(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】支持シート、樹脂膜形成用複合シート、キット、及び、樹脂膜付きチップの製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/301 20060101AFI20241121BHJP
C09J 7/38 20180101ALI20241121BHJP
C09J 133/06 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01L21/78 M
C09J7/38
C09J133/06
(21)【出願番号】P 2021062255
(22)【出願日】2021-03-31
【審査請求日】2024-01-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100126882
【氏名又は名称】五十嵐 光永
(74)【代理人】
【識別番号】100153763
【氏名又は名称】加藤 広之
(72)【発明者】
【氏名】田中 佑耶
(72)【発明者】
【氏名】山下 茂之
【審査官】小山 和俊
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-15456(JP,A)
【文献】特開2000-141472(JP,A)
【文献】国際公開第2017/150145(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/116282(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0244377(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
C09J 7/38
C09J 133/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークまたはワークを分割したチップの加熱に用いられる支持シートであって、
前記支持シートを下記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
130℃における変位量(A
130)が500μm以下であり、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A
23→130)が、130℃から50℃まで徐冷したときの1℃当たりの平均変位量の絶対値(|B
130→50|)よりも小さい、支持シート。
<熱機械分析(TMA)の条件>
サンプルサイズ:長さ20mm、幅5mm
チャック間隔:15mm
荷重:0.8g、昇温速度:10℃/minで23℃から130℃まで昇温し、30分間保持する。その後、荷重:0.8g、冷却速度1℃/minで130℃から50℃まで冷却する。その間の変位量[μm]を測定する。
【請求項2】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モード、及び、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
130℃における変位量(A
130)がいずれも500μm以下であり、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A
23→130)が、130℃から50℃まで徐冷したときの1℃当たりの平均変位量の絶対値(|B
130→50|)よりもいずれも小さい、請求項1に記載の支持シート。
【請求項3】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A
23→130)が正の値である、請求項1又は2に記載の支持シート。
【請求項4】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モード、及び、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A
23→130)がいずれも正の値である、請求項3に記載の支持シート。
【請求項5】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A
23→130)に対する、60℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A
60→130)の比が1未満である、請求項3又は4に記載の支持シート。
【請求項6】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モード、及び、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A
23→130)に対する、60℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A
60→130)の比がいずれも1未満である、請求項5に記載の支持シート。
【請求項7】
前記支持シートが、基材のみからなるもの、又は、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたものであって、前記基材の構成材料が、ポリオレフィン樹脂を含有する、請求項1~6のいずれか一項に記載の支持シート。
【請求項8】
前記支持シートが、基材のみからなるもの、又は、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたものであって、前記基材が、延伸フィルムである、請求項1~7のいずれか一項に記載の支持シート。
【請求項9】
前記支持シートがロール状である、請求項1~8のいずれか一項に記載の支持シート。
【請求項10】
請求項1~8のいずれか一項に記載の支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた樹脂膜形成層と、を備える、樹脂膜形成用複合シート。
【請求項11】
前記樹脂膜形成層が保護膜形成フィルムである、請求項10に記載の樹脂膜形成用複合シート。
【請求項12】
前記樹脂膜形成用複合シートがロール状である、請求項10又は11に記載の樹脂膜形成用複合シート。
【請求項13】
第1剥離フィルム、樹脂膜形成層及び第2剥離フィルムがこの順に積層された第一積層体と、前記樹脂膜形成層の貼着対象となるワーク及び前記樹脂膜形成層を支持するために用いられる、請求項1~9のいずれか一項に記載の支持シートと、を備えるキット。
【請求項14】
前記樹脂膜形成層が保護膜形成フィルムである、請求項13に記載のキット。
【請求項15】
前記第一積層体がロール状である、請求項13又は14に記載のキット。
【請求項16】
チップと、前記チップの裏面に設けられた樹脂膜と、を備える樹脂膜付きチップの製造方法であって、
ワークの裏面に、請求項10~12のいずれか一項に記載の樹脂膜形成用複合シート中の樹脂膜形成層を貼付するか、又は、ワークの裏面に、請求項13~15のいずれか一項に記載のキット中の樹脂膜形成層を貼付して、前記樹脂膜形成層及びワークが、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層フィルムを作製し、さらに、前記第1積層フィルム中の前記樹脂膜形成層に前記キット中の支持シートを貼付することにより、前記支持シート上に、前記樹脂膜形成層及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを作製する工程と、
前記第1積層複合シートの周縁部を固定用治具に貼付した状態で、前記第1積層複合シートを加熱して、前記樹脂膜形成層を硬化させ前記樹脂膜を形成することにより、前記支持シート上に、前記樹脂膜及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第2積層複合シートを作製する工程と、
前記第2積層複合シートを冷却し、その後、前記支持シート上で、前記第2積層複合シート中の前記ワークを分割し、前記樹脂膜を切断することにより、複数個の樹脂膜付きチップが前記支持シート上で固定されている第3積層複合シートを作製する工程と、
前記第3積層複合シート中の前記樹脂膜付きチップを前記支持シートから引き離すことによりピックアップする工程と、を有する、樹脂膜付きチップの製造方法。
【請求項17】
チップと、前記チップの裏面に設けられた樹脂膜と、を備える樹脂膜付きチップの製造方法であって、
ワークの裏面に、請求項10~12のいずれか一項に記載の樹脂膜形成用複合シート中の樹脂膜形成層を貼付するか、又は、ワークの裏面に、請求項13~15のいずれか一項に記載のキット中の樹脂膜形成層を貼付して、前記樹脂膜形成層及びワークが、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層フィルムを作製し、さらに、前記第1積層フィルム中の前記樹脂膜形成層に前記キット中の支持シートを貼付することにより、前記支持シート上に、前記樹脂膜形成層及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを作製する工程と、
前記支持シート上で、前記第1積層複合シート中の前記ワークを分割し、前記樹脂膜形成層を切断することにより、複数個の樹脂膜形成層付きチップが前記支持シート上で固定されている第4積層複合シートを作製する工程と、
前記第4積層複合シートの周縁部を固定用治具に貼付した状態で、前記第4積層複合シートを加熱し、冷却して、前記第4積層複合シート中の前記樹脂膜形成層を硬化させ前記樹脂膜を形成することにより、前記支持シート上に、複数個の樹脂膜付きチップが前記支持シート上で固定されている第3積層複合シートを作製する工程と、
第3積層複合シート中の前記樹脂膜付きチップを前記支持シートから引き離すことによりピックアップする工程と、を有する、樹脂膜付きチップの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、支持シート、前記支持シート及び樹脂膜形成層を備える樹脂膜形成用複合シート及びキット、並びに樹脂膜付きチップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウエハ、絶縁体ウエハ、半導体装置パネル等のワークには、その一方の面(回路面)に回路が形成されており、さらにその面(回路面)上にバンプ等の突状電極を有するものがある。前記ワークを支持シート(例えば、ダイシングシート)に貼付して積層体を得る。前記支持シートの周縁部をリングフレーム等の固定用治具に貼付した状態で前記積層体を加熱し、そして冷却する。前記支持シートに貼着するワークは分割されて、チップが得られる。その後、前記支持シートから前記チップをピックアップすることがある(特許文献1参照)。
【0003】
いわゆるフェースダウン(face down)方式と呼ばれる実装法を用いた半導体装置の製造プロセスにおいて、前記ワークをダイシングして形成されたチップの裏面保護のために、保護膜形成フィルムが使用されており、保護膜形成フィルムと支持シートとが組み合わされた保護膜形成用複合シートが使用されている。また、チップの裏面をリードフレームや有機基板などに接合するためにフィルム状接着剤が使用されており、前記ワークをダイシングする際には、フィルム状接着剤と支持シートとが組み合わされたダイシングダイボンディングシートも使用されている。保護膜形成フィルム及びフィルム状接着剤は前記ワークの裏面に貼付して使用されている。
【0004】
以下、本明細書において、保護膜形成フィルム又はフィルム状接着剤を樹脂膜形成層と云い、保護膜形成用複合シート又はダイシングダイボンディングシートを、樹脂膜形成用複合シートと云う。保護膜形成フィルムよって形成された保護膜、又は、フィルム状接着剤によって形成された接合膜を、樹脂膜と云う。
【0005】
樹脂膜付きチップの製造加工では、ワークの裏面に、保護膜又は接合膜を形成するための樹脂膜形成層を貼付する。樹脂膜形成層は、前記樹脂膜形成層が支持シート上に積層された樹脂膜形成用複合シートの状態でワークの裏面に貼付されることもある。樹脂膜形成層は、支持シート上に積層されずにワークの裏面に貼付され、その後、支持シートに貼付されることもある。
【0006】
ワークの裏面に貼付された樹脂膜形成層は、必要に応じて、支持シート上で熱硬化させて樹脂膜とする。支持シート上で、前記ワークの裏面に貼付された樹脂膜形成層を熱硬化する場合、支持シート、樹脂膜形成層及びワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを、当該シートの周縁部をリングフレームに貼付した状態で加熱し、そして冷却する。その後、支持シート上のダイシング工程で、ワークが分割され、樹脂膜が切断され、樹脂膜付きチップとしてピックアップすることがある(特許文献2参照)。
【0007】
あるいは、ワークの裏面に貼付された樹脂膜形成層は、支持シート上のダイシング工程で、ワークが分割され、樹脂膜が切断されて、樹脂膜形成層付きチップとした後、支持シート上で樹脂膜形成層を熱硬化させて、樹脂膜付きチップとする。支持シート上で、前記チップの裏面に貼付された樹脂膜形成層を熱硬化する場合、支持シート、樹脂膜形成層及びチップがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第4積層複合シートを、当該シートの周縁部をリングフレームに貼付した状態で加熱し、そして冷却する。その後、樹脂膜付きチップをピックアップする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第2015/190230号
【文献】国際公開第2015/178346号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
例えば、特許文献1,2で説明されている半導体ウエハの直径は8インチであり、厚さが100μm、質量が約7.4gであった。前記半導体ウエハを9mm×9mmのチップサイズにダイシングし、チップにすることが説明されている。
【0010】
樹脂膜付きチップの製造加工では、直径がより大きい半導体ウエハが採用され、半導体ウエハ上の突状電極の数および大きさが増大していることから、周縁部がリングフレームで支えられている支持シートに掛かる荷重はより大きくなる傾向にあり、かつ、チップサイズは逆により小さくなる傾向にある。
【0011】
従来の樹脂膜形成用複合シートや、支持シートを使用した場合、第1積層複合シート又は第4積層複合シート等の製造加工用シートの周縁部をリングフレームに貼付した状態で前記製造加工用シートを加熱したときに、半導体ウエハ等のワークの荷重または複数個のチップの荷重によって前記製造加工用シートが弛み、樹脂膜付きチップの位置がずれてしまいうことがあった。また、前記製造加工用シートを加熱した後のダイシング工程で、樹脂膜付きチップの位置がずれてしまいうことがあった。結果、チップサイズがより小さい場合、ピックアップの際の樹脂膜付きチップの認識不良の問題が生じることがある。
【0012】
本発明は、加熱及び冷却による製造加工用シートの弛みの影響をなくし、ピックアップ装置のチップの認識性を向上させることができる支持シート、前記支持シート及び樹脂膜形成層を備える樹脂膜形成用複合シート及びキット、並びに樹脂膜付きチップの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、以下の支持シート、樹脂膜形成用複合シート及びキット、並びに樹脂膜付きチップの製造方法を提供する。
【0014】
[1] ワークまたはワークを分割したチップの加熱に用いられる支持シートであって、
前記支持シートを下記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
130℃における変位量(A130)が500μm以下であり、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)が、130℃から50℃まで徐冷したときの1℃当たりの平均変位量の絶対値(|B130→50|)よりも小さい、支持シート。
【0015】
<熱機械分析(TMA)の条件>
サンプルサイズ:長さ20mm、幅5mm
チャック間隔:15mm
荷重:0.8g、昇温速度:10℃/minで23℃から130℃まで昇温し、30分間保持する。その後、荷重:0.8g、冷却速度1℃/minで130℃から50℃まで冷却する。その間の変位量[μm]を測定する。
【0016】
[2] 前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モード、及び、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
130℃における変位量(A130)がいずれも500μm以下であり、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)が、130℃から50℃まで徐冷したときの1℃当たりの平均変位量の絶対値(|B130→50|)よりもいずれも小さい、[1]に記載の支持シート。
【0017】
[3] 前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)が正の値である、[1]又は[2]に記載の支持シート。
[4] 前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モード、及び、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)がいずれも正の値である、[3]に記載の支持シート。
【0018】
[5] 前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)に対する、60℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A60→130)の比が1未満である、[3]又は[4]に記載の支持シート。
[6] 前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モード、及び、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)に対する、60℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A60→130)の比がいずれも1未満である、[5]に記載の支持シート。
【0019】
[7] 前記支持シートが、基材のみからなるもの、又は、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたものであって、前記基材の構成材料が、ポリオレフィン樹脂を含有する、[1]~[6]のいずれか一項に記載の支持シート。
[8] 前記支持シートが、基材のみからなるもの、又は、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたものであって、前記基材が、延伸フィルムである、[1]~[7]のいずれか一項に記載の支持シート。
[9] 前記支持シートがロール状である、[1]~[8]のいずれか一項に記載の支持シート。
【0020】
[10] [1]~[8]のいずれか一項に記載の支持シートと、前記支持シートの一方の面上に設けられた樹脂膜形成層と、を備える、樹脂膜形成用複合シート。
[11] 前記樹脂膜形成層が保護膜形成フィルムである、[10]に記載の樹脂膜形成用複合シート。
[12] 前記樹脂膜形成用複合シートがロール状である、[10]又は[11]に記載の樹脂膜形成用複合シート。
