(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】構造用接着剤のための組成物
(51)【国際特許分類】
C09J 4/02 20060101AFI20241121BHJP
C09J 11/08 20060101ALI20241121BHJP
C09J 5/04 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/08
C09J5/04
(21)【出願番号】P 2021503774
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 EP2019069781
(87)【国際公開番号】W WO2020020877
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-07-08
(32)【優先日】2018-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】510250696
【氏名又は名称】ジャクレ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ダヴィッド レジス
【審査官】高崎 久子
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-515528(JP,A)
【文献】特表2013-504677(JP,A)
【文献】特開平01-026686(JP,A)
【文献】特表2014-528005(JP,A)
【文献】国際公開第2018/086670(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/134002(WO,A1)
【文献】特開2014-177635(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J1/00-5/10;9/00-201/10
C08C19/00-19/44
C08F6/00-246/00;301/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造用接着剤に使用するための組成物であって、(重量%で)以下:
(a) 35%~60%の少なくとも1つの(メタ)アクリレート単量体
(但し、該少なくとも1つの(メタ)アクリレート単量体は金属アクリレート単量体を含まない)であって、
i. 少なくとも20%の単量体、該単量体は、一般式(I)の分子、一般式(II)の分子、または一般式(I)および(II)の分子の混合物であり:
式中、R、R1、およびR2はそれぞれ独立してHまたはCH
3である;
ii. イソボルニルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、およびラウリルメタクリレートからなる群より選択される、少なくとも5%の1つまたは複数の(メタ)アクリレート単量体
を含む、前記少なくとも1つの(メタ)アクリレート単量体、
(b) 8~30%の、熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから形成される粒子、
(c) 9~15%の
エラストマーブロック共重合体であって、該エラストマーブロック共重合体はスチレンおよび少なくとも1つの第2の単量体を含むエラストマーブロック共重合体であるか、または
スチレンおよび少なくとも1つの第2の単量体を含むエラストマーブロック共重合体の混合物
である、エラストマーブロック共重合体、
(d) 5~25%の、非官能化ポリブタジエン、カルボキシル末端で官能化されたポリブタジエン、ビニル末端で官能化されたポリブタジエン、メタクリル化ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、ブタジエン-アクリロニトリル共重合体、およびそれらの混合物より選択される、エラストマー
を含み、化合物(b)、(c)、および(d)の割合の合計が少なくとも35%であり、
10重量%未満のメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、グリシジルエーテルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、およびトリメチルシクロヘキシルメタクリレートを含む、前記組成物。
【請求項2】
式(I)または/および式(II)の前記単量体が1,3-ジオキサン-5-イルメタクリレートと1,3-ジオキソラン-4-イルメチルメタクリレートとの混合物であることを特徴とする、請求項1記載の組成物。
【請求項3】
25~35%の一般式(I)または(II)の単量体および少なくとも10%の前記iiの1つまたは複数の(メタ)アクリレート単量体を含むことを特徴とする、請求項1または2記載の組成物。
【請求項4】
少なくとも5%の2-エチルヘキシルアクリレートを含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項記載の組成物。
【請求項5】
粒子(b)、エラストマーブロック共重合体(c)、およびエラストマー(d)がブタジエンを含む、請求項1~4のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
15~25%の、熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから形成される粒子(b)を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項7】
9~12%のエラストマーブロック共重合体(c)を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項8】
10~25%のエラストマー(d)を含むことを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項記載の組成物。
【請求項9】
粒子(b)がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン粒子、メタクリレート-ブタジエン-スチレン粒子、メタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン粒子、メタクリレート-アクリロニトリル粒子、およびそれらの混合物より選択されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項記載の組成物。
【請求項10】
熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから形成される粒子(コアシェル)(b)の量が26%以下であることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項記載の組成物。
【請求項11】
エラストマーブロック共重合体(c)の第2の単量体がイソプレンおよびブタジエンより選択されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項記載の組成物。
【請求項12】
エラストマーブロック共重合体(c)がSIS、SBS、SIBS、SEBS、およびそれらの混合物より選択されることを特徴とする、請求項1~11のいずれか一項記載の組成物。
【請求項13】
前記エラストマー(d)が非官能化ポリブタジエン、カルボキシル末端で官能化されたポリブタジエン、ビニル末端で官能化されたポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、およびそれらの混合物より選択されることを特徴とする、請求項1~12のいずれか一項記載の組成物。
【請求項14】
トルイジン、アニリン、および置換または非置換フェノールからなる群より選択されるアミンも含むことを特徴とする、請求項1~13のいずれか一項記載の組成物。
【請求項15】
クリスタルバイオレットラクトンまたは4,4',4''メチリジントリス(N,N-ジメチルアニリン)も含むことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項記載の組成物。
【請求項16】
メタクリル化されていてもよいリン酸エステル系接着促進剤も含むことを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項記載の組成物。
【請求項17】
前記リン酸エステル系接着促進剤が、2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸エステルか、または2-ヒドロキシエチルメタクリレート一リン酸および二リン酸エステルの混合物であることを特徴とする、請求項16記載の組成物。
【請求項18】
亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、亜鉛モノメタクリレート、鉄ジアクリレート、鉄ジメタクリレート、鉄モノメタクリレート、カルシウムジアクリレート、カルシウムジメタクリレート、カルシウムモノメタクリレート、マグネシウムジアクリレート、マグネシウムジメタクリレート、およびマグネシウムモノメタクリレートから選択される、金属アクリレート単量体をさらに含むことを特徴とする、請求項1~17のいずれか一項記載の組成物。
【請求項19】
レオロジー剤、および酸性単量体より選択される少なくとも1つのさらなる化合物も含むことを特徴とする、請求項1~18のいずれか一項記載の組成物。
【請求項20】
a. 請求項1~19のいずれか一項記載の組成物、および
b. フリーラジカル重合開始剤を含む、メタ(アクリレート)単量体の重合を開始するために該組成物に加えるための重合触媒剤
を含む、二液型構造用接着剤。
【請求項21】
重合触媒剤中に存在するフリーラジカル重合開始剤が過酸化物であり、前記二液型構造用接着剤が5~40重量%の重合開始剤を含むことを特徴とする、請求項20記載の二液型構造用接着剤。
【請求項22】
前記過酸化物が過酸化ベンゾイルであることを特徴とする、請求項21記載の二液型構造用接着剤。
【請求項23】
10~20重量%の重合開始剤を含むことを特徴とする、請求項20記載の二液型構造用接着剤。
【請求項24】
前記重合触媒剤がエポキシ化シランをさらに含み、該エポキシ化シランが1~30重量%であることを特徴とする、請求項20~23のいずれか一項記載の二液型構造用接着剤。
【請求項25】
