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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】通信システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/00 20060101AFI20241121BHJP
   H04W 88/04 20090101ALI20241121BHJP
   H04M 3/12 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
G08G1/00 D
H04W88/04
H04M3/12
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021194711
(22)【出願日】2021-11-30
(65)【公開番号】P2023081050
(43)【公開日】2023-06-09
【審査請求日】2023-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】玉那覇 隆介
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 元気
【審査官】白石 剛史
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-026425(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00
H04W 88/04
H04M 3/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像管理サーバおよび情報提供サーバを含む外部通信装置との間で第1通信ネットワークを介した通信を行う第1通信部と、
移動通信端末との間で第2通信ネットワークを介した通信を行う第2通信部と、
第1通信部および第2通信部の動作を制御する通信制御部と、
所定のイベントの発生の有無を判定する判定部と、
を備え、
前記通信制御部は、前記第1通信部と前記第2通信部とを用いて前記第1通信ネットワークと前記第2通信ネットワークとを中継することにより、前記移動通信端末と前記情報提供サーバとの間の通信を行う通信中継処理を実行し、かつ、
前記通信制御部は、前記第1通信ネットワークを介した通信のうち前記通信中継処理による通信ではない前記画像管理サーバとの通信である第1通信に係る第1通信量に関する制御目標または前記第1通信ネットワークを介した通信のうち前記通信中継処理による通信である第2通信に係る第2通信量に関する制御目標のいずれか少なくとも一方を、前記判定部における前記所定のイベントの発生有無の判定結果に基づいて設定する、
通信システム。
【請求項2】
前記通信制御部は、前記判定部において前記イベントが発生したと判定されたときは、前記イベントが発生していないと判定されたときに比べて、前記第1通信量の制御目標または前記第2通信量に対する前記第1通信量の比率の制御目標を、より大きな値に設定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記判定部において前記イベントが発生したと判定されたときは、前記イベントが発生していないと判定されたときに比べて、前記第2通信量の制御目標または前記第1通信量に対する前記第2通信量の比率の制御目標を、より小さな値に設定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項4】
前記第1通信は、撮像デバイスにより撮影された画像データを前記外部通信装置のうち前記画像管理サーバに送信する通信である、
請求項1ないし3のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項5】
前記判定部は、撮像デバイスにより撮影された画像データに基づき、前記イベントの発生の有無を判定する、
請求項1ないし4のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項6】
前記判定部が判定する前記イベントは、前記撮像デバイスの設置環境における所定の異常状態の発生である、請求項5に記載の通信システム。
【請求項7】
前記異常状態は、前記設置環境における災害、事故、緊急車両の存在、及び又は不審者の存在を含む、
請求項6に記載の通信システム。
【請求項8】
前記判定部は、前記通信システムが使用される移動体の挙動に基づき、前記イベントの発生の有無を判定する、
請求項1に記載の通信システム。
【請求項9】
前記判定部が判定する前記イベントは、前記移動体の挙動における所定の異常状態の発生である、請求項8に記載の通信システム。
【請求項10】
前記異常状態は、前記移動体における急ハンドル、急ブレーキ、及び又は衝突を含む、
請求項9に記載の通信システム。
【請求項11】
