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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 25/14 20060101AFI20241121BHJP
   B65D 1/34 20060101ALI20241121BHJP
   B32B 3/30 20060101ALI20241121BHJP
   B32B 1/00 20240101ALI20241121BHJP
   B65D 1/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
B65D25/14 Z
B65D1/34
B32B3/30
B32B1/00 Z
B65D1/00 111
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021098539
(22)【出願日】2021-06-14
(65)【公開番号】P2022190283
(43)【公開日】2022-12-26
【審査請求日】2024-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100154759
【弁理士】
【氏名又は名称】高木 貴子
(74)【代理人】
【識別番号】100207240
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 喜弘
(72)【発明者】
【氏名】西尾 潤
(72)【発明者】
【氏名】船戸 孝
【審査官】佐藤 正宗
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-187192(JP,A)
【文献】特開平08-258830(JP,A)
【文献】特開2012-131173(JP,A)
【文献】国際公開第2020/064393(WO,A1)
【文献】特開2012-131552(JP,A)
【文献】特開2002-187241(JP,A)
【文献】登録実用新案第3099577(JP,U)
【文献】実開平04-111429(JP,U)
【文献】特開2000-225662(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 25/14
B65D 1/34
B32B 3/30
B32B 1/00
B65D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂からなる容器本体の上面に、熱可塑性樹脂からなるフィルムが接着した容器であって、
前記容器本体が四角形状であり、フランジ部を備え、
前記フランジ部表面が、凹凸構造を有する凹凸部と、前記凹凸構造を有しない平滑部と、を備え
前記平滑部が、前記フランジ部の4隅の少なくとも1つに位置し、
前記凹凸部の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.1~3.0mmである
容器。
【請求項2】
前記凹凸部及び前記平滑部を含む前記フランジ部全体における前記フィルムの接着強度が、0.5~20N/15mmである
請求項1に記載の容器。
【請求項3】
前記フィルムと前記容器本体との間に接着層を備える
請求項1又は2に記載の容器。
【請求項4】
前記平滑部における前記フィルムの接着強度が、0.5N/15mm未満である
請求項1~のいずれか一項に記載の容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、野菜の販売や弁当等の食品用の容器として、プラスチック容器が使用されている。環境保護の観点から、プラスチック容器はリサイクルされることが増えているが、リサイクルするにはプラスチック容器の洗浄が必要である。
【0003】
洗浄の手間を省くため、容器本体の内側に剥離可能なフィルムが貼り付けられた容器が提案されている(例えば、特許文献1及び2参照)。使用後に容器本体からフィルムを剥がすことにより、容器上の汚れをフィルムとともに除去することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-225662号公報
【文献】特開2017―200744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
容器の使用後に手で剥離できるフィルムは、容器の使用時にも剥がれやすい。接着強度が強い接着剤又はヒートシール材を使用して、フィルムの一部を強く容器に接着する等の改良が必要であるが、このような改良は製造工程数を増加させる要因となる。
【0006】
本発明は、上面に接着したフィルムが、容器の使用時に剥がれにくく、使用後には手で剥がすことが容易な構造を有する容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らが上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、容器のフランジ部に部分的に凹凸部を設けることにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0008】
(1)熱可塑性樹脂からなる容器本体の上面に、熱可塑性樹脂からなるフィルムが接着した容器であって、
前記容器本体が、フランジ部を備え、
前記フランジ部表面が、凹凸構造を有する凹凸部と、前記凹凸構造を有しない平滑部と、を備える
容器。
【0009】
(2)前記凹凸部及び前記平滑部を含む前記フランジ部全体における前記フィルムの接着強度が、0.5~20N/15mmである
上記(1)に記載の容器。
【0010】
(3)前記凹凸部の表面の算術平均粗さ(Ra)が、0.1~3.0mmである
上記(1)又は(2)に記載の容器。
【0011】
(4)前記容器本体が四角形状である場合、前記平滑部が前記フランジ部の4隅の少なくとも1つに位置する
上記(1)~(3)のいずれかに記載の容器。
【0012】
(5)前記フィルムと前記容器本体との間に接着層を備える
上記(1)~(4)のいずれかに記載の容器。
【0013】
(6)前記平滑部における前記フィルムの接着強度が、0.5N/15mm未満である