前記重合触媒剤がエポキシ樹脂をさらに含むことを特徴とする、請求項20~24のいずれか一項記載の二液型構造用接着剤。
【請求項26】
前記重合触媒剤が無機充填剤をさらに含むことを特徴とする、請求項20~25のいずれか一項記載の二液型構造用接着剤。
【請求項27】
i. 請求項1~19のいずれか一項記載の組成物を収容する区画、
ii. 前記重合触媒剤を収容する別の区画
を含む、請求項20~26のいずれか一項記載の二液型構造用接着剤を塗布するためのカートリッジ。
【請求項28】
請求項1~19のいずれか一項記載の組成物と過酸化物型ラジカル重合開始剤を含む重合触媒剤とを併用することを含む、第1の材料を第2の材料に接着する方法。
【請求項29】
第1の材料が金属性であることを特徴とする、請求項28記載の方法。
【請求項30】
i. フリーラジカル重合開始剤を含む重合触媒剤と混合した、請求項1~19のいずれか一項記載の組成物を、第1の材料に塗布する段階、および
ii. 第2の材料を第1の材料の上に貼付する段階
を含む、第1の材料を第2の材料に接着する方法であって、
前記組成物の重合後に該2つの材料が互いに接着される、
前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アクリル系構造用接着剤(アクリレート系またはメタクリレート系)の分野、およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
構造用接着剤は、金属またはプラスチックなどの2つの材料を接着するための他の機械的技術に対する良好な代替案である。実際、接着による力分布は、リベット締めまたは溶接などの代替技術を使用する場合よりも良好である。さらに、接着の使用は、より迅速な加工を可能にすることが多く、また、機械的技術よりも良好な、外部要素(ほこり、湿気)に対する絶縁を実現するという利点を有する。
【0003】
したがって、構造用接着剤は、いくつかの欠点があるとしても、多くの産業分野において使用されている。実際、良好な機械的抵抗性が必要である際に、接着剤の重合(硬化)中に作り出される接着は堅固であることが多い。したがって、接着剤の弾性が不十分である場合、一緒に接着された2つの部分に互いを引き離す力が加えられる際に、破断が生じることがある。良好な弾性を示す接着剤は存在するが、機械的抵抗性が低いことが多い。本出願人は、(メタ)アクリレート単量体、ブロック共重合体、エラストマー、ならびにコアシェル(熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから形成される粒子)の併用によってこの問題を解決する接着剤を開発し、記述した(WO2008080913(特許文献1)およびWO2008125521(特許文献2))。
【0004】
構造用接着剤は2つの成分:
- (メタ)アクリレート単量体を含む、すなわちアクリレートまたはメタクリレートエステル単量体系である組成物(樹脂)、および
- 接着剤の重合および硬化を可能にする触媒剤
から形成される。
【0005】
これらの2つの要素は2つの異なる区画に収容され、接着剤の塗布中に混合される。触媒剤は、特に過酸化物系であるフリーラジカル重合開始剤であり、当技術分野において周知である。
【0006】
(メタ)アクリレート単量体(アクリレートまたはメタクリレート単量体)は、特にアルコールおよびメタクリル酸またはアクリル酸のエステル化により得ることができる。
【0007】
これらの単量体は当技術分野において公知であり、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレート、グリシジルエーテルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、トリメチルシクロヘキシルメタクリレート、またはヒドロキシエチルメタクリレートが挙げられる。
【0008】
メチルメタクリレートおよびエチルメタクリレートは、アクリル系構造用接着剤中で一般に使用される単量体である。
【0009】
これらの構造用接着剤中で一般的に使用されるこれらの単量体の問題は、重合後の強い臭気であり、このため自動車分野などの産業用途においてそれらを使用することは困難である。
【0010】
一般に、いくつかの産業における使用を可能にする以下の性能が求められる:
- 剪断(アルミニウム(Al)上で最低14MPa、好ましくは少なくとも17MPa)
- 剥離(Al上で最低10N/mm、好ましくは少なくとも12N/mm)
- 伸度(最低80%、好ましくは少なくとも100%)
- いくつかの分厚い接合用の調合物に好適なレオロジー
- 接着剤の耐熱性: 1Hzで測定されるガラス転移温度(Tg)80℃超。
【0011】
より具体的には、特定の用途に関して、従来の接着剤よりも低い臭気を示し、かつ先行技術接着剤の以下の機械特性を本質的に保持する、二液型アクリル系構造用接着剤を開発することが望ましい:
- アルミニウム上での剥離強度10N/mm超、好ましくは13N/mm超、さらには15N/mm超、および
- 好ましくはアルミニウム上での剪断強度15MPa超、好ましくは18MPa超、および/または
- 好ましくは破断伸度80%超、好ましくは100%超。
【0012】
したがって、本出願人は、良好な剥離強度、ならびに好ましくは少なくとも良好な剪断強度および/または良好な破断伸度を得ることを望んでいる。
【0013】
本出願人は、当技術分野において伝統的に使用されるメタクリレート単量体を、市場に存在する新規単量体で単純に置き換えるだけでは、満足できる結果を得るには十分ではなく、機械性能を得るには、樹脂の他の成分の新規開発およびそれらの比率の劇的な変化が必要であると結論づけた。
【0014】
それに関して、WO2008080913(特許文献1)では、10~30重量%の量のブロック共重合体の使用が記載されているが、好ましい量が15~25重量%、さらには18~25重量%であると規定されている。実施例では21~30重量%のこれらの成分の添加が記載されている。
【0015】
WO2008125521(特許文献2)では、組成物の2~20重量%、好ましくは5~15重量%の量のコアシェル(エラストマーコアを取り囲む熱可塑性シェルから形成される粒子)の使用が記載されている。
【0016】
US20170306191(特許文献3)では、リン酸エステル系接着促進剤と、重合促進剤としての高分子量ポリアミンとを含む、組成物が記載されている。
【0017】
DE 33 23 733(特許文献4)は、上記の異なる単量体を使用する光硬化性エステル-エーテル系光学接着剤が記載されているが、特に機械特性に関して、想定される用途以外の用途に関するものである。
【0018】
VISIOMER Methacrylates: Reactive Diluents for Replacing Styrene in Composite and Gel Coat Applications(非特許文献1)では、Glyfomaが記載されているが、この単量体(式は示されず)が何に対応しているかを、またはブロック共重合体の溶解性の問題を知ることを可能にする情報は提供されていない。
【0019】
US2006155045A1(特許文献5)では、テトラヒドロフルフリルメタクリレートを特に使用する低臭気の(メタ)アクリル系接着剤が記載されている。これらの接着剤はスチレンとブタジエンおよび/またはイソプレンおよび/またはエチレンプロピレン-ジエンとのブロック共重合体も含む。
【0020】
特に、本出願人は、市場に存在する新規の低臭気単量体(特にGlyfoma)がメチルメタクリレートの代替物として単独で使用される際に、得られる組成物が、許容不可能かつ産業的見地から使用不可能なレオロジーを示すことを示した。実際、ブロック共重合体の凝集物の存在に関連する、重大すぎる粘度の問題、ならびに/または特定の混合物中でのゲル形成および不均一性の問題が存在する。さらに、混合物のTgは、多くの用途においては低すぎる。この技術的問題を解決するために、本出願人は、以下を行うことが好ましいと結論づけた:
- ブレンド中で使用されるブロック共重合体の量を、上記で引用される文献において例示される量よりも少ない量に制限すること。
- コアシェルおよび/またはエラストマーの量を増加させること。
- 好ましくは、少なくとも35%、さらには少なくとも40%のポリマー(液状ポリマー、ブロック共重合体、コアシェル)を組成物が含むことを確実にすること。これは所望の機械性能を得るために好ましい。
- 使用される低臭気単量体に補足的単量体を加えること。特に、Tgが105℃超の単量体、特にイソボルニルメタクリレート(Tg 150℃)を選択すべきである。接着促進剤特性も示すメタクリル酸(Tg 185℃)も同様に使用することができる。本出願人はまた、これらの単量体が、レオロジーを調整する上で役割を果たし、したがって、大きな接着剤接合を使用することが必要な産業用途(自動車産業、船舶産業、または航空産業)において使用可能な組成物を得ることを可能にすることを示した。
- 可塑剤をほとんどまたは全く含まず、かつ含水量が減少していることが好ましい、硬化剤(重合を誘導するために単量体を含む樹脂に加えられる第2の成分)を使用すること。特に、形成されるポリマー網目の結合密度を増加させ、かつそのTgを増加させる、WO2011033002(特許文献6)またはUS20120252978(特許文献7)に記載のエポキシ化シランを含む硬化剤を使用することができる。
【0021】
驚くべきことに、本出願人は、いくつかの場合において、これらの文献に記載されている機械性能と同様の機械性能を得るには、これらの先行技術出願における教示または例示に比べて、コアシェルの比を増加させなければならず、ブロック共重合体の比を減少させなければならなかったことを示した。
【0022】
本出願人はまた、組成物および接着剤の様々な特性(例えば剥離強度、耐老化性、または耐湿性)を向上させるために、組成物中のポリマー(コアシェル、ブロック共重合体、エラストマー)の比を著しく増加させることが可能であることを示した。
【0023】
したがって、エラストマー・コアシェル混合物の量を増加させることは、ブロック共重合体を包含しかつ許容可能なレオロジー(過度に液状ではない)を示す均一組成物を得るために、不均一性の問題を解決することに役立つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【文献】WO2008080913
【文献】WO2008125521
【文献】US20170306191
【文献】DE 33 23 733
【文献】US2006155045A1