前記通信制御部は、前記判定部において前記イベントが発生したと判定された場合に、前記第2通信部により、前記移動通信端末に対して、前記イベントの発生または前記第2通信の通信量が制限されることの少なくともいずれか一方を報知する、
請求項1ないし10のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項12】
撮像デバイスを備えるカメラ又はドライブレコーダにより構成される、
請求項1ないし11のいずれか一項に記載の通信システム。
【請求項13】
移動体に設けられ、
前記通信制御部は、前記通信中継処理として、前記移動体内に存在する前記移動通信端末について前記外部通信装置との間の通信を中継する、
請求項1ないし12のいずれか一項に記載の通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動体に搭載されるドライブレコーダに、移動体の外部の画像収集装置と通信する機能を備えて、ドライブレコーダによる撮影画像を画像収集装置に送信するようにしたシステムが提案されている(例えば、特許文献1参照)。このシステムでは、撮影画像を、事故の検出の他に、定点観測、迷子の捜索、火災現場の状況確認等の用途に用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-177677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ドライブレコーダ等のカメラを備えた通信システムによる撮影画像を収集して種々の用途に用いるためには、通信システムによる撮影タイミングを増やして、より多くの撮影画像を画像収集装置に送信する必要がある。そのためには、通信システムから撮影画像を送信する際に利用者が負担する通信コストを抑えて、通信コストが撮影画像の送信に対する障害とならないようにすることが望ましい。
本発明は係る背景に鑑みてなされたものであり、撮影画像を送信する際の通信コストを低減することのできる通信システムを提供することを目的とする。
【0005】
上記の目的は、通信量の低減を通じて情報通信に係るエネルギ効率を向上すると共に、災害や事故に関する速やかな情報提供に寄与して被災者数の低減にもつながり得るものであり、持続可能な社会の実現に貢献し得る(SDGs 7.3、11.5)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一の態様は、画像管理サーバおよび情報提供サーバを含む外部通信装置との間で第1通信ネットワークを介した通信を行う第1通信部と、移動通信端末との間で第2通信ネットワークを介した通信を行う第2通信部と、第1通信部および第2通信部の動作を制御する通信制御部と、所定のイベントの発生の有無を判定する判定部と、を備え、前記通信制御部は、前記第1通信部と前記第2通信部とを用いて前記第1通信ネットワークと前記第2通信ネットワークとを中継することにより、前記移動通信端末と前記情報提供サーバとの間の通信を行う通信中継処理を実行し、かつ、前記通信制御部は、前記第1通信ネットワークを介した通信のうち前記通信中継処理による通信ではない前記画像管理サーバとの通信である第1通信に係る第1通信量に関する制御目標または前記第1通信ネットワークを介した通信のうち前記通信中継処理による通信である第2通信に係る第2通信量に関する制御目標のいずれか少なくとも一方を、前記判定部における前記所定のイベントの発生有無の判定結果に基づいて設定する、通信システムである。
本発明の他の態様によると、前記通信制御部は、前記判定部において前記イベントが発生したと判定されたときは、前記イベントが発生していないと判定されたときに比べて、前記第1通信量の制御目標または前記第2通信量に対する前記第1通信量の比率の制御目標を、より大きな値に設定する。
本発明の他の態様によると、前記通信制御部は、前記判定部において前記イベントが発生したと判定されたときは、前記イベントが発生していないと判定されたときに比べて、前記第2通信量の制御目標または前記第1通信量に対する前記第2通信量の比率の制御目標を、より小さな値に設定する。
本発明の他の態様によると、前記第1通信は、撮像デバイスにより撮影された画像データを前記外部通信装置のうち前記画像管理サーバに送信する通信である。
本発明の他の態様によると、前記判定部は、撮像デバイスにより撮影された画像データに基づき、前記イベントの発生の有無を判定する。
本発明の他の態様によると、前記判定部が判定する前記イベントは、前記撮像デバイスの設置環境における所定の異常状態の発生である。
本発明の他の態様によると、前記異常状態は、前記設置環境における災害、事故、緊急車両の存在、及び又は不審者の存在を含む。
本発明の他の態様によると、前記判定部は、前記通信システムが使用される移動体の挙動に基づき、前記イベントの発生の有無を判定する。
本発明の他の態様によると、前記判定部が判定する前記イベントは、前記移動体の挙動における所定の異常状態の発生である。
本発明の他の態様によると、前記異常状態は、前記移動体における急ハンドル、急ブレーキ、及び又は衝突を含む。
