。表面強度を高めてピッキング等の印刷不良を減らす観点から、空孔率は、50%以下であることが好ましく、45%以下であることがより好ましく、40%以下であることがさらに好ましい。
【0067】
<厚み>
溶剤吸収層の厚みは、好ましくは3μm以上、より好ましくは5μm以上、さらに好ましくは7μm以上である。溶剤吸収層の厚みは、好ましくは20μm以下、より好ましくは15μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。溶剤吸収層の厚みが上記範囲にあれば、ピッキングが生じにくく、高い乾燥性及びより高い凹凸又はカールの発生の抑制効果を得やすくなる。
【0068】
[油性オフセット印刷用紙の物性]
(表面強度)
油性オフセット印刷用紙における表面強度は、1.0kg/cm以上が好ましく、1.5kg/cm以上がより好ましく、2.0kg/cm以上がさらに好ましい。油性オフセット印刷用紙における表面強度が上記下限値以上であれば、油性オフセット印刷用紙の層間剥離又は層内凝集破壊が生じにくい。
なお、油性オフセット印刷用紙における表面強度は、後述する実施例に示すとおり、基材層側の表面に粘着テープを貼り、TAPPI-UM403に従ってインターナルボンドテスターで測定することにより求めることができる。
【0069】
(厚み)
油性オフセット印刷用紙の厚みは、35~300μmが一般的である。本実施形態では、紙的な風合をさらに付加させるために溶剤遮断層と基材層との間に、例えば無機フィラーを8~55質量%含有するプロピレン系樹脂の層等のその他の層をさらに形成してもよい。さらに、このその他の層には、延伸性を良好とするために少量のプロピレン系共重合体、高密度ポリエチレン、ポリスチレン、エチレン・酢酸ビニル共重合体の低融点樹脂等を含有させることもできる。
【0070】
[油性オフセット印刷用紙の製造方法]
油性オフセット印刷用紙の製造方法は特に制限されず、いかなる方法により製造されたものであっても、本発明の要件を満たすものである限り本発明の範囲に包含される。
以下に、油性オフセット印刷用紙の好ましい製造方法について説明する。
【0071】
本実施形態の油性オフセット印刷用紙は、予め基材層の樹脂組成物を溶融混練し、これをシート状に押し出し、ロール群の周速差を利用して縦方向に4~7倍延伸する。次いで、この縦延伸フィルムの少なくとも片面に、溶剤遮断層となる樹脂組成物を溶融混練し、これをシート状にラミネートし、横方向にテンターを用い、基材層のポリオレフィン系樹脂の融点より5~35℃低い温度で4~12倍延伸する。次いで熱処理し、冷却することにより、油性オフセット印刷用紙を製造することができる。
【0072】
別の態様として、基材層用の樹脂組成物と溶剤遮断層となる樹脂組成物を別々に溶融混練し、溶剤遮断層が外側になるようにシート状に共押し出し、ロール群の周速差を利用して非晶性樹脂のガラス転移温度より10℃以上高い温度で縦方向に4~7倍延伸する。次いで、これを横方向にテンターを用い、基材層のポリオレフィン系樹脂の融点より5~35℃低く、非晶性樹脂のガラス転移温度より10℃以上高い温度で4~12倍延伸し、ついで熱処理し、冷却することにより、油性オフセット印刷用紙を製造することもできる。
【0073】
さらに別の態様として、基材層用の樹脂組成物と溶剤遮断層となる樹脂組成物を別々に溶融混練し、溶剤遮断層が外側になるようにシート状に共押し出し、ロール群の周速差を利用して非晶性樹脂のガラス転移温度より10℃以上高い温度で縦方向に4~7倍延伸する。次いで熱処理し、冷却することにより、油性オフセット印刷用紙を製造することもできる。
【0074】
また、溶剤吸収層を設ける場合には、例えば以下の方法により、基材層、溶剤遮断層及び溶剤吸収層からなる油性オフセット印刷用紙を製造することができる。