【文献】WO2011033002
【文献】US20120252978
【非特許文献】
【0025】
【文献】VISIOMER Methacrylates: Reactive Diluents for Replacing Styrene in Composite and Gel Coat Applications
【発明の概要】
【0026】
したがって、第1の態様では、本発明は、構造用接着剤において使用可能な組成物であって、(重量%で)以下:
(a) 35%~60%の少なくとも1つの(メタ)アクリレート単量体であって、
i. 少なくとも20%の、一般式(I)の分子、一般式(II)の分子、または一般式(I)および(II)の分子の混合物:
式中、R、R1、およびR2はそれぞれ独立してHまたはCH
3である;
ii. 少なくとも5%の1つまたは複数の他の(メタ)アクリレート単量体
を含む、前記少なくとも1つの(メタ)アクリレート単量体、
(b) 15~30% %の、熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから形成される粒子、
(c) 9~15%の、スチレンおよび少なくとも1つの第2の単量体を含むエラストマーブロック共重合体、またはそのようなブロック共重合体の混合物、
(d) 5~25%のエラストマー
を含み、化合物(b)、(c)、および(d)の割合の合計が少なくとも35%である、前記組成物に関する。
【0027】
他の態様では、本組成物は、化合物(a)が35~55重量%で存在し、化合物(b)、(c)、および(d)の割合の合計が少なくとも40%に等しい、組成物である。
【0028】
また、15%超、好ましくは10%超の量で他の(メタ)アクリレート単量体が加えられないことが好ましいが、それらの混合物は約15~20%でありうる。
【0029】
本組成物は他の要素を含んでもよい。本組成物中に存在する成分の比率の合計は100%に等しい。
【0030】
本組成物は25%~35%の一般式(I)または(II)の単量体を含むことが好ましい。
【0031】
また、本組成物は10%~20%の少なくとも1つの他の単量体を含むことが好ましい。
【0032】
任意の(メタ)アクリレート単量体を本組成物に加えることができる。好ましくは、この他の(メタ)アクリレート単量体または(メタ)アクリル酸エステルは、アルコール部分が少なくとも6個の炭素原子の直鎖(炭化水素側鎖)(長鎖)を有する単量体であることが好ましい。
【0033】
しかし、この単量体がイソボルニルメタクリレート(MAISOBOR)、2-エチルヘキシルメタクリレート(MA2EH)、2-エチルヘキシルアクリレート(A2EH)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ラウリルメタクリレート、ポリエチレングリコール系エステル、およびこれらの単量体の混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0034】
特に、本組成物は1~10%、好ましくは5~10%のイソボルニルメタクリレート(MAISOBOR)を含む。
【0035】
特に、本組成物は少なくとも5%の2-エチルヘキシルアクリレートまたは2-エチルヘキシルメタクリレートを含む。特に、本組成物は少なくとも5%の2-エチルヘキシルアクリレートを含み、10%超の該化合物を含まない。
【0036】
好ましい態様では、粒子(a)、エラストマーブロック共重合体(b)、およびエラストマー(c)がブタジエンを含むことが好ましい(下記も参照)。
【0037】
したがって、第2の態様では、本発明は、構造用接着剤において使用可能な組成物であって、(重量%で)以下を含む組成物に関する:
(a)少なくとも20%の、一般式(I)の分子、一般式(II)の分子、または一般式(I)および(II)の分子の混合物を含む、40%~60%の少なくとも1つの(メタ)アクリレート単量体:
式中、R、R1、およびR2はそれぞれ独立してHまたはCH
3である;
(b) 少なくとも20%の、熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから形成される粒子(コアシェル)、
(c) 8~13%の、スチレンおよび少なくとも1つの第2の単量体を含むエラストマーブロック共重合体、
(d) 5~10%の、エラストマー。
【0038】
本組成物は他の要素を含んでもよい。本組成物中に存在する成分の比率の合計は100%である。
【0039】
したがって、本組成物は、少なくとも20%の一般式(I)の分子、一般式(II)の分子、または一般式(I)および(II)の分子の混合物を含む。
【0040】
一般的に言えば、構造用接着剤は、前記組成物(樹脂とも呼ばれる)と、好ましくは過酸化物型であるラジカル重合開始剤を含む触媒剤とから形成される、二液型である。樹脂と触媒剤との混合物は(メタ)アクリレート単量体(メタクリレート単量体またはアクリレート単量体)の重合を生じさせる。
【0041】
R1およびR2が水素であり、R置換基が同一である場合、2つの分子(I)および(II)は互いの異性体であり、したがって両分子は通常、溶液中に存在する。
【0042】
【0043】
式(I)は開鎖形態(2個の酸素原子間での開環)により式(II)に変化する。
【0044】
RがCH3であり、R1およびR2が水素原子である場合、単量体は、グリセリンホルマールとメタクリル酸(2-メチル-2-プロペン酸)との反応により得られるエステルである。グリセリンホルマールはグリセリンおよびホルムアルデヒドから得られる。
【0045】
RがHであり、R1およびR2が水素原子である場合、単量体は、グリセリンホルマールとアクリル酸(プロペン酸)との反応により得られるエステルである。グリセリンホルマールが5-ヒドロキシ-1,3-ジオキサンおよび4-ヒドロキシメチル-1,3-ジオキソラン(それぞれCAS 4740-78-7および5464-28-8)の混合物であることが想起されよう。
【0046】
特定の態様では、上記に示されるいずれかの態様の組成物は、化合物RがCH3であり、化合物R1およびR2が水素原子である、少なくとも20%の分子(I)および(II)の混合物を有する。したがって、この混合物は1,3-ジオキサン-5-イルメタクリレート(CAS 132977-93-6)および1,3-ジオキソラン-4-イルメチルメタクリレート(CAS 10525-59-4)から構成される。この混合物はドイツ・ダルムシュタットのEvonik Industries AGによりVISIOMER(登録商標)GLYFOMAとして販売されている。
【0047】
互いの異性体であるこれら2種の分子の相対比率は一般に60:40~40:60である。
【0048】
本組成物は、R、R1、およびR2がCH3である分子(I)および(II)を含んでもよい。これは、米国ペンシルベニア州AmblerのGEO Specialty Chemicals, IncによりBisomer(登録商標)IPGMAの名称で販売されているイソプロピリデングリセロールメタクリレート(CAS 7098-80-8)を含む。
【0049】
一般式(I)および(II)のこれらの分子は、当技術分野において周知であり、特許出願US2014128536A1およびWO2017134002に記載されている。
【0050】
したがって、好ましくは、本組成物は少なくとも20%の1,3-ジオキサン-5-イルメタクリレート(CAS 132977-93-6)分子と1,3-ジオキソラン-4-イルメチルメタクリレート分子との混合物を含む。これらの化合物は、CMRリスト(2008年12月16日の欧州議会・理事会規則(EC)1272/2008号の付属書VIにおける発がん性および/または変異原性および/または生殖毒性がある物質のリストに基づく)に含まれないことから、特に関心の対象となる。
【0051】
他の態様では、本組成物は少なくとも20%のイソプロピリデングリセロールメタクリレートを含む。
【0052】
他の態様では、本組成物は少なくとも20%の1,3-ジオキサン-5-イルメタクリレート、1,3-ジオキソラン-4-イルメチルメタクリレート、およびイソプロピリデングリセロールメタクリレートの混合物を含む。
【0053】
特定の態様では、本組成物は45重量%未満の式(I)または(II)の単量体を含む。
【0054】
この態様では、他の(メタ)アクリレート単量体を加えることが好ましい。これらの他の単量体の混合物を加えてもよい。好ましくは少なくとも5%、但し20%以下を加えるべきであるが、いくつかの目的でさらに多くの量が使用されうることを排除することはできない。これらの他の単量体の混合物を、いずれの単量体も本組成物中でそれぞれ10重量%を超えないように加えることが好ましいが、イソボルニルメタクリレートは15%まで加えてもよい。
【0055】
この他の(メタ)アクリレートまたは(メタ)アクリル酸エステル単量体は、アルコール部分が少なくとも6個の炭素原子の直鎖(炭化水素側鎖)(長鎖)を有する単量体であることが好ましい。
【0056】
特定の態様では、本組成物は、20%~30%の式(I)または(II)の分子(混合物を含む)、および少なくとも15%、好ましくは少なくとも20%の長鎖を有する他の(メタ)アクリル酸エステル単量体を含む。
【0057】
他の態様では、本組成物は30%超の式(I)または(II)の分子(混合物を含む)を含みうる。この態様では、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも12%の他の長鎖(メタ)アクリル酸エステル単量体を加えることが好ましい。
【0058】
式(I)または(II)の単量体以外の(メタ)アクリル酸エステル単量体のうち、イソボルニルメタクリレート(MAISOBOR)、2-エチルヘキシルメタクリレート(MA2EH)および2-エチルヘキシルアクリレート(A2EH)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、ラウリルメタクリレート、ポリエチレングリコールエステル、またはこれらの単量体の混合物を加えることができる。
【0059】
したがって、特定の態様では、以下が使用される:
- GLYFOMAおよびA2EHの混合物
- GLYFOMA、A2EH、およびHEMAの混合物
- GLYFOMA、MAISOBOR、A2EH、およびHEMAの混合物
- IPGMAおよびA2EHの混合物
- IPGMA、A2EH、およびHEMAの混合物
- IPGMA、MAISOBOR、A2EH、およびHEMAの混合物
