(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】回転式伸縮装置
(51)【国際特許分類】
E05B 83/34 20140101AFI20241121BHJP
B60K 15/05 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
E05B83/34
B60K15/05 B
(21)【出願番号】P 2021066085
(22)【出願日】2021-04-08
【審査請求日】2023-11-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000124096
【氏名又は名称】株式会社パイオラックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三田 正樹
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 衛
【審査官】砂川 充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/038034(WO,A1)
【文献】独国特許出願公開第102011116067(DE,A1)
【文献】特開2016-117313(JP,A)
【文献】特開2010-48012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0045049(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05B 1/00-85/28
E05C 1/00-21/02
B60K 15/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内周が円形状をなした筒状部を有するケースと、
外周が円形状をなすと共に、前記筒状部内に配置されて、同筒状部に対して回転可能に且つ軸方向移動可能に保持されるロッドと、
該ロッドを前記筒状部の一端から突出する方向に付勢するバネ部材と、
前記ロッドの外周に形成されたカム突部と、
前記筒状部に形成され、前記カム突部が嵌入して、前記ロッドを回転させつつ軸方向移動させるカム溝とを有しており、
前記カム溝は、前記カム突部が嵌合して前記ロッドを前記筒状部の一端から所定長さ突出した状態に保持する突出端部と、前記ロッドが前記筒状部の一端から最大に引き込まれたときに、前記カム突部が当接する引き込み端部と、前記カム突部が前記突出端部に嵌合した状態で、前記ロッドが押し込まれたときに、前記カム突部を前記引き込み端部へと導く、引き込みガイド面とを有しており、
前記引き込みガイド面は、前記筒状部の軸心に対して所定の傾斜角度で傾斜した第1ガイド面と、前記第1ガイド面よりも前記引き込み端部側に配置されており、前記筒状部の軸心に対して前記第1ガイド面の傾斜角度よりも小さい傾斜角度で傾斜するか又は前記軸心に対して平行な第2ガイド面とを有しており、
前記カム突部は、前記第1ガイド面を摺動してから、前記第1ガイド面と前記第2ガイド面との境界を越えて、前記第2ガイド面に移り、前記第2ガイド面を摺動した後、前記引き込み端部に当接するように構成されていることを特徴とする回転式伸縮装置。
【請求項2】
前記第2ガイド面は、前記筒状部の軸心に対して傾斜しており、
前記引き込み端部には、前記突出端部側に向けて延びる当接面が、前記第2ガイド面と対向して設けられており、
前記カム突部は、前記第1ガイド面から前記第2ガイド面に移った後、前記当接面に当接するように構成されている請求項1記載の回転式伸縮装置。
【請求項3】
前記引き込み端部は、前記当接面と前記第2ガイド面との間に配置された底面を更に有しており、
前記カム突部は、前記第1ガイド面から前記第2ガイド面に移った後、前記底面に対して隙間を空けながら、前記当接面に当接するように構成されている請求項2記載の回転式伸縮装置。
【請求項4】
前記引き込み端部は、前記当接面と前記第2ガイド面との間に配置され、前記当接面側に近づくほど深くなるように傾斜した底面を更に有しており、
前記カム突部は、前記第1ガイド面から前記第2ガイド面に移った後、前記底面に当接するように構成されている請求項2記載の回転式伸縮装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、自動車のフューエルリッドの開閉構造に用いられ、押し込み動作によって回転しながら伸縮するように構成された、回転式伸縮装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、自動車のフューエルリッドには、開口部に対してリッドを閉じた状態で、リッドを受け止めて支持するためのロッドが配置されている。このロッドは、リッドの押し込み動作によって伸縮する構造とされていることが多い。
【0003】
このような構造を有する装置として、下記特許文献1には、筒状部を有する本体部材と、筒状部に対して軸方向スライド及び回転可能に保持される移動部材と、移動部材を付勢するバネ部材と、移動部材外周に形成された突部と、筒状部内周に形成され、突部が嵌入するカム溝とを有する、回転式伸縮装置が記載されている。前記カム溝は、第1嵌合溝と、第2嵌合溝と、第1ガイド溝と、第2ガイド溝とを有し、それらが筒状部内周に沿って周回するように配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記回転式伸縮装置では、第1嵌合溝に突部が嵌合した状態で、移動部材を押し込んでいくと、第1ガイド溝に突部がガイドされて、移動部材が回転しつつ押し込まれるようになっている。