(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】走行車
(51)【国際特許分類】
B61B 13/00 20060101AFI20241121BHJP
B60G 11/14 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B61B13/00 A
B60G11/14
(21)【出願番号】P 2021073542
(22)【出願日】2021-04-23
【審査請求日】2024-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100131200
【氏名又は名称】河部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】原田 雄大
(72)【発明者】
【氏名】山本 雅人
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-238959(JP,A)
【文献】実開平07-040355(JP,U)
【文献】特開平02-182539(JP,A)
【文献】実開昭57-171927(JP,U)
【文献】実開昭60-016666(JP,U)
【文献】特許第6808884(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B 13/00
B60G 11/14
B62B 1/00- 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体を走行させる駆動機構とを備え、
前記駆動機構は、前記車体に取り付けられ、回転駆動力を出力する駆動源と、駆動輪と、前記駆動輪を支持する支持機構と、前記回転駆動力を前記駆動輪に伝達する伝達機構とを有し、
前記支持機構は、前記駆動輪を回転可能に支持すると共に、水平方向に延びる回転軸回り
に回転可能に前記車体に取り付けられたホルダ
と、前記ホルダを前記回転軸を中心に回転可能に前記車体に対して弾性的に支持するサスペンションとを有し、
前記伝達機構は、前記駆動源に連結され、前記車体に配置された出力プーリと、前記駆動輪に連結され、前記ホルダに配置された入力プーリと、前記出力プーリと前記入力プーリとに巻回されたベルトとを有し、
前記回転軸は、前記出力プーリと同軸に配置され
、
前記ホルダのうち前記回転軸回りに回転可能に前記車体に支持される部分と前記駆動輪と前記サスペンションとは、前記駆動機構による走行方向へ並んで配置され、
前記走行方向を前後方向とした場合の左右方向の位置に関し、前記出力プーリは、前記ホルダよりも前記車体の内側に配置されている走行車。
【請求項2】
請求項
1に記載の走行車において、
前記サスペンションは、前記車体に対して、少なくとも前記回転軸と平行な軸回りに回転可能に取り付けられている走行車。
【請求項3】
請求項
2に記載の走行車において、
前記サスペンションは、前記車体に対して、球面すべり軸受を介して取り付けられている走行車。
【請求項4】
請求項1乃至
3の何れか1つに記載の走行車において、
前記車体に取り付けられ、水平方向に延びる軸回りに回転可能な従動輪をさらに備えた走行車。
【請求項5】
請求項1乃至
4の何れか1つに記載の走行車において、
前記駆動源に連結され、前記回転駆動力を減速させる減速機をさらに備え、
前記出力プーリは、前記減速機の出力シャフトに設けられている走行車。
【請求項6】
請求項1乃至
5の何れか1つに記載の走行車において、
前記駆動機構は、第1駆動機構と第2駆動機構とを含み、
前記第1駆動機構の前記駆動輪と前記第2駆動機構の前記駆動輪とは、独立に駆動される走行車。
【請求項7】
請求項
6に記載の走行車において、
前記第1駆動機構の前記駆動輪及び前記第2駆動機構の前記駆動輪は、前記第1駆動機構及び前記第2駆動機構による走行方向を前後方向とした場合の左右方向に並んで配置され、
前記第1駆動機構の前記駆動源は、前記第1駆動機構の前記駆動輪及び前記第2駆動機構の前記駆動輪に対して前記走行方向の一方側に配置され、
前記第2駆動機構の前記駆動源は、前記第1駆動機構の前記駆動輪及び前記第2駆動機構の前記駆動輪に対して前記走行方向の他方側に配置されている走行車。
【請求項8】
請求項1乃至
7の何れか1つに記載の走行車において、