本発明の他の態様によると、前記通信制御部は、前記判定部において前記イベントが発生したと判定された場合に、前記第2通信部により、前記移動通信端末に対して、前記イベントの発生または前記第2通信の通信量が制限されることの少なくともいずれか一方を報知する。
本発明の他の態様によると、撮像デバイスを備えるカメラ又はドライブレコーダにより構成される。
本発明の他の態様によると、移動体に設けられ、前記通信制御部は、前記通信中継処理として、前記移動体内に存在する前記移動通信端末について前記外部通信装置との間の通信を中継する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、撮影画像を送信する際の通信コストを低減することのできる通信システムを提供し得る。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る通信システムの使用態様の説明図である。
図2図2は、通信システムの構成を示す図である。
図3図3は、通信制御部により第1通信量C1が調整される場合の、第1通信量C1の時間変化の例である。
図4図4は、通信制御部により比率Rが調整される場合の、第1通信量C1の時間変化の例である。
図5図5は、通信システムにおける通信量制御動作の手順を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[1.通信システムの使用態様]
図1は、本実施形態の通信システム1の使用態様の一例を示す図である。本実施形態では、通信システム1は、例えば、ドライブレコーダとして実現されている。通信システム1は、車両100に装着されて使用され、撮像デバイスにより車両100の周囲や車両100の車室内を撮影し、車両100の外部にある外部通信装置へ送信する機能を有する。車両100は、本開示の移動体に相当する。
【0010】
通信システム1は、セルラー(Cellular)通信と、Wi-Fi(登録商標)通信を行う機能を有している。通信システム1は、各セルの基地局300との間でセルラー通信を行うことにより、或いは道路近傍のWi-Fiスポットに設置されたルーター310との間でWi-Fi通信を行うことにより、広域ネットワーク500を介して外部通信装置との間で通信行う。図1では、外部通信装置として、画像管理サーバ510aと情報提供サーバ510bとを例示している。広域ネットワーク500は、本開示の第1通信ネットワークに相当する。以下、画像管理サーバ510aと情報提供サーバ510bとを総称して外部通信装置510ともいうものとする。
【0011】
さらに、通信システム1は、車両100に乗車している利用者U1、U2により使用される移動通信端末51a、51bとの間でWi-Fi通信を確立して車内通信ネットワーク40を実現する。また、通信システム1は、車内通信ネットワーク40と広域ネットワーク500との間を中継するWi-Fiルーターの機能を有している。上記車内通信ネットワーク40は、本開示の第2通信ネットワークに相当する。
【0012】
移動通信端末51a、51bは、スマートフォン、携帯電話、タブレット端末、携帯ゲーム機等である。以下、利用者U1およびU2を総称して利用者Uともいい、移動通信端末51a、51bを総称して移動通信端末51ともいうものとする。
【0013】
利用者Uは、移動通信端末51がセルラー通信機能を有していない場合であっても、通信システム1により提供される車内通信ネットワーク40を介して、情報提供サーバ510bとの間で通信を行うことができる。なお、通信システム1は、その電波到達範囲に依存して、例えば車両100が駐車又は停車しているときに、車内通信ネットワーク40により、車両100の車外の移動通信端末と外部通信装置510との間を中継してもよい。
【0014】
また、通信システム1は、後述する撮像デバイスによる撮影画像を、広域ネットワーク500を介して画像管理サーバ510aに送信する。画像管理サーバ510aは、通信システム1から受信した撮影画像を用いて、事故の解析、定点観測、道路設備の点検等の処理を行い得る。
【0015】
[2.ドライブレコーダの構成]
図2を参照して、通信システム1の構成について説明する。通信システム1は、プロセッサ10、メモリ20、NAD(Network Access Device)30、アンテナ31、撮像デバイス32、GNSS(Global Navigation Satellite System)センサ34、加速度センサ35を備える。
【0016】
NAD30は、セルラー方式の通信モジュールとWi-Fi方式の通信モジュールを統合したチップ(chip)である。アンテナ31は、セルラー通信とWi-Fi通信に対応した兼用アンテナである。
【0017】
撮像デバイス32は、例えばCCD(電荷結合デバイス、Charge Coupled Device)であり、車両100の周囲及び又は車両100の車室内を撮影し、撮影画像をプロセッサ10に出力する。なお、通信システム1は、車両100の周囲または車室内における撮影範囲の広さに応じて、複数の撮像デバイス32を備えるものとすることができる。