- GLYFOMA、IPGMA、およびA2EHの混合物
- GLYFOMA、IPGMA、A2EH、およびHEMAの混合物
- GLYFOMA、IPGMA、MAISOBOR、A2EH、およびHEMAの混合物。
【0060】
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、グリシジルエーテルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、およびトリメチルシクロヘキシルメタクリレートからなる群より選択される単量体を少量(10重量%未満、好ましくは5重量%未満)で使用してもよい。しかし、この単量体を加えないか、または2重量%未満、さらには1重量%未満で使用することが好ましい。
【0061】
特定の態様では、樹脂は上記のように2重量%~5重量%、さらには最大10重量%の上記の単量体、特にメチルメタクリレートまたはエチルメタクリレートを含む。これらの比率でこれらの化合物を使用することで、機械性能が向上すると同時に、望ましくない臭気の出現が制限される。
【0062】
他の態様では、本組成物(樹脂)はメチルメタクリレートまたはエチルメタクリレートを含まない。実際、これらの単量体は、重合中に強い臭気を放つが、可燃性でもあり、欧州連合REACH指令に基づいて使用が制限および制約される。
【0063】
第1の態様では、本組成物は、8~30%の熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから構成される粒子を含む。特定の態様では、15~25%のこれらの粒子を使用することができる。そこで、この態様では、これらの化合物(b)および(d)の合計が27%超、好ましくは29%超、さらには30%超になるように、エラストマーの量を増加させる。
【0064】
第2の態様では、本組成物は少なくとも20%(重量%)のエラストマーポリマー粒子(b)を含む。
【0065】
これらの粒子(b)は英語では「コアシェル」と呼ばれ、当業者に周知であり、好ましくはポリメチルメタクリレート(PMMA)系である「ハード」熱可塑性シェルと、スチレンと共重合していることが多いブタジエン系であるかまたはアクリル系であることが一般的なエラストマーコアとから形成される。本明細書に記載の組成物の実現に関して、ブタジエン系コアシェル(ブタジエンを含むコア)が特に適しておりかつ好ましい。本発明の実現に関して、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、メタクリレート-ブタジエン-スチレン(MBS)、メタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(MABS)、およびそれらの混合物といったポリマーを挙げることができる。
【0066】
これらの粒子は、メチルメタクリレートポリマー(PMMA)であることが多い、熱可塑性シェルに取り囲まれる架橋エラストマーコアを含む。特許US 3,985,703、US 4,304,709、US 6,433,091、EP 1256615、US20140364541、またはUS 6,869,497では、当業者に周知であるこれらの粒子が記載されている。
【0067】
特に、衝撃改質粒子、特にMBS衝撃改質剤が好ましい。好ましい態様では、これらのMBSは、コアを形成するポリマーの低い架橋度を示す。さらに、これらのMBSは、耐衝撃性に加えて、衝撃が誘発する亀裂に対する耐性も示すことが好ましい。
【0068】
コアシェルポリマーは複数の企業から入手可能である。GE PlasticsまたはArkema(フランス、パリ)が挙げられる。好ましい粒子としてはArkemaのClearstrength C301、C303H、C223、C350、C351、E920、C859、またはXT100が挙げられ、MBS C301、C303H、およびXT100が好ましい。あるいは、アクリル系コアがPMMAシェルで取り囲まれたArkemaのDurastrength D300またはD340を使用してもよい。XT100はMMA-ブタジエン-スチレン系コアシェルである。同様に、Rohm and Haas(米国ペンシルベニア州フィラデルフィア)が開発したMBS、特にParaloid(商標)BTA 753を使用してもよい。
【0069】
これらの粒子を単独でまたは混合物として使用することができる。したがって、本発明の特定の態様では、MBS粒子(特にC303H、C301、XT100)とPMMAエンベロープおよびアクリロニトリルコアを有する粒子(特にD340粒子)との混合物が使用される。
【0070】
通常、27重量%以下または26重量%以下のこれらの粒子(b)が加えられる。したがって、好ましい態様では、熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから形成される粒子(コアシェル)(b)の量は26%以下である。
【0071】
好ましい態様では、粒子(b)はアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、メタクリレート-ブタジエン-スチレン、メタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン、メタクリレート-アクリロニトリル、およびそれらの混合物より選択される。ブタジエンを含む粒子、特にメタクリレート-ブタジエン-スチレン粒子が特に好ましい。
【0072】
第1の態様では、本組成物は8~15%のスチレンおよび少なくとも1つの第2の単量体を含むエラストマーブロック共重合体、またはそのようなブロック共重合体の混合物も含む。
【0073】
好ましくは、本組成物は8~14重量%、好ましくは9~12%のエラストマーブロック共重合体(c)を含む。
【0074】
第2の態様では、本組成物は8~13%のスチレンおよび少なくとも1つの第2の単量体を含むエラストマーブロック共重合体、またはそのようなブロック共重合体の混合物も含む。
【0075】
好ましくは、本組成物は9~12%のエラストマーブロック共重合体(c)を含む。
【0076】
両態様では、第2の単量体はイソプレンおよびブタジエンより選択されることが好ましい。したがって、スチレンおよび少なくとも1つの第2の単量体を含むブロック共重合体(c)はSIS、SBS、SIBS、SEBS、およびそれらの混合物からなる群より選択されることが好ましい。
【0077】
本組成物は、スチレンおよびイソプレンを含むブロック共重合体を含む場合、スチレン-イソプレン-スチレン共重合体(SIS)またはスチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン共重合体(SIBS)でありうる。特に、約19%のポリスチレンを含むSIS D1114(Kraton Polymers)を使用することができる。
【0078】
したがって、本組成物は、スチレンおよびブタジエンを含むブロック共重合体を含む場合、2005年10月9~12日にケンタッキー州ルイビルのAdhesives & Sealants Council MeetingでDr. Donn DuBoisらが説明した、スチレン-ブタジエン-スチレン(SBS)共重合体、例えばKraton D1102もしくはD1152、またはスチレン-イソプレン-ブタジエン-スチレン(SIBS)共重合体、例えばKraton D1171もしくはKraton MD6455(Kraton Polymers社)でありうる。
【0079】
本組成物は、スチレンおよびエチレンを含むブロック共重合体を含む場合、SEBS(スチレン-エチレン/ブチレン-スチレン共重合体)またはSEPS(スチレン-エチレン/プロピレン-スチレン共重合体)でありうる。これらの化合物はKraton Gライン(Kraton Polymers)で入手可能である。
【0080】
好ましくは、スチレンはSBS共重合体の15~50重量%、より好ましくは22~40重量%、さらに好ましくは約28~33重量%の比率で存在する。スチレンはSISまたはSIBS共重合体中に12~24重量%、より好ましくは約18~19重量%の範囲で存在する。
【0081】
本組成物が2つのブロック共重合体(例えば1つがSIS、1つがSIBS)の混合物を含む場合、SIS/SIBSの相対比率は4:1(本組成物中の重量比)~1.5:1の比で変動することが好ましい。SIS対第2のブロック共重合体の好ましい比率は約3:1または3.3:1である。しかし、SIS/SIBS混合物と同じ相対比率でのSISおよびSBSの混合物を使用してもよい。SIS、SIBS、およびSBSの混合物を使用してもよい。これらの混合物のうち1つに他のブロック共重合体を加えてもよい。
【0082】
本発明に従って使用可能なSIS、SBS、またはSIBSブロック共重合体は当業者に周知である。それらはKraton Polymers(米国テキサス州ヒューストン)が生産している。例えば、US 20050238603に記載のSIS Kraton D1160、またはKraton D1161、US 5,106,917に記載のSBS Kraton D1102、およびSIBS Kraton MD6455またはKraton MD 6460を使用することができる。
【0083】
当業者は、本発明の組成物において使用可能な他のSIS、SIBS、SBSブロック共重合体を、既存の共重合体のなかから、特に、使用される単量体中での溶解の容易さ、または引張時の機械的抵抗性に従って選択するやり方を承知している。
【0084】
特定の態様では、本発明の組成物は、スチレンおよびイソプレンを含むエラストマーブロック共重合体、ならびにスチレンおよびブタジエンを含む少なくとも1つのエラストマーブロック共重合体を含み、SIS/SIBS混合物、SIS/SBS混合物、またはSIS/SIBS/SBS混合物のいずれかを含む。好ましくは、本組成物はSIS/SIBS混合物を含む。あるいは、本組成物はSBSのみを含むものであり、スチレンおよびイソプレンを含むブロック共重合体を含まない。
【0085】
他の態様では、本発明の組成物は、スチレンおよびイソプレンを含むエラストマーブロック共重合体、すなわちSISのみを含む。
【0086】
他の態様では、本発明の組成物はエラストマーブロック共重合体SIBSのみを含む。
【0087】
第1の態様では、本組成物は5~25%、好ましくは10~25%のエラストマー(d)も含む。上記からわかるように、エラストマー濃度を粒子濃度(b)に応じて調節することが好ましい。
【0088】
第2の態様では、本組成物は5~10重量%のエラストマー(d)も含む。
【0089】
