(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】眼科デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 9/007 20060101AFI20241121BHJP
【FI】
A61F9/007 170
A61F9/007 130D
(21)【出願番号】P 2021522439
(86)(22)【出願日】2019-10-16
(86)【国際出願番号】 US2019056480
(87)【国際公開番号】W WO2020086350
(87)【国際公開日】2020-04-30
【審査請求日】2022-10-14
(32)【優先日】2018-10-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518224358
【氏名又は名称】ニュー ワールド メディカル インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カフーク、マリク、ワイ.
(72)【発明者】
【氏名】ポーティアス、エリック
(72)【発明者】
【氏名】メンドーサ、カルロス、エイ.
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2017/0216092(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第03064241(EP,A1)
【文献】特表2015-515887(JP,A)
【文献】国際公開第2018/118817(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0073275(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2007/0191925(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0197592(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼科デバイスであって、
カニューレ遠位端、ルーメン、及び前記ルーメンに連結されている1つ又は複数のオリフィスを有するカニューレであって、流体を送達するように構成されている、カニューレと、
前記カニューレの周囲に配設されておりスリーブ遠位端を有するスリーブと、
前記スリーブ及び前記カニューレに連結されているハンドルであって、アクチュエータを有し、前記アクチュエータは、前記ハンドルの側面に位置付けられており使用者の力が加わると押されていない位置から押された位置へと移動可能な、押しボタンを含み、前記押されていない位置から前記押された位置へと前記押しボタンが移動するとき、前記押しボタンは
、解放部材の第1の回転方向への回転を付勢するように構成されている、ハンドルと、
前記アクチュエータに連結されており前記スリーブを前記カニューレに対して引き戻すように構成されている内部機構であって、
前記スリーブに固定的に連結されており遠位位置と近位位置の間で移動可能なフォロワ、
作動位置と解放位置の間で移動可能な
前記解放部材であって、前記アクチュエータに連結されており、前記解放部材が前記作動位置から前記解放位置へと移動するときに、前記フォロワを前記遠位位置から前記近位位置へと付勢する力を解放するように構成されている、
前記解放部材、
前記フォロワに連結されており、前記フォロワが前記遠位位置にあるときに前記フォロワを近位方向に付勢するためのばね力を加えるように構成されている、ばね、
第1の位置と第2の位置の間で移動可能な捕捉部であって、前記捕捉部が前記第1の位置にあるときに前記フォロワを前記遠位位置に保持するように、及び前記捕捉部が前記第2の位置にあるときに前記フォロワを解放するように構成されている、捕捉部、及び
前記捕捉部に連結されているカムを備え、前記カムは、前記捕捉部に対抗して第1の回転方向に回転して、前記捕捉部を前記第1の位置から前記第2の位置へと付勢するように構成されている、前記解放部材、を備える、内部機構と、
を備える、眼科デバイス。
【請求項2】
前記アクチュエータに連結されているリセットばねであって、前記押された位置から前記押されていない位置へと戻るように前記押しボタンを付勢して、前記解放部材の前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向への回転を付勢するように構成されている、リセットばね
を更に備える、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項3】
前記カニューレは、近位シャフト・セグメントと、近位シャフト・セグメントに取り付けられた先端部セグメントと、を備え、
前記1つ又は複数のオリフィスは前記先端部セグメント上に配設されている、
請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項4】
前記カムは前記フォロワに更に連結されており、
前記捕捉部は前記第2の位置に向かって付勢されており、
使用者の力が解放されると、前記捕捉部は、前記フォロワに対抗して前記カムを前記第1の回転方向とは反対の第2の回転方向へと付勢して前記フォロワを前記近位位置から前記遠位位置へと付勢するように構成されている、
請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項5】
前記スリーブの外面は、前記外面の表面積を大きくするように構成されている1つ又は複数の溝を備える、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項6】
前記スリーブの外面は複数の周方向の溝を備える、請求項5に記載の眼科デバイス。
【請求項7】
前記スリーブ遠位端は細長い断面を有する、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項8】
前記細長い断面は1対の対向する長辺と1対の対向する短辺とを有し、
前記スリーブは前記1対の対向する長辺に向かって収束する第1の1対の対向する外面を有し、
前記スリーブは前記1対の対向する短辺に向かって拡開する第2の1対の対向する外面を有する、
請求項7に記載の眼科デバイス。
【請求項9】
前記1つ又は複数のオリフィスは、前記1対の対向する短辺に面する1対の対向するオリフィスを含む、前請求項8に記載の眼科デバイス。
【請求項10】
前記細長い断面は長い外径と短い外径とを有し、
前記スリーブは近位外径を有する近位部分を有し、
前記長い外径は前記近位外径よりも大きく、
前記短い外径は前記近位外径よりも短い、
前請求項7に記載の眼科デバイス。
【請求項11】
前記カニューレは、近位シャフト・セグメントと、近位シャフト・セグメントに取り付けられた先端部セグメントと、を備え、
前記1つ又は複数のオリフィスは前記先端部セグメント上に配設されている、
請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項12】
前記カニューレの前記ルーメンは、前記近位シャフト・セグメント内に配設されている第1の部分と、前記先端部セグメント内に配設されている第2の部分と、を有し、
前記第1の部分は前記第2の部分よりも大きい直径を有する、
請求項11に記載の眼科デバイス。
【請求項13】
前記ハンドルはハンドル遠位端とハンドル近位端とを備え、
前記カニューレ及び前記スリーブは前記ハンドル遠位端から突出しており、
前記ハンドルは前記ルーメンに流体連結されている入口ポートを備える、
請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項14】
前記入口ポートは前記ハンドル近位端上に配設されており、
前記ハンドルは前記アクチュエータに連結されているポンプを備え、
前記アクチュエータは、前記1つ又は複数のオリフィスを通るように前記
流体を付勢するよう前記ポンプを作動させるように構成されている、
請求項13に記載の眼科デバイス。
【請求項15】
前記カニューレの外面から半径方向に突出しており前記カニューレ遠位端と前記ハンドル遠位端の間で位置決め可能なリップと、
を備える、請求項1に記載の眼科デバイス。
【請求項16】
前記リップは、前記カニューレ遠位端と前記ハンドル遠位端の間の、前記オリフィスのうちの少なくとも1つよりも近位の軸方向場所に固定的に配設されている、
請求項15に記載の眼科デバイス。
【請求項17】
前記リップは遠位位置と近位位置の間で移動するように構成されている引き戻し可能なスリーブの一部であり、
前記リップは前記遠位位置にあるとき前記オリフィスのうちの少なくとも1つよりも遠位の軸方向場所に配設され、
前記リップは前記近位位置にあるとき前記オリフィスのうちの前記少なくとも1つよりも近位の軸方向場所に配設される、
請求項15に記載の眼科デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に医療デバイス及び医療手技に関し、より詳細には眼科デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は眼内圧(IOP:intraocular eye pressure)の上昇の結果生じる疾患である。IOPは、眼の自然な排水(例えば、眼の腐植質(humus)の排水)が妨げられる、低下する、又はそれ以外で閉塞されるときに上昇する可能性がある。眼の水晶体の前方(例えば直上)の腔は、房水と呼ばれる粘性流体で満たされている。眼の中の房水の連続的な流れによって、眼の血管のない部分(例えば、角膜及び水晶体)に栄養が供給される。この房水の流れはまた、これらの組織から不要物(例えば、異物の破片)を除去する。健康な眼では、毛様体の上皮細胞から新しい房水が分泌されるときに、房水の液流が前眼房から線維柱帯網を通ってシュレム管内へと排出される。排出された房水はシュレム管から静脈流に進入し、眼から出て行く静脈血と一緒に運ばれる。眼の自然の排水機構(例えば、シュレム管及び/又は線維柱帯網)が適切に機能しなくなると、IOPが上昇し出す。
【0003】
本明細書に組み込まれその一部を構成している添付の図面は、本開示の例示の態様を図示しており、本説明とともに本開示の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0004】
【
図2A】スリーブによって包囲されている内部カニューレを有する眼科デバイスの実例の遠位端を示す斜視図であり、スリーブによって覆われている内部カニューレを示す。
【
図2B】スリーブによって包囲されている内部カニューレを有する眼科デバイスの実例の遠位端を示す斜視図であり、スリーブから突出している内部カニューレを示す。
【
図3A】眼組織と相互作用する引き戻し可能なスリーブを示す長手断面図であり、遠位位置にあるスリーブを示す。
【
図3B】眼組織と相互作用する引き戻し可能なスリーブを示す長手断面図であり、引き戻された近位位置にあるスリーブを示す。
【
図4A】眼組織と相互作用するスリーブの実例を示す側面図であり、シュレム管を覆う線維柱帯網及びシュレム管の近傍のより剛性の高い解剖学的構造に対して当接するようなサイズとされたスリーブの実例を示す。
【
図4B】眼組織と相互作用するスリーブの実例を示す側面図であり、線維柱帯網をシュレム管内へと押し潰すようなサイズとされたスリーブの実例を示す。
【
図5A】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの斜視図である。
【
図5B】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの上面図である。
【
図5C】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの側面図である。
【
図6A】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの斜視図である。
【
図6B】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの上面図である。
【
図6C】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す様々な図であり、スリーブの側面図である。
【
図7A】眼科デバイスに含めることのできるカニューレの実例の様々な図であり、カニューレの斜視図である。
【
図7B】眼科デバイスに含めることのできるカニューレの実例の様々な図であり、
図7Aで実施されているカニューレの上面図である。
【
図7C】眼科デバイスに含めることのできるカニューレの実例の様々な図であり、
図7Aで実施されているカニューレの側面図である。
【
図8】眼科デバイスに含めることのできるスリーブの実例を示す長手断面図である。
【
図9A】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面断面図であり、開始位置にある機構を示す。
【
図9B】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面断面図であり、中間位置にある機構を示す。
【
図9C】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面断面図であり、解放位置にある機構を示す。
【
図10A】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す斜視図であり、開始位置にある機構を示す。
【
図10B】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す斜視図であり、中間位置にある機構を示す。
【
図10C】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す斜視図であり、解放位置にある機構を示す。
【
