(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】空気作動弁、及び、当該空気作動弁を有する原子力発電プラント
(51)【国際特許分類】
F16K 31/122 20060101AFI20241121BHJP
F16K 15/03 20060101ALI20241121BHJP
F16K 1/22 20060101ALI20241121BHJP
G21D 1/00 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
F16K31/122
F16K15/03 Z
F16K1/22 B
G21D1/00 V
(21)【出願番号】P 2021123674
(22)【出願日】2021-07-28
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平野 聖
(72)【発明者】
【氏名】平澤 大助
(72)【発明者】
【氏名】小野寺 賢司
(72)【発明者】
【氏名】久保田 亮
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】実開昭54-026717(JP,U)
【文献】中国実用新案第210318526(CN,U)
【文献】特開2014-085227(JP,A)
【文献】特開昭63-030784(JP,A)
【文献】特開平07-180778(JP,A)
【文献】特開平05-280660(JP,A)
【文献】特公昭48-021979(JP,B1)
【文献】特開平10-288273(JP,A)
【文献】特開平07-332531(JP,A)
【文献】実開昭54-003630(JP,U)
【文献】特開2003-090457(JP,A)
【文献】中国実用新案第209430836(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/122
F16K 15/03
F16K 1/22
G21D 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流路が形成された弁箱と、
前記弁箱の内部に
延在して配置され、かつ、前記流路を
それぞれ開閉する
第1弁体及び第2弁体と、
前記
第1弁体を作動させて前記流路を開閉する第1シリンダ機構と、
前記第1シリンダ機構と同じ方向に前記
第1弁体を作動させて前記流路を開閉する第2シリンダ機構と、
前記第2弁体を作動させて前記流路を開閉する第3シリンダ機構と、
前記第3シリンダ機構と同じ方向に前記第2弁体を作動させて前記流路を開閉する第4シリンダ機構と、を備え、
前記第1シリンダ機構と前記第2シリンダ機構は、前記
第1弁体の両サイドに水平方向に並んで配置され、
前記第3シリンダ機構と前記第4シリンダ機構は、前記第2弁体の両サイドに水平方向に並んで配置されている
ことを特徴とする空気作動弁。
【請求項2】
請求項1に記載の空気作動弁において、
前記
第1弁体及び前記第2弁体がスイング逆止弁として構成されている
ことを特徴とする空気作動弁。
【請求項3】
請求項1に記載の空気作動弁において、
前記
第1弁体及び前記第2弁体がバタフライ弁として構成されている
ことを特徴とする空気作動弁。
【請求項4】
原子炉圧力容器と、
前記原子炉圧力容器に接続された配管と、
前記配管を支持する配管支持構造物と、
前記配管に設置された空気作動弁と、を有し、
前記空気作動弁は、
内部に流路が形成された弁箱と、
前記弁箱の内部に
延在して配置され、かつ、前記流路を開閉する
それぞれ開閉する
第1弁体及び第2弁体と、
前記
第1弁体を作動させて前記流路を開閉する第1シリンダ機構と、
前記第1シリンダ機構と同じ方向に前記
第1弁体を作動させて前記流路を開閉する第2シリンダ機構と、
前記第2弁体を作動させて前記流路を開閉する第3シリンダ機構と、
前記第3シリンダ機構と同じ方向に前記第2弁体を作動させて前記流路を開閉する第4シリンダ機構と、を備え、
前記第1シリンダ機構と前記第2シリンダ機構は、前記
第1弁体の両サイドに水平方向に並んで配置され、
前記第3シリンダ機構と前記第4シリンダ機構は、前記第2弁体の両サイドに水平方向に並んで配置されている
ことを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項5】
請求項4に記載の原子力発電プラントにおいて、
前記第1シリンダ機構と前記第2シリンダ機構