両態様では、このエラストマーは官能化されている(モノマーとの結合を向上させるためにその末端、特にメタクリレート官能基において二重結合を有する)ことが好ましい。いくつかの場合では、液状エラストマーが選択される。少なくとも1つの官能化エラストマーを単独でまたは少なくとも1つの非官能化エラストマーとの混合物として使用することが好ましい。エラストマーが架橋後に「弾性」(すなわち変形後に当初の形態に戻る能力)を示すポリマーであることが想起されよう。したがって、破断前に非常に大きな変形に耐えることができる。
【0090】
したがって、ホモポリマー型ポリブタジエン(ここで液状型および官能化型が選択されることが好ましい)またはポリイソプレンのエラストマーが使用される。ポリクロロプレン(米国DuPont、Neoprene AD10)を使用してもよい。ブタジエン-アクリロニトリル共重合体エラストマーを、特に官能化されている場合に使用してもよい。官能基は末端鎖が有しており、使用可能な官能基はカルボキシル(COOH)基、アミン(NHもしくはNH2)基、ビニルメタクリレート基、またはエポキシ基である。したがって、ビニル末端基で官能化されたポリブタジエン(ホモポリマー)が特に有利である。
【0091】
HYPRO(商標)VTB 2000x168(ビニル末端基)などの官能化ポリブタジエンを単独で、またはポリクロロプレン、もしくはHYPRO(商標)CTB 2000x162(カルボキシル末端基)(米国オハイオ州Cuyahoga Falls、Emerald Performance Materials(EPM))などの非官能化ポリブタジエンとの混合物として使用することができる。カルボキシル官能基およびビニル官能基をそれぞれ有するHYPRO(商標)VTBNXまたはCTBNX(ブタジエン-アクリロニトリル共重合体)、より具体的にはHYPRO(商標)VTBNX 1300x43または1300x33も使用可能である。
【0092】
SartomerのRicacryl 3801(メタクリル化ポリブタジエン)を使用してもよい。ポリクロロプレン(米国DuPont、Neoprene AD10)を使用してもよい。これらのエラストマーを単独で、または混合物(例えば、官能化ポリブタジエンとポリクロロプレンとの混合物、または官能化ポリブタジエンとHycar CTB 2000x162(EPM)などの非官能化ポリブタジエンとの混合物)として使用することができる。
【0093】
このエラストマー(d)は本発明の組成物中に5~10重量%、好ましくは6~8%、より好ましくは6.5~7.6%の量で存在することが好ましい。
【0094】
本組成物は式IIIの第三級アミンを含んでもよい:
式中、
- R3基は、少なくとも1個の芳香族基を含む共鳴電子供与基であり、下記ラジカル:
と共にかつ前記ラジカル重合開始剤との組み合わせで、電磁スペクトルの可視範囲内で吸収を示す共役系を形成することで、前記単量体の重合反応中に前記ポリマーまたはセメントの着色を生じさせることが可能であり、
- R1基およびR2基はそれぞれ独立して以下である:
・C1~C16、好ましくはC1~C5直鎖または分岐アルキル基、
・C5~C30、好ましくはC5~C10アリール基またはアリールアルキル基、
・C2~C15、好ましくはC2~C5アルキリデン基。
【0095】
好ましい態様では、前記R3基は、芳香族基に連結されている少なくとも1個の第三級アミンを含み、これにより、特に活性化を向上させることが可能になる。したがって、本発明の組成物は第三級ポリアミンを含み、第三級アミン基は芳香族基が有する。この特定の構造により、重合相中に接着剤を着色することが可能になる。
【0096】
好ましい生成方法では、R3基は、2個の別々の芳香族基に連結されている少なくとも2個の第三級アミンを含み、特に下記の形態を有する:
式中、
- XはCH、Nより選択され、
- R4、R5、R6およびR7は以下より選択される:
・直鎖または分岐C
1~C
16、好ましくはC
1~C
5アルキル基、
・C
5~C
30、好ましくはC
5~C
10アリール基またはアリールアルキル基、
・C
2~C
15、好ましくはC
2~C
5アルキリデン基。
【0097】
本発明の文脈における重合促進剤として、下記式:
に対応するポリアミンを使用することが特に好ましい。
【0098】
この第三級トリアミンは4,4',4''メチリジントリス(N,N-ジメチルアニリン)である。これは、「クリスタルバイオレットロイコ」、「ロイコ」、または「LCV」とも呼ばれる。分子の対称性、およびラジカル重合開始剤を活性化するための3つの可能な活性部位の存在により、このポリアミンは特別な関心対象となる。
【0099】
他の態様では、下記式
のクリスタルバイオレットラクトン(CAS 1552-42-7)が使用される。
【0100】
式(I)の他のアミンはWO 03/086327に記載されている。これらの高分子量ポリアミンは、本発明の組成物を生成するためのものであってもよい。本発明の組成物中でいくつかのポリアミンを混合するか、または他の重合活性化剤を加えることも可能であるが、特定の態様では、本組成物は式(I)のアミン以外の重合活性化剤を含まない。
【0101】
R3基が下記形態:
を有する式(I)の第三級ジアミンである、式(I)のアミンを使用することも可能であり、
式中、
- X'はCH
2、O、O-C
6H
4-O、N-H、N-Rより選択され、
- R8、R9、およびRはそれぞれ独立して以下である:
・直鎖または分岐C
1~C
16、好ましくはC
1~C
5アルキル基、
・C
5~C
30、好ましくはC
5~C
10アリール基またはアリールアルキル基、
・C
2~C
15、好ましくはC
2~C
5アルキリデン基。
【0102】
式(I)のアミンは、R3が下記形態:
を有するように選択されてもよく、
- X
1およびX
2はNおよびCHより選択され、
- R10~R15は独立して以下である:
・C
1~C
16、好ましくはC
1~C
5直鎖または分岐アルキル基、
・C
5~C
30、好ましくはC
5~C
10アリール基またはアリールアルキル基、
・C
2~C
15、好ましくはC
2~C
5アルキリデン基。
【0103】
重合促進剤の役割を果たす、この第三級アミンは、本組成物中に0.1~2重量%、好ましくは0.2~1.5重量%の量で加えられる。
【0104】
これらの第三級アミンはWO2009115610に記載されている。
【0105】
本組成物(樹脂)はリン酸エステル接着促進剤を含んでもよい。実際、これは、本組成物が上記の式(III)の高分子量第三級アミンを含む際に非常に好ましい。
【0106】
リン酸エステル接着促進剤はメタクリル化されていることが好ましい。特に、2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸エステルであるリン酸エステル系接着促進剤が使用される。それはGenorad 40(スイス・チューリッヒ、Rahn AG)という名称で得ることができる。これらの接着促進剤は当技術分野において周知であり、特にUS 4,223,115に記載されている。例としては2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート、ビス-(2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート)、2-アクリロイルオキシエチルホスフェート、ビス-(2-アクリロイルオキシエチルホスフェート)、メチル-(2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート)、エチル-(2-メタクリロイルオキシエチルホスフェート)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート一リン酸および二リン酸エステルの混合物(T-Mulz 1228(米国カンザスシティー、Harcros Organics)として知られている混合物を含む)、ならびに関連または誘導化合物が挙げられる。1~6重量%、好ましくは2~4%のこの接着促進剤が加えられる。
【0107】
本組成物は、サッカリンおよび金属アクリレート単量体より選択される他の化合物を含んでもよい。実際、これは、本組成物が上記の式(III)の高分子量第三級アミンおよびリン酸エステル系接着促進剤を含む際に非常に好ましい。
【0108】
サッカリンは、番号E-954として欧州連合レベルで認可された甘味料であり、1,1-ジオキソ-1,2-ベンゾチアゾール-3-オンとも呼ばれており、そのままで、またはその誘導体のうち1つ(WO 87/000536参照)を通じて使用可能である。
【0109】
本組成物は金属アクリレートまたはメタクリレート単量体(アクリル酸またはメタクリル酸の金属塩(または類似のもの))、特に亜鉛系単量体を含んでもよい。本組成物中のこの化合物の存在により、接着剤の機械性能を向上させること、ならびにゲル化時間および/または発熱時間を調整することが特に可能になる。化合物(e)として、亜鉛ジアクリレート、亜鉛ジメタクリレート、亜鉛モノメタクリレート、鉄ジアクリレート、鉄ジメタクリレート、鉄モノメタクリレート、カルシウムジアクリレート、カルシウムジメタクリレート、カルシウムモノメタクリレート、マグネシウムジアクリレート、マグネシウムジメタクリレート、マグネシウムモノメタクリレートなどの単量体を使用することができる。本組成物中のこの塩の量は0.5~3重量%である。
【0110】
これらの化合物(高分子量第三級アミン、接着促進剤、サッカリン、または金属アクリレートもしくはメタクリレート単量体)は、一緒に使用してもよく、独立して使用してもよい(すなわち、すべてが樹脂中に存在している必要はない)。特に、接着促進剤、サッカリン、および/または金属アクリレートもしくはメタクリレート単量体は、高分子量第三級アミンを含まない樹脂中に存在してもよい。
【0111】
上記の高分子量アミンは、本明細書に記載の組成物中で重合促進剤としての機能を示し、これにより、該組成物を使用する接着剤のゲル化を促進すること、および発熱ピークを改変することが可能になる。WO2009115610に記載のように、他の化合物の存在は、関心対象である技術的効果を得ることも可能にする。
【0112】
しかし、ゲル化を制御することおよび遅延させることは関心対象でありうる。これは、置換または非置換のアニリン、トルイジン、およびフェノールの群より選択されるアミンを本発明の組成物に加えることで実現可能である。特に、下記式:
のp-トルイジンが好ましい。
【0113】