前記車体に載置されたロボットアームをさらに備える走行車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、走行車に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、モータ等の駆動源によって駆動される駆動輪を備えた走行車が知られている。例えば、特許文献1には、モータと駆動輪とモータの回転を駆動輪に伝達するベルトとを備えた走行車が開示されている。モータ及び駆動輪は、取付板に取り付けられている。取付板は、走行車の底に水平方向に延びる軸回りに回転可能な状態で支持されている。それに加えて、取付板は、走行車の底にサスペンションを介して弾性的に連結されている。サスペンションの弾性力によって、駆動輪が路面に確実に接地した状態となる。路面に凹凸があっても、サスペンションの弾性が路面の凹凸を吸収して、駆動輪が路面に接地した状態が維持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の走行車のように駆動輪が路面に弾性的に押し付けられた構成においては、走行時に、駆動輪が路面の凹凸等に応じて上下動する。具体的には、駆動輪が取り付けられた取付板が上下動する。取付板にはモータも取り付けられているので、モータも上下動する。つまり、駆動輪と略同じ振動が、モータに伝わってしまう。
【0005】
ここに開示された技術は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、駆動輪の接地を確保しつつ、モータに伝わる、駆動輪の振動を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ここに開示された走行車は、車体と、前記車体を走行させる駆動機構とを備え、前記駆動機構は、前記車体に取り付けられ、回転駆動力を出力する駆動源と、駆動輪と、前記駆動輪を支持する支持機構と、前記回転駆動力を前記駆動輪に伝達する伝達機構とを有し、前記支持機構は、前記駆動輪を回転可能に支持すると共に、水平方向に延びる回転軸回りに回転可能に前記車体に取り付けられたホルダを有し、前記伝達機構は、前記駆動源に連結され、前記車体に配置された出力プーリと、前記駆動輪に連結され、前記ホルダに配置された入力プーリと、前記出力プーリと前記入力プーリとに巻回されたベルトとを有し、前記回転軸は、前記出力プーリと同軸に配置されている。
【発明の効果】
【0007】
前記走行車によれば、駆動輪の接地を確保しつつ、モータに伝わる、駆動輪の振動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、斜め上方から見た走行車の斜視図である。
【
図4】
図4は、走行車の下部を左側から見た側面図である。
【
図5】
図5は、サスペンションの伸縮に伴って回転する駆動輪及びホルダ等の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、例示的な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1は、斜め上方から見た走行車100の斜視図である。
図2は、走行車100の底板12の斜視図である。
図3は、走行車100の底面図である。
図4は、走行車100の下部を左側から見た側面図である。
【0010】
走行車100は、自走可能な走行装置である。例えば、走行車100は、無人搬送車(AGV:Automated Guided Vehicle)である。走行車100は、車体1と、車体1を走行させる駆動機構とを備えている。駆動機構は、第1駆動機構10Aと第2駆動機構10Bとを含んでいる。走行車100は、制御装置9によって制御される。例えば、走行車100は、コンベヤにより順次搬送されてくる複数のワークを棚に搬送するために用いられる。
【0011】
車体1は、略直方体状に形成されている。車体1は、天板11、底板12及び4つの側板13を有している。天板11及び底板12は、上下方向に並んでいる。4つの側板は、前後、左右の四方を向くように配置されている。天板11、底板12及び4つの側板13のそれぞれは、略方形状である。第1駆動機構10A及び第2駆動機構10Bは、底板12の下面に設けられている。
【0012】
走行車100は、複数の従動輪32をさらに備えている。具体的には、走行車100は、4つの従動輪32を備えている。各従動輪32は、水平方向に延びる軸回りに回転可能となっている。4つの従動輪32は、底板12の下面において底板12の四隅に設けられている。各従動輪32は、鉛直方向に延びる軸回りに回転可能に底板12に取り付けられている。つまり、各従動輪32は、走行する方向を水平方向において360度変更することができる。
【0013】