予め基材層用の樹脂組成物を溶融混練し、これをシート状に押し出し、ロール群の周速差を利用して縦方向に4~7倍延伸する。次いで、この縦延伸フィルム上に、予め溶剤遮断層用の樹脂組成物及び溶剤吸収層用の樹脂組成物を別々に溶融混練し、所望の層構成になるように、シート状にラミネートし、これを横方向にテンターを用い、特定の温度で4~12倍延伸する。そして熱処理、冷却により油性オフセット印刷用紙を得ることができる。
【0075】
上記の他に、基材層用の樹脂組成物、溶剤遮断層用の樹脂組成物、及び溶剤吸収層用の樹脂組成物を別々に溶融混練し、所望の層構成になるようにシート状に共押し出し、ロール群の周速差を利用して特定の温度で縦方向に4~7倍延伸する。次いで、これを横方向にテンターを用いて特定の温度で4~12倍延伸し、ついで熱処理し、冷却することにより製造することもできる。
または、基材層用の樹脂組成物、溶剤遮断層用の樹脂組成物、及び溶剤吸収層用の樹脂組成物を別々に溶融混練し、所望の層構成になるようにシート状に共押し出し、ロール群の周速差を利用して特定の温度で縦方向に2~7倍延伸し、ついで熱処理し、冷却することにより製造することもできる。
【0076】
油性オフセット印刷用紙の表面は、酸化処理が施されていてもよい。酸化処理により、フィルム表面の極性基の存在割合を調整でき、酸素原子の原子濃度を調整できる。その結果、インクとの化学的な結合力が得られやすく、印刷用紙とインクとの密着性を向上させやすい。
酸化処理としては、コロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、オゾン処理等が挙げられ、これら処理は組み合わせることができる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ放電処理がより好ましい。
【0077】
油性オフセット印刷用紙は、上述したように、基材層のいずれか一方の表面に、溶剤遮断層を備えていればよく、例えば基材層の両側の表面に溶剤遮断層を有していてもよい。また、油性オフセット印刷用紙として、溶剤吸収層を設ける場合においても、基材層のいずれか一方の表面に、溶剤遮断層及び溶剤吸収層をこの順に有していればよく、例えば基材層の両側の表面に溶剤遮断層及び溶剤吸収層をこの順に有していてもよい。
【0078】
(油性オフセット印刷物)
本発明の油性オフセット印刷用紙の溶剤遮断層又は溶剤吸収層側の面上に、油性オフセット印刷をすることにより、油性オフセット印刷物が得られる。すなわち、油性オフセット印刷物は、上述の基材層と、上述の溶剤遮断層と、油性オフセット印刷層とをこの順で備える。また、別の態様においては、油性オフセット印刷物は、上述の基材層と、上述の溶剤遮断層と、上述の溶剤吸収層と、油性オフセット印刷層とをこの順で備える。このようにして得られた油性オフセット印刷物は凹凸又はカールの発生を抑制しつつ、層間(相間)強度の低下が抑制されたものとなる。
実施例
【0079】
以下に実施例、比較例及び試験例を記載して本発明をさらに具体的に説明する。以下の例に示す材料、試薬、割合、操作等は、本発明の精神から逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例に制限されるものではない。
また、表2中「-」とは、その原料を含有しないことを意味する。
【0080】
(ポリスチレン系樹脂の製造例)
<製造例1>
窒素置換した撹拌機、オートクレーブに、シクロヘキサン及びスチレンを加え、撹拌しながら70℃に昇温した。これにテトラメチレンジアミン及びsec-ブチルリチウムを添加して重合し、製造例1のポリスチレン樹脂を得た。製造例1で得られたポリスチレン樹脂のスチレンに基づく構成単位の量は100質量%であった。
【0081】
<製造例2>
窒素置換した撹拌機、オートクレーブに、シクロヘキサン及びスチレンを加え、撹拌しながら70℃に昇温した。これにテトラメチレンジアミン及びsec-ブチルリチウムを添加して重合した。さらにブタジエンをオートクレーブに添加し、重合した。その後、さらにスチレンを添加して重合し、製造例2のポリスチレン系樹脂を得た。製造例2で得られたポリスチレン系樹脂のスチレンに基づく構成単位の量は80質量%であった。
