(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】チップ形電子部品
(51)【国際特許分類】
H01G 2/06 20060101AFI20241121BHJP
H01G 4/228 20060101ALI20241121BHJP
H01G 9/012 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
H01G2/06 A
H01G2/06 B
H01G2/06 500
H01G4/228 T
H01G4/228 W
H01G9/012 305
(21)【出願番号】P 2021094681
(22)【出願日】2021-06-04
【審査請求日】2023-12-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】田嶋 直行
【審査官】上谷 奈那
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-023246(JP,A)
【文献】特開昭62-186518(JP,A)
【文献】実開昭63-055551(JP,U)
【文献】特開平11-186101(JP,A)
【文献】特表2016-535445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 2/06
H01G 4/228
H01G 9/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に実装されるチップ形電子部品であって、
一対のリード線が同一方向に引き出された電子部品本体と、
前記電子部品本体に装着される座板であって、前記一対のリード線が挿通される一対のリード挿通部が形成されており、前記一対のリード線と電気的に接続される一対の端子が取り付けられた座板と、を備えており、
前記リード線は、その先端部に折曲部が形成されており、
前記座板には、前記電子部品本体に装着される側とは反対の面である基板側面における前記一対のリード挿通部に隣接する位置にそれぞれ前記リード線の引き出し方向と直交する方向に延びるように形成された一対の溝であって、前記リード挿通部側が開放されており、かつ、前記リード挿通部から離れるほど前記リード線引き出し方向における深さが大きくなるように底面が傾斜した溝が形成されており、
前記一対の端子の各々は、前記基板に接合される基板接合部と、前記溝の前記底面に配置され、前記リード線の前記折曲部と接合されるリード接合部と、を有していることを特徴とするチップ形電子部品。
【請求項2】
前記リード線の前記折曲部と前記端子の前記リード接合部とは、高温はんだにより接合されていることを特徴とする請求項1に記載のチップ形電子部品。
【請求項3】
前記折曲部に、少なくとも1つの孔が形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のチップ形電子部品。
【請求項4】
前記一対の端子の前記基板接合部は、前記一対のリード挿通部を結ぶ仮想直線上であって前記一対のリード挿通部を挟む位置に配置されており、
前記一対の溝は、前記仮想直線を挟んで互いに反対側に形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載のチップ形電子部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に実装されるチップ形電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
基板に実装されるチップ形電子部品として、特許文献1には、コンデンサ本体とコンデンサ本体に取り付けられる座板とを備えたチップ形コンデンサが開示されている。コンデンサ本体は、一対のリード端子が同一方向に引き出されている。座板には、コンデンサ本体から引き出された一対のリード端子が挿通される一対のリード貫通孔が形成されている。また、座板のコンデンサ本体に取り付けられる側とは反対の面には、リード貫通孔から延びた一対のリード収納溝が形成されている。リード端子の各先端部は、プレス加工などにより扁平化されており、リード収納溝に沿って折り曲げられる。リード端子の各先端部は、回路基板に形成されているはんだランドとはんだ付けされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