しかしながら、筒状部に対して移動部材を最大限押し込んだときに、その押し込み(引き込み)が完了したとの感覚(いわゆるクリック感)が乏しく、移動部材の押し込み作業完了が分かりにくかった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、筒状部に対するロッドの最大押し込み時におけるクリック感を増大させて、筒状部に対してロッドが最大に押し込まれたことを感知しやすい、回転式伸縮装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の回転式伸縮装置は、内周が円形状をなした筒状部を有するケースと、外周が円形状をなすと共に、前記筒状部内に配置されて、同筒状部に対して回転可能に且つ軸方向移動可能に保持されるロッドと、該ロッドを前記筒状部の一端から突出する方向に付勢するバネ部材と、前記ロッドの外周に形成されたカム突部と、前記筒状部に形成され、前記カム突部が嵌入して、前記移動部材を回転させつつ軸方向移動させるカム溝とを有しており、前記カム溝は、前記カム突部が嵌合して前記ロッドを前記筒状部の一端から所定長さ突出した状態に保持する突出端部と、前記ロッドが前記筒状部の一端から最大に引き込まれたときに、前記カム突部が当接する引き込み端部と、前記カム突部が前記突出端部に嵌合した状態で、前記ロッドが押し込まれたときに、前記カム突部を前記引き込み端部へと導く、引き込みガイド面とを有しており、前記引き込みガイド面には、前記筒状部の軸心に対して所定の傾斜角度で傾斜した第1ガイド面と、前記第1ガイド面よりも前記引き込み端部側に配置されており、前記筒状部の軸心に対して前記第1ガイド面の傾斜角度よりも小さい傾斜角度で傾斜するか又は前記軸心に対して平行な第2ガイド面とを有しており、前記カム突部は、前記第1ガイド面から前記第2ガイド面に移った後、前記引き込み端部に当接するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、突出端部にカム突部が嵌合して、筒状部の一端からロッドが所定長さ突出した状態で、バネ部材の付勢力に抗して、ロッドが押し込まれると、カム突部が引き込みガイド面に押圧され、同引き込みガイド面によりカム突部がガイドされながら、ロッドが周方向に回転しつつ押し込まれていく。この際、カム突部は、引き込みガイド面からの反力を受けるため、所定の押し込み荷重が作用する。
【0009】
そして、カム突部が、第1ガイド面から第2ガイド面に移った後、引き込み端部に当接するように構成されているので、ロッド押し込み時のクリック感を増大させることができる。すなわち、カム突部が、筒状部の軸心に対する傾斜角度が大きくて、ロッドの押し込み荷重が大きい第1ガイド面から、両ガイド面の境界を越えて、筒状部の軸心に対する傾斜角度が小さくて、ロッドの押し込み荷重が小さい第2ガイド面へと移動するので、ロッドの押し込み荷重が低下した後、カム突部が引き込み端部に衝突して当接することになる。このように、ロッド押し込み荷重の変動と、カム突部の引き込み端部への衝突とによって、ロッド押し込み時のクリック感を増大させることができるので、筒状部に対してロッドが最大に押し込まれたことを感知しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る回転式伸縮装置の、一実施形態を示す斜視図である。
【
図5】同回転式伸縮装置における、筒状部に対するロッドの動作状態を示しており、筒状部の一端からロッドが突出した状態の要部拡大説明図である。
【
図6】同回転式伸縮装置における、筒状部に対するロッドの動作状態を示しており、筒状部の一端からロッドが引き込まれた状態の要部拡大説明図である。
【
図7】同回転式伸縮装置を構成するカム溝の展開図である。
【
図8】同回転式伸縮装置において、カム溝とカム突部との関係を示す、要部拡大説明図である。
【
図9】同回転式伸縮装置において、カム突部の、第1ガイド面及び第2ガイド面に対する垂直荷重やガイド面から受ける反力等の関係を示す、概略説明図である。
【
図10】同回転式伸縮装置において、カム溝の変形例を示す、要部拡大説明図である。
【
図11】同回転式伸縮装置において、ロッドの係合片が開閉体の係合溝に係合していない状態の平面図である。
【
図12】同回転式伸縮装置において、ロッドの係合片が開閉体の係合溝に係合した状態の平面図である。
【
図13】同回転式伸縮装置において、ロッドのストローク量と、ロッド押し込み時の荷重との関係を示す、図表である。
【
図14】本発明に係る回転式伸縮装置の、他の実施形態を示しており、筒状部の一端からロッドが突出した状態の要部拡大説明図である。
【
図15】同回転式伸縮装置における、筒状部に対するロッドの動作状態を示しており、筒状部の一端からロッドが引き込まれた状態の要部拡大説明図である。
【
図16】同回転式伸縮装置において、カム溝とカム突部との関係を示す、要部拡大説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(回転式伸縮装置の一実施形態)
以下、図面を参照して、本発明に係る回転式伸縮装置の、一実施形態について説明する。
【0012】
この回転式伸縮装置は、例えば、
図1に示すように、フューエルリッド等の開閉体の開閉構造に用いられるものである。
図1に示すように、車体1aの燃料給油口周縁には、略円筒箱状をなした固定部材1が固定されている。また、固定部材1の開口部2には、ヒンジ部3を介して開閉体(フューエルリッド)5が開閉可能に取付けられている。更に、固定部材1の開口部2の、ヒンジ部3とは周方向反対側には、凹部3aが設けられており、この凹部3aに、この実施形態の回転式伸縮装置10(以下、単に「伸縮装置10」ともいう)が配置されている。
【0013】
また、開閉体5の内面側には、係合部6が設けられている。この係合部6は、一対の側壁部7,7と、それらの一端部どうしを連結した連結壁8とからなり、門形枠状をなしている。なお、一対の側壁部7,7の間には、係合溝9が設けられている。
【0014】
この実施形態の伸縮装置10は、上記のようなフューエルリッドの開閉構造に利用されるが、例えば、自動車の小物入れの開閉構造や、押し込むことで開閉する構造の家具や日用品等に利用してもよく、使用態様や設置場所等は特に限定されない。
【0015】
そして、
図2及び