走行車100は、車体1に載置されたロボットアーム7をさらに備えている。ロボットアーム7は、天板11に設けられている。ロボットアーム7は、複数のリンク71を有している。複数のリンク71は、関節を介して回転可能に連結されている。各関節は、サーボモータによって駆動される。ロボットアーム7の先端には、エンドエフェクタが連結される。
【0014】
第1駆動機構10Aと第2駆動機構10Bとは、車体1に対する配置が異なるものの、同様の構成を有する。そこで、第1駆動機構10Aの基本的な構成について説明し、第2駆動機構10Bについての重複する説明は省略する。
【0015】
第1駆動機構10Aは、
図2,3に示すように、車体1に取り付けられ、回転駆動力を出力するモータ2と、駆動輪3と、駆動輪3を支持する支持機構4と、回転駆動力を駆動輪3に伝達する伝達機構5とを有している。第1駆動機構10Aは、モータ2に連結され、回転駆動力を減速させる減速機6をさらに有していてもよい。モータ2は、駆動源の一例である。
【0016】
以下、説明の便宜上、走行車100の走行方向、即ち、駆動輪3の転動方向を前後方向と称する。前後方向に直交する水平な方向を左右方向又は車幅方向と称する。
【0017】
支持機構4は、駆動輪3を回転可能に支持すると共に、水平方向に延びる回転軸M回りに回転可能に車体1に取り付けられたホルダ41を有している。支持機構4は、ホルダ41を回転軸Mを中心に回転可能に車体1に対して弾性的に支持するサスペンション42をさらに有している。
【0018】
ホルダ41は、2枚のプレート43を含んでいる。プレート43は、前後方向に延びている。2枚のプレート43は、間隔を空けて、左右方向に対向している。2枚のプレート43の間に駆動輪3が配置されている。2枚のプレート43は、駆動輪3を水平方向に延びる回転軸L回りに回転可能に支持している。
【0019】
ホルダ41は、前後方向の一端部である固定端部41aと、前後方向の他端部である可動端部41bとを有している。固定端部41aは、車体1(具体的には、底板12)から延びる柱14に回転軸M回りに回転可能に取り付けられている。柱14は、底板12に固定されている。可動端部41bは、サスペンション42の下端部に回転軸N回りに回転可能に取り付けられている。回転軸L、回転軸M及び回転軸Nは、互いに平行となっており、車幅方向に延びている。
【0020】
サスペンション42は、サスペンション42の長手方向に伸縮するバネ42aを有している。サスペンション42は、車体1に対して、少なくとも回転軸Mと平行な回転軸Q回りに回転可能に取り付けられている。この例では、サスペンション42は、車体1に対して、球面すべり軸受15を介して取り付けられている。詳しくは、球面すべり軸受15は、底板12に取り付けられている。サスペンション42の上端部は、球面すべり軸受15に支持されている。サスペンション42は、長手方向が鉛直方向を向く状態で球面すべり軸受15に支持されている。サスペンション42は、球面すべり軸受15によって任意の方向に回転可能に支持されているので、回転軸Q回りにも回転可能となっている。
【0021】
サスペンション42が長手方向に伸縮すると、ホルダ41の可動端部41bが、サスペンション42の下端部に従って移動する。その結果、ホルダ41は、回転軸Mを中心に回転する。ここで、サスペンション42は、車体1に対して回転軸Mと平行な回転軸Q回りに回転可能に取り付けられているので、サスペンション42は、回転軸Mを中心としたホルダ41の回転に伴って車体1に対して回転軸Qを中心に回転する。
【0022】
ホルダ41の回転に伴って、駆動輪3も回転する。駆動輪3の軌跡は、厳密には、回転軸Mを中心とする円弧形状である。しかし、サスペンション42の長手方向が鉛直方向を向き且つサスペンション42の伸縮は微小なので、駆動輪3の軌跡は、略鉛直方向に延びる略直線状となる。
【0023】
サスペンション42のバネ42aが自然状態において、駆動輪3の下端は、従動輪32の下端よりも下方に位置している。つまり、4つの従動輪32が路面に接地している状態において、駆動輪3は、サスペンション42の弾性力によって路面に押し付けられている。
【0024】
支持機構4は、底板12において車幅方向の側縁部に配置されている。底板12の車幅方向の側縁部には、2つの従動輪32が走行方向に並んで配置されている。支持機構4は、走行方向において、2つの従動輪32の間に配置されている。つまり、駆動輪3は、走行方向において2つの従動輪32の間であって、底板12の走行方向の略中央に配置されている。
【0025】