チップ形電子部品を基板に実装する際は、あらかじめペースト状のはんだを基板上に塗布し、部品を基板上に設置した後に炉で加熱して、部品のリード端子と基板とを接続するリフローはんだ付け(以下、単に「リフロー」という)を行う。このとき、チップ形電子部品における基板との接触面の平坦性が低いと、基板上に設置された部品の位置がずれて正しい位置に実装されなかったり、はんだフィレットが適切に形成されずに実装不良となったりする懸念がある。
【0005】
上述の従来のチップ形コンデンサにおいては、以下に挙げるような原因により、基板との接触面の平坦性が低くなるおそれがある。すなわち、リード端子の折り曲げられた部分にスプリングバックにより戻りが生じ、リード端子の先端部がリード収納溝から浮き上がってしまう懸念がある。また、リード端子の端縁部は、切断加工により母材がむき出しになっており、バリの発生が懸念される。さらに、コンデンサ本体の一対のリード端子はそれぞれ独立しているので、リード端子の引き出し方向に関する一対のリード端子の先端部(はんだランドとはんだ付けされる部分)の位置を合わせるのは困難である。仮に、基板に実装する前の時点で位置が合っていたとしても、リフロー時に内圧が上昇し、コンデンサ本体が膨張することで、一対のリード端子の先端部が位置ずれするおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、基板への実装を適正に行うことができるチップ形電子部品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のチップ形電子部品は、基板に実装されるチップ形電子部品であって、一対のリード線が同一方向に引き出された電子部品本体と、前記電子部品本体に装着される座板であって、前記一対のリード線が挿通される一対のリード挿通部が形成されており、前記一対のリード線と電気的に接続される一対の端子が取り付けられた座板と、を備えている。前記リード線は、その先端部に折曲部が形成されており、前記座板には、前記電子部品本体に装着される側とは反対の面である基板側面における前記一対のリード挿通部に隣接する位置にそれぞれ前記リード線の引き出し方向と直交する方向に延びるように形成された一対の溝であって、前記リード挿通部側が開放されており、かつ、前記リード挿通部から離れるほど前記リード線引き出し方向における深さが大きくなるように底面が傾斜した溝が形成されており、前記一対の端子の各々は、前記基板に接合される基板接合部と、前記溝の前記底面に配置され、前記リード線の前記折曲部と接合されるリード接合部と、を有していることを特徴とする。
【0008】
この構成によると、座板に取り付けられた端子のリード接合部は、座板の基板側面に形成された溝であって、リード挿通部から離れるほど前記リード線引き出し方向における深さが大きくなるように底面が傾斜した溝の底面に配置されている。そして、リード挿通部に挿通されたリード線の先端部の折曲部が、端子のリード接合部に接合される。よって、端子のリード接合部と接合されるリード線の折曲部は、リード挿通部から離れるほど座板の厚み方向(リード線引き出し方向)に関して基板側面から大きく引っ込む。したがって、リード線の折曲部にスプリングバックにより戻りが生じた場合であっても、リード線が座板の溝から浮き上がりにくい(リード線の座板の基板側面からの突出が抑えられる)。また、リード線における折曲部の端縁部は、最も座板の基板側面から大きく引っ込んでいる。ゆえに、リード線の端縁部に発生したバリが、基板との接触面の平坦性に影響を及ぼすのを避けることができる。さらに、リード線の折曲部が座板に取り付けられた端子のリード接合部と接合されるので、リード線の引き出し方向に関して、それぞれ独立した一対のリード線の折曲部の位置がずれることがない。したがって、リフロー時に位置ずれしたり実装不良となったりすることなく、基板への実装を適正に行うことができる。
【0009】
また、上述のチップ形電子部品においては、前記リード線の前記折曲部と前記端子の前記リード接合部とは、高温はんだにより接合されていることを特徴とする。
【0010】