図3に示すように、この実施形態の伸縮装置10は、第1本体部20及び第2本体部30からなり、内周が円形状をなした筒状部15を有するケース11と、外周が円形状をなすと共に、筒状部15内に配置されて、筒状部15に対して回転可能に且つ軸方向移動可能に保持されるロッド40と、このロッド40を筒状部15の一端15a(軸方向の先端)から突出する方向に付勢するバネ部材49と、ロッド40の外周に形成されたカム突部45と、筒状部15に形成され、カム突部45が嵌入して、ロッド40を回転させつつ軸方向移動させるカム溝60(
図5参照)とを有している。
【0016】
まず、ケース11の構造について詳述する。
【0017】
このケース11は、内周が円形状をなした筒状部15を、軸方向に分割するようにして互いに組付けられる、第1本体部20と第2本体部30とから構成されている。
図5は、に示すように、筒状部15は、同筒状部15を軸方向に分割してなる第1筒部23及び第2筒部33からなり、第1筒部23が第1本体部20側に設けられ、第2筒部33が第2本体部30側に設けられている。なお、本実施形態における
図5~10、及び、後述の他の実施形態における
図14~16においては、構造を分かりやすく説明するため、便宜上、各本体部20,30の各筒部23,33のみを図示している。
【0018】
図2に示すように、前記第1本体部20は、一方向に長く伸びる略長箱状をなしたベース部21を有しており、このベース部21の長手方向一端側に、略円筒状をなした筒状壁22が設けられている。この筒状壁22は、大径の筒状部分22aとそれよりも小径の筒状部分22bとが軸方向に連設された構成となっている。この筒状壁22の内側に、前記第1筒部23が一体形成されている。この筒状壁22も、前記筒状部15を構成する部材となっている。また、筒状壁22の筒状部分22aの一端(先端)側外周、及び、筒状部分22bの一端側外周には、ゴムや弾性エラストマー等からなる、キャップ17が装着されている。
【0019】
図4に示すように、この筒状壁22内には、第2本体部30の第2筒部33が挿入されるようになっている。また、ベース部21の、筒状壁22よりも長手方向他端側であって幅方向一側にも、ゴム等からなるキャップ19が装着されている。このキャップ19を外すと、図示しない長孔が露出するようになっており、この長孔からロックリテーナ55の操作ノブ58が挿出されるようになっている。更に、ベース部21の、第2本体部30との当接面側の外周縁部の、長手方向一端側であって幅方向一側には、係止凹部25が形成されている。
【0020】
一方、
図2に示すように、第2本体部30は、上記第1本体部20に対応して一方向に長く伸びる略長板状をなしたベース部31を有している。このベース部31の長手方向一端側には、前記第1筒部23と併せて、筒状部15を形成する有底円筒状の第2筒部33が設けられている。
【0021】
また、第2筒部33の外径は、前記第1筒部23の外径と同一で、かつ、第1本体部20の筒状壁22内に挿入可能な寸法となっている。そのため、
図3に示すように、第1本体部20と第2本体部30とが組付けられてケース11が構成された状態で、筒状壁22内に第2筒部33が挿入され、
図4や
図5に示すように、第1筒部23及び第2筒部33の軸方向に対向する端面に、カム溝60が形成されるようになっている。このカム溝60の詳細な構造については後述する。
【0022】
また、
図2に示すように、ベース部31の外周縁部の、長手方向一端側であって幅方向一側には、係止爪35が突設されている。この係止爪35が、第1本体部20の係止凹部25が係止すると共に、固定ピン36(
図4参照)によって、第1本体部20と第2本体部30とが組付けられて、ケース11が構成されるようになっている(
図3参照)。
【0023】
更に
図2や
図4に示すように、第2筒部33の底部の内面中央からは、円柱状をなしたバネ支持柱37が突設されている。このバネ支持柱37はバネ部材49内に挿入されて、同バネ部材49が傾きにくくなっている。
【0024】
図2に示すように、前記ロッド40は略円筒形状をなしている。このロッド40の軸方向先端中央からは、細径の柱状部41が突設されており、その先端には、長手方向両端が円弧状をなした帯状の係合片43が連設されている。このロッド40内には前記バネ部材49が挿入され、筒状部15の一端15aからロッド40が所定長さ突出するように付勢される。なお、ロッド40の軸方向基端側には、テーパ面41aが形成されている(
図4参照)。
【0025】
また、
図11や
図12に示すように、ロッド40の係合片43は、ロッド40の回転に伴って回転して角度が変わって、開閉体5の係合部6に係脱するようになっている。この実施形態の場合、固定部材1の開口部2から開閉体5が開いたときに、開閉体5に設けた係合部6の係合溝9の溝方向に沿った方向となるように、係合片43の長手方向が配置されるようになっており(
図11参照)、一方、固定部材1の開口部2に対して開閉体5を閉じたときに、係合溝9の溝方向に対して直交するように、係合片43の長手方向の角度が変わるようになっている(
図12参照)。
【0026】
更に、ロッド40の軸方向外周であって、基端寄りの箇所には、一対のカム突部45,45が外径方向に突出している。この実施形態の場合、ロッド40とは別体とされ、ステンレスやバネ鋼材等の金属線材を適宜屈曲して形成されてなる、図示しない突部形成部材を有しており、その両端に、一対のカム突部45,45が屈曲形成されている(
図4参照)。上記の突部形成部材がロッド40の外周に装着されることで、一対のカム突部45,45がロッド外周から突出するようになっている(
図4参照)。各カム突部45は、その外周が円形状をなしている。そして、これらのカム突部45,45が、筒状部15に形成したカム溝60内に嵌入して、ロッド40の押し込み動作に応じて、ロッド40を回転及び軸方向移動させる。なお、カム突部45はロッド40と一体形成してもよい。
【0027】
また、ロッド40の、一対のカム突部45,45よりも、軸方向基端側の外周であって、一対のカム突部45,45の突出方向に直交する位置には、四角孔状をなしたロック孔47,47が形成されている。このロック孔47には、ロックリテーナ55のロック突部57が挿脱し、ロッド40を押し込み状態にロックするか又はロック状態を解除する。