【0021】
[13] 第1剥離フィルム、樹脂膜形成層及び第2剥離フィルムがこの順に積層された第一積層体と、前記樹脂膜形成層の貼着対象となるワーク及び前記樹脂膜形成層を支持するために用いられる、[1]~[9]のいずれか一項に記載の支持シートと、を備えるキット。
[14] 前記樹脂膜形成層が保護膜形成フィルムである、[13]に記載のキット。
[15] 前記第一積層体がロール状である、[13]又は[14]に記載のキット。
【0022】
[16] チップと、前記チップの裏面に設けられた樹脂膜と、を備える樹脂膜付きチップの製造方法であって、
ワークの裏面に、[10]~[12]のいずれか一項に記載の樹脂膜形成用複合シート中の樹脂膜形成層を貼付するか、又は、ワークの裏面に、[13]~[15]のいずれか一項に記載のキット中の樹脂膜形成層を貼付して、前記樹脂膜形成層及びワークが、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層フィルムを作製し、さらに、前記第1積層フィルム中の前記樹脂膜形成層に前記キット中の支持シートを貼付することにより、前記支持シート上に、前記樹脂膜形成層及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを作製する工程と、
前記第1積層複合シートの周縁部を固定用治具に貼付した状態で、前記第1積層複合シートを加熱して、前記樹脂膜形成層を硬化させ前記樹脂膜を形成することにより、前記支持シート上に、前記樹脂膜及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第2積層複合シートを作製する工程と、
前記第2積層複合シートを冷却し、その後、前記支持シート上で、前記第2積層複合シート中の前記ワークを分割し、前記樹脂膜を切断することにより、複数個の樹脂膜付きチップが前記支持シート上で固定されている第3積層複合シートを作製する工程と、
前記第3積層複合シート中の前記樹脂膜付きチップを前記支持シートから引き離すことによりピックアップする工程と、を有する、樹脂膜付きチップの製造方法。
【0023】
[17] チップと、前記チップの裏面に設けられた樹脂膜と、を備える樹脂膜付きチップの製造方法であって、
ワークの裏面に、[10]~[12]のいずれか一項に記載の樹脂膜形成用複合シート中の樹脂膜形成層を貼付するか、又は、ワークの裏面に、[13]~[15]のいずれか一項に記載のキット中の樹脂膜形成層を貼付して、前記樹脂膜形成層及びワークが、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層フィルムを作製し、さらに、前記第1積層フィルム中の前記樹脂膜形成層に前記キット中の支持シートを貼付することにより、前記支持シート上に、前記樹脂膜形成層及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを作製する工程と、
前記支持シート上で、前記第1積層複合シート中の前記ワークを分割し、前記樹脂膜形成層を切断することにより、複数個の樹脂膜形成層付きチップが前記支持シート上で固定されている第4積層複合シートを作製する工程と、
前記第4積層複合シートの周縁部を固定用治具に貼付した状態で、前記第4積層複合シートを加熱し、冷却して、前記第4積層複合シート中の前記樹脂膜形成層を硬化させ前記樹脂膜を形成することにより、前記支持シート上に、複数個の樹脂膜付きチップが前記支持シート上で固定されている第3積層複合シートを作製する工程と、
第3積層複合シート中の前記樹脂膜付きチップを前記支持シートから引き離すことによりピックアップする工程と、を有する、樹脂膜付きチップの製造方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、加熱及び冷却による製造加工用シートの弛みの影響をなくし、ピックアップ装置のチップの認識不良をなくすことができる支持シート、前記支持シート及び樹脂膜形成層を備える樹脂膜形成用複合シート及びキット、並びに樹脂膜付きチップの製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本発明の実施形態に係る支持シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る樹脂膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る樹脂膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る樹脂膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る樹脂膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
【
図6】本発明の実施形態に係るキットの、一例を模式的に示す断面図である。
【
図7A】本発明の実施形態に係る樹脂膜付きチップの製造方法の一例の一部を模式的に説明するための断面図である。
【
図7B】本発明の実施形態に係る樹脂膜付きチップの製造方法の一例の一部を模式的に説明するための断面図である。
【
図7C】本発明の実施形態に係る樹脂膜付きチップの製造方法の一例の一部を模式的に説明するための断面図である。
【
図7D】本発明の実施形態に係る樹脂膜付きチップの製造方法の一例の一部を模式的に説明するための断面図である。
【
図7E】本発明の実施形態に係る樹脂膜付きチップの製造方法の一例の一部を模式的に説明するための断面図である。
【
図8】本発明の実施形態に係る樹脂膜付きチップの製造方法の他の例の一部を模式的に説明するための断面図である。
【
図9A】本発明の実施形態に係る樹脂膜付きチップの製造方法の他の例の一部を模式的に説明するための断面図である。
【
図9B】本発明の実施形態に係る樹脂膜付きチップの製造方法の他の例の一部を模式的に説明するための断面図である。
【
図9C】本発明の実施形態に係る樹脂膜付きチップの製造方法の他の例の一部を模式的に説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
<<支持シート>>
本発明の実施形態に係る支持シートは、ワークまたはワークを分割したチップの加熱に用いられる支持シートであって、
前記支持シートを下記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、
130℃における変位量(A130)が500μm以下であり、
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)が、130℃から50℃まで徐冷したときの1℃当たりの平均変位量の絶対値(|B130→50|)よりも小さい。
【0027】
<熱機械分析(TMA)の条件>
サンプルサイズ:長さ20mm、幅5mm
チャック間隔:15mm
荷重:0.8g、昇温速度:10℃/minで23℃から130℃まで昇温し、30分間保持する。その後、荷重:0.8g、冷却速度1℃/minで130℃から50℃まで冷却する。その間の変位量[μm]を測定する。
【0028】
前記熱機械分析(TMA)したときの変位量が正の値のとき支持シートは伸長したことを意味し、変位量が負の値のとき支持シートは収縮したことを意味する。
【0029】
本実施形態に係る支持シートは、130℃における変位量(A130)が500μm以下である。ここで、130℃における変位量(A130)は、23℃から130℃まで昇温して130℃に到達した時点で測定したものである。
130℃における変位量(A130)が500μm以下であることにより、加熱時の支持シートの弛みを少なくできる。130℃における変位量(A130)は、450μm以下であることが好ましく、400μm以下であることがより好ましく、360μm以下であることがさらに好ましい。130℃における変位量(A130)は、-50μmより大きいことが好ましく、0μmより大きいことがさらに好ましく、21μmより大きいことがさらに好ましく、43μmより大きいことがさらに好ましく、64μmより大きいことが特に好ましい。
【0030】
例えば、前記変位量(A130)が負の値であって、大きく収縮する性質を有する支持シートの場合、高温では治具用粘着剤層等の固定用治具との粘着力が弱まり、ワークの重量で支持シートが固定用治具から剥がれて脱落するおそれがある。しかし、低温になると、治具用粘着剤層等の固定用治具との粘着力が復活するので、130℃から50℃まで徐冷したときの1℃当たりの平均変位量の絶対値(|B130→50|)は、大きくてもよい。そのため、23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)が、130℃から50℃まで徐冷したときの1℃当たりの平均変位量の絶対値(|B130→50|)よりも小さいことが好ましい。
【0031】
ここで、23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)は、次式により求めることができる。
A23→130=(A130-A23)/107=A130/107[μm/℃]
【0032】
23℃における変位量(A23)=0μm
130℃における変位量(A130)[μm]
【0033】
ここで、130℃から50℃まで徐冷したときの1℃当たりの平均変位量(B130→50)は、次式により求めることができる。
B130→50=(B50-B130)/80[μm/℃]
なお、徐冷した際に支持シートが伸長することは想定されないため、通常、B130→50は負の値である。
【0034】
ここで、130℃から50℃まで徐冷したときの1℃当たりの平均変位量の絶対値(|B130→50|)は、次式により求めることができる。
|B130→50|=|B50-B130|/80[μm/℃]
【0035】
130℃、30分間保持後の変位量(B130)[μm]
徐冷後の50℃における変位量(B50)[μm]
【0036】
前記平均変位量(A23→130)が、前記平均変位量の絶対値(|B130→50|)よりも小さいことにより、加熱及び冷却による支持シート上のチップの位置変化を少なくすることができ、ピックアップ装置のチップの認識不良をなくすことができる。
【0037】
前記支持シートを下記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、前記平均変位量(A23→130)から、前記平均変位量の絶対値(|B130→50|)を引いた値[(A23→130)-|B130→50|]は、負の値であり、-0.10~-5μm/℃であることが好ましく、-0.40~-4μm/℃であることがより好ましく、-0.75~-3μm/℃であることがさらに好ましい。
【0038】
昇温して130℃に到達後の温度変化のない状態での保持の際に、支持シートの基材に同じ荷重(ワークの荷重)が長い時間掛かることによる、支持シートがゆっくりと伸長する現象よりも、昇温および徐冷で温度が変化する際の、前記平均変位量(A23→130)から前記平均変位量の絶対値(|B130→50|)を引いた値[(A23→130)-|B130→50|]が重要である。これは、実際に第1積層複合シートまたは第4積層複合シートを130℃で保持した際に、第1積層複合シートまたは第4積層複合シート中の樹脂膜形成層、粘着剤層、及び、治具用粘着剤層は、高温において粘性を有しているため、支持シートがゆっくりと伸長する現象は第1積層複合シートまたは第4積層複合シート全体で応力が緩和して、弛みに影響しづらいためである。
【0039】
ここで、「流れ方向(MD)における[(A23→130)-|B130→50|]の値」から「垂直方向(CD)における[(A23→130)-|B130→50|]の値」を引いた値の絶対値を「MDとCDのバランス評価値」として、求めることができる。
MDとCDのバランス評価値は3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましく、1.8以下が特に好ましい。MDとCDのバランス評価値が前記上限値より大きい場合、支持シートの収縮挙動がリングフレーム等の固定用治具で制限される状況において、加熱、冷却の後に、MDまたはCDいずれか片方向のみ過剰に収縮しようとする力が支持シートに生じて、固定用治具付近の支持シートにシワ(支持シートが波打った形状)が形成され易い。前記シワを形成しようとする際に、支持シートや樹脂膜形成用複合シートが固定用治具から剥がれる方向(すなわち、リングフレーム等の固定用治具の平面に対して垂直方向)に力が生じるため、支持シートや樹脂膜形成用複合シートが固定用治具から剥がれ、これを起点として脱落するおそれが高まる。しかしながら、MDとCDのバランス評価値が前記上限値以下であることによって、そのおそれをより低減することができると考えられる。
【0040】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、上記の要件を充足すればよい。
【0041】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モード、及び、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、上記の要件をいずれも充足することが好ましい。
【0042】
すなわち、前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、130℃における変位量(A130)が500μm以下であり、且つ、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、130℃における変位量(A130)が500μm以下であることが好ましい。
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、前記平均変位量(A23→130)が、前記平均変位量の絶対値(|B130→50|)よりも小さく、且つ、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、前記平均変位量(A23→130)が、前記平均変位量の絶対値(|B130→50|)よりも小さいことが好ましい。
【0043】
通常、支持シートの流れ方向(MD)とは、支持シートを成形する時の、樹脂の流れ方向を云う。支持シートの垂直方向(CD)とは、支持シートの流れ方向(MD)に直交する方向を云う。支持シートが、ロール状である場合、支持シートの延伸の有無にかかわらず、支持シートの長尺方向が流れ方向(MD)であり、支持シートの幅方向が垂直方向(CD)であるものとする。
支持シートが枚葉状の場合である場合でも、樹脂の流れ方向は、例えば、X線2次元回折画像の分析等、光学的な分析によって、互いに区別できる。
【0044】
支持シートが基材と粘着剤層とを備える場合、支持シートを熱機械分析(TMA)したときの変位量は、基材の特性による影響が大きいので、支持シートの流れ方向(MD)は、基材の流れ方向(MD)であり、支持シートの垂直方向(CD)は、基材の垂直方向(CD)であるものとする。
【0045】
本実施形態の支持シートは、前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)が正の値であることが好ましい。
固定用治具との粘着力は高温時に弱い。平均変位量(A23→130)が負の値であると、支持シートが収縮し、高温時にワーク又はチップの重量で支持シートが固定用治具から剥がれて脱落するおそれがある。平均変位量(A23→130)が正の値であることにより、支持シートが固定用治具から剥がれて脱落するおそれをなくすことができる。
【0046】
ここで、23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)は、前記式(A23→130=A130/107[μm/℃])で求めることができる。
【0047】
前記平均変位量(A23→130)は、0.20μm/℃以上であることがより好ましく、0.40μm/℃以上であることがさらに好ましく、0.60μm/℃以上であることが特に好ましい。
【0048】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、前記平均変位量(A23→130)が正の値であればよい。
【0049】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モード、及び、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、前記平均変位量(A23→130)がいずれも正の値であることが好ましい。
【0050】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モード、及び、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、前記平均変位量(A23→130)がいずれも、0.20μm/℃以上であることがより好ましく、0.40μm/℃以上であることがさらに好ましく、0.60μm/℃以上であることが特に好ましい。
【0051】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)又は垂直方向(CD)のいずれかの引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)に対する、60℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A60→130)の比が1未満であることが好ましい。
昇温における60℃以降は、支持シートは材料として柔軟になる傾向がある。
前記平均変位量(A23→130)に対する前記平均変位量(A60→130)の比が1未満であることにより、昇温における60℃以降は、支持シートの伸び挙動が抑えられることによって、最終的に冷却された後の弛みは抑制されやすい。
【0052】
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)は、次式により求めることができる。
A23→130=(A130-A23)/107=A130/107[μm/℃]
【0053】
23℃における変位量(A23)=0μm
130℃における変位量(A130)[μm]
【0054】
ここで、60℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A60→130)は、次式により求めることができる。
A60→130=(A130-A60)/70[μm/℃]
【0055】
60℃における変位量(A60)[μm]
130℃における変位量(A130)[μm]
【0056】
したがって、23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)に対する、60℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A60→130)の比[(A60→130)/(A23→130)]は、これらの式から求めることができる。
【0057】
前記平均変位量(A23→130)に対する前記平均変位量(A60→130)の比[(A60→130)/(A23→130)]は、1未満であることが好ましく、0.99以下であることがより好ましく、0.98以下であることがさらに好ましい。前記平均変位量(A23→130)に対する前記平均変位量(A60→130)の比[(A60→130)/(A23→130)]は、0.10以上であることが好ましく、0.20以上であることがより好ましく、0.30以上であることがさらに好ましく、0.90以上であることが特に好ましい。