この構成によると、座板が樹脂製であるとき、リード線の折曲部と端子のリード接合部とを溶接により接合する場合、座板に形成された溝の底面でリード線の折曲部と端子のリード接合部を溶接することから微細溶接設備が必要になるが、高温はんだにより接合することで低コストで接合することができる。また、リード線の折曲部と端子のリード接合部とを低温はんだにより接合する場合、チップ形電子部品を基板に実装するリフローにてリード線の折曲部と端子のリード接合部とを接合していた低温はんだの再溶融が起こるため、高温はんだにより接合することではんだの再溶融を防止し、接合強度の低下を抑制することができる。
【0011】
さらに、上述のチップ形電子部品においては、前記折曲部に、少なくとも1つの孔が形成されていることを特徴とする。
【0012】
この構成によると、リード線の折曲部と端子のリード接合部とを高温はんだにより接合する際に、折曲部に形成された孔により高温はんだに熱を伝えやすくすることができる。よって、はんだ付けの作業を確実に行うことができる。
【0013】
加えて、上述のチップ形電子部品においては、前記一対の端子の前記基板接合部は、前記一対のリード挿通部を結ぶ仮想直線上であって前記一対のリード挿通部を挟む位置に配置されており、前記一対の溝は、前記仮想直線を挟んで互いに反対側に形成されていることを特徴とする。
【0014】
一対の端子の基板接合部が、一対のリード挿通部を結ぶ仮想直線上であって一対のリード挿通部を挟む位置に配置されている場合に、一対の溝が、仮想直線に対して同じ側に形成されているときには、基板接合部と溝の底面を覆うように配置されるリード接合部とを有する一対の端子の形状が同じにならない。本発明の構成によると、一対の端子の形状を同じにすることができるので、生産管理や組み立てが容易である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板への実装を適正に行うことができるチップ形電子部品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる電解コンデンサの構成を示す断面図である。
【
図2】端子が取り付けられた状態の座板の斜視図である。
【
図4】リード線の加工を説明するための図であり(a)は加工前のリード線を示し、(b)はプレス加工を行ったリード線を示し、(c)は穴あけ加工を行ったリード線を示し、(d)は折り曲げ加工を行ったリード線を示す。
【
図5】
図2の座板のV-V線に沿う断面図であって、リード線が端子に接続された状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0018】
本実施形態にかかるチップ形電子部品としての電解コンデンサ1は、
図1に示すように、略円柱状を有するコンデンサ本体10と、コンデンサ本体10に装着される座板20とを有する。コンデンサ本体10は、巻回されたコンデンサ素子11と、コンデンサ素子11を内部に収容する有底筒状の外装ケース12と、外装ケース12の開口端を封口する封口材13と、コンデンサ素子11に接続された一対のリード線14、15と、を備えている。リード線14、15は、封口材13に形成された挿通部に挿通され、外装ケース12の外に引き出されている。一対のリード線14、15は、いずれも筒状の外装ケース12の軸方向(
図1中上下方向)に沿って引き出される。
【0019】
なお、コンデンサ素子11としては、アルミニウム等の弁金属からなる陽極箔と陰極箔との間にセパレータを介在させて、巻回して形成され、電解液が含浸された電解コンデンサ素子や、電解質として固体の導電性高分子をアルミニウム等の弁金属からなる陽極箔と陰極箔との間に形成した固体電解コンデンサ素子や、電解質として固体の導電性高分子と電解液を含浸したハイブリッド電解コンデンサ素子等を用いることができる。
【0020】
座板20は、例えば樹脂などの電気絶縁性を有する材料からなる。座板20は、コンデンサ本体10における一対のリード線14、15が引き出されている側の端部(
図1における下端部)に装着される。座板20には、コンデンサ本体10の一対のリード線14、15が挿通される一対のリード挿通部21a、22aが形成されている。また、座板20には、一対のリード線14、15と電気的に接続される一対の金属製の端子30が取り付けられている。
【0021】
電解コンデンサ1は、座板20のコンデンサ本体10に装着される側とは反対の面である基板側面20aが、基板9と対向する姿勢で基板9に実装される。
【0022】
次に、
図2および
図3をさらに参照しつつ、座板20の構成についてより詳細に説明する。以下の説明において、座板20の基板側面20aに平行であって互いに直交する2つの方向を第1方向および第2方向とする。また、座板20の基板側面20aと直交する方向を厚み方向(リード線引き出し方向に同じ)とする。