モータ2は、底板12において、支持機構4に対して車幅方向の内側に配置されている。モータ2には、減速機6が一体的に取り付けられている。減速機6は、モータ2の出力シャフトに連結されている。減速機6の出力シャフト61は、車幅方向に延びている。減速機6は、底板12から延びる取付プレート16に取り付けられている。つまり、モータ2は、取付プレート16及び減速機6を介して底板12の下面に取り付けられている。モータ2及び減速機6は、底板12の車幅方向の略中央に配置されている。モータ2は、サーボモータである。モータ2は、制御装置9によって制御される。
【0026】
伝達機構5は、モータ2に連結された出力プーリ51と、駆動輪3に連結された入力プーリ52と、出力プーリ51と入力プーリ52とに巻回されたベルト53とを有している。出力プーリ51は、車体1に配置されている。すなわち、出力プーリ51は、車体1に対する位置が変わらない。入力プーリ52は、ホルダ41に配置されている。すなわち、入力プーリ52は、ホルダ41に対する位置が変わらない。
【0027】
出力プーリ51は、減速機6の出力シャフト61に設けられている。出力プーリ51の回転軸Pは、出力シャフト61の回転軸と同軸になっている。すなわち、出力プーリ51は、モータ2と連動して回転するように、減速機6を介してモータ2に間接的に連結されている。モータ2が動作すると、モータ2の回転駆動力が減速機6によって減速されて出力プーリ51に伝わる。出力プーリ51は、回転軸Pと平行な複数の歯が外周面に周方向へ配列された歯付きのプーリである。
【0028】
入力プーリ52は、駆動輪3に回転不能に連結されている。入力プーリ52は、駆動輪3と一体的に回転する。すなわち、入力プーリ52は、駆動輪3と連動して回転するように、駆動輪3に直接的に連結されている。入力プーリ52は、駆動軸3の回転軸Lと同軸に設けられている。回転軸Lは、入力プーリ52の回転軸でもある。入力プーリ52は、ホルダ41の外側であって、ホルダ41に対して車幅方向内側に配置されている。入力プーリ52は、出力プーリ51と走行方向に並んで配置されている。つまり、車幅方向において、出力プーリ51と入力プーリ52とは同じ位置に配置されている。入力プーリ52は、回転軸Lと平行な複数の歯が外周面に周方向へ配列された歯付きのプーリである。
【0029】
ベルト53は、出力プーリ51と入力プーリ52とに券回された無端ベルトである。ベルト53は、互いに平行な複数の歯が内周面に周方向へ配列された歯付きのベルトとである。ベルト53は、出力プーリ51の回転を入力プーリ52へ伝達する。この例では、出力プーリ51の径は、入力プーリ52の径と略同じである。そのため、出力プーリ51の回転は、同じ回転速度で入力プーリ52に伝達される。尚、出力プーリ51の径は、入力プーリ52の径と異なっていてもよい。
【0030】
第2駆動機構10Bも、第1駆動機構10Aと同様に構成されている。ただし、第1駆動機構10Aと第2駆動機構10Bとは、底板12の中心に対して点対称に配置されている。
【0031】
具体的には、第1駆動機構10Aの支持機構4は、底板12の左側の側縁部に配置されている一方、第2駆動機構10Bの支持機構4は、底板12の右側の側縁部に配置されている。第1駆動機構10Aの駆動輪3と第2駆動機構10Bの駆動輪3とは、車幅方向位置が異なるが、走行方向位置は略同じである。つまり、第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3は、車幅方向、即ち、左右方向に並んで配置されている。第1駆動機構10Aでは、駆動輪3に対して走行方向の前方にサスペンション42が位置し、駆動輪3に対して走行方向の後方にホルダ41の固定端部41aが位置している。一方、第2駆動機構10Bでは、駆動輪3に対して走行方向の後方にサスペンション42が位置し、駆動輪3に対して走行方向の前方にホルダ41の固定端部41aが位置している。
【0032】
その結果、第1駆動機構10Aのモータ2は、第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3に対して走行方向の一方側(具体的には、後側)に配置され、第2モータ2Bは、第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3に対して走行方向の他方側(具体的には、前側)に配置されている。
【0033】