【0028】
また、
図4に示すように、ケース11内に、ウォームギヤ51を装着したモーター50が配置されている。更に、このモーター50に隣接した位置には、ロックリテーナ55が配置される。
図2や
図4に示すように、このロックリテーナ55は、一対のガイド片56a,56aを有する本体56と、本体56の一側面から突出したロック突部57と、本体56の一端面から略L字状に突出した操作ノブ58とを有している。また、本体56内には、ウォームギヤ51に歯合する歯合部56bが形成されている。
【0029】
そして、モーター50に、図示しない電力供給手段から、複数のバスバー53等を介して電力が供給されて、ウォームギヤ51が回転すると、ロッド40に対して、ロックリテーナ55が近接離反する方向にスライドして、ロック突部57が、ロッド40のロック孔47に係脱するようになっている。ロック突部57が、ロッド40のロック孔47内に入り込んで係合すると、ロッド40の回転及び軸方向移動が規制され、ロック孔47から抜け出ることで、ロッド40の回転及び軸方向移動が許容される。
【0030】
次に、カム突部45が嵌入するカム溝60の構造について、詳述する。
【0031】
図5~8に示すように、このカム溝60は、カム突部45が嵌合してロッド40を筒状部15の軸方向の一端15aから所定長さ突出した状態に保持する(
図5参照)突出端部61と、ロッド40が筒状部15の軸方向の一端15aから最大に引き込まれたときに、カム突部45が当接する引き込み端部63と、カム突部45が突出端部61に嵌合した状態で、ロッド40が押し込まれたときに、カム突部45を引き込み端部へと導く、引き込みガイド部65と、カム突部45を引き込み端部63から突出端部61へと導く、突出ガイド部67とを有している。
【0032】
また、このカム溝60は、カム突部45が突出端部61に嵌合した状態で、ロッド40が押し込まれたときに、カム突部45を引き込み端部へと導く、引き込みガイド面72を有している。更に、このカム溝60は、カム突部45が嵌合してロッド40を筒状部15内に引き込んだ状態に保持する(
図6参照)、引き込み保持部69を有している。
【0033】
また、前記突出ガイド部67は、カム突部45が引き込み保持部69に嵌合した状態から、ロッド40が筒状部15の一端15aから引き込まれたときに、カム突部45が当接するロック解除端部70と、カム突部45が引き込み保持部69に嵌合した状態で、ロッド40が押し込まれたときに、カム突部45をロック解除端部70へと導く、ロック解除ガイド部71とを有している。
【0034】
なお、以下の説明においては、筒状部15の軸方向の一端15aを、単に「一端」又は「軸方向一端」ともいい、筒状部15の軸方向の他端(一端15aとは反対側の端部)を、単に「他端」又は「軸方向他端」ともいう。また、筒状部15の周方向の一方向(
図7,8の矢印R参照)側の端部を、単に「周方向一端」ともいい、筒状部15の周方向の他方向側の端部を、単に「周方向他端」ともいう。
【0035】
図7には、カム溝60の展開図が示されているが、同図に示すように、引き込みガイド部65、突出ガイド部67、及びロック解除ガイド部71が、筒状部15の軸心Cに対して傾斜し且つ周方向の一方向(矢印R参照)に向けて延びた形状をなしている。
【0036】
また、この実施形態におけるカム溝60を構成する各部分(突出端部61、引き込みガイド部65、引き込み端部63、引き込み保持部69、ロック解除ガイド部71、突出ガイド部67)をそれぞれ一対ずつ有しており、
図7に示すように、突出端部61、引き込みガイド部65、引き込み端部63、引き込み保持部69、ロック解除ガイド部71、突出ガイド部67の後、次の突出端部61、引き込みガイド部65、・・・の順で、筒状部15の周方向に沿って周回するように配置されている。すなわち、この実施形態のカム溝60は、筒状部15の周方向全周に亘って連続して形成されているが、カム溝としては、筒状部の周方向の所定範囲に形成される態様であってもよい(これについては後述の実施形態で説明する)。
【0037】
なお、ロッド40は、バネ部材49によって筒状部15の一端15aから突出する方向に付勢されるが、その際には、ロッド40に設けた一対のカム突部45,45が、カム溝60の一対の突出端部61,61に嵌合するため、筒状部15の一端15aからロッド40全体が抜け出ないように、抜け止め保持されるようになっている。
【0038】
図5~7に示すように、突出端部61及び引き込み保持部69は、第1本体部20の第1筒部23の端面(第2筒部33に対向する端面)に形成された凹溝状をなしている。
図5に示すように、突出端部61は、筒状部15の一端15a側(ロッド40の突出方向側)に配置されている。また、
図6に示すように、引き込み保持部69は、筒状部15の軸方向の他端側に、突出端部61に対して周方向に位置ずれして配置されている。このように、突出端部61及び引き込み保持部69は、筒状部15の軸方向及び周方向に位置ずれして設けられている。なお、突出端部61は、筒状部15の他端側に向けて、筒状部15の軸方向に沿って所定長さで延びる、直線状部61aを有している。
【0039】
また、引き込みガイド部65は、その始端(延出方向基端)が、突出端部61の直線状部61aに連通すると共に、筒状部15の軸方向他端側に向けて傾斜しつつ延びている。そして、この引き込みガイド部65の、筒状部15の軸方向他端側に位置する面(第2筒部33の第1筒部23との対向面)が、引き込みガイド面72をなしている。すなわち、
図5に示すように、突出端部61にカム突部45が嵌合した状態で、バネ部材49の付勢力に抗して、ロッド40が筒状部15の一端15aから引き込まれる方向に押し込まれると、カム突部45が引き込みガイド面72に当接して、同カム突部45が引き込みガイド面72によりガイドされて、ロッド40が回転しながら筒状部15の一端15aから引き込まれるようになっている。なお、引き込みガイド部65の、筒状部15の一端15a側の面65a(引き込みガイド面72とは、軸方向で反対側の面)は、後述する第1ガイド面73の曲面形状に対応した曲面形状をなしている(
