(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-11-20
(45)【発行日】2024-11-28
(54)【発明の名称】内視鏡用フードの成形型
(51)【国際特許分類】
A61B 1/00 20060101AFI20241121BHJP
G02B 23/24 20060101ALI20241121BHJP
【FI】
A61B1/00 651
G02B23/24 A
(21)【出願番号】P 2021545513
(86)(22)【出願日】2020-09-07
(86)【国際出願番号】 JP2020033716
(87)【国際公開番号】W WO2021049444
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】P 2019165748
(32)【優先日】2019-09-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000131245
【氏名又は名称】株式会社シード
(73)【特許権者】
【識別番号】519330559
【氏名又は名称】親和工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001564
【氏名又は名称】フェリシテ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】金田 栞
(72)【発明者】
【氏名】松永 透
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 隆郎
(72)【発明者】
【氏名】秋元 亮二
(72)【発明者】
【氏名】森田 圭紀
【審査官】相川 俊
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-510577(JP,A)
【文献】国際公開第2019/026473(WO,A1)
【文献】特開2010-088552(JP,A)
【文献】特開平11-128159(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 1/00
G02B 23/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌型及び雄型を備え、前記雌型に設けられる挿入口から前記雄型が挿入されて、前記雌型と前記雄型の間に生じる所定の充填空間に親水性モノマーを含む材料が充填され、当該材料の共重合反応によって内視鏡用フードを成形する内視鏡用フードの成形型であって、
前記雌型の挿入口の縁部又は前記雌型に挿入後の前記雄型の周囲で前記雌型の挿入口に対応する所定の位置のいずれか一方に外周方向に張り出される溝形形状部を有し、他方に外周方向に張り出されて前記溝形形状部に係合可能な凸形形状部を有し、
前記雌型内に挿入される前記雄型を、前記溝形形状部と前記凸形形状部との係合により、前記雌型内で位置決め
し、
前記溝形形状部は、雌型の挿入口の縁部又は雄型の周囲で所定の位置に周方向に所定の間隔で複数のプレートが形成され、前記各プレートの凸形形状部に対向される一方の面に溝が形成されてなる、ことを特徴とする内視鏡用フードの成形型。
【請求項2】
前記溝形形状部は、
前記雌型の挿入口の縁部又は
前記雄型の周囲で所定の位置に全周に亘ってフランジが形成され、前記フランジの凸形形状部に対向される一方の面に溝が形成されてなる、請求項1に記載の内視鏡用フードの成形型。
【請求項3】
前記溝は
、前記フランジの一方の面に全周に亘って円形に連続して又は周方向に部分的に円弧状若しくは点状に不連続にして形成される、請求項2に記載の内視鏡用フードの成形型。
【請求項4】
前記溝は
、前記プレートの一方の面に円弧状若しくは点状に形成される、請求項
1に記載の内視鏡用フードの成形型。
【請求項5】
前記凸形形状部は、
前記雄型の周囲で所定の位置又は
前記雌型の挿入口の縁部に周方向に所定の間隔で複数のプレートが形成され、前記各プレートの
前記溝形形状部に対向される一方の面に凸状部が形成されてなる、請求項1乃至
4のいずれかに記載の内視鏡用フードの成形型。
【請求項6】
前記凸状部は
、前記プレートの一方の面に円弧状若しくは点状に形成される、請求項
5に記載の内視鏡用フードの成形型。
【請求項7】
前記凸形形状部は、
前記雄型の周囲で所定の位置又は
前記雌型の挿入口の縁部に全周に亘ってフランジが形成され、前記フランジの溝形形状部に対向される一方の面に凸状部が形成されてなる、請求項1乃至
4のいずれかに記載の内視鏡用フードの成形型。
【請求項8】
前記凸状部は
、前記フランジの一方の面に全周に亘って円形に連続して又は周方向に部分的に円弧状若しくは点状に不連続にして形成される、請求項
7に記載の内視鏡用フードの成形型。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡に装着する内視鏡用フードを成型するための成形型に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡を用いた手術や検査においては、内視鏡の延出部(挿入側端部)から生体組織までの至適距離の確認及び視野の確保を目的として、内視鏡の延出部に透明なフードが装着される。ここで、かかるフードは、ABS、ポリカーボネート、塩化ビニル、シリコーンゴム等により形成されている。
【0003】