ここで、モータが第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3に対して走行方向の一方側又は他方側に配置されるとは、モータ2と第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3とが走行方向に並んでいる、即ち、モータ2と第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3との車幅方向の位置が同じであることまでは意味しない。モータ2と第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3とが、走行方向に並んでいてもよいし、並んでいなくてもよい。この例では、モータ2と第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3とは、走行方向に並んでいない。
【0034】
第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3は、底板12において走行方向の略中央に配置されるので、走行方向において、第1駆動機構10Aのモータ2及び第2駆動機構10Bのモータ2が2つの駆動輪3の前後に分かれて配置されることによって、車体1の下方のスペースを有効に活用してモータ2及び駆動輪3を配置することができる。さらに、車体1におけるモータ2及び駆動輪3の重量のバランスをとることができる。
【0035】
さらに、第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3が左右に配置される構成において、第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3が独立に駆動される。つまり、第1駆動機構10Aのモータ2及び第2駆動機構10Bのモータ2は、独立にそれぞれの駆動輪3を駆動する。そのため、2つの駆動輪3を同じ方向に同じ回転速度で回転させることによって、車体1を走行方向の前又は後に真っすぐ走行させることができる。また、2つの駆動輪3の回転速度を異ならせる、及び/又は、回転の向きを異ならせることによって、車体1を旋回させることができる。
【0036】
制御装置9は、ロボットアーム7の動作を制御する。制御装置9は、ロボットアーム7の先端に連結されたエンドエフェクタを外部軸として制御する。制御装置9は、モータ2を外部軸として制御する。制御装置9は、走行車100を所望の位置へ移動させ、ロボットアーム7に所定の動作及び処理を実行させる。
【0037】
制御装置9は、制御部、記憶部及びメモリ等を有している。制御部は、各種の演算処理を行い、制御装置9の全体を制御する。例えば、制御部は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサで形成されている。制御部は、MCU(Micro Controller Unit)、MPU(Micro Processor Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)、PLC(Programmable Logic Controller)等で形成されていてもよい。記憶部は、制御部で実行されるプログラム及び各種データを格納している。記憶部は、不揮発性メモリ、HDD(Hard Disc Drive)又はSSD(Solid State Drive)等で形成される。メモリは、データ等を一時的に格納する。例えば、メモリは、揮発性メモリで形成される。
【0038】
このように構成された走行車100において、駆動輪3は、ホルダ41及びサスペンション42によって車体1に対して回転可能(即ち、揺動可能)に保持されている。サスペンション42の弾性が、路面の凹凸を吸収しつつ、駆動輪3を路面に押し付ける。そのため、駆動輪3は、路面に接地した状態が維持される。
【0039】
このとき、モータ2は、車体1に取り付けられている。モータ2の回転駆動力は、ベルト53を介して駆動輪3に伝達される。モータ2はホルダ41と共に回転しないので、モータ2に伝わる駆動輪3の振動が低減される。
【0040】
それに加えて、ホルダ41の回転軸Mは、出力プーリ51の回転軸Pと同軸に配置されている。ホルダ41の固定端部41aは、出力プーリ51と分離された状態で、出力プーリ51と車幅方向、より具体的には、回転軸Mの方向に並んでいる。ホルダ41は、
図5に示すように、前述の如く、サスペンション42の伸縮に伴って、回転軸Mを中心に回転(即ち、揺動)する。
図5は、サスペンション42の伸縮に伴って回転する駆動輪3及びホルダ41等の模式図である。尚、