上記(1)~(5)のいずれかに記載の容器。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上面に接着したフィルムが、容器の使用時に剥がれにくく、使用後には手で剥がすことが容易な構造を有する容器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態の容器を示す斜視図である。
図2図1中のA-A線の断面図である。
図3】フィルムが剥がされる容器の斜視図である。
図4】剥がされたフィルムにより形成された袋体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の容器の一実施形態について詳細に説明する。以下は本発明の一例(代表例)であり、本発明はこれに限定されない。
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の記載は、アクリルとメタクリルの両方を示す。
【0017】
[容器]
図1は、本実施形態の容器1を示す。図2は、図1中のA-A線の断面図である。
容器1は、容器本体2とフィルム3とを備える。容器本体2は熱可塑性樹脂シート2′の熱成形体であり、フィルム3は熱可塑性樹脂フィルムである。フィルム3は、容器本体2の上面に接着しており、容器1の上面側の表層を構成する。容器本体2とフィルム3との接着強度を調整する観点から、容器1は、容器本体2とフィルム3の間に接着層4を備えることが好ましい。
【0018】
なお、容器1は、容器本体2の上側を覆う蓋材を備えてもよい。蓋材を容器本体2に固定するため、容器本体2と嵌合するか、又は熱で接着する蓋材等を用いることができる。また蓋材の一部が容器本体2と連結するように、蓋材と容器本体2とが一体成形されていてもよい。
【0019】
フィルム3は、図3に示すように、容器本体2から手で剥離することができる。容器1の使用後、フィルム3を剥がした容器本体2をそのままリサイクルすることができる。内容物によって容器1の上面が汚れていても、フィルム3とともに汚れを取り除くことができるため、洗浄の手間が省け、リサイクルが容易である。
【0020】
剥がしたフィルム3は、包装用フィルムとして使用することもできる。フィルム3の端部をまとめて絞ることにより、図4に示すように袋体5を形成することができ、容器1に収容されていた野菜や総菜、弁当の食べ残し等をこの袋体5に収容することができる。
【0021】
以下、各構成の詳細を説明する。
(容器本体)
容器本体2は、収容部21とフランジ部22とを備える。これらは通常、熱可塑性樹脂によって一体成形されている。
【0022】
<収容部>
収容部21は、深さを有するボウル状であってもよいし、皿状であってもよい。収容部21の底面の形状としては、例えば四角形等の多角形状、円形状、楕円形状等が挙げられる。
【0023】
収容部21のサイズは、内容物のサイズに合わせて適宜選択することができる。通常は、収容部21の底面の長辺(四角形の場合は最も長い全長、円形の場合は直径、楕円形の場合は長径をいう)が50mm以上500mm以下であり、深さが30mm以上300mm以下である。
【0024】
容器1の成形性及び強度の観点からは、収容部21の底面が方形、円形又は楕円形であることが好ましい。また、収容部21がボウル状であると、容器本体2から剥がしたフィルム3を袋体5に形成しやすく、好ましい。同様の観点から、収容部21の深さよりも底面の長辺又は直径の方が長いことが好ましい。このため、深さに対する長辺又は直径の比が1以上であることがより好ましく、通常は20以下である。
【0025】
収容部21の厚みは適宜選択できるが、容器1の圧縮強度を高める観点から、当該厚みは、200μm以上が好ましく、250μm以上がより好ましく、300μm以上がさらに好ましい。コストを抑える観点からは、上記厚みは、800μm以下が好ましく、500μm以下がより好ましい。
【0026】
また、底面又は壁面の角には、通常、円弧状の丸みが設けられており、その半径は5~20mm程度であることが好ましい。丸みにより、剥がした後のフィルム3が曲面状となり、袋体5として使用しやすくなる。
【0027】
<フランジ部>
フランジ部22は、収容部21の端部から外側に張り出す。フランジ部22により容器1の変形を抑えることができる。またフランジ部22により容器1を手で把持しやすくなる。
【0028】
フランジ部22の内周から外周までの幅は、容器1の内容物に応じて選択することができるが、通常は5mm以上である。
フランジ部22の厚みは、収容部21と同じ厚みとすることができる。
【0029】
<<凹凸部と平滑部>>
フランジ部22の表面は、凹凸構造を有する凹凸部22aと、そのような凹凸構造を有しない平滑部22bと、を備える。凹凸部22aは、容器1の熱成形に使用する金型に凹凸構造を設けることによって、形成することができる。容器1の熱成形の工程において凹凸部22aが形成されるため、製造工程を増やすことなく、簡易に凹凸部22aを形成できる。
【0030】
フランジ部22のような容器1の端部においては、容器1の使用中に衝撃を受けやすい。またフィルム3と容器本体2の界面が露出するため、フランジ部22ではフィルム3が剥がれやすい傾向がある。しかし、凹凸部22aが有する凹凸構造は、容器本体2にフィルム3を嵌合させる働きを有する。したがって、凹凸部22aによりフィルム3の剥がれを抑えることができる。一方、剥がれを抑える凹凸構造がない平滑部22bではフィルム3が剥がれやすい。よって、平滑部22bをフィルム3の剥離のきっかけとすることができ、使用後の剥離が容易となる。
【0031】
凹凸部22aと平滑部22bを含むフランジ部22全体のフィルム3の接着強度は、容器1の使用時にフィルム3の剥離を抑える観点から、0.5N/15mm以上が好ましく、2N/15mm以上がより好ましい。容器1の使用後にフィルム3の剥離を容易にする観点から、同接着強度は、20N/15mm以下が好ましく、15N/15mm以下がより好ましく、10N/15mm以下がさらに好ましい。
上記接着強度は、接着層4の材料、凹凸構造の凹部(又は凸部)の間隔又は深さ等によって調整することができる。