【0082】
(スチレン系単量体とオレフィンとの共重合体の製造例)
<製造例3>
窒素置換した撹拌機、オートクレーブに、シクロヘキサン及びスチレンを加え、撹拌しながら70℃に昇温した。これにテトラメチレンジアミン及びsec-ブチルリチウムを添加して重合した。さらにエチレン及びブタジエンをオートクレーブに添加し、重合した。その後、さらにスチレンを添加して重合し、共重合体を得た。共重合体をシクロヘキサンに溶解し、この溶液をオートクレーブに仕込み、続いてメチルt-ブチルエーテル、ニッケル/シリカ・アルミナ触媒を加え、水素加圧下、温度180℃で3時間水添反応を行い、製造例3のスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を得た。製造例3で得られた共重合体のスチレンに基づく構成単位の量は67質量%であった。
【0083】
(実施例1)
工程(I)
ポリプロピレン樹脂(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)80.0質量部、重質炭酸カルシウム粒子(商品名:ソフトン1800、備北粉化工業社製)19.5質量部、及び二酸化チタン粒子(商品名:タイペークCR-60、石原産業社製)0.5質量部を混合した基材層用の樹脂組成物(1)を、270℃に設定した押出機で溶融混錬した。これをシート状に押し出して冷却ロールにより冷却し、無延伸シートを得た。次いで、この無延伸シートを150℃にまで再度加熱させた後、ロール間の速度差を利用してシート流れ方向に4.8倍の延伸を行って、縦延伸樹脂フィルムを得た。
【0084】
工程(II)
製造例1のポリスチレン系樹脂49.5質量部、製造例3のスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体1.0質量部、ポリプロピレン樹脂(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)49.5質量部を混合した溶剤遮断層用の樹脂組成物(2)を、270℃に設定した押出機で溶融混練した。
一方、ポリプロピレン樹脂(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)46質量部、無水マレイン酸変性ポリプロピレン樹脂(商品名:モディックP928、三菱ケミカル社製)1質量部、脂肪酸により表面処理された軽質炭酸カルシウム粒子(粒度分布D10-D90:0.6μm、D50:0.5μm)52.5質量部、及び二酸化チタン粒子(商品名:タイペークCR-60、石原産業社製)0.5質量部を混合した溶剤吸収層用の樹脂組成物(3)を、高速ミキサーで混合した。その後、シリンダー温度を210℃に設定した2軸混練押出機を用いて、ベント孔で脱気しながら回転数600rpmで溶融混練した。
次いで、これらの樹脂組成物を1台の多層ダイに供給してダイ内部で積層した。この積層体をダイからシート状に共押出し、上記(I)の工程で得られた縦延伸樹脂フィルムの一方の面上に、樹脂組成物(3)の層が外側となるように積層し、3層構造の積層シートを得た。
【0085】
工程(III)
得られた3層構造の積層シートを60℃にまで冷却した後、再び150℃にまで再加熱して、テンターを用いてシート幅方向に9倍延伸し、次いで165℃でアニーリング処理した。その後、再び60℃にまで冷却した後、耳部をスリットして、3層構造の積層体(各層の延伸軸数:2軸延伸/1軸延伸/1軸延伸、総厚み:110μm、各層の厚み:(1)/(2)/(3)=99μm/3μm/8μm)を得た。
【0086】
工程(IV)
高周波電源(機器名:AGF-B10、春日電気社製)、長さ0.8mのアルミニウム製電極、及びトリーターロールとしてシリコーン被膜ロールを用い、電極とロールとのギャップを5mmとして、上記(IV)で得られた熱可塑性樹脂フィルムをライン処理速度25m/分で通過させながら、印加エネルギー密度1800J/m(30W・分/m)の条件で、同フィルムの両表面にコロナ放電処理を行い、実施例1の油性オフセット印刷用紙を得た。