【0058】
昇温して130℃に到達後の温度変化のない状態での保持の際に、支持シートの基材に同じ荷重(ワークの荷重)が長い時間掛かることによる、支持シートがゆっくりと伸長する現象よりも、昇温および徐冷で温度が変化する際の、前記平均変位量(A23→130)に対する前記平均変位量(A60→130)の比[(A60→130)/(A23→130)]が重要である。これは、実際に第1積層複合シートまたは第4積層複合シートを130℃で保持した際に、第1積層複合シートまたは第4積層複合シート中の樹脂膜形成層、粘着剤層、治具用粘着剤層は、高温において粘性を有しているため、支持シートがゆっくりと伸長する現象は第1積層複合シートまたは第4積層複合シート全体で応力が緩和して、弛みに影響しづらいためである。
【0059】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モード、及び、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、前記平均変位量(A23→130)に対する前記平均変位量(A60→130)の比がいずれも1未満であることが好ましい。
【0060】
前記支持シートを前記条件で流れ方向(MD)の引張モード、及び、垂直方向(CD)の引張モードで熱機械分析(TMA)したとき、前記平均変位量(A23→130)に対する前記平均変位量(A60→130)の比[(A60→130)/(A23→130)]は、いずれも1未満であることが好ましく、いずれも0.99以下であることがより好ましく、いずれも0.98以下であることがさらに好ましい。前記平均変位量(A23→130)に対する前記平均変位量(A60→130)の比[(A60→130)/(A23→130)]は、いずれも0.10以上であることが好ましく、いずれも0.20以上であることがより好ましく、いずれも0.30以上であることがさらに好ましい。
【0061】
本実施形態の支持シートは、ワークの裏面に樹脂膜形成層が貼付され、前記支持シート上に、前記樹脂膜形成層及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを、前記第1積層複合シートの周縁部を固定用治具に貼付した状態で、前記第1積層複合シートを加熱して、前記支持シート上に、樹脂膜及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第2積層複合シートを形成し、前記第2積層複合シートを冷却し、その後、前記支持シート上で、前記ワークを分割し、前記樹脂膜を切断して、前記支持シート上に複数個の樹脂膜付きチップが固定されている第3積層複合シートを形成し、前記第3積層複合シート中の前記樹脂膜付きチップをピックアップする、樹脂膜付きチップの製造方法に好適に用いることができる。本発明の実施形態に係る支持シートは、上記の構成を有しているので、第1積層複合シートの周縁部を固定用治具に貼付した状態で、前記第1積層複合シートを加熱し、その後、第2積層複合シートを冷却しても、第3積層複合シートの弛みの影響をなくし、ピックアップ装置のチップの認識性を向上させることができる。
【0062】
また、本実施形態の支持シートは、ワークの裏面に樹脂膜形成層が貼付され、前記支持シート上に、前記樹脂膜形成層及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シート中の、前記ワークを分割し、前記樹脂膜形成層を切断して、前記支持シート上に複数個の樹脂膜形成層付きチップが固定されている第4積層複合シートを形成し、前記第4積層複合シートを、前記第4積層複合シートの周縁部を固定用治具に貼付した状態で、前記第4積層複合シートを加熱して、前記支持シート上に複数個の樹脂膜付きチップが固定されている第3積層複合シートを形成し、前記第3積層複合シートを冷却し、その後、前記第3積層複合シート中の前記樹脂膜付きチップをピックアップする、樹脂膜付きチップの製造方法に好適に用いることができる。本発明の実施形態に係る支持シートは、上記の構成を有しているので、第4積層複合シートの周縁部を固定用治具に貼付した状態で、前記第4積層複合シートを加熱し、その後、第3積層複合シートを冷却しても、第3積層複合シートの弛みの影響をなくし、ピックアップ装置のチップの認識性を向上させることができる。
【0063】
本発明の実施形態に係る支持シートは、上記の構成を有しているので、ワークの質量が20g以上の場合にも、ピックアップ装置のチップの認識性を向上させることができ、ワークの質量が30g以上の場合にも、ピックアップ装置のチップの認識性を向上させることができ、ワークの質量が40g以上の場合にも、ピックアップ装置のチップの認識性を向上させることができる。
【0064】
本明細書において、「ワーク」とは、ウエハ又は半導体装置パネルを云う。
「ウエハ」としては、シリコン、ゲルマニウム、セレン等の元素半導体や、GaAs、GaP、InP、CdTe、ZnSe、SiC等の化合物半導体、で構成される半導体ウエハ;サファイア、ガラス、ニオブ酸リチウム、タンタル酸リチウム等の絶縁体で構成される絶縁体ウエハが挙げられる。
「半導体装置パネル」とは、少なくとも一個の電子部品が封止樹脂層で封止された複数の半導体装置が、平面的に並んで配置された集合体を云う。
これらワークの一方の面上には、回路が形成されており、本明細書においては、このように回路が形成されている側のワークの面を「回路面」と称する。そして、ワークの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ワークは、ダイシング等の手段により分割され、チップとなる。本明細書においては、ワークの場合と同様に、回路が形成されている側のチップの面を「回路面」と称し、チップの回路面とは反対側の面を「裏面」と称する。
ワークの回路面とチップの回路面には、いずれもバンプ、ピラー等の突状電極が設けられている。突状電極は、はんだで構成されていることが好ましい。
【0065】
前記支持シートは、1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよい。支持シートが複数層からなる場合、これら複数層の構成材料及び厚さは、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されない。
【0066】
支持シートは、透明であることが好ましく、目的に応じて着色されていてもよい。
樹脂膜形成層がエネルギー線硬化性を有するとき、支持シートはエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0067】
支持シートとしては、例えば、基材と、前記基材の一方の面上に設けられた粘着剤層と、を備えたもの;基材のみからなるもの;等が挙げられる。支持シートが粘着剤層を備えている場合、粘着剤層は、樹脂膜形成用複合シートにおいては、基材と樹脂膜形成層との間に配置される。
【0068】
基材及び粘着剤層を備えた支持シートを用いた場合には、樹脂膜形成用複合シートにおいて、支持シートと樹脂膜形成層との間の、密着性及び剥離性を容易に調節できる。
基材のみからなる支持シートを用いた場合には、低コストで樹脂膜形成用複合シートを製造できる。
【0069】
本実施形態の支持シートの例を、以下、図面を参照しながら説明する。
【0070】
図1は、本実施形態の支持シートの一例を模式的に示す断面図である。なお、以下の説明で用いる図は、本発明の特徴を分かり易くするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率等が実際と同じであるとは限らない。
【0071】
図1に示す支持シート10は、基材11の一方の面11a((本明細書においては、「第1面11a」と称することがある。)上に粘着剤層12が設けられている。
【0072】
次に、支持シート10を構成する各層について、さらに詳細に説明する。
【0073】
○基材
前記基材は、シート状又はフィルム状であり、その構成材料としては、例えば、各種樹脂が挙げられる。
前記樹脂としては、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)等のポリエチレン;ポリプロピレン、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、ノルボルネン樹脂等のポリエチレン以外のポリオレフィン;エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン-ノルボルネン共重合体等のエチレン系共重合体(モノマーとしてエチレンを用いて得られた共重合体);ポリ塩化ビニル、塩化ビニル共重合体等の塩化ビニル系樹脂(モノマーとして塩化ビニルを用いて得られた樹脂);ポリスチレン;ポリシクロオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンイソフタレート、ポリエチレン-2,6-ナフタレンジカルボキシレート、すべての構成単位が芳香族環式基を有する全芳香族ポリエステル等のポリエステル;2種以上の前記ポリエステルの共重合体;ポリ(メタ)アクリル酸エステル;ポリウレタン;ポリウレタンアクリレート;ポリイミド;ポリアミド;ポリカーボネート;フッ素樹脂;ポリアセタール;変性ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリスルホン;ポリエーテルケトン等が挙げられる。
【0074】
前記基材の構成材料は、ポリオレフィン樹脂を含有することが好ましく、これらの中でも、ポリエチレン以外のポリオレフィンが好ましく、ポリプロピレンがより好ましい。
【0075】
また、前記樹脂としては、例えば、前記ポリエステルとそれ以外の樹脂との混合物等のポリマーアロイも挙げられる。前記ポリエステルとそれ以外の樹脂とのポリマーアロイは、ポリエステル以外の樹脂の量が比較的少量であるものが好ましい。
また、前記樹脂としては、例えば、ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上が架橋した架橋樹脂;ここまでに例示した前記樹脂の1種又は2種以上を用いたアイオノマー等の変性樹脂も挙げられる。
【0076】
基材を構成する樹脂は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0077】
基材は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0078】
基材の厚さは、50~300μmであることが好ましく、60~100μmであることがより好ましい。基材の厚さがこのような範囲であることで、支持シート及び樹脂膜形成用複合シートの可撓性と、ワークへの貼付適性がより向上する。
ここで、「基材の厚さ」とは、基材全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる基材の厚さとは、基材を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0079】
基材は、前記樹脂等の主たる構成材料以外に、充填材、着色剤、酸化防止剤、有機滑剤、触媒、軟化剤(可塑剤)等の公知の各種添加剤を含有していてもよい。
【0080】
基材は、透明であることが好ましく、目的に応じて着色されていてもよいし、他の層が蒸着されていてもよい。
【0081】
基材は、その上に設けられる粘着剤層又は樹脂膜形成層との密着性を調節するために、サンドブラスト処理、溶剤処理等による凹凸化処理;コロナ放電処理、電子線照射処理、プラズマ処理、オゾン・紫外線照射処理、火炎処理、クロム酸処理、熱風処理等の酸化処理;親油処理;親水処理等が表面に施されていてもよい。また、基材は、表面がプライマー処理されていてもよい。
【0082】
基材は、特定範囲の成分(例えば、樹脂等)を含有することで、少なくとも一方の面において、粘着性を有するものであってもよい。
【0083】
○基材の製造方法
基材は、公知の方法で製造できる。例えば、樹脂を含有する基材は、前記樹脂を含有する樹脂組成物を成形することで製造できる。
【0084】
前記基材は、延伸フィルムであることが好ましい。基材の延伸方向は、基材の流れ方向(MD)のみであってもよく、基材の垂直方向(CD)のみであってもよく、流れ方向(MD)及び垂直方向(CD)二軸延伸であることがより好ましい。
【0085】
前記基材が延伸フィルムであることによって、延伸フィルムの残留応力が、支持シートの前記平均変位量(A23→130)および前記平均変位量(A60→130)を小さくすることができる。特に、延伸フィルムの残留応力は、前記平均変位量(A60→130)を小さくする効果が大きいため、130℃における変位量(A130)および前記比[(A60→130)/(A23→130)]を小さくすることができる。
【0086】
基材の延伸は、加熱条件下であることが好ましい。加熱の温度条件は、基材の構成材料によって調整される。例えば、基材の構成材料がポリプロピレンであるとき、加熱の温度条件は、100~140℃であることが好ましく、105~135℃であることがより好ましく、110~130℃であることがさらに好ましい。
【0087】
加熱の時間条件は、15~120sであることが好ましく、30~100sであることがより好ましく、45~80sであることがさらに好ましい。
【0088】
延伸の張力は、1.0~6.0N/mであることが好ましく、1.3~5.0N/mであることがより好ましく、1.6~4.0N/mであることがさらに好ましい。
【0089】
○粘着剤層
前記粘着剤層は、シート状又はフィルム状であり、粘着性樹脂を含有する。
前記粘着性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ系樹脂、ポリビニルエーテル、ポリカーボネート、エステル系樹脂等が挙げられる。その中でも、樹脂膜形成層および樹脂膜との密着性を調整する観点から、アクリル樹脂が好ましい。
【0090】
粘着剤層は1層(単層)からなるものであってもよいし、2層以上の複数層からなるものであってもよく、複数層からなる場合、これら複数層は、互いに同一でも異なっていてもよく、これら複数層の組み合わせは特に限定されない。
【0091】
粘着剤層の厚さは、特に限定されないが、樹脂膜形成層および樹脂膜との密着性を調整することがより容易となることから、1~100μmであることが好ましく、1~60μmであることがより好ましく、1~30μmであることがさらに好ましく、1~15μmであることがさらに好ましく、1~9μmであることが特に好ましい。
ここで、「粘着剤層の厚さ」とは、粘着剤層全体の厚さを意味し、例えば、複数層からなる粘着剤層の厚さとは、粘着剤層を構成するすべての層の合計の厚さを意味する。
【0092】
粘着剤層は、透明であることが好ましく、目的に応じて着色されていてもよい。
樹脂膜形成層がエネルギー線硬化性を有するとき、粘着剤層はエネルギー線を透過させるものが好ましい。
【0093】
粘着剤層は、エネルギー線硬化性及び非エネルギー線硬化性のいずれであってもよい。エネルギー線硬化性の粘着剤層は、その硬化前及び硬化後での物性を調節できる。例えば、後述する樹脂膜付きチップのピックアップ前に、エネルギー線硬化性の粘着剤層を硬化させることにより、この樹脂膜付きチップをより容易にピックアップできる。
【0094】
本明細書において、「エネルギー線」とは、電磁波又は荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものを意味する。エネルギー線の例としては、紫外線、放射線、電子線等が挙げられる。紫外線は、例えば、紫外線源として高圧水銀ランプ、ヒュージョンランプ、キセノンランプ、ブラックライト又はLEDランプ等を用いることで照射できる。電子線は、電子線加速器等によって発生させたものを照射できる。
本明細書において、「エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射することにより硬化する性質を意味し、「非エネルギー線硬化性」とは、エネルギー線を照射しても硬化しない性質を意味する。
また、「非硬化性」とは、加熱やエネルギー線の照射等、如何なる手段によっても、硬化しない性質を意味する。
【0095】
粘着剤層がエネルギー線硬化性である場合、エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、水酸基等の官能基を有し、非エネルギー線硬化性であって粘着性のアクリル樹脂(I-1a)(以下、「粘着性樹脂(I-1a)」と略記することがある)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-1);非エネルギー線硬化性の前記粘着性樹脂(I-1a)の側鎖に不飽和基が導入されたエネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)(以下、「粘着性樹脂(I-2a)」と略記することがある)を含有する粘着剤組成物(I-2);前記粘着性樹脂(I-2a)と、エネルギー線硬化性化合物と、を含有する粘着剤組成物(I-3)等が挙げられる。
【0096】
粘着剤層が非エネルギー線硬化性である場合、非エネルギー線硬化性の粘着剤組成物としては、例えば、非エネルギー線硬化性の前記粘着性樹脂(I-1a)を含有する粘着剤組成物(I-4)等が挙げられる。
【0097】
[非エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-1a)]
前記粘着性樹脂(I-1a)は、水酸基等の官能基を有する粘着性のアクリル樹脂である。
前記アクリル樹脂としては、例えば、水酸基含有モノマー由来の構成単位、及び、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位を有するアクリル重合体が挙げられる。
前記(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、例えば、アルキルエステルを構成するアルキル基の炭素数が1~20であるのものが挙げられ、前記アルキル基は、直鎖状又は分岐鎖状であることが好ましい。
【0098】
前記アクリル系樹脂は、モノマーである(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を含む樹脂である。ここでいう「由来する」とは、前記モノマーが重合するのに必要な構造の変化を受けたことを意味する。
なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸」及び「メタクリル酸」の両方を包含する概念とする。(メタ)アクリル酸と類似の用語についても同様である。
【0099】
前記アクリル重合体は、水酸基含有モノマー由来の構成単位、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位以外に、さらに、水酸基含有モノマー以外の官能基含有モノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記官能基含有モノマーとしては、例えば、前記官能基が後述する架橋剤と反応することで架橋の起点となったり、前記官能基が後述する不飽和基含有化合物中のイソシアネート基、グリシジル基等の官能基と反応したりすることで、アクリル重合体の側鎖に不飽和基の導入を可能とするものが挙げられる。
【0100】
前記官能基含有モノマーとしては、水酸基含有モノマーの他、例えば、カルボキシ基含有モノマー、アミノ基含有モノマー、エポキシ基含有モノマー等が挙げられる。