【0032】
一方、平滑部22bにおけるフィルム3の接着強度は、使用時の不要な剥離を抑える観点から、0.01N/15mm以上が好ましく、フィルム3の剥離のきっかけを付与する観点から、0.5N/15mm未満が好ましい。
なお、上記接着強度は、フランジ部22を帯状に切り取った試料を用いて、JISZ 0238:1998に準拠する180°剥離試験によって測定される値である。
【0033】
凹凸構造が有するパターンとしては、例えば凹凸がストライプ状、網状、ドット状、ジグザグ状又は波状等に分布するパターンが挙げられる。容器1の用途に合わせて、木目調、又は布目調等のパターンを有する凹凸構造が選択されてもよい。
【0034】
使用時の不要な剥離を抑える観点から、凹凸部22aの表面の算術平均粗さRaは、0.1mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましく、0.5mm以上がさらに好ましい。使用後の手による剥離を容易にする観点からは、上記算術平均粗さRaは5.0mm以下が好ましく、3.0mm以下がより好ましく、1.0mm以下がさらに好ましい。一方、平滑部22bの表面の算術平均粗さRaは通常、0.01~0.1mm程度である。
【0035】
フィルム3の剥離を抑える観点から、凹凸部22aにおける凹部と凹部(又は凸部と凸部)の間隔dは、1.5mm以下が好ましく、1.2mm以下がより好ましい。フィルム3を剥がすときの引っ掛かり又は破れを減らす観点からは、上記間隔dは、0.2mm以上が好ましく、0.3mm以上がより好ましい。
【0036】
フィルム3の剥離を抑える観点から、凹部の深さに対する凹部と凹部の間隔の比(又は凸部の高さに対する凸部と凸部の間隔の比)は、0.5~5倍が好ましい。
【0037】
また、凹部又は凸部の壁面はフランジ部22の平滑部22bの表面に対して傾斜していてもよい。その傾斜角度θは45°以上が好ましく、50°以上がより好ましい一方、通常は110°以下であり、90°以下が好ましい。
【0038】
フランジ部22において、凹凸部22aは、剥離のきっかけとなる一部を除く領域に設けることができる。剥離のきっかけとなる平滑部22bは、フランジ部22のいずれの位置に設けられてもよい。
【0039】
収容部21が四角形状である場合、平滑部22bは、フランジ部22の4隅の少なくとも1つに位置することが好ましい。4隅の角は手で剥離のきっかけを作りやすく、また剥離した後のフィルム3を手でつまみやすいため、剥離が容易となる。本実施形態においては、4隅のすべてに平滑部22bが設けられており、いずれの角からも剥離することができる。
【0040】
フランジ部22の外周側に凹凸部22aを配置し、内周側に平滑部22bを配置することもできる。容器1に蓋材が設けられる場合、蓋材は平滑部22bと接触するように配置される。この場合、凹凸部22aにより通常使用時のフィルム3の剥がれを抑え、蓋材を取り外した後、平滑部22bにより剥離のきっかけを形成することができる。
【0041】
<熱可塑性樹脂>
容器本体2に使用できる熱可塑性樹脂としては、例えばオレフィン系樹脂、エステル系樹脂、又はスチレン系樹脂等が挙げられる。
【0042】
容器本体2に使用できるオレフィン系樹脂としては、例えばプロピレン系樹脂、密度が0.942g/cm以上0.965g/cm以下の高密度ポリエチレン等のエチレン系樹脂等が挙げられる。ドローダウンを抑制する観点から、ポリオレフィンに長鎖分岐ポリプロピレンを5~25質量%配合することも好ましい。
【0043】
容器本体形成用シート2′の成形時の厚みむら制御の観点からは、オレフィン系樹脂のメルトフローレートは、0.2g/10min以上が好ましく、0.5g/10min以上がより好ましい。一方、ドローダウンを抑制する観点から、上記メルトフローレートは、5.0g/10min以下であることが好ましく、3.0g/10min以下であることがより好ましい。上記メルトフローレートは、JIS K7210に準拠して加熱温度230℃、荷重2.16kgfの条件下において測定された値である。
【0044】
容器本体2に使用できるエステル系樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、又はポリ乳酸(PLA)等が挙げられる。また、これらの樹脂のモノマーの一部をイソフタル酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、アジピン酸、トリメチレングリコール、又は1,4-シクロヘキサンジメタノール等のコモノマーに置換した共重合体を使用することもできる。これらのコモノマー由来成分はエステル系樹脂中に1~25質量%含まれていてよい。
【0045】
エステル系樹脂の極限粘度は、容器本体形成用シート2′の安定成形の観点から、0.5dl/g以上が好ましく、0.6dl/g以上がより好ましい。一方、ドローダウン抑制の観点から、上記極限粘度は、1.3dl/g以下が好ましく、1.1dl/g以下がより好ましい。上記極限粘度は、フェノール及びテトラクロロエタンを重量比50:50で混合した混合溶媒100ml中に試料1.0gを溶解させた後、温度30℃下で測定した値である。
【0046】
また、成形性の観点から、エステル系樹脂のガラス転移点(Tg)は、40~110℃であることが好ましく、50~100℃であることがより好ましい。上記ガラス転移点(Tg)は、容器本体形成用シート2′より5mg採取し、窒素中にて285℃で5分間溶融後、急冷し、その急冷物を昇温速度20℃/分の条件下で示差走査熱量測定した値である。
【0047】
容器本体2に使用できるスチレン系樹脂としては、例えば汎用ポリスチレン樹脂(GPPS:General Purpose PolyStyrene)、ゴム変性ポリスチレン樹脂、又はこれらの混合物等が挙げられる。汎用ポリスチレン樹脂は、通常はスチレンホモポリマーをいう。ゴム変性ポリスチレン樹脂は、耐衝撃性ポリスチレン(HIPS:High Impact Polystyrene)とも呼ばれる。
【0048】
容器本体2は、フィラーを含有することができる。容器本体2におけるフィラーの含有量は、容器本体2中の樹脂材料の削減の観点から、5質量%以上が好ましく、10質量%以下がより好ましい。一方、成形時の圧縮強度を高める観点から、上記フィラーの含有量は、60質量%以下が好ましく、50質量%以下がより好ましい。