図7参照)。
【0040】
図7及び
図8に示すように、上記の引き込みガイド面72には、筒状部15の軸心Cに対して所定の傾斜角度で傾斜した第1ガイド面73と、第1ガイド面73よりも引き込み端部63側に配置されており、筒状部15の軸心Cに対して第1ガイド面73の傾斜角度よりも小さい傾斜角度で傾斜する第2ガイド面74とを有している。また、カム突部45は、第1ガイド面74と第2ガイド面74との境界75を越えた箇所で、第2ガイド面74に移った後、引き込み端部63に当接するように構成されている。
【0041】
上記引き込み端部63は、突出端部61側に向けて延びる当接面77が、第2ガイド面74と対向するように設けられている。また、引き込み端部63は、当接面77と第2ガイド面74との間に配置された底面78を更に有している。具体的には、この底面78は、引き込み端部63の当接面77の、筒状部15の軸方向他端側と、第2ガイド面74との間に設けられている。
図8に示すように、この実施形態における当接面77は、筒状部15の軸心Cに沿って平行に延びており、一方、底面78は、筒状部15の軸心Cに対して直交している。また、当接面77の軸方向他端と、底面78の周方向一端とは、R状部を介して互いに連結されている。なお、当接面77及び底面78は、筒状部15の軸心Cに対して傾斜していてもよい(底面78が傾斜する態様については、後述の変形例にて説明する)。
【0042】
図7及び
図8に示すように、前記第1ガイド面73は、突出端部61の直線状部61aの軸方向他端から、筒状部15の軸方向他端側に向けて且つ周方向一方向に向けて、筒状部15の軸方向他端側が凹状となるように、緩やかに湾曲しながら延びる曲面状の傾斜面をなしている。この第1ガイド面73は曲面状をなしているが、平坦なテーパ面状であってもよい。
【0043】
一方、
図8に示すように、第2ガイド面74は、前記第1ガイド面74との境界75から、筒状部15の軸方向他端側に向けて且つ周方向一方向に向けて、傾斜しながら延びる平坦なテーパ面状をなしており、その延出方向の先端部が、引き込み端部63の底面78の周方向他端に連結されている。この第2ガイド面74は平坦なテーパ面状をなしているが、曲面状をなしてもよい。
【0044】
図8に示すように、この実施形態の場合、第1ガイド面73と第2ガイド面74との境界75は、丸みを帯びたR状をなしている。
図9を併せて参照すると、この実施形態の場合、第1ガイド面73の延出方向の先端部73а、及び、第2ガイド面74の延出方向の基端部74аは、共に曲面状をなしており、両ガイド面73,74の端部73а,74аどうしが交わる部分が、境界75をなしている。ここでは、両ガイド面73,73の端部73а,74аは、共通する中心Oから同一の半径rとされた円弧面からなる。なお、第1ガイド面73の先端部73а及び第2ガイド面74の基端部74аが共に平坦面状の場合は、
図9に示すように、角ばった境界75´となる。
【0045】
上記のように、第1ガイド面73は曲面状をなしているが、この場合の、筒状部15の軸心Cに対する第1ガイド面73の傾斜角度は、第1ガイド面73の延出方向の先端部であって径方向外方(筒状部15の厚さ方向外側)における接線S1、すなわち、第1ガイド面73の、境界75を越えない位置の端部であって径方向外方における接線S1と、筒状部15の軸心Cとのなす角度となる。この際の、筒状部15の軸心Cに対する第1ガイド面73の傾斜角度を、「θ1」とする(
図8においては、筒状部15の軸心Cに平行な線分C´に対する第1ガイド面73の傾斜角度を意味する)。
【0046】
また、筒状部15の軸心Cに対する第2ガイド面74の傾斜角度、すなわち、筒状部15の軸心Cに対して、第2ガイド面74の径方向外方(筒状部15の厚さ方向外側)における接線S2との傾斜角度を、「θ2」とする(
図8においては、筒状部15の軸心Cに平行な線分C´に対する第2ガイド面74の傾斜角度を意味する)。なお、第2ガイド面が曲面状をなしている場合には、第2ガイド面の延出方向の基端部、すなわち、第2ガイド面の、変曲点に隣接し且つ変曲点を越えた位置の端部における接線と、筒状部15の軸心Cとのなす角度が、第2ガイド面の傾斜角度となる。また、第2ガイド面74は、筒状部15の軸心Cに対して平行であってもよいが、0°よりも大きく設定されていることが好ましい。
【0047】
そして、この伸縮装置10においては、カム突部45は、第1ガイド面73から第2ガイド面74に移った後、引き込み端部63に当接するように構成されている。なお、カム突部45は、第1ガイド面73と第2ガイド面74との境界を越えた箇所で、第2ガイド面74に移った後、引き込み端部63に当接するように構成されている、とも言える。
図9には、カム突部45の、第1ガイド面73及び第2ガイド面74に対する垂直荷重やガイド面から受ける反力等の関係を示す、概略説明図が記載されているが、同
図9を参照して説明する。
【0048】
図9に示すように、カム突部45が、第1ガイド面73又は第2ガイド面74に当接しつつ移動する場合(カム突部45が第1ガイド面73上又は第2ガイド面74上を摺動)する場合)、カム突部45から各ガイド面73,74に垂直方向に荷重Gが作用するが、この荷重Gは、各ガイド面73,74の接線方向に平行な分力F1と、同分力F1に直交する分力F2とに分解される。この場合、第2ガイド面74における分力F1は、第1ガイド面73における分力F1よりも大きいため、カム突部45の摺動速度は、第1ガイド面73上を摺動する場合には低く、第2ガイド面74上を摺動する場合に高くなる。一方、第2ガイド面74における分力F2は、第1ガイド面73における分力F2よりも大きいため、カム突部45の各ガイド面73,74から受ける反力F3(分力F2とは反対方向の力であり、この反力F3がロッド40に作用する押し込み荷重の一因となる)については、第2ガイド面74からの反力F3の方が、第1ガイド面73からの反力F3よりも小さくなる。
【0049】
また、この実施形態においては、