と前記第3シリンダ機構と前記第4シリンダ機構は、前記配管支持構造物又は前記配管の隙間に配置されている
ことを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項6】
請求項4又は請求項5に記載の原子力発電プラントにおいて、
1つの前記配管に前記空気作動弁が複数設置されている
ことを特徴とする原子力発電プラント。
【請求項7】
請求項4乃至請求項6のいずれか一項に記載の原子力発電プラントにおいて、
前記空気作動弁が前記原子炉圧力容器の内部から外部に流出する蒸気の流れを遮断する隔離弁に用いられている
ことを特徴とする原子力発電プラント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気作動弁、及び、当該空気作動弁を有する原子力発電プラントに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な場所に、空気を用いて弁体を駆動する空気作動弁(例えば、特許文献1参照)が用いられている。例えば、原子力発電プラントでは、原子炉圧力容器や原子炉格納容器等に取り付けられた配管の隔離弁に空気作動弁が利用されている。空気作動弁は、駆動部であるシリンダに高圧の操作空気を吸排気することにより、弁体と連動したシリンダピストンの位置を制御して流路を開閉する弁である。空気作動弁は、弁の差圧等により開閉作動に高いトルクを要する場合に、シリンダの出力を上げることが要望される。シリンダの出力を上げる手法としては、大きく二つあり、「操作空気の高圧化」手法又は「シリンダサイズの拡張」手法がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一つ目の「操作空気の高圧化」手法については、操作空気の圧力が1.0MPaを超えた場合、高圧ガス保安法に基づく高圧ガスの管理が必要となる。そのため、高圧ガス管理ができないメーカでは、一つ目の「操作空気の高圧化」の取り扱いができなかった。したがって、特許文献1に開示された従来技術は、一つ目の「操作空気の高圧化」手法を採用した場合に、以下のような課題があった。すなわち、特許文献1に開示された従来技術は、空気作動弁による弁体の開閉動作を円滑に行うために、弁体の開閉動作に高いトルクを要する場合に、操作空気を高圧化させてしまうと、高圧ガス保安法に基づいた管理を行わなければならない。そのため、製造できないメーカが出てくる可能性があった。
【0005】
また、二つ目の「シリンダサイズの拡張」手法は、操作空気の受圧面積拡大に伴う出力向上を目的としたものだが、シリンダのサイズが拡張することにより、狭隘部に設置されている空気作動弁の原子力発電プラントへの配置が困難になってしまう可能性があった。したがって、特許文献1に開示された従来技術は、二つ目の「シリンダサイズの拡張」手法を採用した場合に、以下のような課題があった。すなわち、特許文献1に開示された従来技術は、空気作動弁による弁体の開閉動作に高いトルクを要する場合に、シリンダのサイズを拡大してシリンダ機構の出力を上げることでトルクを増大させてしまうと、シリンダのサイズが大きくなる。そのため、配置し難くなる可能性があった。
【0006】
本発明は、前記した課題を解決するためになされたものであり、操作空気を高圧化したりシリンダのサイズを拡大したりすることなく、弁体の開閉動作を円滑に行うことができる空気作動弁、及び、当該空気作動弁を有する原子力発電プラントを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため、本発明は、内部に流路が形成された弁箱と、前記弁箱の内部に延在して配置され、かつ、前記流路をそれぞれ開閉する第1弁体及び第2弁体と、前記第1弁体を作動させて前記流路を開閉する第1シリンダ機構と、前記第1シリンダ機構と同じ方向に前記第1弁体を作動させて前記流路を開閉する第2シリンダ機構と、前記第2弁体を作動させて前記流路を開閉する第3シリンダ機構と、前記第3シリンダ機構と同じ方向に前記第2弁体を作動させて前記流路を開閉する第4シリンダ機構と、を備え、前記第1シリンダ機構と前記第2シリンダ機構は、前記第1弁体の両サイドに水平方向に並んで配置され、前記第3シリンダ機構と前記第4シリンダ機構は、前記第2弁体の両サイドに水平方向に並んで配置されていることを特徴とする空気作動弁、及び、当該空気作動弁を有する原子力発電プラントとする。