なお、フィラーとしては、後述するフィルム3と同様のフィラーを使用できる。
【0049】
容器本体2は発泡体であってもよい。発泡方法としては、例えば化学発泡、物理発泡、又は超臨界発泡等の公知の方法が挙げられる。容器本体2の軽量化の観点から、発泡倍率は1.1倍以上が好ましく、1.5倍以上がより好ましい。一方、変形を抑制する観点から、発泡倍率は3倍以下が好ましく、2倍以下がより好ましい。
【0050】
容器本体2は、単層構造でもよいし、多層構造でもよい。多層構造は、最外層の熱可塑性樹脂の種類によって、フィルム3の接着強度を調整することができ、好ましい。
【0051】
(フィルム)
フィルム3は、機械的強度に優れる熱可塑性樹脂フィルムであるため、容器本体2と接着しやすく、剥離後の包装用フィルムとしての取扱性にも優れる。
【0052】
<熱可塑性樹脂>
フィルム3に使用できる熱可塑性樹脂としては、例えばオレフィン系樹脂、エステル系樹脂、スチレン系樹脂、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-6,10、及びナイロン-6,12等のアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、又はポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらの1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。機械的強度の観点からは、フィルム3は、オレフィン系樹脂又はエステル系樹脂を主成分とすることが好ましく、オレフィン系樹脂を主成分とすることがより好ましい。主成分とは、フィルム中の含有量が50質量%を超えることをいう。
【0053】
フィルム3に使用できるオレフィン系樹脂としては、プロピレン系樹脂、又はエチレン系樹脂等が挙げられる。なかでも、成形性及び機械的強度の観点からは、プロピレン系樹脂が好ましい。
【0054】
プロピレン系樹脂としては、例えばプロピレンを単独重合させたアイソタクティックホモポリプロピレン、シンジオタクティックホモポリプロピレン等のプロピレン単独重合体、プロピレンを主体とし、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、及び4-メチル-1-ペンテン等のα-オレフィン等を共重合させたプロピレン共重合体等が挙げられる。プロピレン共重合体は、2元系でも3元系以上の多元系でもよく、またランダム共重合体でもブロック共重合体でもよい。
【0055】
フィルム3に使用できるエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、及びポリエチレンナフタレート等が挙げられる。
【0056】
<フィラー>
フィルム3は、フィラーを含有することができる。フィラーとしては、無機フィラー又は有機フィラーが挙げられる。フィラーの含有により、多孔質樹脂フィルムの形成が容易となる。また、フィルム3の白色度又は不透明度を高めることができる。フィルム3が含有するフィラーは、上記無機フィラー又は有機フィラーの1種であってもよいし、2種以上の組み合わせであってもよい。
【0057】
なかでも、コスト及び粒径の選択のしやすさ等の観点から、無機フィラーが好ましい。無機フィラーとしては、例えば重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、ルチル型二酸化チタン等の酸化チタン、焼成クレイ、シリカ、珪藻土、白土又はタルク等の無機粒子が挙げられる。なかでも、重質炭酸カルシウム、クレイ又は珪藻土は、空孔の成形性が良好で、安価なために好ましい。なお、分散性改善等の目的から、無機フィラーの表面は脂肪酸等の表面処理剤で表面処理されていてもよい。
【0058】
フィルム3の白色度又は不透明度を高くする観点からは、フィルム3中のフィラーの含有量は、10質量%以上であることが好ましく、15質量%以上がより好ましい。また、フィルム3の成形の均一性を高める観点からは、フィルム3中のフィラーの含有量は、70質量%以下であることが好ましく、50質量%以下がより好ましい。
【0059】
フィラーの平均粒子径は、空孔の形成の容易性の観点から、0.01μm以上が好ましく、0.1μm以上がより好ましい。引裂き耐性等の機械的強度を付与する観点からは、フィラーの平均粒子径は、15μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。
【0060】
無機フィラーの平均粒子径は、粒子計測装置、例えばレーザー回折式粒子径分布測定装置(マイクロトラック、株式会社日機装製)により測定した体積累積で50%にあたる体積平均粒子径(累積50%粒径)である。
【0061】
<その他の添加剤>
必要に応じて、フィルム3は、防曇剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、耐候安定剤、又は紫外線吸収剤等の高分子分野で一般に用いられる添加剤を含むことができる。フィルム3中のこれら添加剤の含有量は、通常、添加剤の種類ごとに独立して0.01~5質量%である。
【0062】
<厚み及び構造>
フィルム3の厚みは、剥離時のシワの発生又は破れを抑える観点からは、20μm以上が好ましく、40μm以上がより好ましい。一方、軽量化の観点からは、フィルム3の厚みは、200μm以下が好ましく、150μm以下がより好ましい。
【0063】
フィルム3は、単層構造であってもよく、多層構造であってもよい。多層構造の場合、各層により、白色不透明性、印刷層に用いられるインクとの密着性、フィルム3と接着層4との密着性及び断熱性等の各種機能を付与することができる。
【0064】
フィルム3は、無延伸フィルムでも延伸フィルムでもよい。機械的強度の観点からは、フィルム3は、延伸フィルムであることが好ましく、2軸延伸フィルムであることがより好ましい。
【0065】