【0101】
前記アクリル重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル由来の構成単位、及び官能基含有モノマー由来の構成単位以外に、さらに、他のモノマー由来の構成単位を有していてもよい。
前記他のモノマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステル等と共重合可能なものであれば特に限定されない。
前記他のモノマーとしては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ビニルトルエン、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、アクリロニトリル、アクリルアミド等が挙げられる。
【0102】
前記粘着剤組成物(I-1)、粘着剤組成物(I-2)、粘着剤組成物(I-3)及び粘着剤組成物(I-4)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-4)」と略記する)において、前記アクリル重合体等の前記アクリル樹脂が有する構成単位は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0103】
前記アクリル重合体において、構成単位の全量に対する、官能基含有モノマー由来の構成単位の量の割合は、1~35質量%であることが好ましい。
【0104】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)が含有する粘着性樹脂(I-1a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0105】
粘着剤組成物(I-1)又は粘着剤組成物(I-4)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、粘着性樹脂(I-1a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましく、例えば、25~98質量%、45~97質量%、及び65~96質量%のいずれかであってもよい。
【0106】
[エネルギー線硬化性の粘着性樹脂(I-2a)]
前記粘着性樹脂(I-2a)は、例えば、前記粘着性樹脂(I-1a)中の官能基に、エネルギー線重合性不飽和基を有する不飽和基含有化合物を反応させることで得られる。
【0107】
前記不飽和基含有化合物は、前記エネルギー線重合性不飽和基以外に、さらに粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と反応することで、粘着性樹脂(I-1a)と結合可能な基を有する化合物である。
前記エネルギー線重合性不飽和基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基(エテニル基)、アリル基(2-プロペニル基)等が挙げられ、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
粘着性樹脂(I-1a)中の官能基と結合可能な基としては、例えば、水酸基又はアミノ基と結合可能なイソシアネート基及びグリシジル基、並びにカルボキシ基又はエポキシ基と結合可能な水酸基及びアミノ基等が挙げられる。
【0108】
前記不飽和基含有化合物としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0109】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)が含有する粘着性樹脂(I-2a)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0110】
粘着剤組成物(I-2)又は(I-3)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、粘着性樹脂(I-2a)の含有量の割合は、5~99質量%であることが好ましい。
【0111】
[エネルギー線硬化性化合物]
前記粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物としては、エネルギー線重合性不飽和基を有し、エネルギー線の照射により硬化可能なモノマー又はオリゴマーが挙げられる。
【0112】
エネルギー線硬化性化合物のうち、モノマーとしては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、1,4-ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-へキサンジオール(メタ)アクリレート等の多価(メタ)アクリレート;ウレタン(メタ)アクリレート;ポリエステル(メタ)アクリレート;ポリエーテル(メタ)アクリレート;エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エネルギー線硬化性化合物のうち、オリゴマーとしては、例えば、上記で例示したモノマーの重合体であるオリゴマー等が挙げられる。
【0113】
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)が含有する前記エネルギー線硬化性化合物は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0114】
粘着剤組成物(I-1)又は(I-3)から形成される粘着剤層において、前記粘着剤層の総質量に対する、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量の割合は、1~95質量%であることが好ましい。
【0115】
[架橋剤]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、さらに、イソシアネート系架橋剤を含有することが好ましい。
【0116】
前記架橋剤は、前記水酸基と反応して、粘着性樹脂(I-1a)同士又は粘着性樹脂(I-2a)同士を架橋する。
【0117】
前記粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、架橋剤の含有量は、粘着性樹脂(I-1a)の含有量100質量部に対して、0.01~50質量部であることが好ましく、例えば、1~40質量部、5~35質量部、及び10~30質量部のいずれかであってもよい。
架橋剤としては、例えば、後述の保護膜形成用組成物(III-1)で挙げる「(架橋剤)」と同様のものが挙げられる。
【0118】
[光重合開始剤]
粘着剤組成物(I-1)、(I-2)及び(I-3)(以下、これら粘着剤組成物を包括して、「粘着剤組成物(I-1)~(I-3)」と略記する)は、さらに光重合開始剤を含有していてもよい。光重合開始剤を含有する粘着剤組成物(I-1)~(I-3)は、紫外線等の比較的低エネルギーのエネルギー線を照射しても、十分に硬化反応が進行する。
【0119】
前記光重合開始剤としては、例えば、後述の保護膜形成用組成物(III-1)で挙げる「(光重合開始剤)」と同様のものが挙げられる。
【0120】
粘着剤組成物(I-1)~(I-3)が含有する光重合開始剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0121】
粘着剤組成物(I-1)において、光重合開始剤の含有量は、前記エネルギー線硬化性化合物の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-2)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)の含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
粘着剤組成物(I-3)において、光重合開始剤の含有量は、粘着性樹脂(I-2a)及び前記エネルギー線硬化性化合物の総含有量100質量部に対して、0.01~20質量部であることが好ましい。
【0122】
[その他の添加剤]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、本発明の効果を損なわない範囲内において、上述のいずれの成分にも該当しない、その他の添加剤を含有していてもよい。
前記その他の添加剤としては、例えば、帯電防止剤、酸化防止剤、軟化剤(可塑剤)、充填材(フィラー)、防錆剤、着色剤(顔料、染料)、増感剤、粘着付与剤、反応遅延剤、架橋促進剤(触媒)等の公知の添加剤が挙げられる。
なお、反応遅延剤とは、例えば、粘着剤組成物(I-1)~(I-4)中に混入している触媒の作用によって、保存中の粘着剤組成物(I-1)~(I-4)において、目的としない架橋反応が進行するのを抑制する成分である。反応遅延剤としては、例えば、触媒に対するキレートによってキレート錯体を形成するものが挙げられ、より具体的には、1分子中にカルボニル基(-C(=O)-)を2個以上有するものが挙げられる。
【0123】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有するその他の添加剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0124】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)のその他の添加剤の含有量は、特に限定されず、その種類に応じて適宜選択すればよい。
【0125】
[溶媒]
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していてもよい。粘着剤組成物(I-1)~(I-4)は、溶媒を含有していることで、その塗工対象面への塗工適性が向上する。
【0126】
前記溶媒は有機溶媒であることが好ましく、前記有機溶媒としては、例えば、メチルエチルケトン、アセトン等のケトン;酢酸エチル等のエステル(カルボン酸エステル);テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル;シクロヘキサン、n-ヘキサン等の脂肪族炭化水素;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;1-プロパノール、2-プロパノール等のアルコール等が挙げられる。
【0127】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)が含有する溶媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0128】
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)の溶媒の含有量は、特に限定されず、適宜調節すればよい。
【0129】
○粘着剤組成物の製造方法
粘着剤組成物(I-1)~(I-4)等の粘着剤組成物は、前記粘着性樹脂と、必要に応じて前記粘着性樹脂以外の成分等の、粘着剤組成物を構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化しない限り特に限定されず、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0130】
○粘着剤層の製造方法
前記粘着剤層は、粘着性樹脂を含有する粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、粘着剤層の形成対象面に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、目的とする部位に粘着剤層を形成できる。粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0131】
粘着剤組成物の塗工は、公知の方法で行えばよく、例えば、エアーナイフコーター、ブレードコーター、バーコーター、グラビアコーター、ロールコーター、ロールナイフコーター、カーテンコーター、ダイコーター、ナイフコーター、スクリーンコーター、マイヤーバーコーター、キスコーター等の各種コーターを用いる方法が挙げられる。
【0132】
粘着剤組成物の乾燥条件は、特に限定されない。ただし、粘着剤組成物は、溶媒を含有している場合、加熱乾燥させることが好ましい。そして、溶媒を含有する粘着剤組成物は、例えば、70~130℃で10秒~5分の条件で、加熱乾燥させることが好ましい。
【0133】
◇支持シートの製造方法
基材上に粘着剤層を設けるときには、例えば、基材上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させればよい。また、例えば、剥離フィルム上に粘着剤組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に粘着剤層を形成しておき、この粘着剤層の露出面を、基材の一方の表面と貼り合わせることで、基材上に粘着剤層を積層してもよい。この場合の剥離フィルムは、樹脂膜形成用複合シートの製造過程又は使用過程のいずれかのタイミングで、取り除けばよい。
【0134】
支持シート10はロール状であることが好ましい。
支持シート10がロール状であるとき、支持シート10の延伸の有無にかかわらず、支持シート10の長尺方向が流れ方向(MD)であり、支持シート10の幅方向が垂直方向(CD)である。
【0135】
<<樹脂膜形成用複合シート>>
本発明の実施形態に係る樹脂膜形成用複合シートは、上述の本発明の実施形態に係る支持シート10と、前記支持シート10の一方の面上に設けられた樹脂膜形成層と、を備える。
本実施形態の樹脂膜形成用複合シートの例を、以下、図面を参照しながら説明する。
【0136】
図2は、本実施形態の樹脂膜形成用複合シートの一例を模式的に示す断面図である。
なお、
図2以降の図において、既に説明済みの図に示すものと同じ構成要素には、その説明済みの図の場合と同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0137】
ここに示す樹脂膜形成用複合シート101は、支持シート10と、支持シート10の一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)10a上に設けられた樹脂膜形成層13と、を備えて構成されている。
支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面(第1面)11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されている。樹脂膜形成用複合シート101中、粘着剤層12は、基材11と樹脂膜形成層13との間に配置されている。
【0138】
すなわち、樹脂膜形成用複合シート101は、基材11、粘着剤層12及び樹脂膜形成層13がこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている。
支持シート10の第1面10aは、粘着剤層12の基材11側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)12aと同じである。
【0139】
樹脂膜形成用複合シート101は、さらに樹脂膜形成層13上に、治具用粘着剤層16及び剥離フィルム15を備えている。
樹脂膜形成用複合シート101においては、粘着剤層12の第1面12aの全面又はほぼ全面に、樹脂膜形成層13が積層され、樹脂膜形成層13の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13aの一部、すなわち、周縁部近傍の領域に、治具用粘着剤層16が積層されている。さらに、樹脂膜形成層13の第1面13aのうち、治具用粘着剤層16が積層されていない領域と、治具用粘着剤層16の樹脂膜形成層13側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)16aに、剥離フィルム15が積層されている。樹脂膜形成層13の第1面13aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13bには、支持シート10が設けられている。
【0140】
樹脂膜形成用複合シート101の場合に限らず、本実施形態の樹脂膜形成用複合シートにおいては、剥離フィルムは任意の構成であり、本実施形態の樹脂膜形成用複合シートは、剥離フィルムを備えていてもよいし、備えていなくてもよい。
【0141】
治具用粘着剤層16は、リングフレーム等の固定用治具18に、樹脂膜形成用複合シート101を固定するために用いる。
治具用粘着剤層16は、例えば、粘着剤成分を含有する単層構造を有していてもよいし、芯材となるシートと、前記シートの両面に設けられた、粘着剤成分を含有する層と、を備える複数層構造を有していてもよい。
【0142】
治具用粘着剤層16を構成する粘着剤としては、所望の粘着力および再剥離性を有するものが好ましく、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等を使用することができる。これらの中でも、リングフレーム等の固定用治具18との粘着性が高く、ダイシング工程等にてリングフレーム等の固定用治具18から保護膜形成用複合シートが剥がれることを効果的に抑制することのできるアクリル系粘着剤が好ましい。なお、治具用粘着剤層の厚さ方向の途中には、芯材としての基材が介在していてもよい。
【0143】
治具用粘着剤層は、粘着性樹脂を含有する治具用粘着剤組成物を用いて形成できる。例えば、治具用粘着剤層の形成対象面に治具用粘着剤組成物を塗工し、乾燥させることで、目的とする部位に治具用粘着剤層を形成できる。治具用粘着剤組成物としては、前記粘着剤組成物(I-1)~(I-4)と同様の組成物を挙げることができる。治具用粘着剤組成物における、常温で気化しない成分同士の含有量の比率は、通常、治具用粘着剤層における前記成分同士の含有量の比率と同じとなる。
【0144】
一方、治具用粘着剤層の厚さは、リングフレーム等の固定用治具18に対する粘着性の観点から、5~200μmであることが好ましく、特に10~100μmであることが好ましい。
【0145】
樹脂膜形成用複合シート101は、剥離フィルム15が取り除かれた状態で、樹脂膜形成層13の第1面13aにワークの裏面が貼付され、さらに、治具用粘着剤層16の第1面16aが、リングフレーム等の固定用治具18に貼付されて、使用される。
【0146】
図3は、本実施形態の樹脂膜形成用複合シートの他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す樹脂膜形成用複合シート102は、樹脂膜形成層の形状及び大きさが異なり、治具用粘着剤層が樹脂膜形成層の第1面ではなく、粘着剤層の第1面に積層されている点以外は、
図2に示す樹脂膜形成用複合シート101と同じである。
【0147】
より具体的には、樹脂膜形成用複合シート102において、樹脂膜形成層23は、粘着剤層12の第1面12aの一部の領域、すなわち、粘着剤層12の幅方向(
図3における左右方向)における中央側の領域に、積層されている。さらに、粘着剤層12の第1面12aのうち、樹脂膜形成層23が積層されていない領域に、樹脂膜形成層23をその幅方向の外側から非接触で取り囲むように、治具用粘着剤層16が積層されている。そして、樹脂膜形成層23の粘着剤層12側とは反対側の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)23aと、治具用粘着剤層16の第1面16aとに、剥離フィルム15が積層されている。樹脂膜形成層23の第1面23aとは反対側の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)23bには、支持シート10が設けられている。