しかしながら、かかるフードは、内視鏡の延出部から生体組織までの至適距離の確認及び視野の確保を目的として装着されるものであり、カメラレンズや照明レンズの部分は、被覆されていないため、フードを装着した内視鏡を用いた検査や手術において、体液や油脂が付着し、視界が不鮮明になるという課題を有していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような課題を解決するために、親水性モノマーを用いて形成されたハイドロゲルによって内視鏡用フードを形成することが考えられる。ハイドロゲルによって内視鏡用フードを形成する方法としては、親水性モノマーを含む材料をプラスチック等の成形型に充填し、昇温することで共重合反応させる。次いで、共重合反応した材料を水和膨潤させることによってハイドロゲルからなる内視鏡用フードを得ることができる。当該方法によって得られる内視鏡用フードの形状は、親水性モノマーを含む材料を充填する成形型の形状に対応する。しかし、内視鏡は、同一の形状のものだけでなく、様々な形状のものが提供されている。そのため、内視鏡の形状に応じて異なる成形型を用いて製造する必要がある。
【0006】
また、特許文献1に示すように、内視鏡用フードとして、筒形状の外装部と、外装部の内側面に連なる円盤部と、を有するものが提供されている。このような内視鏡用フードでは、内視鏡のカメラレンズ等の位置によって円盤部の形状を異ならせ、内視鏡の先端の径によって外装部の内径を異ならせる。すなわち、円盤部及び外装部のそれぞれで調整が必要であり、成形型の汎用性を高めることができなかった。
【0007】
そこで、本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、防曇性や防汚性に優れた内視鏡用フードを成形でき、かつ成形型の汎用性を高めることができ、さらに内視鏡フードの厚さを均一にして品質をより高めることのできる内視鏡用フードの成形型を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、雌型及び雄型を備え、前記雌型に設けられる挿入口から前記雄型が挿入されて、前記雌型と前記雄型の間に生じる所定の充填空間に親水性モノマーを含む材料が充填され、当該材料の共重合反応によって内視鏡用フードを成形する内視鏡用フードの成形型であって、前記雌型の挿入口の縁部又は前記雌型に挿入後の前記雄型の周囲で前記雌型の挿入口に対応する所定の位置のいずれか一方に外周方向に張り出される溝形形状部を有し、他方に外周方向に張り出されて前記溝形形状部に係合可能な凸形形状部を有し、前記雌型内に挿入される前記雄型を、前記溝形形状部と前記凸形形状部との係合により、前記雌型内で位置決めする、ことを要旨とする。
また、この内視鏡用フードの成形型は次のように具体化される。
(1)溝形形状部は、雌型の挿入口の縁部又は雄型の周囲で所定の位置に全周に亘ってフランジが形成され、前記フランジの凸形形状部に対向される一方の面に溝が形成されてなる。この場合、溝はフランジの一方の面に全周に亘って円形に連続して又は周方向に部分的に円弧状若しくは点状に不連続にして形成されることが好ましい。
(2)上記(1)に代えて、溝形形状部は、雌型の挿入口の縁部又は雄型の周囲で所定の位置に周方向に所定の間隔で複数のプレートが形成され、前記各プレートの凸形形状部に対向される一方の面に溝が形成されてなるものとしてもよい。この場合、溝はプレートの一方の面に円弧状若しくは点状に形成されることが好ましい。
(3)凸形形状部は、雄型の周囲で所定の位置又は雌型の挿入口の縁部に周方向に所定の間隔で複数のプレートが形成され、前記各プレートの溝形形状部に対向される一方の面に凸状部が形成されてなる。この場合、凸状部はプレートの一方の面に円弧状若しくは点状に形成されることが好ましい。
(4)上記(3)に代えて、凸形形状部は、雄型の周囲で所定の位置又は雌型の挿入口の縁部に全周に亘ってフランジが形成され、前記フランジの溝形形状部に対向される一方の面に凸状部が形成されてなるものとしてもよい。この場合、凸状部はフランジの一方の面に全周に亘って円形に連続して又は周方向に部分的に円弧状若しくは点状に不連続にして形成されることが好ましい。
上記(1)-(4)は選択的に組み合わせられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の内視鏡用フードの成形型によれば、雌型及び雄型を備え、雌型に設けられる挿入口から雄型が挿入されて、雌型と雄型の間に生じる所定の充填空間に親水性モノマーを含む材料が充填され、当該材料の共重合反応によって内視鏡用フードを成形するものとしたので、長時間の使用においても防曇性や防汚性に優れた内視鏡用フードを成形でき、かつ成形型の汎用性を高めることができ、また、この成形型では、特に、雌型又は雄型のいずれか一方に外周方向に張り出される溝形形状部を有し、他方に外周方向に張り出される凸形形状部を有し、雌型内に挿入される雄型を、溝形形状部と凸形形状部との係合により、雌型内で位置決めするようにしたので、雌型内で雄型を確実に位置決めすることができ、内視鏡用フードの厚みを均一にして内視鏡用フードの品質をより高めることができる、という本発明独自の格別な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施の形態に係る内視鏡用フードの成形型を示す側面断面図
【
図3】同成形型の特に雌型を示す図で(a)は後端面側から見た平面図(b)は先端面側の部分断面図