図8に示すように、カム突部45は、第1ガイド面73と第2ガイド面74との境界75を越えた箇所で、第2ガイド面74に移った後、引き込み端部63の底面78に対して隙間CLを空けながら、引き込み端部63の当接面77に当接するように構成されている。
【0050】
図6~8に示すように、引き込み保持部69は、上記引き込み端部63に対して、筒状部15の一端15a側に位置ずれし且つ周方向の一方側に位置ずれして設けられている。また、
図6及び
図7に示すように、引き込み保持部69と、引き込みガイド部65の面65aの延出方向先端との間には、筒状部15の一端15a側に向けて且つ周方向一方向に向けて傾斜する、傾斜面69aが形成されている。
【0051】
次に、突出ガイド部67の構造について詳述する。
【0052】
図7に示すように、この突出ガイド部67は、その始端側(延出方向基端)に、ロック解除ガイド部71が配置されていると共に、このロック解除ガイド部71の延出方向先端側にロック解除端部70が配置されており、更に、このロック解除端部70及び前記引き込み保持部69に隣接した箇所から、筒状部15の一端15a側に向けて且つ周方向一方向に向けて、やや湾曲した曲面状をなすように傾斜しつつ延びている。
【0053】
また、突出ガイド部67の、筒状部15の一端15a側の面(ここでは第1筒部23の、第2筒部33との対向面)に、突出ガイド面67aが配置されている。この突出ガイド面67aに、引き込み保持部69から抜け出したカム突部45が当接して、バネ部材49の付勢力により押されたロッド40が回転しながら筒状部15の一端15aから突出するようになっている。なお、突出ガイド面67aの、筒状部15の軸方向の他端側の面67bは、突出ガイド面67aの曲面形状に対応した曲面形状をなしている(
図7参照)。
【0054】
更に、突出ガイド部67のロック解除端部70は、上記引き込み端部63の当接面77及び底面78と同様の、当接面87と底面88とを有している。これらの当接面87及び底面88は、基本的には引き込み端部63の両面77,78と同様であるので、その構造は、段落0041の記載に依るものとして、詳細な説明は省略する。
【0055】
また、ロック解除ガイド部71は、上記引き込みガイド部65の第1ガイド面73、第2ガイド面74、境界75と同様の、第1ガイド面83、第2ガイド面84、境界85を有している。
【0056】
これらの第1ガイド面83、第2ガイド面84、境界85は、基本的には、引き込み端部63の両面73,74や境界75と同様であるので、その構造は、段落0040~0046の記載に依るものとして、詳細な説明は省略する。ただし、第1ガイド面83は、平坦なテーパ面状をなしている点で、引き込みガイド部65の第1ガイド面73と異なっている。また、この第1ガイド面83は、引き込み端部63の当接面77の、軸方向一端に、R状部を介して連結されている。
【0057】
また、上記の第1ガイド面83、第2ガイド面84、境界85についても、引き込みガイド部65と同様に、カム突部45は、第1ガイド面83から第2ガイド面84に移った後、ロック解除端部70に当接するように構成されている。なお、カム突部45は、第1ガイド面83と第2ガイド面84との境界85を越えた箇所で、第2ガイド面74に移った後、ロック解除端部70に当接するように構成されている、とも言える。これについての基本的な構造は、段落0047~0050の記載に依るものとして、詳細な説明は省略する。
【0058】
図10には、引き込み端部63の変形例が示されている。この変形例の場合、引き込み端部63を構成する底面78Aが、当接面77側に近づくほど深くなるように傾斜した形状をなしている。すなわち、底面78Aの周方向他端(第2ガイド面74の軸方向他端に連結した端部)が周方向一端よりも、筒状部15の軸方向一端側に配置されており、この周方向他端から、筒状部15の軸方向他端側に向けて且つ周方向一方向に向けて傾斜して延びている。
【0059】
以上説明した回転式伸縮装置を構成する各部材、すなわち、ケースや、第1本体部、第2本体部、ロッド、モーター、ウォームギヤ、ロックリテーナ等の形状や構造は、上記態様に限定されるものではない。また、カム溝としては、少なくとも、突出端部と、引き込み端部と、引き込みガイド部と、突出ガイド部とを有しており、引き込みガイド部に、第1ガイド面と、第2ガイド面と、変曲点とが設けられており、引き込み部に当接面が設けられた構造であればよく、各部分の形状や構造、傾斜角度等は、特に限定されるものではない。
【0060】
(作用効果)
次に、上記構造からなる伸縮装置10の作用効果について説明する。
【0061】
図5に示すように、ロッド40のカム突部45が、カム溝60の突出端部61に嵌合した状態では、筒状部15の一端15aからロッド40が所定長さ突出されている。
図11に示すように、この状態でのロッド40の係合片43は、係合部6の係合溝9を通過して、開閉体5の内面側に当接しており、開閉体5は固定部材1の開口部周縁に対して開閉可能となっている。
【0062】
上記状態から開閉体5を閉じると、係合片43が押圧されて、ロッド40がバネ部材49の付勢力に抗して、筒状部15の奥側に押し込まれていき、カム突部45が、突出端部61の直線状部61aを通過して、引き込みガイド部65の第1ガイド面73に当接し、同第1ガイド面73に押圧されてガイドされ、ロッド40が回転しながら筒状部15内に引き込まれる。
【0063】
更に、ロッド40が押し込まれると、カム突部45が、第1ガイド面73の延出方向先端部に当接した後(
図8の紙面右側のカム突部45参照)、境界75に当接する(
図8の紙面中央のカム突部45参照)。そして、カム突部45が、境界75を乗り越えると、第2ガイド面74に当接すると共に、引き込み端部63の当接面77に当接する(
図8の紙面中央のカム突部45参照)。それによって、ロッド40のそれ以上の押し込みが規制される(押し込みストッパーとなる)。
【0064】
その後、バネ部材49の付勢力によって、ロッド40が筒状部15の一端15a側に再度付勢されて、カム突部45が、引き込み保持部69の傾斜面69aに当接してガイドされる。そして、引き込み保持部69にカム突部45が嵌合することで、ロッド40が筒状部15の一端15aから引き込まれた状態に保持される(