その他の手段は、後記する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、操作空気を高圧化したりシリンダのサイズを拡大したりすることなく、弁体の開閉動作を円滑に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態に係る空気作動弁が用いられた小型モジュール原子力発電プラントにおける原子炉圧力容器の頂部の外観図である。
【
図2】本実施形態に係る空気作動弁が用いられた圧力容器隔離弁の外観図である。
【
図3】本実施形態に係る空気作動弁が用いられた圧力容器隔離弁の側断面図である。
【
図4】本実施形態に係る空気作動弁が用いられた圧力容器隔離弁の正断面図である。
【
図5】本実施形態に係る空気作動弁におけるシリンダ機構の概略構成図である。
【
図6B】変形例に係る隔離弁の軸部付近の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」と称する)について詳細に説明する。各図は、本発明を十分に理解できる程度に、概略的に示しているに過ぎない。よって、本発明は、図示例のみに限定されるものではない。また、各図において、共通する構成要素や同様な構成要素については、同一の符号を付し、それらの重複する説明を省略する。
【0011】
<空気作動弁、及び、当該空気作動弁を有する原子力発電プラントの構成>
以下、
図1乃至
図5を参照して、本実施形態1に係る空気作動弁7、及び、当該空気作動弁7を有する原子力発電プラント1の構成について説明する。本実施形態では、原子力発電プラント1が小型モジュール原子力発電プラント(SMR:Small Modular Reactor)であるものとして説明する。また、空気作動弁7が後記する圧力容器隔離弁6に用いられているものとして説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る空気作動弁7が用いられた小型モジュール原子力発電プラント2における原子炉圧力容器3の頂部の外観図(平面図)である。
図2は、空気作動弁7が用いられた圧力容器隔離弁6の外観図(
図1の一部を拡大した平面図)である。
図3は、空気作動弁7が用いられた圧力容器隔離弁6の側断面図である。
図4は、空気作動弁7が用いられた圧力容器隔離弁6の正断面図である。
図5は、空気作動弁7におけるシリンダ機構(第1シリンダ機構12及び第2シリンダ機構13)の概略構成図である。
【0013】
図1に示す例では、本実施形態に係る原子力発電プラント1としての小型モジュール原子力発電プラント2は、原子炉圧力容器3の頂部に2つの配管4が接続されている。各配管4は、配管支持構造物5によって移動不能に支持されている。各配管4の途中には、圧力容器隔離弁6が設置されている。圧力容器隔離弁6は、空気作動弁7によって作動する空気作動弁構造体である。各4配管に設置された圧力容器隔離弁6は、同様の構造になっている。
【0014】
図2に示すように、圧力容器隔離弁6は、2つの空気作動弁7を備えている。ここでは、原子炉圧力容器3に近い方に設置された空気作動弁7を「空気作動弁7a」と称し、原子炉圧力容器3から遠い方に設置された空気作動弁7を「空気作動弁7b」と称して説明する。
【0015】
空気作動弁7aと空気作動弁7bは、同様の構成になっている。具体的には、空気作動弁7aは、隔離弁(第1隔離弁11a)と、第1シリンダ機構12aと、第2シリンダ機構13aとを有している。第1シリンダ機構12aと第2シリンダ機構13aは、第1隔離弁11aの両脇に配置されている。同様に、空気作動弁7bは、隔離弁(第2隔離弁11b)と、第1シリンダ機構12bと、第2シリンダ機構13bとを有している。第1シリンダ機構12bと第2シリンダ機構13bは、第2隔離弁11bの両脇に配置されている。
【0016】
以下、第1隔離弁11aと第2隔離弁11bとを総称する場合に「隔離弁11」と称する。また、第1シリンダ機構12aと第1シリンダ機構12bとを総称する場合に「第1シリンダ機構12」と称する。また、第2シリンダ機構13aと第2シリンダ機構13bとを総称する場合に「第2シリンダ機構13」と称する。
【0017】
図3に、
図2に示すX1-X1線に沿って圧力容器隔離弁6を切断して得られる断面形状を示す。また、
図4に、
図2に示すX2-X2線に沿って圧力容器隔離弁6を切断して得られる断面形状を示す。
【0018】