図11A】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す斜視図であり、開始位置にある機構を示す。
【
図11B】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面断面図であり、開始位置にある機構を示す。
【
図11C】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面断面図であり、解放位置にある機構を示す。
【
図11D】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面断面図であり、リセット位置にある機構を示す。
【
図12A】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す斜視図であり、開始位置にある機構を示す。
【
図12B】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面図であり、開始位置にある機構を示す。
【
図12C】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面断面図であり、開始位置にある機構を示す。
【
図12D】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面図であり、解放位置にある機構を示す。
【
図12E】眼科デバイスにおいてスリーブを引き戻すように構成され得る機構の実例を示す側面断面図であり、解放位置にある機構を示す。
【
図13】眼科デバイスの実例を示す長手断面図である。
【
図14A】流体を注入するように構成されている機構の実例を示す切断図であり、リンク機構が取り外された状態の機構のナット及びポンプを示す。
【
図14B】流体を注入するように構成されている機構の実例を示す切断図であり、初期位置にあるリンク機構を示す。
【
図14C】流体を注入するように構成されている機構の実例を示す切断図であり、作動された位置にあるリンク機構を示す。
【
図15A】眼科デバイスを用いて行うことのできる眼科手技の実例を示す切断図であり、前眼房に進入する眼科デバイスを示す。
【
図15B】眼科デバイスを用いて行うことのできる眼科手技の実例を示す切断図であり、シュレム管に流体を注入する眼科デバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0005】
以下の詳細な説明は例示の説明的なものに過ぎず、特許請求するような特徴を制約するものではない。本明細書で使用される場合、用語「備える(comprises)」、「備えている(comprising)」、又はこれらの他の変形は、非排他的な包含を含むことを意図しており、この場合、列挙された要素を備えるプロセス、方法、物品、又は装置は、これらの要素を含むだけでなく、明示的に列挙されていないか又はそのようなプロセス、方法、物品、若しくは装置に内在している、他の要素を含み得る。更に、用語「例示の(exemplary)」は本明細書では「理想的な(ideal)」ではなく「実例(example)」の意味で使用されている。本明細書で使用される場合、用語「約」、「実質的に」、及び「ほぼ」は、述べられている値の+/-5%以内の値の範囲を示す。用語「遠位の」は、デバイスを対象者の体内に導入するときに使用者から最も遠くにある部分を指す。対照的に、用語「近位の」は、デバイスを対象者の体内に設置するときに使用者の最も近くにある部分を指す。
【0006】
以下で検討する実施例は、緑内障又は他の眼の症状の治療で使用されるように構成された眼科デバイスなどの医療デバイス、及び関連する使用方法に関する。いくつかの実施例によれば、眼科デバイスはカニューレを含む遠位端を有し得る。カニューレは、内側ルーメンと、シュレム管などの患者の標的部位内に粘弾性流体又は他の物質を送達するように構成されている、1つ又は複数の流出オリフィスと、を含み得る。
【0007】
いくつかの実施例によれば、カニューレの先端部は、カニューレの外面の周囲に配設されているカラーを含み得る。カラーは、カニューレの位置決めを容易にする又は眼に関する流体輸送を容易にするべく、患者の眼の房水流出経路内の眼内組織と相互作用するように構成され得る。例えば、カラーは、カニューレのオリフィスをシュレム管の中又は近くに位置決めするのを容易にする構造を提供するための、固定されている又はオリフィスよりも近位にある位置まで移動可能な、半径方向に突出したリップを含み得る。
【0008】
いくつかの実施例によれば、カラーは、引き戻し可能なスリーブの一部として実装され得る。スリーブはカニューレの周囲に配設することができ、カニューレに対して後退することで、吸引効果によって患者組織を引っ張るように構成することができる。例えば、ボタン又はデバイスのハンドル上に配設された他のアクチュエータ構成要素の操作は、スリーブを引き戻すことによって、カニューレの周囲に沿って線維柱帯網を引っ張りカニューレで線維柱帯網を貫通させるとともに、シュレム管を開いてその中での流体送達を容易にするように、構成され得る。
【0009】
いくつかの実施例によれば、機構は、比較的素早く鋭いスナップ動作で、スリーブを引き戻す、又はそれ以外で眼科デバイスの構成要素を移動させるように、構成され得る。そのような動作は例えば、カニューレによる患者の組織の吸引及びその貫通を容易にし得る。追加として又は別法として、機構は、スリーブの引き戻しと協調してカニューレを通して流体又は物質を注入するように、ポンプを動作させることができる。
【0010】
これらの及び他の実施例が、
図1~
図9Bに示す特定の実例と関連させて以下で検討されている。しかしながら、当業者は様々な修正及び代替の用途を認識するであろう。したがって、これらの図及び上で提供した説明に関して提供される詳細な説明は限定するものとして解釈されるべきではなく、むしろ本開示と関連付けられる様々な概念を説明する役割を果たす。
【0011】
図1は医療デバイスの実例を示し、より詳細には、眼科デバイス10の実例を示す。示されている実例では、眼科デバイス10は、シュレム管又は患者の眼の他の眼内部位内への物質の注入を容易にするべく眼組織と相互作用するように構成されている、医療器具又は最低侵襲性の外科用器具として構成されている。ただし、眼科の器具及び手技に言及して本明細書の実例が記載されているが、眼科デバイス10の教示が様々な他の医療及び非医療用途のいずれにも容易に適用又は適合され得ることが、諒解されるであろう。それらには、例えば、患者の眼以外の患者組織との相互作用を含む他の医療手技、及び流体の注入又は輸送を含む他の非医療用途を含めることができる。
【0012】
図1を参照すると、眼科デバイス10は、接眼構成要素(ocular component)21に連結されているハンドル12を含み得る。接眼構成要素21は一般に、眼組織と相互作用する、及び/又は眼内の腔内、例えば患者の眼の前眼房に挿入されるように、構成されている。接眼構成要素21は、流体送達、組織操作、及び/又は患者の眼との他の相互作用を容易にするように構成され得る。
【0013】
図1の実例に示すように、接眼構成要素21は、ハンドル12の遠位端から突出しており長手中心軸線Cを定める、長尺の管状部材を含み得る。接眼構成要素21は、作動長さL、及び、角膜切開部又は患者の眼の表面の他の切開部を通した前眼房内への挿入を可能にする直径を有し得る。本明細書に記載する作動長さLは、ハンドル12の遠位端から接眼構成要素21の遠位端まで延びる、ハンドル12から突き出ている接眼構成要素21の露出された長さ又は距離と定義できる。作動長さLは例えば、約16ミリメートル(mm)から40mmの間の範囲、又はより特定的には約18mmであり得るが、様々な実装形態においてこれらの実例から外れる他の寸法が好適であり得ることが企図される。直径は作動長さLに沿って変化しても又は作動長さL全体にわたって不変であってもよく、例えば、約100マイクロメートル(μm)から1000μmの範囲、又はより特定的には約700μmとすることができるが、様々な実装形態においてこれらの実例から外れる他の寸法が好適であり得ることが企図される。
図1の実例に示すように、接眼構成要素21は、(直線状の中心軸線Cを定める)直線状の幾何形状で実装され得るか、又は、接眼構成要素21は、湾曲した及び/若しくは屈曲した幾何形状で実装され得る。
【0014】
図1を引き続き参照すると、ハンドル12は、眼科デバイス10の本体として実装することができ、使用者又は他の操作者の手によって操作されるように構成され得る。例えば
図1に示すように、ハンドル12は、遠位端及び遠位端の反対側の近位端を有する、長尺の管状部材として実装され得る。このことにより、例えば、外科医が鉛筆のように握ることでハンドル12の把持又は操作が容易になり得るが、ピストル形状の構成及び/又はフィンガーループなどの他の形状及び構成を有してハンドル12が実装され得ることが企図される。ハンドル12の外面は、使用者がハンドル12を容易に掴めるように起伏のある形状及び/又はテクスチャを有する表面(例えば、ぎざぎざの、リブ状の、又は他の表面テクスチャ)を有する、握り13を含み得る。ハンドル12の外面が起伏のない真っ直ぐな形状及び/又は平滑な外面を有する実装形態も企図される。
【0015】
ハンドル12はアクチュエータ38を含み得るか、又はこれに連結され得る。デバイスを使用する眼科手技の実施を容易にする1つ又は複数の動作機能を提供するために、アクチュエータ38を、眼科デバイス10の1つ又は複数の移動する部品に連結することができる。例えば、アクチュエータ38は、接眼構成要素21の1つ若しくは複数の部品をハンドル12から独立して移動させる、及び/又は、接眼構成要素21の2つ以上の移動する部品を互いから独立して移動させるように構成され得る。追加として又は別法として、アクチュエータ38は、接眼構成要素21を通して流体を輸送するための、ポンプ、プランジャ、及び/又は圧縮機構を作動させるように構成され得る。アクチュエータ38は例えば、そのような部品を直接、又はハンドル12内に配設されている内部機構を介して移動させるように構成され得る。
【0016】
図1に示す実例では、アクチュエータ38は、ハンドル12上に配設されている、押されていない位置と押された位置の間で移動可能な機械的な押しボタンとして実装されるか、さもなければこれを含む。押しボタンはハンドル12の側面上に配設されて示されているが、このことにより例えば、外科医又は他の使用者の手が手技中にハンドル12を掴むときに、その使用者が自身の親指及び/又は人差し指を用いて作動を行うことが容易になり得る。追加として又は別法として、押しボタンが例えばハンドルの近位端などの他の場所に配設されている実装形態が企図される。押しボタンの代わりに又はそれに加えて、アクチュエータ38は、スライダ、ローラホイール、スクイーズバルブ、及び/又は眼科デバイス10の移動する部品を作動させるために使用者若しくは他の操作者が操作可能な任意の他の好適な機構を含む実装形態も企図される。
【0017】
図2A及び
図2Bは、眼科デバイス10に含めることのできる接眼構成要素21の実例を示す拡大図である。
図2A及び
図2Bは、
図1に示すような接眼構成要素21の遠位部分27を示す。
【0018】
図2A及び
図2Bに示す実例では、接眼構成要素21は、カニューレ14と、スリーブ260(本明細書では「シース」と呼ぶ場合もある)とを含む。スリーブ260はカニューレ14の周囲に配設されており、カニューレ14はスリーブ260内に配設されている。カニューレ14及びスリーブ260は例えば、実質的に管状の構成要素として各々実装することができ、この場合、カニューレ14はスリーブ260と同軸に配設され、カニューレ14及びスリーブ260はいずれも中心軸線Cを中心として配設される。カニューレ14及び/又はスリーブ260は例えば、接眼構成要素21の作動長さLと等しい作動長さを各々有し得る。
【0019】
カニューレ14及びスリーブ260は、互いに対して相対移動するように構成され得る。例えば
図2A及び
図2Bに示すように、カニューレ14及びスリーブ260は、カニューレ14の遠位端がスリーブ260によって実質的に覆われているか又は包囲されている第1の構成(
図2Aに示す)と、カニューレ14の遠位端がスリーブ260の遠位端から遠位方向に突出している第2の構成(
図2Bに示す)との間で、互いに対して移動可能であり得る。相対移動は例えば、カニューレ14及びハンドル12から独立した、スリーブ260の近位方向への引き戻しによって、並びに/又は、スリーブ260及びハンドル12から独立した、カニューレ14の遠位方向への配備によって、達成され得る。アクチュエータ38は、カニューレ14及び/又はスリーブ260をハンドル12の固定された構成要素に対して移動させるように、カニューレ14及び/又はスリーブ260に動作的に連結され得る。
【0020】
カニューレ14は、流体又は他の物質を輸送するように構成され得る。例えば、カニューレ14は、ヒアルロン酸ナトリウム又はコンドロイチン硫酸などの、粘弾性流体を注入するように構成され得る。粘弾性流体は、組織構造を拡張させて互いから分離させることで房水の流路を再び開くか又は拡張することにより、適切な排出及び眼圧緩和のための十分な空間を提供するのに役立つ、非常に柔軟なゲル状の物質である。粘弾性流体はまた、出血している構造を拡張させて互いから分離させることによって視野の妨害を解消して、可視化を改善することができる。幹細胞、薬剤、気体(例えば、SF6又はC3F8)、及び/又は染料(例えば、トリパンブルー染料)を送達するためにカニューレ14を利用できることもまた企図される。注入される幹細胞は例えば、眼内の健康な組織の成長を開始させる(例えば、それにより健康な線維柱帯網を発達させて、そこを通る房水の排出を向上させる)ことができる。注入される染料は例えば、線維柱帯網を通って流れて、線維柱帯網に閉塞されたままの、押し潰されたままの、又はそれ以外で房水の流れを妨げるエリアが存在する場合に、それがどのエリアであるかを判定できるように、房水の流体流の可視化を向上させることができる。更に、物質の注入に関しての実例が記載されているが、カニューレ14は追加として又は別法として、物質を引き出す、例えば組織、血液、房水、又は他の物質をシュレム管又は眼の他の部分から引き出すために利用できることが企図される。