なお、実施例1の油性オフセット印刷用紙において、溶剤遮断層における、ポリスチレン系樹脂に対するスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体の質量比は0.02である。
【0087】
工程(V)
得られた油性オフセット印刷用紙は、多数の微細な空孔を内部に有する白色不透明な合成紙であり、後述する印刷条件にて油性オフセット印刷を行った際には、印刷後のフィルムに凹凸は確認されず、インキ乾燥性も良好であった。
【0088】
(実施例2~5)
実施例1において、工程(II)の3層構造の積層シートを成形する際に、溶剤遮断層用の樹脂組成物(2)を、表2に記載の配合量に変更した以外は、実施例1と同様の手順を行って、実施例2~5の油性オフセット印刷用紙を得た。
なお、実施例2~5の油性オフセット印刷用紙において、溶剤遮断層における、ポリスチレン系樹脂に対するスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体の質量比は、それぞれ0.02、0.06、0.11、0.22及び0.03である。
得られた実施例2~5の油性オフセット印刷用紙は、多数の微細な空孔を内部に有する白色不透明な合成紙であり、後述する印刷条件にて油性オフセット印刷を行った際には、印刷後のフィルムに凹凸は確認されず、インキ乾燥性も良好であった。
【0089】
(実施例6)
実施例1において、工程(II)の3層構造の積層シートを成形する際に、溶剤遮断層用の樹脂組成物(2)において、製造例1のポリスチレン系樹脂の代わりに製造例2のポリスチレン系樹脂を用いた以外は、実施例1と同様の手順を行って、実施例6の油性オフセット印刷用紙を得た。
なお、実施例6の油性オフセット印刷用紙において、溶剤遮断層における、ポリスチレン系樹脂に対するスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体の質量比は、0.02である。
得られた実施例6の油性オフセット印刷用紙は、多数の微細な空孔を内部に有する白色不透明な合成紙であり、後述する印刷条件にて油性オフセット印刷を行った際には、印刷後のフィルムに凹凸は確認されず、インキ乾燥性も良好であった。
【0090】
(実施例7)
実施例1の工程(II)において、樹脂組成物(3)を使用せず、樹脂組成物(2)のみをダイからシート状に押出し、(I)の工程で得られた縦延伸樹脂フィルムの一方の面上に積層し、3層構造の積層体に代えて2層構造の積層シートを得たこと以外は、実施例1と同様の手順を行って、実施例7の油性オフセット印刷用紙を得た。すなわち、実施例7の油性オフセット印刷用紙は、2層構造の積層体(各層の延伸軸数:2軸延伸/1軸延伸、総厚み:102μm、各層の厚み:(1)/(2)=99μm/3μm)である。
なお、実施例7の油性オフセット印刷用紙において、溶剤遮断層における、ポリスチレン系樹脂に対するスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体の質量比は、0.02である。
得られた実施例7の油性オフセット印刷用紙は、多数の微細な空孔を内部に有する白色不透明な合成紙であり、後述する印刷条件にて油性オフセット印刷を行った際には、印刷後のフィルムに凹凸は確認されず、インキ乾燥性も良好であった。
【0091】
(実施例8)
実施例7において、工程(III)の延伸を実施せず、同様の厚さの2層構造の積層体が得られるように変更した以外は、実施例7と同様の手順を行って、実施例8の油性オフセット印刷用紙を得た。
すなわち、実施例8の油性オフセット印刷用紙は、2層構造の積層体(各層の延伸軸数:1軸延伸/無延伸、総厚み:102μm、各層の厚み:(1)/(2)=99μm/3μm)である。
なお、実施例8の油性オフセット印刷用紙において、溶剤遮断層における、ポリスチレン系樹脂に対するスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体の質量比は、0.02である。