【
図5】同成形型の特に雄型を示す図で(a)は先端面側から見た平面図(b)は後端面側から見た底面図
【
図6】同成形型から得られる内視鏡用フードを示す側面断面図
【
図7】同成形型から得られる内視鏡用フードが内視鏡に装着された状態を示す部分斜視図
【
図8】同成形型から得られる内視鏡用フードを示す図で(a)は断面図(b)は平面図
【
図9】本発明の第2の実施の形態に係る内視鏡用フードの成形型を示す側面断面図
【
図10】同成形型から得られる内視鏡用フードを示す側面断面図
【
図11】同成形型(
図9の成形型)から得られる内視鏡用フードが内視鏡に装着された状態を示す部分斜視図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、適宜図面を参照しながら、実施の形態を詳細に説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。なお、発明者は、当業者が本開示を十分に理解するために添付図面及び以下の説明を提供するのであって、これらによって特許請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
【0012】
なお、以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、各寸法の比率等は現実のものとは異なる場合があることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法等は、以下の説明を参酌して判断すべきである。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0013】
図1、及び
図2乃至
図5を参照して、一実施の形態に係る内視鏡用フードの成形型1について説明する。
図1は内視鏡用フードの成形型1(以下、単に成形型1という。)の側面断面図である。
図2はこの成形型1の特に雌型の側面断面図で、
図3(a)は同雌型の平面図、
図3(b)はその部分断面図である。
図4はこの成形型1の特に雄型の側面断面図で、
図5(a)は同雄型の底面図、
図5(b)は同雄型の平面図である。
図6はこの成形型1によって得られる内視鏡用フードを示す断面図である。
図7は同内視鏡用フードが内視鏡に装着された状態を示す部分斜視図である。
図8は同内視鏡用フードの断面図及び平面図である。
図9は成形型1の一部変更例である内視鏡用フードの成形型2(以下、単に成形型2という。)の側面断面図である。
図10はこの成形型2によって得られる内視鏡用フードを示す断面図である。
図11は同内視鏡用フードが内視鏡に装着された状態を示す部分斜視図である。
【0014】
この成形型1は、内視鏡の挿入側端部(延出部)に装着される内視鏡用フードを形成するための型である。
図7に示すように、内視鏡用フード50は、内視鏡100の挿入側端部(延出部)100Eに装着されるように構成されている。
【0015】
本実施の形態では、内視鏡用フード50はハイドロゲル製である。ハイドロゲルとしては、親水性モノマーのみを用いて形成されたハイドロゲルや、親水性モノマーに疎水性モノマー若しくは架橋性モノマー又はその両方を添加して形成されたハイドロゲル等が挙げられる。親水性モノマーは、ハイドロゲルの含水率に対して寄与し、疎水性モノマーは、ハイドロゲルの含水率や膨潤率の調整作用に対して寄与し、得られる内視鏡用フード50の濡れ性や柔軟性に対して影響を与える。また、架橋性モノマーは、その含有量によって、ハイドロゲルの高分子鎖の密度を制御することが可能となり、ハイドロゲルに機械的強度や形状安定性や耐溶剤性を付与することができる。
【0016】
ハイドロゲルの含水率は、成形可能であれば特に限定されないが、例えば、20~70重量%とすることができる。
含水率(重量%)=〔(W-D)/W〕×100(W:含水重量、D:乾燥重量)
また、必要に応じて、含水率を適宜選択することができる。例えば、外装部51の含水率及び円盤部52の含水率は、それぞれ20~70重量%であってもよい。
【0017】
親水性モノマーとしては、1以上の親水基を分子内に有するものが好ましく、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドン、ダイアセトンアクリルアミド、N-ビニルアセトアミド、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルオキシエチルコハク酸、イタコン酸、メタクリルアミドプロピルトリアンモニウムクロライド、2,3-ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中から親水性モノマーを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0018】
上述の親水性モノマーの中でも、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-ビニルピロリドンが、取扱い性の観点から、本願発明においては好ましく用いられる。
【0019】
親水性モノマーの配合率は、特に限定されないが、得られる内視鏡用フード50の含水率に影響を及ぼすことから、全重合成分中の50重量%以上であることが好ましい。親水性モノマーの配合率が50重量%未満の場合、十分な含水率を有する内視鏡用フード50が得られないことから、内視鏡用フード50の防汚性や防曇性が低下することが懸念されるため好ましくない。