【0021】
図2Bに示すように、カニューレ14は、その遠位端に丸められた、鋭くしていない、又はそれ以外の外傷をもたらさない先端部を有する、先鋭でないマイクロカニューレとして実装され得る。カニューレ14がその遠位端に鋭い針又は外傷をもたらすような先端部を有して実装される実装形態も企図されるが、先鋭でないカニューレは、周囲の組織の望まれない外傷のリスクを低減しながら、線維柱帯網などの多孔性の患者組織の貫通を容易にすることができる。
【0022】
カニューレ14は、カニューレ14の遠位部分上に配設されている、例えばカニューレ遠位端上又は近くに配設されている、1つ又は複数のオリフィス32を含み得る。1つ又は複数のオリフィス32は、流体又は他の物質を輸送するように構成されている1つ又は複数の流体輸送ポートを提供し得る。例えば、1つ又は複数のオリフィス32は、粘弾性物質を患者の眼のシュレム管に送達するための流出ポートを提供するように構成され得る。
図2Bの実例に示すように、1つ又は複数のオリフィス32はカニューレ14の側面上に配設することができ、このオリフィス32は、カニューレ14の側壁を中心軸線Cを横切る方向に貫通する、1つ又は複数の流体チャネルを提供し得る。別法として、オリフィスが中心軸線Cに沿って、並びに/又は、意図する標的部位から及び/又は意図する標的部位へと流体を輸送するのに適した任意の他の1つ若しくは複数の位置に配設されている、他の実装形態が企図される。オリフィスは各々、30μmから70μmの間、又は例えば約50μm若しくは約60μmの直径を有し得るが、様々な実装形態においてこれらの範囲から外れる他のオリフィス直径を好適に使用できることが企図される。カニューレ14は、カニューレ14の遠位部分上に配設されている1つ又は複数の溝34を含み得る。
【0023】
例えば
図2A及び
図2Bに示すように、スリーブ260とカニューレ14の間の相対移動は、スリーブ260でオリフィス32のうちの1つ又は複数を選択的に覆う及び曝露させるように構成され得る。例えば、
図2Aに示す第1の構成にあるとき、スリーブ260の遠位端を、オリフィス32を覆うか又は取り囲むように、オリフィス32よりも遠位の第1の軸方向位置に配設することができ、
図2Bに示す第2の構成にあるとき、スリーブ260の遠位端を、スリーブ260の遠位端の外側でオリフィス32を露出させるように、オリフィス32よりも近位の第2の軸方向位置に配設することができる。
【0024】
眼科デバイス10は、カニューレ遠位端に又はその近くに、カニューレ14の先端部の周囲に沿って配設されているカラー299を更に含み得る。例えば
図2A及び
図2Bに示すように、カラー299はスリーブ260の一体の部分であってもよいか、さもなければスリーブ遠位端においてスリーブ260に固定的に連結されていてもよく、この場合、カラー299及びカニューレ14が互いに対して移動可能となるように、カラー299はスリーブ260と一緒に移動し得る。カラー299は、カニューレ14の設置を容易にするよう患者組織と相互作用するように構成されている、カニューレ14の周囲に沿って(例えば、カニューレ14の外径上に又は外径に沿って)配設された構造を提供し得る。例えば、カラーの遠位端にあるカラー299の面451は、線維柱帯網を操作する、並びに/又は、線維柱帯網及び/若しくはシュレム管の近傍の他の組織に当接する誘導制約部を提供するように構成され得る。この誘導用制約部によって、例えば、シュレム管内の所望の貫通深さへのオリフィス32の設置が容易になり得る。
【0025】
図2A及び
図2Bに示す実例では、カラー299は、スリーブ260の遠位部分の一部として含まれている。スリーブ260及びカニューレ14が
図2Bに示す第2の構成となっているとき、カラー299の面451は、半径方向外向きにカニューレ14の外径から離れる方へと突出しているリップを提供する。リップは、デバイスが第2の構成にあるときに、カニューレ14の貫通深さがカニューレ14の遠位端とリップ(又は面451又はカラー299の遠位端)の間の所定の距離によって制約又は誘導されるように、線維柱帯網又はシュレム管の近傍の他の組織に当接し得る。
【0026】
図3A及び
図3Bは、眼組織と相互作用する接眼構成要素21の実例の遠位部分27を示す長手断面図である。
図3Aは遠位位置にあるスリーブ260を示し、
図3Bは、スリーブ260が矢印で示すような近位方向99に引き戻されている、引き戻された位置にあるスリーブ260を示す。
【0027】
図3A及び
図3Bに示すように、スリーブ260の遠位端にあるカラー299は、患者組織に接触するように構成することができ、スリーブ260は、カニューレ14に沿って患者組織が引っ張られるよう、近位方向に後退するように構成することができる。例えば、スリーブ260は、スリーブ260及び/又はカラー299が線維柱帯網86に押し付けられたときに、スナップ動作(すなわち鋭く素早い動作)を用いて近位方向99に後退させて、患者の眼の線維柱帯網86に対する吸引微小環境を生み出すように構成され得る。スリーブ260はそのスナップ動作を介して線維柱帯網86を近位方向に引っ張り拡張することができるが、このことはまた、線維柱帯網86がシュレム管の前壁から跳ね上がるときに、シュレム管80を拡張する役割も果たし得る。線維柱帯網86を引っ張っているときに、カニューレ14の遠位端は所定位置に残ったままであり、この結果、線維柱帯網86はカニューレ14に沿って移行し、カニューレ14は線維柱帯網86を穿孔又は貫通し、オリフィス32はシュレム管80の内部の所定位置に残される。線維柱帯網86が引っ張られシュレム管80内にオリフィス32が位置付けられるとき、眼科デバイス10は、オリフィス32に流体連結しているカニューレ14内のルーメン95を介して、シュレム管80内に物質を送達するように構成され得る。スリーブ260の近位方向への引き戻しは、シュレム管80を拡張する、並びに/又は、それ以外でカニューレ14による貫通を介した流体送達及び/若しくは治療を容易にするように、有利に機能し得る。物質の注入がいくつかの実装形態では、スリーブ260が所定位置に留まっている間にカニューレ14を遠位方向に配備することによって、カニューレ14をスリーブ260とともに近位方向に若しくは遠位方向に移動させることによって、及び/又は他の技法によって行われ得ることもまた、企図される。
【0028】
図4A及び
図4Bは、眼組織と相互作用するスリーブ260の実例を示す長手側面図である。
図4Aは、スリーブ260の遠位端に実装され得るサイズ設定の第1の実例を示し、
図4Bは、スリーブ260の遠位端において実装され得るサイズ設定の第2の実例を示す。
図4A及び4Bは、線維柱帯網86及びシュレム管80、並びに他の近傍の眼の解剖学的構造、例えば強膜岬71、毛様筋69、及びシュワルベ線67を示す。
【0029】
図4A及び
図4Bの両方に示すように、スリーブ260の遠位端のサイズ(又は面451若しくはカラー299の遠位端のサイズ)は、遠位端が眼内法(ab interno approach)(前眼房内からのアプローチ)を用いて虹彩角膜角に挿入され線維柱帯網86に対して当接し接触することが可能になるように、十分に小さくすることができる。
図4Aに示す実例では、スリーブ260の遠位端のサイズは、線維柱帯網86を押すように遠位端を前進させるときに、線維柱帯網86がシュレム管80内で押し潰されることを実質的に防止するように、遠位端が線維柱帯網86及び強膜岬71などの線維柱帯網86よりも剛性の高い近傍の解剖学的構造の両方に対して当接するよう構成されるように、十分大きくなっている。
図4Bに示す実例では、スリーブ260の遠位端のサイズは、例えば強膜岬71とシュワルベ線67の間の領域において、遠位端が線維柱帯網86に押し付けられるときに、遠位端がシュレム管80内で線維柱帯網86を押し潰すよう構成されるように、十分小さくなっている。いずれの実例においても、線維柱帯網86に対して当接するとき、遠位端は、線維柱帯網86及び/又は他の眼組織、並びに周囲の流体、例えば房水及び/又は粘弾性物質(例えば、眼科用粘弾性物質(OVD:ophthalmic viscoelastic device))に対する、完全な又は部分的なシールを形成するように構成され得る。眼科デバイス10はその場合、
図3A及び
図3Bに関して上記したように、線維柱帯網86を引き寄せるためにスリーブ260を引き戻すように構成され得る。更に、遠位端が、長辺が
図4Aに示すもののようなサイズになっており、短辺が
図4Bに示すもののようなサイズとなっている、細長い断面形状を有し得ることが企図される。長辺は、線維柱帯網86が眼の水晶体の周囲に延在する方向を横切るように長辺が配向されているとき、線維柱帯網86を押すように前進させると剛性の高い解剖学的構造に接触するように構成することができ、短辺は、長辺が線維柱帯網86が延在する方向と整列されているときに、シュレム管80内で線維柱帯網86を押し潰すように構成することができる。
【0030】
図5A~
図5Cは、カラー299を含むスリーブ260の実例の遠位部分の様々な図である。
図5Aはスリーブ260の斜視図であり、
図5Bは
図5Aで実施されているスリーブ260の上面図であり、
図5Cは
図5Aで実施されているスリーブ260の側面図である。
【0031】
例えば
図5A~
図5Cに示すように、カラー299(例えば、面451)及びスリーブ260の遠位端は、細長い断面形状(例えば、卵形、楕円形、角を丸めた矩形、又は他の細長い形状)を有し得る。細長い形状は、1対の対向する長辺93及び1対の対向する短辺96を有する。長辺93は細長い断面の長軸85を定め、細長い断面は長軸85に沿って長い外径D
LONGを有する。短辺96は細長い断面の短軸89を定め、細長い断面は短軸89に沿って、長い外径D
LONGよりも小さい短い外径D
SHORTを有する。例えば
図5Bに示すように、カラー299及びスリーブ260の遠位端は、スリーブ260の両側に、スリーブ260の遠位端の対向する短辺に向かって拡開する(又は半径方向外向きに裾広がりになっている)、1対の拡開する外面79を含み得る。例えば
図5Cに示すように、カラー299及びスリーブ260の遠位端はまた、スリーブ260の両側に、スリーブ260の遠位端の対向する長辺に向かって収束する(又は半径方向内向きにテーパしている)、1対の収束する外面75を含み得る。この結果、長い外径D
LONGは近位部分スリーブ260の外径D
PROXよりも大きくなり得、一方、短い外径D
SHORTは近位部分の外径D
PROXよりも小さくなり得る。スリーブ260の遠位端は、遠位先端部を眼の線維柱帯網及び/又は強膜岬に接触させる又は押し付けることができるように、虹彩角膜角(虹彩と角膜の間に形成される角度)内にフィットするようなサイズとすることができ、長軸85に沿った裾広がりの構成に関する上記した向きは例えば、線維柱帯網及び/又はシュレム管の過圧縮が回避されるように外科医が先端部を適切に設置するための、スリーブ先端部の優先的な向きを示すために有用であり得る。
【0032】
カラー299及び/又はスリーブ260は更に、眼の中に設置したときの可視化を向上させるための光導体として構成され得る。例えば、1つ又は複数の発光ダイオード(LED:light emitting diode)などの光源を、ハンドル12内に配設すること、又はそれ以外で眼科デバイス10上のスリーブ260の遠位端よりも近位に位置付けることができる。光源は、可視光をスリーブ260の側壁中へと結合し、その光を内部全反射(TIR:total internal reflection)によってスリーブ260の側壁を通して、スリーブ260の遠位端又は遠位部分から外へ(例えば面451の外へ)伝播させるように構成され得る。追加として又は別法として、スリーブ260及び/又はカニューレ14の可視化を容易にするために、スリーブ260を透明にすること、又は、1つ若しくは複数の透明な窓を含むことができるが、他の実装形態では、スリーブ260を可視光に対して完全に不透過性にすることが企図される。
【0033】
図6A~
図6Cは、カラー299を含むスリーブ260の実例の遠位部分の様々な図である。
図6Aはスリーブ260の斜視図であり、
図6Bは
図6Aで実施されているスリーブ260の上面図であり、
図6Cは
図6Aで実施されているスリーブ260の側面図である。例えば
図6A~
図6Cに示すように、カラー299の外面及びスリーブ260の遠位部分の外面は、溝101を更に含み得る。溝101は、OVD又は眼の前眼房内に配設され得る他の周囲流体などの流体に接触する外面の表面積を大きくすることによって、スリーブ260及びカラー299が近位方向に引き戻されるときの吸引効果を向上させることができる。溝101は
図6A~
図6Cでは、スリーブ260の外周に沿って延在し且つスリーブ260の遠位部分にあるカラー299の収束する領域内に配設されている、複数の周方向の溝として示されているが、溝101を他のタイプの表面積増大テクスチャとして実装すること、及び/又は、スリーブの軸方向長さに沿った他の場所に位置付けることが可能であることが企図される。
【0034】
例えば
図7A~
図7Cに示すように、カラー299をカニューレ14に固定的に連結できることもまた企図されている。
図7Aはカニューレ14の斜視図であり、
図7Bは
図7Aで実施されているカニューレ14の上面図であり、
図7Cは
図7Aで実施されているカニューレ14の側面図である。
【0035】
この実例では、眼科デバイス10から、独立的に移動可能なスリーブを省略してもよい。例えば、カラー299をカニューレ14の外側部分の一部として一体に形成してもよく、又は、カラー299がカニューレ14と一緒に移動するように、カラー299をカニューレ14に溶接するか若しくはそれ以外で固定的に取り付けてもよい。固定的に連結されているカラー299は、細長い断面形状、又はスリーブ上で実装されるときのカラー299に関して上記した他の特徴のうちのいずれかを有し得る。例えば