使用可能なR'基およびR''基は、特に、互いに別々にかつ独立して、C1~C6アルキル基、OH基、nが4以下であるCnH2n+1OH基、OCnH2n+1基、OOCCH3基または類似の基、RがC1~C6アルキルであるOR基である。特に好適なアミン(d)はN-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチル-p-トルイジン、N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン、N-メチル-N-ヒドロキシエチル-p-トルイジンもしくはN,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-3-メチルアニリン、または2,4,6-トリ(ジメチルアミノメチル)フェノールである。本組成物中のこれらのアミンの量は0.5~3重量%である。
【0114】
置換および非置換のアニリン、トルイジン、およびフェノールの群より選択されるこのアミンは、高分子量第三級アミンの非存在下で本組成物中に存在してもよい。
【0115】
本組成物は、以下に記載の要素を含む他の要素を含んでもよい。
【0116】
例えば、触媒を加える際に接着剤の重合および硬化を促進するために、重合促進剤を使用することができる。第三級アミン、好ましくは芳香族アミン、例えばジメチル-p-トルイジン(DMPT)および/または2,2'-(p-トリルイミノ)ジエタノールもしくはジメチルアニリン(DMA)の使用は、当技術分野において公知である。これらの要素は1%未満で加えられる。
【0117】
本組成物はアクリロニトリル、メタクリロニトリル、またはスチレンなどの他の単量体を含んでもよい。多機能性単量体、好ましくは三機能性単量体、例えばSR350(トリメチロールプロパントリメタクリレート)またはSR368(トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート)を使用してもよい。
【0118】
本組成物は不飽和カルボン酸、マレイン酸、クロトン酸、イソフタル酸、フマル酸型の当技術分野において公知の酸性単量体、例えば重合可能なフリーラジカル酸性単量体を含んでもよい。メタクリル酸またはアクリル酸が好ましく使用される。2~10%、好ましくは3~7%のこの化合物が加えられる。
【0119】
本組成物はイソボルニルアクリレート(IBXA)、2-ヒドロキシ-エチルメタクリレート(HEMA)、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート(HPMA)、2-(ペルフルオロオクチル)エチルアクリレート(POA)、テトラヒドロフルフリルアクリレート(THFA)、イソブトキシメチルアクリルアミド(IBMA)を含んでもよい。HEMAおよびHPMAの混合物を含む、これらの化合物の混合物を加えることができる。2~10%、好ましくは3~7%のこの化合物が加えられる。
【0120】
好ましい態様では、本組成物はレオロジー剤などの少なくとも1つのさらなる化合物を含んでもよい。レオロジー剤は、接着すべき表面に本発明の組成物を容易に塗布することができるように、その良好な粘性を確保する役割を果たす。Disparlon 6500(日本、楠本化成(株))などのポリアミド、またはシリカ粉末系要素もしくは等価物(ヒュームドシリカもしくは未処理ヒュームドシリカ)を使用することができる。
【0121】
本組成物は金属イオンおよび/または1-アセチル-2-フェニルヒドラジンを含んでもよい(0.1重量%~5重量%)。
【0122】
他の要素、例えば無機充填剤(TiO2、CaCO3、Al2O3、リン酸亜鉛)、耐紫外線剤(2-ヒドロキシフェニルトリアジン、Ciba-GeigyのTinuvin 400など)、パラフィンを本発明の組成物に加えてもよい。本組成物の貯蔵寿命を増加させるためにフリーラジカル重合阻害剤、例えばBHTまたはナフトキノン、ヒドロキノン、もしくはエチルヒドロキノンなどのベンゾキノンを加えてもよい。
【0123】
好ましい組成の例としては以下がある(重量パーセント)。
- (メタ)アクリレートエステル合計; 45~50%、そのうち
○ GLYFOMA 24~36%
○ 他の単量体(単独または混合物): 19~25%
- ブロック共重合体(好ましくはSBS、SIS、SIBS単独、またはブレンド): 9~14%、そのうち
○ SBS: 11~14%
○ SIS、SIBS、または混合物: 9~12.5%
- エラストマー(好ましくはビニル末端で官能化されたポリブタジエン): 6~7.6%
- コアシェル: 20~27%
- 他の要素(メタクリル酸、接着促進剤、アミン、充填剤): 7.5~9.5%
特に、
- (メタ)アクリレートエステル合計; 45~50%、そのうち
○ GLYFOMA 35~42%
○ 他の単量体(単独または混合物): 9~14%
- SBS: 11~14%
- エラストマー(好ましくはビニル末端で官能化されたポリブタジエン): 7~7.5%
- コアシェル: 20~26%
- 他の要素(メタクリル酸、接着促進剤、アミン、充填剤): 7.5~8%
- (メタ)アクリレートエステル合計; 45~50%、そのうち
○ GLYFOMA 24~36%
○ 他の単量体(単独または混合物): 13~22%
- SIS、SIBS、または混合物: 9~13%
- エラストマー(好ましくはビニル末端で官能化されたポリブタジエン): 6~7.6%
- コアシェル: 24~27%
- 他の要素(メタクリル酸、接着促進剤、アミン、充填剤): 7.5~9.5%
- (メタ)アクリレートエステル合計; 45~50%、そのうち
○ GLYFOMA 24~36%
○ 他の単量体(単独または混合物): 12~20%、そのうち
■ MAISOBOR 5~8%
■ A2EH: 6~7%
■ HEMA: 0~5%
- SIS、SIBS、または混合物: 9~14%
- エラストマー(好ましくはビニル末端で官能化されたポリブタジエン): 13~18%
- コアシェル: 17.5~20%
- 他の要素(メタクリル酸、接着促進剤、アミン、充填剤): qsp 100%
【0124】
本発明はまた、
a. 重合可能な樹脂である上記の組成物、ならびに
b. フリーラジカル重合開始剤および場合によってはエポキシ化シランを含む、メタ(アクリレート)単量体の重合を開始するために該組成物に加えられるべき重合触媒剤
を含む、二液型構造用接着剤に関する。
【0125】
エポキシ化シランは当技術分野において周知である。出願WO 02/051899では、触媒剤において使用可能なエポキシ化シランのリストが挙げられている。本発明の組成物中では、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-エチルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-トリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシランより選択されるエポキシ化シランを使用することができ、したがってγ-グリシドキシ-プロピルメチル-ジメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル-メチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピル-メチルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピル-トリエトキシシラン(GLYEO)、および3-グリシジルオキシプロピル-トリメトキシシラン(GLYMO)を使用することができる。
【0126】
Coatosil 1770(米国コネチカット州Wilton、Momentive Performance Materials)という名称で販売されているβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチル-トリエトキシシランが、上記の組成物での使用に特に好適である。CoatOsil MP 200架橋剤(Momentive Performance Materials)などの機能的エポキシシランオリゴマーを使用してもよい。通常、エポキシ化シランは触媒剤の1~30%、好ましくは5~20%(重量%)である。
【0127】
エポキシ化シランを使用することで、触媒剤中に20%未満の可塑剤を含む組成物を得ることが可能になる。特定の生成方法では、本発明の組成物は15%未満、さらには12%未満または10%未満(重量%)の可塑剤を含む。「xxx%未満」という用語は、上限を含むものと理解され、「xxx%以下」を含むことを意味する。特定のプロセスでは、可塑剤を触媒剤に加えない。
【0128】
フリーラジカル重合開始剤は当業者に周知である。したがって、それは、樹脂中に存在する還元性化合物(アミン)と反応する酸化剤である。したがって、この剤は、過酸化ベンゾイル(好ましい剤)および任意の他の過酸化ジアシルなどの過酸化物、クメンヒドロペルオキシドなどのヒドロペルオキシド、P-ブチルペルオキシベンゾエートまたはtertブチルペルオキシベンゾエートなどの過酸エステル、メチルエチルケトンヒドロペルオキシドなどのケトンヒドロペルオキシドでありうる。それは、ナフテン酸コバルトなどの有機遷移金属塩、または塩化スルホニルなどの不安定塩素含有化合物であってもよい。
【0129】
通常、触媒剤は0.5~50%(重量%)、より好ましくは5~40重量%、最も好ましくは10重量%~20重量%のこの重合開始剤を含む。好ましい様式では、触媒剤は約20重量%の重合開始剤を含む。好ましい剤は過酸化ベンゾイルである。接着剤の塗布時間を増加させるために重合速度を遅らせることが望ましい場合、約10重量%の重合開始剤を使用することができる。触媒は、シリカ、炭酸カルシウム、またはチタンなどの無機充填剤を含む充填剤を含んでもよい。安定化剤、増粘剤、脱泡剤、または着色剤を含んでもよい。
【0130】
特定の態様では、触媒剤はエポキシ樹脂(またはエポキシ樹脂)も含む。これらの剤は当技術分野、特にWO 2003/097756に記載されている。このエポキシ樹脂は触媒剤中に10~60%(重量%)、好ましくは15~45%、より好ましくは20~30%の量で存在する。
【0131】
「エポキシ樹脂」という用語は、オクタデシレンオキシド、グリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビニルシクロヘキセンジオキシド、4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、エポキシ-クレゾール-ノボラック、エポキシ-フェノール-ノボラック、ビスフェノールA系エポキシ樹脂を含む多数の化合物を網羅する。本発明の組成物において使用可能な他の化合物はWO 2003/097756に引用されている。