図5では、駆動輪3及びホルダ41の変位をわかりやすく示すために、ホルダ41を実際よりは大きく回転させている。このホルダ41の回転に伴って、駆動輪3及び入力プーリ52も回転軸Mを中心に回転する。回転軸Mと回転軸Pとが同軸なので、入力プーリ52が回転軸Mを中心に回転しても、入力プーリ52の回転軸Lと回転軸Pとの距離は一定である。つまり、出力プーリ51と入力プーリ52との軸間距離が変わらない。その結果、出力プーリ51と入力プーリ52とに巻回されたベルト53の張力が一定に維持される。これにより、ベルト53の張力が低下することなく、モータ2の回転駆動力が駆動輪3に適切に伝達される。
【0041】
以上のように、走行車100は、車体1と、車体1を走行させる駆動機構とを備え、駆動機構は、車体1に取り付けられ、回転駆動力を出力するモータ2(駆動源)と、駆動輪3と、駆動輪3を支持する支持機構4と、回転駆動力を駆動輪3に伝達する伝達機構5とを有し、支持機構4は、駆動輪3を回転可能に支持すると共に、水平方向に延びる回転軸M回りに弾性的に回転可能に車体1に取り付けられたホルダ41を有し、伝達機構5は、モータ2に連結され、車体1に配置された出力プーリ51と、駆動輪3に連結され、ホルダ41に配置された入力プーリ52と、出力プーリ51と入力プーリ52とに巻回されたベルト53とを有し、回転軸Mは、出力プーリ51と同軸に配置されている。
【0042】
この構成によれば、駆動輪3を支持するホルダ41は、回転軸M回りに弾性的に回転可能に車体1に取り付けられている。回転軸M回りのホルダ41の弾性的な回転によって、路面の凹凸が吸収されつつ、駆動輪3と路面との接地が維持される。このとき、駆動輪3は、路面の凹凸により振動し得る。しかし、モータ2は、ホルダ41には取り付けられておらず、車体1に取り付けられているので、モータ2に伝わる、駆動輪3の振動が低減される。モータ2の回転駆動力は、モータ2に連結された出力プーリ51と駆動輪3に連結された入力プーリ52とに巻回されたベルト53を介して、駆動輪3に伝達される。出力プーリ51は、車体1に配置されているので、ホルダ41が回転軸M回りに回転しても、変位しない。一方、入力プーリ52は、ホルダ41に配置されているので、回転軸M回りのホルダ41の回転に伴って入力プーリ52も回転軸Mを中心に回転する。ここで、回転軸Mは出力プーリ51と同軸に配置されているので、入力プーリ52は、出力プーリ51を中心に回転することになる。出力プーリ51と入力プーリ52との軸間距離が変わらないので、出力プーリ51と入力プーリ52とに巻回されたベルト53の張力が一定に維持される。その結果、ベルト53の張力が低下することなく、モータ2の回転駆動力が駆動輪3に適切に伝達される。
【0043】
支持機構4は、ホルダ41を回転軸Mを中心に回転可能に車体に対して弾性的に支持するサスペンション42をさらに有する。
【0044】
この構成によれば、ホルダ41は、サスペンション42によって回転軸M回りに弾性的に回転可能となっている。サスペンション42は、路面の凹凸を吸収しつつ、駆動輪3を路面に接地させる。
【0045】
また、サスペンション42は、車体1に対して、少なくとも回転軸Mと平行な軸回りに回転可能に取り付けられている。
【0046】
この構成によれば、サスペンション42が車体1との取り付け部分において回転軸Mと平行な軸回りに回転することによって、ホルダ41は、回転軸M回りに円滑に回転することができる。
【0047】
サスペンション42は、車体1に対して、球面すべり軸受15を介して取り付けられている。
【0048】
この構成によれば、車体1に対する、回転軸Mと平行な軸回りに回転可能なサスペンション42の取り付けを、容易に実現することができる。
【0049】
走行車100は、車体1に取り付けられ、水平方向に延びる軸回りに回転可能な従動輪32をさらに備えている。
【0050】
この構成によれば、走行車100は、駆動輪3と従動輪32とを備える。少なくとも駆動輪3は、ホルダ41及びサスペンションによって水平方向に延びる回転軸M回りに弾性的に回転可能に保持される。そのため、路面への駆動輪3及び従動輪32の接地を安定的に維持することができる。
【0051】
走行車100は、モータ2に連結され、回転駆動力を減速させる減速機6をさらに備え、出力プーリ51は、減速機6の出力シャフト61に設けられている。
【0052】
この構成によれば、出力プーリ51は、減速機6を介して、モータ2に対して間接的に連結される。このような構成でも、モータ2の回転駆動力を駆動輪3に適切に伝達することができる。
【0053】