【0023】
座板20は、平面視で全体として略正方形形状を有している。より詳細には、略正方形形状の座板20は、第1方向の一方側に位置する2つの角部が切り欠かれている。これにより、座板20は、正確には平面視で六角形となっている。基板側面20aの四隅には、基板側面20aから突出する突起25がそれぞれ形成されている。突起25の先端面は、電解コンデンサ1が実装される基板9に接触する接触面である。突起25は、基板9に実装されたときにがたつきを抑えるために設けられている。
【0024】
図2に示すように、座板20における第2方向の中央部分には、厚み方向に座板20を貫通する一対のリード挿通部21a、22aが形成されている。一対のリード挿通部21a、22aは、座板20における第2方向に関する中心を通り、第1方向に沿って延びる仮想直線L(
図2において二点鎖線で示す)上に位置している。
【0025】
基板側面20aにおける一対のリード挿通部21a、22aに隣接する位置には、溝23、24がそれぞれ形成されている。溝23、24は、いずれも厚み方向(リード線引出方向)と直交する第2方向に延びている。溝23は、第2方向に関してリード挿通部21aの一方側に位置している。溝24は、第2方向に関してリード挿通部22aの他方側に位置している。すなわち、一対の溝23、24は、仮想直線Lを挟んで互いに反対側に位置している。溝23、24は、いずれもリード挿通部21a、22a側が開放されている。溝23、24の各底面23a、24aは、いずれもリード挿通部21a、22aから離れるほど厚み方向(リード線引き出し方向)における深さが大きくなるように傾斜している(
図5参照)。
【0026】
なお、後述するように、溝23、24の底面23a、24aは、端子30のリード接合部32を支持する。底面23a、24aは、本実施形態においてはいずれも連続した1つの平面であるが、端子30のリード接合部32を支持することができれば、必ずしも連続した1つの平面である必要はない。すなわち、例えば、凹凸面であってもよいし、開口が形成されていてもよい。
【0027】
座板20に取り付けられる一対の端子30は、互いに同一の形状を有している。端子30は、製造段階で座板20にインサート成形にて埋め込まれる。端子30は、
図3に示すように、金属製のブロック状部を伴った板状部材で形成されている。端子30における
図3でドットのハッチングで示す部分は、座板20の内部に埋め込まれる。
【0028】
端子30のブロック状部は、板状部材の一方の面から突出している。このブロック状部が、基板9に接合される基板接合部31となる。端子30には、基板接合部31となるブロック状部に隣接して開口33が形成されている。端子30は、開口33が座板20のリード挿通部21a、22aに配置されるように、座板20に取り付けられる。端子30が座板20に取り付けされたとき、基板接合部31と開口33とは第1方向に沿って並ぶ。
【0029】
端子30は、基板接合部31および開口33と隣接する部分が、基板接合部31であるブロック状部の突出方向とは反対方向に折り曲げられた折曲部34となっている。折曲部34は、溝23、24の底面23a、24aの傾斜角度と同じ角度で傾斜している。折曲部34のうち基板接合部31と隣接する部分(ドットのハッチングで示す部分)は、座板20の内部に埋め込まれる。折曲部34のうち開口33と隣接する部分は、リード線14、15が接合されるリード接合部32となる。
【0030】
図2に示すように、一対の端子30が座板20に取り付けられたとき、各端子30の基板接合部31は、リード挿通部21aの第1方向の一方側とリード挿通部22aの第1方向の他方側とにそれぞれ配置される。すなわち、一対の端子30の基板接合部31は、仮想直線L上であって一対のリード挿通部21a、22aを挟む位置に配置されている。
【0031】
また、端子30が座板20に取り付けられたとき、基板接合部31の一部が基板側面20aからリード線引き出し方向に突出する。基板接合部31の基板側面20aからの突出高さh1は、突起25の基板側面20aからの突出高さh2と同じである。すなわち、基板接合部31の先端面は、突起25の先端面と同様に、電解コンデンサ1が実装される基板9に接触する接触面である。
【0032】