【0132】
ビスフェノールAジグリシジルエーテルなどの相対的に安価なビスフェノールA系液状エポキシ樹脂が好ましい。
【0133】
本発明はまた、
i. 式(I)、式(II)のアクリレートもしくはメタクリレート単量体、または式(I)および(II)の分子の混合物を含む(メタ)アクリル樹脂を収容する区画、
ii. 重合触媒剤を収容する別の区画
を含む、上記の二液型構造用接着剤の塗布のための装置、特にカートリッジに関する。
【0134】
2つの化合物を互いに接触させ、それらの混合物を接合すべき2つの材料のうち一方の表面に塗布し、次に他方の材料を第1の材料に貼付する。
【0135】
2つの成分(樹脂および触媒剤)の混合を向上させるために、動的ノズルシステムを使用することができ、このシステムでは、ノズルの内側に、樹脂の重合および均一性を最適化するために2つの成分を十分に混合することを可能にするスクリューが収容される。
【0136】
あるいは、静的混合ノズルシステムを使用することもでき、このシステムでは形状が混合を向上させる(例えば、中間の流動逆転器と交互に配置される一連の左側および右側の要素からなる正方形の形状)。
【0137】
本発明はまた、特に少なくとも1つの材料が金属性である際の、1つの材料を第2の材料に接着するためのプロセスにおける、上記の樹脂と過酸化物型ラジカル重合開始剤を含む触媒剤との併用に関する。
【0138】
本発明はまた、
i. 重合触媒剤と混合した上記の組成物(樹脂)を第1の材料に塗布する段階、および
ii. 第2の材料を第1の材料の上に貼付する段階
を含む、第1の材料を第2の材料に接着する方法であって、
樹脂の重合後に2つの材料が互いに接着される、
前記方法に関する。
【0139】
しかし、上記の樹脂が、複合材、ガラスなどの他の材料を接着するためにも、特に、異なる材料を接着するためにも好適であることに留意すべきである。
【0140】
したがって、本発明の組成物の使用および触媒剤の使用は、複合材料に対する金属、プラスチック、複合材料の接着を行うことを可能にするものであり、したがってサイロ、ボート、車、またはトラックトレーラーの組立の分野において特に適用される。自動車組立の分野または鉄道分野においても使用可能である。
【0141】
したがって、本組成物は材料を他の材料に接着することを可能にするものであり、いずれかの材料は特に金属、プラスチック、木材、または複合材料である。したがって、本組成物は以下の用途のうちいずれかにおいて使用可能である: 金属/金属、金属/複合材料、金属/プラスチック、金属/木材、木材/プラスチック、木材/複合材料、木材/木材、プラスチック/複合材料、プラスチック/プラスチック、ガラス/ポリカーボネート、ガラス/ポリアミド、または複合材料/複合材料の接着。
【0142】
本発明の組成物は、材料を複合材料または金属材料に接着すべき場合にも、特に関心対象となる。
【0143】
本発明の組成物によって得られる高い機械性能を示す柔軟性メタクリレート構造用接着剤は、弾性、耐衝撃性、および耐振動性がある。それらは、同じまたは異なる化学的性質の例えば以下の材料間の接着により組立を実現することを可能にする: コンクリート、木材、セラミック、ガラス、フェライト、アルミニウム、陽極処理アルミニウム、鋼、亜鉛メッキ鋼、ステンレス鋼、塗装金属、鋼、銅、亜鉛、ABS、PVC、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリエステルまたはエポキシゲルコート、複合材料、ガラス繊維強化複合材料、ラミネート、ハニカム、および任意の塗装材料またはラッカー塗装材料。本発明の組成物によって得られる構造用接着剤は、亜鉛メッキ鋼または電気亜鉛メッキ鋼の接着に関して特に関心対象となる。
【0144】
それらは、厚さ、粗さ、および平坦さが異なりかつ変動しうる基材間の大きな間隙を、より良い応力分布で充填することもできる。
【0145】
したがって、本組成物の柔軟性により、幾何学的欠陥(角度、粗さ、平坦さ)を減少させかつ無効にすることで、数メートルという相当な長さにわたる基材間の膨張の差による力を吸収することが可能になる。
【0146】
関係する用途および活動部門としては特に以下が挙げられる:
強化材、レール、フレーム、ビーム、補強材、パネル、パーティション、ファスナー、支持体、車体部品、強化ブラケット、インサート、円柱状および円錐状の部品、ヒンジ、フレームなどの接着。パーティション上の積層の再開による接着、高い機械強度を必要とする充填による接着。
特に、造船、自動車、鉄道(およびインフラストラクチャー)、航空、航空宇宙、電子機器、電気機械機器、家庭用機器、軍事用構造物、標識、交通標識(および広告標識)、ストリートファニチャー、外側建具(窓、出窓、フランス窓、出入口、およびガレージドア)、風力タービン、コンテナ、エンジニアリング構造物およびインフラストラクチャー(吊り橋、オフショア石油プラットフォーム、エアターミナルを含む)、建設および固着、ならびに建物外面およびソーラーパネルにおいて接着剤接着される、任意の構造的または機械的要素の接着。
[本発明1001]
構造用接着剤において使用可能な組成物であって、(重量%で)以下:
(a) 35%~60%の少なくとも1つの(メタ)アクリレート単量体であって、
i. 少なくとも20%の、一般式(I)の分子、一般式(II)の分子、または一般式(I)および(II)の分子の混合物:
式中、R、R1、およびR2はそれぞれ独立してHまたはCH
3
である;
ii. 少なくとも5%の1つまたは複数の他の(メタ)アクリレート単量体
を含む、前記少なくとも1つの(メタ)アクリレート単量体、
(b) 8~30% %の、熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから形成される粒子、
(c) 9~15%の、スチレンおよび少なくとも1つの第2の単量体を含むエラストマーブロック共重合体、またはそのようなブロック共重合体の混合物、
(d) 5~25%のエラストマー
を含み、化合物(b)、(c)、および(d)の割合の合計が少なくとも35%である、前記組成物。
[本発明1002]
式(I)または/および式(II)の前記単量体が1,3-ジオキサン-5-イルメタクリレートと1,3-ジオキソラン-4-イルメチルメタクリレートとの混合物であることを特徴とする、本発明1001の組成物。
[本発明1003]
25~35%の一般式(I)または(II)の単量体および少なくとも10%の他の単量体を含むことを特徴とする、本発明1001または1002の組成物。
[本発明1004]
前記他の単量体がイソボルニルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、ポリエチレングリコール系エステル、およびこれらのエステルの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、本発明1001~1003のいずれかの組成物。
[本発明1005]
少なくとも5%の2-エチルヘキシルアクリレートを含むことを特徴とする、本発明1001~1004のいずれかの組成物。
[本発明1006]
粒子(a)、エラストマーブロック共重合体(b)、およびエラストマーがブタジエンを含むことを特徴とする、本発明1001~1005のいずれかの組成物。
[本発明1007]
15~25% %の、熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから形成される粒子(b)を含むことを特徴とする、本発明1001~1006のいずれかの組成物。
[本発明1008]
9~12%のエラストマーブロック共重合体(c)を含むことを特徴とする、本発明1001~1006のいずれかの組成物。
[本発明1009]
10~25%のエラストマー(d)を含むことを特徴とする、本発明1001~1006のいずれかの組成物。
[本発明1010]
粒子(b)がアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン粒子、メタクリレート-ブタジエン-スチレン粒子、メタクリレート-アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン粒子、メタクリレート-アクリロニトリル粒子、およびそれらの混合物より選択されることを特徴とする、本発明1001~1009のいずれかの組成物。
[本発明1011]
熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから形成される粒子(コアシェル)(b)の量が26%以下であることを特徴とする、本発明1001~1010のいずれかの組成物。
[本発明1012]
エラストマーブロック共重合体(c)の第2の単量体がイソプレンおよびブタジエンより選択されることを特徴とする、本発明1001~1011のいずれかの組成物。
[本発明1013]
エラストマーブロック共重合体(c)がSIS、SBS、SIBS、SEBS、およびそれらの混合物より選択されることを特徴とする、本発明1001~1012のいずれかの組成物。
[本発明1014]
前記エラストマー(d)が非官能化ポリブタジエン、カルボキシル末端で官能化されたポリブタジエン、ビニル末端で官能化されたポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン、およびこれらの要素の混合物より選択されることを特徴とする、本発明1001~1013のいずれかの組成物。
[本発明1015]
トルイジン、アニリン、および置換または非置換フェノールからなる群より選択されるアミンも含むことを特徴とする、本発明1001~1014のいずれかの組成物。
[本発明1016]
クリスタルバイオレットラクトンまたは4,4',4''メチリジントリス(N,N-ジメチルアニリン)も含むことを特徴とする、本発明1001~1015のいずれかの組成物。
[本発明1017]
メタクリル化されていることが好ましいリン酸エステル系接着促進剤も含むことを特徴とする、本発明1001~1016のいずれかの組成物。
[本発明1018]
前記リン酸エステル系接着促進剤が、2-ヒドロキシエチルメタクリレートリン酸エステルか、または2-ヒドロキシエチルメタクリレート一リン酸および二リン酸エステルの混合物であることを特徴とする、本発明1009の組成物。