図7A及び
図7Bに示すように、カラー299の面によってリップを提供することができ、このリップはカニューレ14の遠位部分から半径方向外側に突出し得る。リップはしたがって、上記したように組織と相互作用するための構造を提供し得る。例えば
図7Bに示すように、リップの半径方向長さL
Rをカニューレ14の突出部分の軸方向長さL
Aとほぼ等しくすることができるが、他の寸法が好適に使用され得ることが企図される。この実例では、リップ長さL
Rは、リップの半径方向最も外側の表面と、リップが延在する起点となる、カニューレ14の軸方向に突出している区域の半径方向最も外側の表面と、の間の距離によって定められる。カニューレ先端部長さL
Aは、リップから(又は面451若しくはカラー299の遠位端から)カニューレ14の遠位端までの軸方向長さによって定められる。カニューレ14は、カラー299よりも近位の部分の直径が、カラー299よりも遠位の部分におけるよりも大きくなっていてもよい。このことにより、シュレム管又は患者の別の好適な標的部位に挿入できるようにカニューレ14の遠位端の直径を十分に小さくしながら、カニューレ14のその作動長さに沿った剛性又は構造的完全性を有利に高めることができる。
図7A~
図7Cに示す固定されたカラーに関して記載したこれらの寸法又は幾何的特徴はいずれも、カラーがスリーブ260の一部であるか又はそれ以外でカニューレ14に対して移動可能であり且つ
図2Bに示すもののような第2の構成で配設されている実装形態において、好適に使用され得ることもまた、企図される。
【0036】
図8は、眼科デバイス10に含めることのできる接眼構成要素21の実例の遠位部分を示す長手断面図である。
図8に示す実例では、カニューレ14は、スリーブ260に対して突出した位置で(例えば、
図2Bに示すもののような第2の構成で)示されている。カニューレ14は、先端部セグメント151と近位シャフト・セグメント153とを含む、複数のセグメントから構成されている。先端部セグメント151を、例えばレーザ溶接又は任意の他の好適な固着機構によって、近位シャフト・セグメント153に取り付けることができる。先端部セグメント151は内径D
SMALLを有し、近位シャフト153は、先端部セグメント151の内径D
SMALLよりも大きい内径D
LARGEを有する。したがって、カニューレ14を通って延在するルーメン95は、遠位部分161よりも直径の大きい近位部分163を有するようにセグメント化される。このことにより例えば、デバイス内の背圧を下げることができるが、カニューレ14が単一片若しくは一体構造から成る、及び/又は、ルーメン96がカニューレ14にわたって実質的に一定の直径を有する実装形態もまた企図される。
【0037】
図8はまた、
図5A~
図5Cの実例に示すように構成されているカラー299も示しており、ここでは、カラー299はスリーブ260の遠位端に実装されており、スリーブ260の遠位先端部は、スリーブ260の両側に裾広がりになった拡開する外面79を有する、細長い断面を有している。
図8の実例に示すように、1つ又は複数のオリフィス32は、カニューレ14の両側に(例えば、カニューレ14の周囲に沿って互いからほぼ180度離れて配向された)1対のオリフィスを含み得る。1対の対向するオリフィスは、オリフィス32がスリーブ遠位端の短辺96に面し且つ拡開する外面79に面するように、遠位先端部の長軸85に沿って整列(カラー299の細長い断面の長軸に沿って整列)され得る。このことにより例えば、裾広がりの又は拡開する表面が、カニューレ14のオリフィスを、注入される流体をシュレム管が延在する方向へと差し向ける向きでシュレム管内に入れるための、インジケータの役割を果たすことが可能になる。移動可能なスリーブ260にカラー299が固定的に連結されている実装形態で示されているが、オリフィス32のこの配向を、カラー299が
図7A~
図7Cの実例におけるようなカニューレ14に固定される実装形態に適用できることもまた、企図される。
【0038】
図9A~
図9Cは、眼科デバイス10内に配設されスリーブ260を引き戻すために利用される内部機構301の実例を示す、様々な図である。内部機構301を例えば、ハンドル12の内部容積内に配設し、アクチュエータ38に連結することができる。
【0039】
図9Aは初期装填状態の内部機構301を示し、
図9Bは中間状態の(例えば、アクチュエータ38が押されているときの)内部機構301を示し、
図9Cはスリーブ260の引き戻し中又は引き戻し後の解放状態の内部機構301を示す。
図9A~
図9Cに示す内部機構301は、スリーブ260をカニューレ14に対して及びハンドル12に対して近位方向に引き戻すために、カムとフォロワのシステムを利用する。より詳細には、内部機構301は、捕捉部321に連結されているカム311(例えば、ロッカー)と、摺動可能なばね付勢されたフォロワ331と、を含む。フォロワ331は、スリーブ260がフォロワ331と一緒に移動するように、スリーブ260に固定的に連結され得る。捕捉部321はフォロワ331を遠位位置に保持するように構成されており、カム311は、捕捉部321を移動させて、フォロワ331を近位方向へと解放するように構成されている。カム311はアクチュエータ38に連結されており、アクチュエータ38を押すことによってカム311を移動又は作動させることが可能となっている。
【0040】
図9Aでは、内部機構301は初期状態で示されている。この状態では、フォロワ331(及びスリーブ260)は遠位位置にある。捕捉部321は第1の位置にあり、この位置では捕捉部321は、例えばフォロワ331の近位表面331aに当接してフォロワ331の近位方向への移動を防止又は制限することによって、フォロワ331を遠位位置に保持する。捕捉部321が第1の位置にありフォロワ331が遠位位置にある間、ばね335がフォロワ331に近位方向へのばね力を加える。ばね335は
図9A~
図9Cでは軸方向圧縮ばねとして示されているが、様々な他のばねが好適に使用され得ることが諒解されるであろう。内部機構301が初期状態にあるとき、カム311に連結されているアクチュエータ38は押されていない位置(例えば、上側の位置)にある。アクチュエータ38に使用者が力を加えることによって、カム311の、枢動点343を中心とした第1の回転方向355への回転移動を付勢することができる。カム311が第1の回転方向355に回転するとき、カム311は捕捉部321に対抗して回転して、例えば捕捉部の第1の位置から離れて捕捉部の第2の位置に向かう方向373へと屈曲するように、捕捉部321の移動を付勢する。捕捉部321の屈曲(例えば、下向きの移動)には、付勢ばね345の付勢力の克服が必要であってもよい。
【0041】
図9Bでは、内部機構301は、上記の力が加わっているときの中間状態で示されている。
図9Bに示すように、カム311が第1の回転方向355へと回転すると、カム311とフォロワ331の間に間隙381が形成され得る。例えば、カム311が捕捉部321に対抗して回転するとき、捕捉部321は、カム311がフォロワ331から離れるように第1の回転方向に355へと回転する間、引き続きフォロワ331を遠位位置に保持することができる。間隙381はフォロワ331がスリーブ260と一緒に自由に移動するためのクリアランスを提供することができ、この結果、捕捉部321がフォロワ331を解放すると、ばね335が保持している潜在エネルギーによって、素早く鋭いスナップ動作が引き起こされ得る。更に、捕捉部321の下向きの屈曲によって付勢ばね345が圧縮され、付勢ばね345が保持する潜在エネルギーが増大する。また、カム311はねじりばね365にも連結することができ、カム311の第1の回転方向355への回転によって、ねじりばね365が保持する潜在エネルギーが増大する。
【0042】
図9Cでは、内部機構301は、捕捉部321がフォロワ331を解放している、引き戻された又は引き戻し中の状態で示されている。
図9Cに示すように、カム311が捕捉部321に対抗して十分に回転すると、カム311は例えば、例えば捕捉部321の遠位表面321aをフォロワ331の近位表面331aに対して当接させている制限部を取り除くことで、捕捉部321を捕捉部321がフォロワ331を解放する第2の位置へと移動させることによって、フォロワ331を解放することができる。フォロワが解放されると、ばね335に蓄えられた潜在エネルギーが解放されて、フォロワ331(及びしたがってスリーブ260)の近位方向への近位動作が付勢される。フォロワ331は、制限部によって停止されるまで、間隙381を通って近位位置へと自由に移動し得る。例えば、フォロワ331の近位動作は、フォロワ331がカム311に当接したとき、ハンドル12のハウジング内に含まれている停止部に当接したとき、及び/又は捕捉部321上に含まれている停止部に当接したとき、終了し得る。フォロワ331のための停止部を提供する表面は、例えば、比較的高い剛性を有し得るか、又は、衝突を和らげデバイスを通って衝撃が外科医の手に伝わるのを防止するための、クッション若しくはエネルギー吸収部材を含み得る。
【0043】
図9Cでは、捕捉部321は第2の位置(解放位置)で示されている。使用者によってアクチュエータ38が解放されると、付勢ばね345によって捕捉部321を第1の位置(
図9Aに示す当接位置)へと付勢することができ、この結果、内部機構301を初期状態へとリセットすることが可能になる。例えば、アクチュエータ38が解放されると、ねじりばね365からの付勢力によって、カム311の、第1の回転方向355とは反対の第2の回転方向への回転移動を付勢することができ、カム311は、フォロワ331を遠位方向に付勢して(例えば、フォロワ331を引き戻して)、これによりフォロワ331をフォロワ近位位置からフォロワ遠位位置へと移動させて、ばね335に再び荷重を加えることができる。フォロワ331がこのように遠位方向に移動するとき、付勢ばね345は、捕捉部321がフォロワ331に当接してフォロワ331を遠位位置に保持する第1の位置に戻るように、捕捉部321を付勢する。内部機構301はその後、スリーブ260の1回又は複数回の繰り返しの引き戻しについて、同様の様式で再び動作し得る。
【0044】
図10A~
図10Cは、眼科デバイス10内に配設されスリーブ260を引き戻すために利用される内部機構401の実例を示す、様々な図である。内部機構401を例えば、ハンドル12の内部容積内に配設し、アクチュエータ38に連結することができる。
【0045】
図10Aは初期装填状態の内部機構401を示し、
図10Bは中間状態の(例えば、アクチュエータ38が押されているときの)内部機構401を示し、
図10Cはスリーブ260の引き戻し中又は引き戻し後の解放状態の内部機構401を示す。
図10A~
図10Cに示す内部機構401は、スリーブ260をカニューレ14に対して及びハンドル12に対して近位方向に引き戻すために、磁性組立体を利用する。より詳細には、内部機構401は回転可能なハウジング411を含み、回転可能なハウジング411内には1つ又は複数の磁石413が配設されている。例えば、
図10Aに示すように、回転可能なハウジング411は、180度離れて配設されている2つの磁石413を有する。回転可能なハウジング411は、長手中心軸線Cを中心に回転するように構成されている。内部機構401はまた摺動可能なハウジング415も含み、摺動可能なハウジング415内には1つ又は複数の磁石414、416が配設されている。例えば、
図10Aに示すように、摺動可能なハウジング415は2つのセットで構成される4つの磁石414、416を有し、磁石416の1つのセットは回転可能なハウジング411内の磁石413を引き付けるように構成されており、磁石414の1つのセットは磁石413と反発するように構成されている。この場合、磁石414、416の各セットは180度離れて配設されている。内部機構401は摺動可能なフォロワ431を更に含む。フォロワ431は、スリーブ260がフォロワ431と一緒に移動するように、スリーブ260に固定的に連結され得る。摺動可能なハウジング415はフォロワ431を遠位位置に保持するように構成されており、回転可能なハウジング411は、引き付ける磁石416を磁石413と整列させて、フォロワ431を近位方向へと解放するように構成されている。回転可能なハウジング411はアクチュエータ38に連結されており、アクチュエータ38を押すことによって回転可能なハウジング411を移動又は作動させることが可能となっている。
【0046】
図10Aでは、内部機構401は初期状態で示されている。この状態では、フォロワ431(及びスリーブ260)は遠位位置にある。摺動可能ハウジング415は第1の位置にあり、この位置では摺動可能ハウジング415は、例えばフォロワ431に係合してフォロワ431の近位方向への移動を防止又は制限することによって、フォロワ431を遠位位置に保持する。摺動可能なハウジング415は、摺動可能なハウジング415に遠位方向への反発力が加えられる、磁石413と対向する磁石414とが整列するように回転可能なハウジング411が位置合わせされるときに、第1の位置に保持される。内部機構401が初期状態にあるとき、回転可能なハウジング411に連結されているアクチュエータ38は押されていない位置(例えば、上側の位置)にある。アクチュエータ38に使用者が力を加えることによって、回転可能なハウジング411の、長手中心軸線Cを中心とした第1の回転方向455への回転移動を付勢することができる。回転可能なハウジング411が第1の回転方向455に回転すると、磁石413が移動して対向する磁石414との整列が解消し、反発力が低減する。
【0047】
図10Bでは、内部機構401は、上記の力が加わっているときの中間状態で示されている。
図10A及び