得られた実施例8の油性オフセット印刷用紙は、多数の微細な空孔を内部に有する白色不透明な合成紙であり、後述する印刷条件にて油性オフセット印刷を行った際には、印刷後のフィルムに凹凸は確認されず、インキ乾燥性も良好であった。
【0092】
(実施例9)
実施例1において、工程(II)の3層構造の積層シートを成形する際に、溶剤遮断層用の樹脂組成物(2)において、ポリプロピレン樹脂(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)を配合せず、製造例1のポリスチレン系樹脂及び製造例3のスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を表2に記載の配合量に変更した以外は、実施例1と同様の手順を行って、実施例9の油性オフセット印刷用紙を得た。
なお、実施例9の油性オフセット印刷用紙において、溶剤遮断層における、ポリスチレン系樹脂に対するスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体の質量比は、0.25である。
得られた実施例9の油性オフセット印刷用紙は、多数の微細な空孔を内部に有する白色不透明な合成紙であり、後述する印刷条件にて油性オフセット印刷を行った際には、印刷後のフィルムに凹凸は確認されず、インキ乾燥性も良好であった。
【0093】
(比較例1)
実施例1において、工程(II)の3層構造の積層シートを成形する際に、溶剤遮断層用の樹脂組成物(2)において、製造例3のスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を配合せず、製造例1のポリスチレン系樹脂及びポリプロピレン樹脂(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)を表2に記載の配合量に変更した以外は、実施例1と同様の手順を行って、比較例1の油性オフセット印刷用紙を得た。
得られた油性オフセット印刷用紙に対し、後述する印刷条件で油性オフセット印刷を行った際、フィルムには大きな凹凸が生じた。
【0094】
(比較例2)
実施例1において、工程(II)の3層構造の積層シートを成形する際に、溶剤遮断層用の樹脂組成物(2)において、製造例1のポリスチレン系樹脂を配合せず、製造例3のスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体及びポリプロピレン樹脂(商品名:ノバテックPP MA3、日本ポリプロ社製)を表2に記載の配合量に変更した以外は、実施例1と同様の手順を行って、比較例1の油性オフセット印刷用紙を得た。
得られた油性オフセット印刷用紙に対し、後述する印刷条件で油性オフセット印刷を行った際、フィルムには大きな凹凸が生じた。
【0095】
(測定条件及び評価方法)
<厚み>
油性オフセット印刷用紙全体の厚み(μm)は、JIS K7130:1999年「プラスチック-フィルム及びシート-厚さ測定方法」に基づき、定圧厚さ測定器(機器名:PG-01J、テクロック社製)を用いて測定した。
また、油性オフセット印刷用紙における溶剤吸収層の厚み(μm)、溶剤遮断層の厚み(μm)、及び基材層の厚み(μm)は、油性オフセット印刷用紙を液体窒素にて-60℃以下の温度に冷却し、ガラス板上に置いた試料に対してカミソリ刃(商品名:プロラインブレード、シック・ジャパン社製)を直角に当てて切断して断面測定用の試料を作製し、得られた試料の断面を走査型電子顕微鏡(機器名:JSM-6490、日本電子社製)を用いて観察し、組成外観から各層の境界線を判別して、全体の厚みと観察される層厚み比率を乗算して求めた。
【0096】
<空孔率>
溶剤遮断層及び溶剤吸収層の空孔率は、電子顕微鏡で観察した油性オフセット印刷用紙の任意の断面中の溶剤遮断層又は溶剤吸収層の一定領域において、空孔が占める面積の比率より求めた。