図3に示すように、圧力容器隔離弁6は、第1隔離弁11aと第2隔離弁11bとが設けられた弁箱21を有している。弁箱21は、弁フタ23aで第1隔離弁11aを封止しているとともに、弁フタ23bで第2隔離弁11bを封止している。弁箱21の内部には、蒸気が流れる流路22と、後記する弁体24aが回動する可動空間32aと、後記する弁体24bが回動する可動空間32bとが形成されている。
【0019】
流路22は、
図3における弁箱21の右端部と可動空間32aとを接続する流路22aと、可動空間32aと可動空間32bとを接続する流路22bと、可動空間32bと
図3における弁箱21の左端部とを接続する流路22cとが形成されている。
【0020】
可動空間32aの内部には、流路22aを開閉する弁体24aが配置されている。
図3は、弁体24aが流路22aを閉鎖している状態を実線で示し、弁体24aが流路22aを開放している状態を破線で示している。本実施形態では、弁体24aは、ロッド25aによって回動自在に支持されたスイング逆止弁として構成されている。ロッド25aは、軸部35aを中心にして回動するように弁箱21の内部に取り付けられている。軸部35aは、水平方向に延在するように配置されている。弁体24aは、軸部35aを中心にしてロッド25aが回動することにより、上下方向に回動する(矢印A24a参照)。弁体24aは、上方向に回動することで流路22aを開放した状態になり、一方、下方向に回動することで流路22aを閉鎖した状態になる。弁体24aは、原子力発電プラント1の通常運転時に流路22aを閉鎖した状態になっており、原子炉圧力容器3内で想定を超える圧力が発生したときに流路22aを開放した状態になる。
【0021】
また、可動空間32bの内部には、流路22bを開閉する弁体24bが配置されている。
図3は、弁体24bが流路22bを閉鎖している状態を実線で示し、弁体24bが流路22bを開放している状態を破線で示している。本実施形態では、弁体24bは、ロッド25bによって回動自在に支持されたスイング逆止弁として構成されている。ロッド25bは、軸部35bを中心にして回動するように弁箱21の内部に取り付けられている。軸部35bは、水平方向に延在するように配置されている。弁体24bは、軸部35bを中心にしてロッド25bが回動することにより、上下方向に回動する(矢印A24b参照)。弁体24bは、上方向に回動することで流路22bを開放した状態になり、一方、下方向に回動することで流路22bを閉鎖した状態になる。弁体24bは、原子力発電プラント1の通常運転時に流路22bを閉鎖した状態になっており、原子炉圧力容器3内で想定を超える圧力が発生したときに流路22bを開放した状態になる。以下、弁体24aと弁体24bとを総称する場合に「弁体24」と称する。
【0022】
図4に示すように、空気作動弁7は、ダブルシリンダ構造になっており、軸部35を介して弁体24とロッド25を回動させるための第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13を有している。第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13は、弁体24の両サイド(両脇)に水平方向に並んで配置されている。ここで「水平方向に並んで配置されている」とは「水平方向の同じ高さの位置に配置されている」ことを意味している。第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13は、好ましくは、垂直方向に延在するように配置されているとよい。
図4及び
図5に示すように、第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13は、同様の構成になっている。具体的には、第1シリンダ機構12は、空気が出し入れされるシリンダ26と、シリンダ26内を摺動するピストン28と、ピストン28に取り付けられたピストンロッド27と、ピストン28の動きに連動して動く連動部材31と、ピストンロッド27と軸部35とを連結する連結部36とを有している。同様に、第2シリンダ機構13は、空気が出し入れされるシリンダ26と、シリンダ26内を摺動するピストン28と、ピストン28に取り付けられたピストンロッド27と、ピストン28の動きに連動して動く連動部材31と、ピストンロッド27と軸部35とを連結する連結部36とを有している。
【0023】