図10Bに示すように、初期状態及び中間状態において、回転可能なハウジング411と摺動可能なハウジング415の間には、間隙481が存在する。間隙481は、初期状態では、磁石413と磁石414の反発力又は対向する力によって維持される。中間状態では、間隙481は、磁石413が移動して磁石414との整列が解消すると、摺動可能なハウジング415に対して別の力が加えられるまで、同じサイズのままである。
【0048】
図10Cでは、内部機構401は、摺動可能なハウジング415及びフォロワ431が回転可能なハウジング411に向かって近位方向に移動を完了している、引き戻された状態で示されている。
図10Cに示すように、回転可能なハウジング411が十分に回転すると磁石413は引き付ける磁石416と整列された状態になり、このことにより摺動可能なハウジング415に対する引力が生じる。フォロワ431と係合している摺動可能なハウジング415は、制限部によって停止されるまで、間隙381を通って近位位置へと自由に移動し得る。例えば、フォロワ431の近位動作は、フォロワ431が回転可能なハウジング411の一部に当接したとき、ハンドル12のハウジングに含まれている停止部に当接したとき、及び/又は摺動可能なハウジング415が回転可能なハウジング411に当接したとき、終了し得る。フォロワ431及び/又は摺動可能なハウジング415のための停止部を提供する表面は、例えば、比較的高い剛性を有し得るか、又は、衝突を和らげデバイスを通って衝撃が外科医の手に伝わるのを防止するための、クッション若しくはエネルギー吸収部材を含み得る。
【0049】
図10Cでは、摺動可能なハウジング415及び回転可能なハウジング411は、引き付けられた位置で示されている。使用者によってアクチュエータ38が解放されると、磁石414によって摺動可能なハウジング部415を対向する位置(
図10Aに示す遠位位置)へと付勢することができ、この結果、内部機構401を初期状態へとリセットすることが可能になる。例えば、アクチュエータ38が解放されると、トリガのアップストロークによって、回転ハウジング411の、第1の回転方向455とは反対の第2の回転方向への回転移動が、磁石413が反発する磁石414と整列されるまで付勢され得る。このことにより、摺動可能なハウジング415及びフォロワ431をフォロワ近位位置からフォロワ遠位位置へと移動させる反発力が生じる。摺動可能なハウジング415は、摺動可能なハウジング415又はフォロワ431が停止部に当接するまでこのように遠位方向に移動し、フォロワ431は、磁石413、414からの対向する又は反発する力によって遠位位置に保持される。内部機構401はその後、スリーブ260の1回又は複数回の繰り返しの引き戻しについて、同様の様式で再び動作し得る。
【0050】
内部機構401は特定の様式で構成され得る。例えば、回転可能なハウジング411及び/又は摺動可能なハウジング415は、任意の数の磁石413、414、416を有し得る。別の実例として、回転可能なハウジング411は、任意の所望の量だけ回転するように、例えば、第1の回転方向455に45度回転するように、及び第2の回転方向に45度回転して戻るように、構成され得る。
【0051】
図11A~
図11Dは、眼科デバイス10内に配設されスリーブ260を引き戻すために利用される内部機構501の実例を示す、様々な図である。内部機構501を例えば、ハンドル12の内部容積内に配設し、アクチュエータ38に連結することができる。
【0052】
図11A及び
図11Bは初期装填状態の内部機構501を示し、
図11Cは中間状態の(例えば、アクチュエータ38が押されているときの)内部機構501を示し、
図11Dはスリーブ260の引き戻し後のリセット状態の内部機構501を示す。
図11A~
図11Dに示す内部機構701は、スリーブ260をカニューレ14に対して及びハンドル12に対して近位方向に引き戻すために、だぼピン組立体を利用する。より詳細には、内部機構501は、だぼピン521に連結されているアーム511(例えば、回転レバー)と、摺動可能なばね付勢されたフォロワ531と、を含む。フォロワ531は、スリーブ260がフォロワ531と一緒に移動するように、スリーブ260に固定的に連結され得る。フォロワ531はだぼピン521と常に接触していてもよい。
【0053】
だぼピン521は、2つの曲線的部分522と2つの平坦部分523とを有してもよく(例えば、Dを2つ合わせた構成)、スリーブ260の長手中心軸線Cに直交するように配設され得る。だぼピン521はフォロワ531を遠位位置に保持するように構成されており、アーム511は、だぼピン521を移動(例えば回転)させて、フォロワ531を近位方向へと解放するように構成されている。アーム511はアクチュエータ38に連結されており、アクチュエータ38を押すことによってアーム511を移動又は作動させることが可能となっている。ローラ・ベアリング565は、アーム511とは反対側でだぼピン521に連結され得る。カニューレ14は、だぼピン521がだぼピン521の回転中にカニューレ14に接触するのを防止するために、だぼピン521の開口部を通過するように構成することができ、この結果、だぼピン521を動かなくする可能性のある非対称な荷重が回避される。フォロワ531に当接するだぼピン521の深さは、15度の回転で94000分の2.54センチメートル(1インチ)から80000分の2.54センチメートル(1インチ)まで変化してもよく、この結果、スリーブ260の14000分の2.54センチメートル(1インチ)の引き戻しが得られる。
【0054】
図11A及び
図11Bでは、内部機構501は初期状態で示されている。この状態では、フォロワ531(及びスリーブ260)は遠位位置にある。だぼピン521は第1の位置にあり、この位置ではだぼピン521は、例えば曲線的部分522の一方がフォロワ531の近位表面531aに当接して、フォロワ531の近位方向への移動を防止又は制限することによって、フォロワ531を遠位位置に保持する。だぼピン521が第1の位置にありフォロワ531が遠位位置にある間、予圧ばね535がフォロワ531に近位方向へのばね力を加える。予圧ばね535は
図11A~
図11Dでは軸方向圧縮ばねとして示されているが、様々な他のばねが好適に使用され得ることが諒解されるであろう。内部機構501が初期状態にあるとき、アーム511に連結されているアクチュエータ38は押されていない位置(例えば、上側の位置)にある。アクチュエータ38に使用者が力を加えることによって、アーム511の、枢動点543を中心とした第1の回転方向555への回転移動を付勢することができる。アーム511が第1の回転方向555に回転するとき、アーム511はだぼピン521を回転させて、例えば第1の回転方向555に回転するように、だぼピン521の移動を付勢する。
【0055】
図11Cでは、内部機構501は、上記の力が加わっているときの中間状態で示されている。だぼピン521が回転すると平坦部分523の一方がフォロワの531の近位表面531aと接触し始め、次いで予圧ばね535の力によってフォロワ531が近位方向に素早く移動(例えば、スナップ)し、このことによりだぼピン521が第1の回転方向555へと更に回転(例えば、スピン)する。フォロワ531の近位方向への移動によってスリーブ260が近位方向に移動し、このことによりカニューレ14の遠位端からスリーブ260が引き戻される。
【0056】
図11Dでは、内部機構501はリセット状態で示されている。アクチュエータ38に対する押す力が解放されると(例えば、アクチュエータから指を離すと)、内部機構501がリセットされ、アクチュエータ38に連結されているリセットばね545によってアクチュエータ38が持ち上がり初期位置へと戻る。アクチュエータ38が持ち上がるとアーム511は回転し(例えば、持ち上がり)、この結果だぼピン521が回転して、曲線的部分522の一方がフォロワ531に当接する。この移動によってフォロワ531及びスリーブ260は遠位方向に戻るように移動され、この結果内部機構501が別のサイクルのためにリセットされる。
【0057】
図12A~
図12Eは、眼科デバイス10内に配設されスリーブ260を引き戻すために利用される内部機構601の実例を示す、様々な図である。内部機構601を例えば、ハンドル12の内部容積内に配設し、アクチュエータ38に連結することができる。
【0058】
図12A~
図12Cは初期装填状態の内部機構601を示し、
図12D及び
図12Eは、スリーブ260の引き戻し中又は引き戻し後の、解放状態の(例えば、アクチュエータ38が押された後の)内部機構601を示す。
図12A~
図12Eに示す内部機構601は、スリーブ260をカニューレ14に対して及びハンドル12に対して近位方向に引き戻すために、丘状部と谷状部の組立体を利用する。より詳細には、内部機構601は回転可能なハウジング611を含み、回転可能なハウジング611の遠位端上には変化のあるカム表面612がある。変化のあるカム表面612は、丘状(例えば隆起)部分613と谷状(例えば陥入)部分614とを有し得る。回転可能なハウジング611は、長手中心軸線Cを中心に回転するように構成されている。内部機構601はまた、摺動可能なハウジング615も含み、摺動可能なハウジング615の近位端上には変化のあるカム表面616がある。変化のあるカム表面616は、丘状部分617と谷状部分618とを有し得る。内部機構601は摺動可能なフォロワ631を更に含む。フォロワ631は、スリーブ260がフォロワ631と一緒に移動するように、スリーブ260に固定的に連結され得る。摺動可能なハウジング615はフォロワ631を遠位位置に保持するように構成されており、回転可能なハウジング611は、丘状部分613を丘状部分617と整列させて、フォロワ631を近位方向に移動させる及び/又は保持するように構成されている。回転可能なハウジング611はアクチュエータ38に連結されており、アクチュエータ38を押すことによって回転可能なハウジング611を移動又は作動させることが可能となっている。
【0059】
図12A~
図12Cでは、内部機構601は初期状態で示されている。この状態では、フォロワ631(及びスリーブ260)は遠位位置にある。摺動可能なハウジング615は第1の位置にあり、この位置では予圧ばね635に係合しこれに押し付けられている。第1の位置では、摺動可能なハウジング615はフォロワ631と係合されなくてもよく、この結果、フォロワ631の近位方向への移動が可能になり得る。摺動可能なハウジング615は、摺動可能なハウジング615が遠位方向に保持される、丘状部分613と丘状部分617とが整列するように回転可能なハウジング611が位置合わせされるときに、第1の位置に保持される。内部機構601が初期状態にあるとき、回転可能なハウジング611に連結されているアクチュエータ38は押されていない位置(例えば、上側の位置)にある。アクチュエータ38に使用者が力を加えることによって、回転可能なハウジング611の、長手中心軸線Cを中心とした第1の回転方向655への、例えば45度などの回転移動を付勢することができる。回転可能なハウジング611が第1の回転方向655に回転すると、丘状部分617が移動して対向する丘状部分613との整列が解消し、谷状部分614の中に入る。
【0060】
図12Cに示すように、初期状態において、回転可能なハウジング611と摺動可能なハウジング615の間には、間隙681が配設され得る。間隙681は、初期状態では、対向する丘状部分613、617によって維持される。間隙691はまた、摺動可能なハウジング615の内面625とフォロワ631の停止部641の間に配設されてもよい。間隙681、691はいずれも、初期状態では、アクチュエータ38が押され回転可能なハウジング611が回転し始めるまでは、その最大幅のままである。
【0061】
図12D及び
図12Eでは、内部機構601は、摺動可能なハウジング615及びフォロワ631が回転可能なハウジング611に向かって近位方向に移動を完了している、引き戻された状態で示されている。
図12D及び12Eに示すように、回転可能なハウジング611が回転すると、丘状部分613は、摺動可能なハウジング615上の丘状部分617から谷状部分618内へと摺動して落ちる。同様に、摺動可能なハウジング615の丘状部分617は、回転可能なハウジング611の谷状部分614と回転可能に整列された状態になる。摺動可能なハウジング615は間隙681の中を自由に移動することができ(例えば、間隙681が小さくなり)、最終的には摺動可能なハウジング615の内面625がフォロワ631の停止部641に係合する(例えば、間隙691がなくなる)。摺動可能なハウジング615及び係合したフォロワ631は、予圧ばね635からの力に起因して、制限部によって停止されるまで引き続き近位位置まで移動し得る。例えば、フォロワ631の近位動作は、丘状部分613、617が谷状部分614、618に当接したとき、摺動可能なハウジング615及び/若しくはフォロワ631がハンドル12のハウジング内に含まれている停止部に当接したとき、並びに/又はフォロワ631がダンパーばね645を圧縮したとき、終了し得る。フォロワ631及び/又は摺動可能なハウジング615のための停止部を提供する表面は、例えば、比較的高い剛性を有し得るか、又は、衝突を和らげデバイスを通って衝撃が外科医の手に伝わるのを防止するための、クッション若しくはエネルギー吸収部材(例えば、ダンパーばね645)を含み得る。
【0062】
図12D及び