フィルム3の表面は、隣接する層との密着性を高める観点から、活性化処理により活性化されていてもよい。活性化処理としては、例えばコロナ放電処理、フレーム処理、プラズマ処理、グロー放電処理、又はオゾン処理等が挙げられる。なかでも、コロナ放電処理又はフレーム処理が好ましく、コロナ処理がより好ましい。
【0066】
(接着層)
接着層4は、フィルム3を容器本体2に疑似接着させる。疑似接着とは、通常使用時は容器本体2から剥離しない程度の接着強度を有するが、フィルム3を剥離するときには手で剥離できる程度の接着強度を有することをいう。
【0067】
疑似接着により、フィルム3と接着層4の界面か、接着層4と容器本体2との界面においてフィルム3が剥離する。または、接着層4が凝集破壊することにより、フィルム3が剥離する。
【0068】
接着層4は、その材料として熱可塑性樹脂を使用し、その樹脂組成物を押出成形することによって形成することができる。また、接着層4の材料として粘着剤を使用し、当該粘着剤を塗工することよっても、接着層4を形成することができる。
【0069】
<熱可塑性樹脂>
接着層4に使用できる熱可塑性樹脂としては、フィルム3に使用する熱可塑性樹脂と同様のものが挙げられる。
【0070】
フィルム3と容器本体2とも十分に接着する観点からは、接着層4の熱可塑性樹脂としては、密度が0.900~0.935g/cmの低密度又は中密度のポリエチレン、密度が0.880~0.940g/cmの直鎖状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒を用いて製造されたメタロセン系ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-アクリル酸共重合体、エチレン-アクリル酸アルキルエステル共重合体、アルキル基の炭素数が1~8のエチレン-メタクリル酸アルキルエステル共重合体、及びエチレン-メタクリル酸共重合体のZn、Al、Li、K、Na等の金属塩等の融点が60~130℃のエチレン系樹脂が好ましく挙げられる。なかでも、X線法で計測される結晶化度が10~60%、数平均分子量が10,000~40,000の低密度又は中密度ポリエチレンか、又は直鎖状低密度ポリエチレンがより好ましい。
【0071】
フィルム3を剥離可能に接着する観点からは、接着層4には容器本体2の表層と非相溶性の熱可塑性樹脂を用いることが好ましい。具体的には、容器本体2がオレフィン系樹脂からなる場合、接着層4にはエステル系樹脂又はスチレン系樹脂等を使用することが好ましい。また、容器本体2がエステル系樹脂又はスチレン系樹脂からなる場合、接着層4にはオレフィン系樹脂を用いることが好ましい。
【0072】
接着強度の調整の観点から、容器本体2の表層と非相溶性の熱可塑性樹脂に、相溶性の熱可塑性樹脂を併用することもできる。例えば、容器本体2の表層にオレフィン系樹脂、接着層4にスチレン系樹脂を使用すると十分な接着強度が得られない場合、スチレン系樹脂にオレフィン系樹脂を併用することにより、接着層4の容器本体2との接着強度を高めることができる。
疑似接着の観点からは、非相溶性の熱可塑性樹脂に併用する相溶性の熱可塑性樹脂の配合量は、その合計に対して30質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましい。
【0073】
接着層4に使用する熱可塑性樹脂の融点は、フィルム3の熱可塑性樹脂より低くてもよい。フィルム3、接着層4及び容器本体形成用シート2′を熱と圧力を加えて積層する際に、フィルム3が溶融することなく積層が可能になる。また使用後の容器1を加熱したとき、融点が低い接着層4が溶融してフィルム3が剥離しやすくなる。
【0074】
接着強度の制御を容易にする観点から、接着層4は、粘着付与剤又は可塑剤を含有することができる。粘着付与剤としては、例えば水素化石油樹脂、芳香族炭化水素樹脂、又は脂肪族炭化水素樹脂等が挙げられる。水素化石油樹脂としては、例えば部分水添石油樹脂等が挙げられる。芳香族炭化水素樹脂としては、例えばテルペン系樹脂、ロジン系樹脂、又はスチレン系樹脂等が挙げられる。粘着付与剤又は可塑剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用してもよいが、通常使用時の接着層4の剥離を抑える観点からは、接着層4に使用する熱可塑性樹脂との相溶性が高いことが好ましい。
【0075】
熱可塑性樹脂を使用する場合の接着層4の厚みは、接着性を高める観点からは、0.5μm以上が好ましく、0.7μm以上がより好ましく、1μm以上がさらに好ましい。同厚みは、接着層4内部での凝集破壊を抑える観点からは、10μm以下が好ましく、6μm以下がより好ましい。
【0076】
<粘着剤>
接着層4に使用できる粘着剤としては、例えばアクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、又はゴム系粘着剤が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用することができる。なかでも、熱成形時の熱による劣化又は臭気の発生が少ないアクリル系粘着剤又はシリコーン系粘着剤が好ましい。
【0077】
粘着層を用いる場合の接着層4の厚みは、接着性を高める観点からは、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、10μm以上がさらに好ましい。接着層4内部での凝集破壊を抑える観点からは、接着層4の厚みは、30μm以下が好ましく、25μm以下がより好ましく、20μm以下がさらに好ましい。
【0078】
<その他の添加剤>
必要に応じて、接着層4は、フィルム3と同様の添加剤を含有することができる。
【0079】
(印刷層)
容器本体2又はフィルム3に印刷を施すことにより、容器1は印刷層を備えていてもよい。容器本体2のリサイクルを容易にする観点からは、フィルム3に印刷を施し、容器本体2に印刷を施さないことが好ましい。
【0080】
容器本体2はいずれの面も印刷可能であるが、内容物、特に食品との接触を避ける観点からは、印刷層は表層よりも下側に設けられることが好ましい。