図5に示すように、シリンダ26は、内部にバネ30が配置されており、ピストン28を付勢する。シリンダ26の上端部には操作空気吸排気口29Uが設けられている。また、シリンダ26の下端部には操作空気吸排気口29Lが設けられている。空気作動弁7は、図示せぬ制御部によって操作空気吸排気口29Uと操作空気吸排気口29Lから操作空気の吸排気を行うことで、ピストン28を上下させる。また、空気作動弁7は、操作空気が無い場合に、バネ30により、弁体24を初期位置に戻す。
【0024】
図2及び
図4に示すように、空気作動弁7は、第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13に設けられた操作空気吸排気口29Uと操作空気吸排気口29Lの開閉動作を図示せぬ制御部によって制御することで、第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13を同じ方向に作動させる。これにより、空気作動弁7は、第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13のいずれか一方を弁体24の開閉動作を主導する機構として作動させ、他方を弁体24の開閉動作を補助する機構として作動させる。
【0025】
第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13のピストンロッド27は、連結部36を介して軸部35に連結されている。軸部35は、第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13のピストンロッド27が同じ方向に動くことにより、回転する。すなわち、ピストンロッド27の上下方向の往復運動が軸部35の正転・逆転の回転運動に変換される。その結果、軸部35は、軸心を中心とした軸回りに正転・逆転する。このとき、軸部35の回転に連動して弁体24とロッド25が上下方向に回動する。その結果、流路22が開閉する。
【0026】
このような空気作動弁7は、2つのシリンダ機構(第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13)で1つの弁体24を開閉するダブルシリンダ構造になっている(
図4参照)。そのため、弁の開閉に高いトルクが必要になった場合でも、空気作動弁7は、操作空気を高圧化したり第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13のシリンダ26のサイズを拡大したりすることなく、弁体24の開閉動作を円滑に行うことができる。なお、操作空気圧の高圧化を抑えられることから、本技術を採用することにより高圧ガス保安法に基づく管理が不要とすることが可能である。
【0027】
しかも、空気作動弁7は、第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13のシリンダ26のサイズを小型化することができる。特に、本実施形態に係る原子力発電プラント1としての小型モジュール原子力発電プラント2では、
図1に示すように、空気作動弁7が適用された圧力容器隔離弁6の周辺に、配管4、配管支持構造物5等が設置されている。そのため、圧力容器隔離弁6の周辺は、隙間の狭い狭隘部となっている。空気作動弁7は、第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13のシリンダ26のサイズを小型化することができるため、隙間の狭い圧力容器隔離弁6の周辺に配置し易くすることができる。
【0028】
<空気作動弁の主な特徴>
(1)
図2及び
図4に示すように、本実施形態に係る空気作動弁7は、内部に流路22が形成された弁箱21と、弁箱の内部に配置され、かつ、流路を開閉する弁体24と、弁体を作動させて流路を開閉する第1シリンダ機構12と、第1シリンダ機構と同じ方向に弁体を作動させて流路を開閉する第2シリンダ機構13と、を備えている。第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13は、弁体24の両サイド(両脇)に水平方向に並んで配置されている。第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13は、好ましくは、垂直方向に延在するように配置されているとよい。
【0029】