図5に示すように、リード接合部32は、溝23、24の底面23a、24aの傾斜角度と同じ角度で傾斜している。一対の端子30が座板20に取り付けられたとき、各端子30のリード接合部32は、溝23、24の底面23a、24aをそれぞれ覆うように配置され、底面23a、24aに支持される。
【0033】
次に、
図4(a)~(d)および
図5を参照しつつ、コンデンサ本体10から引き出されたリード線14、15と座板20に取り付けられた端子30との接合について説明する。リード線14、15を端子30に接合する前に、リード線14、15に対して、以下に説明するような加工が行われる。
【0034】
コンデンサ本体10から引き出されたリード線14、15は、
図4(a)に示すように、丸棒状である。まず、この丸棒状のリード線14、15の先端部にプレス加工を施して、
図4(b)に示すように、扁平にする。次に、リード線14、15の扁平化された部分に穴あけ加工を施して、
図4(c)に示すように、1つ以上の孔17を形成する。さらに、
図4(d)に示すように、折り曲げ加工を施して、リード線14、15の先端部の孔17が形成されている部分を折り曲げる。以下の説明において、リード線14、15の先端部の折り曲げられた部分を折曲部14a、15aとする。折曲部14a、15aのリード線14、15の引き出し方向(
図4(d)における上下方向)に対する曲げ角度θは、90度よりも大きい。折曲部14a、15aの傾斜角度は、座板20に形成された溝23、24の底面23a、24aおよび端子30のリード接合部32の傾斜角度とほぼ同じである。
【0035】
上述のように、プレス加工、穴あけ加工および折り曲げ加工が施されたリード線14、15を端子30に接合する際には、端子30のリード接合部32の表面に高温はんだペーストを塗布し、座板20の基板側面20aとは反対側からリード挿通部21a、22aにリード線14、15を挿通する。このとき、リード線14、15と折曲部14a、15aとの曲げ角度θは大きくなるが、折曲部14a、15aがリード挿通部21a、22aを挿通後はスプリングバックによりもとの曲げ角度θに戻る。上述のように、折曲部14a、15aの傾斜角度は、端子30のリード接合部32の傾斜角度とほぼ同じであるので、
図5に示すように、折曲部14a、15aがリード接合部32の表面に沿った状態で溝23、24にはまる。その後、リード線14、15の折曲部14a、15aを加熱して高温はんだを溶融させてリード線14、15の折曲部14a、15aと端子30のリード接合部32とを接合する。
【0036】
以上のように、本実施形態の電解コンデンサ1は、一対のリード線14、15が同一方向に引き出されたコンデンサ本体10と、コンデンサ本体10に装着される座板20と、を備えている。座板20は、一対のリード線14、15が挿通される一対のリード挿通部21a、22aが形成されており、一対のリード線14、15と電気的に接続される一対の端子30が取り付けられている。リード線14、15は、その先端部に折曲部14a、15aが形成されている。座板20には、コンデンサ本体10に装着される側とは反対の面である基板側面20aにおける一対のリード挿通部21a、22aに隣接する位置に、リード線の引き出し方向と直交する方向に延びる一対の溝23、24がそれぞれ形成されている。一対の溝23、24は、リード挿通部21a、22a側が開放されており、かつ、リード挿通部21a、22aから離れるほど厚み方向に深くなるように底面23a、24aが傾斜している。端子30は、基板9に接合される基板接合部31と、溝23、24の底面23a、24aを覆うように配置されており、リード線14、15の折曲部14a、15aが接合されるリード接合部32と、を有している。
【0037】
上述の構成によると、座板20に取り付けられた端子30のリード接合部32は、座板20の基板側面20aに形成された溝23、24であって、リード挿通部21a、22aから離れるほど深くなるように底面23a、24aが傾斜した溝23、24の底面23a、24aを覆うように配置されている。そして、リード挿通部21a、22aに挿通されたリード線14、15の先端部の折曲部14a、15aが、端子30のリード接合部32に接合される。よって、端子30のリード接合部32と接合されるリード線14、15の折曲部14a、15aは、リード挿通部21a、22aから離れるほど座板20の厚み方向に関して基板側面20aから大きく引っ込む。