【0018】
GNSSセンサ34は、測位衛星からの電波を受信して通信システム1の現在位置(緯度、経度)を検出し、位置検出信号をプロセッサ10に出力する。加速度センサ35は、例えば3軸加速度センサであり、通信システム1に生じる直交3方向のそれぞれの加速度を検出し、それらの加速度の大きさを示すセンシング出力をプロセッサ10に出力する。
【0019】
メモリ20は、例えば、揮発性及び又は不揮発性の半導体メモリで構成される。プロセッサ10は、通信システムである通信システム1が備えるコンピュータであり、例えば、一つ又は複数のCPU(Central Processing Unit)またはMPU(Micro Processing Unit)により構成される。
【0020】
プロセッサ10は、機能要素又は機能ユニットとして、第1通信部11と、第2通信部12と、撮影制御部13と、判定部14と、通信制御部15と、を備える。プロセッサ10が備えるこれらの機能要素は、例えば、コンピュータであるプロセッサ10が、メモリ20に記憶されたコンピュータ・プログラムである通信制御プログラム21を実行することにより実現される。これに代えて、プロセッサ10が備える上記機能要素の全部又は一部を、それぞれ一つ以上の電子回路部品を含むハードウェアにより構成することもできる。
【0021】
第1通信部11は、NAD30およびアンテナ31により、外部通信装置510(すなわち、画像管理サーバ510aおよび情報提供サーバ510b)との間で、第1通信ネットワークである広域ネットワーク500を介した通信を行う。
【0022】
第1通信部11は、例えばパケット通信により、外部通信装置510との間で、広域ネットワーク500を介した通信を行う。具体的には、第1通信部11は、通信制御部15から入力される、撮像デバイス32の撮影画像を含む第1通信データと移動通信端末51からの第2通信データと、をまとめたパケットを生成する。そして、第1通信部11は、生成したパケットを、広域ネットワーク500を介して外部通信装置510へ送信する。
【0023】
これにより、第1通信データと第2通信データとをそれぞれ個別にパケット化して送信する場合に比べて、パケットの送信数を低減するとともに、第1通信データ及び第2通信データに付加されるパケット制御のオーバーヘッド(overhead)の総量を低減して、広域ネットワーク500における通信量を低減することができる。その結果、通信システム1では、広域ネットワーク500を用いた通信の使用量を低減して通信コストを下げることができる。
【0024】
第2通信部12は、NAD30およびアンテナ31により、移動通信端末51との間で、第2通信ネットワークである車内通信ネットワーク40を介した通信を行う。
【0025】
撮影制御部13は、撮像デバイス32から撮影画像を取得し、取得した撮影画像を、撮影日時および撮影位置の情報と共に通信制御部15へ送る。ここで、撮影制御部13は、GNSSセンサ34により、撮影位置の情報を得るものとすることができる。
【0026】
判定部14は、所定のイベントの発生の有無を判定する。上記イベントは、本実施形態では、例えば、撮像デバイス32の設置環境における所定の異常状態の発生、及び又は、移動体である車両100の挙動における異常状態の発生である。上記設置環境における所定の異常状態には、上記設置環境における災害、事故、緊急車両の存在、及び又は不審者の存在が含まれ得る。また、車両100の挙動における異常状態には、車両100における急ハンドル、急ブレーキ、及び又は衝突が含まれ得る。
【0027】
判定部14は、例えば、撮像デバイス32の撮影画像に基づき、上記所定のイベントの発生の有無を判定する。例えば、撮像デバイス32による車外の撮影画像や車内の撮影画像に対する画像解析によって所定の異常(イベント)の発生の有無を判定する。また、例えば、判定部14は、加速度センサ35のセンシング出力から把握される車両100の挙動に基づき、上記イベントの発生の有無を判定し得る。
【0028】
なお、判定部14は、加速度センサ35に限らず、車両100に装備されている他のセンサを用いて、上記所定のイベントの発生有無を判定してもよい。例えば、判定部14は、車両100のエアバッグ等に備えられている衝撃センサからの衝撃検出信号を取得して、車両100が挙動の異常、例えば衝突事故等の異常状態の発生有無を判定してもよい。
【0029】
通信制御部15は、第1通信部11及び第2通信部12の動作を制御して、画像送信処理と、通信中継処理と、を実行する。画像送信処理は、撮像デバイス32による撮影画像を、第1通信部11により画像管理サーバ510aへ送信する処理である。具体的には、通信制御部15は、撮影制御部13を介して撮像デバイス32から所定の時間間隔で撮影画像を取得し、取得した撮影画像を第1通信部11により画像管理サーバ510aへ送信する。
【0030】