このような空気作動弁7は、2つのシリンダ機構(第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13)で1つの弁体24を開閉するダブルシリンダ構造になっている。このような空気作動弁7は、1つのシリンダ機構あたりの「径方向及び長さ方向サイズを小型化することができる」、「力量を低減することができる」、「重量が減ることにより重心の偏りを改善することができる」といった配置性・製造性・耐震性を改善する効果を奏することができる。そのため、空気作動弁7は、操作空気を高圧化したり第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13のシリンダ26のサイズを拡大したりすることなく、弁体24の開閉動作を円滑に行うことができる。しかも、空気作動弁7は、第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13のシリンダ26のサイズを小型化することができるため、隙間の狭い圧力容器隔離弁6の周辺に配置し易くすることができる。
【0030】
(2)
図4に示すように、本実施形態に係る空気作動弁7は、第1シリンダ機構のシリンダと第2シリンダ機構のシリンダ26は、上下方向に延在するように配置されているとよい。
【0031】
このような空気作動弁7は、配管支持構造物5や配管4等の構造物が設置された場所のように、隙間(特に水平方向の隙間)の狭い狭隘部に設置し易くすることができる。
【0032】
(3)
図3及び
図4に示すように、本実施形態に係る空気作動弁7は、弁体24がスイング逆止弁として構成されているとよい。
【0033】
このような空気作動弁7は、2つのシリンダ機構(第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13)の駆動力を軸部35に伝達して、軸部35を介して弁体24を回動させることで、流路22を円滑に開閉することができる。
【0034】
<原子力発電プラントの主な特徴>
(1)
図1に示すように、本実施形態に係る原子力発電プラント1は、空気作動弁7の第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13が配管支持構造物5又は配管4の隙間に配置された構成であるとよい。
【0035】
このような原子力発電プラント1は、隙間の狭い場所に空気作動弁7を良好に設置することができる。
【0036】
(2)
図2に示すように、本実施形態に係る原子力発電プラント1は、1つの配管4に空気作動弁7が複数設置された構成であるとよい。
【0037】
このような原子力発電プラント1は、流路22を閉鎖する場合に、流体(本実施形態では、蒸気)の流れを複数の空気作動弁7で確実に遮断することができる。
【0038】
(3)
図2に示すように、本実施形態に係る原子力発電プラント1は、空気作動弁7が原子炉圧力容器3の内部から外部に流出する蒸気の流れを遮断する隔離弁6に用いられた構成であるとよい。
【0039】
このような原子力発電プラント1は、操作空気を高圧化したりシリンダのサイズを拡大したりすることなく、蒸気の流れを良好に遮断することができる。
【0040】
本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、前記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。実施形態の構成の一部を他の構成に置き換えることが可能であり、実施形態の構成に他の構成を加えることも可能である。さらに、各構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換が可能である。
【0041】
例えば、本実施形態に係る空気作動弁は、
図6A及び
図6Bに示す隔離弁111に適用することができる。
図6Aは、変形例に係る隔離弁111の概略構成図である。
図6Bは、変形例に係る隔離弁111の軸部付近の概略構成図である。
【0042】
図6Aに示すように、隔離弁111は、弁体を90°回転させて弁を開閉させるバタフライ弁構造になっている。隔離弁111は、内部に流路122が形成されたボディ121と、ジスク124(弁体)と、第1シリンダ機構112と、第2シリンダ機構113と、を有している。
図6Aは、弁体としてのジスク124の両サイドに形成された2つの流路122が開放された状態を示している。2つの流路122は、ジスク124が矢印A124の方向に回転することで閉鎖される。
【0043】