フィルム3に印刷を施す場合、フィルム3の剥離強度を安定化する観点から、フィルム3の接着層4と反対側の面に印刷を施すことができる。内容物、特に食品との接触を避ける観点からは、フィルム3の接着層4側の面に印刷層を施すことが好ましい。
【0081】
印刷情報としては、例えば商品名、ロゴ等の商品の表示、製造元、販売会社名、使用方法、又はバーコード等が挙げられる。印刷方法としては、例えばグラビア印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、シール印刷、又はスクリーン印刷等が挙げられる。
【0082】
[容器の製造方法]
(一体成形による製造方法)
容器1の製造方法は特に限定されないが、例えば容器本体形成用シート2′上に、熱可塑性樹脂フィルムである接着層4及びフィルム3をこの順に積層した後、この積層体を一体として熱成形することにより、製造できる。
【0083】
<フィルム又はシートの成形>
単層のフィルム又はシートの成形方法としては、例えばスクリュー型押出機に接続された単層又は多層のTダイ、Iダイ等により溶融樹脂をシート状に押し出すキャスト成形、カレンダー成形、圧延成形、インフレーション成形等を用いることができる。樹脂と有機溶媒又はオイルとの混合物を、キャスト成形又はカレンダー成形した後、溶媒又はオイルを除去することにより、フィルム又はシートが成形されてもよい。
【0084】
フィルム及びシートの積層方法としては、共押出法、押出ラミネート法、塗工法、又は熱ラミネート法等が挙げられ、これらを組み合わせることもできる。
共押出法は、別々の押出機において溶融混練された各層の樹脂組成物をフィードブロック又はマルチマニホールド内で積層して押し出し、フィルム成形と積層を並行に行う。押出ラミネーション法は、予め形成されたフィルム上に樹脂組成物を押出して他のフィルムを形成及び積層する。塗工法では、樹脂の溶液、エマルジョン又はディスパージョンをフィルム上に塗工して乾燥し、他のフィルムを形成及び積層する。熱ラミネート法では、フィルムとシートの間に接着層4のフィルムを挟んで加熱し、貼り合わせる。
【0085】
<延伸>
各フィルム及びシートは、積層前に個別に延伸されていてもよいし、積層後にともに延伸されてもよい。また、無延伸フィルムと延伸フィルムとが積層された後に再び延伸されてもよい。
【0086】
使用できる延伸方法としては、例えばロール群の周速差を利用した縦延伸法、テンターオーブンを利用した横延伸法、これらを組み合わせた逐次二軸延伸法、圧延法、テンターオーブンとパンタグラフの組み合わせによる同時二軸延伸法、テンターオーブンとリニアモーターの組み合わせによる同時二軸延伸法等が挙げられる。また、スクリュー型押出機に接続された円形ダイを使用して溶融樹脂をチューブ状に押し出し成形した後、これに空気を吹き込む同時二軸延伸(インフレーション成形)法等も使用できる。
【0087】
熱成形後の容器本体2のねじれ又はひけを抑制する観点から、熱成形前の積層体を加熱して応力を緩和することが好ましい。
【0088】
<熱成形>
熱成形法としては、一般的な真空成形機、圧空成形機又は真空圧空成形機を用いた公知の技術が挙げられる。例えば、真空成形機では、容器本体形成用シート2′、接着層4及びフィルム3の積層体を加熱した後、孔が設けられた金型に設置する。孔から吸引することにより、積層体を金型に密着させて成形する。圧空成形機では、圧空箱を設けて内部を圧空にするか、又は積層体を挟んで真空と圧空の両方を併用して金型に積層体を押し付ける。これにより軟化した積層体に金型形状が転写される。その後、数秒間空気を吹き付ける等して冷却する。真空圧空成形機では、積層体の片面を熱板で加熱して圧空する。
【0089】
熱成形の条件は、通常の熱成形条件を使用できる。加熱方法としてはヒーターによる輻射熱、蒸気加熱等が挙げられる。加熱は、積層体の片側から行ってもよく、容器本体形成用シート2′の両面側から行ってもよい。中でも、容器本体形成用シート2′の両面側から加熱を行う方法が複雑な形状を安定的に成形できるために好ましい。シート温度は例えば容器本体形成用シート2′の材質の融点より10~30℃低い温度が好ましい。たとえば、ポリプロピレンで160℃程度、ポリエチレンテレフタレート(PET)で250℃程度に加熱される。
【0090】
成形された容器1を金型から取り出した後、必要であれば打ち抜き刃により打ち抜いて不要な部分を除去する。除去した不要分は粉砕して再利用することができる。
【0091】
(接合による製造方法)
容器1は、容器本体2を単独で熱成形し、フィルム3の表面に粘着剤を塗工して接着層4を形成した後、容器本体2とフィルム3を接合することによっても、製造可能である。
【0092】
<粘着剤の塗工>
フィルム3を成形した後、フィルム3に粘着剤を塗工して接着層4を形成する。粘着剤の塗工は、例えばロールコーター、ブレードコーター、バーコーター、エアーナイフコーター、サイズプレスコーター、グラビアコーター、ダイコーター、リップコーター、スプレーコーター等の塗工装置を用いて行うことができる。
【0093】
<フィルムの接合>
粘着剤が塗工されたフィルム3を加熱し、容器本体2の開口を覆うように配置する。その後、空気圧を加えてフィルム3を容器本体2に密着させる。これにより、フィルム3を容器本体2の上面に密着させて接合することができる。また、容器本体2に真空孔を備えておき、容器本体2側から吸引してフィルム3を容器本体2に密着させることもできる。
【0094】
[容器の用途]
容器1の用途は特に限定されず、例えば店舗で販売される惣菜、弁当等の食品の包装容器、製造現場で用いられる部品、半導体等の搬送トレイ、販売容器等として使用することができる。特に、剥離したフィルム3により袋体5を形成できる容器1は、食品用として好適に用いることができる。容器1内の食品を保存又は廃棄する際に、袋体5によって食品を保護でき、手を汚さず廃棄できる。
【0095】
[包装用フィルム又は袋体]
容器1から剥がされたフィルム3は、容器1の内容物を保護するための包装用フィルムとして使用できる。フィルム3の端部をまとめることにより袋体5として使用することもできる。例えば、容器1内の食べ残しを袋体5に収容したり、容器1上の未使用の部品を袋体5に収容したりすることができ、利便性が高い。袋体5の開口は、ゴム、ひも、クロージャ等の留め具を用いて閉じることができる。袋体5の底面は容器1の底面よりも面積が小さくなっており、コンパクトに収容可能である。