【0148】
図4は、本実施形態の樹脂膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す樹脂膜形成用複合シート103は、治具用粘着剤層16を備えていない点以外は、
図3に示す樹脂膜形成用複合シート102と同じである。
【0149】
図5は、本実施形態の樹脂膜形成用複合シートの、さらに他の例を模式的に示す断面図である。
ここに示す樹脂膜形成用複合シート104は、支持シート10に代えて支持シート20を備えて構成されている点以外は、
図2に示す樹脂膜形成用複合シート101と同じである。
【0150】
支持シート20は、基材11のみからなる。
すなわち、樹脂膜形成用複合シート104は、基材11及び樹脂膜形成層13が、これらの厚さ方向において積層されて構成されている。
支持シート20の樹脂膜形成層13側の面(第1面)20aは、基材11の第1面11aと同じである。
基材11は、少なくともその第1面11aにおいて、粘着性を有する。
【0151】
本実施形態の樹脂膜形成用複合シートは、
図2~
図5に示すものに限定されず、本発明の効果を損なわない範囲内において、
図2~
図5に示すものの一部の構成が変更又は削除されたものや、これまでに説明したものにさらに他の構成が追加されたものであってもよい。
【0152】
○樹脂膜形成層
前記樹脂膜形成層は、樹脂膜付きチップの製造方法において、ワークの裏面に貼付して用いられるものである。樹脂膜形成層は、ワーク又は前記ワークを分割して得られるチップの裏面を保護するために用いられる保護膜形成フィルムであることが好ましい。
【0153】
前記支持シート及び前記樹脂膜形成層を備える前記樹脂膜形成用複合シート又は前記キットを用いることにより、後述する樹脂膜付きチップの製造方法により、チップと、前記チップの裏面に設けられた樹脂膜と、を備える樹脂膜付きチップを製造できる。
【0154】
前記樹脂膜形成層が保護膜形成フィルムであるとき、前記支持シート及び前記保護膜形成フィルムを備える前記保護膜形成用複合シート又は前記キットを用いることにより、後述する樹脂膜付きチップの製造方法により、チップと、前記チップの裏面に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きチップを製造できる。
【0155】
さらに、前記樹脂膜付きチップを用いることにより、基板装置を製造できる。
本明細書において、「基板装置」とは、樹脂膜付きチップが、その回路面上の突状電極において、回路基板上の接続パッドにフリップチップ接続されて、構成されたものを意味する。例えば、ウエハとして半導体ウエハを用いた場合であれば、基板装置としては半導体装置が挙げられる。
【0156】
前記樹脂膜形成層は、熱硬化性であることが好ましい。樹脂膜形成層は、樹脂膜形成用組成物を用いて形成でき、特に樹脂膜形成層が、熱硬化性の保護膜形成フィルムである場合、保護膜形成フィルムは、以下に説明する保護膜形成用組成物(III-1)を用いて形成できる。
【0157】
<保護膜形成用組成物(III-1)>
樹脂膜形成用組成物としては、例えば、重合体成分(A)及び熱硬化性成分(B)を含有する保護膜形成用組成物(III-1)(本明細書においては、「保護膜形成用組成物(III-1)」と略記することがある)等が挙げられる。
【0158】
[重合体成分(A)]
重合体成分(A)は、熱硬化性保護膜形成フィルムに造膜性や可撓性等を付与するための重合体化合物である。
保護膜形成用組成物(III-1)及び熱硬化性保護膜形成フィルムが含有する重合体成分(A)は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0159】
重合体成分は、硬化性成分にも該当する場合がある。本明細書においては、保護膜形成組成物が、このような重合体成分及び硬化性成分の両方に該当する成分を含有する場合、保護膜形成組成物は、重合体成分及び硬化性成分を含有するとみなす。
【0160】
重合体成分としては、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノキシ樹脂、シリコーン樹脂、飽和ポリエステル樹脂等を用いることができる。重合体成分として、アクリル樹脂が好ましく用いられる。
【0161】
重合体成分の重量平均分子量(Mw)は、1万~200万であることが好ましく、10万~120万であることがより好ましい。重合体成分の重量平均分子量が上記下限値以上であると、支持シート10との密着性が下がり易い傾向があり、支持シートと保護膜との密着性が低減できる。重合体成分の重量平均分子量が上記上限値以下であると、支持シートと保護膜形成フィルムとの密着性が向上できる。
【0162】
重合体成分のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-60~50℃、さらに好ましくは-50~40℃、特に好ましくは-40~30℃の範囲にある。
重合体成分のガラス転移温度が上記下限値以上であると、支持シートと保護膜との密着性が低減できる。重合体成分のガラス転移温度が上記上限値以下であると、支持シートと保護膜形成フィルムとの密着性が向上でき、また、ロール体にして保護膜形成フィルムが屈曲した際に割れ(ヒビ)が発生するリスクが低減される。
【0163】
粘着性、接着性および造膜性の観点から、重合体成分の好ましい含有量は、保護膜形成フィルム全重量100に対して、5~50質量部、10~45質量部、14~40質量部、18~35質量部である。
【0164】
重合体成分を構成する樹脂のガラス転移温度(Tg)は、以下に示すFoxの式を用いて計算から求めることができる。
1/Tg=(W1/Tg1)+(W2/Tg2)+…+(Wm/Tgm)(式中、Tgは重合体成分を構成する樹脂のガラス転移温度であり、Tg1,Tg2,…Tgmは重合体成分を構成する樹脂の原料となる各単量体のホモポリマーのガラス転移温度であり、W1,W2,…Wmは各単量体の質量分率である。ただし、W1+W2+…+Wm=1である。)
前記Foxの式における各単量体のホモポリマーのガラス転移温度は、高分子データ・ハンドブック、粘着ハンドブック又はPolymer Handbook等に記載の値を用いることができる。例えば、ホモポリマーのガラス転移温度は、メチルアクリレートは10℃、メチルメタクリレートは105℃、n-ブチルアクリレートは-54℃、2-エチルヘキシルアクリレートは-70℃、グリシジルメタクリレートは41℃、2-ヒドロキシエチルアクリレートは-15℃である。
【0165】
上記アクリル樹脂を構成するモノマーとしては、(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体が挙げられる。例えば、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレート、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。また、環状骨格を有する(メタ)アクリレート、具体的にはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレートなどが挙げられる。さらに官能基含有モノマーとして、水酸基を有するヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;その他、エポキシ基を有するグリシジル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。アクリル樹脂は、水酸基を有している構成単位を含有しているアクリル重合体が、後述する硬化性成分との相溶性が良いため好ましい。また、上記アクリル重合体は、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどが共重合されていてもよい。
【0166】
(硬化性成分)
硬化性成分は、例えば、熱硬化性成分(B)が用いられる。これにより、保護膜形成フィルムを、熱硬化性とすることができる。
【0167】
熱硬化性の保護膜形成フィルムを用いることにより、保護膜形成フィルムを厚膜化しても熱硬化が容易にできるので、保護性能の良好な、保護膜形成フィルムの厚膜化が可能となる。加熱硬化工程では、多数のワークの一括硬化が可能である。
【0168】
熱硬化性成分としては、熱硬化樹脂および熱硬化剤が用いられる。熱硬化樹脂としては、たとえば、エポキシ樹脂が好ましい。
【0169】
エポキシ樹脂としては、従来公知のエポキシ樹脂を用いることができる。エポキシ樹脂としては、具体的には、多官能エポキシ樹脂や、ビフェニル化合物、ビスフェノールAジグリシジルエーテルやその水添物、オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェニレン骨格型エポキシ樹脂など、分子中に2官能以上有するエポキシ化合物が挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0170】
熱硬化性成分の好ましい含有量は、保護膜形成フィルム全重量100に対して、1~75質量部であることが好ましく、2~60質量部であることがより好ましく、3~50質量部であることがさらに好ましく、例えば、4~40質量部であってもよく、5~35質量部であってもよく、6~30質量部であってもよい。
熱硬化樹脂の含有量が、上記下限値以上であると保護膜がワークとの十分な接着性を得ることができ、保護膜がワークを保護する性能が優れ、上記上限値以下であるとロール体として保管した際の保管安定性に優れる。
【0171】
熱硬化剤は、熱硬化樹脂、特にエポキシ樹脂に対する硬化剤として機能する。好ましい熱硬化剤としては、1分子中にエポキシ基と反応しうる官能基を2個以上有する化合物が挙げられる。その官能基としてはフェノール性水酸基、アルコール性水酸基、アミノ基、カルボキシル基および酸無水物などが挙げられる。これらのうち好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基、酸無水物などが挙げられ、さらに好ましくはフェノール性水酸基、アミノ基が挙げられる。
【0172】
フェノール系硬化剤の具体的な例としては、多官能フェノール樹脂、ビフェノール、ノボラック型フェノール樹脂、ジシクロペンタジエン系フェノール樹脂、ザイロック型フェノール樹脂、アラルキルフェノール樹脂が挙げられる。アミン系硬化剤の具体的な例としては、DICY(ジシアンジアミド)が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0173】
熱硬化剤の含有量は、熱硬化樹脂100質量部に対して、0.1~500質量部であることが好ましく、1~200質量部であることがより好ましい。熱硬化剤の含有量が、上記下限値以上であると十分に硬化し接着性が得られ、上記上限値以下であると保護膜の吸湿率が抑えられワークと保護膜の接着信頼性が向上する。
【0174】
保護膜形成用組成物(III-1)はエネルギー線硬化性成分を含有してもよい。エネルギー線硬化性成分としては、エネルギー線重合性基を含み、紫外線、電子線等のエネルギー線の照射を受けると重合硬化する低分子化合物(エネルギー線重合性化合物)を用いることができる。このようなエネルギー線硬化性成分として具体的には、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートあるいは1,4-ブチレングリコールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、オリゴエステルアクリレート、ウレタンアクリレート系オリゴマー、エポキシ変性アクリレート、ポリエーテルアクリレートおよびイタコン酸オリゴマーなどのアクリレート系化合物が挙げられる。このような化合物は、分子内に少なくとも1つの重合性二重結合を有し、通常は、重量平均分子量が100~30000、好ましくは300~10000程度である。エネルギー線硬化性成分の好ましい含有量は、保護膜形成フィルム全重量100に対して、1~30質量部であることが好ましく、5~25質量部であることがより好ましい。
【0175】
また、エネルギー線硬化性成分として、重合体成分の主鎖または側鎖に、エネルギー線重合性基が結合されてなるエネルギー線硬化型重合体を用いてもよい。このようなエネルギー線硬化型重合体は、重合体成分としての機能と、硬化性成分としての機能を兼ね備える。
【0176】
エネルギー線硬化型重合体の主骨格は特に限定はされず、重合体成分として汎用されているアクリル重合体であってもよく、またポリエステル、ポリエーテル等であっても良いが、合成および物性の制御が容易であることから、アクリル重合体を主骨格とすることが特に好ましい。
【0177】
エネルギー線硬化型重合体の主鎖または側鎖に結合するエネルギー線重合性基は、たとえばエネルギー線重合性の炭素-炭素二重結合を含む基であり、具体的には(メタ)アクリロイル基等を例示することができる。エネルギー線重合性基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基を介してエネルギー線硬化型重合体に結合していてもよい。
【0178】
エネルギー線硬化型重合体の重量平均分子量(Mw)は、1万~200万であることが好ましく、10万~150万であることがより好ましい。また、エネルギー線硬化型重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは-60~50℃、さらに好ましくは-50~40℃、特に好ましくは-40~30℃の範囲にある。
【0179】
エネルギー線硬化型重合体は、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を含有するアクリル樹脂と、該官能基と反応する置換基とエネルギー線重合性炭素-炭素二重結合を1分子毎に1~5個を有する重合性基含有化合物とを反応させて得られる。該官能基と反応する置換基としては、イソシアネート基、グリシジル基、カルボキシル基等が挙げられる。
【0180】
重合性基含有化合物としては、(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ-イソプロペニル-α,α-ジメチルベンジルイソシアネート、(メタ)アクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸等が挙げられる。
【0181】
アクリル樹脂は、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーまたはその誘導体と、これと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体とからなる共重合体であることが好ましい。
【0182】
ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を有する(メタ)アクリルモノマーまたはその誘導体としては、たとえば、ヒドロキシル基を有する2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸;エポキシ基を有するグリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレートなどが挙げられる。
【0183】
上記モノマーと共重合可能な他の(メタ)アクリル酸エステルモノマーまたはその誘導体としては、例えば、アルキル基の炭素数が1~18であるアルキル(メタ)アクリレート、具体的にはメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられ;環状骨格を有する(メタ)アクリレート、具体的にはシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、イソボルニルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、イミドアクリレートなどが挙げられる。また、上記アクリル樹脂には、酢酸ビニル、アクリロニトリル、スチレンなどが共重合されていてもよい。
【0184】
エネルギー線硬化型重合体を使用する場合であっても、前記したエネルギー線重合性化合物を併用してもよく、また重合体成分を併用してもよい。
【0185】
保護膜形成フィルムは、上記重合体成分及び硬化性成分に加えて下記成分を含むことができる。
【0186】
(着色剤)
保護膜形成フィルムは、着色剤を含有することが好ましい。保護膜形成フィルムに着色剤を配合することで、半導体装置を機器に組み込んだ際に、周囲の装置から発生する赤外線等を遮蔽し、それらによる半導体装置の誤作動を防止することができる。保護膜を形成された半導体装置や半導体チップでは、保護膜の表面に品番等が通常レーザーマーキング法により印字されるが、保護膜が着色剤を含有することで、保護膜のレーザー光によりマーキングされた部分とそうでない部分のコントラスト差が充分に得られ、視認性が向上する。着色剤としては、有機または無機の顔料および染料が用いられる。耐熱性等の観点から顔料が好ましい。顔料としては、カーボンブラック、酸化鉄、二酸化マンガン、アニリンブラック、活性炭等が用いられるが、これらに限定されることはない。その中でもハンドリング性や分散性の観点からカーボンブラックが特に好ましい。着色剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0187】
着色剤の含有量は、保護膜形成フィルムを構成する全固形分100質量部に対して、好ましくは0.05~35質量部、さらに好ましくは0.1~25質量部、特に好ましくは0.2~15質量部である。
【0188】
(硬化促進剤)
硬化促進剤は、保護膜形成フィルムの硬化速度を調整するために用いられる。硬化促進剤は、特に、熱硬化性成分(B)において、エポキシ樹脂と熱硬化剤とを併用する場合に好ましく用いられる。
【0189】
好ましい硬化促進剤としては、トリエチレンジアミン、ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノールなどの3級アミン類;2-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、2-フェニル-4-メチルイミダゾール、2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール、2-フェニル-4-メチル-5-ヒドロキシメチルイミダゾールなどのイミダゾール類;トリブチルホスフィン、ジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィンなどの有機ホスフィン類;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレートなどのテトラフェニルボロン塩などが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0190】
硬化促進剤は、硬化性成分100質量部に対して、好ましくは0.01~10質量部、さらに好ましくは0.1~5質量部の量で含まれる。硬化促進剤を上記範囲の量で含有することにより、高温度高湿度下に曝されても優れた接着特性を有し、厳しいリフロー条件に曝された場合であっても高い接着信頼性を達成することができる。
【0191】
(カップリング剤)