【0020】
疎水性モノマーとしては、例えば、シロキサニル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、メタクリルアミド、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート等が挙げられ、これらの中から疎水性モノマーを2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0021】
疎水性モノマーは、配合量に応じて得られる内視鏡用フード50の含水性を変化させることができる。ところが、疎水性モノマーの配合率が高いと含水性が極端に低下し、得られる内視鏡用フード50の柔軟性が低下することから、例えば、モノマー総量に対して30重量%未満であることが好ましい。
【0022】
架橋性モノマーとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビスアクリルアミド、2-ヒドロキシ-1,3-ジメタクリロキシプロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート等が挙げられ、これらの中から2種以上組み合わせて用いてもよい。
【0023】
架橋性モノマーの配合量は、得られる内視鏡用フード50の形状調節効果の観点から、モノマー総量に対して0.1~10重量%が好ましい。0.1重量%未満の場合は、内視鏡用フード50の網目構造が不足し、10重量%を超えると逆に網目構造が過剰となり、内視鏡用フード50が脆くなり、かつ、柔軟性が低下する。
【0024】
上述のモノマーの混合物を重合させる際に使用する重合開始剤としては、一般的なラジカル重合開始剤であるラウロイルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の過酸化物や、アゾビスバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル等が挙げられる。重合開始剤の添加量は、モノマー総量に対して10~3500ppm程度が好ましい。
【0025】
本実施の形態に係る内視鏡用フード50は、上述のモノマーを単一で或いは複数を混合した後、所望の形状に形成するものであり、単一の材料において形成される。
【0026】
ポリマーを得る工程として、構成成分であるモノマーを混合して得られるモノマー混合液を金属やガラスやプラスチック等の成形型に入れて密閉し、恒温槽等で段階的又は連続的に25~120℃の範囲で昇温し、5~120時間で共重合反応を完了させることによりポリマーを含む成形型を得ることができる。重合に関しては、紫外線や電子線やガンマ線等を用いることが可能である。
【0027】
ハイドロゲルを得る工程として、重合終了後の成形型を室温に冷却し、成形型に入っているポリマーを成形型から剥離し、必要に応じて、切削、研磨した後に、ポリマーを水和膨潤させてハイドロゲルとする。使用する液体(膨潤液)としては、例えば、水、生理食塩水、等張性緩衝液及びこれらにエタノール等の有機溶媒を混合した溶液等が挙げられるがこれらに限定されない。膨潤液を60~100℃に加温し、ポリマーを一定時間膨潤液に浸漬させて膨潤状態とする。また、膨潤処理時にポリマーに付着する未反応のモノマーを除去することが好ましい。得られたハイドロゲルは、生理食塩水等の膨潤液に浸漬した状態で、110~130℃、10~60分間の高圧蒸気滅菌に供することにより定形化することができる。
【0028】
本実施の形態に係る内視鏡用フード50によれば、防曇性や防汚性に優れることから、手術や検査時において、レンズ部分を被覆するハイドロゲル表面に付着した体液や油脂を内視鏡100に供えた送水機構から噴出される水により容易に除去することが可能である。加えて、曇りも抑止することが可能になる。そのため、長時間に渡る手術や検査においても、レンズ部の汚染や曇りを除去するための内視鏡100の抜き取りが不要なことから、手術や検査の短時間化や、患者の負担軽減が可能になる。
【0029】
図7及び
図8に示すように、内視鏡用フード50は、外装部51と、円盤部52と、を備える。内視鏡用フード50は、軸方向Aと、径方向Rと、を有する。内視鏡用フード50の軸方向Aは、内視鏡100の挿入方向に沿っている。外装部51は、円盤部52の外周より垂直方向に円設する。外装部51は、軸方向Aに延びる円筒形状であり、内視鏡100の挿入方向に向かって細くなるテーパー形状であってよい。外装部51は、内視鏡100に当接し、内視鏡用フード50を内視鏡100に固定する機能を有する。よって、外装部51の内径fは、使用する内視鏡100に合わせ適宜設計される。
【0030】
図8に示すように、内視鏡用フード50は、内視鏡用フード50の先端側に位置する先端面55と、先端面55と対向する対向面56と、を有する。先端面55は、内視鏡用フード50が装着される内視鏡100の挿入方向における先端側の面である。先端面55は、外装部51の軸方向Aの端縁と、円盤部52の外側の面と、を含む。対向面56は、外装部51の軸方向Aの端縁と、円盤部52の内側の面と、を含む。
【0031】