【実施例
【0096】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」、「%」等の記載は、断りのない限り、質量基準の記載を意味する。
【0097】
[積層フィルム(a1)]
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製、製品名:ノバテックPP MA4、MFR(230℃、2.16kg荷重):5g/10分、融点:167℃)84質量%、重質炭酸カルシウム微細粉末(備北粉化工業社製、製品名:ソフトン #1800、体積平均粒子径:1.8μm)15質量%、及びルチル型二酸化チタン微細粉末(石原産業社製、製品名:タイペーク CR-60、体積平均粒子径:0.2μm)1質量%をミキサーで混合した。次いで、押出機を用いて230℃で溶融混練し、フィルム用の樹脂組成物を調製した。
【0098】
フィルム用の樹脂組成物を240℃に設定した押出機で溶融混練した。一方、接着層用の樹脂としてハイインパクトポリスチレン(PSジャパン社製、製品名:H9152、MFR(200℃、5kg荷重):5.5g/10分)100質量%を別の240℃に設定した押出機において溶融混練し、接着層用の樹脂組成物を調製した。
【0099】
溶融混練したそれぞれの樹脂組成物を1台の共押出Tダイに供給し、Tダイ内で2層に積層して240℃でTダイよりフィルム状に押し出した。これにより、ポリプロピレン及びフィラーからなるフィルムと、ハイインパクトポリスチレンからなる接着層が積層された2層フィルムを得た。この2層フィルムを冷却装置により冷却して、2層構造の無延伸フィルムを得た。得られた無延伸フィルムを150℃に加熱し、複数のロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。次いで60℃の温度にまで冷却した後、再び150℃の温度にまで加熱して、テンターを用いて横方向に8倍延伸した。160℃の温度でアニーリング処理した後、60℃の温度にまで冷却して、2層構造の白色不透明な積層フィルム(a1)を得た。積層フィルム(a1)の全厚みは、80μm(5μm/75μm)であった。
【0100】
[積層フィルム(a2)]
積層フィルム(a1)において接着層用の樹脂として使用したハイインパクトポリスチレン(HIPS)と、プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製、製品名:ノバテックPP MA4)とを95質量%:5質量%の割合で配合し、接着層を形成したこと以外は、積層フィルム(a1)と同様にして、全厚みが80μm(5μm/75μm)の積層フィルム(a2)を得た。
【0101】
[積層フィルム(a3)]
積層フィルム(a1)において接着層用の樹脂として使用したハイインパクトポリスチレン(HIPS)と、プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製、製品名:ノバテックPP MA4)とを50質量%:50質量%の割合で配合し、接着層を形成したこと以外は、積層フィルム(a1)と同様にして、全厚みが80μm(5μm/75μm)の積層フィルム(a3)を得た。
【0102】
[積層フィルム(a5)]
ポリプロピレン(日本ポリプロ社製、製品名:MA3U、MFR(230℃、2.16kg荷重):15g/10分)100質量%を、押出機を用いて230℃で溶融混練し、フィルム用の樹脂組成物を調製した。
一方、接着層用の樹脂としてエチレン・メタクリル酸メチル系共重合体(住友化学(株)製、製品名:アクリフトWH206-F、MMA含量20wt%、MFR:2g/10分)と、粘着付与剤(ハリマ化成(株)製、製品名:ハリタックSE10、安定化ロジンエステル、軟化点:78-87℃、酸価:2-10gKOH)とを70質量%:30質量%の割合で混合した。これを150℃に加熱した押出機で溶融し、接着層用組成物を調製した。
【0103】
溶融混練したそれぞれの樹脂組成物を1台の共押出Tダイに供給し、Tダイ内で2層に積層して240℃でTダイよりフィルム状に押し出して、2層フィルムを得た。この2層フィルムを冷却装置により冷却して、2層構造の無延伸フィルムを得た。得られた無延伸フィルムを150℃に加熱し、複数のロール群の周速差を利用して縦方向に5倍延伸した。次いで60℃の温度にまで冷却した後、再び150℃の温度にまで加熱して、テンターを用いて横方向に8倍延伸した。160℃の温度でアニーリング処理した後、60℃の温度にまで冷却して、2層構造の白色不透明な積層フィルム(a5)を得た。積層フィルム(a5)の全厚みは、80μm(5μm/75μm)であった。
【0104】
[容器本体形成用シート(b1)]
プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製、製品名:ノバテックPP EA9、MFR(230℃、2.16kg荷重):0.5g/10分、融点:167℃)70質量%、重質炭酸カルシウム微細粉末(備北粉化工業社製、製品名:ソフトン #1800、体積平均粒子径:1.8μm)28質量%、及びルチル型二酸化チタン微細粉末(石原産業社製、製品名:タイペーク CR-60、体積平均粒子径:0.2μm)2質量%をミキサーで混合した。次いで、押出機を用いて230℃で溶融混練し、ベース層の樹脂組成物を調製した。一方、プロピレン単独重合体(日本ポリプロ社製、製品名:ノバテックPP EA9)100質量%を、別の押出機を用いて230℃で溶融混練し、スキン層用の樹脂組成物を調製した。
【0105】
溶融混練したベース層の樹脂組成物とスキン層の樹脂組成物とを1台の共押出Tダイに供給し、Tダイ内でスキン層/ベース層/スキン層の3層に積層して240℃でTダイよりシート状に押し出した。この3層シートをセミミラー調チルロールとマット調ゴムロールとの間に導いて、挟圧(線圧約15N/cm)しながら冷却した。耳部を切り取った後、巻取機により巻き取って、容器本体形成用シート(b1)を得た。容器本体形成用シート(b1)は、3層構造の白色ポリオレフィン樹脂シートであり、全厚みが250μm(10μm/230μm/10μm)であった。