カップリング剤は、保護膜のワークに対する接着信頼性を向上させるために用いてもよい。また、カップリング剤を使用することで、保護膜形成フィルムを硬化して得られる保護膜の耐熱性を損なうことなく、その耐水性を向上することができる。
【0192】
カップリング剤としては、重合体成分、硬化性成分などが有する官能基と反応する基を有する化合物が好ましく使用される。カップリング剤としては、シランカップリング剤が望ましい。このようなカップリング剤としてはγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-6-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-6-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、ビス(3-トリエトキシシリルプロピル)テトラスルファン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、イミダゾールシランなどが挙げられる。これらは1種単独で、または2種以上混合して使用することができる。
【0193】
カップリング剤は、重合体成分および硬化性成分の合計100質量部に対して、通常0.1~20質量部、好ましくは0.2~10質量部、より好ましくは0.3~5質量部の割合で含まれる。カップリング剤の含有量が0.1質量部未満だと上記の効果が得られない可能性があり、20質量部を超えるとアウトガスの原因となる可能性がある。
【0194】
(充填材)
充填材を保護膜形成フィルムに配合することにより、硬化後の保護膜における熱膨張係数を調整することが可能となり、半導体チップに対して硬化後の保護膜の熱膨張係数を最適化することでワークと保護膜の接着信頼性を向上させることができる。充填材として、無機充填材が好ましい。また、硬化後の保護膜の吸湿率を低減させることも可能となる。
【0195】
好ましい無機充填材としては、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化鉄、炭化珪素、窒化ホウ素等の粉末、これらを球形化したビーズ、単結晶繊維およびガラス繊維等が挙げられる。これらのなかでも、シリカフィラーおよびアルミナフィラーが好ましい。上記無機充填材は単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。無機充填材の含有量は、保護膜形成フィルムを構成する全固形分100質量部に対して、1~85質量部とすることもでき、5~80質量部とすることもでき、10~75質量部とすることもでき、20~70質量部とすることもでき、30~66質量部とすることもできる。
無機充填材の含有量を、上記上限値以下とすることにより、ロール体にして保護膜形成フィルムが屈曲した際に割れ(ヒビ)が発生するリスクを低減することができ、上記下限値以上とすることにより、保護膜の耐熱性を向上させることができる。
【0196】
(光重合開始剤)
保護膜形成フィルムが、エネルギー線硬化性成分を含有する場合には、その使用に際して、紫外線等のエネルギー線を照射して、エネルギー線硬化性成分を硬化させる。この際、該組成物中に光重合開始剤を含有させることで、重合硬化時間ならびに光線照射量を少なくすることができる。
【0197】
このような光重合開始剤として具体的には、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4-ジエチルチオキサンソン、α-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、1,2-ジフェニルメタン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパノン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドおよびβ-クロールアンスラキノンなどが挙げられる。光重合開始剤は1種類単独で、または2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0198】
光重合開始剤の配合割合は、エネルギー線硬化性成分100質量部に対して0.1~10質量部含まれることが好ましく、1~5質量部含まれることがより好ましい。上記下限値以上であると光重合して満足な保護性能を得ることができ、上記上限値以下であると光重合に寄与しない残留物の生成を抑制して保護膜形成フィルムの硬化性を十分なものとすることができる。
【0199】
(架橋剤)
保護膜形成フィルムのワークとの粘着力および凝集性を調節するために、架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては有機多価イソシアネート化合物、有機多価イミン化合物などが挙げられる。
【0200】
上記有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
【0201】
有機多価イソシアネート化合物としては、たとえば2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、1,3-キシリレンジイソシアネート、1,4-キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-ジイソシアネート、3-メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-2,4’-ジイソシアネート、トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネートおよびリジンイソシアネートが挙げられる。
【0202】
上記有機多価イミン化合物としては、N,N’-ジフェニルメタン-4,4’-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン-トリ-β-アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン-トリ-β-アジリジニルプロピオネートおよびN,N’-トルエン-2,4-ビス(1-アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
【0203】
架橋剤は重合体成分およびエネルギー線硬化型重合体の合計量100質量部に対して通常0.01~20質量部、好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.5~5質量部の比率で用いられる。
【0204】
(汎用添加剤)
保護膜形成フィルムには、上記の他に、必要に応じて各種添加剤が配合されてもよい。
各種添加剤としては、粘着付与剤、レベリング剤、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、イオン捕捉剤、ゲッタリング剤、連鎖移動剤などが挙げられる。
【0205】
(溶媒)
保護膜形成組成物は、さらに溶媒を含有することが好ましい。溶媒を含有する保護膜形成組成物は、取り扱い性が良好となる。
前記溶媒は特に限定されないが、好ましいものとしては、例えば、トルエン、キシレン等の炭化水素;メタノール、エタノール、2-プロパノール、イソブチルアルコール(2-メチルプロパン-1-オール)、1-ブタノール等のアルコール;酢酸エチル等のエステル;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン;テトラヒドロフラン等のエーテル;ジメチルホルムアミド、N-メチルピロリドン等のアミド(アミド結合を有する化合物)等が挙げられる。
保護膜形成組成物が含有する溶媒は、1種のみでもよいし、2種以上でもよく、2種以上である場合、それらの組み合わせ及び比率は任意に選択できる。
【0206】
保護膜形成組成物が含有する溶媒は、組成物中の含有成分をより均一に混合できる点から、メチルエチルケトン等であることが好ましい。
【0207】
上記のような各成分からなる保護膜形成組成物を、塗布し、乾燥させて得られる保護膜形成フィルムは、粘着性と硬化性とを有し、未硬化状態ではワークに圧着する。圧着する際に、保護膜形成フィルムを加熱してもよい。そして硬化を経て最終的には耐衝撃性の高い保護膜を与えることができ、接着性にも優れ、厳しい高温度高湿度条件下においても十分な保護機能を保持し得る。なお、保護膜形成フィルムは単層構造であってもよく、また上記成分を含む層を1層以上含む限りにおいて多層構造であってもよい。
【0208】
保護膜形成フィルムの厚さは特に限定されないが、3~300μmとすることもでき、3~200μmとすることもでき、5~100μmとすることもでき、7~80μmとすることもでき、10~70μmとすることもでき、12~60μmとすることもでき、15~50μmとすることもでき、18~40μmとすることもでき、20~30μmとすることもできる。
保護膜形成フィルムの厚さが、上記下限値以上であると保護膜の保護性能を十分なものとすることができ、上記上限値以下であると費用を低減させることができる。
【0209】
○樹脂膜形成用組成物の製造方法
保護膜形成用組成物(III-1)等の樹脂膜形成用組成物は、これを構成するための各成分を配合することで得られる。
各成分の配合時における添加順序は特に限定されず、2種以上の成分を同時に添加してもよい。
溶媒を用いる場合には、溶媒を溶媒以外のいずれかの配合成分と混合してこの配合成分を予め希釈しておくことで用いてもよいし、溶媒以外のいずれかの配合成分を予め希釈しておくことなく、溶媒をこれら配合成分と混合することで用いてもよい。
配合時に各成分を混合する方法は特に限定されず、撹拌子又は撹拌翼等を回転させて混合する方法;ミキサーを用いて混合する方法;超音波を加えて混合する方法等、公知の方法から適宜選択すればよい。
各成分の添加及び混合時の温度並びに時間は、各配合成分が劣化し難い条件を考慮して、適宜調節すればよいが、温度は15~30℃であることが好ましい。
【0210】
◇樹脂膜形成用複合シートの製造方法
前記樹脂膜形成用複合シートは、上述の各層を対応する位置関係となるように積層し、必要に応じて、一部又はすべての層の形状を調節することで、製造できる。各層の形成方法は、先に説明した通りである。
【0211】
基材上に積層済みの粘着剤層の上に、さらに樹脂膜形成用組成物を塗工して、樹脂膜形成層を直接形成することが可能である。このように、基材上に積層済みのいずれかの層(以下、「第1層」と略記する)上に、新たな層(以下、「第2層」と略記する)を形成して、連続する2層の積層構造(換言すると、第1層及び第2層の積層構造)を形成する場合には、前記第1層上に、前記第2層を形成するための組成物を塗工して、必要に応じて乾燥させる方法が適用できる。
ただし、第2層は、これを形成するための組成物を用いて、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、この形成済みの第2層の前記剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面を、第1層の露出面と貼り合わせることで、連続する2層の積層構造を形成することが好ましい。このとき、前記組成物は、剥離フィルムの剥離処理面に塗工することが好ましい。剥離フィルムは、積層構造の形成後、必要に応じて取り除けばよい。
ここでは、粘着剤層上に樹脂膜形成層を積層する場合を例に挙げたが、例えば、粘着剤層上に樹脂膜形成層以外の層(フィルム)を積層する場合など、対象となる積層構造は、任意に選択できる。
【0212】
このように、樹脂膜形成用複合シートを構成する基材以外の層はいずれも、剥離フィルム上にあらかじめ形成しておき、目的とする層の表面に貼り合わせる方法で積層できるため、必要に応じてこのような工程を採用する層を適宜選択して、樹脂膜形成用複合シートを製造すればよい。
【0213】
なお、樹脂膜形成用複合シートは、通常、その支持シートとは反対側の最表層(例えば、樹脂膜形成層)の表面に剥離フィルムが貼り合わされた状態で保管される。したがって、この剥離フィルム(好ましくはその剥離処理面)上に、樹脂膜形成用組成物を塗工し、必要に応じて乾燥させることで、剥離フィルム上に樹脂膜形成層を形成しておき、この樹脂膜形成層の剥離フィルムと接触している側とは反対側の露出面上に残りの各層を上述のいずれかの方法で積層し、剥離フィルムを取り除かずに貼り合わせた状態のままとすることで、剥離フィルム付きの樹脂膜形成用複合シートが得られる。
【0214】
前記樹脂膜形成層が保護膜形成フィルムであるとき、前記支持シート及び前記保護膜形成フィルムを備える前記保護膜形成用複合シートが得られる。
【0215】
前記樹脂膜形成用複合シートは、枚葉状であってもよく、ロール状であることが好ましい。
【0216】
<<キット>>
本発明の実施形態に係るキットは、第1剥離フィルム、樹脂膜形成層及び第2剥離フィルムがこの順に積層された第一積層体と、前記樹脂膜形成層の貼着対象となるワーク及び前記樹脂膜形成層を支持するために用いられる、前記支持シートと、を備えている。
本実施形態のキット1の例を、以下、図面を参照しながら説明する。
【0217】
図6は、本実施形態のキット1の一例を模式的に示す断面図である。
本実施形態のキット1は、第1剥離フィルム151、樹脂膜形成層13及び第2剥離フィルム152がこの順に積層された第一積層体5と、樹脂膜形成層13の貼着対象となるワーク及び樹脂膜形成層13を支持するために用いられる支持シート10と、を備えており、支持シート10が、上述の本発明の実施形態に係る支持シートである。
【0218】
ここに示す樹脂膜形成層13は、その一方の面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)13a上に第1剥離フィルム151を備え、前記第1面13aとは反対側の他方の面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)13b上に第2剥離フィルム152を備えている。
【0219】
前記樹脂膜形成層が保護膜形成フィルムであるとき、前記支持シート10及び前記保護膜形成フィルムを備えるキット1を用いることにより、後述する樹脂膜付きチップの製造方法により、チップと、前記チップの裏面に設けられた保護膜と、を備える保護膜付きチップを製造できる。
【0220】
このような樹脂膜形成層13は、例えば、ロール状として保存するのに好適である。すなわち、前記第一積層体はロール状であることが好ましい。
【0221】
樹脂膜形成層13は、上述の樹脂膜形成用組成物を用いて形成できる。
【0222】
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、いずれも公知のものでよい。
第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152は、互いに同じものであってもよいし、例えば、樹脂膜形成層13から剥離させるときに必要な剥離力が互いに異なるなど、互いに異なるものであってもよい。
【0223】
図6に示す樹脂膜形成層13は、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152のいずれか一方が取り除かれ、生じた露出面が、ワーク(図示略)の裏面への貼付面となる。そして、第1剥離フィルム151及び第2剥離フィルム152の残りの他方が取り除かれ、生じた露出面が、支持シートの貼付面となる。
【0224】
図6においては、剥離フィルムが樹脂膜形成層13の両面(第1面13a、第2面13b)に設けられている例を示しているが、剥離フィルムは、樹脂膜形成層13のいずれか一方の面のみ、すなわち、第1面13aのみ、又は第2面13bのみに、設けられていてもよい。
【0225】
本実施形態のキット1は、樹脂膜形成層13及び支持シート10を併用することで、ワークへの樹脂膜形成層の貼付と、その後の支持シートの貼付を共にインラインプロセスで行うことができる。ここで、「インラインプロセス」とは、「1または複数の工程を行う装置を複数個(複数台)連結した装置内、又は同一の装置内で行うプロセスであり、複数の工程とその工程と工程を繋ぐ搬送を含み、1つの工程とその次の工程との間は、ワークを一枚ずつ搬送する」プロセスを云う。
【0226】
<<樹脂膜付きチップの製造方法>>
上述の本発明の実施形態に係る支持シート、前記支持シートを備える樹脂膜形成用複合シート、及び、前記支持シートを備えるキット1は、チップと、前記チップの裏面に設けられた樹脂膜と、を備える樹脂膜付きチップの製造方法に用いることができる。
【0227】
<製造方法1>
第一実施形態に係る製造方法は、チップと、前記チップの裏面に設けられた樹脂膜と、を備える樹脂膜付きチップの製造方法であって、
前記樹脂膜付きチップの製造方法は、ワークの裏面に、上述の本発明の実施形態に係る樹脂膜形成用複合シート中の樹脂膜形成層を貼付することにより、前記支持シート上に、前記樹脂膜形成層及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを作製する工程と、
前記第1積層複合シートの周縁部を固定用治具に貼付した状態で、前記第1積層複合シートを加熱して、前記樹脂膜形成層を硬化させ前記樹脂膜を形成することにより、前記支持シート上に、前記樹脂膜及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第2積層複合シートを作製する工程と、
前記第2積層複合シートを冷却し、その後、前記支持シート上で、前記第2積層複合シート中の前記ワークを分割し、前記樹脂膜を切断することにより、複数個の樹脂膜付きチップが前記支持シート上で固定されている第3積層複合シートを作製する工程と、
前記第3積層複合シート中の前記樹脂膜付きチップを前記支持シートから引き離すことによりピックアップする工程と、を有する。
以下、第一実施形態に係る製造方法を、本明細書においては、「製造方法1」と称することがある。
【0228】
図7A~
図7Eは、製造方法1を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図1に示す支持シート10を備える
図2の樹脂膜形成用複合シート101を用いた場合を例に挙げて、製造方法1について説明する。
【0229】
製造方法1の前記第1積層複合シートを作製する工程においては、
図7Aに示すように、ワーク9の裏面9bに、樹脂膜形成用複合シート101中の樹脂膜形成層13を貼付することにより、支持シート10上に、樹脂膜形成層13及びワーク9がこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シート501を作製する。ワーク9の裏面9bには、樹脂膜形成用複合シート101中の樹脂膜形成層13の第1面13aが貼付されている。
【0230】
樹脂膜形成用複合シート101中の樹脂膜形成層13のワーク9への貼付は、公知の方法で行うことができる。例えば、樹脂膜形成層13は、加熱しながらワーク9へ貼付してもよい。
【0231】
次いで、製造方法1の前記第2積層複合シートを作製する工程においては、第1積層複合シート501の周縁部を、治具用粘着剤層16を介してリングフレーム等の固定用治具18に貼付した状態で、第1積層複合シート501を加熱する(
図7B)。これにより、樹脂膜形成層13を硬化させて樹脂膜13’を形成することにより、
図7Cに示すように、支持シート10、樹脂膜13’及びワーク9がこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第2積層複合シート502を作製する。
【0232】