外装部51の長さbは、内視鏡用フード50を内視鏡100に固定するのに十分な長さであれば特に限定されない。外装部51の長さbは、5~20mmが好ましく、10~15mmがより好ましい。この場合、外装部51の長さbは20mmとしてある。また、外装部51の厚みtは、0.1~1.0mmが好ましく、0.3~0.5mmがより好ましい。この場合、外装部51の厚みtは0.20mmとしてある。外装部51の長さb及び厚みtは、適宜設計される。
【0032】
円盤部52は、平面視にて円形状である。円盤部52は、外装部51の軸方向Aにおける先端縁に位置し、外装部51の内面に連なっている。円盤部52は、鉗子の出入り口となる鉗子口53と、円盤部52を洗浄するための送水部の出口となる送水口54と、を有する。鉗子口53及び送水口54は、円盤部52を貫通した開口であり、本発明の開口を構成する。円盤部52の厚みeは、0.01~1.0mmが好ましく、0.05~0.7mmがより好ましく、0.1~0.5mmが最も好ましい。円盤部52の厚みeは、1.0mmを超過すると、カメラレンズを介して得られる視野に悪影響を及ぼす。また、円盤部52の厚みeは、0.01mmよりも小さい場合、円盤部52の強度が低くなり、使用時の破損が生じることが懸念されるため好ましくない。この場合、円盤部52の厚みeは0.2mmとしてある。円盤部52の厚みe、鉗子口53の位置及び形状、送水口54の位置及び形状は、装着する内視鏡の構造に応じて、適宜設計される。
【0033】
次いで、このように構成された内視鏡用フード50を成形する成形型1について、
図1から
図5を参照して詳細に説明する。
図1に示すように、成形型1は、雌型6と、雄型4と、を備える。成形型1は、雌型に設けられる挿入口60から雄型4が挿入されて雌型6と雄型4の間に生じる所定の充填空間Sに親水性モノマーを含む材料を充填させ、当該材料を共重合反応させることによって内視鏡用フード50を成形するための型である。成形型1は、共重合反応させる際の昇温に適切な材料によって形成されていればよく、例えば、プラスチックによって形成されている。成形型1は、円柱形状であり、軸方向Aと径方向Rを有する。成形型1の軸方向Aは、内視鏡用フード50の軸方向Aに沿っている。
【0034】
雌型6、雄型4はいずれも一つのピースからなる。よって、本実施の形態の成形型1は、雌型6と、雄型4と、の2つの部材によって構成されている。充填空間Sは、雌型6の内面と、雄型4の外面と、によって囲まれている。
【0035】
成形型1が2つの型(雌型6及び雄型4)を有するため、内視鏡用フード50の形状に応じて雌型6の形状と雄型4の形状をそれぞれ調整することができる。内視鏡用フード50の形状を調整する際に、雌型6及び雄型4をそれぞれ調整したり、雌型6を調整せずに雄型4のみを調整したり、雄型4を調整せずに雌型6のみを調整したりすることができる。型の組み合わせパターンが増え、内視鏡用フード50の形状パターンを増やすことができる。それぞれの型の汎用性を高めることができる。
【0036】
また、この成形型1では、雌型6の挿入口60の縁部又は雌型6に挿入後の雄型4の周囲で雌型6の挿入口60に対応する所定の位置のいずれか一方に外周方向に張り出される溝形形状部61Aを有し、他方に外周方向に張り出されて溝形形状部61Aに係合可能な凸形形状部41Aを有し、雌型6内に挿入される雄型4を、溝形形状部61Aと凸形形状部41Aとの係合により、雌型6内で位置決めするようになっている。
【0037】
図2及び
図3に示すように、雌型6は、有底の円筒形状であり、その径方向の中心に雄型4を収容する収容部23を有する。収容部23は、雌型6の内面2Aによって囲まれた空間であり、軸方向Aにおいて先端は閉塞され、後端は挿入口60として開口されている。雄型4が、挿入口60から軸方向Aに沿って収容部23内に挿入されるように構成されている。このようにして雌型6は、雄型4を出し入れする後端を開口された挿入口60と、この挿入口60と軸方向Aにおける反対側の先端面22と、を有する。
【0038】
雄型4を雌型6へ挿入する第1方向X1は、後端の挿入口60から先端面22に向かう方向であり、雄型4を雌型6から取り出す第2方向X2は、先端面22から後端の挿入口60に向かう方向である。先端面22は、雄型4の雌型6への挿入方向の先端側に位置する。本実施の形態では、第1方向(雄型4の雌型6への挿入方向)X1は、当該成形型1によって成形される内視鏡用フード50が装着される内視鏡100の挿入方向と一致している。
【0039】
雌型6の内面2Aは、内視鏡用フード50の外周面に対応する外周形成面24になっている。雌型6の内面2Aは、内視鏡100の挿入方向(本実施の形態における第1方向X1)に向かって細くなるテーパー形状である。なお、雌型6の内面2Aの軸方向Aに対する傾斜角度は、0.01度以上10.0度以下であってよく、好ましくは、0.01度以上5.0度以下であり、より好ましくは、0.01度以上2.0度以下である。外周形成面24は、雌型6の内面2A全体に設けられている。外周形成面24は、充填空間Sを囲む面である。外周形成面24は、雄型4の外面(後述する装着形成面)と間隔を空けて配置されている。外周形成面24は、内視鏡用フード50の外装部51の外周面に対応する面である。
【0040】
この雌型6の先端面22の内面は先端形成面33で、内視鏡用フード50の先端面55に対応する面である。先端形成面33は、内視鏡用フード50の円盤部52の外側の面に対応する面である。先端形成面33は、雌型6の径方向Rの中央に配置され、平面視にて円形状である。
【0041】