[本発明1019]
金属アクリレート単量体をさらに含むことを特徴とする、本発明1001~1018のいずれかの組成物。
[本発明1020]
レオロジー剤、酸性単量体より選択される少なくとも1つのさらなる化合物も含むことを特徴とする、本発明1001~1019のいずれかの組成物。
[本発明1021]
a. 本発明1001~1020のいずれかの組成物、および
b. フリーラジカル重合開始剤を含む、メタ(アクリレート)単量体の重合を開始するために該組成物に加えられるべき重合触媒剤
を含む、二液型構造用接着剤。
[本発明1022]
重合触媒剤中に存在するフリーラジカル重合開始剤が過酸化物、特に過酸化ベンゾイルであり、前記二液型構造用接着剤が5~40重量%(好ましくは10~20重量%)の重合開始剤を含むことを特徴とする、本発明1021の二液型構造用接着剤。
[本発明1023]
前記重合触媒剤がエポキシ化シランも含み、該エポキシ化シランが1~30重量%であることを特徴とする、本発明1021または1022の二液型構造用接着剤。
[本発明1024]
前記重合触媒剤がエポキシ樹脂をさらに含むことを特徴とする、本発明1021~1023のいずれかの二液型構造用接着剤。
[本発明1025]
前記重合触媒剤が無機充填剤をさらに含むことを特徴とする、本発明1021~1024のいずれかの二液型構造用接着剤。
[本発明1026]
i. 本発明1001~1020のいずれかのアクリレートまたはメタクリレート単量体を含む(メタ)アクリル樹脂を収容する区画、
ii. 前記重合触媒剤を収容する別の区画
を含む、本発明1021~1025のいずれかの二液型構造用接着剤を塗布するためのカートリッジ。
[本発明1027]
1つの材料を第2の材料に接着するためのプロセスにおける、本発明1001~1020のいずれかの樹脂と過酸化物型ラジカル重合開始剤を含む触媒剤との併用。
[本発明1028]
少なくとも1つの材料が金属性であることを特徴とする、本発明1027の使用。
[本発明1029]
i. フリーラジカル重合開始剤を含む重合触媒剤と混合した、本発明1001~1020のいずれかの組成物を、第1の材料に塗布する段階、および
ii. 第2の材料を第1の材料の上に貼付する段階
を含む、第1の材料を第2の材料に接着する方法であって、
樹脂の重合後に該2つの材料が互いに接着される、
前記方法。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0147】
以下の実施例は、本発明をその範囲を限定することなく例示する。記載されている組成物も本発明の対象である。
【0148】
実施例1
使用される原料、および方法論
以下の要素を使用する:
組成物(樹脂)
(メタ)アクリレートエステル単量体: 以下参照
官能化液状エラストマー: HYPRO(商標)VTB 2000x168(米国EPM)
酸性単量体: メタクリル酸(AMA)
接着促進剤: メタクリレートホスフェートGenorad 40(Rahn AG)
重合促進剤: N-(2-ヒドロキシエチル)-N-メチル-p-トルイジン(MHPT、CAS 2842-44-6)
トルイジン(d): N,N-ビス-(2-ヒドロキシエチル)-p-トルイジン(PTE)
亜鉛ジメタクリレート: SR 708(Sartomer)
充填剤: 金属イオン、レオロジー剤、粉状剤
SBS共重合体: Kraton D1102(Kraton Polymers)
SIS共重合体: Kraton D1114(Kraton Polymers)
SIBS共重合体: Kraton D1171(Kraton Polymers)
レオロジー剤: Disparlon 6500(楠本化成)
エラストマーポリマー粒子(コアシェル、MBS): Cleartrength C303H、XT100 (Arkema)、FM50 Sundow Polymers
触媒剤
20%過酸化ベンゾイル、エポキシ化シランありまたはなし(WO2011033002参照)。
組成物:触媒混合比 = 10:1
【0149】
引張剪断強度(RC)をISO 4587標準に従って測定する。簡潔に言えば、寸法100x25x1.6mm(LxWxE)の2024T3アルミニウム試験片を使用する。2つの試験片を重複面積25x12mm(300mm2)および接着剤接合厚さ約200~400μmで互いに接着する。次に、接着を破断させるために必要な力を、両試験片を引っ張ることで測定する。
【0150】
ISO 527標準を使用して、破断伸度ARを測定するための試験を行う。ISO 527に特に記載の当業者に周知の方法に従って、定数50mm/分である接着剤の引張速度で伸度を観察する。
【0151】
引張剥離強度(RP)をISO 14173標準に従って評価する。重複150x25mmおよび接着剤接合厚さ約500μmで接着される寸法200x25x1.6mmのアルミニウム試験片2024T3を使用する。
【0152】
実施例
実施例1.異なる単量体中でのブロック共重合体の溶解試験
異なる単量体とSBSおよびSISブロック共重合体とのブレンド能力を評価した。
【0153】
基準物質は、(単量体/(SIS-SIBS混合物またはSBS混合物))比65/35を示す単量体MMA(メチルメタクリレート)とした。
【0154】
THFMA(テトラヒドロフルフリルメタクリレート)、MAISOBOR、BZMA(ベンジルメタクリレート)、MA2EH、cHMA(シクロヘキシルメタクリレート)、A2EH、LAUMA(ラウリルメタクリレート)は、基準物質と多少なりとも同じ混合比(62.5/37.5~約75/25)を示すことが観察された。他方で、混合物粘度が実際には使用不可能であったことから、先行技術データと矛盾しないブロック共重合体比を得ることが困難であったのは、IGPMA(ほぼ混合不可能)またはGLYFOMA(ブロック共重合体20%以下)と混合した場合であった。
【0155】
実施例2.選択された単量体による先行技術組成物の再現
ブロック共重合体とのブレンドが可能な、実施例1において同定された単量体を使用して、先行技術の組成物(特にWO2008125521A1に記載)と同様の組成物を試験した。
【0156】
この出願における実施例では、以下を含む組成が記載されている。
- (メタ)アクリレート単量体50~60%
- ブロック共重合体(SBS、SIS、SIBS、またはブレンド): 15~22%
- エラストマー(官能化ポリブタジエン): 7~10%
- コアシェル: 10~15%
- 他の化合物: qsp 100
【0157】
以下のメタクリレート単量体: THFMA、MAISOBOR、BZMA、MA2EH、cHMA、LAUMA、を使用して、同じ比率の成分を有する組成物を作製した。
剪断強度は3.2~17.4MPaであった。
剥離強度は1.6~9.6N/mmの範囲であった。
剥離強度9.6N/mmを示す組成物は剪断強度7.3MPaを示した。
剪断強度17.4MPaを示す組成物は剥離強度3.3N/mmを示した。
【0158】
また、単量体の混合物(様々な比率のMAISOBORおよびMA2EH、BZMAおよびMA2EH、またはMAISOBOR、BZMA、およびMA2)が作製された組成物を調製した。ブロック共重合体、コアシェル共重合体、またはエラストマー共重合体の量は先行技術と同様であった(上記参照)。
剪断強度は11.2~16.3MPaの範囲であった。
剥離強度は2.1~7.7N/mmの範囲であった。
剥離強度7.7N/mmを示す組成物は剪断強度12.6MPaを示した。
剪断強度16.3MPaを示す組成物は剥離強度2.1N/mmを示した。
【0159】
したがって、MAISOBOR(29%)、MA2EH(27.2%)、17.8% SBS、7.5% VTB、10%コアシェルを含む組成物を作製したところ、3.2N/mmよりも低い剥離強度が得られた。
【0160】
BZMA(41.1%)、MA2EH(14.4%)、SBS(18.1%)、VTB(7.7%)、コアシェル(11.2%)の混合物を使用したところ、剥離強度5.9N/mmが得られた。
【0161】
したがって、先行技術組成物中のメチルメタクリレートをメチルメタクリレートよりも低い臭気を示す単量体(または単量体の混合物)で単純に置換するだけでは、これらの先行技術組成物の機械特性を維持することはできない。一般的に言えば、10N/mm超の良好な剥離強度を得ることは非常に困難である。
【0162】
実施例3.低い臭気および良好な機械特性を示す組成物
先行技術組成物(WO2008125521A1またはWO2008080913)よりも低い臭気およびそれらと同様の機械性能を示す組成物を得るために、本発明者らはコアシェルの量を増加させ、ブロック共重合体の量を減少させた。
【0163】
驚くべきことに、これらの比率変化、および実施例1において得られた結果の後に選択されなかった単量体の使用により、先行技術の結果と同様でかつ実施例2のみにおいて得られた結果よりもはるかに良好な結果が得られる。
【0164】
(表1)様々な組成物で得られた結果
ND: 未確定
【0165】
上記に示された結果は、少なくとも20%の一般式(I)または(II)の化合物を単独でまたは他のメタクリレート単量体と共に使用することによる、熱可塑性シェルおよびエラストマーコアから形成される粒子(コアシェル)の量の20%超への増加、およびブロック共重合体(SBS、SIS、SIBS)の量の減少により、剥離強度10N/mm超ならびに良好な剪断強度および/または破断伸度を示す組成物が得られることを明らかに示している。
【0166】
大部分の場合で、良好な剥離強度、良好な剪断強度、および良好な破断伸度が得られるが、いくつかの場合では、有意な破断伸度なしで良好な剥離強度および良好な剪断強度のみが観察されることもあれば、良好な剥離強度、良好な破断伸度、および多少低い剪断強度が観察されることもある。
【0167】
さらに、得られた接着剤は、単量体としてメチルメタクリレートを用いて得られる先行技術の接着剤に比べて低い臭気を示す。特に、GLYFOMAまたはIGPMAの使用によって、臭気を相当に減少させる(実質的に消失させる)ことが可能になり、したがって、これらの接着剤を製造ライン(自動車、電子機器など)で使用することが容易になる。
【0168】
他の組成物も調製した。
【0169】
【0170】
上記実施例は、観察される性能を、単量体および他の化合物の量を変化させることで維持することができることを示す。Tgも許容される(80℃超)。したがって、本出願の教示(使用される成分の性質および比率)に従うことで、当業者は、上記の性能を維持しながら異なる比率を適用することができる。