図12Eに示す引き戻された状態では、フォロワ631の近位方向への移動によってスリーブ260が引き戻され、カニューレ14の遠位部分が露出されている。使用者によってアクチュエータ38が解放されると、ねじりばね665によってアクチュエータ38を初期位置へと付勢することができ、この結果、内部機構601を初期状態へとリセットすることが可能になる。例えば、アクチュエータ38が解放されると、ねじりばね665からの付勢力によって、回転可能なハウジング611の、第1の回転方向655とは反対の第2の回転方向への、例えば45度戻る回転移動が付勢され得る。丘状部分613、617は谷状部分614、618から摺動して外に出て、摺動可能なハウジング615を遠位方向に付勢し、これにより摺動可能なハウジング615が解放状態の近位位置から初期状態の遠位位置へと移動されて、予圧ばね635に再び荷重が加えられ得る。摺動可能なハウジング615が遠位方向に移動するにつれ、フォロワ331もダンパーばね645の力に起因して遠位方向に移動する。ダンパーばね645の力は、フォロワ631の停止部641が摺動可能なハウジング615の内面625で跳ね返って間隙691が生まれるようなものであり得る。別の実例として、フォロワ631を遠位方向に付勢するが停止部641が内面625で跳ね返らなくてもよい(例えば、摺動可能なハウジング615は、フォロワ631が移動するよりも更に遠位方向に移動する)。摺動可能なハウジング615が初期位置にあるとき、内部機構601は次いで、スリーブ260の1回又は複数回の繰り返しの引き戻しについて、同様の様式で再び動作し得る。
【0063】
内部機構601は、アクチュエータ38が押されるときにハンマー衝突効果をもたらすように構成することができ、予圧ばね635は、摺動可能なハウジング615を間隙681の中で近位方向にスナップ又は加速させる。特に、摺動可能なハウジング615のスナップ加速によって、内面625がフォロワ631の停止部641に、例えば静的な力の4倍などの力を伴って、衝突する。このハンマー作用によってより小さい及び/又はより軽いねじりばね665が可能になり、これによってより低い作動力でアクチュエータ38を押すことが可能になる。例えば、ハンマー力の運動量が静的な力の4倍である場合には、使用者はアクチュエータ38を4分の1の力で押圧すればよい。またスナップ作用によって、スリーブ260が近位方向にスナップして戻る際にスリーブ260にも速度が生じる。例えば、組織を一緒に引き戻すために、真空効果を生み出すのに十分な速さでスリーブ260が後方に移動するのが望ましい場合がある。例えば、スナップ作用によって、スリーブ先端部に0.762から1.27センチメートル/秒(0.3から0.5インチ/秒)、例えば1.016センチメートル/秒(0.4インチ/秒)の速度が生じ得る。
【0064】
ダンパーばね645は複数の機能も果たし得る。例えば、予圧ばね635の力が解放されると、ダンパーばね645は、摺動可能なハウジング615及びフォロワ631が近位方向にスナップするときのそれらの力を減衰させる。逆に、ねじりばね665が内部機構601をリセットさせると、ダンパーばね645はフォロワ631を遠位方向に付勢する。
【0065】
機構は、内部機構301、401、501、601が(例えば、
図3A~
図3Bの実例に関して上記したもののように、線維柱帯網をスナップ動作を介して引っ張るために)スリーブ260を引き戻すために利用される実装形態に関して記載されているが、この機構が他の動作のモードに好適に使用され得ることが諒解されるであろう。例えば、機構が生み出すスナップ動作を利用して、カニューレ14及び/又はスリーブ260を近位方向に及び/又は遠位方向にスナップさせて、(例えば、停止部に対するフォロワ331、431、531、631の衝突時に)振動を生じさせることができ、この振動により、吸引効果を必要とすることなく線維柱帯網の貫通が容易になる。この場合、フォロワ331、431、531、631は、カニューレ14又は動作が望まれる任意の他の好適な構成要素に固定的に連結され得る。機構がスリーブ260、カニューレ14、又は任意の他の構成要素の遠位方向への動きのために採用される場合、機構の様々な部品及び動作を反対にできることもまた諒解されるであろう。
【0066】
図13は、眼科デバイス10の実例を示す長手断面図である。
図13は、ハンドル12及びハンドル12内に含めることのできる接眼構成要素21を通した物質の送達を容易にするための流体送達機構に関する構造の実例を示す。
【0067】
図13に示すように、ハンドル12は、内部容積717を囲い込み画定するハウジング713を含み得る。ハンドル12内にルーメン725(本明細書では「ハンドル・ルーメン」と呼ぶ場合もある)を配設することができ、これはハンドル12の遠位端から突出しているルーメン95(本明細書では「カニューレ・ルーメン」と呼ぶ場合もある)に流体連結され得る。ハンドル・ルーメン725は例えば内部容積717を通って延在することができ、内部容積内に配設されているか又はハンドルの外側に連結されている流体リザーバなどの流体源から、流体をカニューレ・ルーメン95に送達するように構成され得る。
【0068】
例えば
図13に示すように、ハンドル12は、流体源に連結するように及び流入流体を受け入れるように構成されている、入口ポート731を含み得る。入口ポート731としては例えば、ルアー・ロック・コネクタ、又は、粘弾性物質用のシリンジ若しくは任意の他の好適な流体リザーバに接続するように構成されている、任意の他の好適なコネクタを挙げることができる。入口ポート731は
図13ではハンドル12の近位端に配設されて示されており、ハンドル・ハウジング713の近位端にある開口部を通って延在する入口チャネルを提供するようになっている。追加として又は別法として、入口ポート731は、ハンドル12の表面の別の場所上に、例えばハンドル12の横方向の側壁上に配設され得る。
図13に示す実例では、ハンドル12は、入口ポート731を介して流体又は他の物質の最初の体積を充填され得る、リザーバ799を保持している。
【0069】
図13に示すハンドル12は、ハンドル・ルーメン725を通して及び/又はカニューレ・ルーメン95を通して流体を移動させるように構成され得る、ポンプ811を更に含む。例えば
図13に示すように、ポンプ811は、ハンドル12の内部容積717内に配設されており軸方向近位側及び/又は遠位側に並進するように構成されている、ピストン798を含み得るか、又これに連結され得る。ピストン・ポンプは、入口ポート731から流体を引き込むために、並びに/又は、流体をカニューレ・ルーメン95の遠位端を通して外へと及びオリフィス32を通して外へと付勢する若しくは押すために、近位ポンプ位置から遠位ポンプ位置へと遠位方向に移動するように構成され得る。この場合、ポンプ811は、流体の正及び/又は負の容積移送を行うように構成され得る。ピストン798はまた、例えば、ハウジング内で反復運動することができ、遠位ポンプ位置から近位ポンプ位置へと近位方向に移動して次の流体の用量を送達するためにリセットされるように構成され得る。別法として、ピストン798を遠位方向に漸増的に移動するように構成することができ、この場合、遠位方向への動きの各増分は流体又は他の物質の用量に対応している。
【0070】
ポンプ811は、ハンドル・ルーメン725の流体経路内に配設できる弁839を含み得るか又はこれに連結することができ、ポンプ811と一緒に移動するようにポンプ811に固定的に連結され得る。弁839は例えば、そこを遠位方向に通過する流体の動きを可能にし、そこを近位方向に通過する流体の動きを制限して、入口ポート731からの吸引力を生み出すとともに、弁839がハンドル12と一緒に遠位方向に動くときに流体をオリフィスから押し出す、一方向弁(又は「チェック弁」)として実装され得るか、さもなければこれを含むことができる。追加として又は別法として、様々な他のタイプのポンプ及び/又は流体輸送機構を、眼科デバイス10を通して流体を移動させるように構成できることが、諒解されるであろう。
【0071】
ポンプ811は更に、アクチュエータ38の作動時に流体の用量又は量の送達のためのポンプの作動を可能にするように、アクチュエータ38に更に連結され得る。ポンプ811は例えば、スリーブ260若しくは接眼構成要素21の他の部分を移動させる同じアクチュエータに連結され得るか、又はポンプ811は、接眼構成要素21を移動させるのに使用されるものとは異なる別個のアクチュエータに連結され得る。
図13に示す実例では、アクチュエータ38は、ポンプ811に連結されており、使用者が押しボタンを押下したときに個別の用量での流体の送達をトリガするように構成されている、押しボタンを含む。
【0072】
図14A~
図14Cは、アクチュエータ38が遠位の接眼構成要素及びポンプ811の動作を互いに協調させて作動させるように構成されている、ハンドル12の切断図である。
図14Aは、明確になるようにリンク機構及びカムが取り外されている、内部機構を示す切断図である。
図14B及び
図14Cは、ボタンを押す前の初期位置で及びボタンを押した後の作動された位置でそれぞれ示されている、リンク機構923及びカム311を有する内部機構を示す切断図である。
【0073】
図14A~
図14Cに示す機構を、アクチュエータ38のボタンを押すことがその都度、(例えば、
図3A~
図3Bに示すようにカニューレ14に沿って線維柱帯網86を引っ張るための)スリーブ260の引き戻しと、スリーブ260が引き戻されている間の(例えば、
図3A~
図3Bに示すように線維柱帯網86がカニューレ14に沿って引っ張られておりオリフィス32がシュレム管80内に位置付けられている間の)カニューレ14を通した流体の用量の送達と、の両方を引き起こすトリガとなるように使用することができる。例えば
図14Aに示すように、機構は、ポンプ811内に含まれているか又はこれに固定的に連結されているねじ切りされた部分981に連結されている、ナット979を含み得る。ナット979をねじ切りされた部分981と嵌合させることで、ナット979の回転によってポンプ811の軸方向の動作(例えば、遠位方向への並進)を駆動し、その結果ポンプ811にハンドル12の中で流体を移動させるようにすることができる。
【0074】
図14B及び
図14Cに示すように、アクチュエータ38は、リンク機構723を介してナット979に連結されている押しボタンとして実装され得る。
図14B及び
図14Cに示すように、ナット979を駆動する同じ押しボタンを、直接又はリンク機構923を介して、内部機構301のカム311、アーム511、又は回転可能なハウジング411、611にも連結することができる。使用者の力によって
図14Bに示す押されていない位置から
図14Cに示す押された位置へとボタンが押下されると、この押しボタンは、(例えばスリーブ260を引き戻すための)カム311の第1の回転方向355への回転を駆動すること、及び、リンク機構923を介したナット979の回転を駆動して、容積移送によって流体にハンドル12の中を移動させるべく、ピストン798を前方の遠位方向へと漸増的に移動させることができる。同時に、カム311の回転がスリーブ260の引き戻しを引き起こし、この結果、物質はスリーブ260が引き戻された近位位置にある間にポンプ811によって送達される。同様に、内部機構401、501、及び601について、ナット979を駆動する同じ押しボタンを、直接又はリンク機構923を介して、内部機構401の回転可能なハウジング411、内部機構601のアーム511、又は内部機構601の回転可能なハウジング611にも連結することができる。使用者の力によって押されていない位置から押された位置へとボタンが押下されると、この押しボタンは、(例えばスリーブ260を引き戻すための)回転可能なハウジング411、アーム511、又は回転可能なハウジング611の第1の回転方向455、555、655への回転を駆動すること、及び、リンク機構923を介したナット979の回転を駆動して、容積移送によって流体にハンドル12の中を移動させるべく、ピストン798を前方の遠位方向へと漸増的に移動させることができる。
【0075】
図15A及び
図15Bは、眼科デバイス10を使用して眼科手技を行う例示の方法を示す。この方法を使用して、物質(例えば、流体又は気体)を、例えばシュレム管80又は患者の眼の何らかの他の好適な部分内へと送達することができる。
【0076】
上で指摘したように、健康な眼においては、房水82の液流は、眼の前眼房84を出て、線維柱帯網86を通り、その後シュレム管80及び遠位のコレクタ・チャネル内へと排出される。次いで房水82は、シュレム管80を通ってコレクタ・チャネル及び遠位静脈系内へと出る。房水82のこの流路が(例えば、線維柱帯網86及び/又はシュレム管80内の病変又は損傷した組織に起因して)中断されると、眼のIOPが上昇し、結果的に様々な医学的問題(例えば、緑内障、視覚の喪失、視神経損傷、等)を生じさせる可能性がある。
【0077】
房水82の流路を改善するために、医療専門家は、前眼房84に設けた切開部88を通して接眼構成要素21を挿入し、接眼構成要素21のスリーブ260の遠位端を、線維柱帯網86に対して当接又は接触するように線維柱帯網86まで前進させることができる。次いでスリーブ260(
図15Bでは見えていない)を、
図15Bに示し且つ本明細書に記載する機構又は構成要素のいずれかを使用して更に上記したように、オリフィス32を含むカニューレ14の遠位端がシュレム管80に進入するように引き戻すことができる。
【0078】
図15Bを参照すると、カニューレ14の遠位端がシュレム管80に挿入されて1つ又は複数のオリフィス32の各々がシュレム管80内に完全に収容されると、医療専門家は上記したような作動を介して、所定の用量又は量の流体又は他の物質を注入することができる。オリフィス32を介した所定の用量又は量の流体又は他の物質の注入後、このプロセスを、カニューレ14を同じ位置に保持して、並びに/又は、異なる場所で及び/若しくは異なる角度から流体を注入するために1つ若しくは複数の異なる位置にカニューレ14を移動させて、任意の適切な回数だけ繰り返してもよい。任意選択的に、シュレム管80内の特定の場所での1回又は複数回の所定の用量の流体又は他の物質の注入後、カニューレ14の遠位端を引き戻し、眼内で配置し直してもよい。いくつかの構成では、そのような配置のし直しは、切開部88(例えば、第1の切開部)からのカニューレ14の引き出し、及び第1の切開部から離間させた追加の切開部を通した再挿入を介して行われ得る。追加として又は別法として、そのような配置のし直しは、遠位端30をシュレム管80及び/又は線維柱帯網86から引き戻すこと、及びその後で第1の切開部88からカニューレ14を取り外すことなくシュレム管80の新しい部分内へと位置決めし直すことを含み得る。いくつかの実装形態では、流体をシュレム管80及び線維柱帯網86内に同時に送達することができ、これによりシュレム管80が開き、流体が線維柱帯網86の様々な層内へと送達される。