この先端形成面33には、内視鏡用フード50の開口(鉗子口53及び送水口54)に対応する開口形成部35が形成されている。開口形成部35は、先端形成面33から軸方向A(本実施の形態の第2方向X2)に突出している。開口形成部35が設けられている領域では、雌型6の開口形成部35と雄型4の対向形成面43が当接し、内視鏡用フード50の円盤部52を貫通する開口が形成される。開口形成部35の周囲の領域では、雌型6の先端形成面33と雄型4の対向形成面43が離間して配置され、厚みを有する円盤部52が形成される。
【0042】
開口形成部35の位置及び形状によって、内視鏡用フード50の開口の位置及び形状を調整することができる。また、他の形態として、開口形成部35は、雄型4に設けられてもよいし、雌型6及び雄型4の両方に設けられてもよい。なお、開口形成部35を雌型6及び雄型4のいずれか一方に設けることにより、内視鏡用フード50の開口パターンを調整する際に、雌型6及び雄型4の一方のみを調整すればよく、成形型1の汎用性を高めることができる。
【0043】
また、この雌型の後端挿入口60の縁部全体(全周縁)には、溝形形状部61Aが設けられて外周方向に張り出されている。この溝形形状部61Aは、雌型6の挿入口60の縁部に全周に亘って円形にフランジ610が形成され、フランジ610の、後述する凸形形状部41Aに対向される一方の面(第2方向X2に向けられる面)に溝611が形成されてなる。この場合、溝611はフランジ610の一方の面の径方向略中央に全周に亘って円形に連続して形成される。また、この場合、溝611は断面略半円状若しくは断面略かまぼこ形状に形成される。なお、雌型6の挿入口60の中心からフランジ610の外周縁までの寸法は10mmであり、雌型6の挿入口60の中心からフランジ610の溝611最深部までの寸法は8mmである。
【0044】
図4及び
図5に示すように、雄型4は、雌型6の収容部23内において軸方向Aに配置されている。雄型4は、雌型6の後端挿入口60側に位置する、つまり挿入口60の縁部(全周縁部)をなす雄後端41と、雌型4の先端面側に位置する雄先端42と、を有する。雄先端42に後述する対向形成面43が構成される。
【0045】
雄型4は、充填空間Sを囲む外面を有する。雄型4の外面は、対向形成面43と、装着形成面44とを含む。対向形成面43は、内視鏡用フード50の対向面56に対応する面である。対向形成面43は、円盤部52の装着部511側の面に対応する面である。対向形成面43は、雄型4の径方向Rにおける中央に配置され、平面視にて円形状である。
【0046】
雄型4の対向形成面43は、雌型6の先端形成面33と軸方向Aにおいて間隔を空けて配置されている。対向形成面43と先端形成面33の間隔eは、内視鏡用フード50の円盤部52の厚みeとなる。対向形成面43と先端形成面33の間隔eを調整することによって、円盤部52の厚みeを調整できる。雄型4が対向形成面43を有し、雌型6が先端形成面33を有することにより、雌型6及び雄型4の一方を調整することによっても、内視鏡用フード50の先端面55、対向面56及びその間の領域を調整でき、成形型1の汎用性を高めることができる。対向形成面43は、上述のように、雌型6の開口形成部35に当接する。
【0047】
対向形成面43から雄後端41まで軸方向Aに延びる面は、装着形成面44を構成する。対向形成面43と雄後端41の軸方向Aの間隔bは、装着形成面44の軸方向Aの長さであり、内視鏡用フード50の装着部511の長さbとなる。
【0048】
装着形成面44は、内視鏡用フード50の装着部511の内周面に対応する面である。装着形成面44は、雌型6の外周形成面24と対向して配置されている。雌型6の外周形成面24と雄型4の装着形成面44とによって挟まれた充填空間Sは、内視鏡用フード50の外装部51の装着部511に対応する装着空間である。外周形成面24と装着形成面44の間隔tは、装着空間の幅であり、内視鏡用フード50の装着部511の厚みtとなる。外周形成面24と装着形成面44の間隔tを調整することによって、装着部511の厚みtを調整できる。また、装着形成面44の外径fを調整することにより、装着部511の内径fを調整することができる。装着形成面44は、内視鏡100の挿入方向(本実施の形態における第1方向X1)に向かって細くなるテーパー形状である。装着形成面44が外周形成面24と平行に延びている構成にあっては、内視鏡用フード50の装着部511の厚みは一定となる。なお、装着形成面44は、テーパー形状でなく、軸方向Aに沿っていてもよいし、外周形成面24と平行でなくてもよい。
【0049】
なお、装着部511の厚みtが変化する構成にあっては、外周形成面24と装着形成面44との間隔が変化してよい。
【0050】
この雄型4には、雌型6に挿入後の雄型4の周囲で雌型6の挿入口60に対応する所定の位置に凸形形状部41Aが設けられて外周方向に張り出されている。この凸形形状部41Aは、雄型4の雄後端41の縁部に周方向に所定の間隔で複数のプレート411が形成され、これら各プレート411の既述の溝形形状部61Aに対向される一方の面に凸状部412が形成されてなる。この場合、凸形形状部41Aは、雄型4の周囲で所定の位置に周方向に120°間隔で3つのプレート411が径方向に少し長い略四角形状に形成され、各凸状部412は各プレート411の一方の面の略中央に溝形形状部61Aの溝611に嵌合可能に平面視円弧状にかつ断面略半円形若しくは断面略かまぼこ形状に形成される。なお、雌型6の挿入口60に同心的に挿入される雄型4の挿入口60での中心から各プレート411の凸状部412までの寸法と雌型6の挿入口60からフランジ610の溝611までの寸法は同じである。