したがって、リード線14、15の折曲部14a、15aにスプリングバックにより戻りが生じた場合であっても、リード線14、15が座板20の溝23、24から浮き上がりにくい。また、リード線14、15における折曲部14a、15aの端縁部は、最も座板20の基板側面20aから大きく引っ込んでいる。ゆえに、リード線14、15の端縁部に発生したバリが、基板9との接触面の平坦性に影響を及ぼすのを避けることができる。さらに、リード線14、15の折曲部14a、15aが座板20に取り付けられた端子30のリード接合部32に接合されるので、リード線14、15の引き出し方向に関して、それぞれ独立した一対のリード線14、15の折曲部14a、15aの位置がずれることがない。したがって、リフロー時に位置ずれしたり実装不良となったりすることなく、基板9への実装を適正に行うことができる。
【0038】
本実施形態の電解コンデンサ1では、リード線14、15の折曲部14a、15aと端子30のリード接合部32とは、高温はんだにより接合されている。したがって、リード線14、15の折曲部14a、15aと端子30のリード接合部32とを溶接により接合する場合、樹脂で成型された溝23、24の底部でリード線14、15の折曲部14a、15aと端子30のリード接合部32とを溶接することから微細溶接設備が必要になるが、高温はんだにより接合することで低コストで接合することができる。
【0039】
本実施形態の電解コンデンサ1では、リード線14、15の折曲部14a、15aに、孔17が形成されている。したがって、リード線14、15の折曲部14a、15aと端子30のリード接合部32とを高温はんだにより接合する際に、折曲部14a、15aに形成された孔17により高温はんだに熱を伝えやすくすることができる。よって、はんだ付けの作業を確実に行うことができる。
【0040】
本実施形態の電解コンデンサ1では、一対の端子30の基板接合部31は、一対のリード挿通部21a、22aを結ぶ仮想直線L上であって一対のリード挿通部21a、22aを挟む位置に配置されており、一対の溝23、24は、仮想直線Lを挟んで互いに反対側に形成されている。一対の端子30の基板接合部31が、一対のリード挿通部21a、22aを結ぶ仮想直線L上であって一対のリード挿通部21a、22aを挟む位置に配置されている場合に、一対の溝23、24が、仮想直線Lに対して同じ側に形成されているときには、基板接合部31と溝23、24の底面23a、24aを覆うように配置されるリード接合部32とを有する一対の端子30の形状が同じにならない。上述の実施形態の構成によると、一対の端子30の形状を同じにすることができるので、生産管理や組み立てが容易である。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0042】
上述の実施形態では、リード線14、15の折曲部14a、15aと端子30のリード接合部32とが、高温はんだにより接合されている場合について説明したが、これらの接合方法はこれに限定されるものではない。すなわち例えば、リード線14、15の折曲部14a、15aと端子30のリード接合部32とは、低温はんだにより接合されていてもよい。
【0043】
上述の実施形態では、リード線14、15の折曲部14a、15aに、孔17が形成されている場合について説明したが、孔17は形成されていなくてもよい。
【0044】
上述の実施形態では、一対の端子30の基板接合部31は、一対のリード挿通部21a、22aを結ぶ仮想直線L上であって一対のリード挿通部21a、22aを挟む位置に配置されており、一対の溝23、24は、仮想直線Lを挟んで互いに反対側に形成されている場合について説明したが、これに限定されるものではない。すなわち例えば、一対の溝23、24が、仮想直線Lに対して同じ側に形成されていてもよい。また、一対の溝23、24が、仮想直線L上に形成されていてもよい。
【0045】
上述の実施形態では、本発明を電解コンデンサに適用する場合について説明したが、本発明の適用はこれに限定されるものではなく、他のチップ形電子部品に適用することもできる。
【符号の説明】
【0046】
1 電解コンデンサ(チップ形電子部品)
9 基板
10 コンデンサ本体(電子部品本体)
14、15 リード線
14a、15a 折曲部
17 孔
20 座板
20a 基板側面
21a、22a リード挿通部
23、24 溝
23a、24a 底面
30 端子
31 基板接合部
32 リード接合部