【0079】
上記の説明はオリフィス32を通して流体又は他の物質を注入するためのデバイス及び方法について記載しているが、本明細書に記載する眼科デバイス10は、眼から流体又は他の物質を精確な制御で吸引し引き離すように構成され得ることを理解されたい。例えば、眼からの流体又は他の物質の除去を達成するために、眼科デバイス10を上記したものと逆の様式で作動させてもよい。
【0080】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、カニューレ遠位端、ルーメン、及びルーメンに連結されている1つ又は複数のオリフィスを有するカニューレであって、流体を送達するように構成されている、カニューレと、カニューレの周囲に配設されておりスリーブ遠位端を有するスリーブと、スリーブ及びカニューレに連結されているハンドルであって、アクチュエータを有する、ハンドルと、アクチュエータに連結されておりスリーブをカニューレに対して引き戻すように構成されている内部機構と、を含む、眼科デバイス、を含み得る。内部機構は、スリーブに固定的に連結されており遠位位置と近位位置の間で移動可能なフォロワと、作動位置と解放位置の間で移動可能な解放部材であって、アクチュエータに連結されており、解放部材が作動位置から解放位置へと移動するときに、フォロワを遠位位置から近位位置へと付勢する力を解放するように構成されている、解放部材と、を含み得る。
【0081】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:アクチュエータは、ハンドルの側面に位置付けられており使用者の力が加わると押されていない位置から押された位置へと移動可能な押しボタンを含み、押されていない位置から押された位置へと押しボタンが移動するとき、押しボタンは、解放部材の第1の回転方向への回転を付勢するように構成されている。
【0082】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、アクチュエータに連結されているリセットばねであって、押された位置から押されていない位置へと戻るように押しボタンを付勢して、解放部材の第1の回転方向とは反対の第2の回転方向への回転を付勢するように構成されている、リセットばね、を含み得る。
【0083】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:カニューレは、近位シャフト・セグメントと、近位シャフト・セグメントに取り付けられた先端部セグメントと、を備え、1つ又は複数のオリフィスは先端部セグメント上に配設されている。
【0084】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、フォロワに連結されており、フォロワが遠位位置にあるときにフォロワを近位方向に付勢するためのばね力を加えるように構成されている、ばねと、第1の位置と第2の位置の間で移動可能な捕捉部であって、捕捉部が第1の位置にあるときにフォロワを遠位位置に保持するように、及び捕捉部が第2の位置にあるときにフォロワを解放するように構成されている、捕捉部と、捕捉部に連結されているカムであって、捕捉部に対抗して第1の回転方向に回転して、捕捉部を第1の位置から第2の位置へと付勢するように構成されている、カムを備える、開放部材を備え得る。
【0085】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:カムはフォロワに更に連結されており、捕捉部は第2の位置に向かって付勢されており、使用者の力が解放されると、捕捉部は、フォロワに対抗してカムを第1の回転方向とは反対の第2の回転方向へと付勢してフォロワを近位位置から遠位位置へと付勢するように構成されている。
【0086】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、1つ又は複数の第1の磁石及び1つ又は複数の第2の磁石を有する摺動可能なハウジングを含んでもよく、解放部材は1つ又は複数の第3の磁石を有する回転可能なハウジングを備え、摺動可能なハウジングは、1つ又は複数の第3の磁石が1つ又は複数の第1の磁石と整列されているときにフォロワを遠位位置に保持するように、及び1つ又は複数の第3の磁石が1つ又は複数の第2の磁石と整列されているときにフォロワを近位位置へと付勢するように構成されている。
【0087】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:2つの第1の磁石は、摺動可能なハウジング内で、摺動可能なハウジングの中心軸線を二分する第1の平面上に180度離れて配設されており、2つの第2の磁石は、摺動可能なハウジング内で、摺動可能なハウジングの中心軸線を二分する第2の平面上に180度離れて配設されており、2つの第3の磁石は、回転可能なハウジング内で、回転可能なハウジングの中心軸線を二分する第3の平面上に180度離れて配設されている。
【0088】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:回転可能なハウジングは、解放部材が作動位置にあるときに1つ又は複数の第3の磁石を1つ又は複数の第1の磁石と整列させるように構成されており、回転可能なハウジングは、解放部材が解放位置にあるときに1つ又は複数の第3の磁石を1つ又は複数の第2の磁石と整列させるように構成されている。
【0089】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、フォロワに連結されており、フォロワが遠位位置にあるときにフォロワを近位方向に付勢するためのばね力を加えるように構成されている、ばねと、第1の位置と第2の位置の間で移動可能なだぼピンであって、だぼピンが第1の位置にあるときにフォロワを遠位位置に保持するように、及びだぼピンが第2の位置にあるときにフォロワを解放するように構成されている、だぼピンと、だぼピンに連結されているアームであって、だぼピンを第1の位置から第2の位置へと付勢するようだぼピンを回転させるように構成されている、アームを備える、解放部材を備え得る。
【0090】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:だぼピンは2つの曲線的部分と2つの平坦部分とを備え、曲線的部分の一方は第1の位置においてフォロワの近位表面に当接するように構成されており、平坦部分の一方は第2の位置においてフォロワの近位表面に当接するように構成されている。
【0091】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:だぼピンはカニューレを受け入れるように構成されている開口部を備え、開口部は、だぼピンの回転中にだぼピンがカニューレに接触するのを防止するように構成されている。
【0092】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、第1の隆起部分及び第1の陥入部分を備える近位表面を有する摺動可能なハウジングを更に有する内部機構を含んでもよく、解放部材は、第2の隆起部分及び第2の陥入部分を備える遠位表面を有する、回転可能なハウジングを備え、摺動可能なハウジングは、第1の隆起部分が第2の隆起部分と係合しているときに、フォロワが遠位位置に配設されること、並びに、第1の隆起部分が第1の陥入部分と係合し第2の隆起部分が第2の陥入部分と係合しているときに、フォロワを近位位置へと付勢することを可能にするように構成されている。
【0093】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、第1の隆起部分と第1の陥入部分の間に配設されている第1の傾斜部分を含んでもよく、第2の隆起部分は、回転可能なハウジングが作動位置から解放位置へと移動されるときに、第1の傾斜部に沿って第1の隆起部分から第1の陥入部分へと摺動するように構成されている。
【0094】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、第2の隆起部分と第2の陥入部分の間に配設されている第2の傾斜部分を含んでもよく、第1の隆起部分は、回転可能なハウジングが作動位置から解放位置へと移動されるときに、第2の傾斜部に沿って第2の隆起部分から第2の陥入部分へと摺動するように構成されている。
【0095】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、フォロワが遠位位置に配設されているときに、フォロワの遠位側に面する表面と摺動可能なハウジングの近位側に面する表面の間に配設される、間隙と、摺動可能なハウジングに連結されており、フォロワが遠位位置にあるときに摺動可能なハウジングを近位方向に付勢するためのばね力を加えるように構成されている、ばねと、を更に有し、ばね力は、フォロワの遠位側に面する表面を間隙の中で加速させ、摺動可能なハウジングの近位側に面する表面に衝突力を伴って接触させるように構成されている、内部機構、を備え得る。
【0096】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:ばね力はスリーブを0.762~1.27センチメートル/秒(0.3~0.5インチ/秒)の速度で後方に移動させるように構成されている。
【0097】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、フォロワよりも近位側に配設されているダンパーばねを含んでもよく、このダンパーばねは、フォロワが近位位置へと移動されるときにフォロワからの衝突力を減衰させ、フォロワが近位位置にあるときにフォロワを遠位位置に向けて付勢するように構成されている。
【0098】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:回転可能なハウジングは、回転可能なハウジングが作動位置から解放位置へと移動するときに、カニューレの長手中央軸線を中心として第1の回転方向に45度回転するように構成されている。
【0099】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、眼科デバイス用の内部機構であって、カニューレの周囲に配設されているスリーブに固定的に連結されるように構成されている摺動可能なフォロワであって、長手中心軸線に沿って遠位位置と近位位置の間で移動可能な、摺動可能なフォロワと、第1の隆起部分及び第1の陥入部分を備える近位表面を有する、摺動可能なハウジングと、第2の隆起部分及び第2の陥入部分を備える遠位表面を有する回転可能なハウジングであって、アクチュエータに連結されるように構成されており作動位置と解放位置の間で移動可能であり、第1の隆起部分は作動位置において第2の隆起部分と係合し、第2の隆起部分は解放位置において第1の陥入部分と係合する、回転可能なハウジングと、フォロワが遠位位置に配設されているときに、フォロワの遠位側に面する表面と摺動可能なハウジングの近位側に面する表面の間に配設される、間隙と、摺動可能なハウジングに連結されており、フォロワが遠位位置にあるときに摺動可能なハウジングを近位方向に付勢するためのばね力を加えるように構成されている、ばねと、含み、ばね力は、フォロワの遠位側に面する表面を間隙の中で加速させ、摺動可能なハウジングの近位側に面する表面に衝突力を伴って接触させるように構成されている、内部機構、を含み得る。
【0100】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、カニューレ遠位端、ルーメン、及びルーメンに連結されている1つ又は複数のオリフィスを有するカニューレであって、患者の眼のシュレム管の中に物質を注入するように構成されている、カニューレと、カニューレの周囲に配設されておりスリーブ遠位端を有するスリーブであって、スリーブ遠位端は眼の線維柱帯網に接触するように構成されている、スリーブと、スリーブ及びカニューレに連結されているハンドルであって、線維柱帯網が吸引力によってカニューレに沿って引っ張られるようスリーブをカニューレに対して引き戻すように構成されているアクチュエータを有する、ハンドルと、備える、眼科デバイス、を含み得る。
【0101】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:スリーブの外面は、外面の表面積を大きくするように構成されている1つ又は複数の溝を備える。
【0102】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:スリーブの外面は複数の周方向の溝を備える。
【0103】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:スリーブ遠位端は細長い断面を有する。
【0104】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:細長い断面は1対の対向する長辺と1対の対向する短辺とを有し、スリーブは1対の対向する長辺に向かって収束する第1の1対の対向する外面を有し、スリーブは1対の対向する短辺に向かって拡開する第2の1対の対向する外面を有する。
【0105】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:1つ又は複数のオリフィスは、1対の対向する短辺に面する1対の対向するオリフィスを含む。
【0106】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:細長い断面は長い外径と短い外径とを有し、スリーブは近位外径を有する近位部分を有し、長い外径は近位外径よりも大きく、短い外径は近位外径よりも短い。