通信中継処理は、車内通信ネットワーク40の通信と広域ネットワーク500の通信とを中継する、通信システム1のWi-Fiルーターとしての処理である。通信中継処理では、通信制御部15は、第1通信部11と第2通信部12とを用いて、第1通信ネットワークである広域ネットワーク500と、第2通信ネットワークである車内通信ネットワーク40とを中継して、移動通信端末51a、51bと、情報提供サーバ510bとの間の通信を行う。ここで、第1通信ネットワークを介した通信のうち、画像送信処理による通信は、本開示における、通信中継処理による通信ではない第1通信に相当する。すなわち、第1通信は、本実施形態では、撮像デバイス32により撮影された画像データを外部通信装置である画像管理サーバ510aに送信する通信である。また、第1通信ネットワークを介した通信のうち、通信中継処理による通信は、本開示における第2通信に相当する。
【0031】
特に、本実施形態では、通信制御部15は、第1通信部11を用いて行う、第1通信ネットワークである広域ネットワーク500を介した通信に関し、撮影画像の送信に係る通信量と移動通信端末51に係る通信量とを、判定部14における上記所定のイベントの発生有無の判定結果に応じて調整する。すなわち、通信制御部15は、第1通信ネットワークを介した通信のうち通信中継処理による通信ではない第1通信に係る第1通信量に関する制御目標または第1通信ネットワークを介した通信のうち通信中継処理による通信である第2通信に係る第2通信量に関する制御目標のいずれか少なくとも一方を、判定部14における所定のイベントの発生有無の判定結果に基づいて設定する。
【0032】
具体的には、通信制御部15は、広域ネットワーク500を介した通信に関し、画像送信処理の実行における撮影画像の送信に係る第1通信量C1の制御目標を、判定部14における上記所定のイベントの発生有無の判定結果に応じた値に設定する。また、これに代えて又はこれに加えて、通信制御部15は、通信中継処理における通信に係る第2通信量C2に対する上記第1通信量C1の比率R(=C1/C2)の制御目標を、判定部14における上記所定のイベントの発生有無の判定結果に応じた値に設定する。ここで、第1通信量C1および第2通信量C2には、単位時間当たりの通信量が用いられ得る。
【0033】
より具体的には、通信制御部15は、例えば、判定部14において所定のイベントが発生したと判定されたときは、所定のイベントが発生していないと判定されたときに比べて、第1通信量C1の制御目標をより大きな値に設定するか、または第2通信量C2に対する第1通信量C1の比率Rの制御目標をより大きな値に設定する。また、通信制御部15は、特に、予め定められた特定イベントが発生したと判定されたときには、第2通信量C2がゼロ(ほぼゼロ)となるように、第2通信量C2に関する制御目標もしくは第1通信量C1に関する制御目標、並びにこれらに関する比率の制御目標を設定してもよい。特定イベントとしては例えば、衝突事故等の異常状態としてもよい。
【0034】
すなわち、通信制御部15は、判定部14において所定のイベントが発生したと判定されたときは、所定のイベントが発生していないと判定されたときに比べて、第2通信量C2の制御目標、または第1通信量C1に対する第2通信量C2の比率の制御目標を、より小さな値に設定しもてよい。例えば、通信制御部15は、特定イベントが発生したときには、第1通信部11による広域ネットワーク500を介した通信の通信速度のほぼ上限まで第1通信量C1を増加させ、第2通信量C2をほぼゼロまで低下させることで、第1通信量C1に対する第2通信量C2の比率を下げるものとすることができる。
【0035】
そして、通信制御部15は、上記第1通信量C1又は上記比率Rが、それぞれ、所定の誤差の範囲内において上記設定した制御目標の値となるように、画像送信処理および通信中継処理の動作を制御する。例えば、通信制御部15は、判定部14により所定のイベントが発生したと判定されたときは、所定のイベントが発生していないと判定されたときに比べて、画像送信処理において撮影制御部13から取得する撮影画像の時間間隔を短くして、外部通信装置510へ送信する撮影画像の単位時間当たりの枚数を増やすか、あるいは、送信する撮影画像の解像度を上げることで、第1通信量C1を増加させるものとすることができる。
【0036】
上記の構成を有する通信システム1は、通信制御部15により、外部通信装置510への撮影画像の送信と、移動通信端末51と外部通信装置510との間の通信と、を第1通信部11を介して一括して行うので、広域ネットワーク500における通信量が減少して通信コストが低減される。
【0037】
また、通信システム1では、広域ネットワーク500を介した通信に関し、画像送信処理に係る第1通信量C1の制御目標、または通信中継処理に係る第2通信量C2に対する第1通信量C1の比率Rの制御目標が、判定部14における所定イベントの発生有無の判断に応じて設定される。これにより、例えば、より精緻な調査等が必要となる異常状態等のイベントの発生期間には、より短い時間間隔で撮影された多くの撮影画像又は解像度の高い撮影画像が画像管理サーバ510aへ送信され、異常事態が発生しておらず、あまり注目する必要のない期間には、長い時間間隔で撮影された少ない数の撮影画像又は低解像度の画像が送信され得る。その結果、通信システム1では、同じ時間間隔で撮影された撮影画像を、常時、一定時間間隔で送信する場合に比べて、撮影画像の有用性を維持しつつ、広域ネットワーク500を介した通信の通信量を低減して通信コストを低減することができる。