【0051】
このようにして構成された成形型1によって内視鏡用フード50を製造する際は、
図6に示すように、雌型6内に親水性モノマーを含む材料を注入した後に雄型4を挿入し、当該材料を共重合反応させる。この場合、雌型6に材料を注入後、雌型6後端の挿入口60から雄型4の先端を差し込み、雌型6内に雄型4を挿入するが、雌型6の内面2Aと雄型4の外面47は、内視鏡100の先端側に向かって細くなるテーパー形状になっていることにより、雌型6に対する雄型4の嵌め込みを円滑に行うことができる。反対に、雌型6から雄型4の引き抜きも同様に円滑に行うことができる。また、この雌型6に対する雄型4の嵌め込みとともに、雌型6後端の溝形形状部61Aと雄型4後端の凸形形状部41Aが係合して、雌型6内で雄型4が所定の位置に固定保持される。すなわち、雌型6後端のフランジ610の断面略半円形の円形の溝611の任意の位置に雄型4の各プレート411の断面略半円形の各凸状部412が円滑に嵌合し、雌型6の挿入口60の中心からフランジ610の溝611までの寸法が、雌型6の挿入口60に挿入される雄型4の挿入口60での中心から各プレート411の凸状部412までの寸法と同じなので、雌型6内に雄型4が同心上に配置される。そして、雌型6の先端形成面33と雄型4の対向形成面43とによって挟まれた先端空間によって内視鏡用フード50の円盤部52が形成され、雌型6の外周形成面24と雄型4の装着形成面44とによって挟まれた装着空間によって内視鏡用フード50の装着部511が形成される。雌型6内に雄型4が同心上に配置されて雌型6内で雄型4の位置及び角度が安定することで、内視鏡用フード50は厚みが一定で全体が所定の寸法及び形状に形成される。
【0052】
以上説明したように、この内視鏡用フードの成形型1によれば、雌型6及び雄型4を備え、雌型6に設けられる挿入口60から雄型4が挿入されて、雌型6と雄型4の間に生じる所定の充填空間に親水性モノマーを含む材料が充填され、この材料の共重合反応によって内視鏡用フードを成形するようにしたので、長時間の使用においても防曇性や防汚性に優れた内視鏡用フードを成形でき、かつ成形型の汎用性を高めることができる。また、この成形型1では、特に、雌型6に外周方向に張り出される溝形形状部61Aを有し、雄型4に外周方向に張り出される凸形形状部41Aを有し、雌型6内に挿入される雄型4を、溝形形状部61Aと凸形形状部41Aとの係合により、雌型6内で位置決めするようにしたので、雌型6内で雄型4を確実に位置決めすることができ、内視鏡用フードの厚みを均一にして内視鏡用フードの品質をより高めることができる。また、溝形形状部61Aは、雌型6の挿入口60の縁部に全周に亘ってフランジ610が形成され、フランジ610の凸形形状部41Aに対向される一方の面に溝611が形成されて設けられ、凸形形状部41Aは、雄型4の周囲で所定の位置に周方向に所定の間隔で複数のプレート411が形成され、各プレート411の溝形形状部61Aに対向される一方の面に凸状部412が形成されて設けられるので、構造が簡単で、製造コストも低く抑えることができる。
【0053】
この実施の形態において、溝形形状部61A及び凸形形状部41Aは、次のように種々に変更することができる。
(1)上記実施の形態では、溝形形状部61Aが雌型6の挿入口60の縁部に外周方向に張り出され、凸形形状部41Aが雌型6に挿入後の雄型4の周囲で雌型6の挿入口60に対応する所定の位置に外周方向に張り出されて、溝形形状部61Aと凸形形状部41Aが係合されるものとしたが、溝形形状部が雌型に挿入後の雄型の周囲で所定の位置に外周方向に張り出され、凸形形状部が雌型の挿入口の縁部に外周方向に張り出されて、溝形形状部と凸形形状部が係合されるようにしてもよい。このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
(2)上記実施の形態では、溝形形状部61Aは、雌型6の挿入口60の縁部に全周に亘ってフランジ610が形成されて、フランジ610の凸形形状部41Aに対向される一方の面に溝611が形成され、凸形形状部41Aが、雄型4の周囲で所定の位置に周方向に所定の間隔(この場合、120°間隔)で複数(この場合、3つ)のプレート411が形成されて、各プレート411の溝形形状部61Aに対向される一方の面に凸状部412が形成されるものとしたが、これとは反対に、溝形形状部が、雄型の周囲で所定の位置に全周に亘ってフランジが形成されて、フランジの凸形形状部に対向される一方の面に溝が形成され、凸形形状部が、雌型の挿入口の縁部に周方向に所定の間隔で複数のプレートが形成され、各プレートの溝形形状部に対向される一方の面に凸状部が形成されるものとしてもよい。このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
(4)上記実施の形態では、溝611はフランジ610の一方の面に全周に亘って円形に連続して形成され、各凸状部412は各プレート411の一方の面に円弧状に形成されるものとしたが、溝はフランジの一方の面に周方向に部分的に円弧状若しくは点状に不連続にして形成され、各凸状部は各プレートの一方の面に円弧状若しくは点状に形成されてもよい。このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