駆動機構は、第1駆動機構10Aと第2駆動機構10Bとを含み、第1駆動機構10Aの駆動輪3と第2駆動機構10Bの駆動輪3とは、独立に駆動される。
【0054】
この構成によれば、2つの駆動輪3を同じ方向に同じ回転速度で回転させることによって、車体1を走行方向の前方又は後方に真っすぐ走行させることができる。また、2つの駆動輪3の回転速度を異ならせる、及び/又は、回転の向きを異ならせることによって、車体1を旋回させることができる。
【0055】
さらに、第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3は、第1駆動機構10A及び第2駆動機構10Bによる走行方向を前後方向とした場合の左右方向に並んで配置され、第1駆動機構10Aのモータ2は、第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3に対して走行方向の一方側に配置され、第2駆動機構10Bのモータ2は、第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3に対して走行方向の他方側に配置されている。
【0056】
この構成によれば、第1駆動機構10Aのモータ2と第2駆動機構10Bのモータ2とが、第1駆動機構10Aの駆動輪3及び第2駆動機構10Bの駆動輪3に対して走行方向の一方側と他方側とに別れて配置される。これにより、車体1における重量のバランスが取られる。
【0057】
走行車100は、車体1に載置されたロボットアーム7をさらに備える。
【0058】
《その他の実施形態》
以上のように、本出願において開示する技術の例示として、前記実施形態を説明した。しかしながら、本開示における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。また、前記実施形態で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。また、添付図面および詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、前記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0059】
例えば、走行車100は、ロボットアーム7を備えていなくてもよい。また、走行車100は、AGVに限定されず、車体と駆動機構とを備える限り、任意の構成を採用することができる。
【0060】
走行車100は、少なくとも1つの駆動機構を備えていればよい。例えば、走行車100は、1つの駆動機構と複数の従動輪とを備えていてもよい。その場合、一部の従動輪が操舵の機能を有していてもよい。
【0061】
従動輪32は、4つに限定されず、3つ以下、又は、5つ以上であってもよい。例えば、従動輪32の個数は、駆動輪3を含まずに、従動輪32だけで走行車100を走行可能に支持できる個数であってもよい。例えば、走行車100は、三角形の頂点に配置された3つの従動輪32を有していてもよい。
【0062】
ホルダ4は、水平方向に延びる回転軸回りに弾性的に回転可能に車体1に取り付けられていればよく、サスペンション42による支持に限定されない。例えば、ホルダ4は、防振ゴム等の弾性部材を介して車体1に弾性的に保持されていてもよい。
【0063】
車体1へのサスペンション42の取付は、球面すべり軸受15に限定されない。例えば、ホルダ41の回転軸Mと平行なシャフトが車体1に設けられ、サスペンション42は、該シャフトに対して回転可能に取り付けられてもよい。あるいは、サスペンション42がその長手方向だけでなく、その曲げ方向にも弾性を有する場合には、サスペンション42は、車体1に対して固定的に(即ち、回転不能に)取り付けられていてもよい。この場合、サスペンション42が弾性的に曲げ変形することによって、ホルダ41は回転軸M回りに回転することができる。
【0064】
出力プーリ51は、減速機6ではなく、モータ2に直接設けられていてもよい。入力プーリ52と駆動輪3との間で、モータ2からの回転駆動力が減速されてもよい。入力プーリ52の径を出力プーリ51の径よりも大きくしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
100 走行車
10A 第1駆動機構
10B 第2駆動機構
1 車体
15 球面すべり軸受
2 モータ(駆動源)
3 駆動輪
32 従動輪
4 支持機構
41 ホルダ
42 サスペンション
5 伝達機構
51 出力プーリ
52 入力プーリ
53 ベルト
6 減速機
61 出力シャフト
7 ロボットアーム
M 回転軸