ボディ121は、弁箱を構成する部材である。ジスク124は、流路122を開閉する弁体である。ジスク124(弁体)は、ボディ121の内部に回転自在に配置されている。ジスク124は、一体に構成された軸部123の回転に伴って回転することで、流路122を開放したり閉鎖したりする。軸部123は、ジスク124と一体に構成されたシャフトである。本変形例では、軸部123は、鉛直方向に延在するように配置されている。
【0044】
ボディ121は、軸部123(シャフト)を軸周りに回転自在に支持する支持部121aを備えている。本変形例では、支持部121aは、水平方向に延在する筒状の形状を呈しており、略中央に軸部123が配置され、軸部123の両脇に2つのシリンダ部140が配置された構成になっている。本変形例では、右側のシリンダ部140が連結チューブ149を介して第1シリンダ機構112のシリンダ126と連結されている。また、左側のシリンダ部140が連結チューブ149を介して第2シリンダ機構113のシリンダ126と連結されている。
【0045】
図6Bに示すように、支持部121aは、内部に、1つのヨーク141と、2つのピストン142と、2つのバネ146とを有している。
【0046】
ヨーク141は、軸部123と同軸で回転する円板状の回転体である。ヨーク141は、軸部123に固着されている。ヨーク141は、軸部123が配される中央部を挟んで対向する位置に2つの溝部141aを備えている。2つの溝部141aの内部には、平行ピン144が摺動可能に挿入される。
【0047】
ピストン142は、シリンダ部140内を摺動する部材である。2つのピストン142は、シリンダ部140の内部で対向配置されている。シリンダ部140は、円筒状の形状を呈している。ピストン142のハッチングを付した部分は、円柱状の形状を呈しており、その外周部に配置されたパッキン145でシリンダ部140を封止している。ピストン142は、先端側の面(軸部123に近い側の面)に平板状のプレート143を有している。本変形例では、プレート143は、ヨーク141の下方に、ヨーク141と平行になるように配置されている。プレート143は、先端部に、鉛直方向に立設された平行ピン144を有している。平行ピン144は、ヨーク141の溝部141aの内部に摺動可能に挿入される。
【0048】
バネ146は、軸部123から離間させる方向にピストン142を付勢する部材である。本変形例では、バネ146が圧縮バネで構成されているものとして説明する。
【0049】
第1シリンダ機構112と第2シリンダ機構113は、ジスク124(弁体)の両サイド(両脇)に水平方向に並んで配置されている。第1シリンダ機構112と第2シリンダ機構113は、好ましくは、垂直方向に延在するように配置されているとよい。第1シリンダ機構112と第2シリンダ機構113は、同様の構成になっている。第1シリンダ機構112と第2シリンダ機構113は、
図5に示す第1シリンダ機構12と第2シリンダ機構13と比較すると、ピストンロッド27と軸部35と連結部36とが削除され、その代わりに、連結チューブ149を介してシリンダ部140の内部のピストン28よりも上方の空間と支持部121aのシリンダ部140の内部の空間とが連通した構成になっている点で相違している。第1シリンダ機構112は、連結チューブ149を介して支持部121aの右側のシリンダ部140とシリンダ126との間で空気を出し入れする。一方、第2シリンダ機構113は、連結チューブ149を介して支持部121aの左側のシリンダ部140とシリンダ126との間で空気を出し入れする。
【0050】
図6A及び
図6Bは、2つの流路122(
図6A)が開放されているときの隔離弁111の構成を示している。2つの流路122が開放された状態から閉鎖された状態に変更する場合に、第1シリンダ機構112が連結チューブ149を介してシリンダ126から右側のシリンダ部140に空気を送るとともに、第2シリンダ機構113が連結チューブ149を介してシリンダ126から左側のシリンダ部140に空気を送る。
【0051】
このとき、