【0038】
なお、通信制御部15は、判定部14において所定のイベントが発生したと判定された場合に、上記イベントが発生したことを、第2通信部12により、移動通信端末51に対して報知してもよい。あるいは、通信制御部15は、判定部14において所定のイベントが発生したと判定された場合において、第2通信の通信量が制限する場合には、第2通信の通信量が制限される旨を、第2通信部12により、移動通信端末51に対して報知してもよい。
【0039】
図3は、通信制御部15により第1通信量C1が調整される場合の、第1通信量C1の時間変化の例である。図3において、縦軸は、第1通信ネットワークである広域ネットワーク500を介した通信の単位時間当たりの通信量、横軸は時間である。また、図3に示すライン60は、通信中継処理の第2通信量C2の時間変化を示している。また、ライン61は、画像送信処理の第1通信量C1の時間変化を示している。
【0040】
ライン60が示す第2通信量C2は、利用者Uによる移動通信端末51の利用の仕方(例えば、電話、webサイト閲覧、オンラインゲーム等)に応じて、時間と共に変化している。
【0041】
ここで、判定部14は、図3の横軸に示す時刻t0からt1の期間に亘って、異常状態等の所定イベントが発生していると判定したとする。以下、時刻t0を、イベント開始時刻、時刻t1を、イベント終了時刻というものとする。
【0042】
ライン61では、通信制御部15は、イベント開始時刻t0までは、第1通信量C1の制御目標値を、例えば、デフォルト値であるc10に設定し、第1通信量C1がc10となるように画像送信処理を制御する。そして、判定部14がイベント開始時刻t0においてイベントが発生していると判定したことに応じて、通信制御部15は、イベント開始時刻t0において、第1通信量C1の制御目標をc10からc11へ増加させる。上述したように、この第1通信量C1の増加は、例えば、通信制御部15が、外部通信装置510へ送信する撮影画像の単位時間当たりの枚数又は撮影画像の解像度を増やすことにより行われ得る。そして、イベント終了時刻t1において、所定イベントが発生していないと判定部14が判定すると、通信制御部15は、第1通信量C1の制御目標をc11からc10へ戻す。
【0043】
図4は、通信制御部15により第2通信量C2に対する第1通信量C1の比率Rが調整される場合の、第1通信量C1の時間変化の例である。図4における縦軸及び横軸は、それぞれ、図3における縦軸および横軸と同じである。また、図4に示すライン60は、図3に示すライン60と同じであり、通信中継処理の第2通信量C2の時間変化を示している。また、図4に示すライン62は、画像送信処理の第1通信量C1の時間変化を示している。
【0044】
ライン62では、通信制御部15は、イベント開始時刻t0までは、第2通信量C2に対する第1通信量C1の比率Rの制御目標を、例えば、デフォルト値であるr10に設定し、比率Rがr10となるように画像送信処理を制御する。そして、判定部14がイベント開始時刻t0においてイベントが発生していると判定したことに応じて、通信制御部15は、イベント開始時刻t0において、比率Rの制御目標をr10からr11へ増加させる。この比率Rの増加は、図4に示す例では、第1通信量C1を増加することで実現されている。そして、イベント終了時刻t1において、所定イベントが発生していないと判定部14が判定すると、通信制御部15は、比率Rの制御目標をr11からr10へ戻す。
【0045】
なお、通信制御部15は、図4のライン62のように第1通信量C1を増減することに加えて、第2通信量C2を増減することにより、比率Rを調整してもよい。例えば、通信制御部15は、移動通信端末51が送信又は受信する単位時間当たりの情報の量(例えば、ビットレート)を調整することにより、第2通信量C2を増減させるものとすることができる。
【0046】
[3.通信システムにおける動作]
次に、通信システム1における、第1通信量C1または比率Rを制御する通信量制御動作について説明する。図5は、通信システム1における通信量制御動作の手順を示すフロー図である。図5に示す処理は、通信システム1の電源がオンされたときに開始する。
【0047】
処理を開始すると、通信制御部15は、広域ネットワーク500についての、画像送信処理における第1通信量C1の制御目標、又は通信中継処理における第2通信量C2に対する第1通信量C1の比率R(=C1/C2)の制御目標を、それぞれのデフォルト値に設定する(S100)。
【0048】