具体的には、測定対象の油性オフセット印刷用紙の任意の一部を切り取り、エポキシ樹脂で包埋して固化させた後、ミクロトームを用いて測定対象の油性オフセット印刷用紙の面方向に垂直に切断し、その切断面が観察面となるように観察試料台に貼り付けた。観察面に金又は金-パラジウム等を蒸着し、走査型電子顕微鏡にて観察しやすい任意の倍率(例えば、500倍~3000倍の拡大倍率)において油性オフセット印刷用紙の切断面を観察し、観察した領域を画像データとして取り込んだ。得られた画像データは画像解析装置にて画像処理を行い、溶剤遮断層又は溶剤吸収層の一定領域における空孔部分の面積率(%)を求めて、空孔率(%)とした。このように、任意の10箇所以上の観察における測定値を平均して、溶剤遮断層及び溶剤吸収層の空孔率とした。
【0097】
<凹凸又はカール>
油性オフセット印刷用紙を50mm×20mmに切り取り、波打ち測定用の試料を作製した。この試料に対して高沸点石油系溶剤(油:ソルベントAF6)を180μl滴下させた後、滴下した溶剤を試料に均一に広げ塗布した。溶剤を塗布した試料を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1週間保管した。試料の波打ちレベルを目視観察した。波打ちレベルに基づき、凹凸又はカールを下記の評価基準で判定した。結果を表2に示す。
5(最優):紙面に波打ちがない。
4(良好):紙面に極わずかに波打ちが発生
3(可):紙面に波打ちがうっすら発生しているが実用上問題ないレベル
2(不可):紙面に波打ちが発生し、改善が必要なレベル
1(不可):紙面に波打ちが発生し、重欠陥レベル
【0098】
<層間強度>
実施例及び比較例の油性オフセット印刷用紙を、温度23℃、相対湿度50%の雰囲気下で1日間保管した。その後、基材層側の表面にセロハンテープ(ニチバン(株)製、商品名:セロテープ(登録商標) CT-18)を貼り付けた。次いで、TAPPI-UM403に従い、インターナルボンドテスター(熊谷理機工業(株)製)で測定し、5回の測定結果の平均値を表面強度とした。また、測定後の油性オフセット印刷用紙において、層間剥離及び層間凝集破壊が認められるか否か目視観察した。表面強度及び剥離態様に基づき、層間強度を下記の評価基準で判定した。結果を表2に示す。
5(最優):表面強度が2.0kg/cm以上であって、層間剥離又は層内凝集破壊が認められない。
4(良好):表面強度が1.5kg/cm以上2.0kg/cm未満であって、層間剥離又は層内凝集破壊が認められない。
3(可):表面強度が1.0kg/cm以上1.5kg/cm未満であって、層間剥離又は層内凝集破壊が認められない。
2(不可):表面強度が1.0kg/cm以上1.5kg/cm未満であって、層間剥離又は層内凝集破壊が認められる。
1(不可):表面強度が1.0kg/cm未満であって、層間剥離又は層内凝集破壊が認められる。
【0099】
【表2】
【0100】
実施例1~9の油性オフセット印刷用紙は、オフセット印刷時の印刷用紙として使用した際に、凹凸又はカールの発生を防止でき、層間強度に優れていることが分かった。
【0101】
一方、溶剤遮断層にスチレン系単量体とオレフィンとの共重合体を含有しない比較例1の油性オフセット印刷用紙は、凹凸又はカールの発生を防止できているものの、層間強度が低い。また、溶剤遮断層にポリスチレン系樹脂を含有しない比較例2の油性オフセット印刷用紙は、層間強度は良好であるものの、凹凸又はカールの発生を防止できていない。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明に係る油性オフセット印刷用紙は、オフセット印刷したときに、オフセットインキ中のビヒクルによる凹凸又はカールの発生を抑制しつつ、層間(相間)強度の低下を抑制することができる。このため、ポスター用紙、包装紙、ラベル等の素材として非常に有用である。
【符号の説明】
【0103】
100・・・油性オフセット印刷用紙、10・・・溶剤遮断層、20・・・基材層、30・・・溶剤吸収層

図1
図2
図3