【0106】
[容器本体形成用シート(b2)]
A-PETシート(透明な非晶性ポリエチレンテレフタレート樹脂シート、RP東プラ製、製品名:NOACRYSTAL-V、厚み300μm)を容器本体形成用シート(b2)として用いた。
【0107】
[原料]
表1は、上記製造に使用された原料の一覧を示す。
【表1】

【0108】
[実施例1]
クロームメッキ処理ドラムドライヤーを蒸気で95℃に加熱し、積層フィルム(a1)と容器本体形成用シート(b1)とを、ドラムドライヤー側から容器本体形成用シート/積層フィルムの順に重ねて通した。積層フィルム側から赤外線ヒーターで加熱し、放射温度計で測定したシート表面温度が約140℃になるよう制御した。その後、水冷チルロールで線圧約20N/cmでニップして室温まで空冷し、得られた積層体を巻き取った。
【0109】
次いで、積層体を巻き出して加熱し、熱成形用金型を用いて真空成形した。真空成形には、上面ヒーター加熱方式で成形面積が500mm×500mmの小型真空成形機を用いた。
(熱成形用金型)
上記熱成形用金型として、底面がサイズ140mm×58mmの方形状であり、深さが35mmの真空成形用金型を用いた。底面は4隅が半径5mmの円弧状の角を有する略長方形であり、底面に対する内側の壁面のテーパー角度は30度である。フランジ部を形成する金型部分の外周の4隅は、半径15mmの円弧状に形成した。またフランジ部を形成する金型部分の表面に、内角が30度と60度のひし形状のパターンを有する凹凸構造を設けた。この凹凸構造の凹部と凹部の間隔は1mmであり、凹部の深さは0.5mmであった。
【0110】
熱成形時、フランジ部の4隅を形成する金型部分の凹凸構造を、シリコーン樹脂により埋めた。これにより、フランジ部の4隅を除く領域に凹凸部を形成した。真空成形機から熱成形体を取り出し、フランジ部の外周に沿ってトリミングすることにより、実施例1の容器を製造した。フランジ部の凹凸部における算術平均粗さRaを表面粗さ計により計測したところ、0.52mmであった。
【0111】
[実施例2]
実施例1において使用した積層フィルム(a1)を積層フィルム(a2)に変更したこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の容器を製造した。
【0112】
[比較例1]
積層フィルム(a1)を積層フィルム(a3)に代え、熱成形時に金型の凹凸構造を埋めずにそのまま用いてフランジ部の全部に凹凸部を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の容器を製造した。
【0113】
[比較例2]
積層フィルム(a1)を積層フィルム(a5)に代え、容器本体形成用シート(b1)を容器本体形成用シート(b2)に代えて、熱成形時に金型の凹凸構造を埋めずにそのまま用いてフランジ部の全部に凹凸部を形成したこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の容器を製造した。
【0114】
[比較例3]
実施例1において使用した熱成形用金型のフランジ部を形成する面の凹凸構造をすべてシリコーン樹脂で埋めて熱成形し、フランジ部に凹凸部を形成しなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例3の容器を製造した。
【0115】
[評価]
各実施例及び比較例の容器について、次の評価を行った。
【0116】
(接着強度)
成形後の容器のフランジ部から60mm×15mmを切り取って、試験片を作製した。フランジ部の一部に凹凸部22aが設けられている場合は、試験片が凹凸部22aがある部分と凹凸部22aがない部分とを含むように切り取った。試験片は1つの容器から3個採取した。この試験片を用いて、JISZ 0238:1998(ヒートシール軟包装袋及び半剛性容器の試験方法)に準拠して、180度剥離試験を行った。
【0117】
試験片の一方の端部側の10mmを剥離してフィルムとシートに分離し、フィルムに80mm×15mmの補助片をセロハンテープで取り付けた。万能試験機(島津製作所社製、型式:AG-100kNXplus)の下側のチャックに、試験片の分離したシート側の一端を固定し、上側のチャックに補助片を固定した。続いて、引張速度300mm/minで、かつ180度の角度で剥離を行い、最大荷重を記録した。3つの試験片についての測定値の平均値を、フィルムの接着強度(N/15mm)として評価した。凹凸部22aが一部に設けられた試験片の接着強度は、凹凸部22aと平滑部22bとを含むフランジ部2全体の接着強度である。
【0118】
(手剥離試験)
各実施例及び比較例の容器から、表層のフィルムを剥がし始めるときの難易度を、下記のように官能評価した。
優良:すでに剥離しており爪を立てなくとも剥離できる
可:爪を立てることで剥離することができる
不可:爪を立てても剥離できない
【0119】
(実使用試験)
各実施例及び比較例の容器にリンゴを2個入れ、上面をラップフィルムで覆ったサンプルを2個1組としてダンボールで梱包し、宅配便で輸送した。到着後開梱し、容器のフランジ部においてフィルムが容器本体から浮き上がった状況を目視で確認した。
優良:凹凸部に浮きがなく、平滑部に浮きがある
良好:平滑部の浮いている部分が広がり、凹凸部においても浮いているが、フランジ部よりも内側の収容部の内面には浮きが見られない
不可:フランジ部よりも内側の収容部の内面まで浮きが進行している
【0120】
表2は、評価結果を示す。
【表2】
【0121】
表2に示すように、実施例1及び2によれば、容器のフランジ部に凹凸部を設けることにより、実使用において剥がれにくいが、手で容易に剥離できることがわかる。一方、フランジ部の全部に凹凸部を設けた比較例1及び2は、接着強度が強く、手で剥離することが難しかった。凹凸部がない比較例3は剥がしやすいが、使用中に剥がれてしまった。
【符号の説明】
【0122】
1・・・容器、2・・・容器本体、22・・・フランジ部、22a・・・凹凸部、22b・・・平滑部、3・・・フィルム、4・・・接着層

図1
図2
図3
図4