(5)上記実施の形態では、溝形形状部61Aは、雌型6の挿入口60の縁部に全周に亘ってフランジ610が形成されて、フランジ610の凸形形状部41Aに対向される一方の面に溝611が形成され、凸形形状部41Aが、雄型4の周囲で所定の位置に周方向に所定の間隔(この場合、120°間隔)で複数(この場合、3つ)のプレート411が形成されて、各プレート411の溝形形状部61Aに対向される一方の面に凸状部412が形成されるものとしたが、これとは反対に、溝形形状部は、雌型の挿入口の縁部又は雄型の周囲で所定の位置に周方向に所定の間隔(例えば、120°間隔)で複数(例えば、3つ)のプレートが形成されて、各プレートの凸形形状部に対向される一方の面に溝が形成され、凸形形状部が、雄型の周囲で所定の位置又は雌型の挿入口の縁部に全周に亘ってフランジが形成され、フランジの溝形形状部に対向される一方の面に凸状部が形成されてもよい。この場合、溝はプレートの一方の面に円弧状若しくは点状に形成されてもよく、凸状部はフランジの一方の面に全周に亘って円形に連続して又は周方向に部分的に円弧状若しくは点状に不連続にして形成されてもよい。このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
(6)さらに、溝形形状部、凸形形状部は共に、フランジ又は複数のプレートからなり、溝形形状部はその一方の面に溝が形成され、凸形形状部はその一方の面に凸状部が形成されるものであってもよい。このようにしても上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0054】
また、この実施の形態では、外装部51に装着部511から内視鏡の挿入方向の先端側に延出する延出部のないタイプの内視鏡用フード50の成形型1について例示したが、
図10に示すような外装部51に装着部511から内視鏡の挿入方向の先端側に延出する延出部512を有するタイプの内視鏡用フード50の成形型1についても、雌型6の挿入口60の縁部又は雌型6に挿入後の雄型4の周囲で雌型6の挿入口60に対応する所定の位置のいずれか一方に外周方向に張り出される溝形形状部61Aを設け、他方に外周方向に張り出されて溝形形状部61Aに係合可能な凸形形状部41Aを設けることで、上記実施の形態と同様の作用効果を奏することができる。
【0055】
この場合、成形型1は、
図9(1)に示すように、雌型6の先端面22が肉厚に形成されて先端形成面33の最外周部で外周形成面24の延長上に延出部形成部34Aとして所定の深さの溝340が形成される点で上記実施の形態での成形型1と異なる。なお、この場合、雌型6の外周形成面24、雄型4の装着形成面44はそれぞれ、上記実施の形態と同様にテーパー形状であってもよく、円筒形に形成されてもよい。
【0056】
この成形型1によって内視鏡用フード50を製造する際は、上記実施の形態と同様に、雌型6内に親水性モノマーを含む材料を注入した後に雄型4を挿入し、当該材料を共重合反応させる。この場合、
図9(1)に示すように、雌型6に材料を注入後、雌型6後端の挿入口60から雄型4の先端を差し込み、雌型6内に雄型4を挿入するが、
図9(2)に示すように、この雌型6に対する雄型4の嵌め込みとともに、雌型6後端の溝形形状部61Aと雄型4後端の凸形形状部41Aが係合して、雌型6内で雄型4が所定の位置に固定保持される。すなわち、雌型6後端のフランジ610の断面略半円形の円形の溝611の任意の位置に雄型4の各プレート411の断面略半円形の各凸状部412が円滑に嵌合し、雌型6の挿入口60の中心からフランジ610の溝611までの寸法が、雌型6の挿入口60に挿入される雄型4の挿入口60での中心から各プレート411の凸状部412までの寸法と同じなので、雌型6内に雄型4が同心上に配置される。そして、
図9(2)、(3)に示すように、雌型6の先端形成面33と雄型4の対向形成面43とによって挟まれた先端空間によって内視鏡用フード50の円盤部52が形成され、雌型6の外周形成面24と雄型4の装着形成面44とによって挟まれた装着空間によって内視鏡用フード50の装着部511が形成され、雌型6の先端形成面33の最外周部の溝340をなす延出部形成部34A、すなわち、雌型6の外周形成面24と雄型4の装着形成面44との間の装着空間の先端側延長上に延出部512が形成される。雌型6内に雄型4が同心上に配置されて雌型6内で雄型4の位置及び角度が安定することで、
図9(4)に示すように、内視鏡用フード50は厚みが一定で全体が所定の寸法及び形状に形成される。
【0057】
なお、上述のように、本発明について、上述した実施の形態によって説明したが、かかる実施の形態における開示の一部をなす論述及び図面は、本発明を限定するものであると理解すべきではない。かかる開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。
【符号の説明】
【0058】
1 成形型
2A 内面
23 収容部
24 外周形成面
3B:外面
33 先端形成面
35 :開口形成部
4 :雄型
41A 凸形形状部
41 雄後端
411 プレート
412 凸状部
42 雄先端
43 :対向形成面
44 :装着形成面
50 :内視鏡用フード
51 :外装部
52 :円盤部
53 :鉗子口(開口)
54 :送水口(開口)
55 :先端面
56 :対向面
6 雌型
60 挿入口
61A 溝形形状部
610 フランジ
611 溝
100 :内視鏡
A :軸方向
S :充填空間
X1 :第1方向
X2 :第2方向