図6参照)。それと共に、
図12に示すように、ロッド40の係合片43が、開閉体5の係合部6の係合溝9の溝方向に対して、その長手方向が直交するので、固定部材1の開口部周縁に対して開閉体5を閉じた状態にロックすることができる。
【0065】
上記状態で、モーター50によりウォームギヤ51を所定方向に回転させ、ロックリテーナ55のロック突部57を、ロッド40のロック孔47に係合させることによって、ロッド40を更に押し込むことができなくなる。その結果、カム突部45をカム溝60の引き込み保持部69から外すことができなくなり、開閉体5を閉じた状態にロックすることができる。一方、ウォームギヤ51を上記とは逆方向に回転させて、ロックリテーナ55のロック突部57を、ロッド40のロック孔47から外すことで、ロッド40の押し込み不能状態が解除され、開閉体5のロック状態が解除される。
【0066】
そして、上記のような、開閉体5のロック解除状態から、ロッド40がバネ部材49の付勢力に抗して押し込まれると、カム突部45が、引き込み保持部69から外れ、ロック解除ガイド部71の第1ガイド面83に当接し、同第1ガイド面83に押圧されてガイドされ、ロッド40が回転しながら筒状部15内に引き込まれていく。
【0067】
更に、ロッド40が押し込まれると、カム突部45が、第1ガイド面83の延出方向の先端部83аに当接した後、境界85に当接する。そして、カム突部45が、境界85を乗り越えて、第2ガイド面84に移った後、カム突部45が、ロック解除端部70の当接面87に当接する。それによって、ロッド40のそれ以上の押し込みが規制される。
【0068】
その後、バネ部材49の付勢力によって、ロッド40が筒状部15の一端15a側に再度押圧されて、カム突部45が、突出ガイド部67の突出ガイド面67aに当接してガイドされ、ロッド40が回転しながら筒状部15の一端15aから突出していく。そして、突出端部61にカム突部45が嵌合することで、ロッド40が筒状部15の一端15aから突出した状態に保持される(
図5参照)。また、
図11に示すように、係合片43が、開閉体5の係合部6の係合溝9の溝方向に沿った方向となるので、開閉体5の閉じ状態のロックが解除される。このとき、ロッド40によって開閉体5が押されて、固定部材1の開口部から開閉体5を所定高さ持ち上げるので(リフター動作)、開閉体5を手動で開くことができる。
【0069】
そして、この伸縮装置10においては、上述したように、突出端部61にカム突部45が嵌合して、筒状部15の一端15aからロッド40が所定長さ突出した状態で、バネ部材49の付勢力に抗して、ロッド40が押し込まれると、カム突部45が引き込みガイド面72の第1ガイド面73に押圧され、同第1ガイド面73によって、カム突部45がガイドされながら、ロッド40が周方向に回転しつつ押し込まれていく。この際、カム突部45は、第1ガイド面73からの反力F3を受けるため(
図9参照)、所定の押し込み荷重が作用する。
【0070】
その後、カム突部45が、第1ガイド面73から第2ガイド面74に移ったとき(カム突部45が、第1ガイド面73から境界75を越えて、第2ガイド面74に移ったとき)、すなわち、筒状部15の軸心Cに対する傾斜角度θ1が大きく、ロッド40の押し込み荷重が大きい第1ガイド面73から、境界75を越えて、筒状部15の軸心Cに対する傾斜角度θ2が小さくて、ロッド40の押し込み荷重が小さい第2ガイド面74へと移動したときは、ロッド40の押し込み荷重が低下した後、カム突部45が引き込み端部63(ここでは引き込み端部63の当接面77)に衝突して当接することになる。そのため、ロッド40の押し込み荷重の変動と、カム突部45の当接面77への衝突とによって、ロッド押し込み時のクリック感を増大させることができる。
【0071】
これについて
図13を参照して説明する。
図13の図表には、横軸を、ロッド40を押し込んだときのストローク量とし、縦軸を、ロッド押し込み時に、操作者が受ける荷重とし、その関係が示されている。また、
図13中、符号「L1」は、カム突部45が第1ガイド面73に当接しつつ移動した状態(摺接して移動するとも言える)を示しており、符号「P1」は、カム突部45が境界75を超えたときの状態を示しており、符号「L2」は、カム突部45が第2ガイド面74に当接しつつ移動した状態を示しており、符号「P2」は、カム突部45が当接面77に衝突した状態を示している。
【0072】
同
図13に示すように、カム突部45が、第1ガイド面73に当接してガイドされている際には、ロッド40の押し込みストロークの増大に従って、荷重が増大する(L1参照)。そして、カム突部45が境界75を越えると(P1参照)、カム突部45が第2ガイド面74に当接することから荷重が急減する(L2参照)。すなわち、段落0045,0046で説明したように、第2ガイド面74は第1ガイド面73よりも急な勾配であるため、ガイド面に沿った方向の力は大きくなるが(第1ガイド面73に沿った方向の力F1<第2ガイド面74に沿った方向の力F1)、ガイド面から受ける反力F3は小さくなることから(第1ガイド面73からの反力F3>第2ガイド面74からの反力F3)、荷重が急減するようになっている。荷重急減後、すぐにカム突部45が当接面77に衝突することで(P2参照)、今度は荷重が急増するようになっている(
図13の符号「L3」参照)。
【0073】
上記のような、ロッド押し込み荷重の変動と、カム突部45の当接面77への衝突とによって、ロッド押し込み時のクリック感を増大させることができるようになっている。その結果、筒状部15に対してロッド40が最大に押し込まれたこと、言い換えると、筒状部15の一端15aからロッド40が最大に引き込まれたことを、開閉体5を押した者が感知しやすくなるので、ロッド40の押し込み操作の完了を把握しやすくすることができる。
【0074】