図6Bに示す例において、右側のピストン142は、第1シリンダ機構112から送られた空気の圧力によって矢印A142aの方向(すなわち、軸部123に接近する左側方向)に移動する。また、左側のピストン142は、第2シリンダ機構113から送られから送られた空気の圧力によって矢印A142bの方向(すなわち、軸部123に接近する右側方向)に移動する。その際に、右側のプレート143の平行ピン144と左側のプレート143の平行ピン144がヨーク141の溝部141aの壁面を押圧して、ヨーク141を矢印A124の方向に90°回転させる。ヨーク141は、ジスク124と一体化された軸部123に固着されている。そのため、ヨーク141の回転に伴って、軸部123とジスク124が矢印A124の方向に回転する。これにより、ジスク124の両サイドに形成された2つの流路122が閉鎖される。
【0052】
また、2つの流路122が閉鎖された状態から開放された状態に変更する場合に、第1シリンダ機構112が連結チューブ149を介して右側のシリンダ部140からシリンダ126に空気を吸い出すとともに、第2シリンダ機構113が連結チューブ149を介して右側のシリンダ部140からシリンダ126に空気を吸い出す。
【0053】
このとき、
図6Bに示す例において、右側のピストン142は、第1シリンダ機構112が吸い出した空気の負圧及びバネ146の付勢力によって矢印A142aとは逆の方向(すなわち、軸部123から離間する右側方向)に移動する。また、左側のピストン142は、第2シリンダ機構113が吸い出した空気の負圧及びバネ146の付勢力によって矢印A142bとは逆の方向(すなわち、軸部123から離間する左側方向)に移動する。その際に、右側のプレート143の平行ピン144と左側のプレート143の平行ピン144がヨーク141の溝部141aの壁面を押圧して、ヨーク141を矢印A124とは逆の方向に90°回転させる。ヨーク141は、ジスク124と一体化された軸部123に固着されている。そのため、ヨーク141の回転に伴って、軸部123とジスク124が矢印A124とは逆の方向に回転する。これにより、ジスク124の両サイドに形成された2つの流路122が開放される。
【0054】
このような隔離弁111は、第1シリンダ機構112と第2シリンダ機構113のピストンが同じ上下方向に動くことにより、ヨーク141を回転させる。すなわち、第1シリンダ機構112と第2シリンダ機構113のピストンの上下方向の往復運動が軸部123を中心としたヨーク141の正転・逆転の回転運動に変換される。このとき、ヨーク141の回転に連動して軸部123とジスク124(弁体)が回転する。すなわち、軸部123とジスク124(弁体)が軸部123の軸心を中心とした軸回りに正転・逆転する。その結果、流路122が開閉する。
【0055】
変形例に係る隔離弁111は、第1シリンダ機構112と第2シリンダ機構113のいずれか一方をジスク124(弁体)の開閉動作を主導する機構として作動させ、他方をジスク124(弁体)の開閉動作を補助する機構として作動させる。
【0056】
このような隔離弁111は、2つのシリンダ機構(第1シリンダ機構112と第2シリンダ機構113)で1つのジスク124(弁体)を開閉するダブルシリンダ構造になっている。そのため、隔離弁111は、操作空気を高圧化したり第1シリンダ機構112と第2シリンダ機構113のシリンダ126のサイズを拡大したりすることなく、ジスク124(弁体)の開閉動作を円滑に行うことができる。しかも、隔離弁111は、第1シリンダ機構112と第2シリンダ機構113のシリンダ126のサイズを小型化することができる。このような隔離弁111は、隙間の狭い圧力容器隔離弁6の周辺に配置し易くすることができる。
【符号の説明】
【0057】
1 原子力発電プラント
2 小型モジュール原子力発電プラント(SMR)
3 原子炉圧力容器(RPV)
4 配管
5 配管支持構造物
6 圧力容器隔離弁(空気作動弁構造体)
7(7a,7b) 空気作動弁
11a 第1隔離弁
11b 第2隔離弁
12(12a,12b) 第1シリンダ機構
13(13a,13b) 第2シリンダ機構
21 弁箱
22(22a,22b,22c),122 流路
23(23a,23b) 弁フタ
24(24a,24b) 弁体
25(25a,25b) ロッド(支持部材)
26,126 シリンダ
27 ピストンロッド
28 ピストン
29U,29L 操作空気吸排気口
30 バネ
32(32a,32b) 可動空間
35(35a,35b),123 軸部
36 連結部
111 隔離弁
112 第1シリンダ機構
113 第2シリンダ機構
121 ボディ(弁箱)
124 ジスク(弁体)
121a 支持部
140 シリンダ部
141 ヨーク
141a 溝部
142 ピストン
143 プレート
144 平行ピン
145 パッキン
146 バネ
149 連結チューブ