次に、判定部14は、所定イベントが発生したか否かを判定する(S102)。そして、所定イベントが発生していないと判定されたときは(S102、NO)、通信制御部15は、設定した制御目標を用いて、第1通信量C1または比率Rを制御する(S106)。これにより、所定イベントが発生していないと判定される間は、通信制御部15は、デフォルトの制御目標を用いて、第1通信量Cまたは比率Rを制御する。
【0049】
一方、ステップS102において所定イベントが発生したと判定されたときは(S102、YES)、通信制御部15は、第1通信量C1又は比率Rの制御目標を、それぞれデフォルト値よりも大きな値に設定して(S104)、処理をステップS106に移す。これにより、所定イベントの発生時には、通信制御部15により、デフォルト値よりも大きい制御目標を用いて第1通信量C1又は比率Rが制御される。
【0050】
続いて、通信制御部15は、上記所定イベントが発生したこと、または第2通信の通信量が制限される場合にはその旨を、第2通信部12により移動通信端末51に対して報知する(S108)。
【0051】
続いて、通信制御部15は、通信システム1の電源がオフされたか否かを判断する(S110)。そして、通信制御部15は、通信システム1の電源がオフされていないときは(S110、NO)、ステップS100に戻って処理を繰り返す。一方、通信システム1の電源がオフされたときは(S110、YES)、通信制御部15は、本処理を終了する。
【0052】
[4.他の実施形態]
上記実施形態では、通信システム1が装着される移動体として四輪の車両100を例示したが、通信システム1が装着される移動体は、二輪車両、飛行体、船舶等であってもよい。
【0053】
上記実施形態では、広域ネットワーク(本開示の第1通信ネットワークに相当する)へのアクセスをセルラー方式又はWi-Fi通信により行ったが、他の通信方式により行ってもよい。また、車内通信ネットワーク40は、Wi-Fi通信のネットワークであるものとしたが、Bluetooth(登録商標)等の他の仕様の通信を行うネットワークであってもよい。
【0054】
本開示の通信システム1は、画像記憶等の他の機能を持つドライブレコーダの中に備えられるものとしてもよい。また、通信システム1は、撮像デバイスにより撮影画像を取得することを主眼とするカメラや、撮像デバイスを備える通信端末(スマートフォン、携帯電話、タブレット端末等)等に備えられるものとしてもよい。
【0055】
なお、図2は、本願発明の理解を容易にするために、通信システム1の構成を、主な処理内容により区分して示した概略図であり、通信システム1の構成を、他の区分によって構成してもよい。また、各構成要素の処理は、1つのハードウェアユニットにより実行されてもよいし、複数のハードウェアユニットにより実行されてもよい。また、図5に示したフローチャートによる各構成要素の処理は、1つのプログラムにより実行されてもよいし、複数のプログラムにより実行されてもよい。
【0056】
[4.上記実施形態によりサポートされる構成]
上記実施形態は、以下の構成をサポートする。
【0057】
(構成1)外部通信装置との間で第1通信ネットワークを介した通信を行う第1通信部と、移動通信端末との間で第2通信ネットワークを介した通信を行う第2通信部と、第1通信部および第2通信部の動作を制御する通信制御部と、所定のイベントの発生の有無を判定する判定部と、を備え、前記通信制御部は、前記第1通信部と前記第2通信部とを用いて前記第1通信ネットワークと前記第2通信ネットワークとを中継することにより、前記移動通信端末と前記外部通信装置との間の通信を行う通信中継処理を実行し、かつ、前記通信制御部は、前記第1通信ネットワークを介した通信のうち前記通信中継処理による通信ではない第1通信に係る第1通信量に関する制御目標または前記第1通信ネットワークを介した通信のうち前記通信中継処理による通信である第2通信に係る第2通信量に関する制御目標のいずれか少なくとも一方を、前記判定部における前記所定のイベントの発生有無の判定結果に基づいて設定する、通信システム。
構成1の通信システムによれば、第1通信量の制御目標または第2通信量の制御目標が所定イベントの発生有無に応じて設定されるので、所定イベントにおける撮影画像の有用性を維持しつつ、第1通信ネットワークにおける通信量を低減して通信コストを低減することができる。
【0058】
(構成2)前記通信制御部は、前記判定部において前記イベントが発生したと判定されたときは、前記イベントが発生していないと判定されたときに比べて、前記第1通信量の制御目標または前記第2通信量に対する前記第1通信量の比率の制御目標を、より大きな値に設定する、構成1に記載の通信システム。
構成2の通信システムによれば、所定イベントの発生時に第1通信量を増大させ、又は第2通信量に対する第1通信量の比率を増大するので、所定イベントが発生していない平常時には通信コストを抑制しつつ、所定ベントの発生時には、撮影画像の送信枚数や解像度を増やして、送信される撮影画像の有用性を高めることができる。
【0059】
(構成3)前記通信制御部は、前記判定部において前記イベントが発生したと判定されたときは、前記イベントが発生していないと判定されたときに比べて、前記第2通信量の制御目標または前記第1通信量に対する前記第2通信量の比率の制御目標を、より小さな値に設定する、構成1に記載の通信システム。