符号13a’は、樹脂膜13’のうち、樹脂膜形成層13の第1面13aであった面(本明細書においては、「第1面」と称することがある)を示している。符号13b’は、樹脂膜13’のうち、樹脂膜形成層13の第2面13bであった面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示している。
【0233】
樹脂膜形成層13の硬化は、樹脂膜形成層13が熱硬化性の場合であれば、樹脂膜形成層13を加熱することにより硬化させることができる。
【0234】
樹脂膜形成層13が保護膜形成フィルムである場合、
図7Aに示す樹脂膜形成層13に対して、支持シート10越しに(支持シート10を透過させて)レーザー照射してレーザーマーキングしてもよく、又は、
図7Cに示す樹脂膜13’に対して、支持シート10越しに(支持シート10を透過させて)レーザー照射してレーザーマーキングしてもよい。
【0235】
次いで、製造方法1の前記第3積層複合シートを作製する工程においては、第2積層複合シート502を冷却し、その後、
図7Dに示すように、支持シート10上で、第2積層複合シート502中のワーク9を分割し、樹脂膜13’を切断する。ワーク9は、分割により個片化され、複数個のチップ90となる。
【0236】
ワーク9の分割と、樹脂膜13’の切断は、公知の方法で行えばよい。例えば、ブレードダイシング、レーザー照射によるレーザーダイシング、又は研磨剤を含む水の吹き付けによるウォーターダイシング等の各ダイシングによって、ワーク9の分割と、樹脂膜13’の切断を、連続的に行うことができる。
樹脂膜13’は、その切断方法によらず、チップ90の外周に沿って切断される。
【0237】
このように、ワーク9を分割し、樹脂膜13’を切断することにより、チップ90と、チップ90の裏面90bに設けられた切断後の樹脂膜(本明細書においては、単に「樹脂膜」と称することがある)130’と、を備える、複数個の樹脂膜付きチップ901が得られる。符号130b’は、切断後の樹脂膜130’のうち、樹脂膜13’の第2面13b’であった面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示している。
【0238】
製造方法1の前記第3積層複合シートを作製する工程においては、以上により、これら複数個の樹脂膜付きチップ901が支持シート10上で固定されている第3積層複合シート503を作製する。
【0239】
次いで、製造方法1の前記ピックアップする工程においては、
図7Eに示すように、第3積層複合シート503中の樹脂膜付きチップ901を支持シート10から引き離すことによりピックアップする。
【0240】
本発明の実施形態に係る製造方法1は、支持シート10が上記の構成を有しているので、第1積層複合シート501の周縁部を固定用治具に貼付した状態で加熱し、その後、第2積層複合シート502を冷却しても、第3積層複合シート503の弛みの影響をなくし、ピックアップ装置のチップの認識性を向上させることができる。
【0241】
前記ピックアップする工程においては、樹脂膜付きチップ901中の樹脂膜130’の第2面130b’と、支持シート10中の粘着剤層12の第1面12aと、の間で剥離が生じる。
【0242】
ここでは、真空コレット等の引き離し手段7を用いて、樹脂膜付きチップ901を矢印P方向に引き離す場合を示している。なお、ここでは、引き離し手段7の断面表示を省略している。
樹脂膜付きチップ901は、公知の方法でピックアップできる。
【0243】
粘着剤層12がエネルギー線硬化性である場合には、前記ピックアップする工程においては、粘着剤層12に対してエネルギー線を照射することにより、粘着剤層12を硬化させて硬化物(図示略)を形成してから、樹脂膜付きチップ901を支持シート10から引き離してもよい。この場合には、前記ピックアップする工程においては、樹脂膜付きチップ901中の樹脂膜130’と、支持シート10中の粘着剤層12の硬化物と、の間で剥離が生じる。
この場合には、粘着剤層12の硬化物と樹脂膜130’との間の粘着力が、粘着剤層12の硬化物と基材11との間の粘着力よりも小さいため、樹脂膜付きチップ901を容易にピックアップできる。
【0244】
本明細書においては、エネルギー線硬化性粘着剤層がエネルギー線硬化した後であっても、基材と、エネルギー線硬化性粘着剤層の硬化物と、の積層構造が維持されている限り、この積層構造体を「支持シート」と称する。
【0245】
一方、粘着剤層12が非エネルギー線硬化性である場合には、そのまま粘着剤層12から樹脂膜付きチップ901を引き離せばよく、粘着剤層12の硬化が不要であるため、簡略化された工程で、樹脂膜付きチップ901をピックアップできる。
【0246】
前記ピックアップする工程においては、このような樹脂膜付きチップ901のピックアップを、目的とするすべての樹脂膜付きチップ901に対して行う。
【0247】
製造方法1においては、前記ピックアップする工程までを行うことにより、目的とする樹脂膜付きチップ901が得られる。
【0248】
ここまでの製造方法1の説明は、
図2に示す支持シート10を備える樹脂膜形成用複合シート101を用いた場合の製造方法1について説明したが、製造方法1においては、
図3~
図5に示す樹脂膜形成用複合シート102、樹脂膜形成用複合シート103又は樹脂膜形成用複合シート104など、樹脂膜形成用複合シート101以外の本実施形態の樹脂膜形成用複合シートを用いてもよい。
【0249】
<製造方法2>
第二実施形態に係る製造方法は、チップと、前記チップの裏面に設けられた樹脂膜と、を備える樹脂膜付きチップの製造方法であって、
ワークの裏面に、上述の本発明の実施形態に係るキット1中の樹脂膜形成層を貼付して、前記樹脂膜形成層及びワークが、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層フィルムを作製し、さらに、前記第1積層フィルム中の前記樹脂膜形成層に前記キット1中の支持シートの粘着剤層を貼付することにより、前記支持シート上に、前記樹脂膜形成層及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを作製する工程と、
前記第1積層複合シートの周縁部を固定用治具に貼付した状態で、前記第1積層複合シートを加熱して、前記樹脂膜形成層を硬化させ前記樹脂膜を形成することにより、前記支持シート上に、前記樹脂膜及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第2積層複合シートを作製する工程と、
前記第2積層複合シートを冷却し、その後、前記支持シート上で、前記第2積層複合シート中の前記ワークを分割し、前記樹脂膜を切断することにより、複数個の樹脂膜付きチップが前記支持シート上で固定されている第3積層複合シートを作製する工程と、
前記第3積層複合シート中の前記樹脂膜付きチップを前記支持シートから引き離すことによりピックアップする工程と、を有する。
以下、第二実施形態に係る製造方法を、本明細書においては、「製造方法2」と称することがある。
【0250】
図8、及び、
図7A~
図7Eは、製造方法2を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図1に示す支持シート10を備える
図6のキット1を用いた場合を例に挙げて、製造方法2について説明する。
【0251】
製造方法2の前記第1積層複合シートを作製する工程においては、初めに、ワーク9の裏面9bに、前記キット1中の樹脂膜形成層13を貼付することにより、
図8に示すように、樹脂膜形成層13及びワーク9が、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層フィルム601を作製する。この場合も、製造方法1の場合と同様に、ワーク9の裏面9bには、第一積層体5中の樹脂膜形成層13の第1面13aが貼付されている。
【0252】
ここでは、
図6に示すキット1の第一積層体5から第1剥離フィルム151を取り除いて、樹脂膜形成層13の第1面13aをワーク9の裏面9bに貼付した場合について示しているが、
図6に示すキット1の樹脂膜形成層13から第2剥離フィルム152を取り除いて、樹脂膜形成層13の第2面13bをワーク9の裏面9bに貼付してもよい。
図6に示すキット1の第一積層体5に、第1剥離フィルム151の側から円形の抜き刃を当て、第1剥離フィルム151を剥離させ、樹脂膜形成層13の円形の外側を第1剥離フィルム151と共に取り除いて、得られた円形の樹脂膜形成層13の第1面13aをワーク9の裏面9bに貼付してもよい。
【0253】
ワーク9への樹脂膜形成層13の貼付は、公知の方法で行うことができる。例えば、樹脂膜形成層13は、加熱しながらワーク9へ貼付してもよい。
【0254】
次いで、第1積層フィルム601中の樹脂膜形成層13にキット1中の支持シート10の粘着剤層12を貼付することにより、支持シート10上に、樹脂膜形成層13及びワーク9がこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シート501を作製する。
【0255】
第1積層フィルム601中の樹脂膜形成層13から第2剥離フィルム152を取り除く。そして、これにより新たに露出した、樹脂膜形成層13の第2面13bに、
図7Aに示すように、支持シート10の一方の面10aを貼付する。治具用粘着剤層16はその後に設けてもよい。
ここに示す支持シート10は、基材11と、基材11の一方の面11a上に設けられた粘着剤層12と、を備えて構成されており、支持シート10中の粘着剤層12が樹脂膜形成層13に貼付されている。粘着剤層12の樹脂膜形成層13側の第1面12aは、支持シート10の第1面10aと同じである。
【0256】
製造方法2において、第1積層複合シート501は、製造方法1における第1積層複合シート501と同じである。
【0257】
製造方法2において、前記第2積層複合シートを作製する工程は、製造方法1における第2積層複合シートを作製する工程の場合と同じ方法で行うことができる。
【0258】
製造方法2において、前記第3積層複合シートを作製する工程は、製造方法1における第3積層複合シートを作製する工程の場合と同じ方法で行うことができる。
【0259】
製造方法2において、前記ピックアップする工程は、製造方法1の前記ピックアップする工程と同じ方法で行うことができる。
【0260】
本発明の実施形態に係る製造方法2においても、支持シート10が上記の構成を有しているので、第1積層複合シート501の周縁部を固定用治具に貼付した状態で加熱し、その後、第2積層複合シート502を冷却しても、第3積層複合シート503の弛みの影響をなくし、ピックアップ装置のチップの認識性を向上させることができる。
【0261】
<製造方法3>
第三実施形態に係る製造方法は、チップと、前記チップの裏面に設けられた樹脂膜と、を備える樹脂膜付きチップの製造方法であって、
ワークの裏面に、上述の本発明の実施形態に係る樹脂膜形成用複合シート中の樹脂膜形成層を貼付するか、又は、ワークの裏面に、上述の本発明の実施形態に係るキット1中の樹脂膜形成層を貼付して、前記樹脂膜形成層及びワークが、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層フィルムを作製し、さらに、前記第1積層フィルム中の前記樹脂膜形成層に前記キット1中の支持シートの粘着剤層を貼付することにより、前記支持シート上に、前記樹脂膜形成層及び前記ワークがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを作製する工程と、
前記支持シート上で、前記第1積層複合シート中の前記ワークを分割し、前記樹脂膜形成層を切断することにより、複数個の樹脂膜形成層付きチップが前記支持シート上で固定されている第4積層複合シートを作製する工程と、
前記第4積層複合シートの周縁部を固定用治具に貼付した状態で、前記第4積層複合シートを加熱し、冷却して、前記第4積層複合シート中の前記樹脂膜形成層を硬化させ前記樹脂膜を形成することにより、前記支持シート上に、複数個の樹脂膜付きチップが前記支持シート上で固定されている第3積層複合シートを作製する工程と、
第3積層複合シート中の前記樹脂膜付きチップを前記支持シートから引き離すことによりピックアップする工程と、を有する。
以下、第三実施形態に係る製造方法を、本明細書においては、「製造方法3」と称することがある。
【0262】
図9A~
図9C、及び、
図7D~
図7Eは、製造方法3を模式的に説明するための断面図である。ここでは、
図1に示す支持シート10を備える
図2の樹脂膜形成用複合シート101を用いた場合を例に挙げて、製造方法3について説明する。
【0263】
製造方法3の前記第1積層複合シートを作製する工程においては、
図9Aに示すように、ワーク9の裏面9bに、樹脂膜形成用複合シート101中の樹脂膜形成層13を貼付することにより、支持シート10上に、樹脂膜形成層13及びワーク9がこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シート501を作製する。
図9Aにおける第1積層複合シート501は、
図7Aにおける第1積層複合シート501と同じである。
【0264】
次いで、製造方法3の前記第4積層複合シートを作製する工程においては、
図9Bに示すように、支持シート10上で、第1積層複合シート501中のワーク9を分割し、樹脂膜形成層13を切断する。ワーク9は、分割により個片化され、複数個のチップ90となる。
【0265】
ワーク9の分割と、樹脂膜形成層13の切断は、公知の方法で行えばよい。例えば、ブレードダイシング、レーザー照射によるレーザーダイシング、又は研磨剤を含む水の吹き付けによるウォーターダイシング等の各ダイシングによって、ワーク9の分割と、樹脂膜形成層13の切断は、その切断方法によらず、チップ90の外周に沿って切断される。
【0266】
このように、ワーク9を分割し、樹脂膜形成層13を切断することにより、チップ90と、チップ90の裏面90bに設けられた切断後の樹脂膜形成層(本明細書においては、単に「樹脂膜形成層」と称することがある)130と、を備える、複数個の樹脂膜形成層付きチップ902が得られる。符号130bは、切断後の樹脂膜形成層130のうち、樹脂膜形成層13の第2面13bであった面(本明細書においては、「第2面」と称することがある)を示している。
【0267】
製造方法3の前記第4積層複合シートを作製する工程においては、以上により、これら複数個の樹脂膜形成層付きチップ902が支持シート10上で固定されている第4積層複合シート504を作製する。
【0268】
次いで、製造方法3の前記第3積層複合シートを作製する工程においては、
図9Cに示すように、第4積層複合シート504の周縁部をリングフレーム等の固定用治具18に貼付した状態で、第4積層複合シート504を加熱し、冷却して、
図7Dに示すように、第4積層複合シート504中の樹脂膜形成層130を硬化させ前記樹脂膜130'を形成する。
【0269】
製造方法3において、第3積層複合シート503は、製造方法1における第3積層複合シート503と同じである。
【0270】
製造方法3において、前記ピックアップする工程は、製造方法1の前記ピックアップする工程と同じ方法で行うことができる。
【0271】
本発明の実施形態に係る製造方法3においても、支持シート10が上記の構成を有しているので、第4積層複合シート504の周縁部をリングフレーム等の固定用治具18に貼付した状態で加熱し、その後、第3積層複合シート503を冷却しても、第3積層複合シート503の弛みの影響をなくし、ピックアップ装置のチップの認識性を向上させることができる。
【0272】
ここまでの製造方法3の説明は、
図2に示す支持シート10を備える樹脂膜形成用複合シート101を用いた場合の製造方法3について説明したが、製造方法3においては、
図3~
図5に示す樹脂膜形成用複合シート102、樹脂膜形成用複合シート103又は樹脂膜形成用複合シート104など、樹脂膜形成用複合シート101以外の本実施形態の樹脂膜形成用複合シートを用いてもよい。
【0273】
製造方法3の前記第1積層複合シートを作製する工程においては、
図6に示すキット1を用いて、ワーク9の裏面9bに、前記キット1中の樹脂膜形成層13を貼付することにより、
図8に示すように、樹脂膜形成層13及びワーク9が、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層フィルム601を作製し、さらに、第1積層フィルム601中の樹脂膜形成層13にキット1中の支持シート10の粘着剤層12を貼付することにより、第1積層複合シート501を作製してもよい。
【0274】
◇基板装置の製造方法(樹脂膜付きチップの使用方法)
上述の製造方法により樹脂膜付きチップを得た後は、従来の樹脂膜付きチップに代えて、この樹脂膜付きチップを用いる点を除けば、従来の基板装置の製造方法と同じ方法で、基板装置を製造できる。
【0275】
例えば、前記樹脂膜形成層が保護膜形成フィルムであって、樹脂膜付きチップが保護膜付きチップである場合、前記保護膜形成フィルムを用いて得られた保護膜付きチップが支持シートからピックアップされ、樹脂膜付きチップ上の突状電極を、回路基板上の接続パッドに接触させることにより、前記突状電極と、前記回路基板上の接続パッドと、を電気的に接続するフリップチップ接続工程を有する製造方法が挙げられる。
【0276】
前記樹脂膜形成層がフィルム状接着剤であって、樹脂膜付きチップがフィルム状接着剤付きチップである場合、前記フィルム状接着剤を用いて得られた樹脂膜形成層付きチップが支持シートからピックアップされて得られる樹脂膜付きチップを、前記フィルム状接着剤を介して回路基板上に接着させる接続工程を有する製造方法が挙げられる。
【実施例】
【0277】
以下、具体的実施例により、本発明についてより詳細に説明する。ただし、本発明は、以下に示す実施例に、何ら限定されるものではない。
【0278】
[実施例1]
実施例1では、以下のようにして、
図1に示す支持シート10、及び、樹脂膜形成層が保護膜形成フィルムである、
図2に示す樹脂膜形成用複合シート101を製造した。
【0279】
(1)保護膜形成フィルムを含む第一積層体の作製
次の(a)~(g)の成分を混合し、固形分濃度が50質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、保護膜形成用組成物を調製した。
【0280】
(a)重合体成分:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(n-ブチルアクリレート10質量部、メチルアクリレート70質量部、グリシジルメタクリレート5質量部、および2-ヒドロキシエチルアクリレート15質量部を共重合して得た共重合体,重量平均分子量:80万,ガラス転移温度:-1℃)120質量部(固形分換算,以下同じ)
(b-1)熱硬化性成分:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製,製品名「jER828」,エポキシ当量184~194g/eq)60質量部
(b-2)熱硬化性成分:ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製,製品名「jER1055」,エポキシ当量800~900g/eq)10質量部
(b-3)熱硬化性成分:ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(大日本インキ化学工業株式会社製,製品名「エピクロンHP-7200HH」,エポキシ当量255~260g/eq)30質量部
(c)熱活性潜在性エポキシ樹脂硬化剤:ジシアンジアミド(株式会社ADEKA製:アデカハ-ドナーEH3636AS,活性水素量21g/eq)3質量部