また、この実施形態においては、第2ガイド面74は、筒状部15の軸心Cに対して傾斜しており、引き込み端部63は、突出端部61側に向けて延びる当接面77が、第2ガイド面74と対向して設けられており、カム突部45は、第1ガイド面73から第2ガイド面74に移った後、当接面77に当接するように構成されている。
【0075】
上記態様によれば、カム突部45が第1ガイド面73から第2ガイド面74に移った後、当接面77に当接しようとする際に、当接面77に当接しやすくなり(第2ガイド面74が傾斜しており、第2ガイド面74にカム突部45が当接したときに、当接面77へと向かう斜め方向の反力F3が作用するため)、ロッド押し込み時のクリック感をより増大させることができる。
【0076】
また、この実施形態においては、
図8に示すように、カム突部45は、第1ガイド面73から第2ガイド面74に移った後、引き込み端部63の底面78に対して隙間CLを空けながら、引き込み端部63の当接面77に当接するように構成されている。すなわち、カム突部45は、第2ガイド面74に移って、当接面77に当接した状態において、底面78に対して隙間CLが設けられているので、カム突部45が引き込み端部63内に嵌まり込みにくくして、引き込み端部63内からカム突部45を抜き出しやすくすることができ、ロッド40を筒状部15の一端15аから突出させやすくすることができる。
【0077】
更に、この実施形態においては、
図8に示すように、ロック解除ガイド部71の、筒状部15の軸方向の他端側の面にも、第1ガイド面83と、第2ガイド面84と、境界85と設けられている。そのため、
図6に示すように、カム突部45が引き込み保持部69に嵌合した状態から、ロッド40がバネ部材49の付勢力に抗して押し込まれ、カム突部45が、第1ガイド面83から第2ガイド面84に移った後において、上述した引き込みガイド部65と同様に、ロッド40の押し込み荷重が低下すると共に、カム突部45がロック解除端部70の当接面87に衝突して当接することになる。その結果、ロッド40の押し込み荷重の変動と、カム突部45の当接面87への衝突とによって、ロッド40を筒状部15内に引き込まれた状態から、筒状部15の一端15aから再び突出させる際の、クリック感を増大させることができる。
【0078】
また、
図9に示す変形例のように、引き込み端部63を構成する底面78Aが、当接面77側に近づくほど深くなるように傾斜した形状をなしている場合には、次のような作用効果を奏する。
【0079】
すなわち、この変形例の場合は、カム突部45が、第1ガイド面73から第2ガイド面75に移った後、引き込み端部63の底面78に当接すると、この底面78からの反力が、カム突部45に作用するため、カム突部45を当接面77に当接させやすくすることができ、ロッド押し込み時のクリック感を更に増大させることができる。
【0080】
(回転式伸縮装置の、他の実施形態)
図14~16には、本発明に係る回転式伸縮装置の、他の実施形態が示されている。なお、前記実施形態と実質的に同一部分には同符号を付してその説明を省略する。
【0081】
この実施形態の回転式伸縮装置は、カム溝60Aの形状が異なっている。なお、
図14~16においては、便宜上、筒状部15やロッド40のみを図示している。
【0082】
図14及び
図15に示すように、このカム溝60Aは、筒状部15の一端15a側に形成された突出端部61と、筒状部15の他端側に形成された引き込み端部63と、筒状部15の軸心Cに対して傾斜しつつ所定の周方向に湾曲して延びる引き込みガイド部65とからなる、略J字状をなした一対のものからなる。
【0083】
また、
図16に示すように、引き込みガイド部65には、前記実施形態と同様に、第1ガイド面73、第2ガイド面74、境界75が設けられており、引き込み端部63には、当接面77及び底面78が設けられている。なお、この実施形態のカム溝60Aには、前記実施形態のような、突出ガイド部67や、引き込み保持部69、ロック解除端部70、ロック解除ガイド部71等は設けられていない。更に、この実施形態の回転式伸縮装置においても、カム突部45は、第1ガイド面73から第2ガイド面74に移った後、引き込み端部63に当接するように構成されている(
図15参照)。
【0084】
なお、実施形態の回転式伸縮装置では、ロックリテーナ55とモーター50との間に、付勢バネが介装されており、ロックリテーナ55が、ロッド40に近接する方向に付勢されている。
【0085】
そして、ロッド40のカム突部45が、カム溝60Aの突出端部61に嵌合して、ロッド40が筒状部15の一端15aから突出した状態で(
図14参照)、ロッド40がバネ部材49の付勢力に抗して押し込まれると、カム突部45が引き込みガイド部65によりガイドされて、ロッド40が押し込まれつつ回転し、カム突部45が引き込み端部63に至ったときに、ロックリテーナ55のロック突部57が、ロッド40のロック孔47に係合して、その引き込み状態が保持される。すなわち、この実施形態においては、ロッド40は約90度の回転動作が往復してなされるようになっている。
【0086】
そして、この実施形態においても、前記実施形態と同様に、第1ガイド面73、第2ガイド面74、境界75、当接面77が設けられていることから、ロッド押し込み時のクリック感を増大させることができるようになっている。
【0087】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で、各種の変形実施形態が可能であり、そのような実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0088】
10 回転式伸縮装置(伸縮装置)
11 ケース
15 筒状部
15a 一端
20 第1本体部
30 第2本体部
40 ロッド
45 カム突部
49 バネ部材
50 モーター
51 ウォームギヤ
53 バスバー
55 ロックリテーナ
60 カム溝
61 突出端部
63 引き込み端部
65 引き込みガイド部
67 突出ガイド部
69 引き込み保持部
70 ロック解除端部
71 ロック解除ガイド部
73 第1ガイド面
74 第2ガイド面
75 境界
77 当接面
78,78A 底面