構成3の通信システムによれば、所定イベントの発生時に第2通信量を低下させ、又は第通信量に対する第2通信量の比率を低下させるので、所定イベントが発生していない平常時には通信コストを抑制しつつ、所定ベントの発生時には、撮影画像の送信枚数や解像度を増やして、送信される撮影画像の有用性を高めることができる。
【0060】
(構成4)前記第1通信は、撮像デバイスにより撮影された画像データを前記外部通信装置に送信する通信である、構成1ないし3のいずれかに記載の通信システム。
構成4の通信システムによれば、所定のイベントの発生時に、当該イベントに関連する周囲の画像を撮像デバイスにより撮影して外部通信装置へ送信することができる。
【0061】
(構成5)前記判定部は、撮像デバイスにより撮影された画像データに基づき、前記イベントの発生の有無を判定する、構成1ないし4のいずれかに記載の通信システム。
構成5の通信システムによれば、特別な装置を用いることなく、所定イベントの発生を容易に判定することができる。
【0062】
(構成6)前記判定部が判定する前記イベントは、前記撮像デバイスの設置環境における所定の異常状態の発生である、構成5に記載の通信システム。
構成6の通信システムによれば、周囲環境における異常状態を所定イベントとして判定するので、異常状態に関連する多くの又は精緻な撮影画像を送信可能として、送信される撮影画像の有用性を高めることができる。
【0063】
(構成7)前記異常状態は、前記設置環境における災害、事故、緊急車両の存在、及び又は不審者の存在を含む、構成6に記載の通信システム。
構成7の通信システムによれば、周囲環境の撮影画像が異常状態の分析に大きな役割を果たし得るシーンにおいて、第1通信量または上記比率を高めて、十分な枚数又は解像度の撮影画像を送信することができる。
【0064】
(構成8)前記判定部は、前記通信システムが使用される移動体の挙動に基づき、前記イベントの発生の有無を判定する、構成1に記載の通信システム。
構成8の通信システムによれば、移動体の挙動に関連する種々のイベントが発生したときに、例えばその挙動の原因分析に必要となる撮影画像を、より多く又はより高い解像度で送信することができる。
【0065】
(構成9)前記判定部が判定する前記イベントは、前記移動体の挙動における所定の異常状態の発生である、構成8に記載の通信システム。
構成9の通信システムによれば、移動体における異常な挙動の原因分析に必要となる撮影画像を、より多く又はより高い解像度で送信することができる。
【0066】
(構成10)前記異常状態は、前記移動体における急ハンドル、急ブレーキ、及び又は衝突を含む、構成9に記載の通信システム。
構成10の通信システムによれば、周囲環境の撮影画像が移動体挙動の分析に大きな役割を果たし得るシーンにおいて、第1通信量または上記比率を高めて、十分な枚数又は解像度の撮影画像を送信することができる。
【0067】
(構成11)前記通信制御部は、前記判定部において前記イベントが発生したと判定された場合に、前記第2通信部により、前記移動通信端末に対して、前記イベントの発生または前記第2通信の通信量が制限されることの少なくともいずれか一方を報知する、構成1ないし10のいずれかに記載の通信システム。
構成11の通信システムによれば、移動通信端末のユーザは、上記報知により移動通信端末に係る第2通信の通信量が制限され得ることを予め知ることができるので、移動通信端末の通信停滞等に対する違和感が軽減される。
【0068】
(構成12)撮像デバイスを備えるカメラ又はドライブレコーダにより構成される、構成1ないし11のいずれかに記載の通信システム。
構成12の通信システムによれば、カメラまたはドライブレコーダの機能を拡張して、本開示の通信システムを構成することができる。
【0069】
(構成13)移動体に設けられ、前記通信制御部は、前記通信中継処理として、前記移動体内に存在する前記移動通信端末について前記外部通信装置との間の通信を中継する、構成1ないし12のいずれかに記載の通信システム。
構成13の通信システムによれば、車両等の移動体の移動に伴って取得される周囲画像等の様々な情報を送信することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…通信システム、10…プロセッサ、11…第1通信部、12…第2通信部、13…撮影制御部、14…判定部、15…通信制御部、20…メモリ、21…通信制御プログラム、30…NAD、31…アンテナ、32…撮像デバイス、34…GNSSセンサ、35…加速度センサ、40…車内通信ネットワーク、51、51a、51b…移動通信端末、60、61、62…ライン、100…車両(移動体)、300…セルラー通信の基地局、310…Wi-Fiスポットのルーター、500…広域ネットワーク、510…外部通信装置、510a…画像管理サーバ、510b…情報提供サーバ、U、U1、U2…利用者。
図1
図2
図3
図4
図5