(d)硬化促進剤:2-フェニル-4,5-ジヒドロキシメチルイミダゾール(四国化成工業株式会社製,製品名「キュアゾール2PHZ」)3質量部
(e)フィラー:シリカフィラー(株式会社アドマテックス製,製品名「SC2050MA」平均粒径:0.5μm)290質量部
(f)着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製,製品名「#MA650」,平均粒径:28nm)1.2質量部
(g)シランカップリング剤:(信越化学工業株式会社製,製品名「KBM-403」)2質量部
【0281】
厚さ38μmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1剥離フィルム(リンテック株式会社製,製品名「SP-PET381031」)と、厚さ38μmのPETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第2の剥離フィルム(リンテック株式会社製,製品名「SP-PET381130」)とを用意した。
【0282】
最初に、第1剥離フィルムの剥離面上に、前述の保護膜形成用組成物を、ナイフコーターにて塗布し、乾燥させて、厚さが25μmの保護膜形成フィルムを形成した。その後、保護膜形成フィルムに第2の剥離フィルムの剥離面を重ねて両者を貼り合わせ、第1剥離フィルムと、保護膜形成フィルム(厚さ:25μm)と、第2の剥離フィルムとからなる積層体を得た。この積層体は長尺であり、巻き取ってロール状の巻収体とした。
【0283】
(2)支持シートを含む第二積層体の作製
次の(h)および(i)の成分を混合し、固形分濃度が25質量%となるようにメチルエチルケトンで希釈して、粘着剤組成物を調製した。
【0284】
(h)粘着主剤:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(2-エチルヘキシルアクリレート60質量部、メタクリル酸メチル30質量部およびアクリル酸2-ヒドロキシエチル10質量部を共重合して得た共重合体,重量平均分子量:60万)100質量部
(i)架橋剤:トリメチロールプロパンのキシレンジイソシアネート付加物(三井武田ケミカル株式会社製,製品名「タケネートD110N」)20質量部
【0285】
剥離フィルムとして、厚さ38μmのPETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる剥離フィルム(リンテック株式会社製,製品名「SP-PET381031」)を用意した。
【0286】
支持シートの基材の材料として、荷重なし伸縮率がMD方向99%/CD方向99%、引張弾性率がMD方向370MPa/CD方向350MPa、融点138℃のポリプロピレンフィルム1(厚さ:80μm)を用意した。前記ポリプロピレンフィルム1に対して、MD方向のみに、温度120℃、1分間、2N/mの張力で、延伸処理を行い、基材を作製した。なお、荷重なし伸縮率、引張弾性率および融点の測定方法は、後述の試験例に示す通りである(以下同じ)。
【0287】
最初に、剥離フィルムの剥離面上に、前述の粘着剤組成物を、ナイフコーターにて塗布し、100℃で1分間乾燥させて、厚さが5μmの粘着剤層を形成した。その後、粘着剤層に上記基材を貼合し、基材および粘着剤層からなる実施例1の支持シートと、剥離フィルムとからなる第二積層体を得た。この積層体は長尺であった。その後、積層体を巻き取ってロール状の巻収体とした。
【0288】
(3)治具用粘着剤層16を含む第三積層体の作製
次の(j)および(k)の成分を混合し、固形分濃度が15質量%となるようにトルエンで希釈して、治具用粘着剤組成物を調製した。
【0289】
(j)粘着主剤:(メタ)アクリル酸エステル共重合体(ブチルアクリレート69.5質量部、メチルアクリレート30質量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート0.5質量部を共重合して得られた共重合体,重量平均分子量:50万)100質量部
(k)架橋剤:トリレンジイソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製,コロネートL)5質量部
【0290】
厚さ38μmのPETフィルムの片面にシリコーン系の剥離剤層が形成されてなる第1および第2の剥離フィルム(リンテック株式会社製,製品名「SP-PET381031」)と、芯材としてポリ塩化ビニルフィルム(オカモト株式会社製,厚さ:50μm)とを用意した。
【0291】
最初に、第1の剥離フィルムの剥離面上に、前述の治具用粘着剤組成物を、ナイフコーターにて塗布し、乾燥させて、厚さが5μmの第1の粘着剤層を形成した。その後、第1の粘着剤層に上記芯材を貼合し、芯材と、第1の粘着剤層と、第1の剥離フィルムとからなる積層体Aを得た。この積層体Aは長尺であり、巻き取ってロール状の巻収体とした。
【0292】
次に、第2の剥離フィルムの剥離面上に、前述の治具用粘着剤組成物を、ナイフコーターにて塗布し、乾燥させて、厚さが5μmの第2の粘着剤層を形成した。その後、第2の粘着剤層に上記積層体Aにおける芯材の露出した面を貼合し、第1の剥離フィルム/第1の粘着剤層/芯材/第2の粘着剤層/第2の剥離フィルムからなる第三積層体を得た。この積層体は長尺であり、巻き取ってロール状の巻収体とした。
【0293】
(4)第四積層体の作製
上記(1)で得られた第一積層体から第2剥離フィルムを剥離し、保護膜形成フィルムを露出させた。一方、上記(2)で得られた第二積層体から剥離フィルムを剥離して、粘着剤層を露出させた。その粘着剤層に、上記保護膜形成フィルムが接触するように、第一積層体と第二積層体とを貼り合わせ、基材および粘着剤層からなる支持シートと、保護膜形成フィルムと、第1の剥離フィルムとが積層されてなる第四積層体を得た。第四積層体は長尺であり、巻き取ってロール状の巻収体とした。
【0294】
(5)保護膜形成用複合シートの作製
上記(3)で得られた第三積層体から第2の剥離フィルムを剥離し、第1の剥離フィルムを残して、治具用粘着剤層の内周縁をハーフカットし、内側の円形部分を除去した。このとき、治具用粘着剤層の内周縁の直径は345mmとした。
【0295】
上記(4)で得られた第四積層体から第1の剥離フィルムを剥離し、露出した保護膜形成フィルムと、第三積層体において露出している治具用粘着剤層とを重ね合わせて圧着した。その後、第三積層体における第1の剥離フィルムを残して、保護膜形成用複合シートの外周縁をハーフカットし、外側の部分を除去した。このとき、保護膜形成用複合シートの外周縁の直径は370mmとした。
【0296】
このようにして、基材の上に粘着剤層(厚さ:5μm)が積層されてなる支持シートと、支持シートの粘着剤層側に積層された保護膜形成フィルムと、保護膜形成フィルムにおける支持シートとは反対側の周縁部に積層された環状の治具用粘着剤層と、治具用粘着剤層における保護膜形成フィルムとは反対側に積層された剥離フィルムとからなる実施例1の保護膜形成用複合シートを得た。保護膜形成用複合シートは、保護膜形成用複合シート中の剥離フィルムが一続きの長尺であり、剥離フィルムを支えにロール状に巻き取って巻収体とした。
【0297】
[実施例2~6、比較例1]
支持シートの基材の材料として、前記ポリプロピレンフィルム1(厚さ:80μm)を用意した。その後、前記ポリプロピレンフィルム1に対して、表1に示した方向、温度、時間、張力で、延伸処理を行ったこと以外、実施例1と同様にしてそれぞれの基材を作製し、支持シート及び保護膜形成用複合シートを製造した。
【0298】
[比較例2]
支持シートの基材の材料として、荷重なし伸縮率がMD方向100%/CD方向100%、引張弾性率がMD方向450MPa/CD方向440MPa、融点155℃のポリプロピレンフィルム2(厚さ:80μm)を用意した。前記ポリプロピレンフィルム2に対して、MD方向のみに、温度120℃、1分間、1N/mの張力で、延伸処理を行ったこと以外、実施例1と同様にして基材を作製し、支持シート及び保護膜形成用複合シートを製造した。
【0299】
[試験例1]<荷重なし伸縮率の測定>
実施例および比較例で用いた前記ポリプロピレンフィルム1及び前記ポリプロピレンフィルム2について、それぞれ、短辺がCD方向、長辺がMD方向となるよう短辺22mm、長辺110mmのサイズに裁断して、これをMD方向の試験片とした。長さ110mmのうち、長さ方向中央部の100mmを測定間距離として試験片にマーキングし、当該試験片の長さ方向の片方の端部(端部の5mm部分)に、質量2.2gのクリップを取り付けた。
【0300】
クリップを使用して、上記試験片をオーブン内に吊り下げた。上記オーブン内で、130℃、30%RHにて2時間加熱を行った後、オーブンから試験片を取り出し、23℃まで冷却した。その後、試験片のマーキングした測定間距離を再度測定し、下記の式に基づいて基材の荷重なし伸縮率(%)を算出した。
荷重なし伸縮率(%)=(加熱後の測定間距離/加熱前の測定間距離)×100
【0301】
また、実施例および比較例で用いた前記ポリプロピレンフィルム1及び前記ポリプロピレンフィルム2について、それぞれ、短辺がMD方向、長辺がCD方向となるよう短辺22mm、長辺110mmのサイズに裁断して、これをCD方向の試験片とした。このCD方向の試験片についても、上記と同様にして、荷重なし伸縮率(%)を算出した。
【0302】
[試験例2]<引張弾性率測定>
実施例および比較例で用いた前記ポリプロピレンフィルム1及び前記ポリプロピレンフィルム2について、それぞれ、15mm×140mmの試験片に裁断し、JIS K7127:1999に準拠して、23℃における引張弾性率(ヤング率)を測定した。具体的には、上記試験片を、引張試験機(株式会社島津製作所製,製品名「オートグラフAG-IS 500N」)にて、チャック間距離100mmに設定した後、200mm/minの速度で引張試験を行い、引張弾性率(MPa)を測定した。なお、引張弾性率の測定は、基材のMD方向およびCD方向の双方について行った。
【0303】
[試験例3]<融点の測定>
実施例および比較例で用いた前記ポリプロピレンフィルム1及び前記ポリプロピレンフィルム2の融点を、熱重量測定装置(パーキンエルマー社製,製品名「Pyris1」)を用いて測定した。具体的には、基材を50℃から250℃まで毎分10℃で加熱し、DSC(示差走査熱量分析)測定を行い、吸熱ピークが観測される温度を融点とした。
【0304】
[試験例4]<弛み評価>
実施例および比較例で製造した保護膜形成用複合シートから剥離フィルムを剥離し、得られた保護膜形成用複合シートを、
図7Aに示すように、シリコンウエハ(#6000研磨、直径:12インチ、厚さ:300μm、質量:50g)およびリングフレーム(ステンレス製,内径350mm)に貼付した。その状態で、シリコンウエハ面が水平になるようにリングフレームのみを保持して、130℃の環境下で2時間加熱して保護膜形成フィルムを硬化させて保護膜とした後、室温まで冷却した。
【0305】
そして、リングフレームの下側に位置している保護膜形成用複合シートの下端面の高さと、シリコンウエハの下側に位置している保護膜形成用複合シートの下端面の高さとの差(沈み込み量;mm)を測定し、これを弛みとして評価した。評価基準は以下の通りである。結果を表1に示す。
A(優良):1.2mm未満
B(良好):1.2mm以上、3.0mm未満
C(不良):3.0mm以上
【0306】
上記の結果、実施例1~6の保護膜形成用複合シートについては、評価がA(優良)であり、比較例1~2の保護膜形成用複合シートについては、評価がB(良好)であった。
【0307】
[試験例5]<熱機械分析(TMA)>
実施例および比較例の支持シートのMD方向を長辺方向として長さ20mm、幅5mmの短冊状試験片を切り出した。熱機械分析装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製「TMA-4000SA」)を用い、チャック間隔:15mm、荷重:0.8g、昇温速度:10℃/minで23℃から130℃まで昇温し、30分間保持した。その後、荷重:0.8g、冷却速度1℃/minで130℃から50℃まで冷却した。その間の変位量[μm]をサンプリングレート:1s-1で測定した。
【0308】
実施例および比較例の支持シートのCD方向を長辺方向として長さ20mm、幅5mmの短冊状試験片を切り出した。同様に、熱機械分析装置(ブルカー・エイエックスエス株式会社製「TMA-4000SA」)を用い、チャック間隔:15mm、荷重:0.8g、昇温速度:10℃/minで23℃から130℃まで昇温し、30分間保持した。その後、荷重:0.8g、冷却速度1℃/minで130℃から50℃まで冷却した。その間の変位量[μm]をサンプリングレート:1s-1で測定した。
【0309】
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)に対する、60℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A60→130)の比[(A60→130)/(A23→130)]を、次の手順で求めた。
【0310】
23℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A23→130)を、次式により求めた。
A23→130=(A130-A23)/107=A130/107[μm/℃]
【0311】
60℃から130℃まで昇温したときの1℃当たりの平均変位量(A60→130)を、次式により求めた。
A60→130=(A130-A60)/70[μm/℃]
【0312】
23℃における変位量(A23)=0μm
60℃における変位量(A60)[μm]
130℃における変位量(A130)[μm]
【0313】
130℃から50℃まで徐冷したときの1℃当たりの平均変位量(B130→50)を、次式により求めた。
B130→50=(B50-B130)/80[μm/℃]
【0314】
130℃から50℃まで徐冷したときの1℃当たりの平均変位量の絶対値(|B130→50|)を、次式により求めた。
|B130→50|=|B50-B130|/80[μm/℃]
【0315】
130℃、30分間保持後の変位量(B130)[μm]
徐冷後の50℃における変位量(B50)[μm]
【0316】
前記平均変位量(A23→130)から、前記平均変位量の絶対値(|B130→50|)を引いた値[(A23→130)-|B130→50|]を求めた。
【0317】
以上の熱機械分析(TMA)の評価結果を表1に示す。
【0318】
ここで、「流れ方向(MD)における[(A23→130)-|B130→50|]の値」から「垂直方向(CD)における[(A23→130)-|B130→50|]の値」を引いた値の絶対値を「MDとCDのバランス評価値」として求めた。計算結果を表1に示す。
MDとCDのバランス評価値は3.0以下が好ましく、2.5以下がより好ましく、2.0以下がさらに好ましく、1.8以下が特に好ましい。MDとCDのバランス評価値が小さいことによって、加熱、冷却の後に、支持シートや樹脂膜形成用複合シートが固定用治具から剥がれ、これを起点として脱落するおそれを低減することができる。
【0319】
[試験例6]<チップ認識性の評価>
(保護膜付き半導体チップの製造)
テープマウンター(リンテック株式会社製、製品名:Adwill(登録商標) RAD2500)により、シリコンウエハ(#6000研磨、直径:12インチ、厚さ:300μm、質量:50g)の研磨面に、保護膜形成用複合シートの保護膜形成フィルム側の面を貼付し、支持シート上に、保護膜形成フィルム及びシリコンウエハがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第1積層複合シートを形成し、前記第1積層複合シートの周縁部をウエハダイシング用リングフレーム(ステンレス製,内径350mm)に固定した(
図7A)。次いで、シリコンウエハ面が水平になるようにリングフレームのみを保持して、エスペック社製オーブンで130℃、2時間の条件で加熱し(
図7B)、保護膜形成フィルムを硬化させて、前記支持シート上に、保護膜及びシリコンウエハがこの順に、これらの厚さ方向に積層されて構成されている第2積層複合シートを形成し、前記第2積層複合シートを23℃まで冷却した(
図7C)。
【0320】
次いで、ダイシング装置(株式会社ディスコ製、DFD6361)を使用して、カット速度:30mm/s、回転数:40000rpmの条件で、支持シート上で、シリコンウエハ及び保護膜を3mm×3mmのチップサイズにダイシングして、支持シート上に複数個の保護膜付きチップが固定されている第3積層複合シートを形成した(
図7D)。ダイシングの際の切り込み量は、支持シートを20μm切り込むようにした。ダイシングブレードは株式会社ディスコ製、ZH05-SD2000-D1-90 CCを使用した。
ピックアップ・ダイボンディング装置(キャノンマシナリー社製「BESTEM D-510」)を用いて、オートトレース機能にてチップ認識を500チップ実施し、500チップの全てが認識可能であることをA(優良)と評価し、認識可能チップ数が500未満をB(不良)と評価した。結果を表1に示す。
【0321】
同様に、ダイシング装置(株式会社ディスコ製、DFD6361)を使用して、カット速度:30mm/s、回転数:40000rpmの条件で、支持シート上で、シリコンウエハ及び保護膜を3mm×1.5mmのチップサイズにダイシングして、支持シート上に複数個の保護膜付きチップが固定されている第3積層複合シートを形成(
図7D)。ダイシングの際の切り込み量は、支持シートを20μm切り込むようにした。
同様に、ピックアップ・ダイボンディング装置(キャノンマシナリー社製「BESTEM D-510」)を用いて、オートトレース機能にてチップ認識を500チップ実施し、500チップの全てが認識可能であることをA(優良)と評価し、認識可能チップ数が500未満をB(不良)と評価した。結果を表1に示す。
【0322】
【0323】
3mm×3mmのチップサイズにダイシングしてチップ認識性を評価したとき、比較例1~2では、いずれも、認識可能チップ数が500未満であり、B(不良)であったのに対して、実施例1~6では、いずれも、認識可能チップ数が500であり、A(優良)であった。
【0324】
3mm×1.5mmのチップサイズにダイシングしてチップ認識性を評価したとき、比較例1~2では、いずれも、認識可能チップ数が500未満であり、B(不良)であったのに対して、実施例2,4~6では、いずれも、認識可能チップ数が500であり、A(優良)であった。
【産業上の利用可能性】
【0325】
本発明は、半導体装置をはじめとする各種基板装置の製造に利用可能である。
【符号の説明】
【0326】
1…キット、5…第一積層体、
10,20…支持シート、10a…支持シートの一方の面(第1面)、
11…基材、12…粘着剤層、
13,23…樹脂膜形成層、13’…樹脂膜、13b’…樹脂膜の他方の面(第2面)、130…切断後の樹脂膜形成層、130’…切断後の樹脂膜、
101,102,103,104…樹脂膜形成用複合シート、
501…第1積層複合シート、502…第2積層複合シート、503…第3積層複合シート、504…第4積層複合シート、
16…治具用粘着剤層、15…剥離フィルム、15…剥離フィルム、151…第1剥離フィルム、152…第2剥離フィルム、18…固定用治具、
601…第1積層フィルム、
9…ワーク、9b…ワークの裏面、90…チップ、90b…チップの裏面、901…樹脂膜付きチップ、902…樹脂膜形成層付きチップ