【0107】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:カニューレは、近位シャフト・セグメントと、近位シャフト・セグメントに取り付けられた先端部セグメントと、を備え、1つ又は複数のオリフィスは先端部セグメント上に配設されている。
【0108】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:カニューレのルーメンは、近位シャフト・セグメント内に配設されている第1の部分と、先端部セグメント内に配設されている第2の部分と、を有し、第1の部分は第2の部分よりも大きい直径を有する。
【0109】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、スリーブに固定的に連結されており遠位位置と近位位置の間で移動可能なフォロワと、フォロワに連結されており、フォロワが遠位位置にあるときにフォロワを近位方向に付勢するためのばね力を加えるように構成されている、ばねと、第1の位置と第2の位置の間で移動可能な捕捉部であって、捕捉部が第1の位置にあるときにフォロワを遠位位置に保持し、捕捉部が第2の位置にあるときにフォロワを解放するように構成されている、捕捉部と、捕捉部に連結されているカムであって、捕捉部に対抗して回転して捕捉部を第1の位置から第2の位置へと付勢するように構成されている、カムと、を含み得る。
【0110】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:アクチュエータは、ハンドルの側面に位置付けられており使用者の力が加わると押されていない位置から押された位置へと移動可能な押しボタンを含み、押しボタンが押されていない位置から押された位置へと移動するとき、押しボタンは、捕捉部に対抗するカムの第1の回転方向への回転を付勢するように構成されている。
【0111】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:カムはフォロワに更に連結されており、捕捉部は第2の位置に向かって付勢されており、使用者の力が解放されると、捕捉部は、フォロワに対抗してカムを第1の回転方向とは反対の第2の回転方向へと付勢してフォロワを近位位置から遠位位置へと付勢するように構成されている。
【0112】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:押されていない位置から押された位置へと押しボタンが移動するとき、押しボタンは、1つ又は複数のオリフィスを通して物質を送達するようポンプを移動させるように更に構成されている。
【0113】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、ポンプを遠位方向に駆動するように構成されているナットを含んでもよく、押しボタンはリンク機構を介してナットに連結されている。
【0114】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:ハンドルはハンドル遠位端とハンドル近位端とを備え、カニューレ及びスリーブはハンドル遠位端から突出しており、ハンドルはルーメンに流体連結されている入口ポートを備える。
【0115】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:入口ポートはハンドル近位端上に配設されており、ハンドルはアクチュエータに連結されているポンプを備え、アクチュエータは、1つ又は複数のオリフィスを通るように物質を付勢するようポンプを作動させるように構成されている。
【0116】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、眼科手技を行うための方法であって、切開部を通して眼の前眼房にカニューレ及びスリーブを挿入することと、スリーブの遠位端を眼の線維柱帯網まで前進させることと、カニューレに対してスリーブを引き戻すことと、スリーブの引き戻しに伴って加えられる吸引力を介して、線維柱帯網をカニューレに沿って引っ張ることと、を含む、方法、を含み得る。
【0117】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、線維柱帯網がカニューレに沿って引っ張られたときにカニューレを通して眼のシュレム管内へと物質を注入することを含み得る。
【0118】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、スリーブの遠位端を眼の線維柱帯網及び強膜岬を押すように前進させることを更に含んでもよく、遠位端は、眼の虹彩角膜角に進入するのに十分に小さく、線維柱帯網が眼のシュレム管内へと押し潰されるのを回避するのに十分に大きいサイズとされている。
【0119】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、スリーブの遠位端を線維柱帯網を押すように前進させることと、スリーブの遠位端で線維柱帯網を眼のシュレム管内へと押し潰すことと、含んでもよく、遠位端は、眼の虹彩角膜角に進入するのに十分に小さく、線維柱帯網をシュレム管内へと押し潰すのに十分に小さいサイズとされている。
【0120】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、カニューレ遠位端、ルーメン、及びルーメンに連結されている1つ又は複数のオリフィスを有するカニューレであって、患者の眼の中に物質を注入するように構成されている、カニューレと、カニューレに連結されておりハンドル遠位端を有するハンドルと、カニューレの外面から半径方向に突出しておりカニューレ遠位端とハンドル遠位端の間で位置決め可能なリップと、を備える、眼科デバイス、を含み得る。
【0121】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:リップは、カニューレ遠位端とハンドル遠位端の間の、オリフィスのうちの少なくとも1つよりも近位の軸方向場所に固定的に配設されている。
【0122】
主題の技術の1つ又は複数の実施例は、以下の場合を含み得る:リップは遠位位置と近位位置の間で移動するように構成されている引き戻し可能なスリーブの一部であり、リップは遠位位置にあるときオリフィスのうちの少なくとも1つよりも遠位の軸方向場所に配設され、リップは近位位置にあるときオリフィスのうちの少なくとも1つよりも近位の軸方向場所に配設される。
【0123】
本明細書には特定の用途に関する例示的な実施例を参照して本開示の原理が記載されているが、本開示はそれらに限定されないことが理解されるべきである。本明細書で提供する教示を利用できる当業者は、更なる修正、用途、実施例、及び等価物の置換が、全て本明細書に記載する実施例の範囲内にあることを認識するであろう。したがって、本発明は上記の説明によって限定されるものと見なされるべきではない。
【0124】
単数形の要素への言及は、明示的にそうであると述べられていない限りはただ1つを意味するように意図されておらず、むしろ1つ又は複数を意味するように意図されている。例えば、「1つの(a)」モジュールは、1つ又は複数のモジュールを指し得る。「1つの(a)」、「1つの(an)」、「その(the)」、又は「前記(said)」によって開始される要素は、それ以上制約がなければ、追加の同じ要素の存在を排除しない。
【0125】
見出し及び副見出しが存在する場合、それらは便利のためだけに使用されており、本発明を限定しない。例示のという単語は、実例又は例示の役割を果たすことを意味するように使用される。含む(include)、有する(have)などの用語が使用される範囲において、そのような用語は、備える(comprise)という用語を請求項で移行句として用いるときに解釈される場合の備えると同様、包括的であることが意図されている。第1の(first)及び第2の(second)などの関係を示す用語は、ある実体又は動作を別の実体又は動作から、そのような実体同士又は動作同士の間の何らかの実際のそのような関係又は順序を必ずしも要求又は示唆することなく区別するために、使用される場合がある。
【0126】
1つの態様、その態様、別の態様、いくつかの態様、1つ又は複数の態様、1つの実装形態、その実装形態、別の実装形態、いくつかの実装形態、1つ又は複数の実装形態、1つの実施例、その実施例、別の実施例、いくつかの実施例、1つ又は複数の実施例、1つの構成、その構成、別の構成、いくつかの構成、1つ又は複数の構成、主題の技術、本開示(the disclosure)、本開示(the present disclosure)、これらの他の変形などの句は、便宜上のものであり、そのような句に関連する開示が主題の技術にとって本質的であること、又は、そのような開示が主題の技術の全ての構成に当てはまることを示唆するものではない。そのような句に関連する開示は、全ての構成に当てはまり得るか、又は1つ若しくは複数の構成に当てはまり得る。そのような句に関連する開示は、1つ又は複数の実例を提供し得る。1つの態様又はいくつかの態様などの句は1つ又は複数の態様を指す場合があり、この逆も成り立つが、このことは上記した他の句にも同様に当てはまる。
【0127】
一連のアイテムの前に付く句「~のうちの少なくとも1つ」は、用語「及び」又は「又は」によってそれらのアイテムは全て分けられるが、リストの各構成要素ではなく、全体としてのそのリストを修飾する。「のうちの少なくとも1つ」という句は少なくとも1つのアイテムを選択することを要求しない。むしろこの句では、アイテムのうちの任意の1つのうちの少なくとも1つ、及び/又はアイテムの任意の組合せのうちの少なくとも1つ、及び/又はアイテムの各々の少なくとも1つを含む意味が可能になる。例として、「A、B、及びCのうちの少なくとも1つ」又は「A、B、若しくはCのうちの少なくとも1つ」という句は各々、Aのみ、Bのみ、若しくはCのみ、A、B、及びCの任意の組合せ、及び/又はA、B、及びCの各々の少なくとも1つを指す。
【0128】
開示されるステップ、動作、又はプロセスの特定の順序又は階層性は、例示の手法を説明するものであることが理解される。そうではないと明示的に述べられていない限り、ステップ、動作、又はプロセスの特定の順序又は階層性は、異なる順序で実施され得ることが理解される。ステップ、動作、又はプロセスのうちのいくつかを同時に行ってもよい。存在している場合、添付の方法の請求項は、様々なステップ、動作、又はプロセスの要素を例としての順序で提示しており、この提示される特定の順序又は階層性に限定されることは意図されていない。これらは連続的に、直線的に、並列で、又は異なる順序で実行されてもよい。記載されている命令、動作、及びシステムは一般に、単一のソフトウェア/ハードウェア製品において1つに統合できるか、又は複数のソフトウェア/ハードウェア製品へとパッケージ化できることが、理解されるべきである。
【0129】
一態様では、連結されているという用語又は類似のものは、直接連結されていることを指し得る。別の態様では、連結されているという用語又は類似のものは、間接的に連結されていることを指し得る。
【0130】
頂部、底部、前方、後方、側方、水平な、垂直な、及び類似のものなどの用語は、重力に基づく一般的な基準系ではなく、恣意的な基準系に言及するものである。したがって、そのような用語は重力に基づく基準系では、上向きに、下向きに、対角線方向に、又は水平に延びている場合がある。
【0131】
本開示は、どのような当業者でも本明細書に記載する様々な態様を実施できるように提供される。いくつかの場合には、周知の構造及び構成要素が、主題の技術の概念が曖昧になるのを避けるために、ブロック図の形態で示される。本開示は主題の技術の様々な実例を提供し、主題の技術はこれらの実例に限定されない。これらの態様の様々な修正が当業者には容易に明らかになり、本明細書に記載する原理は他の態様に適用され得る。
【0132】
当業者に知られているか又は将来知られることになる、本開示の全体にわたって記載されている様々な態様の要素のあらゆる構造的及び機能的等価物が、本明細書に参照によって明示的に組み込まれており、それらは特許請求の範囲に包含されることが意図されている。更に、本明細書に開示されている内容は、そのような開示が特許請求の範囲に明示的に記載されているかどうかに関わらず、決して公衆への開放を意図するものではない。どの請求項の要素も、その要素が「~のための手段(means for)」という句を使用して明示的に記述されていない、又は方法の請求項の場合にはその要素が「~のためのステップ(step for)」という句を使用して記述されていない限りは、米国特許法第112条(f)の規定の下で解釈されるべきではない。
【0133】
発明の名称、技術分野及び背景技術、図面の簡単な説明、要約書、並びに図面が本明細書において本開示に組み込まれているが、それらは制限的な記載としてではなく、本開示の例示的な実例として提供されている。本明細書は、それらが特許請求の範囲の範囲又は意味を限定するように使用されるものではないとの理解のもとで提示される。更に、詳細な説明において、その説明が例示的な実例を提供し、様々な特徴が本開示を合理化する目的で様々な実装形態において1つにまとめられていることを理解できる。開示の方法は、特許請求される主題が各請求項に明示的に記載されているよりも多くの特徴を必要とするという意図を反映しているものとして解釈されるべきではない。むしろ、請求項に反映されているように、進歩性を備えた主題は、開示される単一の構成又は動作の全てに満たない特徴で成り立つ。請求項は本明細書において詳細な説明に組み込まれており、各請求項は個別に特許請求される主題としてそれ自体で成立している。
【0134】
特許請求の範囲は本明細書に記載する態様に限定されることは意図されておらず、請求項の言語と矛盾しない全範囲を認められるものであり、全ての法的な等価物を包含するものである。それでもなお、どの請求項も適用可能な特許法の要件を満たさない主題を包含することは意図されておらず、またどの請求項もそのように解釈されるべきではない。